風邪をひいたとき、布団の中でじっとりと汗をかいた経験はないでしょうか。「汗をかいたほうが早く治る」という話を耳にすることもあれば、「無理に汗をかかせるのは危険」という意見を聞くこともあります。実際のところ、風邪のときに汗をかくのはなぜなのか、そして汗をかくことは回復に役立つのか——この疑問に正確な医学知識をもとにお答えします。風邪の症状や経過を正しく理解することは、適切なセルフケアにつながります。ぜひ最後までお読みいただき、次に風邪をひいたときの参考にしてください。
目次
- 風邪とはどのような状態か
- 風邪のときに汗をかく理由
- 発熱と発汗の仕組みをもっと詳しく
- 「汗をかけば風邪が治る」は本当か
- 汗をかくことで失われるものと脱水のリスク
- 風邪のときに汗をかいたらどうすればよいか
- 無理に汗をかかせることの危険性
- 汗をかきやすい環境づくりと注意点
- 汗をかいたあとの体のケア方法
- 病院に行くべき症状の目安
- まとめ
この記事のポイント
風邪時の発汗は解熱期の体温調節による自然現象であり、汗自体がウイルスを排除するわけではない。「汗をかけば治る」は医学的に誤りで、無理な発汗は脱水・体力消耗を招く。回復には安静・水分補給・適切な保温が最優先。
🎯 風邪とはどのような状態か
風邪(かぜ)は、医学的には「急性上気道炎」と呼ばれる感染症です。主にウイルスが原因で、鼻や喉などの上気道(鼻腔・咽頭・喉頭)に炎症が起こることで、鼻水、鼻づまり、喉の痛み、咳、発熱、倦怠感などのさまざまな症状が現れます。
原因ウイルスとして最も多いのはライノウイルスで、全風邪の30〜40%を占めるとされています。そのほか、コロナウイルス(新型コロナウイルスとは異なる風邪の原因となるもの)、RSウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルスなど、200種類以上のウイルスが風邪の原因となります。
細菌が原因の場合もゼロではありませんが、一般的な風邪の大多数はウイルス性です。そのため、抗生物質(抗菌薬)は風邪には基本的に効果がなく、対症療法(症状を和らげる治療)と安静・栄養・水分補給が回復の基本となります。
健康な成人であれば、通常は1週間前後で自然に回復しますが、年齢や免疫状態、基礎疾患の有無によっては長引いたり、合併症を引き起こすこともあります。
Q. 風邪のときに汗をかくのはなぜですか?
風邪の発汗は主に「解熱期」に起こります。免疫反応でウイルスがある程度制圧されると体温のセットポイントが下がり、余分な熱を放散するために汗腺が開きます。これは体温調節の自然な生理現象であり、回復へ向かっているサインとも言えます。
📋 風邪のときに汗をかく理由
風邪をひくと汗をかく最大の理由は「発熱」です。ウイルスが体内に侵入すると、免疫系が活性化され、体温を意図的に上昇させます。これはウイルスの増殖を抑え、免疫細胞の働きを高めるための防御反応です。
体温が上がっている最中(発熱期)は、体が熱を作り出そうとしているため、寒気(悪寒)を感じることが多く、むしろ汗は出にくい状態です。しかし、熱が下がり始める「解熱期」には、上がりすぎた体温を下げるために汗腺が開き、大量の汗が出るようになります。これが、風邪のときに汗をたくさんかく主なタイミングです。
また、ウイルスへの免疫反応によってプロスタグランジンという物質が産生され、脳の視床下部にある体温調節中枢に作用します。体温の「設定温度(セットポイント)」が高くなることで発熱が起こり、その後セットポイントが下がると今度は余剰な熱を放出するために発汗が促進されます。
さらに、免疫細胞から放出されるインターロイキンやサイトカインといった物質も、発汗や倦怠感などの全身症状に関与しています。風邪のときの汗は、単なる暑さによる汗ではなく、体が感染と戦う過程で生じる生理的な現象なのです。
💊 発熱と発汗の仕組みをもっと詳しく
体温調節は、脳の視床下部が中枢となって行われています。通常、人間の体温は36〜37℃前後に保たれています。これは、体内の酵素が最も効率よく働き、代謝が正常に行われる温度帯です。
ウイルスが体内に入ると、白血球などの免疫細胞がウイルスを認識し、「発熱物質(パイロゲン)」を産生します。外因性パイロゲンとしてはウイルスそのものが、内因性パイロゲンとしてはインターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-6(IL-6)、腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカインが代表的です。
これらの物質が視床下部に作用し、プロスタグランジンE2(PGE2)の産生を促します。PGE2が視床下部の体温セットポイントを引き上げると、体は「今の体温は設定より低い」と判断し、熱産生を増加させます。筋肉が震える(悪寒・シバリング)ことで熱を作り出し、皮膚の血管を収縮させて熱が外に逃げるのを防ぎます。
この段階では汗はほとんど出ません。しかし、免疫系がウイルスをある程度制圧してセットポイントが下がると、今度は体温が設定より高くなった状態になります。すると今度は熱を放散させるべく、皮膚の血管を拡張させて血流を増やし、汗腺から汗を出して気化熱で体温を下げようとします。これが「解熱の汗」です。
解熱剤(アスピリン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなど)は、プロスタグランジンの産生を抑えることでセットポイントを下げる働きをします。解熱剤を飲んだあとに汗が出るのも、同じメカニズムによるものです。
つまり、風邪のときの発汗は「体が熱を下げようとしている証拠」であり、回復へと向かっているサインとも言えます。ただし、これはあくまで体温調節の結果として生じる現象であって、汗をかくこと自体が回復を促進するわけではない点に注意が必要です。
Q. 汗をかくとウイルスが体外に排出されますか?
汗によるウイルスの排出はほとんどありません。汗の成分は水分・ナトリウムなどの電解質・乳酸・尿素などであり、ウイルスが汗を通じて体外に出ることはないとされています。「汗をかけば治る」は医学的に正確ではなく、治りかけているから汗が出るという順序が正しい理解です。

🏥 「汗をかけば風邪が治る」は本当か
「風邪は汗をかけば治る」という言葉は、昔からよく使われてきました。しかし、この考え方は医学的には正確ではありません。少し詳しく説明しましょう。
先ほど述べた通り、解熱時に出る汗は「体が回復しつつある証拠」です。したがって、汗をかき始めたということは、免疫系がウイルスをある程度制圧し、体温が下がり始めていることを意味します。この関係性が「汗をかくと治る」という印象につながっているのだと考えられます。
しかし、汗をかくこと自体がウイルスを排除するわけではありません。風邪の回復に必要なのは、免疫系がウイルスと戦い、ウイルスを無力化することです。その過程で体温が上がり、結果として汗をかくのです。「汗をかいたから治った」のではなく、「治りかけているから汗が出た」という方が正確です。
また、汗をかくことでウイルスが体外に排出されるわけでもありません。汗の成分は水分・塩分(ナトリウム、クロール)・微量のミネラル・乳酸・尿素などであり、ウイルスが汗を通じて体外に出ることはほとんどないとされています。
よく「サウナに入れば風邪が治る」「温かいお風呂で汗をかけばよい」という話も聞きますが、これも科学的な根拠は乏しく、むしろ体力を消耗させたり、脱水を招くリスクがあります。風邪の回復に最も重要なのは、安静にして体の免疫機能を全力でウイルスと戦わせることです。
ただし、発熱中に厚着をして温めることで解熱を助けるという考え方には一定の根拠があります。熱が出ている間は体がウイルスの増殖を抑えるために積極的に体温を上げているため、その状態を急激に冷ますことが必ずしも良いとは言えない側面もあります。一方で、高熱が続くと体力を消耗し、体への負担が大きくなるため、高熱時には適切に解熱することも重要です。
⚠️ 汗をかくことで失われるものと脱水のリスク
風邪のときに汗をかくと、体から大量の水分と電解質(ミネラル)が失われます。これは体にとって大きな負担となり、適切に補充されない場合は脱水症状に陥る可能性があります。
発汗によって失われる主な成分は以下の通りです。まず水分については、体温が1℃上昇するごとに不感蒸泄(皮膚や呼吸からの水分蒸発)が約10〜15%増加するとされており、発熱中はただじっとしているだけでも通常より多くの水分を失います。そこに発汗が加わると、1時間あたり数百ミリリットルもの水分が失われることがあります。
次に電解質については、汗にはナトリウム(塩分)、カリウム、マグネシウムなどのミネラルが含まれています。これらが不足すると、筋肉のけいれん、倦怠感の増強、頭痛、不整脈などを引き起こす可能性があります。
脱水になるとさらに風邪の回復が遅くなります。体内の水分が不足すると、血液の循環が悪くなり、免疫細胞が体内を効率よく巡回できなくなります。また、粘膜が乾燥すると、ウイルスを外部に排出するための繊毛運動が低下し、感染がさらに悪化する場合もあります。
特に注意が必要なのは、高齢者と小さなお子さんです。高齢者は体内の水分量が若い人より少なく、のどの渇きを感じにくいため、気づかないうちに脱水が進む場合があります。乳幼児は体重あたりの体表面積が大きく、発汗による水分損失の割合が相対的に大きいため、より早く脱水になりやすい傾向があります。
脱水のサインとしては、口や唇の乾燥、尿量の減少や尿の色が濃くなる、目がくぼんで見える、皮膚を引っ張ってもすぐに戻らない、ぐったりして反応が悪い、などがあります。これらの症状が現れた場合は、速やかに水分補給を行い、症状が改善しない場合は医療機関を受診してください。
🔍 風邪のときに汗をかいたらどうすればよいか
風邪をひいて汗をかいたときは、以下の対処を心がけましょう。
まず、水分補給が最優先です。汗で失った水分をこまめに補給することが非常に重要です。水やお茶だけでなく、経口補水液やスポーツドリンク(薄めたもの)を使うと、水分とともに電解質も補給できます。一度に大量に飲もうとすると胃腸に負担がかかることがあるため、少量ずつこまめに飲むことをおすすめします。
熱いものや冷たすぎるものは胃腸を刺激することがあるため、常温か少し温かい程度の飲み物が適しています。カフェインを含む飲み物(コーヒー、濃いお茶など)は利尿作用があるため、水分補給には不向きです。アルコールは免疫機能を低下させ、脱水を促進するため、風邪のときは絶対に避けてください。
次に、汗をかいたあとは体を清潔に保つことが大切です。汗をかいたまま放置すると、皮膚の雑菌が繁殖して皮膚トラブルの原因になったり、汗が蒸発する際に体が冷えすぎてしまうことがあります。タオルで軽く拭いて汗を取り、できれば着替えをしましょう。清潔な肌着に着替えることで体が冷えすぎるのを防ぎながら、快適な状態を保てます。
入浴については、体力が十分にあり、微熱程度であれば短時間のシャワーは問題ありません。ただし、高熱が続いているときや、ふらつきを感じるときは入浴を避け、体を拭くだけにしておきましょう。入浴後は体が冷えないようにすぐに服を着て、安静にしてください。
寝具についても適切な管理が必要です。汗でびっしょりになった布団や枕カバーは、できるだけ早めに交換しましょう。湿った布団の中にいると体が冷えやすく、また雑菌が繁殖しやすい環境になります。予備の枕カバーや布団を用意しておくと便利です。
室温と湿度の管理も重要です。部屋が乾燥すると粘膜が乾きやすく、ウイルスへの抵抗力が低下します。加湿器を使って湿度を50〜60%程度に保つようにしましょう。室温は夏場であれば26〜28℃、冬場であれば22〜24℃程度が目安です。
Q. 風邪で汗をかいたあとに脱水を防ぐ方法は?
風邪で汗をかいたあとは、経口補水液や薄めたスポーツドリンクを少量ずつこまめに飲み、水分と電解質を同時に補給することが重要です。カフェインやアルコールは脱水を促進するため避けてください。高齢者や乳幼児は脱水が急速に進みやすいため、特に注意が必要です。
📝 無理に汗をかかせることの危険性
「風邪は汗をかいて治す」という民間療法的な考えから、厚着をして布団を何枚も重ねたり、熱いお風呂やサウナに入ったりして意図的に大量の汗をかこうとする方がいます。しかしこの方法は、場合によって非常に危険です。
まず、すでに述べたように汗をかくこと自体がウイルスを排除するわけではないため、そもそも治療効果が期待できません。それどころか、意図的に大量の汗をかかせることで、以下のようなリスクが生じます。
脱水症状については、特に子どもや高齢者では急速に重篤な脱水に陥る危険があります。体力を消耗することについては、発熱しているときに無理に汗をかかせると、体はさらに体力を消耗します。体がウイルスと戦うためのエネルギーが枯渇してしまうと、免疫機能が低下して逆に回復が遅れることもあります。
熱中症様の状態についても注意が必要です。高熱の状態で厚着をして体温をさらに上げようとすることは、体温が危険なレベルまで上昇するリスクがあります。特に小さな子どもでは、過度な保温による熱中症様の状態が起こる可能性があります。
心臓や血管への負担についても考慮が必要で、発熱中のサウナ入浴は心拍数の急上昇や血圧変動を引き起こし、心臓や血管に大きな負担をかけます。基礎疾患のある方は特に危険です。
「汗をかく」という行為ではなく、「体が自然に汗をかける状態を整える」ことが重要です。無理に汗をかかせるのではなく、安静・水分補給・適切な保温と冷却のバランスを意識した対応が、風邪の回復には最善です。
💡 汗をかきやすい環境づくりと注意点
「無理に汗をかかせない」ということと、「自然な発汗をサポートする環境を整える」ことは別の話です。後者については、回復を助ける意味で有益な場合があります。
適切な保温については、悪寒(寒気)がある段階では、体が熱を作り出そうとしているため、適度に温かくすることが大切です。ただし、過度に厚着をしたり電気毛布などで体温を強制的に上げることは避けましょう。体が「ちょうど良い」と感じる程度に温かくすることが基本です。
熱が下がり始めて汗をかいてきたら、今度は過度に温めすぎることのないよう注意が必要です。汗をかいているのに布団を何枚も重ねていては、体が熱を放散できず、体温が下がりにくくなります。汗をかき始めたら、掛け布団を1枚減らすなど、体が自然に放熱できるよう調整しましょう。
生姜湯やハーブティーなどの温かい飲み物を摂ることで、体が温まり自然な発汗を促す場合があります。生姜には血行を促進する成分(ショウガオール、ジンゲロール)が含まれており、体を温める効果が期待できます。ただし、あくまで補助的なものであり、これだけで風邪が治るわけではありません。
部屋の温度が低すぎると体が冷えて体力を消耗するため、特に冬場は適切な室温を維持することが大切です。一方で、温めすぎると粘膜が乾燥するため、加湿器を併用しながら快適な環境を整えましょう。
食事については、消化の良いものを少量ずつ食べることをおすすめします。お粥、うどん、スープなどは水分と栄養を同時に摂れるため風邪のときに適した食べ物です。食欲がない場合は無理に食べる必要はありませんが、長期間食事が摂れない場合は体力が低下し回復が遅くなるため、少しでも食べられるものを摂るようにしましょう。
Q. 風邪で病院を受診すべき症状の目安は?
39℃以上の高熱が3日以上続く場合、呼吸困難や胸の痛みがある場合、口の著しい乾燥・尿量減少など脱水のサインがある場合、1週間以上症状が改善しない場合は速やかに医療機関を受診してください。乳幼児・高齢者・基礎疾患のある方は重症化しやすいため、早めの受診が推奨されます。

✨ 汗をかいたあとの体のケア方法
風邪で大量に汗をかいたあとは、適切なケアを行うことで体の回復を助けることができます。具体的なケアの方法をご紹介します。
体を拭くことについては、汗を拭き取るときは温かいタオルや濡れタオルをしっかり絞ったもので優しく拭きましょう。冷たいタオルで急激に体を冷やすと、体が再度体温を上げようとして悪寒が起こることがあります。ぬるま湯で絞ったタオルが最も適しています。
着替えについては、汗で濡れた衣類はすぐに着替えることが大切です。濡れた服を着たままでいると、汗が蒸発する際に体温が急激に下がり、体力を消耗します。吸湿性の高い綿素材の下着を選ぶと、汗を素早く吸い取ってくれるため快適です。
水分・電解質の補給については、先述の通り最も重要なケアです。経口補水液が最も効率よく水分と電解質を補給できますが、手元にない場合はスポーツドリンクを水で薄めたものや、少量の塩を加えた薄い砂糖水でも代用できます。飲みやすい温度のものをゆっくりと飲むようにしてください。
睡眠と安静については、体の回復において睡眠は非常に重要な役割を担っています。睡眠中は成長ホルモンが分泌され、免疫細胞の活動も活発になります。できるだけ体を動かさず、横になって体を休めることが最善の回復策です。
スキンケアについては、汗をかいたあとは肌が乾燥しやすくなります。汗を拭いたあと、保湿ローションや乳液を薄く塗っておくと、皮膚の乾燥による痒みなどを防ぐことができます。ただし、発熱中は肌が敏感になっていることもあるため、刺激の少ないシンプルなものを選びましょう。
口腔ケアについても忘れずに行いましょう。発熱や発汗で脱水になると唾液の分泌が減り、口腔内が乾燥します。乾燥した口の中は細菌が繁殖しやすくなるため、こまめに水を飲んで口腔内を潤すとともに、歯磨きを丁寧に行うことで口腔内の清潔を保つようにしましょう。
📌 病院に行くべき症状の目安
多くの風邪は1週間前後で自然に回復しますが、以下のような症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診することをおすすめします。
まず、高熱が続く場合です。成人で39℃以上の高熱が3日以上続く場合は、インフルエンザや細菌性の感染症、その他の疾患の可能性があります。また、38℃台であっても解熱剤が全く効かない場合も受診を検討してください。
次に、呼吸困難や胸の痛みが現れた場合です。息が苦しい、呼吸のたびに胸が痛む、などの症状は肺炎や他の重篤な疾患のサインである可能性があります。これらの症状が現れた場合は、速やかに受診してください。
脱水症状のサインが現れた場合も受診が必要です。口の中が著しく乾く、尿が出ない、ぐったりしている、意識が朦朧としているなどの症状は重度の脱水のサインです。口から十分に水分が摂れない場合も、点滴などの対応が必要になることがあります。
症状が長引く場合についても注意が必要です。1週間以上経っても症状が改善しない、または悪化している場合は受診を検討しましょう。特に咳が長引く場合は、マイコプラズマ肺炎や百日咳、あるいは喘息などの可能性もあります。
特定の症状が現れた場合は注意が必要です。激しい頭痛や首の硬直(髄膜炎の可能性)、皮膚に赤い点状の出血(点状出血)、強い腹痛、嘔吐・下痢が激しい場合などは、単純な風邪以外の疾患が疑われます。
子どもの場合は特に注意が必要です。生後3ヶ月未満の赤ちゃんが38℃以上の熱を出した場合は、すぐに受診してください。また、ぐったりして哺乳量が極端に減った、痙攣(けいれん)が起きた、皮膚の色が青白い・紫色になっているなどの場合は緊急を要するサインです。
基礎疾患のある方(糖尿病、心疾患、腎疾患、免疫抑制状態など)は、風邪が重篤化しやすいため、早めに医療機関に相談することをおすすめします。また、インフルエンザやコロナウイルス感染症が疑われる場合は、抗ウイルス薬の投与が有効なことがあるため、早期の受診が重要です。
受診の際には、発熱の経過(いつから、最高体温は何度か)、その他の症状(咳・鼻水・喉の痛みなど)、水分が摂れているかどうか、基礎疾患の有無と使用中の薬、周囲で同様の症状の人がいるかどうかを医師に伝えると、診断の助けになります。

👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「当院では、風邪の診察の際に「汗をかかせれば治る」と信じて、厚着や熱いお風呂で無理に発汗させようとした結果、脱水状態が悪化して来院される患者様が一定数いらっしゃいます。汗をかくことは回復のサインではありますが、あくまで体温調節の結果として起こる生理現象であり、汗をかくこと自体がウイルスを排除するわけではありませんので、まずは安静・水分補給・適切な保温を最優先にお考えください。特に高齢の方やお子さんは脱水が急速に進むこともあるため、汗をかいたあとはこまめな水分・電解質の補給を心がけ、症状が長引いたり高熱が続くようであれば、どうぞ早めにご相談ください。」
🎯 よくある質問
風邪の際の発汗は、主に「解熱期」に起こります。ウイルスへの免疫反応で上昇した体温が下がり始めるとき、体が余分な熱を放散しようとして汗腺が開き、大量の汗が出ます。これは体温調節の自然な生理現象であり、免疫系がウイルスをある程度制圧しつつある回復のサインでもあります。
医学的には正確ではありません。汗をかくのは「治りかけているから」起こる結果であり、汗をかくこと自体がウイルスを排除したり回復を直接促進するわけではありません。また、汗にウイルスが含まれて体外に排出されることもほとんどないため、無理に汗をかかせようとするのは避けましょう。
最優先は水分・電解質の補給です。汗で失われた水分と塩分などのミネラルを補うため、経口補水液やスポーツドリンク(薄めたもの)を少量ずつこまめに飲みましょう。あわせて、濡れた衣類をすぐに着替えて体の冷えを防ぎ、清潔な状態でゆっくり安静にすることが大切です。
危険です。無理に発汗させると、脱水症状や体力の消耗を招き、免疫機能が低下して回復が遅れるリスクがあります。また、体温が危険なレベルまで上昇したり、心臓や血管に大きな負担をかけることもあります。当院でも、無理な発汗により脱水が悪化して来院される患者様が一定数いらっしゃいます。
以下の場合は速やかに医療機関を受診してください。①39℃以上の高熱が3日以上続く、②呼吸困難や胸の痛みがある、③口が著しく乾く・尿が出ないなど脱水のサインがある、④1週間以上症状が改善しない。乳幼児・高齢者・基礎疾患のある方は特に重症化しやすいため、早めの受診をおすすめします。
📋 まとめ
風邪をひいたときに汗をかくのは、体がウイルスと戦う中で行う体温調節の一環として起こる自然な生理現象です。特に解熱のタイミングで大量の汗が出るのは、体が回復に向かっているサインでもあります。
「汗をかけば風邪が治る」という考えは科学的には正確ではなく、汗をかくこと自体がウイルスを排除したり、回復を直接促進するわけではありません。むしろ、無理に汗をかかせようとすることで脱水や体力消耗を招き、回復が遅れるリスクがあります。
風邪からの回復に大切なのは、安静・十分な水分と電解質の補給・適切な栄養摂取・適度な保温です。汗をかいたあとは、体を拭いて着替え、水分を補給し、ゆっくり休むことが最善のケアです。
また、高熱が続く、呼吸困難がある、脱水が疑われる、症状が長引くなどの場合は、自己判断せずに医療機関を受診するようにしてください。特に乳幼児・高齢者・基礎疾患のある方は、早めの受診を心がけることが大切です。
風邪のときの体の反応を正しく理解することで、適切なセルフケアと、受診が必要なタイミングの判断ができるようになります。体が発する自然なサインに耳を傾けながら、無理をせずにしっかり休養を取ることが、一番の回復への近道です。
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📚 参考文献
- 厚生労働省 – 風邪(急性上気道炎)の基本情報、ウイルス性感染症に対する抗菌薬の適正使用、発熱時の対処法および水分補給・安静などのセルフケアに関する公式見解の参照
- 国立感染症研究所 – ライノウイルス・コロナウイルス・RSウイルスなど風邪の原因ウイルスの種類と特徴、感染症としての急性上気道炎の疫学的情報、免疫応答(サイトカイン・インターロイキン)に関する科学的知見の参照
- PubMed – 発熱メカニズム(プロスタグランジンE2・視床下部体温セットポイント)、発汗と体温調節の生理学的プロセス、解熱剤(アセトアミノフェン・イブプロフェン)の作用機序、脱水リスクおよび電解質喪失に関する査読済み医学文献の参照
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務