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金玉(陰嚢、睾丸)の腫れ|原因・症状・緊急性の見分け方を医師が解説

はじめに

「金玉が腫れている」「睾丸が大きくなった気がする」といった症状に気づいたとき、多くの男性は不安を感じながらも、なかなか人に相談しづらいものです。デリケートな部位であるがゆえに、受診を躊躇してしまう方も少なくありません。

しかし、金玉(陰嚢、睾丸)の腫れは、緊急の処置が必要な疾患から、比較的経過観察で問題ない状態まで、様々な原因が考えられます。特に急激な腫れや強い痛みを伴う場合は、数時間以内の対応が必要なケースもあるため、正しい知識を持つことが大切です。

本記事では、金玉(陰嚢、睾丸)が腫れる原因となる主な疾患について、それぞれの特徴や症状、緊急性の判断基準、そして適切な対処法について詳しく解説していきます。

金玉(陰嚢、睾丸)の基礎知識

陰嚢の構造と役割

陰嚢とは、睾丸(精巣)を包んでいる皮膚の袋のことを指します。陰嚢は単なる皮膚ではなく、睾丸を保護し、温度調節を行うという重要な役割を担っています。

精子の生成には、体温よりも2〜3度低い温度環境が必要です。そのため、陰嚢は外気温に応じて伸縮し、睾丸の温度を最適な状態に保っています。暑いときには陰嚢が伸びて睾丸を体から離し、寒いときには縮んで体に近づけることで、温度調節を行っているのです。

睾丸(精巣)の構造

睾丸は男性の生殖器官の中核を担う臓器で、通常は左右に一つずつあります。主な機能は次の2つです。

  1. 精子の産生:精子形成を行う精細管が集まっており、思春期以降に精子を作り続けます
  2. 男性ホルモンの分泌:テストステロンなどの男性ホルモンを産生し、男性の二次性徴や性機能の維持に関わります

睾丸のサイズは個人差がありますが、成人男性では長径4〜5cm、短径3cm程度が平均的です。左右で大きさが異なることも珍しくなく、多くの場合、左の睾丸が右よりもやや下に位置しています。

精巣上体(副睾丸)と精索

睾丸の後上方には、精巣上体(せいそうじょうたい)と呼ばれる器官が付着しています。精巣上体は、睾丸で作られた精子が成熟し、貯蔵される場所です。

また、睾丸には精索(せいさく)という構造が繋がっており、その中には精管、血管、神経、リンパ管などが通っています。この精索が捻じれてしまう「精巣捻転」は、緊急を要する疾患の一つです。

陰嚢・睾丸の腫れの主な原因

陰嚢や睾丸の腫れには、様々な原因があります。ここでは、主な疾患について詳しく見ていきましょう。

1. 精巣捻転(せいそうねんてん)

概要と発生メカニズム

精巣捻転は、精索がねじれることによって睾丸への血流が遮断される疾患です。日本泌尿器科学会によると、思春期の男性に多く見られ、新生児期と10〜15歳の思春期に発症のピークがあります。

睾丸は通常、陰嚢内で一定の位置に固定されていますが、先天的に固定が不十分な場合や、急激な体の動きなどをきっかけに、精索が捻じれてしまうことがあります。

主な症状

  • 突然の激しい痛み:多くの場合、就寝中や起床時に突然発症します
  • 陰嚢の腫れと発赤:時間とともに腫れと赤みが強くなります
  • 吐き気・嘔吐:強い痛みに伴って現れることがあります
  • 腹痛:下腹部に痛みが広がることもあります
  • 患側の睾丸が高い位置にある:捻転により睾丸が持ち上がります

緊急性と対応

精巣捻転は泌尿器科の緊急疾患です。血流が途絶えた状態が6時間以上続くと、睾丸の壊死(えし)が始まり、機能を失う可能性が高くなります。発症から12時間を超えると、睾丸を救済できる可能性は著しく低下します。

突然の強い陰嚢痛が出現した場合は、すぐに救急外来を受診する必要があります。診断には超音波検査が有用で、血流の有無を確認します。治療は緊急手術となり、捻じれを解除して睾丸を固定します。

2. 精巣上体炎(副睾丸炎)

概要と原因

精巣上体炎は、精巣上体に細菌感染が起こる疾患です。膀胱や尿道から細菌が逆行性に精巣上体に達することで発症します。

若年者では主に性感染症(クラミジアや淋菌)が原因となることが多く、高齢者では大腸菌などの一般細菌による尿路感染症に伴って発症することが多いとされています。

主な症状

  • 徐々に強くなる痛み:精巣捻転と異なり、数時間から数日かけて徐々に痛みが増強します
  • 陰嚢の腫れと発赤:片側性のことが多く、触ると硬く感じます
  • 発熱:38度以上の高熱を伴うことがあります
  • 排尿時痛・頻尿:尿道炎や膀胱炎の症状を伴うことがあります
  • 精巣上体の腫大:睾丸の後上方が特に腫れます

診断と治療

診察では、陰嚢を持ち上げることで痛みが軽減する「Prehn徴候」が陽性となることが多く、精巣捻転との鑑別に役立ちます。超音波検査では、血流は保たれているものの、精巣上体の腫大と炎症所見が認められます。

治療は抗菌薬の投与が中心となります。原因菌に応じた適切な抗生物質を2〜4週間程度使用します。安静と陰嚢の挙上、冷却も症状の軽減に有効です。

適切な治療を行えば、ほとんどの場合2〜4週間で症状は改善しますが、治療が不十分だと慢性化したり、膿瘍形成や精路の閉塞をきたすことがあります。

3. 陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)

概要と発生メカニズム

陰嚢水腫は、睾丸を包む膜(精巣鞘膜)の内側に液体が貯留する疾患です。日本泌尿器科学会の診療ガイドラインによると、乳幼児と中高年男性に多く見られます。

乳幼児の場合は、腹腔と陰嚢をつなぐ管(腹膜鞘状突起)が閉鎖せず、腹水が陰嚢に流入することで発症する「交通性陰嚢水腫」が多くみられます。成人の場合は、鞘膜からの液体の分泌と吸収のバランスが崩れることで発症します。

主な症状

  • 痛みのない陰嚢の腫れ:通常、痛みや発熱を伴いません
  • 透光性:懐中電灯を当てると光が透過します(透光試験陽性)
  • 大きさの変動:交通性の場合、立位で大きくなり、臥位で小さくなります
  • 徐々に大きくなる:急激ではなく、数週間から数ヶ月かけて徐々に増大します

診断と治療

診察では透光試験が有用で、陰嚢水腫の場合は光が透過します。超音波検査で睾丸周囲の液体貯留を確認し、睾丸自体に異常がないことを確認します。

小児の交通性陰嚢水腫は、1〜2歳までに自然閉鎖することが多いため、経過観察となることが多いです。成人の陰嚢水腫で、サイズが大きく日常生活に支障がある場合や、感染を繰り返す場合は、手術による治療を検討します。

手術は、鞘膜を切開して液体を除去し、鞘膜を反転させて再発を防ぐ「陰嚢水腫根治術」が標準的です。局所麻酔または腰椎麻酔で日帰り手術も可能な場合があります。

4. 精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)

概要と発生メカニズム

精索静脈瘤は、睾丸から心臓へ戻る静脈(精巣静脈)の血液が逆流し、精索部の静脈が拡張してコブ状になる疾患です。日本泌尿器科学会の報告では、成人男性の約15%に認められる比較的頻度の高い疾患です。

左側に多く見られる理由は、左精巣静脈が左腎静脈に直角に流入する解剖学的特徴によるものです。右側の場合は直接下大静脈に流入するため、静脈圧が低く、精索静脈瘤は起こりにくいとされています。

主な症状

  • 陰嚢の腫れ:立位で目立ち、臥位で軽減します
  • 鈍い痛みや違和感:長時間の立位や運動後に症状が強くなります
  • 虫様の腫瘤:触診で「虫の入った袋」のような感触があります
  • 睾丸の萎縮:高度な場合、患側の睾丸が小さくなることがあります
  • 不妊:精索静脈瘤は男性不妊の原因の一つとされています

診断と治療

診察では、立位で陰嚢を観察し、バルサルバ手技(腹圧をかける)を行うことで静脈の拡張が確認できます。超音波検査でドプラー法を用いると、逆流の有無や程度を評価できます。

治療は、症状の程度や不妊の有無によって判断します。軽度で無症状の場合は経過観察となることが多いです。痛みが強い場合や、不妊治療を目的とする場合は、手術療法を検討します。

手術方法には、鼠径部や腹腔鏡から行う高位結紮術や、カテーテルを用いた塞栓術などがあります。手術後は精液所見の改善が期待でき、不妊治療において重要な選択肢となります。

5. 鼠径ヘルニア(脱腸)

概要

鼠径ヘルニアは、腹腔内の臓器(主に小腸)が鼠径部の筋肉の隙間から陰嚢内に脱出する疾患です。一般的に「脱腸」と呼ばれています。

日本ヘルニア学会によると、鼠径ヘルニアは成人の外科疾患の中でも頻度が高く、男性に多く見られます。加齢とともに腹壁の筋肉が弱くなることや、慢性的な便秘、咳、重労働などによって腹圧が上昇することが発症の要因となります。

主な症状

  • 立位での陰嚢の膨隆:立ったり、腹圧がかかると陰嚢が大きくなります
  • 臥位で消失:横になると膨らみが自然に消えることが多いです
  • 違和感や鈍痛:特に膨らんだ時に感じます
  • 嵌頓時の激痛:脱出した腸が戻らなくなり、血流障害を起こすと激痛が出現します

診断と治療

診察では、立位で鼠径部から陰嚢にかけての膨隆を確認します。バルサルバ手技や咳をさせることで、膨隆が増強することを確認します。超音波検査やCT検査で、脱出している臓器を確認することもあります。

鼠径ヘルニアは自然治癒しないため、診断されれば基本的に手術治療が推奨されます。嵌頓(かんとん)と呼ばれる、脱出した腸が戻らなくなり血流障害を起こす状態になると、緊急手術が必要です。

手術方法には、従来の鼠径部切開法と、腹腔鏡を用いた低侵襲手術があります。人工メッシュを使用して筋肉の隙間を補強することで、再発率を低くすることができます。

6. 精巣腫瘍

概要

精巣腫瘍は、睾丸に発生する腫瘍で、悪性のものが多いことが特徴です。国立がん研究センターのデータによると、20〜30歳代の若年男性に多く見られる固形がんの一つです。

精巣腫瘍は大きく「セミノーマ(精上皮腫)」と「非セミノーマ」に分類され、それぞれ治療法や予後が異なります。早期発見・早期治療により治癒率が高いがんとして知られています。

主な症状

  • 無痛性の陰嚢の腫大:痛みを伴わない硬いしこりが特徴的です
  • 睾丸の硬結:片側の睾丸が硬く、石のように感じられます
  • 重量感:陰嚢に重さを感じることがあります
  • 進行時の症状:転移がある場合、腹部腫瘤、背部痛、呼吸困難などが出現します

診断と治療

診察で睾丸に硬結を触れた場合、超音波検査で腫瘍の有無を確認します。血液検査では、AFP(アルファフェトプロテイン)、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)、LDH(乳酸脱水素酵素)などの腫瘍マーカーを測定します。

確定診断は、鼠径部から睾丸を摘出する「高位精巣摘除術」により行います。陰嚢側からの生検は、がん細胞の播種のリスクがあるため行われません。

摘出後の病理診断に基づき、病期や組織型に応じた追加治療(化学療法、放射線療法、後腹膜リンパ節郭清術など)が計画されます。適切な治療により、早期であれば95%以上の治癒率が期待できます。

7. 精巣外傷

概要と原因

陰嚢は体表に位置し、保護する骨格がないため、外傷を受けやすい部位です。スポーツ中の打撲、交通事故、自転車のサドルへの衝突などが原因となります。

外傷により、陰嚢内に血液が貯留する「陰嚢血腫」や、睾丸の被膜が破れる「睾丸破裂」が起こることがあります。

主な症状

  • 強い痛み:外傷直後から激しい痛みが出現します
  • 陰嚢の腫れと皮下出血:時間とともに陰嚢が腫れ、紫色に変色します
  • 吐き気:強い痛みに伴って出現することがあります

診断と治療

受傷機転を確認し、陰嚢の腫れや皮下出血の程度を評価します。超音波検査で、血腫の有無や睾丸の損傷(被膜の断裂)を確認します。

軽度の打撲の場合は、安静、挙上、冷却、鎮痛薬の投与で経過観察します。睾丸破裂が疑われる場合は、緊急手術で損傷部位を修復する必要があります。早期の手術により、睾丸の機能を温存できる可能性が高まります。

症状別の緊急性の判断

陰嚢や睾丸の腫れを認めた時、どのような症状があれば緊急受診が必要なのか、判断基準を理解しておくことが大切です。

すぐに救急受診が必要な症状

以下の症状がある場合は、数時間以内に緊急で医療機関を受診する必要があります

  1. 突然の激しい陰嚢痛
    • 精巣捻転の可能性があり、6時間以内の処置が望ましい
    • 特に若年者(10〜30歳代)で多い
  2. 陰嚢の急速な腫大と強い痛み
    • 精巣捻転や嵌頓ヘルニアの可能性
  3. 陰嚢の腫れと高熱(38度以上)
    • 重症の精巣上体炎や精巣炎の可能性
    • 敗血症に進行するリスクがある
  4. 外傷後の強い痛みと腫れ
    • 睾丸破裂の可能性
    • 早期の手術が機能温存に重要
  5. 吐き気・嘔吐を伴う激しい痛み
    • 精巣捻転や嵌頓ヘルニアの可能性

早めに受診が望ましい症状(1〜2日以内)

  1. 数日かけて徐々に強くなる痛みと腫れ
    • 精巣上体炎の可能性
    • 抗菌薬治療が必要
  2. 発熱と排尿時痛を伴う陰嚢の腫れ
    • 精巣上体炎の可能性
  3. 陰嚢の腫れと鈍痛が続く
    • 精索静脈瘤や陰嚢水腫の可能性
    • 緊急性は低いが診断が必要

計画的な受診で良い症状

  1. 痛みのない徐々に大きくなる陰嚢の腫れ
    • 陰嚢水腫、精索静脈瘤、精巣腫瘍の可能性
    • 数週間以内に泌尿器科受診を推奨
  2. 立位で大きくなり臥位で小さくなる腫れ
    • 陰嚢水腫や鼠径ヘルニアの可能性
  3. 痛みのない硬いしこり
    • 精巣腫瘍の可能性
    • 早期に泌尿器科受診を推奨

診断方法

陰嚢や睾丸の腫れの診断には、問診、身体診察、そして各種検査が用いられます。

問診

医師は以下のような点を確認します。

  • 症状の発症時期と経過(突然か、徐々にか)
  • 痛みの有無と程度、性質
  • 発熱や排尿症状の有無
  • 外傷の既往
  • 性感染症のリスク
  • 過去の陰嚢疾患の既往

身体診察

  • 視診:陰嚢の腫れ、発赤、皮下出血の有無を確認
  • 触診:睾丸の大きさ、硬さ、圧痛、精巣上体の腫れを評価
  • 透光試験:懐中電灯を陰嚢に当て、光の透過を確認(陰嚢水腫の診断)
  • Prehn徴候:陰嚢を持ち上げた時の痛みの変化を評価(精巣上体炎で陽性)

超音波検査(エコー検査)

陰嚢疾患の診断において最も重要な検査です。

  • 睾丸の形態評価:大きさ、内部構造、腫瘤の有無
  • カラードプラー法:血流の有無と方向を評価(精巣捻転の診断に有用)
  • 精巣上体の評価:腫大や炎症所見の確認
  • 液体貯留の確認:陰嚢水腫や血腫の診断

超音波検査は非侵襲的で、痛みもなく、繰り返し施行できるため、初期評価から経過観察まで広く用いられます。

血液検査

  • 炎症反応:白血球数、CRP(C反応性タンパク)を測定
  • 腫瘍マーカー:精巣腫瘍が疑われる場合、AFP、hCG、LDHを測定
  • 尿検査・尿培養:精巣上体炎で尿路感染の有無を確認

その他の検査

  • CT検査:精巣腫瘍の病期診断、腹腔内の評価
  • MRI検査:睾丸内の詳細な評価が必要な場合
  • 核医学検査(精巣シンチグラフィー):精巣捻転の診断補助

治療法

陰嚢や睾丸の腫れの治療は、原因疾患によって大きく異なります。

保存的治療

安静と陰嚢の挙上

精巣上体炎などの炎症性疾患では、陰嚢を挙上することで症状が軽減します。専用のサポーターを使用したり、横になる際にタオルなどで陰嚢を持ち上げた状態にします。

冷却

急性期の炎症や外傷後の腫れには、冷却が有効です。氷嚢やアイスパックをタオルで包んで、1回15〜20分程度を目安に冷やします。

薬物療法

  • 抗菌薬:精巣上体炎などの感染症に対して使用
  • 鎮痛薬:NSAIDsなどの消炎鎮痛薬で痛みをコントロール
  • 抗生物質の静脈投与:重症感染症の場合

外科的治療

緊急手術

  • 精巣捻転の整復固定術:陰嚢を切開し、捻転を解除して睾丸を固定
  • 嵌頓ヘルニアの緊急手術:脱出した腸管を整復し、ヘルニア門を修復
  • 睾丸破裂の修復術:損傷した睾丸の被膜を縫合

待機的手術

  • 陰嚢水腫根治術:鞘膜を切開・反転させる手術
  • 精索静脈瘤手術:拡張した静脈を結紮または塞栓
  • 鼠径ヘルニア修復術:メッシュを用いたヘルニア門の修復
  • 高位精巣摘除術:精巣腫瘍に対する睾丸摘出術

その他の治療

精巣腫瘍の集学的治療

  • 化学療法:シスプラチンを中心とした多剤併用療法
  • 放射線療法:セミノーマに対して有効
  • 後腹膜リンパ節郭清術:転移リンパ節の外科的切除

予防と自己チェック

定期的な自己触診

精巣腫瘍などの早期発見のために、月1回程度の自己触診が推奨されます。入浴時などに以下の点をチェックしましょう。

  1. 視診:陰嚢に腫れや変色がないか鏡で確認
  2. 触診:親指と人差し指で睾丸を挟むように触り、硬いしこりがないか確認
  3. 左右比較:両側の大きさや硬さを比較

正常な睾丸は表面が滑らかで、弾力性のある硬さです。硬いしこりや明らかな左右差を認めた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

外傷の予防

スポーツ時には、サポーターやカップ型のプロテクターを使用することで、陰嚢への外傷を予防できます。特にサッカー、野球、格闘技などの接触の多いスポーツでは、装着が推奨されます。

性感染症の予防

若年者の精巣上体炎の原因となる性感染症を予防するため、適切な避妊具の使用や、性感染症が疑われる症状がある場合の早期受診が重要です。

よくある質問(Q&A)

Q1: 金玉(陰嚢)が腫れていますが、痛みはありません。受診は必要ですか?

A: 痛みがなくても受診をお勧めします。陰嚢水腫や精索静脈瘤は痛みを伴わないことが多いですが、精巣腫瘍も初期には痛みがないことが特徴です。特に硬いしこりを触れる場合は、早めの受診が重要です。

Q2: 金玉(睾丸)が突然痛くなりました。様子を見ても大丈夫でしょうか?

A: 突然の強い痛みは、精巣捻転の可能性があり、緊急性が高い症状です。すぐに救急外来を受診してください。時間が経過すると睾丸を失う可能性があります。

Q3: 片方の睾丸が大きいのですが、異常でしょうか?

A: 左右の睾丸の大きさが多少異なることは正常でも見られます。ただし、明らかに片方が大きく腫れている、硬いしこりがある、などの場合は、精巣腫瘍などの可能性もあるため、泌尿器科の受診をお勧めします。

Q4: 立った時に陰嚢が大きくなり、横になると小さくなります。何か問題がありますか?

A: 陰嚢水腫や鼠径ヘルニアの可能性があります。どちらも体位によって大きさが変わることが特徴です。緊急性は低いですが、診断と治療方針の検討のため、泌尿器科を受診してください。

Q5: 陰嚢の手術は入院が必要ですか?

A: 手術の種類によって異なります。陰嚢水腫や精索静脈瘤の手術は、日帰り手術が可能な場合もあります。一方、精巣捻転や睾丸破裂などの緊急手術や、精巣腫瘍の手術では入院が必要です。

Q6: 精巣上体炎と診断されました。どのくらいで治りますか?

A: 適切な抗菌薬治療を行えば、ほとんどの場合2〜4週間で症状は改善します。ただし、治療開始後も数日間は症状が続くことがあります。処方された抗生物質は、症状が改善しても指示通り最後まで服用することが重要です。

Q7: 自転車に乗ると陰嚢が痛くなります。何か異常があるのでしょうか?

A: 長時間のサイクリングや、サドルの高さが合っていない場合に、陰嚢への圧迫により痛みが生じることがあります。サドルの調整やパッド入りのサイクルパンツの使用で改善することもありますが、精索静脈瘤などの疾患が隠れている可能性もあるため、症状が続く場合は受診をお勧めします。

まとめ

金玉(陰嚢、睾丸)の腫れは、その原因によって緊急性や治療法が大きく異なります。本記事で解説した主なポイントをまとめます。

重要なポイント

  1. 緊急性の判断が重要
    • 突然の激しい痛み→すぐに救急受診(精巣捻転の可能性)
    • 徐々に増強する痛みと発熱→1〜2日以内に受診(精巣上体炎の可能性)
    • 痛みのない硬いしこり→早めに受診(精巣腫瘍の可能性)
  2. 主な原因疾患
    • 精巣捻転:緊急手術が必要な疾患
    • 精巣上体炎:抗菌薬治療が中心
    • 陰嚢水腫:多くは経過観察、必要に応じて手術
    • 精索静脈瘤:症状や不妊があれば手術を検討
    • 鼠径ヘルニア:基本的に手術治療
    • 精巣腫瘍:早期発見・早期治療で高い治癒率
  3. 診断には超音波検査が有用
    • 非侵襲的で繰り返し施行可能
    • 血流評価(カラードプラー)が診断に重要
  4. 自己触診の重要性
    • 月1回程度の定期的なチェック
    • 硬いしこりや明らかな左右差を認めたら受診
  5. 受診をためらわない
    • デリケートな部位でも、早期受診が重要
    • プライバシーに配慮した診療を受けられます

最後に

金玉(陰嚢、睾丸)の腫れは、一部の疾患では数時間以内の対応が必要な緊急性の高いものから、経過観察で問題ないものまで、様々です。自己判断せず、気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

特に若年男性は、恥ずかしさから受診をためらいがちですが、精巣は生殖機能とホルモン分泌という重要な役割を担っており、早期の適切な対応が将来の健康にも影響します。

参考文献

  1. 日本泌尿器科学会「泌尿器科領域の診療ガイドライン」
    https://www.urol.or.jp/
  2. 厚生労働省「男性生殖器疾患に関する情報」
    https://www.mhlw.go.jp/
  3. 日本ヘルニア学会「鼠径部ヘルニア診療ガイドライン」
    https://jhs.mas-sys.com/
  4. 国立がん研究センター「精巣腫瘍の治療」
    https://ganjoho.jp/
  5. 日本小児泌尿器科学会「小児泌尿器科疾患診療ガイドライン」
    https://jspu.jp/

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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