リストカットをはじめとする自傷行為は、強い心理的苦痛を抱えた人が感情を処理しようとする行動です。本人も「やめたい」と思いながらやめられないケースが多く、適切な治療やサポートなしに回復することは難しいとされています。しかし、正しい治療を受けることで、多くの人が自傷行為から離れ、自分らしい生活を取り戻せるようになります。この記事では、リストカットの治療方法や受診の流れ、家族や周囲ができるサポートについて、医療的な観点からわかりやすく解説します。
目次
- リストカットとはどのような状態か
- なぜリストカットをしてしまうのか:心理的背景
- リストカットと関連する精神疾患
- リストカットの治療はどこで受けられるか
- 受診のタイミングと初診の流れ
- リストカットに対する主な治療法
- 薬物療法の役割と注意点
- 傷跡のケアと身体的治療
- 家族・周囲の人ができるサポート
- 回復のプロセスと再発について
- まとめ
この記事のポイント
リストカットなどの自傷行為は意志の弱さでなく心理的苦痛への対処行動であり、弁証法的行動療法(DBT)や認知行動療法(CBT)を中心とした心理療法と薬物療法の組み合わせで回復が可能です。アイシークリニック渋谷院では、早期受診と継続的な専門的治療を推奨しています。
🎯 1. リストカットとはどのような状態か
リストカットとは、自分の意思で手首などを刃物などで傷つける自傷行為のひとつです。医学的には「非自殺的自傷行為(NSSI:Non-Suicidal Self-Injury)」と呼ばれており、自殺を目的としない自分への傷つけ行為として定義されています。手首以外にも、腕、太もも、腹部など、外から見えにくい部位が選ばれることがあります。
自傷行為は決して「注目を引くためのパフォーマンス」ではなく、本人が心の苦痛を乗り越えようとして選択している行動です。多くの場合、行為によって一時的に苦しさが和らぐという感覚が生まれるため、繰り返しやすくなるという特徴があります。
日本では10代から20代の若い世代に多く見られますが、成人以降も続く方や、中高年になって初めて自傷行為を行う方もいます。性別を問わず発生しますが、調査によると女性の方が多い傾向が報告されています。一方で、男性の場合は社会的な「恥」の感覚から受診が遅れやすいという問題もあります。
リストカットは精神科的な緊急性が高い行為でもあります。非自殺的自傷行為を繰り返している人は、将来的に自殺念慮につながるリスクが高まるという研究もあるため、軽視することなく早めに適切な治療やサポートを受けることが重要です。
Q. リストカットをする人の心理的な理由は何ですか?
リストカットの主な心理的背景には、強い感情を和らげる「感情調節」、自己嫌悪から生じる「自己罰」、言葉で伝えられない苦しさを示す「SOS信号」、解離状態から抜け出すための「感覚の回復」などがあります。本人にとっては対処法として機能しているため、それに代わる健康的なスキルを身につけることが治療の中心課題となります。
📋 2. なぜリストカットをしてしまうのか:心理的背景
リストカットをする理由は一人ひとり異なりますが、いくつかの共通した心理的パターンが知られています。治療を考えるうえでも、まずその背景を理解することが大切です。
もっとも多い理由のひとつが、「感情の調節」です。悲しみ、怒り、不安、絶望感など、強い感情に圧倒されたとき、傷つけることで一時的にそれらの感情が薄れたり、逆に感情を感じるための刺激を求めたりするという仕組みが働きます。解離状態(現実感がなくなる感覚)から抜け出すために自傷を行うケースもあります。
次に多いのが、「自己罰」の心理です。自分を責める気持ちが強く、傷つくことで罪悪感や自己嫌悪を解消しようとする行動です。「自分はこうされて当然だ」「もっと苦しむべきだ」という認知の歪みが背景にあることが多いとされています。
また、「SOS信号」として機能することもあります。言葉では伝えられない苦しさを、傷という形で示そうとするケースです。この場合、治療者や家族との関係を構築し、言語で感情を表現できるようになることが回復につながります。
さらに、「麻痺した感覚を取り戻す」という目的で行われることもあります。慢性的な抑うつや解離症状がある場合、何も感じられない状態が苦痛であり、痛みによって「生きている実感」を取り戻そうとする心理が働きます。
いずれの場合も、本人にとってはリストカットが「対処法」として機能してしまっているため、それに代わる健康的な対処法を身につけることが治療の中心課題となります。
💊 3. リストカットと関連する精神疾患
リストカットなどの自傷行為は、特定の精神疾患の症状として現れることが多く、その診断と治療が回復のカギを握っています。
もっとも関連が深いとされているのが、境界性パーソナリティ障害(BPD)です。感情の不安定さ、見捨てられることへの強い恐怖、衝動的な行動、自己イメージの混乱などを特徴とするこの障害では、自傷行為が主要な症状のひとつとして現れることがあります。
うつ病や双極性障害でも、自傷行為が起こることがあります。特に強い抑うつ状態にある場合や、双極性障害の混合状態(気分が高揚しながらも強い苦痛を感じる状態)では、自傷のリスクが高まります。
外傷後ストレス障害(PTSD)や複雑性PTSD(C-PTSD)も関連が深い疾患です。虐待、性暴力、ネグレクトなどのトラウマ体験を持つ人が、フラッシュバックや解離症状を和らげるために自傷を行うケースが多く報告されています。
摂食障害(拒食症・過食症)でも自傷行為が併存することがあります。食行動のコントロールと自傷行為は、どちらも感情調節の困難さを背景に持つことが多く、治療でも共通したアプローチが有効とされています。
解離性障害や不安障害、発達障害(自閉スペクトラム症やADHDなど)との関連も報告されています。一人ひとりの背景にある疾患を正確に評価し、それに見合った治療を行うことが重要です。
Q. リストカットの治療に最も効果的な心理療法は何ですか?
現在最も科学的根拠が高い治療法は弁証法的行動療法(DBT)です。感情調節・対人効果・苦痛耐性・マインドフルネスの4分野を通じて感情を健全に処理する力を育てます。認知行動療法(CBT)も広く用いられており、自傷に至る思考パターンを修正し、代替の対処行動を学びます。アイシークリニック渋谷院でもこれらを活用した治療を提供しています。
🏥 4. リストカットの治療はどこで受けられるか
リストカットの治療は、精神科または心療内科で受けることができます。どちらも精神的な問題を扱う診療科ですが、一般的に精神科の方がより重篤な精神疾患の診断・治療に特化しており、自傷行為に対しても専門的な対応が期待できます。
受診先を探す際は、「自傷行為」「非自殺的自傷」「リストカット」などに対応していることを標榜しているクリニックや病院を選ぶと安心です。一部のクリニックでは、ホームページや予約フォームに「自傷行為の治療」と明記しているところもあります。
重症度や状況によっては、外来治療ではなく入院治療が必要になることもあります。入院治療が検討されるのは、自傷の頻度や深さが増している場合、自殺念慮がある場合、生活が著しく困難になっている場合などです。精神科病棟に入院することで、安全な環境のもとで集中的な治療を受けることができます。
また、クリニックや病院以外にも、公的な相談窓口として「こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)」や「よりそいホットライン(0120-279-338)」などを利用することができます。まだ受診に踏み切れない段階では、電話相談から始めることも選択肢のひとつです。
未成年の場合は、保護者と一緒に受診することが多いですが、クリニックによっては本人だけで相談できる体制を整えているところもあります。もし保護者に打ち明けることが難しい場合は、学校のスクールカウンセラーや養護教諭に相談するところから始めるのも一つの方法です。
⚠️ 5. 受診のタイミングと初診の流れ
「どのくらいひどくなったら受診すればいいのか」という疑問を持つ方は多いと思いますが、自傷行為は一度でも行った時点で、専門家への相談を検討することをお勧めします。「まだ大したことない」「1回だけだから」と思って放置していると、習慣化してしまうリスクがあるからです。
特に以下のような状況にある場合は、できるだけ早めに受診することが大切です。自傷の頻度が増えている、傷が深くなっている、やめたいと思っているのにやめられない、自傷以外に感情を処理する方法がわからない、死にたいという気持ちが出てきている、などの状態はいずれも医療的なサポートを必要とするサインです。
初診の流れとしては、まず問診票の記入から始まります。現在の症状や自傷の状況、過去の精神科受診歴、服薬歴などを確認します。その後、医師との面談(診察)が行われ、現在の精神状態、自傷の背景、生活状況などについて詳しく話を聞いてもらいます。
初診では、すぐに診断名がつかないこともあります。精神科的な診断は、症状の経過を観察しながら行われるものが多く、数回の診察を経てから診断が確定するケースも少なくありません。最初の受診では「現在の苦しさを正直に話すこと」を最優先に考えてください。
また、傷がある場合には、精神科に加えて外科や皮膚科での傷の処置が必要になることもあります。深い傷の場合は縫合処置が必要なため、精神科と並行して身体的な治療も受けるようにしましょう。
🔍 6. リストカットに対する主な治療法
リストカットの治療において、心理療法(精神療法)は中心的な役割を担います。薬だけで自傷衝動を完全に抑えることは難しく、行動や認知のパターンを変えていく心理療法との組み合わせが基本となります。
現在もっとも科学的根拠(エビデンス)が高い治療法のひとつが、弁証法的行動療法(DBT:Dialectical Behavior Therapy)です。DBTは境界性パーソナリティ障害や慢性的な自傷行為を持つ人のために開発された心理療法で、感情調節スキル、対人効果スキル、苦痛耐性スキル、マインドフルネスの4つの分野を中心に、感情を健全に処理する力を育てることを目指します。週1回の個人療法とグループスキルトレーニングを組み合わせて行われることが多く、一定の期間を要しますが、自傷行為の減少に対して高い効果が報告されています。
認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)も広く用いられています。自傷行為に至るまでの思考パターン、感情の流れ、行動の連鎖を整理し、自傷以外の対処行動を学んでいく治療法です。自動的に浮かぶ否定的な思考(認知の歪み)を修正し、より現実的な見方や問題解決スキルを身につけることを目指します。
トラウマを背景に持つ方には、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)やTF-CBT(トラウマフォーカスド認知行動療法)が用いられることがあります。これらはトラウマ記憶の処理を専門的に行うアプローチで、フラッシュバックや解離症状の軽減を通じて自傷衝動を和らげる効果が期待されます。
精神分析的心理療法や支持的精神療法も、関係性の中で安心感を育み、自己理解を深めることを目的として行われます。特定の技法よりも、治療者との信頼関係そのものが回復の土台となるという考え方に基づいています。
治療は通常、週1回または2週間に1回のペースで外来通院しながら行われます。治療の種類は患者の状態や診断によって選択されるため、担当医や心理士と相談しながら自分に合った方法を探していくことが大切です。
Q. 家族がリストカットをしていると知ったときどう接すればよいですか?
「なんでそんなことするの」と責める言葉は本人の孤立感を深めるため避けてください。まず「今どんな気持ちでいるの?」と感情に寄り添い、否定せず話を聞く姿勢が重要です。そのうえで「一緒に病院へ行こう」と受診を促し、可能であれば付き添うことが大きな支えになります。家族自身も家族会などのサポートを活用することが推奨されます。
📝 7. 薬物療法の役割と注意点
リストカットの治療において、薬物療法は主に背景にある精神疾患の症状を和らげるために使用されます。自傷行為そのものを直接抑える「特効薬」は現時点では存在しませんが、抑うつ症状、不安、感情の不安定さ、衝動性などを改善することで、自傷衝動が起きにくい状態をつくる効果が期待されます。
うつ病や不安障害が背景にある場合には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの抗うつ薬が使用されることがあります。SSRIは感情の安定化や衝動性の軽減にも一定の効果が報告されており、特に若い世代に対しても処方されています。ただし、10代の若者に抗うつ薬を使用する場合は、まれに自殺念慮が増加する可能性があるとして注意が必要とされており、処方後も定期的な経過観察が欠かせません。
感情の不安定さや衝動性が強い場合には、気分安定薬(リチウム、ラモトリギンなど)や非定型抗精神病薬が補助的に使用されることがあります。これらの薬は、感情の波を穏やかにし、衝動的な行動を起こしにくくする効果があるとされています。
睡眠障害を伴うケースでは、睡眠薬や抗不安薬が短期的に処方されることもありますが、依存性のリスクがあるため、長期的な使用は慎重に検討されます。
薬物療法を行う際には、処方された通りに服薬を続けることが重要です。自己判断で急に服薬をやめたり、量を変えたりすることは症状の悪化や離脱症状につながる可能性があります。副作用や気になる症状が出た場合は、すぐに担当医に相談するようにしてください。
また、薬物療法だけで自傷行為が解消されることは少なく、心理療法との組み合わせが基本です。薬で気分が安定してきた段階で心理療法の効果も出やすくなるため、両者を組み合わせることで相乗効果が期待できます。
💡 8. 傷跡のケアと身体的治療
リストカットによる傷は、適切に処置しないと感染症や傷跡の残りやすさに影響します。まずは身体的な傷の適切なケアを行うことが大切です。
傷が浅い場合でも、清潔に保つことが重要です。水道水で傷口をよく洗い流し、消毒薬を使いすぎないようにしながら(過剰な消毒は治癒を妨げる場合があります)、清潔なガーゼや絆創膏で保護します。傷が深い場合、出血が止まらない場合、感染の兆候(赤み・腫れ・膿・熱感)がある場合は、外科や救急病院を受診してください。
自傷行為が繰り返されてきた方の中には、傷跡が目立つことで生活上の困難(夏場の服装、他者の目線、自己嫌悪など)を感じているケースも少なくありません。傷跡の治療については、皮膚科や形成外科で相談することが可能です。
傷跡の治療方法としては、状態によって異なりますが、保湿ケアや遮光(紫外線を避けること)による自然な改善、シリコンジェルシートの使用、レーザー治療、外科的な瘢痕修正手術などが選択肢として挙げられます。ケロイド(傷跡が盛り上がった状態)になっている場合は、ステロイド注射や圧迫療法が行われることもあります。
傷跡の治療を検討する際には、精神科または心療内科での治療がある程度安定してから行うことが一般的です。自傷行為が続いている状態で傷跡の治療だけを行っても、根本的な問題は解決しないからです。精神科的な治療の進行状況を皮膚科や形成外科の医師と共有しながら、身体と心の両面からケアを進めていくことが理想的です。
傷跡は回復の証でもあります。過去の傷を「消してしまいたい」と思う気持ちは自然なことですが、焦らず、精神的な回復とともに身体的なケアも進めていくことが大切です。
Q. リストカットの回復過程で再発した場合はどう考えればよいですか?
再発は治療の失敗ではなく、回復プロセスに含まれる自然な経過です。完全にゼロを目指すより「自傷せずに済んだ時間が増えた」「別の方法で気持ちを処理できた」という小さな変化を積み重ねることが大切です。再発時に周囲が過度に責めると回復意欲が損なわれます。「今何が助けになるか」を一緒に考える姿勢が長期的な回復につながります。
✨ 9. 家族・周囲の人ができるサポート
家族や友人がリストカットをしていることを知ったとき、どのように接すればいいかわからず、パニックになったり、責めてしまったりすることがあります。周囲の人の対応は、本人の回復に大きな影響を与えるため、正しい知識を持つことがとても重要です。
まず、絶対に避けてほしいことがあります。「なんでそんなことするの」「自分勝手だ」「死にたいなら死ねばいい」などの言葉です。こういった反応は本人の苦しさを増幅させ、より孤立感を深めてしまいます。また、「もうしないと約束して」と求めることも、本人にとってはプレッシャーになることが多く、約束を守れなかったときの自己嫌悪を生む原因になります。
大切なのは、まず「話を聞く」姿勢を見せることです。「あなたのことが心配だから聞かせてほしい」という姿勢で、否定せず、説教せず、ただ話を受け止めることを意識してください。自傷行為の理由を問いただすよりも、「今、どんな気持ちでいるの?」と感情に寄り添う問いかけの方が、本人の心を開くきっかけになります。
受診を促すことも重要な役割です。「一緒に病院に行こう」と提案し、可能であれば付き添ってあげることで、本人が一歩踏み出しやすくなります。受診に抵抗がある場合は、まず相談窓口への電話を一緒にするところから始めてみてください。
家族自身もサポートを受けることが必要です。家族が自傷行為を抱えるストレスや不安は非常に大きく、「家族会」や「家族向けの心理教育プログラム」を利用することが推奨されます。家族が心理的に安定していることが、本人の治療環境にも良い影響を与えます。
また、刃物や薬など自傷に使える物を手の届かない場所に移すことも、環境面での安全対策として有効です。ただし、これはあくまで補助的な手段であり、根本的な解決には専門的な治療が必要です。
回復の過程では、再び自傷することがあることも知っておいてください。再発が起きたとき、周囲の過度な失望や責めは本人の回復意欲を損ないます。「また失敗した」ではなく、「今どんな状態か、何が助けになるか」を一緒に考える姿勢を保つことが、長期的な回復につながります。
📌 10. 回復のプロセスと再発について

リストカットからの回復は、一直線に進むものではありません。治療を続けながらも、自傷衝動が戻ってきたり、実際に自傷してしまったりすることがあります。これは治療の失敗ではなく、回復のプロセスに含まれる自然な経過です。
回復の初期段階では、まず自傷行為の頻度や深さが徐々に減っていくことが目標となります。完全にゼロになることだけを目標にすると、少しでも再発したときに大きな挫折感を感じてしまいます。「前より自傷せずに済んだ時間が増えた」「傷が浅くなった」「別の方法で気持ちを処理できた回数が増えた」というように、小さな変化を積み重ねることが大切です。
回復において重要なのが、「代替行動」を身につけることです。自傷したい衝動が生じたときに、それに代わる行動を取れるようになることが治療の大きな目標のひとつです。代替行動の例としては、氷を握る(強い感覚を安全に体験する)、激しい運動をする、誰かに連絡する、日記に感情を書き出す、音楽を聴くなど、人によってさまざまです。治療の中で自分に合った代替行動を見つけていくことが、長期的な回復を支えます。
再発の引き金(トリガー)を理解することも大切です。特定のストレス状況、対人関係のトラブル、記念日反応(過去のトラウマと関連する日付や季節)、睡眠不足や体調の悪化など、自傷衝動が高まりやすい状況を把握しておくことで、事前に対策を立てることができます。
長期的な回復の過程で、多くの人が感情の処理能力を高め、自己肯定感を育て、より豊かな人間関係を築けるようになっていきます。治療は時間がかかることもありますが、適切なサポートを受け続けることで、確実に回復への歩みを進めることができます。
治療者との関係が安定してきたとき、「自傷せずに過ごせた日が増えた」という実感が少しずつ生まれてきます。そのような変化を、治療者や信頼できる人と一緒に喜んでいくことが、さらなる回復への力になっていきます。
回復は決して一人でするものではありません。精神科医、心理士、看護師、家族、友人、当事者グループなど、さまざまな人々との繋がりの中で支えられながら進んでいくものです。「助けを求めること」それ自体が、回復のための大きな一歩であることを忘れないでください。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「当院では、リストカットをはじめとする自傷行為でお悩みの方が、「もうどこにも相談できない」という思いを抱えながら来院されるケースが多く見受けられます。自傷行為は意志の弱さではなく、強い心の苦痛に対処しようとするサインであり、適切な心理療法と必要に応じた薬物療法を組み合わせることで、着実に回復へと歩んでいくことができます。一人で抱え込まず、まずは話しを聞かせていただくところから一緒に始めましょう。」
🎯 よくある質問
はい、一度でも自傷行為があった場合は、専門家への相談を検討することをお勧めします。「まだ大したことない」と放置すると習慣化するリスクがあります。当院では初回から丁寧に話をお聞きしますので、まずは気軽にご相談ください。早期の受診が回復への近道となります。
回復は一直線には進まず、個人差があります。治療の中心となる弁証法的行動療法(DBT)や認知行動療法(CBT)は、一定の期間を要しますが、継続することで自傷行為の頻度や衝動が徐々に減っていきます。焦らず長期的な視点で取り組むことが大切です。
自傷行為そのものを直接抑える特効薬は現時点では存在しません。薬物療法は背景にある抑うつや衝動性などの症状を和らげる目的で使用されます。根本的な回復には、心理療法との組み合わせが基本となります。当院でも両者を組み合わせた総合的な治療を行っています。
まず「なんでそんなことするの」など責める言葉は避けてください。「今どんな気持ちでいるの?」と感情に寄り添い、否定せずに話を聞く姿勢が大切です。そのうえで「一緒に病院へ行こう」と受診を促し、可能であれば付き添ってあげることが本人の大きな支えになります。
傷跡の状態によって異なりますが、保湿ケアや遮光、シリコンジェルシートの使用、レーザー治療、外科的な瘢痕修正手術などが選択肢として挙げられます。ただし、精神科での治療がある程度安定してから行うことが一般的です。皮膚科・形成外科と精神科が連携しながら進めることが理想的です。
📋 まとめ
リストカットをはじめとする自傷行為は、強い心理的苦痛を抱えた人が感情を処理しようとする行動であり、本人の意志の弱さや性格の問題ではありません。適切な治療を受けることで、回復することは十分に可能です。
治療の中心は心理療法であり、弁証法的行動療法(DBT)や認知行動療法(CBT)などが科学的根拠に基づいて用いられています。背景にある精神疾患に対しては薬物療法も組み合わせ、身体的な傷のケアと合わせて総合的に治療が進められます。
家族や周囲の人には、責めず、ただ寄り添って話を聞く姿勢と、専門医への受診を促すサポートが求められます。回復は一直線ではなく、再発を繰り返しながら少しずつ前に進んでいくものです。焦らず、長期的な視点で治療に取り組むことが大切です。
「助けを求めてもいいんだ」と感じられることが、回復への最初の一歩です。もし自分や身近な人がリストカットで悩んでいるなら、まずは精神科・心療内科への相談を検討してみてください。アイシークリニック渋谷院では、自傷行為を含む精神的な問題に対して、丁寧な診察と適切な治療を提供しています。一人で抱え込まず、専門家の力を借りることが回復への近道です。
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📚 参考文献
- 厚生労働省 – 自傷行為・自殺対策・こころの健康に関する政策情報、相談窓口(こころの健康相談統一ダイヤル等)の案内、精神科医療に関する公式情報の参照
- WHO(世界保健機関) – 非自殺的自傷行為(NSSI)の国際的定義・疫学データ、自傷行為と自殺リスクの関連性に関するエビデンス、世界的な精神保健対策の指針の参照
- PubMed – 弁証法的行動療法(DBT)・認知行動療法(CBT)・EMDR等の治療エビデンス、境界性パーソナリティ障害やPTSDと自傷行為の関連に関する査読済み医学文献の参照
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務