皮膚の下にできたしこりに気づいても、痛みがないからとそのまま放置していませんか。粉瘤(ふんりゅう)は良性の腫瘍ですが、放置することで思わぬ危険を招くことがあります。炎症を起こすと激しい痛みや腫れが生じ、日常生活に支障をきたすだけでなく、治療も複雑になってしまいます。本記事では、粉瘤を放置することで起こりうるリスクや、悪化した場合の症状、適切な治療のタイミングについて詳しく解説します。アイシークリニック渋谷院では粉瘤の日帰り手術を行っておりますので、気になる症状がある方はお気軽にご相談ください
🔍 粉瘤とは?放置すると危険な理由
粉瘤(アテローム)とは、皮膚の下にできる良性の腫瘍で、正式には「表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)」と呼ばれます。皮膚の表面にある表皮細胞が何らかの原因で皮膚の内部に入り込み、袋状の構造物を形成します。この袋の中には、本来であれば皮膚表面から剥がれ落ちるはずの角質や皮脂が溜まり、時間とともに少しずつ大きくなっていきます。
📊 粉瘤の基本的な特徴
粉瘤の見た目は、皮膚の下にできた丸いしこりです。大きさは数ミリから数センチまでさまざまで、触ると弾力があり、皮膚と一緒に動くのが特徴です。多くの場合、しこりの中心部に黒い点(開口部)が見られ、これが粉瘤を見分ける重要なポイントとなります。この開口部から臭いのある白い内容物が出てくることもあります。
🧬 粉瘤ができる原因と発症しやすい年齢
粉瘤ができる正確な原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が考えられています。
- 外傷やケガによって表皮細胞が皮膚の内部に埋没すること
- 毛穴の詰まり
- ウイルス感染
- 体質的要因(一度できると別の部位にも発生しやすい傾向)
粉瘤は年齢や性別を問わず誰にでも発生する可能性がありますが、特に20代から40代の成人に多く見られます。男女差については、やや男性に多いという報告もありますが、明確な差はないとされています。皮脂の分泌が活発な年齢層で発生しやすい傾向があり、思春期以降に初めて気づく方も少なくありません。
⚠️ 粉瘤を放置すると危険?悪化で起こる5つのリスク
粉瘤は良性腫瘍であり、すぐに命に関わるものではありません。しかし、放置することでさまざまな問題が生じる可能性があります。ここでは、粉瘤を放置した場合に起こりうる5つの危険について詳しく解説します。
🔥 炎症による激しい痛みと腫れ
粉瘤を放置する最大のリスクは炎症です。粉瘤の袋が何らかの原因で破れたり、細菌が侵入したりすると、急激に炎症を起こします。
炎症性粉瘤になると、それまで無症状だったしこりが突然赤く腫れ上がり、激しい痛みを伴うようになります。腫れは元の粉瘤の数倍にまで大きくなることもあり、熱を持って触れるだけで強い痛みを感じます。この状態になると、座る、横になるなどの日常動作にも支障をきたし、仕事や学校を休まざるを得なくなることもあります。
🦠 化膿による膿の蓄積
炎症が進行すると、粉瘤の内部で細菌が繁殖し、化膿することがあります。膿が溜まると、しこりはさらに大きく腫れ上がり、パンパンに張った状態になります。
この膿瘍の状態は非常に痛みが強く、自然に皮膚を破って膿が排出されることもあります。自壊した場合は一時的に症状が軽減しますが、袋が残っている限り再発を繰り返す原因となります。また、化膿した状態での治療は複雑になり、完治までに時間がかかってしまいます。
🌡️ 周囲組織への感染拡大
化膿した粉瘤を放置すると、感染が周囲の皮膚や組織に広がる可能性があります。蜂窩織炎(ほうかしきえん)という皮膚の深い部分の感染症に進展すると、広範囲の発赤、腫れ、発熱などの全身症状を伴うことがあります。
重症化した場合は入院治療が必要になることもあり、抗生物質の点滴投与や外科的処置が必要となります。特に糖尿病などの基礎疾患がある方や、免疫力が低下している方は感染が重症化しやすいため、早めの対処が重要です。
💥 放置した粉瘤の炎症メカニズムと症状変化
粉瘤が炎症を起こすメカニズムを理解することで、なぜ放置が危険なのかがより明確になります。ここでは、粉瘤が炎症性粉瘤へと変化する過程について詳しく説明します。
💔 袋の破裂から始まる炎症
粉瘤の炎症は、多くの場合、袋の破裂から始まります。袋が破れる原因としては、以下のようなものがあります:
- 外部からの圧迫や摩擦
- 衣服との擦れ
- 自分で絞り出そうとする行為
- 粉瘤の成長による袋の壁の薄化
袋が破れると、内部に溜まっていた角質や皮脂といった内容物が周囲の組織に漏れ出します。
😌 通常の粉瘤と炎症性粉瘤の症状比較
通常の粉瘤の特徴:
- 基本的に無症状(痛みや痒みなし)
- 皮膚の下に丸いしこりとして触れる
- 弾力があり、皮膚と一緒に動く
- 色は周囲の皮膚と同じか、やや白っぽい
- 中心部に黒い点(開口部)が見える
- 押すと臭いのある白い内容物が出ることがある
炎症を起こした粉瘤の特徴:
- 急速に大きくなり、元の数倍に腫れ上がる
- 色が赤くなる
- 触ると熱を持っている
- 安静時でもズキズキとした痛み
- 触れたり圧迫すると激痛
- 皮膚がテカテカと光って見える
- 発熱を伴うこともある
- 全身倦怠感
🚨 すぐに受診すべき危険な症状
以下の症状がある場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください:
- しこりが急に大きくなった
- 赤く腫れてきた
- 痛みが出てきた
- 熱を持っている
- 膿や血液が出てきた
- 38度以上の発熱がある
🏥 放置により複雑化する治療プロセス
粉瘤を放置して炎症を起こしてしまった場合、治療は通常の粉瘤よりも複雑になります。ここでは、炎症性粉瘤の治療の流れと、放置によって治療がどのように変わるのかを解説します。
💊 段階的治療プロセス
炎症を起こした粉瘤は、通常、すぐに摘出手術を行うことができません。まず炎症を抑えることが優先されます。
- 軽度の炎症:抗生物質の内服と消炎鎮痛剤で経過観察
- 膿が溜まっている場合:切開排膿が必要
切開排膿では、局所麻酔を行い、皮膚を切開して膿を排出します。この処置により痛みは劇的に改善しますが、粉瘤の袋は残っているため、完治ではありません。
⏱️ 治療期間と費用の増大
炎症を起こした粉瘤の治療は、初期の粉瘤治療に比べて時間も費用もかかります:
- 通常の粉瘤:1回の手術で完治
- 炎症性粉瘤:切開排膿→待機期間→根治手術という複数ステップ
- 通院回数の増加
- 抗生物質などの薬剤費
⚕️ 粉瘤の早期治療が重要な理由
ここまで見てきたように、粉瘤の放置にはさまざまなリスクがあります。早期に治療することで得られるメリットについて、改めて整理します。
🔪 適切な手術方法の選択が可能
粉瘤の根本的な治療法は、袋ごと摘出する手術です。自然治癒することはなく、薬だけで治すこともできません。早期治療では以下の方法から選択できます:
- 切開法(従来法):粉瘤の上の皮膚を紡錘形に切開し、袋ごと摘出
- くり抜き法:小さな穴から内容物を排出し、袋を摘出
くり抜き法は粉瘤より小さな傷で済むため、傷跡が目立ちにくいという利点があります。比較的小さな粉瘤に適しており、顔や首など見た目が気になる部位にも適応できます。
✨ 計画的治療による生活への影響最小化
炎症を起こした粉瘤は緊急の対応が必要になることがあります。一方、炎症を起こす前であれば、自分の都合の良いタイミングで手術を予約できます。
- 急な腫れや痛みで予定をキャンセルする必要がない
- 仕事や学校のスケジュールに合わせられる
- 休みを取りやすい時期に治療可能
- 手術は通常、局所麻酔による日帰り手術で行われる
📍 粉瘤ができやすい部位と放置の危険性
粉瘤は体のどこにでもできる可能性がありますが、特にできやすい部位があります。それぞれの部位の特徴と、放置した場合の注意点について解説します。
👤 顔・頭部・首の注意点
顔や頭部は粉瘤が非常にできやすい部位です。
- 皮脂腺が多く、毛穴も発達している
- 頭皮にできた粉瘤は髪の毛に隠れて気づきにくい
- 顔にできた粉瘤は美容的な観点から早期治療を希望される方が多い
- 顔面の炎症性粉瘤は目立つ傷跡が残る可能性
- 首の粉瘤は服の襟で刺激を受けやすい
💺 臀部・背中の高リスク部位
お尻や背中は、粉瘤が最も炎症を起こしやすい部位の一つです:
- 座る動作による圧迫
- 下着との摩擦
- 汗や湿気による蒸れ
- 炎症を起こすと座ることができなくなるほどの痛み
- 仕事や日常生活への影響が大きい
- 背中は衣服で擦れやすく、炎症を起こしやすい
👂 その他の好発部位
耳たぶや耳の後ろも粉瘤の好発部位です:
- ピアスの穴から粉瘤ができることもある
- 耳たぶの粉瘤は比較的小さいものが多い
- 放置すると炎症を起こし、耳たぶ全体が腫れ上がることがある
- どの部位にできても、放置すれば炎症のリスクがある
📚 まとめ
粉瘤は良性腫瘍であっても、放置することで深刻なリスクを伴う疾患です。粉瘤を放置すると危険な状況を招き、早期治療の重要性は以下の点からも明らかです。
放置による主なリスクは、炎症による激しい痛みと腫れ、化膿による膿の蓄積、周囲組織への感染拡大、治療跡の拡大、そして悪性腫瘍との鑑別困難などがあります。炎症を起こした粉瘤の治療は複雑化し、切開排膿から根治手術まで複数のステップが必要となり、時間も費用も増大します。
一方、早期治療では1回の手術で根治が可能であり、傷跡も最小限に抑えることができます。炎症を起こす前の粉瘤であれば、くり抜き法による美容的に優れた治療も選択でき、計画的なスケジュールで治療を受けることが可能です。
皮膚の下にしこりを発見した際は、自己判断で放置せず、専門医による正確な診断を受けることが重要です。粉瘤と似た症状を示す他の皮膚疾患との鑑別も必要であり、早期の医療機関受診が推奨されます。
アイシークリニック渋谷院では、形成外科専門医による粉瘤の日帰り手術を実施しております。痛みのない段階での治療をお勧めしており、患者様の症状や部位に応じて最適な治療法をご提案いたします。粉瘤かもしれないと感じた場合は、炎症を起こして辛い思いをする前に、ぜひお気軽にご相談ください。
粉瘤は自然に治ることはありません。粉瘤の中身を自分で絞り出しても、袋状の構造物が残っている限り再び内容物が溜まり、同じ場所に再発します。根本的な治療には手術で袋ごと摘出する必要があります。
粉瘤を自分で潰すことは絶対にやめてください。無理に潰すと袋が破れて炎症を起こす原因となります。また、不衛生な状態で処置すると細菌感染を起こし、化膿して悪化する危険があります。さらに、袋は残るため再発は避けられません。
粉瘤の手術は局所麻酔で行うため、手術中の痛みはほとんどありません。麻酔の注射時に一時的なチクッとした痛みがありますが、その後は痛みを感じることなく手術が進みます。術後は麻酔が切れると軽い痛みがありますが、処方される鎮痛剤で十分対処できる程度です。
粉瘤の手術は日帰りで行え、当日から通常の日常生活が可能です。ただし、当日の入浴は控え、術後1週間程度は激しい運動や飲酒を避けてください。デスクワークであれば翌日から仕事復帰できることがほとんどです。部位によっては動作制限が必要な場合もありますので、医師の指示に従ってください。
袋を完全に摘出できれば、同じ場所からの再発はほとんどありません。しかし、炎症を繰り返して癒着が強い場合や、袋の一部が残ってしまった場合は再発する可能性があります。また、体質的に粉瘤ができやすい方は、別の部位に新たな粉瘤ができることがあります。
粉瘤の手術は健康保険が適用されます。費用は粉瘤の大きさや部位、手術方法によって異なりますが、3割負担の場合、数千円から1万円台程度が一般的です。炎症を起こしている場合は切開排膿と根治手術の2回に分かれるため、費用も増えます。詳しい費用は診察時にお問い合わせください。
炎症を起こした粉瘤は、通常すぐに摘出手術を行うことができません。まず抗生物質の投与や切開排膿で炎症を抑え、炎症が落ち着いてから根治のための摘出手術を行います。炎症期に無理に手術を行うと、袋の取り残しや傷跡の悪化につながるリスクがあるためです。
粉瘤の手術は主に皮膚科または形成外科で行われています。炎症を起こしている場合や大きな粉瘤の場合は、手術経験が豊富な形成外科での治療がお勧めです。アイシークリニック渋谷院では形成外科専門医が粉瘤の日帰り手術を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
粉瘤が炎症を起こした場合の対処法については、粉瘤が炎症を起こしたときの対処法|原因と治療の流れを医師が解説で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
また、粉瘤の再発について詳しく知りたい方は、粉瘤が再発する原因とは?繰り返さないための正しい治療法を医師が解説をご覧ください。
📚 参考文献
- 日本皮膚科学会 – 皮膚腫瘍診療ガイドライン
- 日本形成外科学会 – 皮膚・軟部組織腫瘍の診断と治療
- 日本創傷外科学会 – 創傷治癒と感染制御
- 厚生労働省 – 皮膚疾患の診断と治療に関する指針
- 国立がん研究センター – 皮膚腫瘍の診断と鑑別診断

監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
医師・当院治療責任者
炎症を起こした粉瘤は、想像以上に強い痛みを伴います。特にお尻や脇の下など、日常の動作で圧迫される部位では、座ることも困難になるほどです。早期の段階で治療すれば、このような辛い思いをせずに済みます。粉瘤かもしれないと感じたら、痛みが出る前にご相談いただくことをお勧めします。