夏になると悩まされる虫刺され。かゆみや腫れを抑えるためにステロイド配合の薬を使うことが多いですが、「どの強さのものを選べばいいのかわからない」「市販薬で対応できるのか、病院に行くべきか迷う」という方も少なくないでしょう。ステロイドには複数の強さのランクがあり、塗る場所や症状の程度によって適切なものが異なります。間違った選択をすると、効果が不十分だったり、皮膚に思わぬ影響が出たりすることもあります。この記事では、虫刺されに使うステロイドの正しい選び方から、症状別の対処法、使用上の注意点まで詳しく解説します。
目次
- 虫刺されのメカニズムとかゆみが起こる理由
- ステロイドとはどんな薬?虫刺されへの作用を理解する
- ステロイドの強さ5段階ランクと特徴
- 虫刺されの症状別ステロイドの選び方
- 塗る場所によって変わるステロイドの選択
- 市販薬と処方薬の違い
- ステロイドの正しい使い方と注意点
- ステロイド以外の成分:抗ヒスタミン薬や局所麻酔薬との違い
- 病院を受診すべき虫刺されのサイン
- まとめ
この記事のポイント
虫刺されへのステロイド選択は症状・部位・年齢で異なり、市販薬はクラス4〜5が中心。顔や子どもには弱いランクを使用し、ブユ・マダニ・アナフィラキシー症状では速やかに皮膚科を受診することが重要。
🎯 虫刺されのメカニズムとかゆみが起こる理由
虫に刺されると、虫の唾液や毒針などが皮膚に注入されます。この異物に対して体の免疫システムが反応し、炎症が起きます。この炎症反応がかゆみや赤み、腫れといった症状を引き起こす主な原因です。
具体的には、皮膚内のマスト細胞(肥満細胞)が刺激されることで「ヒスタミン」と呼ばれる化学物質が放出されます。ヒスタミンは神経を刺激してかゆみを感じさせると同時に、血管を拡張させて赤みや腫れを引き起こします。また、炎症を促進するサイトカインやプロスタグランジンなどの物質も放出され、これらが複合的に作用して不快な症状が現れます。
虫刺されの反応には、大きく分けて「即時型反応」と「遅延型反応」の2種類があります。即時型反応は刺された直後から数分以内に起こり、短時間でかゆみや腫れが現れますが、比較的早く治まります。一方、遅延型反応は刺された数時間後から翌日にかけて現れ、硬いしこりや強いかゆみが続くことがあります。特に子どもはアレルギー反応が出やすく、強い症状になることもあります。
刺す虫の種類によっても症状の出方は異なります。蚊、ブユ、ダニ、アブ、スズメバチ、ムカデなど、それぞれが異なる成分を注入するため、症状の強さや持続時間も変わってきます。たとえばブユに刺された場合は蚊と比べて腫れが強く出やすく、長引くことが多いです。スズメバチやムカデのように毒性が強い虫に刺された場合はアナフィラキシーショックのリスクもあるため、特に注意が必要です。
Q. 虫刺されにステロイドが効く理由は何ですか?
ステロイド外用薬は、炎症を引き起こすプロスタグランジンなどの化学物質の産生を抑制し、毛細血管の透過性を低下させることで腫れを軽減します。さらに免疫細胞の過剰反応を鎮め、虫刺されのかゆみ・赤み・腫れを効果的に和らげます。ただし虫の毒素を除去する作用はなく、炎症反応を抑える薬です。
📋 ステロイドとはどんな薬?虫刺されへの作用を理解する
ステロイドとは、副腎皮質ホルモンを人工的に合成した薬剤のことです。外用薬として皮膚に塗るステロイド(コルチコステロイド)は、炎症を強力に抑える作用を持っています。
ステロイドが炎症を抑えるメカニズムは複数あります。まず、炎症の原因となる化学物質(プロスタグランジンやロイコトリエンなど)の産生を抑制します。また、毛細血管の透過性を下げることで、腫れやむくみを軽減します。さらに、免疫細胞の活動を抑えることで過剰な免疫反応を鎮めます。これらの作用が組み合わさることで、虫刺されのかゆみ、赤み、腫れを効果的に和らげます。
重要なのは、ステロイドは症状を「抑える」薬であり、虫刺されそのものを「治す」薬ではないということです。虫の毒や唾液成分を除去する働きはなく、免疫反応によって引き起こされる炎症を鎮めることで不快症状を和らげます。そのため、適切な時期・適切な強さで使用することが大切です。
なお、ステロイドに対して「副作用が怖い」「長期間使うと皮膚が薄くなる」といったイメージを持つ方も多いです。確かに誤った使い方をすると副作用のリスクはありますが、適切な強さのものを適切な方法で使用すれば、安全で効果的な治療が可能です。
💊 ステロイドの強さ5段階ランクと特徴
外用ステロイドは強さによって5つのランク(クラス)に分類されています。最も強いものから順に「strongest(最強)」「very strong(強)」「strong(中強度)」「medium(中程度)」「weak(弱)」と区別されます。
クラス1(最強)に分類される薬はクロベタゾールプロピオン酸エステルなどで、非常に強力な炎症抑制作用を持ちます。市販薬にはなく、病院での処方のみとなります。通常の虫刺されに使用することはほとんどありません。
クラス2(強)にはジフルプレドナートやベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルなどが含まれます。比較的強い炎症に対して処方されますが、こちらも市販薬にはありません。ブユやアブなど重度の腫れを伴う虫刺されに使用されることがあります。
クラス3(中強度)には吉草酸ベタメタゾンやデキサメタゾン吉草酸エステルなどが含まれます。市販薬でもこのクラスを含む製品があり、比較的強い虫刺されの症状に対応できます。ただし、顔や首など皮膚が薄い部位への使用は避けるべきです。
クラス4(中程度)にはトリアムシノロンアセトニドやクロベタゾン酪酸エステルなどが含まれます。市販の虫刺され薬に多く使用されているランクで、一般的な虫刺されの症状に適しています。
クラス5(弱)にはプレドニゾロンやヒドロコルチゾンなどが含まれます。市販薬に最も多く使用されているランクで、顔や子ども、敏感な部位にも比較的使いやすいとされています。ただし、炎症が強い場合は効果が不十分なこともあります。
市販の虫刺され薬に含まれるステロイドは主にクラス4〜5が中心ですが、一部にはクラス3に相当する成分を含むものもあります。製品の成分表示を確認して、何クラスのステロイドが配合されているか理解したうえで使用することが大切です。
Q. 市販の虫刺され薬のステロイドは何クラスですか?
市販の虫刺され薬に含まれるステロイドは、主にクラス4(中程度)〜クラス5(弱)が中心です。代表成分はヒドロコルチゾン・プレドニゾロン(クラス5)、デキサメタゾン酢酸エステル(クラス4程度)などです。クラス3以上の強いステロイドは市販薬には含まれず、医師による処方が必要となります。
🏥 虫刺されの症状別ステロイドの選び方
症状の程度によって、適切なステロイドの強さは変わります。自己判断での選択には限界もありますが、基本的な考え方を理解しておくことは重要です。
軽度の虫刺され(蚊など)で赤みやかゆみが軽い場合は、クラス5(弱)のステロイドで十分対応できることが多いです。皮膚への負担も少なく、子どもや顔・首周辺にも使用しやすいランクです。市販薬でいえばヒドロコルチゾンを含む製品がこれに当たります。
中程度の虫刺され(蚊に複数か所刺された、かゆみや腫れが強めの場合)には、クラス4(中程度)が適しています。市販薬でも手に入りやすい強さで、多くの一般的な虫刺されに対応できます。
強い腫れや炎症を伴う虫刺され(ブユ、アブ、スズメバチなど)には、クラス3(中強度)以上のステロイドが必要になることがあります。しかし、この場合は自己判断での市販薬使用よりも、皮膚科を受診して適切な処方薬を使用することが望ましいです。また、スズメバチなど毒性の強い虫に刺された場合は、全身症状が出る可能性もあるため、皮膚科だけでなく救急での対応が必要になることもあります。
お子さんが虫に刺された場合は、成人よりも皮膚が薄く吸収されやすいため、強いステロイドの使用には注意が必要です。基本的には弱いランクから始め、効果が不十分な場合は医師に相談するのが安全です。小児では特に顔や首、おむつが当たる部分には弱いステロイドを短期間使用するにとどめましょう。
また、かゆみを我慢して掻きこわしてしまった場合や、皮膚がただれている場合は、ステロイドを塗ることで感染が悪化するリスクがあります。このような状態では自己判断でのステロイド使用は避け、皮膚科に相談することをお勧めします。
⚠️ 塗る場所によって変わるステロイドの選択
ステロイドの選択において、症状の程度と同様に重要なのが「塗る場所」です。皮膚の厚さや構造によって、ステロイドの吸収率が大きく異なるため、同じ強さのステロイドでも部位によって効果や副作用のリスクが変わります。
顔や首は皮膚が比較的薄く、ステロイドが吸収されやすい部位です。目の周りは特に皮膚が薄く、強いステロイドを使用すると眼圧上昇や白内障のリスクがあるとされています。また、頬や額なども副作用が出やすい部位です。これらの部位には、原則としてクラス5(弱)のステロイドを使用し、それでも症状が改善しない場合は医師に相談することが大切です。
手のひらや足の裏は皮膚が厚く、ステロイドが吸収されにくいため、弱いステロイドでは効果が不十分なことがあります。一方で、強いステロイドを使用しても副作用のリスクは比較的低いとされています。ただし、皮膚科医の判断のもとで使用することが望ましいです。
胴体や四肢(腕・脚)の体幹部分は、顔や首よりも皮膚が厚く、手のひら・足の裏よりは薄い中間的な部位です。一般的な虫刺され薬に含まれるクラス4〜5のステロイドで対応できることが多いです。
わきの下や鼠径部(足の付け根)などは皮膚が薄く、カンジダなどの真菌感染が起きやすいため注意が必要です。
陰部(デリケートゾーン)も皮膚が薄く吸収率が非常に高い部位です。強いステロイドの使用は特に慎重に行う必要があり、自己判断での使用は避けて皮膚科への相談をお勧めします。
頭皮は毛髪に覆われているため、ローションやスプレータイプのステロイドが適しています。皮膚が比較的薄く吸収率が高いため、使用するステロイドの強さには注意が必要です。
Q. 顔や子どもの虫刺されにはどのステロイドが適切ですか?
顔・目の周りは皮膚が薄くステロイドが吸収されやすいため、原則クラス5(弱)を使用します。目の周りへの強いステロイド使用は眼圧上昇や白内障のリスクがあります。子どもも皮膚が薄く吸収率が高いため、弱いランクから始め、顔・首・おむつ部分への使用は短期間にとどめ、改善しない場合は皮膚科に相談してください。
🔍 市販薬と処方薬の違い
虫刺されに使えるステロイド薬は、大きく「市販薬(OTC薬)」と「処方薬(医療用医薬品)」に分けられます。それぞれの特徴を理解することで、適切な対処ができます。
市販薬は薬局やドラッグストアで購入できるもので、一般用医薬品として販売されています。含まれるステロイドは主にクラス4〜5のものが多く、比較的弱い〜中程度の炎症に対応しています。代表的な成分としては、ヒドロコルチゾン(クラス5)、プレドニゾロン(クラス5)、デキサメタゾン酢酸エステル(クラス4程度)などが挙げられます。
市販薬には複数の成分が配合されているものが多く、ステロイドに加えて抗ヒスタミン薬、局所麻酔薬、清涼化成分(l-メントールなど)が組み合わされていることがあります。これらの複合成分によって、多角的に症状を和らげる工夫がされています。
一方、処方薬は医師の診察を受け、処方箋をもとに薬局で調剤・入手するものです。クラス1〜3の強いステロイドが含まれており、重症の虫刺されや皮膚炎に対応できます。処方薬は医師が患者の症状、年齢、使用部位を考慮したうえで処方するため、個々の状況に合わせた治療が可能です。
市販薬で使用できるステロイドの最大濃度・強さには規制があります。これは安全性を確保するためのもので、強いステロイドを正しく使用するには医師の管理が必要であるという考えに基づいています。
市販薬と処方薬のどちらを選ぶかの目安としては、まず市販薬で対応してみて、数日経っても改善しない、もしくは症状が悪化している場合には皮膚科を受診することをお勧めします。また、強い腫れや全身症状がある場合、繰り返し同じ場所が悪化する場合、子どもや高齢者の場合などは、最初から医療機関を受診する方が安心です。
なお、市販薬でもステロイド配合の製品とそうでない製品があります。かゆみや炎症が軽微な場合はノンステロイドの製品で十分な場合もありますし、逆に適切なステロイドを使用した方が症状を早く和らげられることもあります。
📝 ステロイドの正しい使い方と注意点
ステロイドは使い方を誤ると十分な効果が得られなかったり、副作用が生じたりすることがあります。正しい使い方を身につけることが大切です。
塗り方の基本としては、患部を清潔にしてから薬を薄く均一に塗ることが重要です。厚く塗りすぎてもその分だけ効果が高まるわけではなく、むしろ副作用のリスクが増すことがあります。患部とその周辺にごく薄く広げるイメージで塗りましょう。
FTU(フィンガーチップユニット)という考え方があります。これは人差し指の先端から第一関節までチューブから出した量(約0.5g)で、大人の手のひら2枚分の面積に塗ることができる量の目安です。この概念を参考にすると、適切な量を使用しやすくなります。
使用期間については、虫刺されの場合は長くても1〜2週間程度が目安です。症状が改善したら使用を中止します。慢性的に長期間使用し続けることは避けましょう。
ラップなどで密閉する「密封療法(ODT)」は、ステロイドの吸収を大幅に高めます。医師の指示のもとで行う治療法ですが、自己判断で行うと副作用のリスクが著しく高まるため、虫刺されに対して一般家庭で行うことは推奨されません。
ステロイドの副作用として、長期・過剰使用による皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)、毛細血管拡張(赤みが持続する)、ステロイド酒さ様皮膚炎などがあります。これらは主に長期間・強力なステロイドを使い続けた場合に起こりやすく、短期的な使用では通常問題になることはほとんどありません。
また、皮膚に傷やびらん(ただれ)がある場合はステロイドの吸収が高まるため注意が必要です。掻きこわした部位や傷口にステロイドを塗ることで感染を助長する可能性があるため、まず傷の状態を確認してから使用してください。
妊娠中・授乳中の使用については、極少量を短期間使用する場合は比較的安全とされていますが、広範囲・長期間の使用は避けるべきです。妊娠中や授乳中の方は医師に相談のうえで使用することをお勧めします。
糖尿病の方や免疫が低下している方は、ステロイドの使用に際して感染症のリスクが高まることがあります。使用前に医師に相談することが望ましいです。
Q. 虫刺されで病院をすぐ受診すべき症状は何ですか?
呼吸困難・全身の蕁麻疹・意識消失などアナフィラキシーの症状が現れた場合は直ちに救急対応が必要です。また市販薬を数日使用しても改善しない・悪化している場合、患部から膿が出るなど二次感染が疑われる場合、マダニに咬まれた場合も速やかに医療機関を受診してください。判断に迷う場合は皮膚科への早めの相談をお勧めします。
💡 ステロイド以外の成分:抗ヒスタミン薬や局所麻酔薬との違い
虫刺され薬にはステロイド以外にも様々な成分が配合されていることがあります。それぞれの成分の働きを理解することで、自分の症状に合った薬を選べます。
抗ヒスタミン薬(外用)は、かゆみの主要な原因物質であるヒスタミンの働きをブロックする成分です。ジフェンヒドラミン塩酸塩などが代表的です。ステロイドが炎症全体を抑えるのに対し、抗ヒスタミン薬はかゆみを引き起こすヒスタミンに特化して作用します。比較的軽いかゆみには効果的ですが、炎症が強い場合はステロイドほどの効果は得られないことがあります。
局所麻酔薬はリドカインやテトラカインなどが代表的で、神経に作用して痛みやかゆみの感覚を一時的に麻痺させます。ステロイドや抗ヒスタミン薬のように炎症そのものを抑えるわけではなく、かゆみを感じにくくする対症療法的な成分です。効果の持続時間は比較的短いですが、即効性があるのが特徴です。
清涼化成分(l-メントールやカンファーなど)は皮膚を冷やすような感覚を与えることでかゆみを紛らわせる効果があります。炎症を直接抑える力はありませんが、不快感を和らげるのに役立ちます。
抗菌成分(イソプロピルメチルフェノールなど)は掻きこわしによる二次感染を予防する目的で配合されることがあります。掻きこわしが生じている場合に有用です。
これらの成分を組み合わせた複合製剤が市販の虫刺され薬として多く流通しています。たとえば「ステロイド+抗ヒスタミン薬」「ステロイド+局所麻酔薬+清涼化成分」など、症状の種類や程度に応じて選べるバリエーションがあります。
ノンステロイド薬を選ぶべき状況としては、顔や目の周りに使用する場合、長期間使用が見込まれる場合、赤ちゃんや小さな子どもへの使用、軽微なかゆみで炎症を伴わない場合などが挙げられます。逆に炎症が明確にある場合(赤み、腫れ、熱感が強い場合)はステロイドを含む製品の方が効果的です。
内服の抗ヒスタミン薬(アレルギー薬)も市販されており、かゆみ全般に効果があります。虫刺されが複数か所にある場合や、外用薬だけでは対処しきれない強いかゆみには、内服薬と外用薬を組み合わせる方法も有効です。ただし、内服薬には眠気を催す副作用があるものもあるため、自動車の運転前や就業中の使用には注意が必要です。
✨ 病院を受診すべき虫刺されのサイン

虫刺されは多くの場合、市販薬での対応が可能ですが、場合によっては医療機関を受診することが必要です。受診のタイミングを間違えると、症状が悪化したり、適切な治療が遅れたりすることがあります。
まず、アナフィラキシーの症状が出た場合は、直ちに救急対応が必要です。アナフィラキシーとは重篤なアレルギー反応で、以下のような症状が刺された後に急速に現れます。全身の蕁麻疹や皮膚の腫れ、呼吸困難や喘鳴(ゼーゼーという呼吸音)、顔や喉の腫れ、血圧低下によるめまいや意識消失、嘔吐や腹痛などです。これらの症状が現れた場合は、すぐに119番通報するか、救急病院に向かってください。スズメバチやアシナガバチに刺された場合は特にアナフィラキシーのリスクが高く、過去に蜂に刺された経験がある方は注意が必要です。
次に、市販薬を使用して数日経っても改善しない場合や、症状が悪化している場合も受診のサインです。特に腫れが拡大している、赤みが広がっている、発熱がある、患部から膿が出ているなどの場合は、二次感染(蜂窩織炎など)の可能性があります。二次感染には抗生剤による治療が必要となることが多く、自己判断でのステロイド使用では対処できません。
子どもが顔や目の周りを刺された場合、強い腫れが生じることがあります。目の周りが著しく腫れて目が開けにくい状態になったり、熱感や痛みが強い場合は受診を検討してください。
マダニに咬まれた場合は、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)やライム病などの感染症を媒介することがあるため注意が必要です。マダニが皮膚に刺さったままになっている場合は、無理に自分で取ろうとせず皮膚科を受診してください。マダニを取った後でも、数日〜数週間後に発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛などが現れた場合は内科や感染症科を受診することをお勧めします。
かゆみや腫れが異常に強く、全身に広がっている場合も受診が必要です。これは強いアレルギー反応の可能性があり、内服ステロイドや抗ヒスタミン薬の処方が必要となることがあります。
また、繰り返し同じ場所が虫刺されのように見えて悪化する場合、実は虫刺されではなく皮膚疾患(例えば多形滲出性紅斑や固定薬疹など)の可能性もあります。このような場合も皮膚科での診察を受けることをお勧めします。
皮膚科への受診を迷う方も多いですが、「少し様子を見ようと思ったら重症化してしまった」というケースは実際に多く見られます。市販薬での対応が適切かどうか不安な場合は、早めに専門家に相談することが大切です。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「当院では、虫刺されで受診される患者さまの多くが、市販薬を長期間使い続けてから来院されるケースが見られます。ステロイドは適切な強さのものを適切な期間使うことが大切で、部位や症状によって選び方が大きく異なるため、「なんとなく手元にあるものを塗っていた」という使い方では効果が不十分になることも少なくありません。特にブユやマダニによる刺され、お子さまの顔周りの腫れなど、ご自身での判断が難しいケースは早めにご相談いただくことで、より早い回復につながりますので、どうぞ遠慮なく受診してください。」
📌 よくある質問
市販薬に含まれるステロイドは主にクラス4(中程度)〜クラス5(弱)が中心です。代表的な成分としてヒドロコルチゾンやプレドニゾロン(クラス5)、デキサメタゾン酢酸エステル(クラス4程度)などがあります。クラス3以上の強いステロイドは市販薬には含まれず、医師の処方が必要です。
子どもは皮膚が薄くステロイドが吸収されやすいため、使用には注意が必要です。基本的にはクラス5(弱)の市販薬から始め、顔や首・おむつが当たる部分への使用は短期間にとどめましょう。症状が改善しない場合や腫れが強い場合は、自己判断を避け皮膚科に相談することをお勧めします。
顔や目の周りは皮膚が薄くステロイドが吸収されやすいため、原則としてクラス5(弱)のステロイドを使用してください。特に目の周りに強いステロイドを使うと、眼圧上昇や白内障のリスクがあるとされています。弱いステロイドで改善しない場合は、自己判断を続けず皮膚科を受診することが大切です。
短期間の適切な使用であれば、通常問題になることはほとんどありません。ただし長期・過剰使用を続けると、皮膚が薄くなる(皮膚萎縮)、毛細血管拡張による赤みの持続などの副作用が起こる可能性があります。虫刺されへの使用は1〜2週間を目安とし、症状が改善したら使用を中止しましょう。
以下の場合は速やかに医療機関を受診してください。①呼吸困難・全身の蕁麻疹・意識消失などアナフィラキシーの症状(直ちに救急対応が必要)、②市販薬を数日使用しても改善しない・悪化している場合、③患部から膿が出るなど二次感染が疑われる場合、④マダニに咬まれた場合です。当院では症状に応じた適切な診療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
🎯 まとめ
虫刺されに使うステロイドの選び方について、ポイントをまとめます。
ステロイドは5段階のランクに分類されており、強いものほど炎症を抑える力が強い反面、副作用のリスクも高まります。一般的な蚊による虫刺されにはクラス4〜5(中程度〜弱)の市販薬で十分なことが多く、ブユやアブなど腫れが強い虫刺されには医療機関での処方薬が必要になることもあります。
塗る部位も重要な選択基準です。顔や目の周り、子どもへの使用には弱いステロイドを選ぶ、または医師に相談することが大切です。使用方法としては薄く均一に塗ること、長期使用を避けること、傷やただれがある部位への使用に注意することを心がけましょう。
市販薬にはステロイドのほかに抗ヒスタミン薬や局所麻酔薬なども含まれており、症状に合わせた選択が可能です。しかし、市販薬で数日使用しても改善しない場合、アナフィラキシーの症状が出た場合、二次感染が疑われる場合は迷わず医療機関を受診してください。
虫刺されは身近なトラブルですが、適切なステロイドを適切な方法で使用することで、症状を早期に和らげることができます。不安なことがあれば、ぜひ皮膚科専門医にご相談ください。
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📚 参考文献
- 日本皮膚科学会 – 外用ステロイドの強さ分類・使用方法・副作用に関する皮膚科診療ガイドラインおよび患者向け情報
- 厚生労働省 – 一般用医薬品(市販薬)の分類・成分・使用上の注意に関する規制および情報
- 国立感染症研究所 – マダニ媒介感染症(SFTS・ライム病等)およびスズメバチ刺傷によるアナフィラキシーに関する感染症・健康被害情報
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務