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牡蠣による食中毒は何日で治る?症状・原因・治療法を医師が解説

牡蠣は冬の味覚として人気が高い食材ですが、食中毒のリスクも伴います。「牡蠣を食べた後にお腹が痛くなった」「牡蠣による食中毒は何日で治るの?」といった不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、牡蠣による食中毒の原因、症状、回復までの期間、治療法、そして予防策について、医学的な根拠に基づいて詳しく解説します。

目次

  1. 牡蠣による食中毒の主な原因
  2. ノロウイルスによる食中毒の症状と回復期間
  3. 腸炎ビブリオによる食中毒の症状と回復期間
  4. その他の原因による食中毒
  5. 牡蠣の食中毒が治るまでの期間:原因別まとめ
  6. 牡蠣による食中毒の治療法
  7. 家庭での対処法と注意点
  8. 医療機関を受診すべきタイミング
  9. 牡蠣による食中毒の予防法
  10. よくある質問(FAQ)

1. 牡蠣による食中毒の主な原因

牡蠣による食中毒には、主に以下の3つの原因があります。

1-1. ノロウイルス

牡蠣による食中毒の最も一般的な原因がノロウイルスです。牡蠣は海水中のプランクトンを餌として取り込む際に、海水中に存在するノロウイルスも一緒に体内に蓄積します。特に冬季(11月~3月)に発生しやすく、日本国内の食中毒事例の中でも患者数が最も多いウイルスです。

厚生労働省の統計によると、ノロウイルスは年間を通じて発生しますが、特に冬季に流行のピークを迎えます。ノロウイルスは非常に感染力が強く、わずか10~100個のウイルス粒子でも感染が成立すると言われています。

1-2. 腸炎ビブリオ

腸炎ビブリオは、海水中に生息する細菌で、特に夏季(6月~9月)の水温が高い時期に増殖しやすい特徴があります。牡蠣をはじめとする魚介類に付着し、生食や加熱不十分な状態で摂取することで感染します。

腸炎ビブリオは塩分を好む好塩菌で、真水や酸に弱いという特性があります。かつては日本で最も多い細菌性食中毒の原因でしたが、流通過程での衛生管理の向上により、近年では発生件数が減少しています。

1-3. その他の原因

その他にも、以下のような原因による食中毒が発生する可能性があります。

  • 貝毒:牡蠣が有毒なプランクトンを摂取することで体内に毒素が蓄積されます。下痢性貝毒、麻痺性貝毒などがあり、加熱しても毒性は失われません。
  • A型肝炎ウイルス:稀ですが、汚染された牡蠣を生食することで感染する可能性があります。
  • その他の細菌:サルモネラ菌、大腸菌、カンピロバクターなども、牡蠣を介して感染する場合があります。

2. ノロウイルスによる食中毒の症状と回復期間

2-1. 潜伏期間

ノロウイルスに感染してから症状が現れるまでの潜伏期間は、通常24~48時間です。多くの場合、牡蠣を食べた翌日から2日後に症状が現れます。

2-2. 主な症状

ノロウイルスによる食中毒の主な症状は以下の通りです。

  • 激しい嘔吐:突然始まることが多く、1日に数回から十数回嘔吐します
  • 下痢:水様性の下痢が1日に数回から十数回起こります
  • 吐き気:持続的な吐き気が続きます
  • 腹痛:差し込むような腹痛や腹部の不快感
  • 発熱:37~38℃台の軽度から中等度の発熱
  • 頭痛:頭痛を伴うことがあります
  • 筋肉痛:全身の倦怠感や筋肉痛

国立感染症研究所の報告によると、ノロウイルス感染症の症状は個人差がありますが、多くの場合、嘔吐と下痢が主症状となります。

2-3. 回復までの期間

ノロウイルスによる食中毒の症状は、通常1~3日程度で自然に軽快します。

  • 急性期(1~2日目):嘔吐、下痢、発熱などの症状が最も強く現れる時期です。この時期は水分補給が特に重要です。
  • 回復期(3日目以降):徐々に症状が軽減し、食欲も戻ってきます。ただし、完全に体力が回復するまでにはさらに数日かかることがあります。

多くの方は2~3日で症状が治まり、1週間程度で完全に回復します。ただし、高齢者や乳幼児、基礎疾患のある方は症状が長引いたり、重症化したりする可能性があるため注意が必要です。

2-4. ウイルスの排出期間

症状が治まった後も、ノロウイルスは便中に1~4週間程度排出され続けます。症状が消失しても、手洗いなどの衛生管理を徹底し、他者への感染を防ぐことが重要です。

3. 腸炎ビブリオによる食中毒の症状と回復期間

3-1. 潜伏期間

腸炎ビブリオによる食中毒の潜伏期間は、8~24時間とノロウイルスよりもやや短い傾向があります。平均的には12時間前後で症状が現れることが多いです。

3-2. 主な症状

腸炎ビブリオによる食中毒の主な症状は以下の通りです。

  • 激しい腹痛:特に下腹部に強い痛みが生じます
  • 水様性下痢:頻回の水様便が特徴で、時に血便を伴うこともあります
  • 発熱:38℃以上の発熱を伴うことが多いです
  • 嘔吐・吐き気:腹痛や下痢ほど顕著ではありませんが、嘔吐を伴うこともあります
  • 頭痛・悪寒:発熱に伴って頭痛や悪寒が現れます

東京都福祉保健局の情報によると、腸炎ビブリオによる食中毒は激しい腹痛と下痢が特徴的です。

3-3. 回復までの期間

腸炎ビブリオによる食中毒の症状は、適切な治療を受ければ通常2~5日程度で回復します。

  • 急性期(1~3日目):激しい腹痛と下痢が続く時期です。脱水症状に注意が必要です。
  • 回復期(4日目以降):徐々に症状が軽減し、通常の食事が摂取できるようになります。

ノロウイルスと比較すると、腸炎ビブリオの方がやや症状が長引く傾向がありますが、適切な治療により1週間以内に回復することがほとんどです。重症例では入院が必要になることもありますが、致死率は低く、予後は良好です。

4. その他の原因による食中毒

4-1. 貝毒による食中毒

貝毒による食中毒は、牡蠣が有毒プランクトンを摂取することで起こります。

下痢性貝毒の場合

  • 潜伏期間:30分~4時間
  • 主な症状:下痢、吐き気、嘔吐、腹痛
  • 回復期間:通常3日以内に回復します

麻痺性貝毒の場合

  • 潜伏期間:30分~4時間
  • 主な症状:口唇や舌のしびれ、顔面のしびれ、重症例では呼吸麻痺
  • 重症度:麻痺性貝毒は致死的な場合もあるため、速やかな医療機関の受診が必要です

日本では貝毒の発生を監視するシステムがあり、厚生労働省や各都道府県が定期的に貝毒検査を実施しています。基準値を超えた海域では出荷が規制されるため、市場に流通している牡蠣で貝毒による食中毒が起こることは稀です。

4-2. A型肝炎ウイルスによる食中毒

A型肝炎ウイルスに汚染された牡蠣を生食した場合、肝炎を発症する可能性があります。

  • 潜伏期間:2~6週間(平均28日)と非常に長いのが特徴
  • 主な症状:発熱、全身倦怠感、食欲不振、吐き気、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
  • 回復期間:数週間から数ヶ月かかることがあります

A型肝炎による食中毒は日本では稀ですが、海外から輸入された牡蠣や、衛生状態の悪い地域で採取された牡蠣でリスクが高まります。

5. 牡蠣の食中毒が治るまでの期間:原因別まとめ

牡蠣による食中毒が治るまでの期間を、原因別に表でまとめました。

原因潜伏期間主な症状回復までの期間
ノロウイルス24~48時間嘔吐、下痢、発熱1~3日(平均2~3日)
腸炎ビブリオ8~24時間激しい腹痛、下痢、発熱2~5日(平均3~4日)
下痢性貝毒30分~4時間下痢、嘔吐、腹痛3日以内
麻痺性貝毒30分~4時間しびれ、麻痺重症度により異なる
A型肝炎2~6週間発熱、黄疸、倦怠感数週間~数ヶ月

**結論:牡蠣による食中毒は、最も一般的なノロウイルスの場合で2~3日、腸炎ビブリオの場合で3~4日程度で症状が治まります。**ただし、完全な体力回復までには1週間程度かかることが多いです。

6. 牡蠣による食中毒の治療法

6-1. 基本的な治療方針

牡蠣による食中毒の治療は、原因に関わらず対症療法が基本となります。ノロウイルスには有効な抗ウイルス薬がなく、腸炎ビブリオも多くの場合、抗生物質を使用しなくても自然治癒します。

6-2. 脱水症状の予防と治療

食中毒の治療で最も重要なのは、脱水症状を防ぐことです。

経口補水療法

嘔吐や下痢により失われた水分と電解質を補給することが重要です。

  • 経口補水液(ORS):市販の経口補水液(OS-1、アクアソリタなど)が最適です
  • 飲み方:一度に大量に飲むと嘔吐を誘発するため、少量ずつ頻回に飲みます(5~10分おきにスプーン1杯程度から)
  • 代替品:経口補水液がない場合、湯冷ましやスポーツドリンク(2倍に薄めたもの)も使用できます

点滴治療

以下の場合は医療機関での点滴治療が必要です。

  • 嘔吐が激しく、経口での水分摂取ができない
  • 明らかな脱水症状がある(尿量の減少、口の渇き、皮膚の弾力低下など)
  • 高齢者、乳幼児、妊婦など、脱水のリスクが高い方

6-3. 薬物療法

止瀉薬(下痢止め)について

一般的に、食中毒の急性期には止瀉薬の使用は推奨されません。下痢は体内の病原体を排出する防御反応であるため、無理に止めると病原体が体内に留まり、症状が長引いたり重症化したりする可能性があります。

ただし、症状が軽快してきた回復期や、社会生活上の理由で下痢を抑える必要がある場合には、医師の判断で使用されることもあります。

制吐薬(吐き気止め)について

激しい嘔吐により脱水が進行する場合や、経口での水分摂取が困難な場合には、制吐薬が処方されることがあります。

抗生物質について

  • ノロウイルス:ウイルス性のため抗生物質は無効
  • 腸炎ビブリオ:軽症から中等症の場合は不要。重症例や高リスク患者には使用を検討
  • その他の細菌性食中毒:原因菌の種類や症状の重症度により使用を判断

整腸剤

腸内環境を整えるために、ビフィズス菌や乳酸菌などの整腸剤が処方されることがあります。急性期よりも回復期に有用です。

6-4. 食事療法

急性期(1~2日目)

  • 症状が強い時期は無理に食事をする必要はありません
  • 水分補給を最優先にします
  • 食欲があれば、おかゆ、うどん、バナナなど消化の良いものを少量ずつ

回復期(3日目以降)

  • 徐々に通常の食事に戻していきます
  • 初めは白米、食パン、うどん、野菜スープなど刺激の少ないものから
  • 脂っこい食事、香辛料、アルコール、カフェインは避けます
  • 十分なタンパク質とビタミンを摂取して体力回復を図ります

7. 家庭での対処法と注意点

7-1. 応急処置

牡蠣を食べた後に食中毒の症状が現れた場合、家庭でできる応急処置は以下の通りです。

1. 水分補給を優先する

  • 経口補水液を少量ずつ頻回に飲む
  • 一度に大量に飲まない(嘔吐を誘発します)
  • 冷たすぎるものは避け、常温に近い温度で

2. 安静にする

  • 横になって休む
  • 嘔吐に備えて洗面器やビニール袋を準備
  • 嘔吐物で窒息しないよう、横向きに寝る

3. 体を温める

  • 特に発熱がない場合は体を冷やさないように
  • 腹部を温めると腹痛が和らぐことがあります

4. 消化の良い食事

  • 無理に食べる必要はない
  • 食欲が出てきたら、おかゆやうどんなど消化の良いものから

7-2. やってはいけないこと

無理に吐こうとする

  • 指を喉に入れて無理に嘔吐を誘発することは危険です
  • 食道や胃を傷つける可能性があります
  • 誤嚥(気管に入る)のリスクもあります

市販の下痢止めを安易に使用する

  • 先述の通り、急性期の止瀉薬使用は症状を悪化させる可能性があります
  • 使用する場合は薬剤師に相談しましょう

刺激物の摂取

  • アルコール、カフェイン、香辛料、脂っこい食事は避けます
  • 胃腸に負担をかけ、症状を悪化させる可能性があります

入浴

  • 発熱や激しい下痢・嘔吐がある場合は、入浴は控えます
  • シャワーで軽く体を流す程度にとどめます
  • 入浴により脱水が進行したり、体力を消耗したりする可能性があります

7-3. 二次感染の予防

ノロウイルスによる食中毒は、非常に感染力が強いため、家族への二次感染を防ぐことが重要です。

手洗いの徹底

  • トイレの後、食事の前には必ず石けんで手を洗う
  • 手洗いは30秒以上、流水でしっかりと
  • アルコール消毒だけでは不十分です(ノロウイルスにはアルコールが効きにくい)

嘔吐物・便の適切な処理

  • 使い捨て手袋とマスクを着用
  • ペーパータオルなどで嘔吐物を取り除く
  • 次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)で消毒
  • 汚染された衣類や寝具は、次亜塩素酸ナトリウム液に浸してから洗濯

トイレの消毒

  • 便座、ドアノブ、水栓などを次亜塩素酸ナトリウムで消毒
  • 共用のタオルは避け、ペーパータオルを使用

隔離

  • 可能であれば、患者は個室で過ごす
  • 食器やタオルは共用しない
  • 症状が治まってから2~3日は注意が必要

8. 医療機関を受診すべきタイミング

多くの食中毒は自然治癒しますが、以下のような場合は速やかに医療機関を受診してください。

8-1. すぐに受診が必要な症状

重度の脱水症状

  • 尿量が著しく減少している(6時間以上排尿がない)
  • 口や舌が乾燥している
  • 皮膚の弾力がなくなっている(皮膚をつまんでも戻らない)
  • 目が落ちくぼんでいる
  • ぐったりしている、意識がもうろうとしている

激しい症状

  • 水分が全く摂取できない
  • 嘔吐や下痢が1日に10回以上
  • 激しい腹痛が続く
  • 血便(便に血が混じる)や粘血便
  • 高熱(38.5℃以上)が続く

その他の危険な兆候

  • 痙攣(けいれん)
  • 意識障害
  • 呼吸困難
  • 顔面や手足のしびれ(麻痺性貝毒の可能性)

8-2. 早めの受診を検討すべき方

以下に該当する方は、症状が軽度でも早めに医療機関を受診することをお勧めします。

  • 乳幼児(特に2歳未満)
  • 高齢者(65歳以上)
  • 妊婦
  • 糖尿病、心臓病、腎臓病などの基礎疾患がある方
  • 免疫抑制剤を服用している方

これらの方は脱水が進みやすく、重症化のリスクが高いため、注意が必要です。

8-3. 経過観察で良い場合

以下のような場合は、自宅での経過観察で問題ありません。

  • 症状が軽度(嘔吐や下痢が1日数回程度)
  • 水分摂取ができている
  • 尿が出ている
  • 意識がはっきりしている
  • 徐々に症状が軽快している

ただし、症状が2~3日続いても改善しない場合や、悪化する場合は受診してください。

9. 牡蠣による食中毒の予防法

牡蠣による食中毒を予防するためには、以下のポイントが重要です。

9-1. 牡蠣の選び方と購入時の注意

新鮮な牡蠣を選ぶ

  • 殻付き牡蠣は殻が固く閉じているものを選ぶ
  • 剥き身の牡蠣は、身が白く透明感があり、異臭がないものを選ぶ
  • 賞味期限を必ず確認する

信頼できる店舗で購入

  • 衛生管理がしっかりした店舗で購入
  • 産地が明記されているものを選ぶ
  • 生食用と加熱用の表示を確認(生食用は厳しい検査をクリアしています)

適切な保存

  • 購入後はすぐに冷蔵庫で保存(4℃以下)
  • 保存期間は短く、できるだけ早く消費する

9-2. 調理時の注意点

十分な加熱

ノロウイルスや腸炎ビブリオは加熱により死滅します。

  • 中心温度85~90℃で90秒以上加熱
  • フライや煮物、焼き牡蠣など、しっかり加熱する料理が安全
  • 電子レンジで加熱する場合も、中心まで十分に加熱されるよう注意

調理器具の衛生管理

  • まな板、包丁は肉・魚用と野菜用で分ける
  • 使用後は洗剤でよく洗い、熱湯または次亜塩素酸ナトリウムで消毒
  • 手洗いを徹底する

生食のリスクを理解する

  • 生食用の牡蠣でもノロウイルスのリスクはゼロではない
  • 免疫力が低下している時期は生食を避ける
  • 小児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある方は生食を控える

9-3. 食べる時期の選択

ノロウイルスのリスクが高い時期

  • 11月~3月の冬季はノロウイルスの流行期
  • この時期に生牡蠣を食べる場合は特に注意

腸炎ビブリオのリスクが高い時期

  • 6月~9月の夏季は腸炎ビブリオのリスクが高い
  • 夏場の牡蠣は十分な加熱を

貝毒の発生状況を確認

9-4. 個人の体調管理

免疫力を保つ

  • 十分な睡眠をとる
  • バランスの取れた食事を心がける
  • ストレスを溜めない
  • 適度な運動を行う

体調不良時は避ける

  • 風邪や胃腸炎などで免疫力が低下している時は生牡蠣を避ける
  • 疲労が蓄積している時も注意

食べる量に注意

  • 一度に大量の牡蠣を食べない
  • 初めて食べる産地の牡蠣は少量から試す

9-5. 外食時の注意

店舗の選択

  • 衛生管理がしっかりしていそうな店を選ぶ
  • 鮮度管理に自信がある店を選ぶ
  • 口コミや評判を参考にする

メニューの選択

  • 体調に不安がある時は加熱メニューを選ぶ
  • 生牡蠣を注文する際は、新鮮さや産地を確認

10. よくある質問(FAQ)

Q1. 牡蠣による食中毒は何日で治りますか?

A. 最も一般的なノロウイルスによる食中毒の場合、症状は通常2~3日で治まります。腸炎ビブリオの場合は3~4日程度です。ただし、完全な体力回復には1週間程度かかることがあります。症状が1週間以上続く場合や悪化する場合は、医療機関を受診してください。

Q2. 牡蠣を食べてどれくらいで症状が出ますか?

A. 原因により異なります。

  • ノロウイルス:24~48時間後
  • 腸炎ビブリオ:8~24時間後
  • 貝毒:30分~4時間後

多くの場合、牡蠣を食べた翌日から2日後に症状が現れます。

Q3. 加熱すれば牡蠣による食中毒は防げますか?

A. ノロウイルスや腸炎ビブリオは、中心温度85~90℃で90秒以上の加熱により死滅します。したがって、十分に加熱した牡蠣を食べることで、これらによる食中毒のリスクは大幅に減少します。ただし、貝毒は加熱しても無毒化されないため注意が必要です。

Q4. 牡蠣による食中毒は人から人へうつりますか?

A. ノロウイルスによる食中毒は、感染者の便や嘔吐物を介して人から人へ感染します。非常に感染力が強く、家族内での二次感染が起こりやすいため、手洗いの徹底や嘔吐物の適切な処理が重要です。一方、腸炎ビブリオは基本的に食品を介した感染であり、人から人への感染はほとんどありません。

Q5. 牡蠣による食中毒の時、何を食べればいいですか?

A. 急性期(症状が強い時期)は無理に食事をする必要はありません。水分補給を最優先にしてください。食欲が出てきたら、おかゆ、うどん、バナナ、りんごのすりおろしなど、消化の良いものを少量ずつ食べましょう。脂っこい食事、香辛料、アルコール、カフェインは避けてください。

Q6. 一緒に牡蠣を食べたのに自分だけ食中毒になりました。なぜですか?

A. 食中毒の発症には個人差があります。以下の理由が考えられます。

  • 摂取したウイルスや細菌の量が異なる(牡蠣ごとに汚染度が違う)
  • 個人の免疫力の違い
  • 体調の違い(疲労、ストレス、睡眠不足など)
  • 年齢(乳幼児や高齢者は発症しやすい)
  • 胃酸の分泌量の違い(胃酸は病原体を殺菌する役割がある)

Q7. 牡蠣による食中毒で病院に行くべきタイミングは?

A. 以下の場合はすぐに医療機関を受診してください。

  • 水分が全く摂取できない
  • 尿が6時間以上出ていない
  • 血便が出る
  • 激しい腹痛が続く
  • 高熱(38.5℃以上)が続く
  • 意識がもうろうとしている
  • 乳幼児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある方

症状が軽度でも2~3日経っても改善しない場合は受診を検討してください。

Q8. 牡蠣アレルギーと食中毒の違いは?

A. 牡蠣アレルギーと食中毒は症状が似ていますが、以下の点で区別できます。

牡蠣アレルギー

  • 発症時間:食後数分~2時間以内と早い
  • 主な症状:蕁麻疹、かゆみ、口の腫れ、呼吸困難など
  • 加熱の有無に関わらず発症
  • 牡蠣を食べるたびに症状が出る

食中毒

  • 発症時間:数時間~2日後と遅い
  • 主な症状:下痢、嘔吐、腹痛、発熱
  • 加熱不十分な牡蠣で発症しやすい
  • 汚染された牡蠣を食べた時のみ発症

アレルギーの場合は、アナフィラキシーショックなど重篤な症状を起こす可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。

Q9. 妊娠中に牡蠣を食べても大丈夫ですか?

A. 妊娠中は免疫力が低下しており、食中毒のリスクが高まります。また、食中毒による脱水や発熱が胎児に影響を及ぼす可能性もあります。妊娠中は以下の点に注意してください。

  • 生牡蠣は避け、十分に加熱した牡蠣のみ食べる
  • 体調が優れない時は牡蠣を控える
  • 食中毒の症状が出たら、早めに産婦人科または内科を受診する

牡蠣には亜鉛や鉄分など妊娠中に必要な栄養素が豊富に含まれているため、十分に加熱したものであれば適量を摂取することは問題ありません。

Q10. 牡蠣による食中毒を起こしたことがあります。もう牡蠣は食べられませんか?

A. 食中毒を起こしたからといって、今後も必ず食中毒になるわけではありません。ノロウイルスや腸炎ビブリオは汚染された牡蠣を食べることで感染するため、清浄な牡蠣を適切に処理・調理すれば食べることができます。

ただし、以下の点に注意してください。

  • しばらくは生食を避け、加熱したものから始める
  • 体調の良い時に少量から試す
  • 信頼できる店舗や産地の牡蠣を選ぶ
  • 免疫力を高める生活習慣を心がける

何度も食中毒を繰り返す場合や、牡蠣を食べるたびに症状が出る場合は、アレルギーの可能性も考えられるため、アレルギー検査を受けることをお勧めします。

まとめ

牡蠣による食中毒は、主にノロウイルスや腸炎ビブリオが原因で発症します。症状が治るまでの期間は、ノロウイルスの場合で2~3日、腸炎ビブリオの場合で3~4日程度が一般的です。

多くの場合、適切な水分補給と安静により自然に回復しますが、脱水症状や重症化の兆候がある場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。特に乳幼児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある方は注意が必要です。

予防のためには、牡蠣の十分な加熱(中心温度85~90℃で90秒以上)が最も効果的です。生食をする場合は、新鮮で信頼できる生食用の牡蠣を選び、体調が良い時に食べるようにしましょう。

参考文献

  1. 厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html
  2. 国立感染症研究所「ノロウイルス感染症とは」
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/441-norovirus-intro.html
  3. 厚生労働省「腸管出血性大腸菌Q&A」および食中毒関連情報
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html
  4. 東京都福祉保健局「食品衛生の窓」
    https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/
  5. 日本感染症学会「感染症診療ガイドライン」

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
電話予約
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