はじめに
女性の陰部(デリケートゾーン)のかゆみは、多くの女性が経験する一般的な悩みです。しかし、場所が場所だけに、誰かに相談しづらく、一人で悩んでいる方も少なくありません。陰部のかゆみは、軽微なものから、適切な治療が必要な疾患まで、さまざまな原因によって引き起こされます。
本記事では、女性の陰部のかゆみについて、その原因、症状、診断方法、治療法、そして日常生活での予防法まで、医学的な観点から詳しく解説します。デリケートな悩みだからこそ、正しい知識を身につけて、適切に対処することが大切です。
陰部のかゆみとは
陰部のかゆみとは、外陰部(大陰唇、小陰唇、陰核周辺)や膣の入り口付近に感じる不快な掻きたい感覚のことを指します。医学的には「外陰部掻痒症(がいいんぶそうようしょう)」と呼ばれることもあります。
かゆみの程度は人によってさまざまで、軽い違和感程度のものから、夜眠れないほどの強いかゆみまで幅広くあります。また、かゆみだけでなく、灼熱感、ヒリヒリ感、痛みなどを伴うこともあります。
かゆみが起こるメカニズム
皮膚や粘膜には、かゆみを感じる神経終末が分布しています。何らかの刺激や炎症が起こると、ヒスタミンなどの化学物質が放出され、これらの神経を刺激することでかゆみを感じます。陰部は皮膚が薄く、粘膜組織も多いため、刺激に対して敏感に反応しやすい部位です。
陰部のかゆみの主な原因
女性の陰部のかゆみには、多様な原因があります。ここでは、代表的な原因について詳しく解説します。
1. 外陰膣カンジダ症
外陰膣カンジダ症は、女性の陰部のかゆみの最も一般的な原因の一つです。カンジダ・アルビカンスという真菌(カビの一種)が異常増殖することで発症します。
特徴的な症状:
- 強いかゆみ(特に夜間に悪化することが多い)
- 白色の酒かす状・カッテージチーズ状のおりもの
- 外陰部の発赤、腫れ
- 性交時の痛み
- 排尿時の痛み
発症しやすい状況:
- 抗生物質の使用後(膣内の正常な細菌叢が乱れるため)
- 妊娠中(ホルモンバランスの変化)
- 糖尿病がある場合
- 免疫力が低下している時
- ストレスや疲労が溜まっている時
- 高温多湿の環境
カンジダは、もともと膣内に常在している菌ですが、何らかの原因で膣内環境のバランスが崩れると異常増殖します。日本産科婦人科学会によると、約75%の女性が生涯に一度は経験するとされており、非常に一般的な疾患です。
2. 細菌性膣症
細菌性膣症は、膣内の正常な細菌叢のバランスが崩れることで発症します。通常、膣内は乳酸菌(ラクトバチルス)が優勢で酸性に保たれていますが、この環境が乱れると、他の細菌が異常増殖します。
特徴的な症状:
- 魚の腐ったような悪臭のあるおりもの
- 灰色がかったおりもの
- 軽度から中等度のかゆみ
- 性交後に臭いが強くなる
- 排尿時の違和感
リスク要因:
- 頻繁な膣洗浄(ビデなど)
- 新しい性的パートナー、複数のパートナー
- 喫煙
- 月経
細菌性膣症は性感染症ではありませんが、放置すると骨盤内炎症性疾患のリスクを高める可能性があります。
3. トリコモナス膣炎
トリコモナス原虫という寄生虫によって引き起こされる性感染症です。性行為を通じて感染しますが、感染しても症状が出ない場合もあります。
特徴的な症状:
- 強いかゆみと不快感
- 黄緑色で泡状のおりもの
- 悪臭を伴うおりもの
- 外陰部の発赤と腫れ
- 性交時・排尿時の痛み
トリコモナス膣炎は、パートナーの治療も同時に行う必要がある感染症です。適切な治療を受けないと、炎症が続き、他の性感染症のリスクも高まります。
4. 接触皮膚炎(かぶれ)
化学物質や物理的刺激によって引き起こされる皮膚の炎症反応です。陰部は皮膚が薄く敏感なため、さまざまな物質に反応しやすい部位です。
原因となる物質:
- 生理用ナプキン、タンポン
- おりものシート
- 避妊具(ラテックス、殺精子剤)
- 洗剤、柔軟剤(下着に残った成分)
- ボディソープ、石鹸
- 膣洗浄剤
- 香料入りのトイレットペーパー
- 制汗剤、デオドラント製品
- 脱毛クリーム
- 特定の衣類の素材(化学繊維など)
症状:
- かゆみ
- 発赤
- ヒリヒリ感、灼熱感
- 水疱、湿疹
- 皮膚の乾燥、剥離
接触皮膚炎は、原因物質を特定して避けることで改善します。
5. 萎縮性膣炎(閉経後膣炎)
閉経後、エストロゲン(女性ホルモン)の分泌が減少することで膣粘膜が薄くなり、乾燥して炎症を起こしやすくなる状態です。
特徴的な症状:
- かゆみ
- 膣の乾燥感
- 性交時の痛み
- 軽度の出血
- 頻尿、尿漏れ
- 再発性の尿路感染症
萎縮性膣炎は、閉経後の女性の約50%が経験するとされています。また、授乳中や卵巣摘出後など、エストロゲンが低下する状況でも起こり得ます。
6. 外陰部硬化性苔癬
外陰部硬化性苔癬は、外陰部の皮膚が白く硬くなる慢性的な皮膚疾患です。原因は完全には解明されていませんが、自己免疫的なメカニズムが関与していると考えられています。
症状:
- 強いかゆみ
- 皮膚の白色変化
- 皮膚の菲薄化、しわの消失
- 皮膚の硬化
- 亀裂、出血
- 性交時の痛み
閉経後の女性に多く見られますが、若い女性や子どもにも発症することがあります。適切な治療を受けないと、陰部の構造が変形する可能性があります。
7. その他の皮膚疾患
陰部にも、身体の他の部位と同様に、さまざまな皮膚疾患が発症する可能性があります。
湿疹・皮膚炎: アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎などが陰部に現れることがあります。
乾癬: 銀白色の鱗屑を伴う紅斑が特徴ですが、陰部では鱗屑が目立たないこともあります。
扁平苔癬: 紫紅色の丘疹が特徴的な炎症性疾患で、陰部に発症することもあります。
8. 寄生虫
毛じらみ: 陰毛に寄生する寄生虫で、性的接触によって感染します。強いかゆみが特徴で、下着に黒い点(毛じらみの糞)が付着します。
疥癬: ヒゼンダニという小さなダニが皮膚に寄生する感染症で、陰部を含む全身にかゆみが生じます。
9. 尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルス(HPV)の一部の型によって引き起こされる性感染症です。外陰部にカリフラワー状のイボができ、かゆみや違和感を伴うことがあります。
10. 糖尿病
糖尿病があると、高血糖によって免疫機能が低下し、カンジダ感染症を含む様々な感染症にかかりやすくなります。また、神経障害によってかゆみを感じやすくなることもあります。
11. 心因性のかゆみ
明らかな身体的な異常が見つからないにもかかわらず、かゆみが続く場合があります。ストレス、不安、うつなどの心理的要因が関与している可能性があります。
症状の特徴と見分け方
陰部のかゆみは、原因によって伴う症状が異なります。以下の表で主な疾患の症状を比較してみましょう。
| 疾患 | かゆみの程度 | おりものの特徴 | その他の症状 |
|---|---|---|---|
| カンジダ症 | 強い | 白色、酒かす状 | 外陰部の発赤・腫れ |
| 細菌性膣症 | 軽度〜中等度 | 灰色、魚臭 | 悪臭が特徴的 |
| トリコモナス膣炎 | 強い | 黄緑色、泡状 | 悪臭、外陰部の炎症 |
| 接触皮膚炎 | 中等度〜強い | 変化なし | 発赤、ヒリヒリ感 |
| 萎縮性膣炎 | 軽度〜中等度 | 少量または血性 | 乾燥感、性交痛 |
| 外陰部硬化性苔癬 | 強い | 変化なし | 皮膚の白色化、硬化 |
ただし、これらの症状は個人差が大きく、また複数の原因が重なっている場合もあります。自己判断せず、医療機関での正確な診断が重要です。
かゆみに伴う危険なサイン
以下のような症状がある場合は、早急に医療機関を受診してください。
- 激しいかゆみが1週間以上続く
- かゆみとともに発熱がある
- 異常なおりもの(悪臭、血液混じり、大量)
- 外陰部の痛み、腫れ、しこり
- 排尿時の強い痛みや血尿
- 下腹部の痛み
- 性交後の出血
- 皮膚の潰瘍や白色変化
- 妊娠中のかゆみ
これらの症状は、重篤な感染症や他の疾患の可能性を示唆しています。
診断方法
陰部のかゆみの診断には、以下のような検査が行われます。
1. 問診
医師は以下のような質問をします:
- かゆみが始まった時期
- かゆみの程度と場所
- おりものの変化
- 性交渉の有無とパートナーの症状
- 使用している製品(ナプキン、石鹸など)
- 過去の病歴、現在服用している薬
- 月経周期との関連
- 悪化する状況
恥ずかしがらずに、できるだけ詳しく症状を伝えることが正確な診断につながります。
2. 視診
外陰部の発赤、腫れ、皮疹、色素変化、潰瘍などを観察します。
3. 内診
膣鏡を使用して、膣内の状態を観察します。
4. おりものの検査
膣分泌物を採取し、以下の検査を行います:
- 顕微鏡検査:カンジダの菌糸、トリコモナス原虫、白血球の有無などを確認
- pH測定:正常な膣内は酸性(pH 3.8〜4.5)、細菌性膣症ではアルカリ性に傾く
- 培養検査:原因菌を特定
- 核酸増幅法(PCR検査):性感染症の病原体を高感度に検出
5. その他の検査
必要に応じて以下の検査が行われることがあります:
- 血液検査:糖尿病、性感染症の検査
- 皮膚生検:外陰部硬化性苔癬などの診断
- パッチテスト:接触皮膚炎の原因物質の特定
治療法
陰部のかゆみの治療は、原因によって異なります。
1. カンジダ症の治療
抗真菌薬:
- 膣錠(クロトリマゾール、ミコナゾールなど)を膣内に挿入
- 抗真菌クリームを外陰部に塗布
- 重症例や再発を繰り返す場合は内服薬(フルコナゾールなど)
治療期間は通常1〜7日間で、多くの場合、数日で症状が改善します。ただし、症状が消失しても処方された薬は最後まで使用することが重要です。
再発予防: カンジダ症は再発しやすいため、以下の予防策が推奨されます:
- 通気性の良い下着を着用
- スキニージーンズなど締め付ける衣服を避ける
- 抗生物質使用時は予防的に抗真菌薬を使用(医師と相談)
- 免疫力を維持する生活習慣
2. 細菌性膣症の治療
抗生物質:
- メトロニダゾール(内服または膣錠)
- クリンダマイシン(クリームまたは内服)
治療期間は5〜7日間です。治療中と治療後24時間はアルコール摂取を避ける必要があります(メトロニダゾールの場合)。
症状がなくても治療を完了することが重要です。パートナーの治療は通常不要ですが、症状がある場合は受診を勧めます。
3. トリコモナス膣炎の治療
メトロニダゾールまたはチニダゾール:
- 単回大量投与または7日間の内服治療
トリコモナス膣炎は性感染症なので、性的パートナーも同時に治療を受ける必要があります。治療が完了するまで性交渉は控えてください。
4. 接触皮膚炎の治療
原因物質の特定と除去: 最も重要なのは、かゆみの原因となっている物質を特定し、接触を避けることです。
ステロイド外用薬: 炎症を抑えるために、弱めのステロイド軟膏を短期間使用します。陰部の皮膚は薄いため、強いステロイドは避け、医師の指示通りに使用してください。
保湿: 乾燥が原因の場合は、保湿剤を使用します。
5. 萎縮性膣炎の治療
エストロゲン補充療法:
- 膣用エストロゲンクリーム、錠剤、リング
- 全身的なホルモン補充療法(HRT)
局所的なエストロゲン治療は、全身への影響が少なく、効果的です。
保湿剤・潤滑剤: エストロゲン治療ができない場合や補助的に使用します。
6. 外陰部硬化性苔癬の治療
強力なステロイド外用薬: プロピオン酸クロベタゾールなどの強力なステロイド軟膏を使用します。最初は毎日塗布し、症状が改善したら徐々に減量します。
長期管理: この疾患は慢性的なので、定期的な経過観察と維持療法が必要です。
7. 対症療法
抗ヒスタミン薬: かゆみを和らげるために内服します。眠気を催すものもあるため、就寝前の服用が効果的です。
冷却: 冷たいタオルやアイスパックを当てることで、一時的にかゆみが和らぎます。
外用薬: 非ステロイド性の抗炎症クリーム、局所麻酔薬入りの軟膏などが使用されることがあります。
セルフケアと予防法
陰部のかゆみを予防し、症状を悪化させないためのセルフケアについて解説します。
1. 適切な洗浄方法
基本原則:
- ぬるま湯で優しく洗う
- 強くこすらない
- 石鹸は外陰部のみに使用し、膣内は洗わない
- 洗浄後はしっかり乾かす
推奨される方法: 陰部は自浄作用があるため、基本的にぬるま湯で洗うだけで十分です。石鹸を使う場合は、低刺激性、無香料のものを選び、外陰部のみに使用してください。膣内洗浄(ビデ)は、膣内の正常な細菌叢を乱すため、日常的に行うべきではありません。
避けるべきこと:
- 香料入りの石鹸やボディソープ
- 膣洗浄剤の常用
- スポンジやタオルでのゴシゴシ洗い
- 熱いお湯での洗浄
2. 下着の選び方
推奨:
- 綿100%の下着
- ゆったりとしたデザイン
- 白色または淡色(染料刺激を避ける)
避けるべきもの:
- 化学繊維(ナイロン、ポリエステル)
- Gストリングなど摩擦の多いデザイン
- きつい下着
通気性の良い綿の下着は、湿気を吸収し、蒸れを防ぎます。また、下着は毎日交換し、洗濯時は刺激の少ない洗剤を使用してください。
3. 生理用品の使い方
ナプキンやタンポン:
- こまめに交換する(2〜3時間ごと)
- 無香料のものを選ぶ
- 敏感肌用の製品を試す
- 布ナプキンや月経カップも選択肢
おりものシート: 常用は避け、必要な時のみ使用してください。長時間の使用は蒸れの原因となります。
4. 衣類の選択
推奨:
- ゆったりとしたズボンやスカート
- 通気性の良い素材
- 吸湿性のある天然繊維
避けるべきもの:
- スキニージーンズ、レギンスの長時間着用
- 化学繊維のタイツやストッキングの常用
- 濡れた水着やスポーツウェアの長時間着用
5. 生活習慣
食生活:
- バランスの取れた食事
- ヨーグルトなどのプロバイオティクス摂取(膣内細菌叢の維持)
- 砂糖の過剰摂取を控える(カンジダの増殖を抑制)
- 十分な水分摂取
睡眠とストレス管理: 十分な睡眠と適度な運動、ストレス管理は、免疫力を維持し、感染症の予防につながります。
体重管理: 肥満は、皮膚のひだの部分に湿気がこもりやすく、感染症のリスクを高めます。
6. 性生活
安全な性行為:
- コンドームの使用(性感染症予防)
- 性行為前後の清潔
- 潤滑剤の使用(摩擦による刺激を軽減)
- 無理な性行為の回避
パートナーの衛生: パートナーの陰部の清潔も重要です。性行為の前後にシャワーを浴びることをお勧めします。
7. 医薬品の使用
抗生物質使用時: 抗生物質は膣内の正常な細菌叢を乱し、カンジダ症のリスクを高めます。医師に相談し、必要に応じて予防的に抗真菌薬を使用することも検討してください。
市販薬の使用: かゆみ止めクリームなどの市販薬を使用する場合は、陰部専用または敏感肌用のものを選んでください。ただし、症状が改善しない場合は速やかに受診してください。
8. やってはいけないこと
- 掻きむしる(皮膚を傷つけ、感染リスクを高める)
- 自己判断で以前処方された薬を使用する
- 民間療法を過信する
- 症状を放置する
いつ医療機関を受診すべきか
以下の場合は、速やかに医療機関を受診してください:
早急な受診が必要な場合:
- 激しいかゆみや痛みがある
- 発熱を伴う
- 異常なおりもの(悪臭、血液混じり、大量)
- 外陰部の腫れ、しこり、潰瘍
- 排尿時の強い痛み
- 妊娠中の症状
通常の受診が推奨される場合:
- 軽度のかゆみが1週間以上続く
- 市販薬で改善しない
- 症状が再発を繰り返す
- 性交渉の後に症状が出る
- 新しい性的パートナーとの関係後
定期的な受診:
- 年に1回の婦人科検診は、症状がなくても推奨されます
- 子宮頸がん検診と合わせて、膣や外陰部の健康チェックも行いましょう
受診する診療科
婦人科: 陰部のかゆみは、まず婦人科を受診するのが適切です。女性特有の疾患に精通しており、適切な診断と治療が受けられます。
皮膚科: 皮膚疾患が疑われる場合は、皮膚科も選択肢です。外陰部硬化性苔癬、湿疹、乾癬などは皮膚科医の専門領域です。
泌尿器科: 排尿時の症状が主である場合は、泌尿器科も考慮されます。
受診時の準備
伝えるべき情報:
- 症状の詳細(いつから、どのような症状か)
- おりものの変化
- 性交渉の有無
- 使用している製品や薬
- 過去の病歴
- 最終月経日
持参すると良いもの:
- 健康保険証
- お薬手帳
- 基礎体温表(記録している場合)
検査に備えて:
- 受診前の過度な洗浄は避ける(正確な診断に影響)
- 月経中でも受診可能ですが、可能であれば避ける

よくある質問(FAQ)
A: 必ずしも性感染症とは限りません。カンジダ症、接触皮膚炎、萎縮性膣炎など、性交渉と関係のない原因も多くあります。ただし、トリコモナス膣炎、ヘルペス、尖圭コンジローマなど、性感染症が原因の場合もあるため、正確な診断が必要です。
A: 軽度のカンジダ症であれば、市販の抗真菌薬で改善することもあります。しかし、正確な診断なしに市販薬を使用すると、症状を悪化させたり、診断を困難にしたりする可能性があります。初めての症状、症状が重い場合、市販薬で改善しない場合は、必ず医療機関を受診してください。
Q3: 生理前になるとかゆみが出るのはなぜですか?
A: 生理前はホルモンバランスの変化により、膣内の環境が変化しやすく、カンジダ症などの感染症が起こりやすくなります。また、生理前症候群(PMS)の一症状として、皮膚の敏感性が増すこともあります。
Q4: 妊娠中のかゆみは赤ちゃんに影響しますか?
A: カンジダ症などの一般的な感染症は、適切に治療すれば赤ちゃんへの影響はほとんどありません。ただし、放置すると早産のリスクを高める場合もあるため、妊娠中の症状は必ず医師に相談してください。妊娠中でも使用できる安全な治療薬があります。
Q5: パートナーも治療が必要ですか?
A: 原因によります。トリコモナス膣炎などの性感染症の場合は、パートナーも同時に治療を受ける必要があります。カンジダ症の場合、男性パートナーに症状があれば治療しますが、症状がなければ通常は不要です。医師の指示に従ってください。
Q6: 再発を繰り返す場合はどうすればいいですか?
A: 年に4回以上カンジダ症を繰り返す場合は「再発性外陰膣カンジダ症」と診断され、長期的な治療戦略が必要です。基礎疾患(糖尿病など)の有無、生活習慣の見直し、予防的な治療などを医師と相談してください。
Q7: デリケートゾーン専用のソープは使うべきですか?
A: 必ずしも必要ではありません。基本的にぬるま湯で洗うだけで十分です。使用する場合は、pH調整された、低刺激性で無香料のものを選んでください。ただし、膣内には使用せず、外陰部のみに使用してください。
Q8: おりものシートは毎日使っても大丈夫ですか?
A: 常用は推奨されません。おりものシートは通気性が悪く、湿度を高めて感染症のリスクを高める可能性があります。必要な時のみ使用し、こまめに交換してください。
まとめ
女性の陰部のかゆみは、決して珍しい症状ではなく、多くの女性が経験します。原因は多岐にわたり、カンジダ症、細菌性膣症、接触皮膚炎、萎縮性膣炎など、さまざまな要因によって引き起こされます。
重要なポイント:
- 正確な診断が重要: 自己判断せず、医療機関で正確な診断を受けることが、適切な治療への第一歩です。
- 早期受診: 症状が軽いうちに受診することで、治療期間が短くなり、合併症のリスクも減らせます。
- 適切なセルフケア: 日常的な清潔習慣、下着の選び方、生活習慣の改善によって、多くの場合、予防や症状の軽減が可能です。
- パートナーとのコミュニケーション: 性感染症が疑われる場合は、パートナーとも情報を共有し、必要に応じて一緒に治療を受けることが大切です。
- 恥ずかしがらない: デリケートな部位の症状だからこそ、専門家である医師に相談することが重要です。婦人科医は日常的にこのような相談を受けており、適切にサポートしてくれます。
陰部のかゆみは、適切な診断と治療によって改善可能な症状です。一人で悩まず、気になる症状があれば、医療機関にご相談ください。
参考文献
- 日本産科婦人科学会「外陰腟カンジダ症」
http://www.jsog.or.jp/ - 日本性感染症学会「性感染症 診断・治療ガイドライン」
http://jssti.umin.jp/ - 厚生労働省「性感染症に関する特定感染症予防指針」
https://www.mhlw.go.jp/ - 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」
https://www.dermatol.or.jp/ - 日本女性医学学会「女性のヘルスケアアドバイスブック」
http://www.jmwh.jp/ - 国立感染症研究所「感染症情報」
https://www.niid.go.jp/
※本記事は医学的情報の提供を目的としており、自己診断や自己治療を推奨するものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務