「薏苡仁湯を飲むと痩せる」という情報を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。薏苡仁湯はもともと関節の痛みや筋肉のこわばりに使われる漢方薬ですが、近年ではダイエット目的で注目されることも増えています。しかし、実際のところ薏苡仁湯にはどのような作用があり、体重減少につながる可能性はあるのでしょうか。この記事では、薏苡仁湯の基本的な知識から、痩せると言われる理由、実際に期待できる効果と限界、注意すべき副作用まで、医療的な観点から丁寧に解説します。漢方薬によるダイエットを検討している方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
- 薏苡仁湯とはどのような漢方薬か
- 薏苡仁湯が「痩せる」と言われる理由
- 薏苡仁湯に含まれる主な生薬とその働き
- 薏苡仁湯で実際に期待できる効果
- 薏苡仁湯だけで痩せることはできるのか
- 薏苡仁湯の副作用と注意点
- 薏苡仁湯を使用する際の正しい方法
- ダイエットに漢方薬を活用するときのポイント
- 薏苡仁湯以外のダイエット向け漢方薬との比較
- まとめ
この記事のポイント
薏苡仁湯はむくみ改善による体重変化は期待できるが、体脂肪を直接減らす効果は限定的。甘草・麻黄による副作用リスクもある。
🎯 薏苡仁湯とはどのような漢方薬か
薏苡仁湯(よくいにんとう)は、日本の漢方医学で古くから使われてきた代表的な処方のひとつです。その名前にも含まれている「薏苡仁(よくいにん)」は、ハトムギの種子を乾燥させたものであり、漢方医学における重要な生薬のひとつです。ハトムギは食品としても親しまれており、ハトムギ茶やコーヒーなどとして日常的に摂取されることもあります。
薏苡仁湯は主に、関節や筋肉の疾患に対して用いられます。具体的には、関節リウマチ、筋肉痛、神経痛、関節炎などが主な適応症です。漢方医学的には「水湿(すいしつ)」と呼ばれる体内の余分な水分や湿気を除去し、「気血(きけつ)」の流れを整えることで、痛みやこわばりを改善するとされています。
日本では医療用漢方製剤として保険適用されており、エキス顆粒の形で処方されることが多いです。また、市販の漢方薬としても入手可能です。成分の組み合わせとしては、薏苡仁を中心に複数の生薬が配合されており、それぞれが相互に作用して効果を発揮する設計になっています。
もともとダイエット目的で作られた漢方薬ではありませんが、その作用メカニズムの一部がダイエットに関連すると考えられるようになり、近年ではダイエット目的での使用に関心を持つ人が増えています。ただし、医療機関での処方目的は基本的に関節・筋肉系の疾患であることを念頭に置いておくことが大切です。
Q. 薏苡仁湯が「痩せる」と言われる理由は何ですか?
薏苡仁湯が痩せると言われる主な理由は、利水作用による体内の余分な水分の排出です。これによりむくみが解消され、体重の数値が下がることがあります。ただし、体脂肪が直接減少するわけではなく、水分量が適正化された結果にすぎません。
📋 薏苡仁湯が「痩せる」と言われる理由
薏苡仁湯がダイエット効果を持つと言われるようになったのには、いくつかの理由があります。まず前提として理解しておきたいのは、漢方医学の考え方に基づく「痩せる」という概念は、西洋医学的な「脂肪燃焼」とは少し異なるという点です。
漢方医学では、肥満の原因を大きく「水湿(すいしつ)」「気滞(きたい)」「血瘀(けつお)」などのタイプに分類します。このうち薏苡仁湯が主に対応するのは「水湿」型です。水湿型の肥満とは、体内に余分な水分や老廃物が滞留することによって体重が増加したり、むくみが生じたりする状態を指します。日本人に多いむくみ型の体型は、この水湿型に該当するとされることが多いです。
薏苡仁湯に含まれる薏苡仁をはじめとする生薬群には、利水作用(体内の余分な水分を排出する働き)があるとされています。この利水作用によって体内の水分バランスが改善されると、むくみが解消され、見た目にも体重の数値的にも変化が現れることがあります。これが「薏苡仁湯を飲むと痩せる」という話につながっています。
また、薏苡仁には基礎代謝を高める可能性があるという研究も一部で報告されています。代謝が上がることで、カロリーの消費が促進されると考えられており、これもダイエット効果への期待につながる要因のひとつです。さらに、薏苡仁湯が腸内環境に影響を与え、排泄を促す作用があるという見方もあります。
ただし、これらの効果はあくまでも漢方医学的な理論や一部の研究に基づくものであり、薏苡仁湯を飲めば確実に体脂肪が減少するという科学的根拠は、現時点では十分に確立されているとは言えません。期待と現実のギャップをしっかりと認識することが重要です。
💊 薏苡仁湯に含まれる主な生薬とその働き
薏苡仁湯の効果を理解するためには、含まれる生薬とそれぞれの働きを知ることが役立ちます。薏苡仁湯は複数の生薬を組み合わせた複方処方ですが、主な構成生薬は以下のとおりです。
まず、処方名にもなっている「薏苡仁(よくいにん)」は、ハトムギの種子から得られる生薬です。漢方医学では利水・除湿の代表的な生薬とされており、体内の余分な水分を排出し、むくみや関節の腫れを改善する作用があるとされています。また、皮膚の代謝を促す作用も知られており、いぼや肌荒れに対して使われることもあります。
次に「麻黄(まおう)」です。麻黄はエフェドリンを含む生薬で、発汗を促進し、体表部の余分な水分や邪気を排出する作用があります。また、気管を拡張する作用もあり、喘息などにも使われます。代謝を活性化する効果が期待されており、ダイエット漢方として知られる防風通聖散にも含まれています。ただし、麻黄は心拍数の増加や血圧上昇などの副作用リスクがある生薬でもあります。
「桂皮(けいひ)」は、シナモンの木の皮から得られる生薬です。体を温め、血行を改善する作用があります。冷えによるむくみや血行不良に対して効果が期待されており、消化機能を助ける作用もあります。
「蒼朮(そうじゅつ)」または「白朮(びゃくじゅつ)」は、消化器系を整え、胃腸の機能を高める生薬です。また利水作用もあり、薏苡仁と協力して体内の水分代謝を改善するとされています。
「当帰(とうき)」は血を補い、血行を改善する生薬です。女性に多い貧血や冷えを改善するとされており、薏苡仁湯においても血流の改善を通じて関節や筋肉の症状を和らげる役割を担っています。
「芍薬(しゃくやく)」は筋肉の緊張をほぐし、痛みを和らげる生薬です。血を補う作用もあり、当帰と組み合わせることで血行改善効果が高まるとされています。
「甘草(かんぞう)」は多くの漢方薬に配合される生薬で、各生薬の働きを調和し、胃腸を保護する作用があります。ただし、長期使用や過剰摂取によって偽アルドステロン症(血圧上昇、むくみ、低カリウム血症など)を引き起こすリスクがあることで知られています。
これらの生薬が組み合わさることで、薏苡仁湯は体内の水分代謝を改善し、血行を促進し、筋肉・関節の症状を緩和する複合的な効果を発揮します。
Q. 薏苡仁湯に含まれる生薬とその働きを教えてください。
薏苡仁湯の主な構成生薬は、利水・除湿作用を持つ薏苡仁、代謝を活性化する麻黄、血行を改善する桂皮・当帰・芍薬、消化器を整える蒼朮、そして各生薬を調和する甘草です。これらが組み合わさることで、水分代謝改善・血行促進・筋肉症状緩和の複合効果を発揮します。
🏥 薏苡仁湯で実際に期待できる効果
薏苡仁湯を服用することで、具体的にどのような変化が期待できるのかを整理してみましょう。重要なのは、医学的に明確に証明されている効果と、漢方医学的に期待されている効果を区別して理解することです。
まず、薏苡仁湯が保険適用されている適応症としては、関節痛、筋肉痛、神経痛、リウマチ、筋肉のこわばりなどがあります。これらに関しては、一定の臨床的なエビデンスに基づいて医療機関での処方が認められています。
ダイエット・体重管理という観点では、以下のような効果が期待されることがあります。
まず「むくみの改善」です。薏苡仁湯の利水作用によって、体内に溜まった余分な水分が排出されることで、むくみが解消される可能性があります。特に足や顔のむくみで悩んでいる方では、この効果を実感できるケースがあります。むくみが解消されると体重の数値が下がることがありますが、これは体脂肪が減少したわけではなく、体内の水分量が適正化された結果にすぎません。
次に「代謝の改善」です。麻黄や桂皮などの生薬が血行を促進し、体を温める効果を発揮することで、基礎代謝が改善される可能性があります。代謝が上がると日常生活でのカロリー消費が増えるため、ダイエットにとってプラスに働く可能性があります。
また「腸内環境の改善」も期待される効果のひとつです。蒼朮や白朮などの生薬が消化器系を整えることで、便秘が改善されたり、腸内環境が良くなったりすることがあります。これによって栄養の吸収と排泄のバランスが整い、体重管理に役立つ可能性があります。
さらに、薏苡仁湯の服用によって関節痛や筋肉痛が改善されることで、日常的な運動量が増加するという間接的な効果も考えられます。痛みがあって運動できなかった人が、薏苡仁湯で症状が緩和されて運動できるようになれば、消費カロリーが増えてダイエットにつながる可能性があります。
一方で、薏苡仁湯が直接的に脂肪を分解したり、食欲を抑制したりするという科学的なエビデンスは現時点では不十分です。効果には個人差があり、すべての人に同じような変化が現れるわけではないことを理解しておく必要があります。
⚠️ 薏苡仁湯だけで痩せることはできるのか
「薏苡仁湯を飲むだけで痩せられるのか」という疑問を持つ方は多いでしょう。結論から言えば、薏苡仁湯を服用するだけで体脂肪を大幅に減少させることは、医学的に見て期待しにくいと言えます。
薏苡仁湯の利水作用によって体内の余分な水分が排出され、むくみが改善されることで、体重計の数値が一時的に下がることはあります。しかしこれは、体脂肪が減ったのではなく、水分量の変化によるものです。見た目がすっきりしたり、体が軽く感じたりする効果はあるかもしれませんが、本質的な体脂肪の減少とは異なります。
体脂肪を減らして健康的に痩せるためには、基本的には消費カロリーが摂取カロリーを上回る状態を継続的に作り出すことが不可欠です。これは漢方薬だけでなく、どのようなアプローチをとる場合でも同様です。薏苡仁湯は食事制限や運動の代わりになるものではなく、それらを補助する手段として捉えるのが適切です。
また、薏苡仁湯は本来、特定の体質や症状を持つ人に向けた漢方薬です。漢方医学では、個人の体質(証)に合った処方を選ぶことが重要とされています。水湿型の体質を持つ人には効果が出やすい可能性がありますが、それ以外の体質の人には効果が現れにくいか、場合によっては体質に合わない処方となってしまうことがあります。
さらに、薏苡仁湯を適切な目的や体質の確認なしに長期間服用することは、副作用のリスクを高める可能性もあります。漢方薬は自然由来だからといって安全とは限らず、医師や薬剤師に相談したうえで使用することが大切です。
総じて言えば、薏苡仁湯はダイエットの直接的な手段としてではなく、体内の水分バランスや代謝を整えるサポートとして位置づけるのが現実的です。本格的なダイエットを目指すのであれば、食生活の見直し、適度な運動、必要に応じた医療的介入を組み合わせることが重要です。
Q. 薏苡仁湯の主な副作用と注意が必要な人は?
薏苡仁湯の主な副作用は、甘草による偽アルドステロン症(血圧上昇・低カリウム血症)と、麻黄による動悸・不眠・血圧上昇です。高血圧・心臓病の方は特に注意が必要です。また、妊娠中の方は薏苡仁の子宮収縮作用があるため使用を避けるべきとされています。
🔍 薏苡仁湯の副作用と注意点
薏苡仁湯は漢方薬ですが、副作用がないわけではありません。特に含まれる生薬によっては、注意が必要なケースがあります。服用を検討する場合は、あらかじめ副作用と禁忌について理解しておきましょう。
最も注意が必要な副作用のひとつが「偽アルドステロン症」です。これは、甘草に含まれるグリチルリチン酸が体内でアルドステロンに似た作用を引き起こすことで発生します。症状としては、血圧の上昇、手足のむくみ、低カリウム血症(筋力低下、疲労感、筋肉のけいれんなど)があります。特に他の甘草含有製品(葛根湯など他の漢方薬、一部のサプリメントなど)と同時に使用している場合はリスクが高まります。
麻黄に関連する副作用も重要です。麻黄に含まれるエフェドリンは交感神経を刺激する作用があり、心拍数の増加、血圧上昇、動悸、不眠、発汗過多などを引き起こすことがあります。高血圧、心臓病、甲状腺疾患のある方は特に注意が必要で、場合によっては使用を避けるべきです。
消化器系の副作用として、胃腸の不快感、食欲不振、悪心(吐き気)、下痢などが現れることもあります。漢方薬は食前または食間に服用することが多いですが、胃腸が弱い方は食後に服用することで消化器への負担を軽減できる場合があります。
皮膚に関する副作用としては、発疹やかゆみなどのアレルギー反応が起こることがあります。初めて服用する際は少量から始め、異常を感じた場合はすぐに服用を中止して医療機関に相談することが重要です。
妊娠中または授乳中の方は、薏苡仁湯の使用に慎重であるべきです。薏苡仁には子宮収縮作用があるとされており、特に妊娠初期や妊娠中の使用は避けるべきとされています。麻黄も妊娠中の使用には注意が必要な生薬です。
高齢者の場合は、生理機能が低下していることが多いため、副作用が現れやすい傾向があります。通常より少ない量から開始し、経過を観察することが勧められます。
また、既存の疾患(特に循環器系、腎臓系の疾患)や他の薬(特に利尿薬、降圧薬など)との相互作用にも注意が必要です。複数の薬を服用している方は、必ず医師や薬剤師に相談してから使用するようにしてください。
📝 薏苡仁湯を使用する際の正しい方法
薏苡仁湯を安全かつ効果的に使用するためには、正しい方法を理解しておくことが大切です。以下に、使用に際して知っておきたい基本的な事項をまとめます。
まず、薏苡仁湯は医師の診察を受けてから使用することが最も望ましいです。特に保険適用での処方を希望する場合は、医療機関で診察を受け、適応症であると診断される必要があります。市販薬として購入する場合も、薬剤師に相談のうえで選択するようにしましょう。
服用量と服用方法については、製品の添付文書や医師・薬剤師の指示に従うことが基本です。一般的には、エキス顆粒の場合は1日2〜3回、食前または食間(食事の30分以上前または食後2時間以上経ってから)にぬるま湯で溶かして服用することが多いですが、製品によって異なる場合があります。
服用期間についても注意が必要です。漢方薬は即効性を期待するものではなく、一定期間継続して服用することで効果が現れてくることが多いです。ただし、漫然と長期間服用し続けることも適切ではありません。一般的には2〜4週間服用して効果を確認し、効果が見られない場合や副作用が現れた場合は、使用を見直すことが勧められます。
効果を最大限に引き出すためには、生活習慣の改善と併用することが重要です。水分の適切な摂取、塩分の過剰摂取を控えること、適度な運動、質の良い睡眠などを心がけることで、薏苡仁湯の効果がより発揮されやすくなります。
体質に合っているかどうかを確認することも重要なポイントです。漢方医学では「証(しょう)」と呼ばれる個人の体質・病態に合った処方を選ぶことが原則です。薏苡仁湯は水湿型の体質、特に関節や筋肉の症状を伴う場合に適しているとされています。自分の体質が薏苡仁湯に合っているかどうかを確認するためには、漢方専門医や漢方を扱う医師に相談することが最善です。
他の薬やサプリメントとの併用については、必ず事前に医師や薬剤師に相談してください。特に甘草を含む他の漢方薬との重複使用や、心臓・血圧関連の薬との相互作用には注意が必要です。
Q. 防風通聖散と薏苡仁湯のダイエット効果の違いは?
防風通聖散は体力のある実証の方向けで、内臓脂肪の減少や便秘改善に直接的な効果が期待されます。一方、薏苡仁湯は関節・筋肉の症状を伴うむくみ型の肥満に適しています。アイシークリニックでは、どちらが適切かを個々の体質(証)を見極めたうえでご提案しています。
💡 ダイエットに漢方薬を活用するときのポイント
漢方薬をダイエットに活用することを考えている方に向けて、成功のカギとなるポイントをいくつかご紹介します。漢方薬の特性を正しく理解し、適切に活用することで、健康的な体重管理のサポートとして役立てることができます。
まず最も重要なのは、自分の体質(証)を把握することです。漢方医学では、同じ「肥満」という状態でも、その原因や背景にある体質の乱れによって適切な処方が異なります。薏苡仁湯が効果的な「水湿型」のほかにも、ストレスによる「気滞型」、血行不良による「血瘀型」、消化機能の低下による「脾虚型」などがあります。自分に合っていない処方を使用しても効果が出にくく、場合によっては体調を崩してしまうこともあります。
専門家への相談を怠らないことも大切です。市販の漢方薬はドラッグストアなどで手軽に購入できますが、自己判断での使用はリスクを伴います。漢方専門医や、漢方の知識を持つ医師・薬剤師に相談することで、自分の体質に合った処方を選んでもらうことができます。
漢方薬はあくまでサポート手段であるという認識を持つことも重要です。食生活の改善や適度な運動なしに漢方薬だけで大きなダイエット効果を期待することは現実的ではありません。漢方薬は体の内側から整えるサポートをするものであり、根本的な生活習慣の改善と組み合わせることで、その効果を最大限に発揮できます。
効果を焦らず、継続的に取り組む姿勢も必要です。漢方薬は即効性より継続性が重要で、体質改善を通じて徐々に効果が現れてくるものです。短期間で結果を求めすぎると、効果が出る前に諦めてしまったり、過剰摂取につながったりするリスクがあります。
また、定期的に効果と副作用を確認することも忘れないようにしましょう。服用中は体調の変化に注意を払い、異常を感じたらすぐに使用を中止して医療機関に相談することが大切です。
なお、薏苡仁湯以外にも、ダイエットに関連して使われることがある漢方薬はいくつか存在します。それらの特徴を理解したうえで、自分に最も合った選択をすることが、漢方薬を活用したダイエットを成功させる近道です。
✨ 薏苡仁湯以外のダイエット向け漢方薬との比較

ダイエット目的で漢方薬を検討する際、薏苡仁湯のほかにもいくつかの選択肢があります。それぞれの特徴を比較することで、自分に合った処方を選ぶ参考にしてください。
まず、ダイエット漢方として最もよく知られているのが「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」です。防風通聖散は、いわゆる「実証」(体格がよく、体力がある方)向けの処方で、脂肪の多い肥満、便秘、高血圧、肌荒れなどに対して使われます。代謝促進、便通改善、脂質の吸収抑制などの効果が期待されており、日本では市販のダイエット漢方薬として広く販売されています。一部の研究では内臓脂肪を減らす効果が報告されており、薏苡仁湯よりも直接的なダイエット効果が期待できる可能性があります。ただし、体力のない方や虚弱体質の方には向かない処方です。
「防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)」は、色白で汗をかきやすく、筋肉が少なくむくみやすい「虚証」の方に向いた処方です。関節炎、むくみ、多汗症などに使われ、水湿型の体質改善に適しています。薏苡仁湯と作用が似ている部分がありますが、対象となる体質が異なります。運動が苦手で疲れやすく、むくみがちな方に向いているとされています。
「大柴胡湯(だいさいことう)」は、がっちりした体格で便秘がちな方向けの処方です。高血圧、動脈硬化、肥満などに使われ、脂質代謝の改善や便通改善を通じてダイエットをサポートする可能性があります。
「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」は、血行不良(血瘀)による肥満、月経不順、更年期症状などに対して使われる処方です。血行を改善し、代謝を促進する効果が期待されており、冷えと血行不良を伴う肥満に適しているとされています。
薏苡仁湯は、これらの中でも特に「関節や筋肉の症状を伴うむくみ型の肥満」に対して活用されることが多い処方です。単純なむくみの改善だけが目的であれば防己黄耆湯、より積極的な体脂肪の減少を目指すのであれば防風通聖散のほうが適している場合もあります。
どの漢方薬が自分に最も合っているかは、体質や症状によって異なります。安易に人気の漢方薬を選ぶのではなく、漢方の専門知識を持つ医師や薬剤師に相談して、自分の証に合った処方を選ぶことが最も効果的なアプローチです。
👨⚕️ 当院での診療傾向【医師コメント】
高桑康太 医師(当院治療責任者)より
「薏苡仁湯をダイエット目的でお問い合わせいただく患者様が増えておりますが、むくみの改善による体重変化と体脂肪の減少は別物であることをしっかりとご説明したうえで、お一人おひとりの体質(証)に合った処方かどうかを丁寧に見極めることを大切にしています。麻黄や甘草による副作用リスクもあるため、自己判断での長期服用はせず、まずは専門家にご相談いただくことを強くお勧めします。漢方薬はあくまで体質改善のサポート手段として、食生活や運動習慣の見直しと組み合わせることで、より安全で効果的な体重管理につながります。」
📌 よくある質問
薏苡仁湯の利水作用によってむくみが改善され、体重の数値が下がることはありますが、これは体脂肪が減少したわけではありません。体内の水分量が適正化された結果です。体脂肪を減らすためには、食事管理や適度な運動などの生活習慣の改善と組み合わせることが重要です。
薏苡仁湯は、体内に余分な水分が溜まりやすい「水湿型」の体質に向いているとされています。特に、むくみや関節・筋肉の痛みを伴う方に適しているとされています。ただし、漢方医学では個人の体質(証)に合った処方選びが重要なため、まずは専門家への相談をお勧めします。
主な副作用として、甘草による「偽アルドステロン症」(血圧上昇・むくみ・低カリウム血症)や、麻黄による「動悸・心拍数増加・不眠」などが挙げられます。また、胃腸の不快感やアレルギー反応が現れる場合もあります。高血圧や心臓病のある方は特に注意が必要です。
漢方薬は即効性より継続性が重要で、一般的には2〜4週間服用して効果を確認することが勧められています。効果が見られない場合や副作用が現れた場合は、使用を見直す必要があります。長期間漫然と服用し続けることは副作用リスクを高めるため、当院では定期的な経過確認をお勧めしています。
防風通聖散は体力がある「実証」の方向けで、脂肪の多い肥満や便秘改善に適し、内臓脂肪への直接的な効果が期待されています。一方、薏苡仁湯は関節・筋肉の症状を伴うむくみ型の肥満に向いています。どちらが適切かは体質によって異なるため、当院では個々の証を見極めたうえで処方をご提案しています。
🎯 まとめ
薏苡仁湯は、関節痛や筋肉痛などの治療を主な目的とした漢方薬ですが、その利水作用や代謝改善効果から、ダイエットに関心を持つ方にも注目されています。薏苡仁湯によってむくみが改善されたり、水分代謝が正常化されたりすることで体重の数値が下がることはあり得ますが、それは体脂肪の減少とは異なるものです。
薏苡仁湯を服用するだけで大幅なダイエット効果を期待することは難しく、食事管理や運動などの基本的な生活習慣の改善と組み合わせることが重要です。また、薏苡仁湯には甘草による偽アルドステロン症や麻黄による心拍数増加といった副作用リスクがあるため、自己判断で使用することは避け、医師や薬剤師に相談することを強くお勧めします。
漢方医学では、個人の体質(証)に合った処方を選ぶことが効果を発揮するための前提条件です。薏苡仁湯が適している体質かどうかを確認したうえで使用することが、安全で効果的な活用につながります。ダイエットを真剣に考えているのであれば、漢方薬だけに頼るのではなく、医療的なサポートも含めた総合的なアプローチを検討することをお勧めします。
📚 関連記事
📚 参考文献
- 厚生労働省 – 漢方製剤の保険適用や医療用漢方エキス製剤に関する情報、薏苡仁湯を含む漢方薬の適応症・副作用(偽アルドステロン症、甘草含有製剤の注意事項)に関する公式情報の参照
- PubMed – 薏苡仁(ハトムギ)や薏苡仁湯の利水作用・代謝改善・抗炎症作用に関する国際的な学術研究論文、および防風通聖散など漢方薬のダイエット効果に関するエビデンスの参照
- WHO(世界保健機関) – WHO伝統医学戦略および漢方・伝統薬の安全性・有効性評価に関するガイドライン、生薬(麻黄・甘草等)の国際的な安全使用基準に関する情報の参照
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務