ワキガや多汗症の治療法として注目を集めているミラドライは、マイクロ波を利用した画期的な治療法です。従来の手術のようにメスを使わず、皮膚を切開することなく汗腺を破壊できるため、ダウンタイムが短く傷跡も残りにくいという特徴があります。しかし、実際にどのような仕組みで汗腺を破壊し、なぜ効果が持続するのか、詳しく理解している方は少ないのではないでしょうか。本記事では、ミラドライの原理や仕組みについて医学的な観点から詳しく解説します。治療を検討されている方が安心して判断できるよう、マイクロ波の作用メカニズムから安全性まで、包括的にご説明いたします。
目次
- ミラドライの仕組みと原理を医師が解説|マイクロ波治療の基礎知識
- マイクロ波による汗腺破壊メカニズム
- 汗腺の種類と治療効果
- 冷却システムと安全性
- 他の治療法との比較
- 治療の流れと効果
- よくある質問とまとめ
🔬 ミラドライの仕組みと原理を医師が解説|マイクロ波治療の基礎知識
📡 ミラドライとは?基本的な概要
ミラドライは、アメリカのMiramar Labs社が開発した、マイクロ波を用いた多汗症・ワキガ治療機器です。
- 2012年にFDA(アメリカ食品医薬品局)から承認
- 2014年に厚生労働省から薬事承認を取得
- 世界中で100万件以上の治療実績
- 切らないワキガ・多汗症治療として広く普及
ミラドライの最大の特徴は、皮膚を切開せずに汗腺を破壊できる点です。従来のワキガ治療では、剪除法などの外科的手術が主流でしたが、これらは皮膚を切開して直接汗腺を取り除く必要がありました。そのため、傷跡が残りやすく、ダウンタイムも長期間必要でした。ミラドライは、こうした従来の治療法の課題を解決する革新的な技術として開発されました。
⚡ マイクロ波の基本原理
ミラドライで使用されるマイクロ波の周波数は5.8GHzです。この周波数のマイクロ波は、水分子を効率的に振動させる特性を持っています。皮膚にマイクロ波を照射すると、水分を多く含む組織で熱が発生します。汗腺は水分を多く含む組織であるため、マイクロ波のエネルギーが効率的に吸収され、熱が発生します。
治療の特徴:
- 外来治療で完結
- 両ワキで約60〜90分程度
- 局所麻酔を使用し、治療中の痛みはほとんどなし
- 日常生活に大きな支障なく治療翌日から通常の活動に復帰可能
多汗症の治療を検討されている方は、多汗症治療の保険適用についても併せてご確認ください。
🧪 誘電加熱と選択的加熱の原理
ミラドライで使用されているマイクロ波による加熱は、「誘電加熱」と呼ばれる原理に基づいています。
誘電加熱とは:
- 電磁波のエネルギーが物質内部の極性分子(特に水分子)を振動させる
- 分子振動により熱を発生させる現象
- 電子レンジと同じ原理だが、医療用に最適化
また、マイクロ波の特性として、皮膚と皮下脂肪の境界面で反射が起こります。この反射によって、マイクロ波のエネルギーが汗腺層に集中し、より効率的な加熱が実現します。これを「コンストラクティブ・インターフェアレンス(建設的干渉)」と呼び、ミラドライの効果を高める重要な要素となっています。
⚡ マイクロ波による汗腺破壊メカニズム
🎯 マイクロ波が汗腺を破壊するプロセス
ミラドライの仕組みを理解するためには、まずマイクロ波がどのように汗腺に作用するかを知る必要があります。マイクロ波とは、電磁波の一種で、周波数300MHz〜300GHzの範囲の電波を指します。私たちの身近なところでは、電子レンジや携帯電話の通信などに使用されています。
具体的なプロセス:
- ハンドピースを皮膚に密着させ、マイクロ波を照射
- 皮膚表面から約2〜5mmの深さにある汗腺層に到達
- 汗腺細胞の水分子がマイクロ波エネルギーを吸収
- 激しい振動により熱を発生(約60〜70度)
- タンパク質が変性し汗腺が機能を失う
🌡️ 熱拡散の制御と効率性
汗腺を破壊するためには、十分な熱量を汗腺層に集中させる必要があります。しかし、熱は自然に周囲の組織へ拡散しようとします。ミラドライでは、短時間で集中的にエネルギーを照射することで、熱が拡散する前に汗腺を破壊することを可能にしています。
⚗️ 熱変性による不可逆的変化
ミラドライで汗腺が破壊されるメカニズムは、タンパク質の熱変性です。
熱変性の特徴:
- 一定以上の温度でタンパク質の立体構造が変化
- 元の形に戻ることができない「不可逆的変性」
- 卵を加熱すると白く固まり、冷やしても透明に戻らないのと同じ原理
- 60〜70度に加熱された汗腺の細胞はタンパク質が変性し機能を失う
- その後自然に体内で吸収される
🔬 汗腺の種類と治療効果
💧 エクリン腺の特徴と機能
ワキの汗腺には、エクリン腺とアポクリン腺の2種類があります。エクリン腺は、全身の皮膚に広く分布する汗腺で、主に体温調節の役割を担っています。
エクリン腺の特徴:
- 真皮の深層から皮下組織にかけて存在
- 直接皮膚表面に開口
- 直径:約0.03〜0.04mm
- ワキの下だけでも数万個存在
- 分泌される汗:99%以上が水分(塩分やカリウムなどの電解質を含む)
- 基本的に無臭
🦠 アポクリン腺の特徴と機能
アポクリン腺は、ワキの下、乳輪、外陰部など、限られた部位にのみ存在する汗腺です。
アポクリン腺の特徴:
- エクリン腺よりも深い位置(皮下組織)に存在
- 毛包に開口
- 直径:約0.3〜0.5mm(エクリン腺の約10倍)
- 数はエクリン腺より少ないが、一つ一つの分泌量は多い
- 分泌される汗:タンパク質や脂質を含む
- 皮膚表面の細菌によって分解されることでワキガ特有の臭いが発生
✅ ミラドライの両汗腺への効果
ミラドライの優れた点は、エクリン腺とアポクリン腺の両方を同時に破壊できることです。
治療効果:
- 両汗腺は皮膚の深さ約2〜5mmの範囲に存在
- ミラドライのマイクロ波はこの層に効率的にエネルギーを届ける
- エクリン腺の減少率:約70〜80%
- アポクリン腺の減少率:約70〜80%
- 多汗症の症状(汗の量の減少)とワキガの症状(臭いの軽減)の両方に効果
♻️ 効果が持続する理由
人体の多くの組織には再生能力がありますが、汗腺に関しては再生能力が非常に限られています。
汗腺の特徴:
- 胎児期に形成
- 出生後に新たに作られることはほとんどない
- 破壊された汗腺は基本的に再生されない
- 皮膚の傷が治癒するプロセスとは異なる
- 汗腺を構成する細胞には分裂・再生能力がない
ワキガの原因について詳しく知りたい方は、ワキガの遺伝的要因についても併せてご覧ください。
❄️ 冷却システムと安全性
🧊 ハイドロセラミック冷却技術
ミラドライの安全性と効果を支える重要な技術の一つが、独自の冷却システムです。マイクロ波で汗腺を加熱しながら、同時に皮膚表面を冷却することで、やけどなどの副作用を防ぎつつ、汗腺への治療効果を最大化しています。
冷却システムの特徴:
- セラミック素材を介して冷却水を循環
- 皮膚表面を効率的に冷却
- 治療中、皮膚表面の温度は約15〜20度に保持
- 照射前・照射中・照射後の全段階で機能
🛡️ サーマルプロテクションゾーンの形成
冷却システムにより、皮膚表面から約1〜2mmの深さまで「サーマルプロテクションゾーン(熱保護層)」が形成されます。
保護層の効果:
- 皮膚表面の温度が低く保たれ、マイクロ波による加熱の影響を受けにくい
- 保護層より深い汗腺層では、マイクロ波のエネルギーが集中
- 効率的な加熱が実現
- 皮膚を保護するだけでなく、治療効果も向上
🔸 安全性と副作用について
ミラドライは安全性の高い治療法として知られていますが、副作用がないわけではありません。治療を検討する際には、想定される副作用についても理解しておくことが重要です。
一般的な副作用:
- 腫れ:治療直後から現れ、数日間続く(個人差あり、多くの場合日常生活に支障なし)
- 痛み:市販の鎮痛剤で対処可能な程度
- 赤み:治療による正常な反応
- しびれ:皮膚の感覚神経が一時的に影響を受ける
- 感覚の変化:通常は数週間から数ヶ月で回復
ミラドライの術後経過について詳しく知りたい方は、ミラドライの腫れの経過についても併せてご覧ください。
⚖️ 他の治療法との比較
✂️ 剪除法(手術)との違い
ワキガ・多汗症の治療法は複数ありますが、それぞれ仕組みが異なります。剪除法は、ワキの皮膚を切開し、直接汗腺を目で確認しながら除去する手術です。
剪除法の特徴:
- 外科的に汗腺を物理的に取り除く
- 効果は確実
- 皮膚を大きく切開する必要
- 傷跡が残りやすい
- 術後の安静期間が長く、日常生活への復帰に時間がかかる
💉 ボトックス注射との違い
ボトックス注射は、ボツリヌス毒素を注射することで、神経から汗腺への信号伝達をブロックする治療法です。
ボトックス注射の特徴:
- 汗腺自体は破壊されない
- 神経信号をブロックし一時的に発汗を抑制
- 効果は通常4〜6ヶ月程度
- 効果維持には定期的な再注射が必要
- ダウンタイムがほとんどなく、施術時間も短い
🔴 レーザー・超音波治療との違い
一部のクリニックでは、レーザーや超音波を用いたワキガ治療が行われています。
レーザー治療の特徴:
- レーザー光のエネルギーで汗腺を破壊
- 浸透深度には限界
- 深部のアポクリン腺まで十分に到達しない場合がある
ミラドライとの比較:
- マイクロ波はレーザーと比較して組織への浸透性が高い
- エクリン腺とアポクリン腺の両方が存在する深さまで効率的にエネルギーを届ける
- 周囲の組織への選択性が高く、汗腺以外の組織へのダメージを最小限に抑制
ワキガ治療法の比較について詳しく知りたい方は、ワキガ治療法の徹底比較をご覧ください。
⏱️ 治療の流れと効果
📋 カウンセリングと診察
ミラドライ治療の実際の流れについて、順を追って説明します。まず、医師によるカウンセリングと診察が行われます。
カウンセリングの内容:
- ワキガや多汗症の症状について詳しく確認
- ミラドライ治療の適応があるかどうかを判断
- 治療の仕組みや期待される効果について詳しく説明
- 副作用についての説明
- 疑問点の確認
🎯 治療当日の流れ
治療当日は、まず治療部位のマーキングが行われます。
治療プロセス:
- 治療範囲のマーキング
- 局所麻酔の施行(約15〜20分程度)
- マイクロ波照射(両ワキで約40〜60分程度)
- 治療後のケアと冷却
📊 効果の実感と持続期間
多くの方が治療直後から汗の減少を実感されます。ただし、治療後数日間は腫れや炎症の影響で一時的に発汗が増加することがあります。最終的な効果は、治療後2〜3ヶ月程度で安定します。
臨床データ:
- FDAの承認を得る際の臨床試験:治療後12ヶ月時点で平均82%の汗の減少
- 5年以上の長期追跡調査でも効果の持続を確認
- 全ての汗腺を破壊することは困難だが、大幅な汗の減少を実現
- 残存した汗腺は正常に機能し続ける
- 多くの患者様で日常生活での不便さが解消
ミラドライの効果について詳しく知りたい方は、ミラドライの効果と持続期間についても併せてご覧ください。

❓ よくある質問とまとめ
💡 よくある質問
ミラドライで使用されるマイクロ波は、医療用に最適化された周波数とエネルギー量が設定されており、治療部位以外への影響は最小限に抑えられています。また、FDAや厚生労働省からの承認を受けており、安全性が確認されています。電子レンジで使用されるマイクロ波と原理は同じですが、医療機器として厳密に制御されているため、安心して治療を受けることができます。
多くの方が一度の治療で満足のいく効果を得られています。臨床データでは、一度の治療で平均70〜80%の汗の減少が報告されています。ただし、症状が重度の場合や、より高い効果を希望される場合は、2回目の治療を検討することもあります。2回目の治療は、初回治療から3ヶ月以上間隔を空けて行います。
ミラドライ治療後も、ある程度の発汗は残ります。全ての汗腺を破壊することは技術的に難しく、また体温調節のために一定の発汗機能は必要です。治療後は汗の量が大幅に減少し、日常生活で汗染みや臭いを気にすることがなくなりますが、完全に汗がゼロになるわけではありません。残存した汗腺による適度な発汗は、むしろ健康的な状態といえます。
ミラドライ治療後の代償性発汗(他の部位の汗が増える現象)は、外科的手術(ETS手術など)と比較して非常に少ないとされています。これは、ミラドライがワキの汗腺のみを局所的に破壊し、全身の発汗調節機能には影響を与えないためです。臨床報告でも、ミラドライ後の代償性発汗の発生率は低いことが示されています。
現時点では、ミラドライ治療は保険適用外の自由診療となります。そのため、治療費は全額自己負担となります。費用はクリニックによって異なりますが、両ワキの治療で30〜50万円程度が一般的です。アイシークリニック渋谷院では、カウンセリング時に詳しい費用についてご説明いたしますので、お気軽にご相談ください。
以下の方は、ミラドライ治療を受けられない場合があります。ペースメーカーなどの電子機器を体内に埋め込んでいる方、治療部位に感染症がある方、妊娠中または授乳中の方、酸素補給を必要とする方などです。また、局所麻酔に対してアレルギーがある方も注意が必要です。これらに該当する方は、事前にカウンセリングで医師にご相談ください。
多くの方が治療直後から汗の減少を実感されます。ただし、治療後数日間は腫れや炎症の影響で一時的に発汗が増加することがあります。最終的な効果は、治療後2〜3ヶ月程度で安定します。この期間に破壊された汗腺組織が体内で吸収され、治療効果が定着します。効果の判定は、この安定期を待ってから行うことをお勧めします。
📋 まとめ
本記事では、ミラドライの仕組みと原理について、医学的な観点から詳しく解説いたしました。マイクロ波による誘電加熱の原理を利用して汗腺を選択的に破壊するミラドライは、従来の外科的治療法と比較して、安全性とQOL(生活の質)の向上を両立できる革新的な治療法です。
ミラドライの特徴をまとめると:
- 5.8GHzのマイクロ波により水分を多く含む汗腺を選択的に加熱
- エクリン腺とアポクリン腺の両方を同時に破壊
- 冷却システムにより皮膚表面を保護
- 一度の治療で長期間効果が持続
- 切開を必要とせず、ダウンタイムが短い
治療を検討されている方は、まずは医師によるカウンセリングを受けて、ご自身の症状や治療への希望について詳しくご相談ください。アイシークリニック渋谷院では、ミラドライ治療の経験豊富な医師が、安心して治療を受けていただけるよう、丁寧なカウンセリングと治療を提供いたします。
📚 参考文献
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
ミラドライの優れた点は、マイクロ波の物理的特性を巧みに利用して汗腺を選択的に破壊できることです。5.8GHzという周波数は、汗腺の深度と水分含有量を考慮して最適化されており、周囲組織への影響を最小限に抑えながら確実な治療効果を実現します。この技術により、従来の手術療法に比べて安全性と利便性が大幅に向上しました。