一般皮膚科

とびひの薬について徹底解説|効果的な治療薬と正しい使い方

はじめに

お子さんの肌に水ぶくれやかさぶたができて、あっという間に広がってしまった経験はありませんか?それは「とびひ」かもしれません。とびひは正式には「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」と呼ばれる皮膚の細菌感染症で、特に夏場に子どもたちの間で流行しやすい病気です。

「火事の飛び火」のように、あっという間に症状が広がることから「とびひ」という名前がつきました。この記事では、とびひの治療に使われる薬について、その種類や使い方、効果などを詳しく解説していきます。

とびひとは?基礎知識

とびひの定義

とびひ(伝染性膿痂疹)は、主に黄色ブドウ球菌や溶連菌などの細菌が皮膚に感染することで起こる病気です。掻きむしった手を介して、あっという間に体の他の部位や他の人に感染が広がることが特徴です。

日本皮膚科学会によると、とびひは小児に多く見られる疾患で、特に夏季に流行のピークを迎えます。高温多湿の環境下で、汗や虫刺されなどで皮膚のバリア機能が低下した際に発症しやすくなります。

とびひの種類

とびひには大きく分けて2つのタイプがあります。

1. 水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)

黄色ブドウ球菌が原因で起こるタイプで、とびひの中で最も多いタイプです。特徴として:

  • 水ぶくれ(水疱)ができる
  • 水疱が破れてびらん(ただれ)になる
  • かさぶたは薄く、湿った状態
  • 乳幼児に多い
  • 夏季に多発

2. 痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)

溶連菌(A群β溶血性連鎖球菌)が主な原因となるタイプです。特徴として:

  • 厚いかさぶた(痂皮)ができる
  • 炎症が強い
  • リンパ節が腫れることがある
  • 発熱や喉の痛みを伴うことがある
  • 季節に関係なく発症
  • 年齢を問わず発症

とびひの症状

とびひの主な症状は以下の通りです:

  • 水ぶくれやただれができる
  • 強いかゆみがある
  • 掻くことで症状が広がる
  • 黄色い浸出液が出る
  • かさぶたができる
  • 患部の周りが赤く腫れる

症状は最初は小さな範囲でも、掻きむしることで手を介して急速に広がります。顔や手足など、露出した部分に多く見られますが、全身に広がることもあります。

とびひの感染経路

とびひは主に以下のような経路で感染します:

  1. 接触感染:患部を触った手で他の部位を触る
  2. 飛沫感染:患部から出た浸出液が飛び散る
  3. 人から人への感染:タオルや衣類の共有、直接的な接触

特に集団生活を送る保育園や幼稚園、学校などでは、感染が広がりやすい環境にあります。

とびひの原因菌と発症メカニズム

主な原因菌

黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)

水疱性膿痂疹の原因となる細菌で、皮膚の常在菌の一つです。健康な皮膚には通常は問題を起こしませんが、以下のような状況で感染症を引き起こします:

  • 皮膚のバリア機能が低下している
  • 傷や虫刺されなどの開放創がある
  • 汗や汚れで皮膚が不潔な状態
  • 免疫力が低下している

黄色ブドウ球菌が産生する「表皮剥脱毒素」という毒素が、皮膚の表層を剥がすことで水疱を形成します。

A群β溶血性連鎖球菌(化膿レンサ球菌)

痂皮性膿痂疹の主な原因菌です。この細菌は:

  • 強い炎症反応を引き起こす
  • 厚いかさぶたを形成する
  • 全身症状(発熱など)を伴うことがある
  • 合併症のリスクがある(腎炎など)

発症しやすい条件

以下のような条件が揃うと、とびひが発症しやすくなります:

環境要因

  • 高温多湿の季節(特に6月~9月)
  • 汗をかきやすい環境
  • 不衛生な状態

身体的要因

  • 虫刺されや擦り傷がある
  • アトピー性皮膚炎などの基礎疾患
  • 湿疹やあせもがある
  • 鼻腔内に黄色ブドウ球菌を保菌している

生活習慣要因

  • 爪が長い
  • 手洗いが不十分
  • 汗をかいたまま放置
  • タオルや衣類を共有している

とびひの診断方法

診察と視診

医師は以下のポイントを確認して診断します:

  • 皮疹の性状(水疱、びらん、痂皮の状態)
  • 発症部位と広がり方
  • 症状の経過
  • 全身状態の確認
  • 基礎疾患の有無

細菌検査

確定診断や適切な治療薬の選択のために、以下の検査を行うことがあります:

細菌培養検査

  • 患部の浸出液や膿を採取
  • 原因菌の特定
  • 薬剤感受性試験(どの抗生物質が効くか)

この検査により、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの薬剤耐性菌の有無も確認できます。

他の疾患との鑑別

とびひと似た症状を呈する疾患として:

  • 水痘(水ぼうそう)
  • 単純ヘルペス
  • 手足口病
  • 接触性皮膚炎
  • あせも

これらの疾患との鑑別も重要です。

とびひの治療薬:外用薬(塗り薬)

とびひの治療では、外用薬と内服薬を症状に応じて使い分け、または併用します。まずは外用薬について詳しく見ていきましょう。

抗菌薬含有軟膏

ゲンタシン軟膏(ゲンタマイシン硫酸塩)

アミノグリコシド系の抗生物質で、とびひ治療の第一選択薬の一つです。

  • 特徴:グラム陽性菌・陰性菌に広く効果を示す
  • 使用方法:1日2~3回、患部に直接塗布
  • 効果:黄色ブドウ球菌に対して高い抗菌活性
  • 注意点:長期使用で耐性菌が出現する可能性

フシジンレオ軟膏(フシジン酸ナトリウム)

フザン酸系の抗生物質で、特にブドウ球菌に対して強い効果を示します。

  • 特徴:黄色ブドウ球菌に対して特に有効
  • 使用方法:1日2~3回患部に塗布
  • 効果:MRSAを除く多くのブドウ球菌に有効
  • 利点:耐性菌の出現が比較的少ない

アクアチム軟膏・クリーム(ナジフロキサシン)

ニューキノロン系の外用抗菌薬です。

  • 特徴:幅広い抗菌スペクトル
  • 使用方法:1日2回患部に塗布
  • 剤形:軟膏とクリームがあり、症状に応じて選択
  • 利点:刺激が少なく、使用感が良い

バクトロバン鼻腔用軟膏(ムピロシン)

鼻腔内の黄色ブドウ球菌を除菌するための特殊な軟膏です。

  • 用途:鼻腔内保菌者の除菌
  • 使用方法:1日3回、5日間鼻腔内に塗布
  • 重要性:再発予防に効果的
  • 注意:鼻腔用として承認されているため、皮膚には使用しない

抗菌薬配合軟膏

リンデロン-VG軟膏(ベタメタゾン吉草酸エステル+ゲンタマイシン)

ステロイドと抗生物質の配合剤です。

  • 成分:ステロイド(抗炎症作用)+抗生物質(抗菌作用)
  • 適応:炎症が強い場合
  • 使用方法:1日1~数回患部に塗布
  • 注意点:ステロイド含有のため、医師の指示通りに使用
  • 使用制限:長期使用は避ける、広範囲には使用しない

ただし、日本皮膚科学会の「伝染性膿痂疹診療ガイドライン」では、ステロイド外用薬の使用については慎重な意見もあります。炎症が強い場合に限定して使用すべきとされています。

外用薬の正しい使い方

塗布前の準備

  1. 手を石鹸でよく洗う
  2. 患部を清潔にする(ぬるま湯で優しく洗う)
  3. 清潔なタオルで水気を取る

塗り方のポイント

  1. 適量を手に取る(通常、人差し指の第一関節分程度)
  2. 患部より少し広めに塗る
  3. 優しく伸ばす(こすらない)
  4. 塗布後は手を洗う

ガーゼの使い方

  • 患部に薬を塗った後、ガーゼで覆う
  • 1日1~2回、ガーゼを交換
  • 浸出液が多い場合はこまめに交換
  • ガーゼは患部より大きめにカットする
  • テープは皮膚に刺激が少ないものを選ぶ

外用薬使用時の注意点

  1. 使用期間:通常1~2週間程度
  2. 保管方法:直射日光を避け、涼しい場所で保管
  3. 他人との共有:絶対に避ける
  4. 症状の変化:改善が見られない場合は再受診
  5. 副作用:赤み、かゆみ、刺激感が強い場合は使用を中止

とびひの治療薬:内服薬(飲み薬)

症状が広範囲に及ぶ場合や、外用薬だけでは改善が難しい場合には、内服薬による全身治療が必要になります。

セファロスポリン系抗生物質

セフカペンピボキシル(フロモックス)

第3世代セファロスポリン系抗生物質で、とびひ治療の第一選択薬の一つです。

  • 特徴:幅広い抗菌スペクトル
  • 用量:成人1回100mg、1日3回食後
  • 小児用量:体重1kgあたり1日9~18mgを3回に分けて服用
  • 効果:黄色ブドウ球菌、溶連菌に有効
  • 服用期間:通常5~7日間

セフジトレンピボキシル(メイアクト)

第3世代セファロスポリン系で、効果が高い抗生物質です。

  • 特徴:強い抗菌力
  • 用量:成人1回100mg、1日3回食後
  • 小児用量:体重1kgあたり1日9mgを3回に分けて服用
  • 効果:MRSAを除く多くの菌に有効
  • 食事との関係:食後服用で吸収率が向上

ペニシリン系抗生物質

アモキシシリン(サワシリン、パセトシン)

ペニシリン系の代表的な抗生物質です。

  • 特徴:溶連菌に対して特に有効
  • 用量:成人1回250mg、1日3~4回
  • 小児用量:体重1kgあたり1日20~40mgを3~4回に分けて服用
  • 適応:特に痂皮性膿痂疹に有効
  • 安全性:比較的副作用が少ない

クラブラン酸・アモキシシリン(オーグメンチン)

ペニシリン系抗生物質とβラクタマーゼ阻害薬の配合剤です。

  • 特徴:耐性菌にも効果
  • 用量:成人1回250mg、1日3回食後
  • 利点:βラクタマーゼ産生菌にも有効
  • 副作用:下痢の頻度がやや高い

マクロライド系抗生物質

クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)

マクロライド系の代表的な抗生物質です。

  • 特徴:幅広い抗菌スペクトル
  • 用量:成人1回200mg、1日2回食後
  • 小児用量:体重1kgあたり1日10~15mgを2回に分けて服用
  • 利点:組織移行性が良い
  • 注意:マクロライド耐性菌が増加傾向

アジスロマイシン(ジスロマック)

マクロライド系で、長時間作用型の抗生物質です。

  • 特徴:1日1回、3日間の短期投与
  • 用量:成人1回500mg、1日1回食後、3日間
  • 小児用量:体重1kgあたり1日10mgを1回服用、3日間
  • 利点:服薬コンプライアンスが良い
  • 効果持続:体内に長く留まる

ニューキノロン系抗生物質(成人のみ)

レボフロキサシン(クラビット)

ニューキノロン系の抗生物質で、成人にのみ使用されます。

  • 特徴:強い抗菌力
  • 用量:成人1回500mg、1日1回
  • 適応:重症例や他の抗生物質が無効な場合
  • 小児への使用:原則として小児には使用しない
  • 注意:耐性菌出現のリスク

抗生物質の選択基準

医師は以下の要素を考慮して、最適な抗生物質を選択します:

  1. 原因菌の種類
    • 水疱性膿痂疹:黄色ブドウ球菌 → セファロスポリン系
    • 痂皮性膿痂疹:溶連菌 → ペニシリン系またはセファロスポリン系
  2. 症状の重症度
    • 軽症:外用薬のみ
    • 中等症以上:内服薬を併用
  3. 患者の年齢
    • 小児:安全性の高い薬剤を選択
    • 成人:より幅広い選択肢
  4. アレルギー歴
    • ペニシリンアレルギー:セファロスポリン系やマクロライド系を選択
    • 交差反応に注意
  5. 薬剤耐性の状況
    • 地域の耐性菌の流行状況を考慮
    • 過去の治療歴

内服薬の正しい服用方法

服用のポイント

  1. 用法・用量を守る
    • 医師の指示通りに服用
    • 飲み忘れに注意
  2. 服用時間
    • 食後服用が基本(薬剤により異なる)
    • 等間隔での服用が理想
  3. 服用期間
    • 症状が改善しても、処方された日数は必ず服用
    • 自己判断での中断は厳禁
  4. 飲み忘れた場合
    • 気づいた時点で速やかに服用
    • 次の服用時間が近い場合は1回分をスキップ
    • 2回分を一度に服用しない

小児への服用サポート

  1. 服薬補助食品の活用
    • 服薬ゼリーやオブラートの使用
    • 少量の水やお茶で溶かす
  2. 服用のタイミング
    • 食後がお腹いっぱいの場合は、食前でも可(医師に相談)
    • 嫌がる場合は好きな飲み物と一緒に
  3. 保護者の役割
    • 服薬管理表の活用
    • 保育園・学校との連携

内服薬の副作用と対処法

よくある副作用

  1. 下痢
    • 頻度:10~20%程度
    • 対処:整腸剤の併用、水分補給
    • ひどい場合は医師に相談
  2. 吐き気
    • 対処:食後の服用、少量の水で服用
    • 持続する場合は医師に相談
  3. 発疹
    • アレルギー反応の可能性
    • すぐに服用を中止し、医師に連絡
  4. 腹痛
    • 軽度なら経過観察
    • 強い痛みは医師に相談

重篤な副作用(まれ)

  • アナフィラキシー
  • 偽膜性大腸炎
  • 肝機能障害
  • 血液障害

これらの症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診してください。

薬剤耐性菌への対応

近年、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの薬剤耐性菌が問題となっています。

耐性菌が疑われる場合

  • 通常の抗生物質が効かない
  • 症状が悪化する
  • 繰り返し再発する

対応方法

  1. 細菌培養検査と薬剤感受性試験
  2. 感受性のある抗生物質への変更
  3. 場合によっては入院治療

耐性菌を増やさないために

  • 抗生物質を指示通りに最後まで服用
  • 自己判断での服用中止をしない
  • 予防接種や手洗いで感染予防

とびひの補助的治療薬

抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬

かゆみが強い場合に、かき壊しを防ぐ目的で処方されます。

第2世代抗ヒスタミン薬

  • アレグラ(フェキソフェナジン)
  • ザイザル(レボセチリジン)
  • アレロック(オロパタジン)

特徴

  • 眠気が少ない
  • 1日1~2回の服用
  • かゆみを抑えることで、掻き壊しを予防

消毒薬

患部の清潔を保つために使用されることがあります。

イソジン液(ポビドンヨード)

  • 広範囲の殺菌効果
  • 入浴時の患部洗浄に使用
  • 希釈して使用する

補助的な役割

  • 主たる治療は抗菌薬
  • 消毒薬だけでは治療効果は不十分
  • あくまで補助的な使用

亜鉛華軟膏

役割

  • 患部の保護
  • 浸出液の吸収
  • 二次感染の予防

使用方法

  • 抗菌薬の上から塗布することもある
  • ガーゼに塗って患部に貼付

とびひの治療期間と経過

標準的な治療期間

外用薬のみの場合

  • 治療期間:7~14日程度
  • 改善の目安:3~5日で症状の改善が見られる

内服薬併用の場合

  • 治療期間:5~10日程度
  • 改善の目安:2~3日で症状の改善が見られる

治癒の判断基準

以下の状態になれば、治癒したと判断できます:

  1. 新しい水疱やびらんが出現しない
  2. 既存の病変が乾燥してきている
  3. かさぶたが自然に剥がれ落ちる
  4. 浸出液が出なくなる
  5. かゆみが消失する

ただし、見た目が良くなっても、医師の指示通りに治療を継続することが重要です。

登園・登校の目安

厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」および文部科学省の「学校において予防すべき感染症」では、以下のような基準が示されています:

登園・登校停止の期間

  • 炎症症状が治まり、病変部が乾燥するまで
  • または適切な治療が開始され、病変部が覆われている状態

具体的な目安

  1. 新しい発疹が出現しなくなった
  2. すべての病変部が乾燥している、またはガーゼで覆える範囲である
  3. 全身状態が良好である
  4. 医師の許可が出ている

登園・登校時の注意点

  • 病変部はガーゼでしっかり覆う
  • プールは完全に治癒するまで禁止
  • タオルの共有は避ける
  • 手洗いを徹底する

家庭でのケア方法

薬物治療と並行して、適切な家庭でのケアも重要です。

患部のケア

洗浄方法

  1. ぬるま湯で優しく洗う
  2. 石鹸は低刺激性のものを使用
  3. ゴシゴシこすらない
  4. シャワーで洗い流す
  5. 清潔なタオルで優しく押さえるように水気を取る

入浴の注意点

  • 毎日入浴して清潔を保つ
  • 湯船につかる前に、患部をシャワーで洗う
  • 長湯は避ける
  • 入浴後は速やかに薬を塗る
  • タオルは個別に使用し、毎日洗濯

爪のケア

重要性

  • 爪から細菌が感染拡大する
  • 掻き壊しによる症状悪化を防ぐ

ケア方法

  1. 爪を短く切る
  2. やすりで角を丸くする
  3. 爪の間を清潔に保つ
  4. 手洗い後は爪ブラシで洗う

衣類・寝具の管理

洗濯のポイント

  1. 患者の衣類・タオルは個別に洗濯
  2. 60度以上のお湯で洗うと殺菌効果が高い
  3. 乾燥機の使用が望ましい
  4. 天日干しで十分乾燥させる

寝具の管理

  • シーツや枕カバーは毎日交換
  • 布団は天日干しまたは布団乾燥機を使用
  • 掃除機をかけて清潔に保つ

環境整備

室温・湿度管理

  • 室温:25~28度程度
  • 湿度:50~60%程度
  • エアコンで温度・湿度を調整
  • 汗をかきすぎない環境作り

清掃

  • 患者が触れる場所の清掃
  • おもちゃの消毒
  • ドアノブやスイッチの除菌

かゆみ対策

物理的対策

  • 爪を短く切る
  • 手袋をはめる(特に就寝時)
  • 患部を冷やす(冷たいタオルを当てる)
  • 衣類は肌触りの良いものを選ぶ

環境調整

  • 汗をかかせない
  • 涼しい環境を保つ
  • 通気性の良い服装

とびひの予防方法

日常生活での予防

手洗いの徹底

  • 外から帰ったら必ず手洗い
  • 食事前後の手洗い
  • トイレ後の手洗い
  • 石鹸を使って30秒以上洗う
  • 爪の間もしっかり洗う

皮膚の清潔保持

  1. 毎日入浴する
  2. 汗をかいたらすぐに拭く・着替える
  3. 肌を清潔に保つ
  4. 保湿をして皮膚バリアを維持

傷の適切な処置

  • 傷ができたらすぐに消毒
  • 絆創膏やガーゼで保護
  • 掻き壊さない
  • 虫刺されは早めに処置

スキンケア

保湿の重要性

  • 皮膚のバリア機能を維持
  • 特に入浴後の保湿が重要
  • 低刺激性の保湿剤を使用
  • 1日2回以上の保湿

基礎疾患のコントロール

  • アトピー性皮膚炎の適切な治療
  • 湿疹の早期治療
  • 皮膚科専門医による定期的な管理

生活習慣の改善

十分な睡眠

  • 免疫力の維持
  • 皮膚の再生促進
  • 子どもは9~10時間の睡眠が理想

バランスの良い食事

  • タンパク質の摂取(皮膚の材料)
  • ビタミン類の摂取(特にビタミンA、C、E)
  • 亜鉛の摂取(皮膚の修復)

ストレス管理

  • 免疫力の低下を防ぐ
  • 十分な休息
  • 適度な運動

集団生活での予防

保育園・幼稚園での対策

  • タオルの個別使用
  • 手洗いの徹底指導
  • 玩具の定期的な消毒
  • 早期発見・早期治療

家族内感染の予防

  • タオルの共有を避ける
  • 入浴順序の工夫(患者は最後)
  • 兄弟間の接触を控える
  • 家族全員の手洗い励行

夏季の特別な注意

プールでの注意

  • 皮膚トラブルがある場合は入水を控える
  • プール後はシャワーで体を洗う
  • 症状が出ている場合は絶対に入らない

虫刺され対策

  • 虫除けスプレーの使用
  • 長袖・長ズボンの着用
  • 刺されたら早めに処置
  • 掻かないよう注意

よくある質問(FAQ)

Q1. とびひは何日くらいで治りますか?

適切な治療を行えば、通常5~10日程度で改善します。ただし、以下の要因で治療期間は変わります:

  • 症状の重症度
  • 治療開始のタイミング
  • 薬の使用状況
  • 家庭でのケア
  • 基礎疾患の有無

完全に治るまでには2週間程度かかることもあります。

Q2. 市販薬でも治療できますか?

とびひは細菌感染症なので、処方箋が必要な抗菌薬での治療が必要です。市販薬だけでの治療は推奨されません。

理由

  • 市販薬には処方箋医薬品ほどの効果的な抗菌薬が含まれていない
  • 不適切な治療で症状が悪化・拡大する可能性
  • 耐性菌出現のリスク

怪しい症状があれば、早めに医療機関を受診してください。

Q3. 兄弟にうつりますか?予防方法は?

とびひは感染力が強く、兄弟間でうつる可能性があります。

予防方法

  • タオルや衣類の共有を避ける
  • 入浴は患者を最後にする
  • 患部に触れないよう注意
  • 手洗いの徹底
  • 患部はガーゼでしっかり覆う
  • おもちゃの共有を避ける、または消毒する

Q4. 大人もとびひになりますか?

大人もとびひになることはありますが、子どもに比べると発症頻度は低いです。

大人が発症しやすい条件

  • 免疫力が低下している
  • アトピー性皮膚炎などの基礎疾患がある
  • 傷や湿疹がある
  • 不衛生な状態

大人の場合、痂皮性膿痂疹が多い傾向があります。

Q5. 再発することはありますか?

とびひは再発することがあります。

再発の原因

  1. 治療の中断:症状が良くなっても、処方された薬を最後まで使わない
  2. 鼻腔内保菌:鼻の中に黄色ブドウ球菌が残っている
  3. 基礎疾患:アトピー性皮膚炎などの管理不足
  4. 生活習慣:予防対策が不十分

再発予防

  • 治療を完遂する
  • 鼻腔内除菌(必要に応じて)
  • 基礎疾患の適切な管理
  • スキンケアの徹底
  • 生活習慣の改善

Q6. 学校を休む必要がありますか?

学校保健安全法では、とびひは「第三種の感染症」に分類されており、「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」出席停止とされています。

登校の目安

  • 炎症症状が治まっている
  • 病変部が乾燥している、またはガーゼで覆える
  • 医師の許可がある

通常、適切な治療を開始して2~3日で登校できることが多いですが、症状の程度により異なります。

Q7. 妊娠中・授乳中でも薬は使えますか?

妊娠中

  • 多くの抗菌外用薬は使用可能
  • 内服薬は種類によって使用制限あり
  • 医師に必ず妊娠を伝える

授乳中

  • 外用薬は基本的に問題なし
  • 内服薬も多くは使用可能
  • 医師に授乳中であることを伝える

いずれの場合も、自己判断せず、必ず医師に相談してください。

Q8. プールはいつから入れますか?

とびひが完全に治るまで、プールは禁止です。

理由

  • 他の子どもへの感染リスク
  • 塩素による患部の刺激
  • 症状悪化の可能性

プール再開の目安

  • すべての病変が乾燥している
  • かさぶたが完全に取れている
  • 新しい発疹が出ていない
  • 医師の許可がある

通常、完全に治るまで2~3週間かかることがあります。

Q9. 食事で気をつけることはありますか?

特別な食事制限は必要ありませんが、以下の点に注意すると良いでしょう:

推奨される食品

  • タンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)
  • ビタミンA(緑黄色野菜、レバー)
  • ビタミンC(果物、野菜)
  • 亜鉛(牡蠣、肉類、ナッツ)

避けたい食品

  • 特にありませんが、アレルギーのある食品は避ける
  • 極端に刺激の強い食品は控えめに

バランスの良い食事で、免疫力と皮膚の回復力を高めましょう。

Q10. とびひの跡は残りますか?

適切に治療すれば、通常は跡は残りません。

跡が残る可能性がある場合

  • 掻き壊しが激しい
  • 二次感染を起こした
  • 治療が遅れた
  • 深い傷になった

跡を残さないために

  • 早期治療
  • 掻かない工夫
  • 適切な薬の使用
  • 保湿ケア

万が一、跡が残った場合でも、時間とともに薄くなることが多いです。

とびひで医療機関を受診すべきタイミング

以下のような場合は、すぐに医療機関を受診してください。

緊急性の高い症状

  1. 全身症状
    • 高熱(38度以上)
    • 強い倦怠感
    • 食欲不振
    • 意識がもうろうとしている
  2. 局所症状の悪化
    • 急速に症状が広がる
    • 強い痛みや腫れ
    • 赤みが広範囲に広がる
    • 膿が大量に出る
  3. 合併症の兆候
    • 血尿や茶色い尿
    • 顔や手足のむくみ
    • リンパ節の腫れ
    • 関節の痛みや腫れ

通常の受診タイミング

  1. 初期症状
    • 水ぶくれができた
    • かゆみを伴う赤い発疹
    • 虫刺されが悪化した
  2. 治療中の変化
    • 処方された薬を使っても改善しない
    • 3日以上経過しても変化がない
    • 新しい発疹が次々とできる
  3. 再発
    • 治ったと思ったらまた症状が出た
    • 繰り返し再発する

まとめ

とびひ(伝染性膿痂疹)は、主に黄色ブドウ球菌や溶連菌による細菌感染症で、特に子どもに多く見られる疾患です。適切な治療と予防で、症状の拡大を防ぎ、早期に治すことができます。

とびひ治療薬のポイント

外用薬

  • ゲンタシン軟膏、フシジンレオ軟膏などの抗菌薬が第一選択
  • 1日2~3回、患部に塗布
  • ガーゼで覆って感染拡大を防ぐ

内服薬

  • セファロスポリン系、ペニシリン系抗生物質が主流
  • 症状の程度に応じて処方
  • 処方された日数は必ず服用完了

補助的治療

  • 抗ヒスタミン薬でかゆみをコントロール
  • 消毒薬で患部を清潔に保つ

治療成功のカギ

  1. 早期発見・早期治療:症状に気づいたらすぐに受診
  2. 適切な薬の使用:医師の指示通りに最後まで使用
  3. 家庭でのケア:清潔保持、掻かない工夫
  4. 感染予防:手洗い、タオルの個別使用
  5. 再発予防:スキンケア、生活習慣の改善

日本皮膚科学会のガイドライン

日本皮膚科学会が発行する「伝染性膿痂疹診療ガイドライン」では、エビデンスに基づいた標準的な診断・治療方法が示されています。医療従事者だけでなく、患者さんやご家族も参考にできる情報が掲載されています。

信頼できる情報源

とびひについてさらに詳しく知りたい方は、以下の公的機関の情報もご参照ください:

とびひは適切な治療で確実に治る病気です。疑わしい症状があれば、早めに皮膚科や小児科を受診し、医師の指導のもとで治療を進めましょう。


参考文献

  1. 日本皮膚科学会. 伝染性膿痂疹診療ガイドライン. https://www.dermatol.or.jp/modules/guideline/
  2. 厚生労働省. 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版). https://www.mhlw.go.jp/
  3. 国立感染症研究所. 感染症情報センター. https://www.niid.go.jp/niid/ja/
  4. 日本小児皮膚科学会. 小児の皮膚疾患について. http://jspd.umin.jp/
  5. 文部科学省. 学校において予防すべき感染症の解説. https://www.mext.go.jp/

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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