飛行機や長距離バス、車での長時間移動中に発症するエコノミー症候群は、最悪の場合、命に関わる危険な病態です。特に旅行シーズンや帰省時期には、多くの方が長時間の移動を経験します。エコノミー症候群は正式には「静脈血栓塞栓症」と呼ばれ、長時間同じ姿勢で座り続けることで足の静脈に血栓ができ、それが肺に詰まることで重篤な症状を引き起こします。本記事では、アイシークリニック渋谷院の医師が、エコノミー症候群の原因や症状、そして具体的な予防法について詳しく解説します。長時間移動を控えている方はもちろん、日常的にデスクワークで座りっぱなしの方にも参考になる内容です。
目次
- エコノミー症候群とは
- エコノミー症候群が起こるメカニズム
- エコノミー症候群の主な症状
- エコノミー症候群のリスク因子
- 長時間移動中のエコノミー症候群予防法
- 飛行機でのエコノミー症候群対策
- 車・バスでのエコノミー症候群対策
- 新幹線でのエコノミー症候群対策
- エコノミー症候群の治療法
- 日常生活での予防意識
- よくある質問
この記事のポイント
エコノミー症候群(静脈血栓塞栓症)は長時間移動中に血栓が形成され肺を詰まらせる危険な病態で、水分補給・定期的な運動・弾性ストッキング着用により予防可能とアイシークリニック医師が解説。
🩺 エコノミー症候群とは
エコノミー症候群は、正式には「静脈血栓塞栓症(じょうみゃくけっせんそくせんしょう)」または「深部静脈血栓症・肺血栓塞栓症」と呼ばれる病態です。飛行機のエコノミークラスで長時間座り続けることで発症することが多いため、この名前で広く知られるようになりました。しかし、エコノミークラスに限らず、ビジネスクラスやファーストクラスでも、また飛行機以外の乗り物でも発症する可能性があります。
📋 病態の正式名称と定義
医学的には、エコノミー症候群は二つの病態の組み合わせで説明されます。一つは「深部静脈血栓症(DVT:Deep Vein Thrombosis)」で、主に下肢の深部にある静脈に血栓(血の塊)ができる状態です。もう一つは「肺血栓塞栓症(PE:Pulmonary Embolism)」で、深部静脈にできた血栓が剥がれて血流に乗り、肺の血管を詰まらせる状態を指します。これらを合わせて「静脈血栓塞栓症(VTE:Venous Thromboembolism)」と総称します。
📊 発症頻度と重症度
飛行機での長時間移動後にエコノミー症候群を発症する確率は、4時間以上のフライトで約1万人に1人とされています。しかし、症状が軽度で見過ごされているケースも多く、実際の発症率はこれより高い可能性があります。肺血栓塞栓症まで進行した場合、その致死率は治療を受けなければ30%にも達するとされ、早期発見・早期治療が極めて重要です。一方、適切な治療を受ければ致死率は2〜8%程度まで低下するため、症状を感じたら速やかに医療機関を受診することが大切です。
Q. エコノミー症候群とはどのような病態ですか?
エコノミー症候群(静脈血栓塞栓症)は、長時間同じ姿勢で座り続けることで足の静脈に血栓が生じ、それが肺の血管を詰まらせる病態です。肺血栓塞栓症まで進行した場合、治療なしでの致死率は約30%に達しますが、適切な治療により2〜8%程度まで低下します。
⚙️ エコノミー症候群が起こるメカニズム
エコノミー症候群がなぜ起こるのかを理解することは、効果的な予防につながります。血栓が形成される原因には、19世紀にドイツの病理学者ウィルヒョウが提唱した「ウィルヒョウの3徴」と呼ばれる3つの要因があります。
🩸 血流のうっ滞
長時間同じ姿勢で座り続けると、足の静脈の血流が滞ります。通常、歩行時にはふくらはぎの筋肉がポンプのように働き、足の血液を心臓に向かって押し上げています。これを「筋ポンプ作用」と呼びます。しかし、座ったままの状態が続くと、この筋ポンプ作用が働かず、血液が足に溜まってしまいます。
特に膝を曲げた状態では、膝の裏側で静脈が圧迫され、さらに血流が悪くなります。飛行機の座席では、前の座席との間隔が狭いため足を十分に伸ばすことができず、血流のうっ滞が起こりやすい環境となっています。
🔗 血管内皮の障害
血管の内側を覆っている内皮細胞は、通常は血栓ができるのを防ぐ働きをしています。しかし、様々な原因で内皮細胞が傷つくと、その部分に血小板が集まりやすくなり、血栓形成のきっかけとなります。長時間座っていることによる持続的な圧迫や、脱水による血液濃縮なども、血管内皮にストレスを与える要因となります。また、喫煙者や高血圧、糖尿病の方は、もともと血管内皮の機能が低下しているため、より血栓ができやすい状態にあります。
🧪 血液凝固能の亢進
血液が固まりやすい状態になることも、血栓形成の重要な要因です。機内の湿度は通常10〜20%程度と非常に低く、知らないうちに体から水分が失われていきます。この脱水状態により血液が濃縮され、粘度が上がることで血栓ができやすくなります。
また、妊娠中やピル(経口避妊薬)を服用している方、がん患者さんなどは、もともと血液が固まりやすい状態にあるため、より注意が必要です。さらに、飛行機内の気圧は地上より低いため、これも血液凝固に影響を与える可能性が指摘されています。
🚨 エコノミー症候群の主な症状
エコノミー症候群の症状は、血栓が足にとどまっている段階と、肺に移動した段階で大きく異なります。症状を正しく認識することで、早期発見・早期治療につなげることができます。
🦵 深部静脈血栓症の症状
足の静脈に血栓ができた段階では、以下のような症状が現れることがあります。
- 片方の足、特にふくらはぎや太ももに腫れが生じます
- この腫れは、左右で明らかな差がある場合が多いです
- 患部に痛みや圧痛を感じ、特に歩行時やふくらはぎを押した時に痛みが増強
- 皮膚が赤くなったり、熱を持ったりすることもあります
- 足が重だるく感じたり、突っ張った感じがすることもあります
ただし、血栓ができていても症状がほとんどないケースもあり、約半数は無症状とも言われています。そのため、長時間移動後に少しでも足に違和感があれば、念のため医療機関を受診することをお勧めします。
🫁 肺血栓塞栓症の症状
血栓が足から離れて肺の血管を詰まらせると、より重篤な症状が現れます。
- 突然の息切れや呼吸困難が最も多い症状で、安静にしていても息苦しさを感じます
- 胸の痛みも特徴的で、特に深呼吸をした時に痛みが増すことがあります
- 動悸や脈が速くなることもあります
- 血痰(血が混じった痰)が出ることもあります
- 重症の場合は、意識がもうろうとしたり、失神したりすることもあります
- 唇や指先が青紫色になる(チアノーゼ)こともあります
これらの症状は、飛行機を降りた直後だけでなく、数日〜2週間後に現れることもあります。長時間移動後にこのような症状が現れた場合は、ためらわずに救急医療を受診してください。
⏰ 症状出現のタイミング
エコノミー症候群の症状は、必ずしも移動中や移動直後に現れるわけではありません。深部静脈血栓症の症状は、移動中〜数日後に現れることが多いです。一方、肺血栓塞栓症は、飛行機を降りて歩き始めた時や、到着後数日経ってから発症することもあります。これは、座っている間に形成された血栓が、動き始めることで剥がれ落ち、血流に乗って肺に運ばれるためです。海外旅行から帰国後1〜2週間は、体調の変化に注意を払うことが大切です。
Q. エコノミー症候群が発症しやすい原因は何ですか?
エコノミー症候群の原因は「ウィルヒョウの3徴」で説明されます。①長時間座位による血流のうっ滞、②持続的な圧迫や脱水による血管内皮の障害、③機内湿度10〜20%という乾燥環境による脱水で血液が濃縮され凝固しやすくなること、この3要因が重なり血栓が形成されます。
⚠️ エコノミー症候群のリスク因子
エコノミー症候群は誰にでも起こりうる病態ですが、特にリスクが高い方がいます。自分自身のリスク因子を把握しておくことで、より意識的に予防に取り組むことができます。
👤 個人的なリスク因子
- 年齢が上がるほどリスクは高くなり、特に40歳以上では注意が必要です
- 肥満の方は、腹部の脂肪が下肢の静脈を圧迫しやすく、血流が滞りやすくなります
- 身長が高い方や低い方も、座席に合わない姿勢を強いられることでリスクが上がります
- 過去に深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症を起こしたことがある方は、再発のリスクが高いため特に注意が必要です
- 血栓ができやすい体質(血栓性素因)を持っている方も同様です
- 下肢静脈瘤がある方は、もともと静脈の血流が悪いため、血栓ができやすい状態にあります
- 最近手術を受けた方、特に下肢や骨盤の手術後は、血栓のリスクが高まっています
👩 女性特有のリスク因子
- 妊娠中や産後の女性は、ホルモンの変化により血液が固まりやすくなっています
- 特に妊娠後期は、大きくなった子宮が下大静脈を圧迫するため、下肢の血流が滞りやすくなります
- 経口避妊薬(ピル)やホルモン補充療法を受けている方も、血栓のリスクが高まります
これらに該当する方が長時間移動をする際は、事前に主治医に相談し、適切な予防策を講じることをお勧めします。
🏥 疾患に関連するリスク因子
- がんの患者さんは、がん細胞が産生する物質により血液が固まりやすくなっています
- 心不全や呼吸器疾患のある方は、血液循環が悪く、血栓ができやすい状態です
- 腎臓病や炎症性腸疾患も血栓のリスクを高めます
- 感染症、特に新型コロナウイルス感染症では、血栓合併症が問題となることが知られています
これらの基礎疾患をお持ちの方は、長時間移動の前に主治医に相談することをお勧めします。
🚭 生活習慣に関連するリスク因子
- 喫煙は血管内皮を傷つけ、血液を固まりやすくするため、大きなリスク因子です
- 脱水も重要なリスク因子であり、アルコールやカフェインを多く摂取すると利尿作用により脱水が進みます
- 睡眠薬の使用は、移動中に動かずに長時間眠ってしまうリスクがあるため、注意が必要です
🛡️ 長時間移動中のエコノミー症候群予防法
エコノミー症候群は、適切な予防策を講じることで発症リスクを大幅に減らすことができます。以下に、どの乗り物でも共通して実践できる基本的な予防法をご紹介します。
💧 こまめに水分を補給する
脱水を防ぐため、こまめに水分を摂取することが最も重要な予防策の一つです。目安として、1時間あたり100〜150ml程度の水分を摂取することをお勧めします。8時間のフライトであれば、約1リットル程度の水分補給が望ましいでしょう。
- 水やお茶、スポーツドリンクなどが適しています
- アルコールやコーヒー、紅茶などカフェインを含む飲み物は利尿作用があり、かえって脱水を促進してしまうため、控えめに
- 特に機内はかなり乾燥しているため、喉が渇いていなくても意識的に水分を摂ることが大切です
🏃 定期的に体を動かす
血流を促進するため、定期的に体を動かすことも非常に重要です。
- 可能であれば、1〜2時間ごとに席を立ち、通路を歩くようにしましょう
- トイレに行くことを意識すると、自然と歩く機会が増えます
- 座ったままでも、足首を回したり、つま先とかかとを交互に上げ下げする運動(足踏み運動)を行うことで、ふくらはぎの筋ポンプ作用を働かせることができます
- ふくらはぎを手でマッサージするのも効果的です
- 膝を抱えて胸に引き寄せるストレッチも、下肢の血流改善に役立ちます
これらの運動は、10〜15分ごとに数分間行うことをお勧めします。
👕 ゆったりとした服装を選ぶ
体を締め付ける服装は血流を妨げるため、長時間移動時にはゆったりとした服装を選びましょう。
- 特にウエスト周りや太もも周りがきつい衣類は避けてください
- 靴は脱いでリラックスできるものが良いですが、足がむくんで靴が履けなくなることもあるため、スリッパを持参すると便利です
- ベルトは緩めるか外しておくと楽です
🧦 弾性ストッキングを着用する
弾性ストッキング(着圧ソックス)は、下肢に適度な圧力をかけることで静脈の血流を助け、血栓形成を予防する効果があります。医療用の弾性ストッキングは、足首部分が最も圧力が高く、上に行くにつれて圧力が弱くなる設計になっており、効率的に血液を心臓に戻す働きをします。
特にリスク因子を持っている方には、長時間移動時の弾性ストッキング着用が推奨されています。市販の着圧ソックスでも一定の効果が期待できますが、リスクが高い方は医療機関で相談の上、適切な圧力の弾性ストッキングを処方してもらうことをお勧めします。
💺 座り方を工夫する
座っている間も、姿勢を工夫することで血流を改善できます。
- 足を組むと血流が滞りやすくなるため、避けましょう
- 可能であれば、時々足を伸ばしたり、足の位置を変えたりしてください
- 前の座席との間隔が許せば、足を少し高くすることも効果的です
- 長時間同じ姿勢を続けないことが大切です
✈️ 飛行機でのエコノミー症候群対策
飛行機は、エコノミー症候群が最も起こりやすい環境の一つです。機内特有の環境要因を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
🌡️ 機内環境の特徴を理解する
飛行機の機内は、地上とは異なる特殊な環境です。
- 気圧は地上より低く、富士山の5合目程度(約0.8気圧)に相当します
- この低気圧環境では、体内のガスが膨張し、血液中の酸素濃度も低下します
- 湿度は10〜20%程度と非常に低く、砂漠よりも乾燥しています
- この環境では、知らないうちに体から水分が失われ、脱水状態になりやすくなります
- 座席の間隔が狭いため、足を十分に動かすことが困難です
これらの要因が重なることで、エコノミー症候群のリスクが高まります。
🪑 座席選びのポイント
- 可能であれば、通路側の座席を選ぶことをお勧めします
- 通路側であれば、他の乗客に気兼ねなく席を立って歩くことができます
- また、足を通路側に伸ばすこともできるため、窓側や中央の座席よりも血流を維持しやすくなります
- 非常口付近の座席は足元が広いため、足を動かしやすいというメリットがあります
- プレミアムエコノミーやビジネスクラスであれば、座席間隔が広く、よりリラックスした姿勢を取ることができます
長時間のフライトでリスク因子を持っている方は、座席のアップグレードを検討するのも一つの選択肢です。
🍽️ 機内での過ごし方
- フライト中は、1〜2時間ごとに席を立って機内を歩きましょう
- ギャレー(配膳室)付近やトイレの前で軽いストレッチを行うのも効果的です
- 座っている間も、足首の運動やふくらはぎのマッサージをこまめに行ってください
- 客室乗務員が飲み物を配る際は、必ず水かジュースを頼みましょう
- アルコールは脱水を促進するため、できれば控えめに
- 機内食は塩分が多い傾向があるため、追加の塩分摂取は控えましょう
- 睡眠は血流を低下させるリスクがありますが、適度な休息は必要です
- 寝る前に十分な水分補給と足の運動を行い、弾性ストッキングを着用して眠ることをお勧めします
- 睡眠薬の使用は、動かずに長時間眠ってしまうリスクがあるため、避けることが望ましいです
🚶 到着後の注意点
飛行機を降りた後も、しばらくは注意が必要です。到着後すぐに激しい運動をすることは避け、まずはゆっくりと歩くことから始めましょう。空港内を歩いて血流を回復させることが大切です。到着後も水分補給を続け、足に違和感がないか注意を払ってください。症状は飛行機を降りてから数日〜2週間後に現れることもあるため、この期間は体調の変化に敏感になることが重要です。
Q. エコノミー症候群のリスクが特に高い人はどんな人ですか?
エコノミー症候群のリスクが特に高いのは、40歳以上の方、肥満・喫煙者、下肢静脈瘤がある方、過去に血栓症を経験した方です。また、妊娠中・産後の女性やピル服用者、がん・心不全などの基礎疾患を持つ方も該当します。これらに当てはまる場合は、長時間移動前に主治医への相談が推奨されます。
🚗 車・バスでのエコノミー症候群対策
車やバスでの長時間移動も、エコノミー症候群のリスクがあります。特に長距離ドライブや夜行バスでは、飛行機と同様の注意が必要です。
🛣️ 自家用車での長距離移動
自家用車での移動では、定期的に休憩を取ることが最も重要な予防策です。
- 2時間ごとには必ず休憩を取り、車外に出て歩くようにしましょう
- サービスエリアやパーキングエリアでは、トイレだけでなく、施設内を歩いたり、軽いストレッチを行ったりしてください
- 運転中はシートポジションを時々調整し、同じ姿勢が続かないようにします
- 渋滞時は特に注意が必要で、足首を動かしたり、ふくらはぎを手でマッサージしたりする習慣をつけましょう
- 車内にはペットボトルの水を常備し、こまめに水分補給を行ってください
- エアコンによる乾燥にも注意が必要です
🚌 高速バス・夜行バスでの対策
高速バスや夜行バスでは、座席を離れる機会が限られるため、より意識的な対策が必要です。
- 乗車前に十分な水分補給を行い、利尿作用のあるコーヒーやアルコールは控えましょう
- 座席に座ったら、靴を脱いでリラックスできる状態にします
- 可能であれば弾性ストッキングを着用しましょう
- サービスエリアでの休憩時間には、必ず車外に出て歩くことを心がけてください
- 座っている間も、足首の運動やふくらはぎのマッサージをこまめに行いましょう
- 足元にクッションやブランケットを置いて足を少し高くすることも効果的です
- 夜行バスでは睡眠を取ることが多いですが、完全に熟睡してしまうと長時間動かないことになるため、アラームをセットして定期的に体を動かすことをお勧めします
🏠 災害時の車中泊への注意
地震などの災害時に車中泊を余儀なくされるケースがあります。2004年の新潟県中越地震では、車中泊が原因と考えられるエコノミー症候群で複数の死亡例が報告され、この問題が広く認知されるきっかけとなりました。
- 車中泊をする場合は、できるだけ足を伸ばせる姿勢で休むことが重要です
- 定期的に車外に出て歩き、水分補給を怠らないようにしましょう
- 避難所での生活でも、長時間同じ姿勢で座り続けることは避け、こまめに体を動かすことを心がけてください
🚄 新幹線でのエコノミー症候群対策
新幹線は比較的座席間隔が広く、車内を歩きやすい環境ですが、長時間の乗車ではやはりエコノミー症候群のリスクがあります。
✅ 新幹線の利点を活かす
新幹線は飛行機と比べて、いくつかの点でエコノミー症候群対策がしやすい環境です。
- 気圧や湿度は地上と大きく変わらないため、脱水のリスクは比較的低いです
- 座席間隔が広く、足を伸ばしやすい設計になっています
- 車内販売やデッキでの自販機利用など、飲み物を入手しやすい環境です
- 何より、いつでも自由に席を立って歩くことができます
これらの利点を活かして、積極的に予防策を講じましょう。
🚶♂️ 新幹線での具体的な対策
- 1〜2時間ごとには席を立ち、デッキや車両間を歩くようにしましょう
- 車両の端にあるトイレまで歩くことで、適度な運動になります
- 座っている間も、足首の運動やふくらはぎのマッサージを行ってください
- 車内販売でお茶や水を購入し、こまめに水分補給を行いましょう
- グリーン車を利用すれば、より広いシートでリラックスした姿勢を取ることができます
- 足置きがある座席であれば、活用して足を少し高くすることも効果的です
- 長距離の移動では、途中下車して休憩を取ることも検討してください
Q. 長時間移動中にできるエコノミー症候群の予防法を教えてください
長時間移動中のエコノミー症候群予防として、1時間あたり100〜150mlの水分補給、1〜2時間ごとに席を立って歩くこと、座ったままでも足首の回転やかかとの上げ下げを行うことが有効です。さらに弾性ストッキングの着用や、足を組まずゆったりした服装を選ぶことも重要な対策です。
🏥 エコノミー症候群の治療法
エコノミー症候群を発症した場合、速やかな治療が必要です。治療法は病態の程度によって異なります。
💊 深部静脈血栓症の治療
深部静脈血栓症の治療の主目的は、血栓の増大を防ぎ、肺血栓塞栓症への進展を予防することです。抗凝固療法が治療の基本となり、ヘパリンやワルファリン、あるいは直接経口抗凝固薬(DOAC)などが使用されます。
- 急性期にはヘパリンの注射薬で治療を開始
- その後は内服薬に切り替えて3〜6か月程度継続することが一般的
- 治療期間中は定期的な血液検査が必要です
- 弾性ストッキングの着用も治療の一部として推奨されます
- これにより、血栓後症候群(慢性的な足のむくみや痛み)の発症を予防することができます
🚑 肺血栓塞栓症の治療
肺血栓塞栓症は緊急性の高い病態であり、重症度に応じた治療が必要です。
- 軽症から中等症の場合は、抗凝固療法が治療の中心となります
- 重症の場合は、血栓を溶かす血栓溶解療法が行われることがあります
- 血行動態が不安定な最重症例では、カテーテル治療や外科的な血栓除去術が必要になることもあります
- 治療後も再発予防のため、抗凝固療法を一定期間継続することが一般的です
🔧 下大静脈フィルター
抗凝固療法が禁忌の場合や、抗凝固療法中に血栓が増大する場合には、下大静脈フィルターの留置が検討されます。これは、足から心臓に戻る大きな静脈(下大静脈)にフィルターを挿入し、血栓が肺に到達するのを防ぐ治療法です。一時的に留置し、抗凝固療法が可能になったら抜去する回収可能型フィルターと、永久に留置する永久型フィルターがあります。
🏢 日常生活での予防意識
エコノミー症候群は、長時間移動の時だけでなく、日常生活でも起こりうる病態です。デスクワークや長時間の座位が多い方は、普段から予防を意識することが大切です。
💻 デスクワークでの注意点
オフィスワーカーの多くは、1日の大半を座って過ごしています。この状況は、長時間のフライトと同様に、エコノミー症候群のリスクを高めます。
- 1時間ごとに席を立ち、少し歩くか、その場で軽い運動を行うことをお勧めします
- トイレに行く、給湯室でお茶を入れる、同僚のデスクに直接話しに行くなど、意識的に動く機会を作りましょう
- 座っている間も、足首を動かしたり、つま先立ちをしたりする習慣をつけると良いでしょう
- スタンディングデスクの導入も、長時間の座位を減らす有効な方法です
- 水分補給も忘れずに行い、こまめにお茶や水を飲む習慣をつけましょう
🏠 在宅勤務での注意点
在宅勤務では、通勤がなくなる分、1日の運動量が大幅に減少します。また、オフィスのように移動する機会も少なくなりがちです。
- 意識的に休憩を取り、家の中を歩いたり、軽いストレッチを行ったりすることが重要です
- オンライン会議中も、カメラに映らない範囲で足を動かす習慣をつけましょう
- 1日1回は外に出て散歩をするなど、積極的に体を動かす機会を作ることをお勧めします
⚠️ 高リスク者の日常的な予防
過去に深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症を経験したことがある方、あるいはリスク因子を複数持っている方は、日常的に予防を意識することが特に重要です。
- 主治医と相談の上、普段から弾性ストッキングを着用することを検討してください
- 適度な運動習慣をつけ、下肢の筋力を維持することも大切です
- 水分を十分に摂取し、脱水を避けましょう
- 定期的な健康診断を受け、血栓のリスクを高める基礎疾患がないかチェックすることも重要です

❓ よくある質問
一般的に4時間以上の移動でリスクが高まるとされています。ただし、リスク因子を持っている方は、より短い時間でも発症する可能性があります。2時間以上の移動では予防を意識することをお勧めします。
アスピリンには一定の血栓予防効果がありますが、エコノミー症候群の予防における有効性については十分なエビデンスがありません。自己判断での服用は避け、リスクが高い方は事前に医師に相談することをお勧めします。
妊娠中は血液が固まりやすく、エコノミー症候群のリスクが高まります。長時間移動を予定している場合は事前に主治医に相談し、弾性ストッキングの着用、こまめな水分補給と運動を心がけてください。妊娠後期は特に注意が必要です。
市販の着圧ソックスでも一定の予防効果が期待できます。足首部分の圧力が15〜20mmHg程度のものを選ぶと良いでしょう。ただし、リスクが高い方は医療機関で適切な圧力の弾性ストッキングを処方してもらうことをお勧めします。
足の腫れや痛み、息切れ、胸の痛みなどの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。特に息切れや胸の痛みは肺血栓塞栓症の可能性があり、緊急性が高いため、ためらわずに救急医療を利用しましょう。
座席が広いためリスクは低下しますが、完全に安全というわけではありません。どのクラスでも、長時間座り続けることによる血流のうっ滞は起こりえます。座席のグレードに関わらず、水分補給と適度な運動は必要です。
📚 参考
監修者医師
高桑 康太 医師
保有資格
ミラドライ認定医
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
- 皮膚腫瘍・皮膚外科領域で15年以上の臨床経験と30,000件超の手術実績を持ち、医学的根拠に基づき監修を担当
- 専門分野:皮膚腫瘍、皮膚外科、皮膚科、形成外科
- 臨床実績(2024年時点) 皮膚腫瘍・皮膚外科手術:30,000件以上、腋臭症治療:2,000件以上、酒さ・赤ら顔治療:1,000件以上
- 監修領域 皮膚腫瘍(ほくろ・粉瘤・脂肪腫など)、皮膚外科手術、皮膚がん、一般医療コラムに関する医療情報
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
エコノミー症候群は予防可能な疾患です。特に長時間移動を予定されている方は、ウィルヒョウの3徴(血流のうっ滞・血管内皮の障害・血液凝固能の亢進)を意識して、それぞれに対する予防策を講じることが重要です。「たかが長時間移動」と軽視せず、適切な知識を持って対策を行うことで、重篤な合併症を防ぐことができます。