はじめに
お子さんが突然高熱を出し、熱が下がった後に全身に発疹が現れた経験はありませんか?それは「突発性発疹」かもしれません。突発性発疹は、生後6ヶ月から2歳頃までの乳幼児が初めて経験する発熱の原因として最も多い病気の一つです。
多くの保護者の方が、初めての高熱に不安を感じられることでしょう。しかし、突発性発疹は適切な対処をすれば、ほとんどの場合問題なく回復する病気です。本記事では、アイシークリニック渋谷院の医師が、突発性発疹の症状、原因、治療法、そして家庭でのケア方法について詳しく解説します。
突発性発疹とは
突発性発疹(とっぱつせいほっしん)は、正式には「突発性発疹症」といい、英語では「Exanthema subitum」または「Roseola infantum」と呼ばれます。日本では「不機嫌病」という別名もあります。
この病気は、乳幼児期に非常に高い確率で罹患する感染症で、生後6ヶ月から1歳6ヶ月頃に最も多く発症します。2歳を過ぎるとほとんどの子どもが免疫を獲得しているため、発症することは稀になります。
突発性発疹の特徴
突発性発疹の最も特徴的な症状は、3〜4日間続く高熱の後、解熱とともに全身に発疹が現れるという経過です。この特徴的な経過から、診断は比較的容易です。
発疹が現れる前の高熱の時点では、他の感染症との区別が難しく、熱が下がって発疹が出て初めて「突発性発疹だった」と診断されることがほとんどです。
突発性発疹の原因
突発性発疹の原因は、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)、まれに**ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)**です。これらのウイルスは、ヘルペスウイルス科に属するウイルスで、一度感染すると生涯体内に潜伏し続ける特徴があります。
ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)
HHV-6は、突発性発疹の原因ウイルスとして最も多いもので、全体の約80〜90%を占めます。このウイルスは非常に感染力が強く、2歳までにほぼすべての子どもが感染すると言われています。
HHV-6にはA型とB型の2つのタイプがありますが、突発性発疹を引き起こすのは主にB型です。感染経路は主に飛沫感染で、感染者の唾液や鼻汁を介して広がります。
ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)
HHV-7による突発性発疹は、全体の約10〜20%を占めます。症状はHHV-6とほぼ同様ですが、やや年齢が高い時期(1歳半〜3歳頃)に発症する傾向があります。
HHV-6とHHV-7は別のウイルスのため、理論上は突発性発疹に2回罹患する可能性があります。実際に、まずHHV-6による突発性発疹を経験し、その後HHV-7による突発性発疹を発症するケースも報告されています。
感染経路と感染時期
突発性発疹の主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。感染者の咳やくしゃみによる飛沫、または感染者の唾液が付着した物を介して感染します。
興味深いことに、突発性発疹のウイルスは、症状がない成人の唾液中にも存在することが知られています。そのため、両親や祖父母など、身近な大人からの感染が多いと考えられています。
母親からの移行抗体(胎盤を通じて母親から受け継いだ免疫)は、生後6ヶ月頃までは赤ちゃんを守ってくれますが、その後徐々に減少します。そのため、生後6ヶ月以降に突発性発疹を発症しやすくなるのです。
突発性発疹の症状
突発性発疹の症状は、発熱期と発疹期の2つの段階に分けられます。この特徴的な経過が、診断の重要な手がかりとなります。
発熱期(第1期):最初の3〜4日間
突然、38〜40度の高熱が出現します。これが突発性発疹の始まりです。発熱は通常3〜4日間続きますが、中には5日間程度続くこともあります。
発熱期の主な特徴:
- 高熱の割に比較的元気: 突発性発疹の特徴として、38〜40度という高熱の割には、食欲があり、比較的機嫌が良いことが多いです。これは他の感染症との鑑別点にもなります
- 咳や鼻水などの症状がない: 通常、咳や鼻水、嘔吐、下痢などの症状はほとんど見られません。これも他の感染症と異なる点です
- 大泉門の膨隆: 乳児の場合、頭の柔らかい部分(大泉門)がやや膨らんで見えることがあります
- 眼瞼の腫れ: まぶたがやや腫れぼったく見えることがあります
- リンパ節の腫れ: 後頭部や耳の後ろのリンパ節が腫れることがあります
解熱期:4日目頃
3〜4日間の高熱の後、解熱とほぼ同時に、または解熱後数時間以内に発疹が出現します。この「熱が下がったと思ったら発疹が出た」という経過が、突発性発疹の最も特徴的な所見です。
発疹期(第2期):解熱後1〜3日間
解熱とともに、淡紅色の小さな発疹が出現します。発疹は通常、胸やお腹から始まり、その後顔や腕、脚へと広がっていきます。
発疹の特徴:
- 色と形状: 淡いピンク色から赤色の、直径2〜3mm程度の小さな斑点状の発疹です。発疹同士が融合することはあまりありません
- 出現部位: 体幹(胸、お腹、背中)に最も多く出現し、次いで顔面、四肢へと広がります。手のひらや足の裏には通常出現しません
- かゆみ: ほとんどの場合、かゆみはありません
- 持続期間: 発疹は通常2〜3日で自然に消退します。長くても1週間以内には完全に消失します
- 色素沈着なし: 発疹が消えた後、色素沈着や痕は残りません
不機嫌になる理由
発疹期に入ると、多くの乳幼児が著しく不機嫌になります。これが「不機嫌病」という別名の由来です。高熱の時は比較的機嫌が良かったのに、熱が下がって発疹が出ると不機嫌になるという特徴があります。
不機嫌の原因は明確にはわかっていませんが、発疹に伴う違和感や、ウイルスが神経系に影響を与えている可能性などが考えられています。
その他の随伴症状
突発性発疹では、以下のような症状を伴うこともあります:
- 下痢: 軽度の下痢を伴うことがあります(約20〜30%の患者)
- 咳: 軽い咳が出ることがありますが、通常は軽度です
- 食欲低下: 高熱により一時的に食欲が低下することがあります
- 永山斑: 口の中(軟口蓋)に赤い斑点が見られることがあります。これは突発性発疹に特徴的な所見で、永山斑(ながやまはん)と呼ばれます
突発性発疹の診断
突発性発疹の診断は、主に臨床症状と経過から行われます。特徴的な経過(高熱→解熱→発疹)があれば、診断は比較的容易です。
診断の流れ
- 発熱期: この時点では他の感染症との区別が困難なため、「発熱」としか診断できません。ただし、「突発性発疹の可能性がある」と説明されることが多いです
- 発疹出現後: 解熱後に特徴的な発疹が出現した時点で、「突発性発疹」と確定診断されます
血液検査
必須ではありませんが、血液検査を行うこともあります。突発性発疹では、以下のような特徴が見られます:
- 白血球数の減少: 特にリンパ球が減少します(発熱期)
- CRP(炎症反応): 高熱の割には上昇が軽度です
- 異型リンパ球: 血液中に異型リンパ球が出現することがあります(発疹期)
ウイルス検査
確定診断のために、HHV-6やHHV-7の検査を行うこともできます:
- PCR検査: 血液や唾液からウイルスのDNAを検出します
- 抗体検査: 血液中のウイルスに対する抗体を測定します(急性期と回復期の2回採血が必要)
ただし、これらの検査は通常の診療では必要とされず、研究目的や特殊な状況でのみ実施されます。
鑑別診断
発熱期には、以下のような病気との鑑別が必要です:
- 麻疹(はしか): 発疹の出現パターンが異なります(麻疹は発熱中に発疹が出現)
- 風疹: 発疹の性状と出現時期が異なります
- 溶連菌感染症: 咽頭所見や舌の所見が異なります
- 川崎病: 発熱が5日以上続き、他の特徴的な症状があります
- 尿路感染症: 尿検査で診断します
突発性発疹の治療法
突発性発疹には、特効薬はありません。ウイルス感染症であるため、抗生物質(細菌に効く薬)も効果がありません。治療の基本は対症療法(症状を和らげる治療)です。
発熱への対応
高熱が続く場合、以下のような対応を行います:
解熱剤の使用
高熱で辛そうな場合や、食事や睡眠が取れない場合は、解熱剤を使用します。
- アセトアミノフェン: 最も一般的に使用される解熱剤です。商品名としては「カロナール」「アンヒバ」などがあります
- イブプロフェン: 生後6ヶ月以降で使用可能です。商品名としては「ブルフェン」などがあります
解熱剤の使用は、熱を無理に下げるためではなく、子どもの苦痛を和らげ、水分や食事を摂取できるようにすることが目的です。熱が37度台まで下がらなくても、機嫌が良く、水分摂取ができていれば問題ありません。
注意: アスピリン(アセチルサリチル酸)は、ウイルス感染症の際に使用すると、稀に重篤な合併症(ライ症候群)を引き起こす可能性があるため、小児には使用しません。
冷却
- 額や脇の下、鼠径部(足の付け根)を冷やすと、一時的に熱を下げる効果があります
- 氷嚢やアイスノン、冷却シートなどを使用できます
- ただし、冷やし過ぎは逆効果なので、嫌がる場合は無理に行う必要はありません
水分補給
高熱により脱水になりやすいため、十分な水分補給が最も重要です。
- 経口補水液: 脱水予防には経口補水液(OS-1、アクアライトなど)が最適です
- 母乳・ミルク: 乳児の場合、母乳やミルクを頻回に与えます
- その他の飲み物: 麦茶、リンゴジュース、イオン飲料なども良いでしょう
食欲がない場合は無理に食べさせる必要はありませんが、水分だけは必ず摂取させてください。
安静
高熱の間は、安静を保つことが大切です。無理に遊ばせたり、外出したりする必要はありません。ただし、子ども自身が遊びたがり、元気があるようなら、室内で静かに遊ぶ程度は問題ありません。
発疹への対応
発疹そのものには、特別な治療は必要ありません。かゆみがほとんどないため、塗り薬なども通常は不要です。
自然に消退するのを待つだけで大丈夫です。入浴も、熱が下がって元気があれば問題ありません。
登園・登校について
突発性発疹は、厚生労働省の保育所における感染症対策ガイドラインにおいて、「解熱し機嫌が良く全身状態が良ければ登園可能」とされています。
一般的には:
- 発熱期: 登園・登校は控えます
- 解熱後: 熱が下がり、機嫌が良く、食欲があれば登園・登校可能です。発疹が残っていても問題ありません
ただし、保育園や幼稚園によって方針が異なる場合があるため、各施設の規定に従ってください。
突発性発疹の合併症
突発性発疹は通常、合併症を起こすことなく回復する病気ですが、稀に以下のような合併症が起こることがあります。
熱性けいれん
突発性発疹に伴う合併症として最も多いのが、熱性けいれんです。突発性発疹患者の約10〜15%に熱性けいれんが起こると報告されています。
熱性けいれんの特徴:
- 高熱に伴って起こるけいれん発作です
- 多くは5分以内に自然に止まります
- 意識がなくなり、全身または一部がガクガクと震えます
- 通常、後遺症を残すことはありません
熱性けいれんが起きたら:
- 慌てずに、まず安全を確保します(高い場所から落ちないよう、周囲の危険物を片付ける)
- 衣服を緩め、呼吸しやすい体位(横向き)にします
- けいれんの時間を測ります
- 口の中に物を入れたり、無理に体を押さえつけたりしないでください
- 5分以上けいれんが続く場合、または繰り返す場合は、すぐに救急車を呼びます
脳炎・脳症
非常に稀ですが、HHV-6脳炎・脳症が起こることがあります。発生頻度は数千〜数万人に1人程度とされています。
症状:
- 意識障害(呼びかけへの反応が鈍い、ぼんやりしている)
- 繰り返すけいれん
- 異常行動
- 麻痺
これらの症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
血小板減少性紫斑病
非常に稀ですが、血小板減少性紫斑病を合併することがあります。
症状:
- 皮下出血(あざが増える)
- 鼻血が止まりにくい
- 歯茎からの出血
これらの症状が見られた場合は、医療機関を受診してください。
劇症肝炎
極めて稀ですが、劇症肝炎を発症することがあります。免疫不全がある場合や、臓器移植後の患者さんに起こりやすいとされています。
移植後リンパ増殖性疾患
臓器移植を受けた患者さんでは、HHV-6の再活性化により、移植後リンパ増殖性疾患を発症することがあります。
突発性発疹の予防法
残念ながら、突発性発疹を完全に予防する方法はありません。ワクチンも存在しません。
HHV-6やHHV-7は感染力が非常に強く、2歳までにほぼすべての子どもが感染します。また、症状がない成人の唾液中にもウイルスが存在するため、感染を防ぐことは実質的に不可能です。
一般的な感染予防策
完全な予防は難しいですが、以下のような一般的な感染予防策は有効です:
手洗い・うがい
基本的な感染予防として、こまめな手洗いとうがいを心がけましょう。特に外出後や食事前には必ず手洗いをします。
咳エチケット
咳やくしゃみをする際は、ティッシュやハンカチ、あるいは肘の内側で口と鼻を覆います。
タオルの共用を避ける
タオルや食器の共用は避け、個人用のものを使用します。
適度な湿度の維持
室内の湿度を50〜60%程度に保つと、ウイルスの活動が弱まります。
罹患後の免疫
一度突発性発疹に罹患すると、そのウイルス型に対しては免疫ができます。ただし、HHV-6とHHV-7は別のウイルスなので、理論上は2回罹患する可能性があります。
実際には、2回目の突発性発疹は症状が軽いか、ほとんど症状が出ないことが多いです。
家庭でのケア
突発性発疹と診断された、あるいは疑われる場合、家庭でのケアが重要です。以下のポイントを押さえましょう。
1. 十分な水分補給
最も重要なのは水分補給です。高熱により、体内の水分が失われやすくなります。
水分補給のコツ:
- こまめに少量ずつ与える(一度にたくさん飲ませると嘔吐することがあります)
- 経口補水液を常備しておくと安心です
- 乳児の場合、母乳やミルクを頻回に与えます
- 食欲がなくても、水分だけは必ず摂取させます
脱水のサイン:
以下のような症状が見られたら、脱水の可能性があります。すぐに医療機関を受診してください。
- おしっこの回数が少ない(6時間以上出ない)
- おしっこの色が濃い
- 唇や口の中が乾燥している
- 涙が出ない
- 目がくぼんでいる
- ぐったりしている
- 皮膚の張りがない
2. 適切な室温管理
室温は20〜25度程度が適切です。暑すぎても寒すぎても良くありません。
- 高熱で暑がっている時: 薄着にし、室温を少し低めに設定します
- 解熱期で寒がっている時: 適度に着せ、室温を少し高めに設定します
汗をかいたら、こまめに着替えさせましょう。
3. 無理に食べさせない
高熱の間は食欲が低下するのが普通です。無理に食べさせる必要はありません。
- 食べられるものを、食べられる量だけ与えます
- 消化の良いもの(おかゆ、うどん、バナナ、ヨーグルトなど)が良いでしょう
- アイスクリームやゼリーなど、冷たくて喉越しの良いものも良いでしょう
- 熱が下がれば自然に食欲は戻ります
4. 安静を保つ
高熱の間は、無理に遊ばせたり、外出したりしないことが大切です。
- 自宅で静かに過ごします
- テレビやタブレットなどで、静かに遊ばせるのは問題ありません
- 無理に寝かせる必要はありませんが、疲れたら休ませます
5. 入浴について
高熱の間: 入浴は控え、体を拭く程度にします。どうしても入浴させたい場合は、シャワーを短時間で済ませます。
解熱後: 熱が下がり、元気があれば入浴可能です。発疹が出ていても問題ありません。ただし、長湯は避け、入浴後は十分に水分を補給させます。
6. 衣類とおむつの管理
- 汗をかいたら、こまめに着替えさせます
- 通気性の良い、綿素材の衣類が適しています
- おむつは頻繁に交換し、お尻を清潔に保ちます
7. 感染拡大の防止
突発性発疹は感染力が強いため、以下の点に注意します:
- 兄弟姉妹がいる場合、タオルや食器の共用を避けます
- 咳エチケットを守ります
- 家族全員が手洗いを徹底します
- 発熱期間中は、できるだけ外出を控えます
8. 記録をつける
以下の情報を記録しておくと、受診時に役立ちます:
- 発熱した日時と体温の推移
- 解熱した日時
- 発疹が出た日時と部位
- 水分摂取量と排尿回数
- その他の症状(下痢、嘔吐、けいれんなど)
- 使用した薬の種類と量
受診のタイミング
突発性発疹は通常、自宅でのケアで十分ですが、以下のような場合はすぐに医療機関を受診してください。
すぐに受診(救急受診)が必要な場合
- けいれんが5分以上続く、または繰り返す
- 意識がない、または呼びかけても反応が鈍い
- 呼吸が苦しそう(呼吸が速い、胸がへこむ、唇が青白い)
- ぐったりしている、または顔色が悪い
- 水分が全く摂れない
- 6時間以上おしっこが出ない
- 首が硬く、前に曲げられない(髄膜炎の可能性)
- 異常な泣き方をする(甲高い泣き声など)
- 生後3ヶ月未満の発熱(どんな場合でも受診が必要)
診療時間内に受診すべき場合
- 発熱が5日以上続く
- 40度以上の高熱
- 嘔吐や下痢が続く
- 発疹が7日以上続く、または悪化する
- 発疹に伴い、紫色のあざのようなものが出る(出血斑の可能性)
- いつもと様子が違うと感じる(親の直感は重要です)
経過観察で良い場合
以下の条件を満たしていれば、自宅で経過を見て問題ありません:
- 機嫌が比較的良い
- 水分がしっかり摂れている
- おしっこが出ている
- 意識がはっきりしている
- 呼吸に問題がない
ただし、初めての高熱の場合や、心配な場合は、遠慮なく医療機関に相談してください。

よくある質問(Q&A)
A: 生後6ヶ月から2歳頃までに最も多く発症します。特に、生後6ヶ月から1歳6ヶ月頃が最も多い時期です。これは、母親から受け継いだ抗体(移行抗体)が減少する時期と重なります。2歳を過ぎると、ほとんどの子どもが免疫を獲得しているため、発症は稀になります。
A: はい、可能性はあります。突発性発疹の原因ウイルスは、HHV-6とHHV-7の2種類あり、これらは別のウイルスです。そのため、まずHHV-6による突発性発疹にかかり、その後HHV-7による突発性発疹にかかることがあります。ただし、2回目は症状が軽いか、ほとんど症状が出ないことが多いです。
Q3: 兄弟姉妹にうつりますか?
A: うつる可能性はありますが、すでに免疫を持っている年長の兄弟姉妹には通常うつりません。突発性発疹は2歳までにほとんどの子どもがかかる病気なので、年長の兄弟姉妹がまだ罹患していない場合は、うつる可能性があります。
Q4: 大人にうつることはありますか?
A: 大人のほとんどは、すでに子どもの頃に感染して免疫を持っているため、通常はうつりません。ただし、稀に免疫を持っていない大人が感染することがあります。また、免疫力が低下している場合(HIV感染、臓器移植後など)は、ウイルスが再活性化することがあります。
Q5: 保育園はいつから行けますか?
A: 熱が下がり、機嫌が良く、全身状態が良ければ登園可能です。発疹が残っていても問題ありません。厚生労働省の保育所における感染症対策ガイドラインでも、「解熱し機嫌が良く全身状態が良ければ登園可能」とされています。ただし、保育園によって方針が異なる場合があるため、各施設の規定に従ってください。
Q6: お風呂に入っても大丈夫ですか?
A: 高熱の間は入浴を控え、体を拭く程度にします。熱が下がって元気があれば、入浴可能です。発疹が出ていても問題ありません。ただし、長湯は避け、入浴後は十分に水分を補給させましょう。
Q7: 予防接種はいつから受けられますか?
A: 突発性発疹が完全に治ってから、1〜2週間程度空けてから予防接種を受けることが推奨されます。ただし、具体的なタイミングについては、かかりつけの医師に相談してください。
Q8: 突発性発疹の後、免疫はつきますか?
A: はい、一度罹患したウイルス型に対しては、通常は免疫がつきます。ただし、HHV-6とHHV-7は別のウイルスなので、両方に対する免疫ができるまでは、理論上2回罹患する可能性があります。
Q9: 高熱が続いても大丈夫ですか?脳に影響はありませんか?
A: 突発性発疹による高熱そのものが、脳に直接的な悪影響を及ぼすことはありません。一般的に、42度以下の発熱であれば、脳へのダメージを心配する必要はないとされています。ただし、発熱が5日以上続く場合や、意識障害などの神経症状が見られる場合は、すぐに医療機関を受診してください。
Q10: 解熱剤は使わない方が良いのですか?
A: いいえ、そんなことはありません。高熱で辛そうな場合や、水分や食事が摂れない場合は、解熱剤を使用して構いません。解熱剤は、熱を無理に下げるためではなく、子どもの苦痛を和らげ、水分や食事を摂取できるようにすることが目的です。ただし、使用量や使用間隔は、医師の指示や添付文書に従ってください。
まとめ
突発性発疹は、生後6ヶ月から2歳頃までの乳幼児が経験する、非常に一般的な感染症です。3〜4日間の高熱の後、解熱とともに発疹が出現するという特徴的な経過をたどります。
ほとんどの場合、特別な治療をしなくても自然に治る病気ですが、高熱による脱水や、稀に熱性けいれんなどの合併症に注意が必要です。家庭では、十分な水分補給と安静を心がけ、異常な症状が見られたら、すぐに医療機関を受診してください。
初めての高熱に不安を感じるのは当然のことです。心配なことがあれば、遠慮なくかかりつけの医師や、お近くの医療機関に相談してください。
参考文献
- 国立感染症研究所「突発性発疹とは」
- 日本小児科学会「こどもの救急」
- 厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン」
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」
- 日本小児感染症学会「小児感染症の診療ガイドライン」
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務