はじめに
仕事中や会議中、運転中などに突然襲ってくる眠気。誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。コーヒーを飲んだり、冷たい水で顔を洗ったりと、さまざまな眠気覚ましの方法がありますが、実は私たちの体には「ツボ」という自然な眠気覚ましのスイッチが備わっています。
東洋医学では数千年にわたり、体の特定の点を刺激することで心身の不調を改善する方法が実践されてきました。現代においても、ツボ刺激は手軽で副作用の少ない健康法として注目を集めています。特に眠気覚ましにおいては、薬に頼らず、道具も不要で、いつでもどこでも実践できる点が大きな魅力です。
この記事では、アイシークリニック渋谷院が、眠気覚ましに効果的なツボの位置や押し方、そのメカニズムについて、医学的な観点から詳しく解説します。日中の眠気に悩む方、集中力を高めたい方、自然な方法で目を覚ましたい方は、ぜひ参考にしてください。
眠気のメカニズムを理解する
なぜ眠くなるのか
眠気は私たちの体が休息を求めているサインです。脳内では、睡眠と覚醒を調節するさまざまな物質が働いています。
日中の眠気の主な原因として、以下のようなものが挙げられます:
1. 睡眠不足 最も一般的な原因です。成人では通常7〜9時間の睡眠が必要とされていますが、現代社会では多くの人が慢性的な睡眠不足に陥っています。睡眠不足が続くと、「睡眠負債」が蓄積し、日中のパフォーマンスが低下します。
2. 体内時計の影響 人間の体には約24時間周期のリズム「概日リズム」が備わっています。このリズムにより、午後2時〜4時頃と午前2時〜4時頃に眠気のピークが訪れやすくなります。昼食後の眠気は、食事の影響だけでなく、この体内時計の働きも関係しています。
3. 脳内物質の変化 覚醒を維持する神経伝達物質(ヒスタミン、ノルアドレナリン、セロトニンなど)と、睡眠を促す物質(メラトニン、アデノシンなど)のバランスが、眠気と覚醒をコントロールしています。長時間の活動により、覚醒系の物質が減少し、睡眠促進物質が蓄積すると眠気を感じます。
4. 血糖値の変動 食事後、特に炭水化物を多く摂取すると血糖値が急上昇し、その後急降下します。この血糖値の変動が眠気を引き起こすことがあります。
5. 酸素不足 換気の悪い部屋や長時間同じ姿勢でいると、脳への酸素供給が不足し、眠気や集中力の低下を引き起こします。
病的な眠気との違い
通常の眠気と区別すべきなのが、病的な過度の眠気です。以下のような症状がある場合は、医療機関での相談をお勧めします:
- 十分な睡眠をとっているのに日中強い眠気がある
- 居眠りが頻繁で日常生活に支障がある
- いびきがひどい、または睡眠中に呼吸が止まると指摘された
- 突然眠り込んでしまう
- 感情が高ぶったときに体の力が抜ける
これらは睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシーなどの睡眠障害の可能性があります。
ツボ(経穴)の基礎知識
ツボとは何か
ツボ、正式には「経穴(けいけつ)」と呼ばれるものは、東洋医学における重要な概念です。体の表面にある特定の点で、体内の「気(エネルギー)」の流れが集まり、交わる場所とされています。
東洋医学では、体内に「経絡(けいらく)」という気や血液の通り道が張り巡らされていると考えられており、経穴はその経絡上にある重要なポイントです。全身には360以上のツボが存在し、それぞれが特定の臓器や機能と関連しています。
なぜツボを押すと効果があるのか
ツボ刺激が体に影響を与えるメカニズムについては、現代医学でも研究が進められています。主な仮説として以下が挙げられます:
1. 神経反射説 ツボを刺激することで神経が活性化され、脳や内臓に信号が伝わります。これにより自律神経系のバランスが整い、さまざまな生理的反応が引き起こされると考えられています。
2. 血流改善説 ツボ刺激により局所の血流が改善され、酸素や栄養素の供給が促進されます。特に筋肉の緊張が緩和されることで、全身の血行が良くなる効果があります。
3. 内因性オピオイド放出説 ツボ刺激により、体内で自然に生成される鎮痛物質「エンドルフィン」などが放出されることが研究で示されています。これが痛みの軽減や気分の改善につながります。
4. ゲートコントロール理論 特定の刺激が痛みの信号を遮断するという理論です。ツボ刺激による感覚情報が、脳への他の信号伝達を調整すると考えられています。
<a href=”https://www.mhlw.go.jp/”>厚生労働省</a>の統合医療情報サイトでも、鍼灸やツボ療法に関する科学的研究が紹介されており、一定の効果が認められています。
ツボ押しの基本原則
効果的にツボを刺激するためには、以下の基本を押さえることが重要です:
位置の正確性 ツボの位置は個人差がありますが、一般的な目安となる骨や筋肉のランドマークを基準に探します。ツボの周辺を指で探ると、わずかなくぼみや圧痛点が見つかることがあります。
適切な圧力 強すぎる刺激は逆効果です。「痛気持ちいい」程度の圧力が目安です。一般的には、3〜5秒かけてゆっくり押し、同じ時間かけて離すのが効果的です。
呼吸との連動 息を吐きながら押し、吸いながら力を抜くと、リラックスしながら効果的に刺激できます。
継続性 1回だけでなく、数回繰り返すことで効果が高まります。1つのツボにつき5〜10回程度の刺激が目安です。
眠気覚ましに効果的なツボ8選
ここからは、眠気覚ましに特に効果的とされる代表的なツボを、詳しく解説していきます。
1. 百会(ひゃくえ)
位置 頭頂部のほぼ中央にあります。両耳の最も高い点を結んだ線と、鼻筋から頭頂部へ向かう線が交わる場所です。頭頂部を指で探ると、わずかなくぼみを感じられることがあります。
効果 百会は「百の気が会する場所」という意味で、体中の陽気が集まる重要なツボとされています。眠気覚ましだけでなく、頭痛、めまい、耳鳴り、不眠、集中力低下など、頭部に関する多くの症状に効果があるとされています。
特に眠気覚ましにおいては、脳への血流を促進し、頭をスッキリさせる効果が期待できます。また、自律神経のバランスを整える作用もあり、ストレスや疲労による眠気にも有効です。
押し方
- 両手の中指を重ねて百会に当てる
- 息を吐きながら、頭の中心に向かって垂直にやさしく押す
- 3〜5秒押したら、息を吸いながらゆっくり力を抜く
- これを5〜10回繰り返す
頭皮を動かすようなイメージで、やさしく円を描くようにマッサージするのも効果的です。強く押しすぎないよう注意しましょう。
2. 風池(ふうち)
位置 後頭部、首の付け根にあります。首の後ろ、髪の生え際あたりで、左右に大きな筋肉(僧帽筋)があります。その筋肉の外側のくぼみが風池です。耳の後ろの骨(乳様突起)から指2本分内側が目安です。
効果 「風」は邪気を、「池」は集まる場所を意味します。風池は風邪の邪気が侵入する場所として知られ、風邪の初期症状や首こり、肩こり、頭痛に効果的です。
眠気覚ましの観点では、脳への血流を直接改善する位置にあるため、頭をスッキリさせ、眠気を払う効果が高いとされています。特にデスクワークで首や肩が凝っている場合、その緊張を緩和することで眠気も軽減されます。
押し方
- 両手を頭の後ろに回し、親指を風池に当てる
- 残りの指で頭を支えるようにする
- 親指で上向きに押し上げるように刺激する
- 5〜7秒押したら、ゆっくり離す
- 5〜10回繰り返す
頭を後ろに軽く倒しながら押すと、より効果的です。首の付け根から頭蓋骨の方向に向かって押し上げるイメージを持つとよいでしょう。
3. 合谷(ごうこく)
位置 手の甲側、親指と人差し指の骨が交わる部分のやや人差し指側にあります。親指と人差し指の間の水かきから、少し人差し指側の骨沿いを探ると、圧痛を感じる点があります。
効果 合谷は「万能のツボ」とも呼ばれ、さまざまな症状に効果があるとされる重要なツボです。頭痛、歯痛、首や肩のこり、眼精疲労、ストレスなど、幅広い症状に対応します。
眠気覚ましとしては、交感神経を刺激して覚醒レベルを高める効果があります。また、脳への血流を改善し、集中力を高める作用も期待できます。手にあるため、会議中や電車の中でも目立たずに刺激できる点が大きなメリットです。
押し方
- 反対側の親指を合谷に当てる
- 人差し指の骨の下に向かって斜めに押し込む
- やや強めの圧力で、3〜5秒押す
- ゆっくり離す
- 左右それぞれ5〜10回繰り返す
押すだけでなく、円を描くようにマッサージしたり、つまむようにして刺激したりするのも効果的です。痛気持ちいいと感じる程度の強さが適切です。
4. 中衝(ちゅうしょう)
位置 中指の爪の生え際、親指側(外側)の角から2〜3mm下にあります。
効果 中衝は心包経という経絡に属し、心臓や精神活動と関係の深いツボです。意識をはっきりさせる効果があり、緊急時の眠気覚ましや、失神しそうなときの救急処置にも使われることがあります。
眠気覚ましとしては即効性が高く、素早く覚醒レベルを上げることができます。また、精神的な疲労や不安、動悸などにも効果があるとされています。
押し方
- 反対側の親指と人差し指で中指の先端を挟む
- 中衝の位置を爪で押すように刺激する
- やや強めに3〜5秒押す
- これを左右の手で各5〜10回繰り返す
爪楊枝の頭(尖っていない方)やペンのキャップなどで軽く刺激するのも効果的です。ただし、皮膚を傷つけないよう注意しましょう。
5. 労宮(ろうきゅう)
位置 手のひらの中央、手を軽く握ったときに中指の先端が当たる位置にあります。手のひらのやや中指寄りのくぼみです。
効果 労宮は「労働の宮殿」を意味し、疲労回復に効果的なツボとして知られています。心包経に属し、精神を安定させ、ストレスや不安を軽減する効果があります。
眠気覚ましとしては、気血の巡りを良くし、体全体にエネルギーを行き渡らせる作用があります。特に精神的な疲労や緊張による眠気に効果的です。また、手汗を抑える効果もあるため、緊張する場面でも役立ちます。
押し方
- 反対側の親指を労宮に当てる
- 手のひらの中心に向かって垂直に押す
- 3〜5秒間、やや強めに押す
- ゆっくり離す
- 左右それぞれ5〜10回繰り返す
円を描くようにマッサージしたり、ゴルフボールなどを手のひらで転がしたりするのも効果的です。
6. 晴明(せいめい)
位置 目頭の少し上、鼻の付け根にあります。左右の目頭と鼻の骨の間のくぼみです。
効果 晴明は「明るく晴れやかな目」を意味し、眼精疲労や目のかすみ、充血など、目に関する症状に特に効果的なツボです。
眠気覚ましとしては、目の周りの血行を促進し、眼精疲労を軽減することで、頭をスッキリさせる効果があります。長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用による目の疲れからくる眠気に特に有効です。
押し方
- 親指と人差し指で鼻の付け根を挟むようにつまむ
- 上向きに軽く押し上げる
- 3〜5秒押したら、ゆっくり離す
- 5〜10回繰り返す
強く押しすぎると目に負担がかかるので、やさしく刺激することが大切です。目を閉じて行うとより効果的です。
7. 太陽(たいよう)
位置 こめかみにあります。眉毛の外側の端と、目尻の外側の端の中間から、やや後方のくぼんだ場所です。口を開閉すると動く部分の少し上になります。
効果 太陽は「経外奇穴」と呼ばれる、正規の経絡には属さない特別なツボの一つです。頭痛、特に偏頭痛に効果的なことで知られています。
眠気覚ましとしては、頭部の血行を促進し、脳をすっきりとリフレッシュさせる効果があります。また、目の疲れからくる頭痛や眠気にも有効です。
押し方
- 両手の人差し指、中指、薬指の3本を太陽に当てる
- 円を描くようにゆっくりとマッサージする
- 30秒〜1分程度続ける
- または、指を当てたまま5秒押して離すを5〜10回繰り返す
適度な圧力で、心地よいと感じる強さで行いましょう。強く押しすぎると頭痛が悪化することがあるので注意が必要です。
8. 足三里(あしさんり)
位置 膝の外側、膝のお皿の下の外側にあるくぼみから、指4本分下にあります。脛骨(すねの骨)の外側、筋肉のやや盛り上がった部分です。
効果 足三里は「胃経」という経絡の重要なツボで、「万能のツボ」の一つとされています。胃腸の働きを整え、体力増強、疲労回復、免疫力向上など、幅広い効果があります。
眠気覚ましとしては、下半身の血流を促進し、全身の気血の巡りを良くすることで、体全体を活性化させる効果があります。特に食後の眠気や、全身の倦怠感による眠気に効果的です。また、足のむくみや疲れも軽減されます。
押し方
- 親指を足三里に当てる
- 脛骨に向かってやや強めに押す
- 5〜7秒押したら、ゆっくり離す
- 左右それぞれ5〜10回繰り返す
座りながら刺激できるツボなので、デスクワーク中にも実践しやすいのが特徴です。ただし、会議中などは目立つ可能性があるので、状況に応じて使い分けましょう。
ツボ押しの効果を高めるコツ
複数のツボを組み合わせる
単一のツボを刺激するだけでなく、複数のツボを組み合わせることで、相乗効果が期待できます。
おすすめの組み合わせ
- 頭部重視型: 百会 + 風池 + 太陽 頭部の血行を集中的に改善し、頭をスッキリさせます。
- 手軽な手のツボ型: 合谷 + 中衝 + 労宮 いつでもどこでも目立たずに実践できます。
- 全身活性化型: 百会 + 合谷 + 足三里 頭部、上半身、下半身のバランスよく刺激し、全身の気血の流れを促進します。
- 眼精疲労対策型: 晴明 + 太陽 + 風池 目の疲れからくる眠気に特に効果的です。
タイミングを意識する
ツボ押しを行うタイミングも重要です。効果的なタイミングは以下の通りです:
予防的に行う 眠気を感じる前に刺激しておくことで、眠気の予防効果が期待できます。例えば、午後の会議の前や、眠気を感じやすい時間帯の30分前に行うとよいでしょう。
眠気を感じたらすぐに 眠気を感じ始めたら、早めにツボ刺激を行うことで、効果が高まります。我慢しすぎると、ツボ刺激だけでは対処しきれなくなることがあります。
休憩時間を活用 休憩時間に数分かけてじっくりとツボ押しを行うと、より高い効果が得られます。可能であれば、ストレッチや深呼吸と組み合わせるとさらに効果的です。
環境を整える
ツボ押しの効果を最大化するために、周囲の環境も整えましょう:
換気をする 密閉された空間では酸素濃度が低下し、眠気の原因になります。窓を開けて新鮮な空気を取り入れるか、換気システムを適切に使用しましょう。
照明を明るくする 暗い環境は眠気を誘発します。可能であれば、照明を明るくしたり、外の光を取り入れたりしましょう。自然光は特に覚醒効果が高いとされています。
姿勢を変える 長時間同じ姿勢でいると血行が悪くなり、眠気につながります。ツボ押しと合わせて、立ち上がったり、軽いストレッチをしたりすることをお勧めします。
温度調整 室温が高すぎると眠気を感じやすくなります。快適と感じる温度よりやや低め(20〜22度程度)に設定すると、覚醒状態を保ちやすくなります。
リラックスして行う
矛盾するようですが、ツボ押しはリラックスした状態で行う方が効果的です。力んだ状態では筋肉が緊張し、ツボへの刺激が適切に伝わりません。
深呼吸と組み合わせる ツボ押しの前に、まず深呼吸を数回行い、心身をリラックスさせましょう。押すときは息を吐き、離すときは息を吸うというリズムを意識すると、より効果的です。
力加減に注意 強く押せば効果が高まるわけではありません。「痛気持ちいい」程度の適度な圧力を心がけましょう。
焦らず丁寧に 急いで雑に押すよりも、時間をかけて丁寧に押す方が効果的です。1つのツボにつき最低でも30秒〜1分程度はかけるようにしましょう。
ツボ押し以外の眠気対策
ツボ押しは有効な眠気覚まし法ですが、他の方法と組み合わせることで、さらに効果を高めることができます。
水分補給
軽度の脱水でも、疲労感や眠気、集中力の低下を引き起こします。こまめな水分補給は、眠気対策の基本です。
効果的な水分補給のポイント
- 冷たい水を飲むと、体が刺激され覚醒効果が高まります
- 一度に大量ではなく、こまめに少しずつ飲みましょう
- カフェインを含む飲み物も効果的ですが、摂りすぎに注意
- 午後遅い時間のカフェイン摂取は夜の睡眠を妨げる可能性があります
軽い運動とストレッチ
体を動かすことで血行が促進され、脳への酸素供給が増加します。
オフィスでできる簡単な運動
- 首のストレッチ: ゆっくりと首を前後左右に傾け、回します
- 肩回し: 肩を大きく前後に回します
- 背伸び: 両手を上に伸ばし、全身を伸ばします
- その場足踏み: 座ったまま、または立って足踏みをします
- 階段昇降: 可能であれば、数分間階段を上り下りします
仮眠
短時間の仮眠は、眠気解消に非常に効果的です。
効果的な仮眠のコツ
- 時間は15〜20分: これ以上長いと深い睡眠に入ってしまい、目覚めた後にかえって眠気やだるさを感じます
- 横にならない: 椅子に座った状態や、机に伏せる程度にとどめましょう
- 午後3時まで: 遅い時間の仮眠は夜の睡眠に影響します
- 目覚まし必須: 必ずアラームをセットしましょう
<a href=”https://www.jssr.jp/”>日本睡眠学会</a>でも、適切な仮眠の効果について研究が行われています。
食事の工夫
食事の内容やタイミングも眠気に大きく影響します。
眠気を防ぐ食事のポイント
- 炭水化物の量を控えめに: 特に昼食では、ご飯やパンの量を普段の7〜8割程度に減らしましょう
- たんぱく質を意識的に摂る: 肉、魚、卵、大豆製品などをしっかり摂りましょう
- よく噛んで食べる: 咀嚼により脳が刺激され、覚醒が促されます
- 食べすぎない: 腹八分目を心がけましょう
- 糖質の急激な摂取を避ける: 甘いものを大量に食べると、血糖値が急上昇・急降下し、眠気を誘います
光を浴びる
光、特に青色光には強い覚醒作用があります。
光を活用した眠気対策
- 日光を浴びる: 可能であれば外に出て、数分間日光を浴びましょう
- 明るい照明: 室内照明を明るくするだけでも効果があります
- ブルーライト: スマートフォンやパソコンの画面を見ることも、一時的には覚醒効果があります(ただし、長時間の使用は眼精疲労につながるので注意が必要です)
ガムを噛む
咀嚼運動は脳を活性化させ、眠気を軽減します。
ミント系のガムは、さらに清涼感が加わり、効果的です。ただし、会議中など、ガムを噛めない状況もあるので、TPOに応じて使い分けましょう。
香りを活用する
特定の香りには覚醒効果があります。
眠気覚ましに効果的な香り
- ペパーミント: 清涼感があり、頭をスッキリさせます
- ローズマリー: 集中力を高める効果があります
- レモン: 爽やかな香りで気分をリフレッシュします
- ユーカリ: 呼吸を楽にし、頭をクリアにします
アロマオイルやハンドクリームなどで手軽に取り入れられます。
根本的な眠気対策:睡眠の質を改善する
日中の眠気を根本的に解決するには、夜の睡眠の質を改善することが最も重要です。
十分な睡眠時間を確保する
成人に必要な睡眠時間は個人差がありますが、一般的に7〜9時間とされています。慢性的な睡眠不足は、日中のパフォーマンス低下、健康リスクの増加につながります。
睡眠時間確保のポイント
- 就寝時刻を決めて習慣化する
- 逆算して、必要な睡眠時間が取れる時刻に就寝する
- 「睡眠は贅沢品ではなく必需品」という認識を持つ
睡眠の質を高める生活習慣
就寝前のルーティン
- 就寝1〜2時間前からブルーライトを避ける
- 寝る直前の食事や激しい運動を避ける
- リラックスできる活動(読書、音楽、入浴など)を取り入れる
- 部屋を暗くし、静かな環境を整える
- 室温は18〜22度程度が理想的
規則正しい生活リズム
- 毎日同じ時刻に起床・就寝する
- 休日も平日と同じリズムを保つ(差は1〜2時間以内)
- 朝起きたら日光を浴びる
- 日中に適度な運動をする
寝室環境の整備
- 遮光カーテンで光を遮る
- 静かな環境を保つ(耳栓の活用も)
- 快適な寝具を使用する
- 寝室の温度・湿度を適切に保つ
カフェインとアルコールの摂取に注意
カフェイン カフェインは覚醒作用がある一方、摂取のタイミングを誤ると夜の睡眠を妨げます。カフェインの半減期は4〜6時間程度なので、午後3時以降のカフェイン摂取は控えめにしましょう。
アルコール アルコールは一時的に眠気を誘いますが、睡眠の質を著しく低下させます。寝酒は避け、飲酒する場合は就寝の3〜4時間前までにしましょう。
ストレス管理
心理的なストレスは睡眠の質に大きく影響します。
ストレス対策
- 適度な運動習慣
- 趣味や楽しみの時間を持つ
- 人とのつながりを大切にする
- 必要に応じて専門家(カウンセラーなど)に相談する
- マインドフルネスや瞑想の実践
医療機関を受診すべきケース
以下のような症状がある場合は、単なる寝不足ではなく、睡眠障害やその他の疾患の可能性があります。早めに医療機関を受診することをお勧めします。
受診を検討すべき症状
- 日中の過度な眠気が続く
- 十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、日中強い眠気がある
- 会議中や運転中など、眠ってはいけない場面でも眠り込んでしまう
- 睡眠時無呼吸の症状
- いびきが大きい
- 睡眠中に呼吸が止まると指摘される
- 夜中に何度も目が覚める
- 起床時に頭痛がある
- 日中に激しい眠気がある
- ナルコレプシーの可能性
- 突然、抵抗できない眠気に襲われる
- 感情が高ぶったときに体の力が抜ける(情動脱力発作)
- 入眠時や目覚め時に体が動かせない(睡眠麻痺)
- 入眠時に幻覚を見る
- むずむず脚症候群
- 夕方から夜にかけて、脚に不快な感覚がある
- 脚を動かすと症状が軽減する
- 症状のために入眠困難
- その他の症状
- うつ症状がある(気分の落ち込み、興味の喪失、倦怠感など)
- 甲状腺機能低下症などの内分泌疾患の可能性
- 貧血による症状の可能性
診療科の選び方
睡眠外来・睡眠科 睡眠障害の専門的な診断と治療を行います。睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、不眠症などの診断には、睡眠ポリグラフ検査などの専門的な検査が必要になることがあります。
内科・一般診療科 まずは一般的な内科で相談するのも良いでしょう。必要に応じて専門医を紹介してもらえます。
精神科・心療内科 ストレスや精神的な要因が強い場合、うつ病などの精神疾患が疑われる場合は、精神科や心療内科が適しています。

まとめ
眠気覚ましのツボは、いつでもどこでも実践できる手軽で効果的な方法です。特に以下のポイントを押さえておきましょう:
重要なツボ
- 百会: 頭頂部、頭をスッキリさせる
- 風池: 首の付け根、脳への血流改善
- 合谷: 手の甲、万能のツボ
- 中衝: 中指の先端、即効性が高い
- 労宮: 手のひら中央、疲労回復
- 晴明: 目頭、眼精疲労に効果的
- 太陽: こめかみ、頭をリフレッシュ
- 足三里: 膝下、全身の活性化
効果的な実践方法
- 複数のツボを組み合わせる
- 適切なタイミングで行う
- 環境を整える
- リラックスして丁寧に押す
- 他の眠気対策(水分補給、軽い運動、仮眠など)と併用する
根本的な対策
- 十分な睡眠時間を確保する
- 睡眠の質を高める生活習慣を実践する
- ストレスを適切に管理する
- 必要に応じて医療機関を受診する
眠気は体が休息を求めているサインでもあります。ツボ押しで一時的に眠気を覚ますことはできますが、慢性的な睡眠不足や過度の疲労は、健康に悪影響を及ぼします。日々の生活習慣を見直し、質の良い睡眠を確保することが、根本的な眠気対策として最も重要です。
それでも改善しない場合や、日常生活に支障をきたすような強い眠気がある場合は、睡眠障害などの可能性も考慮し、専門の医療機関への相談をお勧めします。
参考文献・参考サイト
- 厚生労働省 – 健康日本21、睡眠に関する情報
- 日本睡眠学会 – 睡眠に関する科学的研究と情報
- 日本東洋医学会 – 東洋医学、鍼灸に関する学術情報
- 公益社団法人 全日本鍼灸学会 – ツボ(経穴)に関する専門的情報
- 厚生労働省 e-ヘルスネット – 健康情報、睡眠と生活習慣に関する情報
- 日本睡眠学会編『睡眠学』(朝倉書店)
- 形井秀一他『鍼灸臨床における医療面接』(医歯薬出版)
- WHO標準経穴部位 – 世界保健機関によるツボの国際標準位置
※本記事の情報は2025年11月時点のものです。最新の医学的知見については、専門医療機関にご相談ください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務