はじめに
お子さんが手足口病にかかったとき、多くの保護者の方が「プールはいつから入れるの?」「他の子にうつしてしまわないか心配」と悩まれることでしょう。特に夏場は保育園や幼稚園のプール活動、スイミングスクール、レジャー施設のプールなど、水遊びの機会が多い季節です。
手足口病は主に乳幼児に多く見られる感染症で、毎年夏を中心に流行します。発疹があるとプールに入れないというイメージがあるかもしれませんが、実際のところはどうなのでしょうか。
この記事では、アイシークリニック渋谷院の医師が、手足口病とプールの関係について、最新の医学的知見をもとに詳しく解説します。感染のリスク、プールに入れる時期の判断基準、予防方法、よくある疑問まで、保護者の方が知っておくべき情報を網羅的にお伝えします。
手足口病とは?基礎知識を理解する
手足口病の定義と特徴
手足口病は、主にコクサッキーウイルスA16型やエンテロウイルス71型などのエンテロウイルスによって引き起こされる感染症です。その名前の通り、手のひら、足の裏、口の中に特徴的な水疱性の発疹が現れることから、この名称で呼ばれています。
日本では毎年、主に夏季(6月から8月)を中心に流行し、特に5歳以下の乳幼児が感染者の約90%を占めます。保育園や幼稚園など、子どもたちが集団生活を送る場所で感染が拡大しやすい特徴があります。
主な症状
手足口病の典型的な症状は以下の通りです。
初期症状
- 発熱(37〜38度程度、出ないこともある)
- のどの痛み
- 食欲不振
- 全身のだるさ
特徴的な発疹
- 手のひら、指の間に2〜3mmの水疱や赤い発疹
- 足の裏、足の甲にも同様の発疹
- 口の中(舌、歯茎、頬の内側)に痛みを伴う水疱
- お尻や膝にも発疹が出ることがある
発疹の経過 水疱は通常3〜7日程度で自然に消失します。かさぶたになることは少なく、色素沈着も残りにくいのが特徴です。ただし、発症から1〜2か月後に爪が剥がれることがありますが、これも自然に治ります。
感染経路
手足口病の感染経路は主に以下の3つです。
1. 飛沫感染 咳やくしゃみ、会話の際に飛び散る唾液などの飛沫を介して感染します。
2. 接触感染 感染者が触れたおもちゃ、ドアノブ、タオルなどを介して感染します。特に水疱の内容物には大量のウイルスが含まれているため、注意が必要です。
3. 糞口感染 感染者の便中にはウイルスが排泄されており、オムツ交換後の手洗いが不十分な場合などに感染することがあります。症状が治まった後も、2〜4週間は便中にウイルスが排泄され続けます。
潜伏期間と感染期間
潜伏期間は通常3〜6日です。感染力が最も強いのは発症前後の時期ですが、症状が消失した後も長期間にわたってウイルスを排出し続けることが特徴です。
具体的には:
- 咽頭からのウイルス排出:発症後1〜2週間
- 便中へのウイルス排出:発症後2〜4週間(時には数か月間)
この長期間のウイルス排出が、手足口病の感染対策を難しくしている理由の一つです。
手足口病とプールの関係:感染リスクを正しく理解する
プールで手足口病はうつるのか?
多くの保護者の方が最も気になるのが「プールの水を介して手足口病が感染するのか」という点でしょう。結論から言うと、プールの水を介した直接的な感染リスクは低いとされています。
その理由は以下の通りです。
塩素消毒の効果 日本の公共プールやスイミングスクールでは、水質管理のため適切な濃度の塩素による消毒が行われています。この塩素消毒により、プールの水中でウイルスが活性を保つことは困難です。
希釈効果 たとえウイルスがプール水中に放出されたとしても、大量の水で希釈されるため、感染に必要な量のウイルスに曝露する可能性は極めて低くなります。
プール施設で感染が起こりやすい理由
しかし、プール施設で手足口病の感染が広がることがあるのも事実です。これはプールの水が原因ではなく、プール環境における接触や飛沫が原因です。
感染リスクが高まる場面
- 更衣室やシャワー室での接触
- 狭い空間での密接な接触
- タオルやロッカーの共有
- 床や椅子などを介した接触感染
- プールサイドでの活動
- おもちゃの共有
- ビート板や浮き輪などの用具の共有
- プールサイドでの会話による飛沫感染
- トイレやオムツ交換施設
- 不十分な手洗い
- 汚染された表面との接触
- 休憩時間の飲食
- 飲食物の共有
- 手洗いが不十分なまま食事をする
つまり、プール施設で感染が広がるのは、子どもたちが密に接触する機会が多い環境であることが主な理由なのです。
プールにいつから入れる?登園・登校基準を解説
厚生労働省と専門機関の見解
手足口病にかかった後、いつからプールに入れるのかは、多くの保護者の方が悩まれるポイントです。
厚生労働省の「保育所における感染症対策ガイドライン」では、手足口病について以下のように示されています。
出席停止の必要性 手足口病は学校保健安全法で定める出席停止の対象疾患には含まれていません。つまり、法的には登園・登校を制限する必要はないとされています。
その理由
- 症状が治まった後も長期間(2〜4週間)便中にウイルスが排泄される
- すべての感染者を長期間登園停止にすることは現実的ではない
- 症状が軽い場合や不顕性感染(感染しても症状が出ない)の子どもからも感染が広がる
- 発症前からウイルスを排出している
このような特性から、登園や登校を制限することで感染拡大を完全に防ぐことは困難と判断されているのです。
実際の登園・プール利用の判断基準
厚生労働省のガイドラインでは、出席停止の必要はないとしつつも、以下の条件を満たすことが望ましいとされています。
登園・登校の目安
- 発熱がない
- 普段通りの食事ができる
- 全身状態が良好である
プール利用の判断基準
多くの保育園・幼稚園や医療機関では、以下を目安としています。
- 発熱がない
- 解熱後24〜48時間経過していること
- 解熱剤を使用せずに平熱を保てること
- 口腔内の水疱が改善している
- 食事や水分摂取に支障がない程度に改善
- 痛みがほぼない状態
- 全身状態が良好
- 元気があり、通常の活動ができる
- 機嫌が良く、食欲がある
- 手足の水疱が乾燥している
- 水疱が破れていない、または完全に乾燥している
- 滲出液が出ていない
- 下痢などの消化器症状がない
一般的には、発症後5〜7日程度で上記の条件を満たすことが多いです。ただし、個人差があるため、最終的には医師の診断と、通園・通学先の方針に従うことが重要です。
施設ごとの対応の違い
実際には、各施設によって対応が異なる場合があります。
保育園・幼稚園
- 多くの施設では独自の基準を設けている
- 「発疹が消えるまで」「発症後1週間」など
- 医師の登園許可証が必要な場合もある
スイミングスクール
- 商業施設は独自の衛生管理基準を持つ
- 「完全に症状が消えるまで」など、より慎重な判断を求められることが多い
公共プール施設
- 一般的な利用規約では「発疹のある人は利用不可」としている場合が多い
必ず事前に各施設の方針を確認し、それに従うことが大切です。
医師が教える:プール利用時の感染予防対策
プールに入る前の注意点
手足口病の感染拡大を防ぎながら、安全にプールを楽しむためには、以下の対策が重要です。
1. 体調確認の徹底
- 朝の検温を習慣化する
- 発熱や体調不良がある場合は利用を控える
- のどの痛みや口内の違和感がないか確認
2. 発疹の状態チェック
- 水疱が破れていないか確認
- 滲出液が出ている場合は入水を控える
- 手足の発疹が乾燥しているか確認
3. シャワーの徹底
- プール前に必ず全身をシャワーで洗う
- 特に手指、足裏を丁寧に洗う
- 石鹸を使用して洗うことが望ましい
4. 排便後の対応
- トイレ使用後は必ず石鹸で手を洗う
- 乳幼児のオムツは適切に処理する
プール中の注意事項
1. 用具の使い方
- ビート板や浮き輪などの用具を共有する場合は、使用前後に手洗いをする
- 可能であれば個人専用の用具を持参する
- おもちゃは口に入れない
2. 他の利用者との接触
- 過度な密接接触は避ける
- 咳やくしゃみが出る場合は顔を背ける
- 水を飲み込まないよう注意する
3. 休憩時の行動
- プールサイドで休憩する際も手洗いを心がける
- 飲食前には必ず手を洗う
- タオルの共有は避ける
プール後のケア
1. シャワーの徹底
- プール後は全身をシャワーでよく洗い流す
- 特に手指、足裏、顔を丁寧に洗う
- 髪の毛も忘れずに洗う
2. うがいの実施
- 水を飲み込んでしまった可能性があるため、うがいをする
- 口の中をよくすすぐ
3. 着替えと手洗い
- 濡れた水着はすぐに脱ぐ
- 着替え後も手洗いを徹底する
- 使用したタオルや水着は家に帰ってから速やかに洗濯する
4. 体調観察
- プール利用後数日間は体調の変化に注意する
- 発熱や発疹が出た場合は早めに医療機関を受診する
家庭でできる感染予防対策
プールの利用に関わらず、手足口病の流行期には家庭での感染予防対策が重要です。
1. 手洗いの徹底 手洗いは最も基本的で効果的な感染予防策です。
- 外から帰った後
- トイレの後
- 食事の前
- オムツ交換の後
- 鼻をかんだ後
石鹸を使い、流水で30秒以上かけて丁寧に洗いましょう。特に指の間、爪の周り、手首まで忘れずに洗います。
2. タオルの個別使用
- 家族それぞれ専用のタオルを使用する
- 共有タオルは避ける
- タオルは毎日交換し、洗濯する
3. 食器・コップの共有を避ける
- 特に口をつけるものは共有しない
- 食べ物・飲み物の回し飲み、回し食べをしない
4. おもちゃや日用品の消毒
- 子どもが触れる頻度の高いおもちゃは定期的に消毒する
- ドアノブ、リモコン、スイッチなども拭き掃除する
- アルコール消毒や次亜塩素酸ナトリウムが有効
5. 適切なオムツ交換
- オムツは適切に密閉して廃棄する
- 交換後は必ず石鹸で手を洗う
- 交換台やマットも清潔に保つ
手足口病の合併症とプール利用の注意点
重症化リスクと合併症
手足口病は通常、軽症で自然に治癒する疾患ですが、まれに合併症を起こすことがあります。
まれに起こる合併症
- 無菌性髄膜炎
- 頭痛、嘔吐、発熱が主な症状
- エンテロウイルス71型で起こりやすい
- 急性脳炎・脳症
- 意識障害、けいれん、麻痺など
- 緊急の治療が必要
- 心筋炎
- 胸痛、呼吸困難、不整脈など
- 重篤な場合は生命に関わる
- 爪の脱落
- 発症後1〜2か月で爪が剥がれる
- 痛みはほとんどなく、自然に生え変わる
合併症を疑う症状 以下のような症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
- 高熱が2日以上続く
- 頻回の嘔吐
- 頭痛が強い
- ぐったりしている
- 意識がおかしい
- けいれんを起こした
- 呼吸が苦しそう
- 水分が取れず、ぐったりしている
合併症がある場合のプール利用
合併症が起きた場合や、重症化した場合は、当然ながらプールの利用は控えるべきです。完全に回復し、医師の許可が出るまでは入水を避けましょう。
また、以下のような基礎疾患がある場合は、より慎重な判断が必要です。
- 免疫不全状態
- 心疾患
- アトピー性皮膚炎など皮膚のバリア機能が低下している状態
- 喘息などの呼吸器疾患
これらの状態では、手足口病が重症化しやすい、または二次感染のリスクが高まる可能性があります。プールの利用については、必ず主治医に相談してください。

よくある質問:手足口病とプールのQ&A
Q1. 手足口病にかかった後、何日くらいでプールに入れますか?
A. 一般的には発症後5〜7日程度で、以下の条件を満たせばプールに入れることが多いです。
- 発熱がない(解熱後24〜48時間経過)
- 口の中の水疱が改善し、食事が普通にとれる
- 手足の発疹が乾燥している(滲出液が出ていない)
- 全身状態が良好で元気がある
ただし、通園先やプール施設によって基準が異なる場合があるため、必ず事前に確認してください。最終的な判断は医師の診察を受けることをお勧めします。
Q2. 発疹が残っていてもプールに入れますか?
A. 発疹の状態によります。
入水できる状態:
- 水疱が乾燥し、かさぶた状になっている
- 滲出液が出ていない
- 痛みや痒みがほとんどない
入水を控えるべき状態:
- 水疱が破れている、または破れそう
- 滲出液が出ている
- 発疹部分が赤く腫れている
- 痛みや痒みが強い
発疹が残っていても、上記の「入水できる状態」であれば、医学的には問題ないとされています。ただし、他の保護者の方の心配を考慮し、施設の方針に従うことが大切です。
Q3. プールの塩素で手足口病のウイルスは死にますか?
A. はい、適切に管理されたプールの塩素消毒液は、手足口病の原因となるエンテロウイルスに対して有効です。
日本の公共プールやスイミングスクールでは、遊離残留塩素濃度を0.4〜1.0mg/L程度に保つことが推奨されています。この濃度が維持されていれば、プール水中でウイルスが活性を保つことは困難です。
ただし、プールの水が直接的な感染経路ではないとしても、プール施設内での接触感染や飛沫感染のリスクはありますので、総合的な感染対策が必要です。
Q4. 家族内で手足口病にかかった子がいます。他のきょうだいはプールに入れますか?
A. 難しい判断ですが、以下の点を考慮して決定してください。
入水を控えた方が良い場合:
- 濃厚接触があり、潜伏期間中の可能性が高い
- 軽い発熱や体調不良の兆候がある
- 通園先で流行しており、集団感染のリスクが高い
入水可能と判断できる場合:
- 発症者との接触から6日以上経過している
- 全く症状がなく元気である
- 通園先の許可が得られている
手足口病は発症前からウイルスを排出しているため、症状のないきょうだいが実は感染していて、他の子に広げてしまう可能性があります。慎重に判断し、不安がある場合は施設に相談することをお勧めします。
Q5. 大人も手足口病にかかりますか?プールでうつりますか?
A. はい、大人も手足口病にかかることがあります。
大人の手足口病の特徴:
- 子どもに比べて症状が重いことが多い
- 高熱が出やすい
- 発疹の痛みや痒みが強い
- 関節痛や筋肉痛を伴うことがある
プールでの感染リスク: 大人が子どもからプールで感染するリスクは低いですが、以下の場面で感染の可能性があります。
- 子どもの世話(オムツ交換、着替えの手伝いなど)
- タオルや用具の共有
- 更衣室などでの密接な接触
大人の場合も、予防の基本は手洗いと適切な衛生管理です。特に乳幼児の世話をする保護者や保育士の方は、念入りな手洗いを心がけてください。
Q6. 手足口病の予防接種はありますか?
A. 現在、日本で承認されている手足口病のワクチンはありません。
手足口病の原因となるウイルスには複数の型があり、一度感染しても別の型のウイルスには免疫ができないため、ワクチン開発が困難とされています。
そのため、予防の基本は:
- 手洗いの徹底
- タオルや食器の共有を避ける
- 適切な消毒
- 流行期の人混みを避ける
などの日常的な感染対策になります。
Q7. 手足口病と似た病気はありますか?
A. 手足口病と症状が似ている疾患として、以下のようなものがあります。
ヘルパンギーナ
- 同じエンテロウイルスが原因
- 高熱と口腔内の水疱が主症状
- 手足の発疹はない
水痘(水ぼうそう)
- 全身に水疱性の発疹
- 強い痒みを伴う
- 予防接種がある
単純ヘルペス性歯肉口内炎
- 口の中の痛みを伴う水疱
- 手足の発疹はない
- より重症で発熱が高い
これらの疾患は、医師の診察によって鑑別されます。自己判断せず、症状が出たら医療機関を受診しましょう。
Q8. 手足口病にかかったことがあります。また感染しますか?
A. はい、再感染する可能性があります。
手足口病を引き起こすウイルスには複数の型(コクサッキーウイルスA16型、A6型、A10型、エンテロウイルス71型など)があります。一つの型に感染しても、別の型に対する免疫はできません。
そのため:
- 子ども時代に複数回かかることがある
- 大人になってからかかることもある
- 毎年異なる型のウイルスが流行する可能性がある
ただし、一度感染した型に対しては免疫ができるため、全く同じ型のウイルスに再感染する可能性は低いです。
Q9. プール以外の水遊び(川、海、水遊び場)は大丈夫ですか?
A. プールと同様に、水そのものが感染源になる可能性は低いですが、以下の点に注意が必要です。
海水浴
- 塩水には消毒効果があり、感染リスクは低い
- ただし、ビーチでの人との接触には注意
- 共用施設(シャワー、トイレなど)での感染リスクはある
川遊び
- 自然の川には塩素消毒がないが、水量が多く希釈効果がある
- 他の感染症(レプトスピラ症など)のリスクもあるため、傷がある場合は避ける
公園の水遊び場
- 子どもが密集しやすい
- 水の循環や消毒が不十分な場合がある
- より慎重な判断が必要
いずれの場合も、体調が完全に回復してから利用することが基本です。
Q10. 保育園・幼稚園と医師の意見が異なる場合、どうすればいいですか?
A. これは多くの保護者が直面する悩みです。
対応のポイント:
- まず双方の基準を確認
- 医師の判断根拠を聞く
- 施設の方針の理由を聞く
- 施設の方針を尊重
- 集団生活の場では施設の判断を優先することが一般的
- 他の保護者への配慮も必要
- 医師に相談
- 施設の基準を医師に伝え、意見を求める
- 登園許可証の記載内容を相談する
- 柔軟な対応
- 医学的には問題なくても、1〜2日余裕を持つ
- 段階的な復帰(最初は短時間のみなど)を検討
最終的には、子どもの健康と、集団生活での他の子どもたちへの配慮の両方を考えて判断することが大切です。
手足口病の流行動向と最新情報
日本における手足口病の疫学
手足口病は毎年周期的に流行する感染症です。国立感染症研究所の感染症発生動向調査によると、以下のような傾向が見られます。
流行のパターン
- 主な流行期:6月から8月(夏季)
- ピーク:7月下旬から8月上旬
- 秋以降は減少傾向
- 2〜3年ごとに大きな流行が起こる
年齢別の発生状況
- 5歳以下が約90%を占める
- 特に1〜2歳児が最も多い
- 0歳児、3〜5歳児も一定数発生
- 大人の発症も散発的に見られる
地域差
- 西日本で先に流行が始まり、東日本に広がる傾向
- 都市部で患者数が多い
- 保育施設が多い地域で流行しやすい
原因ウイルスの変化
手足口病を引き起こすウイルスは、年によって主な原因ウイルスが異なります。
主な原因ウイルス
- コクサッキーウイルスA16型:最も一般的
- コクサッキーウイルスA6型:近年増加傾向、発疹が広範囲
- エンテロウイルス71型:重症化リスクがやや高い
近年の特徴として、コクサッキーウイルスA6型による手足口病が増加しています。この型の特徴は:
- 発疹が手足だけでなく、腕や脚、顔などにも広範囲に出る
- 水疱が大きく目立つ
- 発症後1〜2か月で爪が剥がれることが多い
流行状況の確認方法
手足口病の流行状況は、以下の方法で確認できます。
国立感染症研究所 感染症発生動向調査 全国約3,000の小児科定点医療機関から報告された患者数を、週ごとに集計・公表しています。都道府県別のデータも閲覧可能です。
地域の保健所や自治体の情報 各自治体のウェブサイトで、地域の流行状況を発表している場合があります。
保育園・幼稚園からの情報 通園先から、園内での発生状況についての情報が提供されることがあります。
流行期には特に注意が必要で、プール利用の判断もより慎重に行うことが推奨されます。
まとめ:安全なプール利用のために
手足口病とプールの関係について、重要なポイントをまとめます。
押さえておくべき7つのポイント
1. プールの水そのものからの感染リスクは低い 適切に塩素消毒されたプールの水を介して感染する可能性は極めて低いです。感染の主な原因は、プール施設内での接触や飛沫です。
2. 登園・登校の制限は法的には不要 手足口病は出席停止対象疾患ではありませんが、発熱や全身状態が悪い場合は休むべきです。
3. プール利用の判断基準
- 発熱がない(解熱後24〜48時間経過)
- 口腔内の水疱が改善し、食事が普通にとれる
- 手足の発疹が乾燥している
- 全身状態が良好
一般的に発症後5〜7日程度が目安ですが、個人差があります。
4. 施設の方針を確認・尊重する 保育園、幼稚園、スイミングスクール、公共プール施設など、それぞれ独自の基準を持っている場合があります。必ず事前に確認しましょう。
5. 予防の基本は手洗いと衛生管理
- プール前後のシャワーを徹底
- 手洗いをこまめに実施
- タオルや用具の共有を避ける
- 体調管理と観察
6. 症状が治まった後もウイルスは排出される 便中には2〜4週間ウイルスが排出され続けます。トイレ後の手洗いは特に重要です。
7. 合併症に注意 まれに髄膜炎や脳炎などの重篤な合併症が起こることがあります。高熱が続く、頭痛や嘔吐が強い、意識がおかしいなどの症状があれば、すぐに医療機関を受診してください。
医師からのアドバイス
手足口病は、ほとんどの場合、自然に治癒する軽症の感染症です。過度に心配する必要はありませんが、以下の点に注意してください。
子どもの様子をよく観察する 発疹の数や範囲よりも、子どもの全身状態が重要です。元気があり、食事もとれ、よく遊べる状態であれば、過度な制限は不要です。
無理をさせない 医学的には問題なくても、本人がまだ辛そうであれば、無理にプールに入れる必要はありません。十分に回復してから楽しむ方が良いでしょう。
周囲への配慮も大切 法的には登園制限がないとしても、他の保護者の方の心配も理解し、コミュニケーションをとることが大切です。
基本的な感染対策を継続する 手足口病に限らず、手洗いや咳エチケットなどの基本的な感染対策は、すべての感染症予防に有効です。日頃から習慣づけましょう。
参考文献
本記事の作成にあたり、以下の信頼できる情報源を参考にしました。
- 厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/hoiku02.pdf - 国立感染症研究所「手足口病とは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/441-hfmd.html - 国立感染症研究所 感染症発生動向調査
https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr.html - 厚生労働省「手足口病に関するQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/hfmd.html - 日本小児科学会「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=138 - 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 手足口病」
https://www.dermatol.or.jp/qa/ - 文部科学省「学校において予防すべき感染症の解説」
https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1334054.htm
※本記事の情報は2025年11月時点のものです。最新の情報については、各専門機関の公式サイトをご確認ください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務