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💡 この記事でわかること
✅ ボトックス治療の効果は2週間で最大化、4〜9か月持続
✅ わきの原発性多汗症は保険適用で自己負担約1.5〜2万円も可能
✅ 副作用は可逆的で安全性が高い
✅ 手のひら・足裏など複数部位に対応
目次
- 多汗症とはどんな病気?
- 多汗症の原因と種類
- 多汗症の診断基準
- ボトックスとは何か?
- 多汗症にボトックスが効く仕組み
- ボトックス治療の対象部位
- ボトックス治療の流れと施術内容
- 効果の出方と持続期間
- 費用の目安
- 副作用とリスク
- ボトックス治療が向いている人・向いていない人
- 他の多汗症治療との比較
- 日常生活での注意点
- まとめ
この記事のポイント
多汗症へのボトックス治療はアセチルコリン放出を阻害して発汗を抑制し、効果は2週間で最大化、4〜9か月持続する。わきの原発性多汗症は保険適用(自己負担約1.5〜2万円)も可能で、副作用は可逆的。当院では手のひら・足裏など複数部位に対応している。
💡 多汗症とはどんな病気?
多汗症とは、体温調節に必要な量を超えた過剰な発汗が起きる状態を指します。人間が汗をかくのは体温を下げるための生理的な反応ですが、多汗症の場合は精神的なストレスや緊張とは関係なく、あるいはそれをはるかに超えるレベルで汗が分泌されます。
日本での多汗症の有病率は約5〜12%程度とされており、決して珍しい疾患ではありません。しかし、「汗をかくのは当たり前のこと」という認識から、医療機関を受診せずに悩み続けている方が多いのが現状です。実際には多汗症は治療によって症状を大幅に改善できる疾患であり、適切なケアを受けることで生活の質(QOL)を高めることが可能です。
多汗症による発汗は、仕事中や学校生活、対人関係においてさまざまな支障をもたらします。白い服を避ける、握手を恐れる、書類が汗で濡れる、などの具体的な困りごとが日常的に発生し、精神的なストレスや自信喪失にもつながることがあります。
Q. 多汗症のボトックス治療はどんな仕組みで発汗を抑えるの?
ボトックス(ボツリヌス毒素)を皮膚に注射すると、神経末端から汗腺へのアセチルコリン(発汗を促す神経伝達物質)の放出が阻害されます。これにより「汗をかけ」という指令が汗腺に届かなくなり発汗が抑制されます。効果は可逆的で、神経再生とともに自然に回復します。
📌 多汗症の原因と種類
多汗症は大きく分けて「原発性多汗症」と「続発性多汗症」の2種類があります。それぞれ原因や特徴が異なります。
✅ 原発性多汗症
原発性多汗症は、特定の疾患や薬の副作用など、他の原因がなく発症する多汗症です。多汗症全体の中でも最も多いタイプで、遺伝的な要因が関わっていることも多く、家族に同じ悩みを持つ人がいるケースも見られます。
原発性多汗症では、エクリン汗腺を支配する交感神経が過剰に反応することで汗の分泌が増加します。精神的な緊張や興奮が引き金になりやすいことから「精神性発汗」とも呼ばれますが、安静時にも発汗することがあります。特にわき、手のひら、足の裏、頭部・顔面などに発汗が集中する「局所多汗症」として現れることが多いのが特徴です。
📝 続発性多汗症
続発性多汗症は、糖尿病、甲状腺機能亢進症、更年期障害、感染症、悪性腫瘍、または特定の薬物の服用などが原因となって起こる多汗症です。全身に均一に発汗が起きることが多く、就寝中にも発汗(寝汗)が見られることがあります。続発性多汗症の場合は、原因となっている基礎疾患の治療が優先されます。
ボトックス治療の主な対象となるのは原発性多汗症、特に局所的な発汗が問題となっているケースです。
✨ 多汗症の診断基準
多汗症の診断は、問診と視診を中心に行われます。国際的な診断基準として広く用いられているのが「Hornbergerの診断基準」で、以下の条件に基づいて判断されます。
まず、明らかな原因がない局所的な過剰発汗が6か月以上続いていることが前提となります。さらに、次の項目のうち2つ以上を満たす場合に多汗症と診断されます。
- 左右対称の部位に発汗がある
- 週に1回以上、日常生活に支障をきたすエピソードがある
- 25歳以下で発症した
- 家族に多汗症の人がいる
- 睡眠中は発汗が止まる
また、重症度の評価には「多汗症疾患重症度尺度(HDSS)」や「重量法(ろ紙重量法)」なども活用されます。HDSSでは患者が自分の日常生活への影響度を1〜4で評価し、スコア3以上を「重症」として積極的な治療対象とすることが一般的です。
自分が多汗症かどうか判断に迷う方は、まず皮膚科や美容クリニックで相談することをおすすめします。正確な診断のうえで最適な治療法を選ぶことが大切です。
🔍 ボトックスとは何か?
「ボトックス」という名称は、ボツリヌス毒素(Botulinum toxin)を成分とする製剤の商品名です。ボツリヌス菌が産生するタンパク質を精製・無毒化したもので、神経と筋肉・腺の接合部における信号伝達を一時的に遮断する作用を持っています。
ボトックスは1980年代に眼瞼痙攣や斜視の治療薬として医療応用が始まりました。その後、シワ改善などの美容医療分野でも広く使われるようになり、現在では多汗症治療をはじめ、片頭痛、過活動膀胱、慢性疼痛など、さまざまな疾患の治療にも用いられています。
日本では、わきの多汗症に対するボトックス治療に承認されている製剤として「ボトックスビスタ」(アラガン社)や「ゼオミン」などがあります。これらは適切な用量・用法のもとで使用すれば高い安全性が確認されており、世界中で広く臨床使用されています。
ボトックスというと「毒」というイメージを持つ方もいますが、医療用に精製・調整されたボツリヌス毒素は、適切な濃度と量で使用する限り人体に深刻な影響を与えません。施術は専門の医師が行うため、安心して受けることができます。
Q. わきの多汗症ボトックス治療は保険適用になりますか?
原発性腋窩多汗症(わきの多汗症)へのボトックス治療は、2012年より一定条件下で保険適用が認められています。条件は多汗症疾患重症度尺度(HDSS)で3〜4点であること、外用薬で効果不十分であることなどです。保険適用時の自己負担(3割)は両わきで約1万5,000〜2万円が目安です。
💪 多汗症にボトックスが効く仕組み
多汗症にボトックスが効く理由は、発汗のメカニズムと深く関わっています。
人体の発汗は、交感神経から分泌されるアセチルコリンという神経伝達物質が汗腺(エクリン汗腺)を刺激することで起こります。アセチルコリンが汗腺の受容体に結合すると、汗腺が活性化されて汗が分泌されます。
ボトックス(ボツリヌス毒素)を皮膚に注射すると、神経末端から汗腺へのアセチルコリンの放出が阻害されます。つまり、「発汗しなさい」という神経からの指令が汗腺に届かなくなることで、発汗が抑制されるというわけです。
この作用は永続的なものではなく、時間の経過とともに神経が再生されると再びアセチルコリンが分泌されるようになります。そのため、ボトックスの効果には持続期間があり、定期的な注射が必要になります。逆に言えば、「効果が切れたら元に戻る」という可逆性があることも、ボトックス治療の安心できるポイントのひとつです。
また、ボトックスの作用は局所的なものであるため、注射した部位の発汗が抑制されても、体全体の体温調節機能が損なわれることはありません。残りの汗腺が補完するため、体温調節に問題が生じることはないとされています。
🎯 ボトックス治療の対象部位
多汗症のボトックス治療は、さまざまな部位に対応しています。主な対象部位とその特徴を見ていきましょう。
🔸 わき(腋窩多汗症)
最もポピュラーなボトックス治療の対象部位です。日本では「原発性腋窩多汗症」に対するボトックス治療が保険適用(一定条件を満たす場合)となっており、重症の方には保険診療としての治療が可能です。わきは皮膚が柔らかく注射しやすいため、施術時の痛みも比較的少なく、効果も安定しやすい部位とされています。
⚡ 手のひら(手掌多汗症)
手のひらの多汗症は、日常生活への支障が大きく、精神的な負担も重い部位です。ペンが握れない、書類を汗で濡らしてしまう、握手ができないといった悩みが多く寄せられます。手のひらへのボトックス治療は自由診療となることがほとんどですが、高い効果が期待できます。ただし、手のひらは神経や腱が密集しており、感覚が敏感なため、注射時に痛みを感じやすい部位です。麻酔クリームや冷却などで対応するクリニックが多くなっています。
🌟 足の裏(足底多汗症)
足の裏の発汗が多いと、靴の中が蒸れる、滑る、水虫のリスクが上がるなどの問題が生じます。足の裏も手のひらと同様に神経が集中しており、痛みを感じやすい部位です。ボトックス治療で発汗を抑えることで、快適な日常生活を取り戻せる方が多くいます。
💬 頭部・顔面(頭部・顔面多汗症)
頭や顔の発汗が多い場合も、ボトックス治療が有効とされています。食事中に顔や頭に大量の汗をかく「味覚性発汗」などにも対応できることがあります。ただし、顔面への注射は血管や神経が密集しているため、特に経験豊富な医師による施術が必要です。
✅ その他の部位
胸部、背部、鼠径部(そけいぶ)など、上記以外の部位にも対応している場合があります。気になる部位がある場合は、クリニックに相談してみましょう。
💡 ボトックス治療の流れと施術内容
ボトックス治療は外来で行われる比較的簡便な処置で、入院は不要です。一般的な施術の流れを解説します。
📝 カウンセリング・診察
まず医師による問診と診察が行われます。発汗の部位・程度・日常生活への影響などを確認し、多汗症の診断とボトックス治療の適応を判断します。アレルギーや服用中の薬などについても確認が必要です。保険診療を希望する場合は、既定の基準を満たしているかどうかも確認されます。
🔸 ヨウ素でんぷん反応テスト(任意)
施術前に、発汗の多い範囲を特定するために「ヨウ素でんぷん反応テスト(マイナーテスト)」を行うクリニックもあります。皮膚にヨウ素液を塗布してでんぷん粉をかけると、発汗している部分が紫〜黒色に変色するため、注射すべき範囲を視覚的に確認することができます。
⚡ 麻酔・冷却処置
痛みを軽減するため、麻酔クリーム(リドカインなど)を塗布して一定時間置くか、冷却スプレーや保冷材で皮膚を冷やします。手のひらや足の裏など痛みを感じやすい部位では、ブロック麻酔(神経ブロック)を行う場合もあります。
🌟 ボトックス注射
細い注射針を使って、対象部位に均等にボトックスを注入します。注射の間隔はおおよそ1〜2cm程度で、わきの場合は一側あたり15〜20箇所程度が一般的です。施術時間は部位や範囲にもよりますが、両わきで15〜30分程度が目安です。
💬 施術後の確認・注意点の説明
施術後は注射部位の状態を確認し、ダウンタイムや日常生活上の注意点について説明を受けます。施術当日は激しい運動や飲酒、入浴(シャワーは可)を控えることが一般的です。
Q. 多汗症ボトックス治療の効果はいつ出てどのくらい続く?
ボトックス注射後、2〜7日ほどで発汗が徐々に減少し始め、2週間前後で最大の効果が現れます。効果の持続期間は個人差がありますが、多くの場合4〜9か月程度です。わきは6か月前後、手のひら・足の裏はやや短く3〜6か月程度の傾向があり、効果が薄れたら再施術で維持できます。
📌 効果の出方と持続期間
ボトックス治療の効果は、施術直後からすぐに現れるわけではなく、一般的に注射後2〜7日ほどで徐々に発汗が減少し始め、2週間前後で最大の効果が現れます。「昨日まであんなに汗をかいていたのに、急に止まった」と感じる方も多いようです。
効果の持続期間は個人差がありますが、多くの場合4〜9か月程度とされています。わきへの治療では6か月前後持続する方が多く、手のひらや足の裏では若干短め(3〜6か月程度)の傾向があります。
繰り返し施術を受けることで、効果が長持ちするようになると感じる方もいます。また、施術を重ねるうちに必要なボトックスの量が変化する場合もありますので、定期的に医師と相談しながら治療を継続することが大切です。
効果が切れてきたと感じたら、再度施術を受けることで発汗の抑制効果を維持することができます。年に1〜2回の施術で快適な状態を保てる方も多くいます。
✨ 費用の目安
多汗症に対するボトックス治療の費用は、保険診療か自由診療かによって大きく異なります。
✅ 保険診療(わきの多汗症)
2012年より、「原発性腋窩多汗症」に対するボトックス治療(ボトックスビスタ)は日本でも保険適用となりました。ただし、保険が適用されるためには一定の条件を満たす必要があります。具体的には、多汗症疾患重症度尺度(HDSS)で3〜4点であること、外用薬(塩化アルミニウム液)による治療で効果不十分であることなどが条件となります。
保険適用の場合、患者の自己負担額(3割負担)は両わきで1万5000円〜2万円程度が目安です(医療機関によって異なります)。
📝 自由診療(わき以外の部位・保険適用外の場合)
手のひら、足の裏、顔・頭部など、わき以外の部位への治療や、保険適用の条件を満たさない場合は自由診療となります。クリニックによって料金設定は異なりますが、一般的な費用の目安は以下の通りです。
わき(自由診療):両側で3万〜6万円程度
手のひら:両側で4万〜8万円程度
足の裏:両側で4万〜8万円程度
頭部・顔面:部位・範囲による(3万〜10万円程度)
なお、費用はクリニックや使用するボトックス製剤の種類・量によっても差があります。カウンセリング時に詳しく確認することをおすすめします。費用面だけで判断するのではなく、医師の経験や施術環境、アフターフォロー体制なども含めて総合的に選ぶことが大切です。
🔍 副作用とリスク
ボトックス治療は安全性が高い処置ですが、副作用がまったくないわけではありません。事前に理解しておきたい主な副作用とリスクを紹介します。
🔸 注射部位の一時的な症状
施術後に注射部位の赤みや腫れ、内出血が生じることがあります。これらは多くの場合、数日以内に自然に消退します。内出血が目立つ場合でも、1〜2週間程度で落ち着くことがほとんどです。
⚡ 代償性発汗
治療した部位の発汗が抑制されることで、他の部位(背中や腹部など)での発汗が増える「代償性発汗」が起こる場合があります。これは体温調節のために他の部位が補完する現象で、全身への影響を心配する方にとっては気になるポイントかもしれません。ただし、すべての人に起こるわけではなく、起こっても軽度なケースが多いとされています。
🌟 筋力低下
手のひらへの注射では、周辺の筋肉にボトックスが影響し、一時的に握力が低下したり、細かい動作がしにくくなることがあります。この症状は数週間〜数か月で自然に回復します。生じる可能性を事前に理解したうえで施術を受けることが大切です。
💬 アレルギー反応
ボトックスに対するアレルギー反応は非常にまれですが、ゼロではありません。施術後に異常なかゆみや発疹、呼吸困難などの症状が現れた場合は、すぐに医療機関に連絡することが必要です。
✅ 効果の不均一
注射した部位によって発汗の抑制に差が出る「むら」が生じることがあります。効果が不十分な部位には追加注射を行うことで対応できます。
📝 ボトックスが効かない・効きにくい場合
ごくまれに、ボトックスに対する抗体が形成されることで効果が出にくくなることがあります。また、製剤の種類を変えることで改善する場合もあります。
Q. 多汗症ボトックス治療の主な副作用にはどんなものがある?
主な副作用として、注射部位の一時的な赤み・腫れ・内出血(数日〜2週間で改善)、治療部位以外の発汗が増える代償性発汗、手のひらへの注射による一時的な握力低下などがあります。いずれも時間とともに回復する可逆的なものがほとんどです。妊娠中や神経筋疾患がある方は治療を受けられない場合があります。
💪 ボトックス治療が向いている人・向いていない人
ボトックス治療はすべての人に適しているわけではありません。治療を検討する前に、自分が対象かどうかを確認しましょう。
🔸 ボトックス治療が向いている人

- わき、手のひら、足の裏などの局所に過剰な発汗があり、日常生活に支障をきたしている
- 市販の制汗剤や外用薬では効果が不十分だった
- 手術(ETS:内視鏡的胸部交感神経遮断術)に抵抗がある、または手術適応でない
- 比較的短期間でなんとかしたい(就職活動や結婚式などイベントを控えている)
- 副作用が出ても元に戻せる可逆的な治療を希望する
⚡ ボトックス治療が向いていない人・注意が必要な人
- 妊娠中・授乳中の方(ボトックスは胎児への影響が明確でないため避けることが推奨されます)
- 神経筋疾患(重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症など)を持つ方
- ボツリヌス毒素やその製剤成分にアレルギーがある方
- 注射部位に感染症や炎症がある方
- アミノグリコシド系抗生物質など、神経筋接合部に作用する薬を服用中の方
- 続発性多汗症(基礎疾患が原因)の方
上記に該当する場合でも、医師に相談することで最適な代替治療を提案してもらえることがあります。まずはカウンセリングを受けてみましょう。
🎯 他の多汗症治療との比較
多汗症の治療法はボトックスだけではありません。それぞれの特徴を知ることで、自分に合った治療を選びやすくなります。
🌟 塩化アルミニウム外用液
汗腺の出口を物理的にふさぐ作用がある外用薬です。比較的安価で手軽に試せる一方、皮膚への刺激が強く、かゆみや皮膚炎が生じる場合があります。効果には個人差があり、重症の多汗症では不十分なこともあります。保険診療の最初のステップとして選ばれることが多い治療法です。
💬 イオントフォレーシス
水の入った容器に手や足を浸し、微弱な電流を流して発汗を抑制する治療法です。主に手のひら・足の裏の多汗症に用いられます。効果はある程度期待できますが、頻回(週数回)の通院または自宅での使用が必要で、継続的な手間がかかります。
✅ 内服薬(抗コリン薬)
抗コリン作用を持つ薬(プロパンテリンなど)を内服することで、全身の発汗を抑制します。全身性の多汗症や、ボトックス注射が難しい部位への発汗に有効ですが、口の渇き、便秘、尿閉などの副作用が問題になることがあります。
📝 ミラドライ(マイクロ波治療)
マイクロ波を使って汗腺を破壊する治療法で、主にわきの多汗症に用いられます。一度の施術で長期間(半永久的)の効果が期待できる点が大きなメリットです。ダウンタイムが数日〜1週間程度あること、費用が高額(数十万円)であることがデメリットとして挙げられます。
🔸 ETS(内視鏡的胸部交感神経遮断術)
胸腔内視鏡を使って交感神経を焼灼・切断する外科手術です。根治的な効果が期待できますが、全身麻酔が必要で入院を伴います。代償性発汗が高頻度で起こるというリスクもあり、現在では適応が限定的になっています。
ボトックス治療はこれらと比較して、効果の確実性、侵襲の少なさ、可逆性のバランスが優れており、多くの患者にとって現実的な選択肢となっています。
💡 日常生活での注意点
ボトックス治療を受ける前後に気をつけておきたい日常生活上のポイントをまとめます。
⚡ 施術前の注意点
施術前日や当日は、除毛(シェービング)を行う場合があります。わきの場合はシェービングをしておくと施術がしやすくなりますが、施術直前のシェービングは皮膚への刺激になるため、前日までに済ませておくのが理想です。また、制汗剤などは施術当日には使用しないようにしましょう。
血液をさらさらにする薬(ワーファリン、アスピリンなど)を服用している方は、あらかじめ医師に申告が必要です。場合によっては施術前に服用を一時中断するよう指示されることがあります(主治医と相談のうえ判断してください)。
🌟 施術当日の注意点
施術当日は、激しい運動や飲酒を避けてください。また、注射部位への強い圧力や摩擦も控えることが推奨されます。シャワーは施術当日でも問題ないことがほとんどですが、入浴(湯船に浸かること)は翌日以降にするよう指示されることが多いです。施術後のマッサージは薬剤が広がって思わぬ部位に影響する可能性があるため、行わないよう注意しましょう。
💬 施術後の経過観察
効果が現れるまでの数日〜2週間は、発汗の変化を観察してみてください。一部の部位で効果が不十分だと感じる場合は、2週間後をめどにフォローアップの受診をすることで追加注射の検討ができます。
✅ 生活習慣の見直し
ボトックス治療は多汗症の根本的な原因を解決するものではなく、あくまでも症状を一時的にコントロールするものです。そのため、治療と並行して生活習慣を見直すことも大切です。ストレス管理、適度な運動、規則正しい生活、バランスの取れた食事などは、多汗症の症状を悪化させないうえでも重要です。カフェインやアルコール、香辛料の摂り過ぎは発汗を促進するとされているため、気になる方は控えめにすることをおすすめします。
📝 心理的なケアも大切に
多汗症は身体的な症状だけでなく、精神的なストレスや社会生活への影響が大きい疾患です。治療によって発汗が改善しても、長年の経験から「汗をかくかもしれない」という不安が残る方もいます。必要に応じてカウンセリングや心療内科での相談も選択肢のひとつです。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「多汗症は「体質だから仕方ない」と長年諦めていた方が、当院のカウンセリングで初めて治療の選択肢を知るケースも少なくありません。ボトックス治療はわきの原発性多汗症であれば保険適用も可能で、手のひらや足の裏など日常生活への支障が大きい部位にも対応できるため、最近の傾向として幅広い年代の方からご相談をいただいております。効果の可逆性があり身体への負担も少ない治療ですので、発汗のお悩みで生活の質が下がっていると感じている方は、まず一度医療機関にご相談ください。」
📌 よくある質問
わきの原発性多汗症(腋窩多汗症)については、一定の条件を満たす場合に保険適用が可能です。具体的には、多汗症疾患重症度尺度(HDSS)で3〜4点であること、外用薬による治療で効果が不十分であることなどが条件となります。保険適用時の自己負担額(3割)は両わきで1万5,000円〜2万円程度が目安です。
施術後2〜7日ほどで発汗が徐々に減少し始め、2週間前後で最大の効果が現れます。効果の持続期間は個人差がありますが、多くの場合4〜9か月程度です。わきは6か月前後、手のひらや足の裏はやや短めの3〜6か月程度の傾向があります。効果が切れてきたと感じたら、再度施術を受けることで効果を維持できます。
施術当日は激しい運動・飲酒・入浴(湯船)を控えてください。シャワーは当日でも問題ない場合がほとんどです。また、注射部位へのマッサージや強い圧力は薬剤が広がる原因になるため避けてください。効果が現れるまでの約2週間は発汗の変化を観察し、不十分な部分があれば追加注射の相談が可能です。
注射部位の一時的な赤みや腫れ、内出血が生じる場合がありますが、多くは数日〜2週間で落ち着きます。他にも、治療部位以外の発汗が増える「代償性発汗」や、手のひらへの注射では一時的な握力低下が起こることがあります。いずれも時間とともに回復する可逆的なものがほとんどですが、事前に医師へご相談ください。
妊娠中・授乳中の方は、胎児への影響が明確でないためボトックス治療は推奨されていません。また、重症筋無力症などの神経筋疾患がある方や、ボツリヌス毒素にアレルギーがある方も治療が受けられない場合があります。該当する可能性がある方は、まず当院のカウンセリングでご相談いただければ、最適な代替治療についてご提案いたします。
✨ まとめ
多汗症のボトックス治療は、局所の過剰な発汗を安全かつ効果的にコントロールできる治療法として、世界中で広く活用されています。アセチルコリンの放出を阻害することで汗腺の活動を抑制する仕組みを持ち、施術から2週間前後で最大の効果が現れ、4〜9か月程度持続します。
わきの原発性多汗症については保険適用もあり、費用面でのハードルが下がっています。手のひらや足の裏など他の部位は自由診療となりますが、生活への支障を考えれば十分に検討の価値があります。
副作用としては注射部位の一時的な症状や代償性発汗、手のひらへの注射では一時的な筋力低下などが挙げられますが、効果が可逆的であることが安心感につながっています。妊娠中や特定の疾患がある場合は治療を受けられない場合があるため、必ず事前に医師に相談しましょう。
多汗症は「ただ汗をかきやすい体質」ではなく、適切な治療によって症状を改善できる疾患です。悩みを一人で抱え込まず、まずは専門の医師に相談することが、快適な日常生活を取り戻す第一歩となります。
📚 関連記事
- 脇ボトックスの効果と持続期間を徹底解説|施術前に知っておきたいこと
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- 思春期のワキガは一時的?原因・見分け方・対処法を解説
📚 参考文献
- 日本皮膚科学会 – 多汗症の診断基準(Hornbergerの診断基準)、重症度評価(HDSS)、原発性・続発性多汗症の分類、治療法の選択に関するガイドライン情報
- 厚生労働省 – ボトックスビスタの保険適用(原発性腋窩多汗症)に関する承認・保険診療条件、医薬品としての安全性・用法に関する公的情報
- PubMed – ボツリヌス毒素の多汗症治療における有効性・持続期間・副作用(代償性発汗・筋力低下等)に関する国際的な臨床研究・エビデンス
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務