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ヘマトクリット値が高いと言われたら?原因・症状・改善方法を医師が解説

ヘマトクリット値が高い」と指摘されて、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ヘマトクリットという言葉自体、日常生活ではあまり耳にしない専門用語であるため、それが何を意味するのか、高いとどのような問題があるのかがわかりにくいかもしれません。

この記事では、ヘマトクリット値が高い場合に考えられる原因や症状、放置した場合のリスク、そして日常生活でできる改善方法について、わかりやすく解説していきます。健康診断の結果が気になる方、再検査を勧められた方はぜひ参考にしてください。

この記事のポイント

ヘマトクリット値の高値(多血症)は脱水・喫煙・睡眠時無呼吸・真性多血症が主因で、放置すると脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まる。原因に応じた水分補給・禁煙・薬物療法などの治療が重要であり、異常を指摘された場合は速やかに医療機関を受診すべきである。

📖 目次

  1. ヘマトクリットとは何か
  2. ヘマトクリット値の基準値について
  3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か
  4. ヘマトクリット値が高くなる原因
  5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状
  6. 放置した場合のリスクと合併症
  7. 検査方法と受診すべき診療科
  8. 多血症の種類と診断
  9. 治療方法について
  10. 日常生活での予防と改善方法
  11. 病院を受診する目安
  12. まとめ

Q. ヘマトクリット値とは何を表す数値ですか?

ヘマトクリット値とは、血液全体に占める赤血球の割合をパーセンテージで示した数値です。「血液の濃さ」を表す指標で、男性の基準値は40〜50%、女性は34〜45%程度です。値が高いほど血液がドロドロした状態を意味します。

🩸 1. ヘマトクリットとは何か

ヘマトクリットとは、血液中に赤血球が占める割合をパーセンテージ(%)で表した数値のことです。「ヘマト」は血液、「クリット」は分離を意味しており、血液を遠心分離器にかけて測定することからこの名前がついています。

血液は大きく分けて、固形成分である「血球」と、液体成分である「血漿(けっしょう)」に分けられます。

血球には以下が含まれます:

  • 赤血球(最も多くを占める)
  • 白血球
  • 血小板

ヘマトクリット値は、この血液全体に対する赤血球の容積の割合を示しています。

簡単に言えば、ヘマトクリット値は「血液の濃さ」を表す指標といえます。この数値が高ければ血液は濃くドロドロした状態であり、低ければ血液は薄くサラサラした状態であることを意味します。

赤血球は体中に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質が肺で酸素と結合し、全身の組織に酸素を届けています。そのため、赤血球の量は体の機能を維持するうえで非常に重要であり、多すぎても少なすぎても問題が生じます。

健康診断の血液検査では、赤血球数、ヘモグロビン濃度とともにヘマトクリット値も測定されており、これら3つの指標を組み合わせて貧血や多血症の診断に活用されています。

📊 2. ヘマトクリット値の基準値について

ヘマトクリット値の基準値は、性別や年齢、検査機関によって若干異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、成人の基準値として以下の数値が示されています。

  • 男性の基準値:40〜50%程度
  • 女性の基準値:34〜45%程度

男性の方が女性よりも高い傾向にありますが、これは女性は月経によって定期的に血液が失われるため、相対的に赤血球の割合が低くなりやすいことが理由のひとつです。

また、一般的な医療機関では以下のような基準値が用いられることが多いです。

男性の場合:
・正常範囲:38.5%〜48.9%
高値:52.9%以上

女性の場合:
・正常範囲:35.5%〜43.9%
高値:47.0%以上

一方、世界保健機関(WHO)による多血症の診断基準では、より厳格な数値が設定されています。

  • 男性:ヘマトクリット値が49%を超える場合に多血症が疑われる
  • 女性:ヘマトクリット値が48%を超える場合に多血症が疑われる

なお、ヘマトクリット値は測定するタイミングによっても変動します。朝、昼、夜で数値が異なることがありますし、採血前の飲水制限の影響を受けることもあります。健康診断では採血前に食事や水分を控えるよう指示されることが多いため、軽い脱水状態となり、ヘマトクリット値が実際よりもやや高めに出ることがあります。

🔍 3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か

ヘマトクリット値が基準値よりも高いということは、血液中の赤血球の割合が多くなっている状態を意味します。これは一般的に「血液が濃い」「血液がドロドロしている」と表現されることがあります。この状態は医学的には「多血症」または「赤血球増加症」と呼ばれます。

血液が濃くなると、血液の粘稠度(粘り気)が高まります。粘り気の高い血液は血管の中をスムーズに流れにくくなるため、全身の血流が悪くなります。特に細い血管では血液が通過しにくくなり、さまざまな臓器への酸素や栄養の供給が低下する可能性があります。

また、血液がドロドロしていると、血管の中で血液が固まりやすくなります。これが血栓(血の塊)の形成につながり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患の原因となることがあります。

ただし、ヘマトクリット値が高いからといって、必ずしも深刻な病気があるとは限りません。一時的な脱水や生活習慣の影響で数値が上昇していることも多く、原因によっては生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

重要なのは、ヘマトクリット値が高いと指摘された場合に、その原因が何であるかを正しく把握することです。原因によって対処法が大きく異なるため、自己判断せずに医療機関で適切な検査を受けることが大切です。

⚠️ 4. ヘマトクリット値が高くなる原因

ヘマトクリット値が高くなる原因はさまざまであり、大きく分けて「相対的多血症」と「絶対的多血症」の2つに分類されます。

💧 相対的多血症

相対的多血症とは、実際に赤血球が増加しているわけではなく、血漿(血液の液体成分)が減少することで見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。血液中の水分が少なくなることで、相対的に赤血球の濃度が高く見えるのです。

相対的多血症の主な原因:

  • 脱水(最も多い原因)
    • 下痢や嘔吐
    • 発汗
    • 発熱
    • 水分摂取不足
  • 季節的要因
    • 夏場の熱中症
    • 秋から冬の乾燥した季節での脱水
    • マスク着用による渇きの自覚低下
  • ストレス多血症
    • 慢性的なストレス
    • 精神的緊張
    • 過度の飲酒・喫煙
    • 肥満
高桑康太 医師・当院治療責任者

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まず最も多いのは脱水による相対的多血症です。健康診断では朝食を抜いて採血することが多く、水分も控えがちになるため、実際よりも高く測定されることがよくあります。まずは十分な水分補給を行い、再検査を受けることをお勧めします。

ストレス多血症と呼ばれる状態も相対的多血症の一種です。働き盛りの中年男性に多くみられ、高血圧、高脂血症、高尿酸血症を伴うことが多いのが特徴です。

利尿作用のある飲み物の過剰摂取も脱水を招く原因となります:

  • コーヒー
  • 緑茶
  • その他カフェインを多く含む飲み物

🫁 絶対的多血症(二次性多血症)

絶対的多血症とは、実際に血液中の赤血球が増加している状態です。その中でも、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している場合を「二次性多血症」といいます。

二次性多血症の主な原因:

1. 喫煙(最も多い原因)

  • タバコの煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンと結合
  • 一酸化炭素とヘモグロビンの結合力は酸素の約200倍
  • 体内が酸素不足に陥り、赤血球の産生が増加

2. 睡眠時無呼吸症候群

  • 睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする
  • 慢性的な低酸素状態
  • 酸素不足を補おうとして赤血球が増加

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • 肥満気味
  • いびきが大きい
  • 日中の眠気がある
  • 家族から呼吸が止まっていると指摘されたことがある

3. その他の原因

  • 肺疾患(COPD、肺気腫など)
  • 心疾患(心不全、先天性心疾患など)
  • 高地での生活
  • 腎疾患
  • エリスロポエチン産生腫瘍(腎細胞がん、肝細胞がんなど)

🧬 絶対的多血症(真性多血症)

真性多血症は、骨髄で赤血球を作る造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、赤血球が異常に増殖する病気です。

真性多血症の特徴:

  • 骨髄増殖性腫瘍のひとつに分類
  • 10万人あたり年間2人程度が発症(比較的まれ)
  • 60歳前後に発症のピーク
  • 95%以上の症例でJAK2遺伝子の変異を認める

JAK2遺伝子の変異により、細胞増殖のシグナルが常に活性化された状態となり、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球がどんどん作られてしまいます。赤血球だけでなく、白血球や血小板も増加することがあります。

真性多血症は適切な治療を受ければ10年以上の生存が期待できる疾患ですが、放置すると血栓症のリスクが高まります。また、一部の患者さんでは長期経過の中で骨髄線維症や急性白血病に移行することがあるため、定期的な経過観察が必要です。

🤕 5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状

ヘマトクリット値が高い状態、すなわち多血症では、血液の粘稠度が増すことでさまざまな症状が現れることがあります。ただし、軽度の多血症では無症状のことも多く、健康診断で偶然発見されるケースも少なくありません。

多血症で現れやすい症状:

脳・神経症状

  • 頭痛
  • めまい・ふらつき
  • 耳鳴り
  • 視力障害
  • 思考力の低下

皮膚症状

  • 顔面の紅潮やほてり
  • 皮膚の赤み(特に顔や手足)
  • 入浴後のかゆみ(真性多血症に特徴的)

全身症状

  • 疲労感や脱力感
  • 息切れ(特に運動時)
  • 動悸

循環器症状

  • 高血圧
  • 血液がドロドロになることで心臓により強い力が必要

その他の症状

  • 痛風(高尿酸血症)
  • 脾臓の腫れ(脾腫)による腹部膨満感
  • 食欲低下
  • 発熱・寝汗・体重減少(真性多血症の場合)

入浴後のかゆみは真性多血症の特徴的な症状で、「aquagenic pruritus(アクアジェニック プルリタス)」と呼ばれます。温かいお湯に浸かることで誘発されるかゆみで、ヒスタミンなどの物質が関与していると考えられています。

⚡ 6. 放置した場合のリスクと合併症

ヘマトクリット値が高い状態を放置すると、さまざまな深刻な合併症を引き起こす可能性があります。最も注意すべきは血栓症です。

血栓症のリスク

血液がドロドロした状態が続くと、血管の中で血液が固まって血栓(血の塊)ができやすくなります。

主な血栓症:

  • 脳梗塞
    • 手足の麻痺やしびれ
    • 言葉が出にくくなる
    • 意識障害
  • 心筋梗塞
    • 胸を締め付けられるような激しい痛み
    • 息苦しさ
    • 冷や汗
    • 最悪の場合は心停止
  • 下肢深部静脈血栓症
    • 脚のむくみや痛み、腫れ
    • 血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
    • 突然の呼吸困難や胸痛
    • 最悪の場合は突然死

その他の合併症

高血圧の持続により:

  • 動脈硬化の進行
  • 血管が脆くなる
  • 脳出血のリスク増加

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合:

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 不整脈
  • 心不全
  • 日中の眠気による事故リスク

真性多血症の長期的リスク:

  • 骨髄線維症への移行(10〜15%程度)
  • 急性白血病への移行(1〜2.5%程度)

🔬 7. 検査方法と受診すべき診療科

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まずは再検査を受けることが大切です。一時的な脱水などが原因であれば、再検査で正常値に戻っていることもあります。

再検査の注意点

  • 検査前に十分な水分を摂取
  • 健康診断では朝食を抜いても、水分はしっかり摂る
  • 検査機関の指示に従う

受診すべき診療科

まず内科を受診しましょう。内科で以下の検査を行います:

  • 血液検査(血液全般の状態を調査)
    • 赤血球数
    • ヘモグロビン濃度
    • 白血球数
    • 血小板数
  • 脱水の有無を確認する検査
  • 他の臓器に異常がないかを調べる検査

原因特定のための検査

エリスロポエチン(赤血球産生ホルモン)の血中濃度測定:

  • 二次性多血症:エリスロポエチン濃度が高め
  • 真性多血症:エリスロポエチン濃度が低め〜正常範囲

JAK2遺伝子変異の検査

  • 血液検査で実施可能
  • 95%以上の真性多血症患者さんでJAK2変異を検出

確定診断のための検査

  • 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
  • 画像検査
    • 胸部CT検査
    • 腹部CT検査
    • 心エコー検査
  • 睡眠ポリグラフ検査(睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合)

詳しい検査や専門的な治療が必要な場合は、血液内科への紹介となることがあります。真性多血症などの血液疾患は血液内科の専門領域です。

📋 8. 多血症の種類と診断

多血症は、その原因によっていくつかの種類に分類されます。正確な診断を受けることで、適切な治療方針を立てることができます。

💧 相対的多血症(見かけ上の多血症)

相対的多血症は、実際には赤血球の総量は増えていないものの、血漿量の減少によって見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。

診断のポイント:

  • 血液検査で赤血球数やヘマトクリット値が高い
  • 総血液量は変わっていない
  • 水分補給をして再検査を行うと数値が正常化することが多い

ストレス多血症(ガイスベック症候群)は相対的多血症の一種で、以下を背景に発症:

  • 慢性的なストレス
  • 高血圧
  • 肥満
  • 喫煙
  • 過度の飲酒

🔄 二次性多血症

二次性多血症は、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している状態です。体内の酸素不足を補おうとして赤血球の産生が亢進することが主な原因です。

診断のポイント:

  • エリスロポエチン濃度が高い
  • 何らかの原因で慢性的な低酸素状態が続いている
  • 原因疾患の特定が重要

原因検索のための問診・検査:

  • 喫煙歴
  • 睡眠時の無呼吸の有無
  • 肺疾患や心疾患の既往
  • 肺機能検査
  • 心エコー検査
  • 腹部CT検査(腎臓や肝臓の腫瘍の有無を確認)

🧬 真性多血症

真性多血症は、骨髄の造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球が過剰に産生される病気です。慢性骨髄増殖性腫瘍に分類されます。

2016年のWHO分類による真性多血症の診断基準

大基準:

  1. ヘモグロビン値が男性で16.5g/dL超、女性で16.0g/dL超、またはヘマトクリット値が男性で49%超、女性で48%超
  2. 骨髄生検で三系統(赤血球系、白血球系、血小板系)の血球増加を伴う過形成髄
  3. JAK2 V617F変異またはJAK2エクソン12変異が存在すること

小基準:

  • 血清エリスロポエチン値が正常範囲以下であること

診断条件:

  • 大基準を3つすべて満たす
  • または大基準の最初の2つと小基準を満たす

💊 9. 治療方法について

多血症の治療は、その原因によって大きく異なります。相対的多血症と二次性多血症は原因の除去や基礎疾患の治療が中心となりますが、真性多血症では血栓症の予防を目的とした積極的な治療が必要となります。

💧 相対的多血症の治療

脱水が原因の場合

  • 適切な水分補給(一日1〜1.5リットルを目安)
  • こまめな水分摂取
  • カフェインやアルコールだけでなく、水やお茶も併せて摂取

ストレス多血症の場合

  • 禁煙
  • 節酒
  • 適度な運動
  • ストレス管理
  • 減量
  • 高血圧、脂質異常症、糖尿病などの合併症治療

🔄 二次性多血症の治療

二次性多血症では、原因となっている基礎疾患の治療が最優先です。

喫煙が原因の場合

  • 禁煙が必要
  • 一酸化炭素ヘモグロビンが減少
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合

  • CPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療
  • 睡眠中に鼻や口からゆるやかに空気を送り込む装置
  • 気道の閉塞を防いで無呼吸を改善
  • 肥満がある場合は減量も重要

その他の疾患が原因の場合

  • 肺疾患・心疾患:それぞれの疾患に対する治療
  • 酸素療法が必要になることもある
  • 治療が困難な場合:瀉血療法を検討

🧬 真性多血症の治療

真性多血症の治療目標は、血栓症の予防と症状の改善です。ヘマトクリット値を45%未満にコントロールすることが推奨されています。

瀉血療法

治療の中心となるのは瀉血療法です。

  • 献血と同じ方法で静脈から血液を抜き取る
  • 1回に200〜500mLの血液を抜き取る
  • 週に1〜2回程度のペース
  • 高齢者や心血管疾患患者:1回100〜200mLに減量して頻回実施
  • 体内の鉄分も除去し、赤血球産生を抑制する効果もある

薬物療法

低用量アスピリン(75〜100mg/日):

  • 血栓症の予防
  • 血小板の働きを抑制
  • 出血リスクがある場合は使用を控える

細胞減少療法(血栓症リスクが高い患者):

  • 60歳以上の方
  • 血栓症の既往がある方

第一選択薬:ヒドロキシウレア(ハイドレア)

  • 骨髄での血球産生を抑制
  • 比較的副作用が少ない
  • 長期使用による二次発がんのリスクが完全には否定されていない

JAK2阻害薬:ルキソリチニブ(ジャカビ)

  • ヒドロキシウレアが効果不十分・副作用で使用不可の場合
  • JAK2の異常な活性化を抑制
  • 血球数の正常化
  • 脾腫の縮小
  • 全身症状の改善

🌱 10. 日常生活での予防と改善方法

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、日常生活でできる予防・改善方法がいくつかあります。特に相対的多血症やストレス多血症の場合は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することも少なくありません。

💧 十分な水分摂取を心がける

脱水はヘマトクリット値を上昇させる最も一般的な原因です。

水分摂取のポイント:

  • 一日を通してこまめに水分を摂取
  • 目安:食事以外に1日1〜1.5リットル
  • 少量をこまめに摂取(一度に大量摂取は避ける)

タイミング:

  • 起床時
  • 食事の前後
  • 入浴の前後
  • 就寝前

注意点:

  • カフェインを含む飲み物(コーヒー、緑茶)は利尿作用がある
  • カフェインを含まない水や麦茶も併せて摂取
  • アルコールも利尿作用が強いため、飲酒後は必ず水で水分補給
  • 夜間のトイレが気になっても、夕方までは積極的に水分摂取

🚭 禁煙する

喫煙は多血症の最も多い原因のひとつであり、禁煙は効果的な改善策です。

禁煙の効果:

  • 一酸化炭素がヘモグロビンと結合することがなくなる
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制
  • ヘマトクリット値の低下が期待できる

その他の健康効果:

  • 肺がんリスクの低下
  • 心筋梗塞リスクの低下
  • 脳卒中リスクの低下
  • COPDリスクの低下

自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診して専門的なサポートを受けることをおすすめします。

🏃 適度な運動を行う

ウォーキングなどの有酸素運動は、全身の血流を促進し、血液の循環を改善する効果があります。

運動の効果:

  • 血流がよくなることで血液の粘稠度が下がる
  • 血栓ができにくくなる
  • 肥満の解消

運動の目安:

  • 週に3〜5回
  • 1回30分程度
  • 激しい運動は脱水を招くため避ける
  • 運動中はこまめに水分補給

肥満は睡眠時無呼吸症候群やストレス多血症のリスク要因となるため、適正体重を維持することが多血症の予防・改善に役立ちます。

🍽️ 食事に気をつける

ヘマトクリット値が高い場合、食事面でも注意が必要です。

控えめにすべき食材

  • 鉄分を多く含む食材(過剰摂取は避ける)
    • ほうれん草
    • レバー
    • 牛肉
    • しじみ
  • 鉄分のサプリメント(医師に相談のうえで中止を検討)
  • 脂質の多い食事(血液をドロドロにしやすい)
    • 揚げ物
    • 脂っこい肉料理
  • プリン体を多く含む食品
    • ビールの酵母
    • レバー
    • 干物

積極的に摂取すべき食材

  • バランスの良い食事
  • 野菜や果物

😌 ストレス管理を心がける

慢性的なストレスはストレス多血症の原因となります。

ストレス管理のポイント:

  • 自分なりのストレス解消法を見つける
  • 定期的にリフレッシュする
  • 十分な睡眠を確保
  • 毎日同じ時間に就寝・起床する習慣
  • 質の良い睡眠を心がける

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • いびきがひどい
  • 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
  • 日中の眠気がひどい

これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。

🛁 入浴時の注意点

入浴は脱水の原因になりやすいため注意が必要です。

入浴時の注意点:

  • 入浴前に水分を摂取
  • 長時間の入浴を避ける
  • 熱すぎるお湯への入浴を避ける
  • 適度な温度と時間を心がける

真性多血症の方で入浴後のかゆみがある場合:

  • お湯の温度をぬるめにする
  • 体を洗うときは皮膚を強くこすらず優しく洗う

🏥 11. 病院を受診する目安

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、どのタイミングで病院を受診すべきでしょうか。以下に目安をまとめます。

必ず受診すべき場合

健康診断で以下の判定を受けた場合:

  • 「要受診」
  • 「要精密検査」
  • 「要再検査」

特に初めてヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、原因を特定するための検査が必要です。

早めに受診することをおすすめする症状

  • 頭痛やめまいが続く
  • 顔や手足が赤くなっている
  • 疲労感や息切れがある
  • 入浴後にかゆみがある
  • 高血圧を指摘されている

これらの症状は多血症に伴って現れることがあり、適切な治療が必要なサインである可能性があります。

緊急受診が必要な症状(すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶ)

脳梗塞や脳出血の症状の可能性:

  • 突然の激しい頭痛
  • 手足のしびれや麻痺
  • ろれつが回らない
  • 意識がもうろうとする

心筋梗塞や肺塞栓症の症状の可能性:

  • 胸を締め付けられるような痛み
  • 呼吸困難
  • 冷や汗

多血症は放置すると血栓症のリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要です。健康診断で異常を指摘された場合は、自己判断で様子を見るのではなく、まずは医療機関で相談するようにしましょう。

🏥 11. 病院を受診する目安

📝 12. まとめ

ヘマトクリット値が高いということは、血液中の赤血球の割合が多く、血液が濃い状態であることを意味します。この状態は「多血症」と呼ばれ、原因によって以下に分類されます:

  • 相対的多血症
  • 二次性多血症
  • 真性多血症

各種多血症の特徴と治療

相対的多血症:脱水やストレスによって起こる見かけ上の多血であり、水分補給や生活習慣の改善で改善することが多い

二次性多血症:喫煙や睡眠時無呼吸症候群などが原因で起こり、原因疾患の治療によって改善が期待できる

真性多血症:骨髄の遺伝子異常によって起こる血液疾患であり、瀉血療法や薬物療法による治療が必要

重要なリスク

多血症を放置すると、血液の粘稠度が高まり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な血栓症を引き起こすリスクがあります。健康診断でヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。

日常生活での予防・改善方法

以下を心がけることで、多血症の予防・改善につなげることができます:

  • 十分な水分摂取
  • 禁煙
  • 適度な運動
  • バランスの良い食事
  • ストレス管理

気になる症状がある場合や、健康診断で再検査を勧められた場合は、お早めにご相談ください。

ヘマトクリット値が高い」と指摘されて、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ヘマトクリットという言葉自体、日常生活ではあまり耳にしない専門用語であるため、それが何を意味するのか、高いとどのような問題があるのかがわかりにくいかもしれません。

この記事では、ヘマトクリット値が高い場合に考えられる原因や症状、放置した場合のリスク、そして日常生活でできる改善方法について、わかりやすく解説していきます。健康診断の結果が気になる方、再検査を勧められた方はぜひ参考にしてください。

📖 目次

  1. ヘマトクリットとは何か
  2. ヘマトクリット値の基準値について
  3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か
  4. ヘマトクリット値が高くなる原因
  5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状
  6. 放置した場合のリスクと合併症
  7. 検査方法と受診すべき診療科
  8. 多血症の種類と診断
  9. 治療方法について
  10. 日常生活での予防と改善方法
  11. 病院を受診する目安
  12. まとめ

🩸 1. ヘマトクリットとは何か

ヘマトクリットとは、血液中に赤血球が占める割合をパーセンテージ(%)で表した数値のことです。「ヘマト」は血液、「クリット」は分離を意味しており、血液を遠心分離器にかけて測定することからこの名前がついています。

血液は大きく分けて、固形成分である「血球」と、液体成分である「血漿(けっしょう)」に分けられます。

血球には以下が含まれます:

  • 赤血球(最も多くを占める)
  • 白血球
  • 血小板

ヘマトクリット値は、この血液全体に対する赤血球の容積の割合を示しています。

簡単に言えば、ヘマトクリット値は「血液の濃さ」を表す指標といえます。この数値が高ければ血液は濃くドロドロした状態であり、低ければ血液は薄くサラサラした状態であることを意味します。

赤血球は体中に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質が肺で酸素と結合し、全身の組織に酸素を届けています。そのため、赤血球の量は体の機能を維持するうえで非常に重要であり、多すぎても少なすぎても問題が生じます。

健康診断の血液検査では、赤血球数、ヘモグロビン濃度とともにヘマトクリット値も測定されており、これら3つの指標を組み合わせて貧血や多血症の診断に活用されています。

📊 2. ヘマトクリット値の基準値について

ヘマトクリット値の基準値は、性別や年齢、検査機関によって若干異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、成人の基準値として以下の数値が示されています。

  • 男性の基準値:40〜50%程度
  • 女性の基準値:34〜45%程度

男性の方が女性よりも高い傾向にありますが、これは女性は月経によって定期的に血液が失われるため、相対的に赤血球の割合が低くなりやすいことが理由のひとつです。

また、一般的な医療機関では以下のような基準値が用いられることが多いです。

男性の場合:
・正常範囲:38.5%〜48.9%
高値:52.9%以上

女性の場合:
・正常範囲:35.5%〜43.9%
高値:47.0%以上

一方、世界保健機関(WHO)による多血症の診断基準では、より厳格な数値が設定されています。

  • 男性:ヘマトクリット値が49%を超える場合に多血症が疑われる
  • 女性:ヘマトクリット値が48%を超える場合に多血症が疑われる

なお、ヘマトクリット値は測定するタイミングによっても変動します。朝、昼、夜で数値が異なることがありますし、採血前の飲水制限の影響を受けることもあります。健康診断では採血前に食事や水分を控えるよう指示されることが多いため、軽い脱水状態となり、ヘマトクリット値が実際よりもやや高めに出ることがあります。

🔍 3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か

ヘマトクリット値が基準値よりも高いということは、血液中の赤血球の割合が多くなっている状態を意味します。これは一般的に「血液が濃い」「血液がドロドロしている」と表現されることがあります。この状態は医学的には「多血症」または「赤血球増加症」と呼ばれます。

血液が濃くなると、血液の粘稠度(粘り気)が高まります。粘り気の高い血液は血管の中をスムーズに流れにくくなるため、全身の血流が悪くなります。特に細い血管では血液が通過しにくくなり、さまざまな臓器への酸素や栄養の供給が低下する可能性があります。

また、血液がドロドロしていると、血管の中で血液が固まりやすくなります。これが血栓(血の塊)の形成につながり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患の原因となることがあります。

ただし、ヘマトクリット値が高いからといって、必ずしも深刻な病気があるとは限りません。一時的な脱水や生活習慣の影響で数値が上昇していることも多く、原因によっては生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

重要なのは、ヘマトクリット値が高いと指摘された場合に、その原因が何であるかを正しく把握することです。原因によって対処法が大きく異なるため、自己判断せずに医療機関で適切な検査を受けることが大切です。

⚠️ 4. ヘマトクリット値が高くなる原因

ヘマトクリット値が高くなる原因はさまざまであり、大きく分けて「相対的多血症」と「絶対的多血症」の2つに分類されます。

💧 相対的多血症

相対的多血症とは、実際に赤血球が増加しているわけではなく、血漿(血液の液体成分)が減少することで見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。血液中の水分が少なくなることで、相対的に赤血球の濃度が高く見えるのです。

相対的多血症の主な原因:

  • 脱水(最も多い原因)
    • 下痢や嘔吐
    • 発汗
    • 発熱
    • 水分摂取不足
  • 季節的要因
    • 夏場の熱中症
    • 秋から冬の乾燥した季節での脱水
    • マスク着用による渇きの自覚低下
  • ストレス多血症
    • 慢性的なストレス
    • 精神的緊張
    • 過度の飲酒・喫煙
    • 肥満
高桑康太 医師・当院治療責任者

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まず最も多いのは脱水による相対的多血症です。健康診断では朝食を抜いて採血することが多く、水分も控えがちになるため、実際よりも高く測定されることがよくあります。まずは十分な水分補給を行い、再検査を受けることをお勧めします。

ストレス多血症と呼ばれる状態も相対的多血症の一種です。働き盛りの中年男性に多くみられ、高血圧、高脂血症、高尿酸血症を伴うことが多いのが特徴です。

利尿作用のある飲み物の過剰摂取も脱水を招く原因となります:

  • コーヒー
  • 緑茶
  • その他カフェインを多く含む飲み物

🫁 絶対的多血症(二次性多血症)

絶対的多血症とは、実際に血液中の赤血球が増加している状態です。その中でも、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している場合を「二次性多血症」といいます。

二次性多血症の主な原因:

1. 喫煙(最も多い原因)

  • タバコの煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンと結合
  • 一酸化炭素とヘモグロビンの結合力は酸素の約200倍
  • 体内が酸素不足に陥り、赤血球の産生が増加

2. 睡眠時無呼吸症候群

  • 睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする
  • 慢性的な低酸素状態
  • 酸素不足を補おうとして赤血球が増加

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • 肥満気味
  • いびきが大きい
  • 日中の眠気がある
  • 家族から呼吸が止まっていると指摘されたことがある

3. その他の原因

  • 肺疾患(COPD、肺気腫など)
  • 心疾患(心不全、先天性心疾患など)
  • 高地での生活
  • 腎疾患
  • エリスロポエチン産生腫瘍(腎細胞がん、肝細胞がんなど)

🧬 絶対的多血症(真性多血症)

真性多血症は、骨髄で赤血球を作る造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、赤血球が異常に増殖する病気です。

真性多血症の特徴:

  • 骨髄増殖性腫瘍のひとつに分類
  • 10万人あたり年間2人程度が発症(比較的まれ)
  • 60歳前後に発症のピーク
  • 95%以上の症例でJAK2遺伝子の変異を認める

JAK2遺伝子の変異により、細胞増殖のシグナルが常に活性化された状態となり、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球がどんどん作られてしまいます。赤血球だけでなく、白血球や血小板も増加することがあります。

真性多血症は適切な治療を受ければ10年以上の生存が期待できる疾患ですが、放置すると血栓症のリスクが高まります。また、一部の患者さんでは長期経過の中で骨髄線維症や急性白血病に移行することがあるため、定期的な経過観察が必要です。

🤕 5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状

ヘマトクリット値が高い状態、すなわち多血症では、血液の粘稠度が増すことでさまざまな症状が現れることがあります。ただし、軽度の多血症では無症状のことも多く、健康診断で偶然発見されるケースも少なくありません。

多血症で現れやすい症状:

脳・神経症状

  • 頭痛
  • めまい・ふらつき
  • 耳鳴り
  • 視力障害
  • 思考力の低下

皮膚症状

  • 顔面の紅潮やほてり
  • 皮膚の赤み(特に顔や手足)
  • 入浴後のかゆみ(真性多血症に特徴的)

全身症状

  • 疲労感や脱力感
  • 息切れ(特に運動時)
  • 動悸

循環器症状

  • 高血圧
  • 血液がドロドロになることで心臓により強い力が必要

その他の症状

  • 痛風(高尿酸血症)
  • 脾臓の腫れ(脾腫)による腹部膨満感
  • 食欲低下
  • 発熱・寝汗・体重減少(真性多血症の場合)

入浴後のかゆみは真性多血症の特徴的な症状で、「aquagenic pruritus(アクアジェニック プルリタス)」と呼ばれます。温かいお湯に浸かることで誘発されるかゆみで、ヒスタミンなどの物質が関与していると考えられています。

⚡ 6. 放置した場合のリスクと合併症

ヘマトクリット値が高い状態を放置すると、さまざまな深刻な合併症を引き起こす可能性があります。最も注意すべきは血栓症です。

血栓症のリスク

血液がドロドロした状態が続くと、血管の中で血液が固まって血栓(血の塊)ができやすくなります。

主な血栓症:

  • 脳梗塞
    • 手足の麻痺やしびれ
    • 言葉が出にくくなる
    • 意識障害
  • 心筋梗塞
    • 胸を締め付けられるような激しい痛み
    • 息苦しさ
    • 冷や汗
    • 最悪の場合は心停止
  • 下肢深部静脈血栓症
    • 脚のむくみや痛み、腫れ
    • 血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
    • 突然の呼吸困難や胸痛
    • 最悪の場合は突然死

その他の合併症

高血圧の持続により:

  • 動脈硬化の進行
  • 血管が脆くなる
  • 脳出血のリスク増加

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合:

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 不整脈
  • 心不全
  • 日中の眠気による事故リスク

真性多血症の長期的リスク:

  • 骨髄線維症への移行(10〜15%程度)
  • 急性白血病への移行(1〜2.5%程度)

🔬 7. 検査方法と受診すべき診療科

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まずは再検査を受けることが大切です。一時的な脱水などが原因であれば、再検査で正常値に戻っていることもあります。

再検査の注意点

  • 検査前に十分な水分を摂取
  • 健康診断では朝食を抜いても、水分はしっかり摂る
  • 検査機関の指示に従う

受診すべき診療科

まず内科を受診しましょう。内科で以下の検査を行います:

  • 血液検査(血液全般の状態を調査)
    • 赤血球数
    • ヘモグロビン濃度
    • 白血球数
    • 血小板数
  • 脱水の有無を確認する検査
  • 他の臓器に異常がないかを調べる検査

原因特定のための検査

エリスロポエチン(赤血球産生ホルモン)の血中濃度測定:

  • 二次性多血症:エリスロポエチン濃度が高め
  • 真性多血症:エリスロポエチン濃度が低め〜正常範囲

JAK2遺伝子変異の検査

  • 血液検査で実施可能
  • 95%以上の真性多血症患者さんでJAK2変異を検出

確定診断のための検査

  • 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
  • 画像検査
    • 胸部CT検査
    • 腹部CT検査
    • 心エコー検査
  • 睡眠ポリグラフ検査(睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合)

詳しい検査や専門的な治療が必要な場合は、血液内科への紹介となることがあります。真性多血症などの血液疾患は血液内科の専門領域です。

📋 8. 多血症の種類と診断

多血症は、その原因によっていくつかの種類に分類されます。正確な診断を受けることで、適切な治療方針を立てることができます。

💧 相対的多血症(見かけ上の多血症)

相対的多血症は、実際には赤血球の総量は増えていないものの、血漿量の減少によって見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。

診断のポイント:

  • 血液検査で赤血球数やヘマトクリット値が高い
  • 総血液量は変わっていない
  • 水分補給をして再検査を行うと数値が正常化することが多い

ストレス多血症(ガイスベック症候群)は相対的多血症の一種で、以下を背景に発症:

  • 慢性的なストレス
  • 高血圧
  • 肥満
  • 喫煙
  • 過度の飲酒

🔄 二次性多血症

二次性多血症は、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している状態です。体内の酸素不足を補おうとして赤血球の産生が亢進することが主な原因です。

診断のポイント:

  • エリスロポエチン濃度が高い
  • 何らかの原因で慢性的な低酸素状態が続いている
  • 原因疾患の特定が重要

原因検索のための問診・検査:

  • 喫煙歴
  • 睡眠時の無呼吸の有無
  • 肺疾患や心疾患の既往
  • 肺機能検査
  • 心エコー検査
  • 腹部CT検査(腎臓や肝臓の腫瘍の有無を確認)

🧬 真性多血症

真性多血症は、骨髄の造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球が過剰に産生される病気です。慢性骨髄増殖性腫瘍に分類されます。

2016年のWHO分類による真性多血症の診断基準

大基準:

  1. ヘモグロビン値が男性で16.5g/dL超、女性で16.0g/dL超、またはヘマトクリット値が男性で49%超、女性で48%超
  2. 骨髄生検で三系統(赤血球系、白血球系、血小板系)の血球増加を伴う過形成髄
  3. JAK2 V617F変異またはJAK2エクソン12変異が存在すること

小基準:

  • 血清エリスロポエチン値が正常範囲以下であること

診断条件:

  • 大基準を3つすべて満たす
  • または大基準の最初の2つと小基準を満たす

💊 9. 治療方法について

多血症の治療は、その原因によって大きく異なります。相対的多血症と二次性多血症は原因の除去や基礎疾患の治療が中心となりますが、真性多血症では血栓症の予防を目的とした積極的な治療が必要となります。

💧 相対的多血症の治療

脱水が原因の場合

  • 適切な水分補給(一日1〜1.5リットルを目安)
  • こまめな水分摂取
  • カフェインやアルコールだけでなく、水やお茶も併せて摂取

ストレス多血症の場合

  • 禁煙
  • 節酒
  • 適度な運動
  • ストレス管理
  • 減量
  • 高血圧、脂質異常症、糖尿病などの合併症治療

🔄 二次性多血症の治療

二次性多血症では、原因となっている基礎疾患の治療が最優先です。

喫煙が原因の場合

  • 禁煙が必要
  • 一酸化炭素ヘモグロビンが減少
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合

  • CPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療
  • 睡眠中に鼻や口からゆるやかに空気を送り込む装置
  • 気道の閉塞を防いで無呼吸を改善
  • 肥満がある場合は減量も重要

その他の疾患が原因の場合

  • 肺疾患・心疾患:それぞれの疾患に対する治療
  • 酸素療法が必要になることもある
  • 治療が困難な場合:瀉血療法を検討

🧬 真性多血症の治療

真性多血症の治療目標は、血栓症の予防と症状の改善です。ヘマトクリット値を45%未満にコントロールすることが推奨されています。

瀉血療法

治療の中心となるのは瀉血療法です。

  • 献血と同じ方法で静脈から血液を抜き取る
  • 1回に200〜500mLの血液を抜き取る
  • 週に1〜2回程度のペース
  • 高齢者や心血管疾患患者:1回100〜200mLに減量して頻回実施
  • 体内の鉄分も除去し、赤血球産生を抑制する効果もある

薬物療法

低用量アスピリン(75〜100mg/日):

  • 血栓症の予防
  • 血小板の働きを抑制
  • 出血リスクがある場合は使用を控える

細胞減少療法(血栓症リスクが高い患者):

  • 60歳以上の方
  • 血栓症の既往がある方

第一選択薬:ヒドロキシウレア(ハイドレア)

  • 骨髄での血球産生を抑制
  • 比較的副作用が少ない
  • 長期使用による二次発がんのリスクが完全には否定されていない

JAK2阻害薬:ルキソリチニブ(ジャカビ)

  • ヒドロキシウレアが効果不十分・副作用で使用不可の場合
  • JAK2の異常な活性化を抑制
  • 血球数の正常化
  • 脾腫の縮小
  • 全身症状の改善

🌱 10. 日常生活での予防と改善方法

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、日常生活でできる予防・改善方法がいくつかあります。特に相対的多血症やストレス多血症の場合は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することも少なくありません。

💧 十分な水分摂取を心がける

脱水はヘマトクリット値を上昇させる最も一般的な原因です。

水分摂取のポイント:

  • 一日を通してこまめに水分を摂取
  • 目安:食事以外に1日1〜1.5リットル
  • 少量をこまめに摂取(一度に大量摂取は避ける)

タイミング:

  • 起床時
  • 食事の前後
  • 入浴の前後
  • 就寝前

注意点:

  • カフェインを含む飲み物(コーヒー、緑茶)は利尿作用がある
  • カフェインを含まない水や麦茶も併せて摂取
  • アルコールも利尿作用が強いため、飲酒後は必ず水で水分補給
  • 夜間のトイレが気になっても、夕方までは積極的に水分摂取

🚭 禁煙する

喫煙は多血症の最も多い原因のひとつであり、禁煙は効果的な改善策です。

禁煙の効果:

  • 一酸化炭素がヘモグロビンと結合することがなくなる
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制
  • ヘマトクリット値の低下が期待できる

その他の健康効果:

  • 肺がんリスクの低下
  • 心筋梗塞リスクの低下
  • 脳卒中リスクの低下
  • COPDリスクの低下

自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診して専門的なサポートを受けることをおすすめします。

🏃 適度な運動を行う

ウォーキングなどの有酸素運動は、全身の血流を促進し、血液の循環を改善する効果があります。

運動の効果:

  • 血流がよくなることで血液の粘稠度が下がる
  • 血栓ができにくくなる
  • 肥満の解消

運動の目安:

  • 週に3〜5回
  • 1回30分程度
  • 激しい運動は脱水を招くため避ける
  • 運動中はこまめに水分補給

肥満は睡眠時無呼吸症候群やストレス多血症のリスク要因となるため、適正体重を維持することが多血症の予防・改善に役立ちます。

🍽️ 食事に気をつける

ヘマトクリット値が高い場合、食事面でも注意が必要です。

控えめにすべき食材

  • 鉄分を多く含む食材(過剰摂取は避ける)
    • ほうれん草
    • レバー
    • 牛肉
    • しじみ
  • 鉄分のサプリメント(医師に相談のうえで中止を検討)
  • 脂質の多い食事(血液をドロドロにしやすい)
    • 揚げ物
    • 脂っこい肉料理
  • プリン体を多く含む食品
    • ビールの酵母
    • レバー
    • 干物

積極的に摂取すべき食材

  • バランスの良い食事
  • 野菜や果物

😌 ストレス管理を心がける

慢性的なストレスはストレス多血症の原因となります。

ストレス管理のポイント:

  • 自分なりのストレス解消法を見つける
  • 定期的にリフレッシュする
  • 十分な睡眠を確保
  • 毎日同じ時間に就寝・起床する習慣
  • 質の良い睡眠を心がける

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • いびきがひどい
  • 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
  • 日中の眠気がひどい

これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。

🛁 入浴時の注意点

入浴は脱水の原因になりやすいため注意が必要です。

入浴時の注意点:

  • 入浴前に水分を摂取
  • 長時間の入浴を避ける
  • 熱すぎるお湯への入浴を避ける
  • 適度な温度と時間を心がける

真性多血症の方で入浴後のかゆみがある場合:

  • お湯の温度をぬるめにする
  • 体を洗うときは皮膚を強くこすらず優しく洗う

🏥 11. 病院を受診する目安

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、どのタイミングで病院を受診すべきでしょうか。以下に目安をまとめます。

必ず受診すべき場合

健康診断で以下の判定を受けた場合:

  • 「要受診」
  • 「要精密検査」
  • 「要再検査」

特に初めてヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、原因を特定するための検査が必要です。

早めに受診することをおすすめする症状

  • 頭痛やめまいが続く
  • 顔や手足が赤くなっている
  • 疲労感や息切れがある
  • 入浴後にかゆみがある
  • 高血圧を指摘されている

これらの症状は多血症に伴って現れることがあり、適切な治療が必要なサインである可能性があります。

緊急受診が必要な症状(すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶ)

脳梗塞や脳出血の症状の可能性:

  • 突然の激しい頭痛
  • 手足のしびれや麻痺
  • ろれつが回らない
  • 意識がもうろうとする

心筋梗塞や肺塞栓症の症状の可能性:

  • 胸を締め付けられるような痛み
  • 呼吸困難
  • 冷や汗

多血症は放置すると血栓症のリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要です。健康診断で異常を指摘された場合は、自己判断で様子を見るのではなく、まずは医療機関で相談するようにしましょう。

🏥 11. 病院を受診する目安

📝 12. まとめ

ヘマトクリット値が高いということは、血液中の赤血球の割合が多く、血液が濃い状態であることを意味します。この状態は「多血症」と呼ばれ、原因によって以下に分類されます:

  • 相対的多血症
  • 二次性多血症
  • 真性多血症

各種多血症の特徴と治療

相対的多血症:脱水やストレスによって起こる見かけ上の多血であり、水分補給や生活習慣の改善で改善することが多い

二次性多血症:喫煙や睡眠時無呼吸症候群などが原因で起こり、原因疾患の治療によって改善が期待できる

真性多血症:骨髄の遺伝子異常によって起こる血液疾患であり、瀉血療法や薬物療法による治療が必要

重要なリスク

多血症を放置すると、血液の粘稠度が高まり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な血栓症を引き起こすリスクがあります。健康診断でヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。

日常生活での予防・改善方法

以下を心がけることで、多血症の予防・改善につなげることができます:

  • 十分な水分摂取
  • 禁煙
  • 適度な運動
  • バランスの良い食事
  • ストレス管理

気になる症状がある場合や、健康診断で再検査を勧められた場合は、お早めにご相談ください。

ヘマトクリット値が高い」と指摘されて、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ヘマトクリットという言葉自体、日常生活ではあまり耳にしない専門用語であるため、それが何を意味するのか、高いとどのような問題があるのかがわかりにくいかもしれません。

この記事では、ヘマトクリット値が高い場合に考えられる原因や症状、放置した場合のリスク、そして日常生活でできる改善方法について、わかりやすく解説していきます。健康診断の結果が気になる方、再検査を勧められた方はぜひ参考にしてください。

Q. 多血症を放置するとどのようなリスクがありますか?

多血症を放置すると、血液の粘稠度が増して血栓が形成されやすくなります。その結果、脳梗塞・心筋梗塞・肺塞栓症などの重篤な血栓症を引き起こすリスクが高まります。真性多血症では長期的に骨髄線維症や急性白血病へ移行する可能性もあります。

📖 目次

  1. ヘマトクリットとは何か
  2. ヘマトクリット値の基準値について
  3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か
  4. ヘマトクリット値が高くなる原因
  5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状
  6. 放置した場合のリスクと合併症
  7. 検査方法と受診すべき診療科
  8. 多血症の種類と診断
  9. 治療方法について
  10. 日常生活での予防と改善方法
  11. 病院を受診する目安
  12. まとめ

🩸 1. ヘマトクリットとは何か

ヘマトクリットとは、血液中に赤血球が占める割合をパーセンテージ(%)で表した数値のことです。「ヘマト」は血液、「クリット」は分離を意味しており、血液を遠心分離器にかけて測定することからこの名前がついています。

血液は大きく分けて、固形成分である「血球」と、液体成分である「血漿(けっしょう)」に分けられます。

血球には以下が含まれます:

  • 赤血球(最も多くを占める)
  • 白血球
  • 血小板

ヘマトクリット値は、この血液全体に対する赤血球の容積の割合を示しています。

簡単に言えば、ヘマトクリット値は「血液の濃さ」を表す指標といえます。この数値が高ければ血液は濃くドロドロした状態であり、低ければ血液は薄くサラサラした状態であることを意味します。

赤血球は体中に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質が肺で酸素と結合し、全身の組織に酸素を届けています。そのため、赤血球の量は体の機能を維持するうえで非常に重要であり、多すぎても少なすぎても問題が生じます。

健康診断の血液検査では、赤血球数、ヘモグロビン濃度とともにヘマトクリット値も測定されており、これら3つの指標を組み合わせて貧血や多血症の診断に活用されています。

📊 2. ヘマトクリット値の基準値について

ヘマトクリット値の基準値は、性別や年齢、検査機関によって若干異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、成人の基準値として以下の数値が示されています。

  • 男性の基準値:40〜50%程度
  • 女性の基準値:34〜45%程度

男性の方が女性よりも高い傾向にありますが、これは女性は月経によって定期的に血液が失われるため、相対的に赤血球の割合が低くなりやすいことが理由のひとつです。

また、一般的な医療機関では以下のような基準値が用いられることが多いです。

男性の場合:
・正常範囲:38.5%〜48.9%
高値:52.9%以上

女性の場合:
・正常範囲:35.5%〜43.9%
高値:47.0%以上

一方、世界保健機関(WHO)による多血症の診断基準では、より厳格な数値が設定されています。

  • 男性:ヘマトクリット値が49%を超える場合に多血症が疑われる
  • 女性:ヘマトクリット値が48%を超える場合に多血症が疑われる

なお、ヘマトクリット値は測定するタイミングによっても変動します。朝、昼、夜で数値が異なることがありますし、採血前の飲水制限の影響を受けることもあります。健康診断では採血前に食事や水分を控えるよう指示されることが多いため、軽い脱水状態となり、ヘマトクリット値が実際よりもやや高めに出ることがあります。

🔍 3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か

ヘマトクリット値が基準値よりも高いということは、血液中の赤血球の割合が多くなっている状態を意味します。これは一般的に「血液が濃い」「血液がドロドロしている」と表現されることがあります。この状態は医学的には「多血症」または「赤血球増加症」と呼ばれます。

血液が濃くなると、血液の粘稠度(粘り気)が高まります。粘り気の高い血液は血管の中をスムーズに流れにくくなるため、全身の血流が悪くなります。特に細い血管では血液が通過しにくくなり、さまざまな臓器への酸素や栄養の供給が低下する可能性があります。

また、血液がドロドロしていると、血管の中で血液が固まりやすくなります。これが血栓(血の塊)の形成につながり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患の原因となることがあります。

ただし、ヘマトクリット値が高いからといって、必ずしも深刻な病気があるとは限りません。一時的な脱水や生活習慣の影響で数値が上昇していることも多く、原因によっては生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

重要なのは、ヘマトクリット値が高いと指摘された場合に、その原因が何であるかを正しく把握することです。原因によって対処法が大きく異なるため、自己判断せずに医療機関で適切な検査を受けることが大切です。

⚠️ 4. ヘマトクリット値が高くなる原因

ヘマトクリット値が高くなる原因はさまざまであり、大きく分けて「相対的多血症」と「絶対的多血症」の2つに分類されます。

💧 相対的多血症

相対的多血症とは、実際に赤血球が増加しているわけではなく、血漿(血液の液体成分)が減少することで見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。血液中の水分が少なくなることで、相対的に赤血球の濃度が高く見えるのです。

相対的多血症の主な原因:

  • 脱水(最も多い原因)
    • 下痢や嘔吐
    • 発汗
    • 発熱
    • 水分摂取不足
  • 季節的要因
    • 夏場の熱中症
    • 秋から冬の乾燥した季節での脱水
    • マスク着用による渇きの自覚低下
  • ストレス多血症
    • 慢性的なストレス
    • 精神的緊張
    • 過度の飲酒・喫煙
    • 肥満
高桑康太 医師・当院治療責任者

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まず最も多いのは脱水による相対的多血症です。健康診断では朝食を抜いて採血することが多く、水分も控えがちになるため、実際よりも高く測定されることがよくあります。まずは十分な水分補給を行い、再検査を受けることをお勧めします。

ストレス多血症と呼ばれる状態も相対的多血症の一種です。働き盛りの中年男性に多くみられ、高血圧、高脂血症、高尿酸血症を伴うことが多いのが特徴です。

利尿作用のある飲み物の過剰摂取も脱水を招く原因となります:

  • コーヒー
  • 緑茶
  • その他カフェインを多く含む飲み物

🫁 絶対的多血症(二次性多血症)

絶対的多血症とは、実際に血液中の赤血球が増加している状態です。その中でも、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している場合を「二次性多血症」といいます。

二次性多血症の主な原因:

1. 喫煙(最も多い原因)

  • タバコの煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンと結合
  • 一酸化炭素とヘモグロビンの結合力は酸素の約200倍
  • 体内が酸素不足に陥り、赤血球の産生が増加

2. 睡眠時無呼吸症候群

  • 睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする
  • 慢性的な低酸素状態
  • 酸素不足を補おうとして赤血球が増加

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • 肥満気味
  • いびきが大きい
  • 日中の眠気がある
  • 家族から呼吸が止まっていると指摘されたことがある

3. その他の原因

  • 肺疾患(COPD、肺気腫など)
  • 心疾患(心不全、先天性心疾患など)
  • 高地での生活
  • 腎疾患
  • エリスロポエチン産生腫瘍(腎細胞がん、肝細胞がんなど)

🧬 絶対的多血症(真性多血症)

真性多血症は、骨髄で赤血球を作る造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、赤血球が異常に増殖する病気です。

真性多血症の特徴:

  • 骨髄増殖性腫瘍のひとつに分類
  • 10万人あたり年間2人程度が発症(比較的まれ)
  • 60歳前後に発症のピーク
  • 95%以上の症例でJAK2遺伝子の変異を認める

JAK2遺伝子の変異により、細胞増殖のシグナルが常に活性化された状態となり、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球がどんどん作られてしまいます。赤血球だけでなく、白血球や血小板も増加することがあります。

真性多血症は適切な治療を受ければ10年以上の生存が期待できる疾患ですが、放置すると血栓症のリスクが高まります。また、一部の患者さんでは長期経過の中で骨髄線維症や急性白血病に移行することがあるため、定期的な経過観察が必要です。

🤕 5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状

ヘマトクリット値が高い状態、すなわち多血症では、血液の粘稠度が増すことでさまざまな症状が現れることがあります。ただし、軽度の多血症では無症状のことも多く、健康診断で偶然発見されるケースも少なくありません。

多血症で現れやすい症状:

脳・神経症状

  • 頭痛
  • めまい・ふらつき
  • 耳鳴り
  • 視力障害
  • 思考力の低下

皮膚症状

  • 顔面の紅潮やほてり
  • 皮膚の赤み(特に顔や手足)
  • 入浴後のかゆみ(真性多血症に特徴的)

全身症状

  • 疲労感や脱力感
  • 息切れ(特に運動時)
  • 動悸

循環器症状

  • 高血圧
  • 血液がドロドロになることで心臓により強い力が必要

その他の症状

  • 痛風(高尿酸血症)
  • 脾臓の腫れ(脾腫)による腹部膨満感
  • 食欲低下
  • 発熱・寝汗・体重減少(真性多血症の場合)

入浴後のかゆみは真性多血症の特徴的な症状で、「aquagenic pruritus(アクアジェニック プルリタス)」と呼ばれます。温かいお湯に浸かることで誘発されるかゆみで、ヒスタミンなどの物質が関与していると考えられています。

⚡ 6. 放置した場合のリスクと合併症

ヘマトクリット値が高い状態を放置すると、さまざまな深刻な合併症を引き起こす可能性があります。最も注意すべきは血栓症です。

血栓症のリスク

血液がドロドロした状態が続くと、血管の中で血液が固まって血栓(血の塊)ができやすくなります。

主な血栓症:

  • 脳梗塞
    • 手足の麻痺やしびれ
    • 言葉が出にくくなる
    • 意識障害
  • 心筋梗塞
    • 胸を締め付けられるような激しい痛み
    • 息苦しさ
    • 冷や汗
    • 最悪の場合は心停止
  • 下肢深部静脈血栓症
    • 脚のむくみや痛み、腫れ
    • 血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
    • 突然の呼吸困難や胸痛
    • 最悪の場合は突然死

その他の合併症

高血圧の持続により:

  • 動脈硬化の進行
  • 血管が脆くなる
  • 脳出血のリスク増加

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合:

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 不整脈
  • 心不全
  • 日中の眠気による事故リスク

真性多血症の長期的リスク:

  • 骨髄線維症への移行(10〜15%程度)
  • 急性白血病への移行(1〜2.5%程度)

🔬 7. 検査方法と受診すべき診療科

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まずは再検査を受けることが大切です。一時的な脱水などが原因であれば、再検査で正常値に戻っていることもあります。

再検査の注意点

  • 検査前に十分な水分を摂取
  • 健康診断では朝食を抜いても、水分はしっかり摂る
  • 検査機関の指示に従う

受診すべき診療科

まず内科を受診しましょう。内科で以下の検査を行います:

  • 血液検査(血液全般の状態を調査)
    • 赤血球数
    • ヘモグロビン濃度
    • 白血球数
    • 血小板数
  • 脱水の有無を確認する検査
  • 他の臓器に異常がないかを調べる検査

原因特定のための検査

エリスロポエチン(赤血球産生ホルモン)の血中濃度測定:

  • 二次性多血症:エリスロポエチン濃度が高め
  • 真性多血症:エリスロポエチン濃度が低め〜正常範囲

JAK2遺伝子変異の検査

  • 血液検査で実施可能
  • 95%以上の真性多血症患者さんでJAK2変異を検出

確定診断のための検査

  • 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
  • 画像検査
    • 胸部CT検査
    • 腹部CT検査
    • 心エコー検査
  • 睡眠ポリグラフ検査(睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合)

詳しい検査や専門的な治療が必要な場合は、血液内科への紹介となることがあります。真性多血症などの血液疾患は血液内科の専門領域です。

📋 8. 多血症の種類と診断

多血症は、その原因によっていくつかの種類に分類されます。正確な診断を受けることで、適切な治療方針を立てることができます。

💧 相対的多血症(見かけ上の多血症)

相対的多血症は、実際には赤血球の総量は増えていないものの、血漿量の減少によって見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。

診断のポイント:

  • 血液検査で赤血球数やヘマトクリット値が高い
  • 総血液量は変わっていない
  • 水分補給をして再検査を行うと数値が正常化することが多い

ストレス多血症(ガイスベック症候群)は相対的多血症の一種で、以下を背景に発症:

  • 慢性的なストレス
  • 高血圧
  • 肥満
  • 喫煙
  • 過度の飲酒

🔄 二次性多血症

二次性多血症は、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している状態です。体内の酸素不足を補おうとして赤血球の産生が亢進することが主な原因です。

診断のポイント:

  • エリスロポエチン濃度が高い
  • 何らかの原因で慢性的な低酸素状態が続いている
  • 原因疾患の特定が重要

原因検索のための問診・検査:

  • 喫煙歴
  • 睡眠時の無呼吸の有無
  • 肺疾患や心疾患の既往
  • 肺機能検査
  • 心エコー検査
  • 腹部CT検査(腎臓や肝臓の腫瘍の有無を確認)

🧬 真性多血症

真性多血症は、骨髄の造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球が過剰に産生される病気です。慢性骨髄増殖性腫瘍に分類されます。

2016年のWHO分類による真性多血症の診断基準

大基準:

  1. ヘモグロビン値が男性で16.5g/dL超、女性で16.0g/dL超、またはヘマトクリット値が男性で49%超、女性で48%超
  2. 骨髄生検で三系統(赤血球系、白血球系、血小板系)の血球増加を伴う過形成髄
  3. JAK2 V617F変異またはJAK2エクソン12変異が存在すること

小基準:

  • 血清エリスロポエチン値が正常範囲以下であること

診断条件:

  • 大基準を3つすべて満たす
  • または大基準の最初の2つと小基準を満たす

💊 9. 治療方法について

多血症の治療は、その原因によって大きく異なります。相対的多血症と二次性多血症は原因の除去や基礎疾患の治療が中心となりますが、真性多血症では血栓症の予防を目的とした積極的な治療が必要となります。

💧 相対的多血症の治療

脱水が原因の場合

  • 適切な水分補給(一日1〜1.5リットルを目安)
  • こまめな水分摂取
  • カフェインやアルコールだけでなく、水やお茶も併せて摂取

ストレス多血症の場合

  • 禁煙
  • 節酒
  • 適度な運動
  • ストレス管理
  • 減量
  • 高血圧、脂質異常症、糖尿病などの合併症治療

🔄 二次性多血症の治療

二次性多血症では、原因となっている基礎疾患の治療が最優先です。

喫煙が原因の場合

  • 禁煙が必要
  • 一酸化炭素ヘモグロビンが減少
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合

  • CPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療
  • 睡眠中に鼻や口からゆるやかに空気を送り込む装置
  • 気道の閉塞を防いで無呼吸を改善
  • 肥満がある場合は減量も重要

その他の疾患が原因の場合

  • 肺疾患・心疾患:それぞれの疾患に対する治療
  • 酸素療法が必要になることもある
  • 治療が困難な場合:瀉血療法を検討

🧬 真性多血症の治療

真性多血症の治療目標は、血栓症の予防と症状の改善です。ヘマトクリット値を45%未満にコントロールすることが推奨されています。

瀉血療法

治療の中心となるのは瀉血療法です。

  • 献血と同じ方法で静脈から血液を抜き取る
  • 1回に200〜500mLの血液を抜き取る
  • 週に1〜2回程度のペース
  • 高齢者や心血管疾患患者:1回100〜200mLに減量して頻回実施
  • 体内の鉄分も除去し、赤血球産生を抑制する効果もある

薬物療法

低用量アスピリン(75〜100mg/日):

  • 血栓症の予防
  • 血小板の働きを抑制
  • 出血リスクがある場合は使用を控える

細胞減少療法(血栓症リスクが高い患者):

  • 60歳以上の方
  • 血栓症の既往がある方

第一選択薬:ヒドロキシウレア(ハイドレア)

  • 骨髄での血球産生を抑制
  • 比較的副作用が少ない
  • 長期使用による二次発がんのリスクが完全には否定されていない

JAK2阻害薬:ルキソリチニブ(ジャカビ)

  • ヒドロキシウレアが効果不十分・副作用で使用不可の場合
  • JAK2の異常な活性化を抑制
  • 血球数の正常化
  • 脾腫の縮小
  • 全身症状の改善

🌱 10. 日常生活での予防と改善方法

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、日常生活でできる予防・改善方法がいくつかあります。特に相対的多血症やストレス多血症の場合は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することも少なくありません。

💧 十分な水分摂取を心がける

脱水はヘマトクリット値を上昇させる最も一般的な原因です。

水分摂取のポイント:

  • 一日を通してこまめに水分を摂取
  • 目安:食事以外に1日1〜1.5リットル
  • 少量をこまめに摂取(一度に大量摂取は避ける)

タイミング:

  • 起床時
  • 食事の前後
  • 入浴の前後
  • 就寝前

注意点:

  • カフェインを含む飲み物(コーヒー、緑茶)は利尿作用がある
  • カフェインを含まない水や麦茶も併せて摂取
  • アルコールも利尿作用が強いため、飲酒後は必ず水で水分補給
  • 夜間のトイレが気になっても、夕方までは積極的に水分摂取

🚭 禁煙する

喫煙は多血症の最も多い原因のひとつであり、禁煙は効果的な改善策です。

禁煙の効果:

  • 一酸化炭素がヘモグロビンと結合することがなくなる
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制
  • ヘマトクリット値の低下が期待できる

その他の健康効果:

  • 肺がんリスクの低下
  • 心筋梗塞リスクの低下
  • 脳卒中リスクの低下
  • COPDリスクの低下

自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診して専門的なサポートを受けることをおすすめします。

🏃 適度な運動を行う

ウォーキングなどの有酸素運動は、全身の血流を促進し、血液の循環を改善する効果があります。

運動の効果:

  • 血流がよくなることで血液の粘稠度が下がる
  • 血栓ができにくくなる
  • 肥満の解消

運動の目安:

  • 週に3〜5回
  • 1回30分程度
  • 激しい運動は脱水を招くため避ける
  • 運動中はこまめに水分補給

肥満は睡眠時無呼吸症候群やストレス多血症のリスク要因となるため、適正体重を維持することが多血症の予防・改善に役立ちます。

🍽️ 食事に気をつける

ヘマトクリット値が高い場合、食事面でも注意が必要です。

控えめにすべき食材

  • 鉄分を多く含む食材(過剰摂取は避ける)
    • ほうれん草
    • レバー
    • 牛肉
    • しじみ
  • 鉄分のサプリメント(医師に相談のうえで中止を検討)
  • 脂質の多い食事(血液をドロドロにしやすい)
    • 揚げ物
    • 脂っこい肉料理
  • プリン体を多く含む食品
    • ビールの酵母
    • レバー
    • 干物

積極的に摂取すべき食材

  • バランスの良い食事
  • 野菜や果物

😌 ストレス管理を心がける

慢性的なストレスはストレス多血症の原因となります。

ストレス管理のポイント:

  • 自分なりのストレス解消法を見つける
  • 定期的にリフレッシュする
  • 十分な睡眠を確保
  • 毎日同じ時間に就寝・起床する習慣
  • 質の良い睡眠を心がける

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • いびきがひどい
  • 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
  • 日中の眠気がひどい

これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。

🛁 入浴時の注意点

入浴は脱水の原因になりやすいため注意が必要です。

入浴時の注意点:

  • 入浴前に水分を摂取
  • 長時間の入浴を避ける
  • 熱すぎるお湯への入浴を避ける
  • 適度な温度と時間を心がける

真性多血症の方で入浴後のかゆみがある場合:

  • お湯の温度をぬるめにする
  • 体を洗うときは皮膚を強くこすらず優しく洗う

🏥 11. 病院を受診する目安

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、どのタイミングで病院を受診すべきでしょうか。以下に目安をまとめます。

必ず受診すべき場合

健康診断で以下の判定を受けた場合:

  • 「要受診」
  • 「要精密検査」
  • 「要再検査」

特に初めてヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、原因を特定するための検査が必要です。

早めに受診することをおすすめする症状

  • 頭痛やめまいが続く
  • 顔や手足が赤くなっている
  • 疲労感や息切れがある
  • 入浴後にかゆみがある
  • 高血圧を指摘されている

これらの症状は多血症に伴って現れることがあり、適切な治療が必要なサインである可能性があります。

緊急受診が必要な症状(すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶ)

脳梗塞や脳出血の症状の可能性:

  • 突然の激しい頭痛
  • 手足のしびれや麻痺
  • ろれつが回らない
  • 意識がもうろうとする

心筋梗塞や肺塞栓症の症状の可能性:

  • 胸を締め付けられるような痛み
  • 呼吸困難
  • 冷や汗

多血症は放置すると血栓症のリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要です。健康診断で異常を指摘された場合は、自己判断で様子を見るのではなく、まずは医療機関で相談するようにしましょう。

🏥 11. 病院を受診する目安

Q. ヘマトクリット値が高い場合の日常的な改善方法は?

ヘマトクリット値が高い場合、1日1〜1.5リットルを目安にこまめな水分補給を行うことが基本です。また、禁煙・週3〜5回30分程度の有酸素運動・バランスの良い食事・ストレス管理も有効です。特に相対的多血症やストレス多血症は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

📝 12. まとめ

ヘマトクリット値が高いということは、血液中の赤血球の割合が多く、血液が濃い状態であることを意味します。この状態は「多血症」と呼ばれ、原因によって以下に分類されます:

  • 相対的多血症
  • 二次性多血症
  • 真性多血症

各種多血症の特徴と治療

相対的多血症:脱水やストレスによって起こる見かけ上の多血であり、水分補給や生活習慣の改善で改善することが多い

二次性多血症:喫煙や睡眠時無呼吸症候群などが原因で起こり、原因疾患の治療によって改善が期待できる

真性多血症:骨髄の遺伝子異常によって起こる血液疾患であり、瀉血療法や薬物療法による治療が必要

重要なリスク

多血症を放置すると、血液の粘稠度が高まり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な血栓症を引き起こすリスクがあります。健康診断でヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。

日常生活での予防・改善方法

以下を心がけることで、多血症の予防・改善につなげることができます:

  • 十分な水分摂取
  • 禁煙
  • 適度な運動
  • バランスの良い食事
  • ストレス管理

気になる症状がある場合や、健康診断で再検査を勧められた場合は、お早めにご相談ください。

ヘマトクリット値が高い」と指摘されて、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ヘマトクリットという言葉自体、日常生活ではあまり耳にしない専門用語であるため、それが何を意味するのか、高いとどのような問題があるのかがわかりにくいかもしれません。

この記事では、ヘマトクリット値が高い場合に考えられる原因や症状、放置した場合のリスク、そして日常生活でできる改善方法について、わかりやすく解説していきます。健康診断の結果が気になる方、再検査を勧められた方はぜひ参考にしてください。

📖 目次

  1. ヘマトクリットとは何か
  2. ヘマトクリット値の基準値について
  3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か
  4. ヘマトクリット値が高くなる原因
  5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状
  6. 放置した場合のリスクと合併症
  7. 検査方法と受診すべき診療科
  8. 多血症の種類と診断
  9. 治療方法について
  10. 日常生活での予防と改善方法
  11. 病院を受診する目安
  12. まとめ

🩸 1. ヘマトクリットとは何か

ヘマトクリットとは、血液中に赤血球が占める割合をパーセンテージ(%)で表した数値のことです。「ヘマト」は血液、「クリット」は分離を意味しており、血液を遠心分離器にかけて測定することからこの名前がついています。

血液は大きく分けて、固形成分である「血球」と、液体成分である「血漿(けっしょう)」に分けられます。

血球には以下が含まれます:

  • 赤血球(最も多くを占める)
  • 白血球
  • 血小板

ヘマトクリット値は、この血液全体に対する赤血球の容積の割合を示しています。

簡単に言えば、ヘマトクリット値は「血液の濃さ」を表す指標といえます。この数値が高ければ血液は濃くドロドロした状態であり、低ければ血液は薄くサラサラした状態であることを意味します。

赤血球は体中に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質が肺で酸素と結合し、全身の組織に酸素を届けています。そのため、赤血球の量は体の機能を維持するうえで非常に重要であり、多すぎても少なすぎても問題が生じます。

健康診断の血液検査では、赤血球数、ヘモグロビン濃度とともにヘマトクリット値も測定されており、これら3つの指標を組み合わせて貧血や多血症の診断に活用されています。

📊 2. ヘマトクリット値の基準値について

ヘマトクリット値の基準値は、性別や年齢、検査機関によって若干異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、成人の基準値として以下の数値が示されています。

  • 男性の基準値:40〜50%程度
  • 女性の基準値:34〜45%程度

男性の方が女性よりも高い傾向にありますが、これは女性は月経によって定期的に血液が失われるため、相対的に赤血球の割合が低くなりやすいことが理由のひとつです。

また、一般的な医療機関では以下のような基準値が用いられることが多いです。

男性の場合:
・正常範囲:38.5%〜48.9%
高値:52.9%以上

女性の場合:
・正常範囲:35.5%〜43.9%
高値:47.0%以上

一方、世界保健機関(WHO)による多血症の診断基準では、より厳格な数値が設定されています。

  • 男性:ヘマトクリット値が49%を超える場合に多血症が疑われる
  • 女性:ヘマトクリット値が48%を超える場合に多血症が疑われる

なお、ヘマトクリット値は測定するタイミングによっても変動します。朝、昼、夜で数値が異なることがありますし、採血前の飲水制限の影響を受けることもあります。健康診断では採血前に食事や水分を控えるよう指示されることが多いため、軽い脱水状態となり、ヘマトクリット値が実際よりもやや高めに出ることがあります。

🔍 3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か

ヘマトクリット値が基準値よりも高いということは、血液中の赤血球の割合が多くなっている状態を意味します。これは一般的に「血液が濃い」「血液がドロドロしている」と表現されることがあります。この状態は医学的には「多血症」または「赤血球増加症」と呼ばれます。

血液が濃くなると、血液の粘稠度(粘り気)が高まります。粘り気の高い血液は血管の中をスムーズに流れにくくなるため、全身の血流が悪くなります。特に細い血管では血液が通過しにくくなり、さまざまな臓器への酸素や栄養の供給が低下する可能性があります。

また、血液がドロドロしていると、血管の中で血液が固まりやすくなります。これが血栓(血の塊)の形成につながり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患の原因となることがあります。

ただし、ヘマトクリット値が高いからといって、必ずしも深刻な病気があるとは限りません。一時的な脱水や生活習慣の影響で数値が上昇していることも多く、原因によっては生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

重要なのは、ヘマトクリット値が高いと指摘された場合に、その原因が何であるかを正しく把握することです。原因によって対処法が大きく異なるため、自己判断せずに医療機関で適切な検査を受けることが大切です。

⚠️ 4. ヘマトクリット値が高くなる原因

ヘマトクリット値が高くなる原因はさまざまであり、大きく分けて「相対的多血症」と「絶対的多血症」の2つに分類されます。

💧 相対的多血症

相対的多血症とは、実際に赤血球が増加しているわけではなく、血漿(血液の液体成分)が減少することで見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。血液中の水分が少なくなることで、相対的に赤血球の濃度が高く見えるのです。

相対的多血症の主な原因:

  • 脱水(最も多い原因)
    • 下痢や嘔吐
    • 発汗
    • 発熱
    • 水分摂取不足
  • 季節的要因
    • 夏場の熱中症
    • 秋から冬の乾燥した季節での脱水
    • マスク着用による渇きの自覚低下
  • ストレス多血症
    • 慢性的なストレス
    • 精神的緊張
    • 過度の飲酒・喫煙
    • 肥満
高桑康太 医師・当院治療責任者

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まず最も多いのは脱水による相対的多血症です。健康診断では朝食を抜いて採血することが多く、水分も控えがちになるため、実際よりも高く測定されることがよくあります。まずは十分な水分補給を行い、再検査を受けることをお勧めします。

ストレス多血症と呼ばれる状態も相対的多血症の一種です。働き盛りの中年男性に多くみられ、高血圧、高脂血症、高尿酸血症を伴うことが多いのが特徴です。

利尿作用のある飲み物の過剰摂取も脱水を招く原因となります:

  • コーヒー
  • 緑茶
  • その他カフェインを多く含む飲み物

🫁 絶対的多血症(二次性多血症)

絶対的多血症とは、実際に血液中の赤血球が増加している状態です。その中でも、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している場合を「二次性多血症」といいます。

二次性多血症の主な原因:

1. 喫煙(最も多い原因)

  • タバコの煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンと結合
  • 一酸化炭素とヘモグロビンの結合力は酸素の約200倍
  • 体内が酸素不足に陥り、赤血球の産生が増加

2. 睡眠時無呼吸症候群

  • 睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする
  • 慢性的な低酸素状態
  • 酸素不足を補おうとして赤血球が増加

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • 肥満気味
  • いびきが大きい
  • 日中の眠気がある
  • 家族から呼吸が止まっていると指摘されたことがある

3. その他の原因

  • 肺疾患(COPD、肺気腫など)
  • 心疾患(心不全、先天性心疾患など)
  • 高地での生活
  • 腎疾患
  • エリスロポエチン産生腫瘍(腎細胞がん、肝細胞がんなど)

🧬 絶対的多血症(真性多血症)

真性多血症は、骨髄で赤血球を作る造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、赤血球が異常に増殖する病気です。

真性多血症の特徴:

  • 骨髄増殖性腫瘍のひとつに分類
  • 10万人あたり年間2人程度が発症(比較的まれ)
  • 60歳前後に発症のピーク
  • 95%以上の症例でJAK2遺伝子の変異を認める

JAK2遺伝子の変異により、細胞増殖のシグナルが常に活性化された状態となり、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球がどんどん作られてしまいます。赤血球だけでなく、白血球や血小板も増加することがあります。

真性多血症は適切な治療を受ければ10年以上の生存が期待できる疾患ですが、放置すると血栓症のリスクが高まります。また、一部の患者さんでは長期経過の中で骨髄線維症や急性白血病に移行することがあるため、定期的な経過観察が必要です。

🤕 5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状

ヘマトクリット値が高い状態、すなわち多血症では、血液の粘稠度が増すことでさまざまな症状が現れることがあります。ただし、軽度の多血症では無症状のことも多く、健康診断で偶然発見されるケースも少なくありません。

多血症で現れやすい症状:

脳・神経症状

  • 頭痛
  • めまい・ふらつき
  • 耳鳴り
  • 視力障害
  • 思考力の低下

皮膚症状

  • 顔面の紅潮やほてり
  • 皮膚の赤み(特に顔や手足)
  • 入浴後のかゆみ(真性多血症に特徴的)

全身症状

  • 疲労感や脱力感
  • 息切れ(特に運動時)
  • 動悸

循環器症状

  • 高血圧
  • 血液がドロドロになることで心臓により強い力が必要

その他の症状

  • 痛風(高尿酸血症)
  • 脾臓の腫れ(脾腫)による腹部膨満感
  • 食欲低下
  • 発熱・寝汗・体重減少(真性多血症の場合)

入浴後のかゆみは真性多血症の特徴的な症状で、「aquagenic pruritus(アクアジェニック プルリタス)」と呼ばれます。温かいお湯に浸かることで誘発されるかゆみで、ヒスタミンなどの物質が関与していると考えられています。

⚡ 6. 放置した場合のリスクと合併症

ヘマトクリット値が高い状態を放置すると、さまざまな深刻な合併症を引き起こす可能性があります。最も注意すべきは血栓症です。

血栓症のリスク

血液がドロドロした状態が続くと、血管の中で血液が固まって血栓(血の塊)ができやすくなります。

主な血栓症:

  • 脳梗塞
    • 手足の麻痺やしびれ
    • 言葉が出にくくなる
    • 意識障害
  • 心筋梗塞
    • 胸を締め付けられるような激しい痛み
    • 息苦しさ
    • 冷や汗
    • 最悪の場合は心停止
  • 下肢深部静脈血栓症
    • 脚のむくみや痛み、腫れ
    • 血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
    • 突然の呼吸困難や胸痛
    • 最悪の場合は突然死

その他の合併症

高血圧の持続により:

  • 動脈硬化の進行
  • 血管が脆くなる
  • 脳出血のリスク増加

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合:

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 不整脈
  • 心不全
  • 日中の眠気による事故リスク

真性多血症の長期的リスク:

  • 骨髄線維症への移行(10〜15%程度)
  • 急性白血病への移行(1〜2.5%程度)

🔬 7. 検査方法と受診すべき診療科

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まずは再検査を受けることが大切です。一時的な脱水などが原因であれば、再検査で正常値に戻っていることもあります。

再検査の注意点

  • 検査前に十分な水分を摂取
  • 健康診断では朝食を抜いても、水分はしっかり摂る
  • 検査機関の指示に従う

受診すべき診療科

まず内科を受診しましょう。内科で以下の検査を行います:

  • 血液検査(血液全般の状態を調査)
    • 赤血球数
    • ヘモグロビン濃度
    • 白血球数
    • 血小板数
  • 脱水の有無を確認する検査
  • 他の臓器に異常がないかを調べる検査

原因特定のための検査

エリスロポエチン(赤血球産生ホルモン)の血中濃度測定:

  • 二次性多血症:エリスロポエチン濃度が高め
  • 真性多血症:エリスロポエチン濃度が低め〜正常範囲

JAK2遺伝子変異の検査

  • 血液検査で実施可能
  • 95%以上の真性多血症患者さんでJAK2変異を検出

確定診断のための検査

  • 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
  • 画像検査
    • 胸部CT検査
    • 腹部CT検査
    • 心エコー検査
  • 睡眠ポリグラフ検査(睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合)

詳しい検査や専門的な治療が必要な場合は、血液内科への紹介となることがあります。真性多血症などの血液疾患は血液内科の専門領域です。

📋 8. 多血症の種類と診断

多血症は、その原因によっていくつかの種類に分類されます。正確な診断を受けることで、適切な治療方針を立てることができます。

💧 相対的多血症(見かけ上の多血症)

相対的多血症は、実際には赤血球の総量は増えていないものの、血漿量の減少によって見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。

診断のポイント:

  • 血液検査で赤血球数やヘマトクリット値が高い
  • 総血液量は変わっていない
  • 水分補給をして再検査を行うと数値が正常化することが多い

ストレス多血症(ガイスベック症候群)は相対的多血症の一種で、以下を背景に発症:

  • 慢性的なストレス
  • 高血圧
  • 肥満
  • 喫煙
  • 過度の飲酒

🔄 二次性多血症

二次性多血症は、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している状態です。体内の酸素不足を補おうとして赤血球の産生が亢進することが主な原因です。

診断のポイント:

  • エリスロポエチン濃度が高い
  • 何らかの原因で慢性的な低酸素状態が続いている
  • 原因疾患の特定が重要

原因検索のための問診・検査:

  • 喫煙歴
  • 睡眠時の無呼吸の有無
  • 肺疾患や心疾患の既往
  • 肺機能検査
  • 心エコー検査
  • 腹部CT検査(腎臓や肝臓の腫瘍の有無を確認)

🧬 真性多血症

真性多血症は、骨髄の造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球が過剰に産生される病気です。慢性骨髄増殖性腫瘍に分類されます。

2016年のWHO分類による真性多血症の診断基準

大基準:

  1. ヘモグロビン値が男性で16.5g/dL超、女性で16.0g/dL超、またはヘマトクリット値が男性で49%超、女性で48%超
  2. 骨髄生検で三系統(赤血球系、白血球系、血小板系)の血球増加を伴う過形成髄
  3. JAK2 V617F変異またはJAK2エクソン12変異が存在すること

小基準:

  • 血清エリスロポエチン値が正常範囲以下であること

診断条件:

  • 大基準を3つすべて満たす
  • または大基準の最初の2つと小基準を満たす

💊 9. 治療方法について

多血症の治療は、その原因によって大きく異なります。相対的多血症と二次性多血症は原因の除去や基礎疾患の治療が中心となりますが、真性多血症では血栓症の予防を目的とした積極的な治療が必要となります。

💧 相対的多血症の治療

脱水が原因の場合

  • 適切な水分補給(一日1〜1.5リットルを目安)
  • こまめな水分摂取
  • カフェインやアルコールだけでなく、水やお茶も併せて摂取

ストレス多血症の場合

  • 禁煙
  • 節酒
  • 適度な運動
  • ストレス管理
  • 減量
  • 高血圧、脂質異常症、糖尿病などの合併症治療

🔄 二次性多血症の治療

二次性多血症では、原因となっている基礎疾患の治療が最優先です。

喫煙が原因の場合

  • 禁煙が必要
  • 一酸化炭素ヘモグロビンが減少
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合

  • CPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療
  • 睡眠中に鼻や口からゆるやかに空気を送り込む装置
  • 気道の閉塞を防いで無呼吸を改善
  • 肥満がある場合は減量も重要

その他の疾患が原因の場合

  • 肺疾患・心疾患:それぞれの疾患に対する治療
  • 酸素療法が必要になることもある
  • 治療が困難な場合:瀉血療法を検討

🧬 真性多血症の治療

真性多血症の治療目標は、血栓症の予防と症状の改善です。ヘマトクリット値を45%未満にコントロールすることが推奨されています。

瀉血療法

治療の中心となるのは瀉血療法です。

  • 献血と同じ方法で静脈から血液を抜き取る
  • 1回に200〜500mLの血液を抜き取る
  • 週に1〜2回程度のペース
  • 高齢者や心血管疾患患者:1回100〜200mLに減量して頻回実施
  • 体内の鉄分も除去し、赤血球産生を抑制する効果もある

薬物療法

低用量アスピリン(75〜100mg/日):

  • 血栓症の予防
  • 血小板の働きを抑制
  • 出血リスクがある場合は使用を控える

細胞減少療法(血栓症リスクが高い患者):

  • 60歳以上の方
  • 血栓症の既往がある方

第一選択薬:ヒドロキシウレア(ハイドレア)

  • 骨髄での血球産生を抑制
  • 比較的副作用が少ない
  • 長期使用による二次発がんのリスクが完全には否定されていない

JAK2阻害薬:ルキソリチニブ(ジャカビ)

  • ヒドロキシウレアが効果不十分・副作用で使用不可の場合
  • JAK2の異常な活性化を抑制
  • 血球数の正常化
  • 脾腫の縮小
  • 全身症状の改善

🌱 10. 日常生活での予防と改善方法

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、日常生活でできる予防・改善方法がいくつかあります。特に相対的多血症やストレス多血症の場合は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することも少なくありません。

💧 十分な水分摂取を心がける

脱水はヘマトクリット値を上昇させる最も一般的な原因です。

水分摂取のポイント:

  • 一日を通してこまめに水分を摂取
  • 目安:食事以外に1日1〜1.5リットル
  • 少量をこまめに摂取(一度に大量摂取は避ける)

タイミング:

  • 起床時
  • 食事の前後
  • 入浴の前後
  • 就寝前

注意点:

  • カフェインを含む飲み物(コーヒー、緑茶)は利尿作用がある
  • カフェインを含まない水や麦茶も併せて摂取
  • アルコールも利尿作用が強いため、飲酒後は必ず水で水分補給
  • 夜間のトイレが気になっても、夕方までは積極的に水分摂取

🚭 禁煙する

喫煙は多血症の最も多い原因のひとつであり、禁煙は効果的な改善策です。

禁煙の効果:

  • 一酸化炭素がヘモグロビンと結合することがなくなる
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制
  • ヘマトクリット値の低下が期待できる

その他の健康効果:

  • 肺がんリスクの低下
  • 心筋梗塞リスクの低下
  • 脳卒中リスクの低下
  • COPDリスクの低下

自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診して専門的なサポートを受けることをおすすめします。

🏃 適度な運動を行う

ウォーキングなどの有酸素運動は、全身の血流を促進し、血液の循環を改善する効果があります。

運動の効果:

  • 血流がよくなることで血液の粘稠度が下がる
  • 血栓ができにくくなる
  • 肥満の解消

運動の目安:

  • 週に3〜5回
  • 1回30分程度
  • 激しい運動は脱水を招くため避ける
  • 運動中はこまめに水分補給

肥満は睡眠時無呼吸症候群やストレス多血症のリスク要因となるため、適正体重を維持することが多血症の予防・改善に役立ちます。

🍽️ 食事に気をつける

ヘマトクリット値が高い場合、食事面でも注意が必要です。

控えめにすべき食材

  • 鉄分を多く含む食材(過剰摂取は避ける)
    • ほうれん草
    • レバー
    • 牛肉
    • しじみ
  • 鉄分のサプリメント(医師に相談のうえで中止を検討)
  • 脂質の多い食事(血液をドロドロにしやすい)
    • 揚げ物
    • 脂っこい肉料理
  • プリン体を多く含む食品
    • ビールの酵母
    • レバー
    • 干物

積極的に摂取すべき食材

  • バランスの良い食事
  • 野菜や果物

😌 ストレス管理を心がける

慢性的なストレスはストレス多血症の原因となります。

ストレス管理のポイント:

  • 自分なりのストレス解消法を見つける
  • 定期的にリフレッシュする
  • 十分な睡眠を確保
  • 毎日同じ時間に就寝・起床する習慣
  • 質の良い睡眠を心がける

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • いびきがひどい
  • 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
  • 日中の眠気がひどい

これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。

🛁 入浴時の注意点

入浴は脱水の原因になりやすいため注意が必要です。

入浴時の注意点:

  • 入浴前に水分を摂取
  • 長時間の入浴を避ける
  • 熱すぎるお湯への入浴を避ける
  • 適度な温度と時間を心がける

真性多血症の方で入浴後のかゆみがある場合:

  • お湯の温度をぬるめにする
  • 体を洗うときは皮膚を強くこすらず優しく洗う

🏥 11. 病院を受診する目安

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、どのタイミングで病院を受診すべきでしょうか。以下に目安をまとめます。

必ず受診すべき場合

健康診断で以下の判定を受けた場合:

  • 「要受診」
  • 「要精密検査」
  • 「要再検査」

特に初めてヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、原因を特定するための検査が必要です。

早めに受診することをおすすめする症状

  • 頭痛やめまいが続く
  • 顔や手足が赤くなっている
  • 疲労感や息切れがある
  • 入浴後にかゆみがある
  • 高血圧を指摘されている

これらの症状は多血症に伴って現れることがあり、適切な治療が必要なサインである可能性があります。

緊急受診が必要な症状(すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶ)

脳梗塞や脳出血の症状の可能性:

  • 突然の激しい頭痛
  • 手足のしびれや麻痺
  • ろれつが回らない
  • 意識がもうろうとする

心筋梗塞や肺塞栓症の症状の可能性:

  • 胸を締め付けられるような痛み
  • 呼吸困難
  • 冷や汗

多血症は放置すると血栓症のリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要です。健康診断で異常を指摘された場合は、自己判断で様子を見るのではなく、まずは医療機関で相談するようにしましょう。

🏥 11. 病院を受診する目安

📝 12. まとめ

ヘマトクリット値が高いということは、血液中の赤血球の割合が多く、血液が濃い状態であることを意味します。この状態は「多血症」と呼ばれ、原因によって以下に分類されます:

  • 相対的多血症
  • 二次性多血症
  • 真性多血症

各種多血症の特徴と治療

相対的多血症:脱水やストレスによって起こる見かけ上の多血であり、水分補給や生活習慣の改善で改善することが多い

二次性多血症:喫煙や睡眠時無呼吸症候群などが原因で起こり、原因疾患の治療によって改善が期待できる

真性多血症:骨髄の遺伝子異常によって起こる血液疾患であり、瀉血療法や薬物療法による治療が必要

重要なリスク

多血症を放置すると、血液の粘稠度が高まり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な血栓症を引き起こすリスクがあります。健康診断でヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。

日常生活での予防・改善方法

以下を心がけることで、多血症の予防・改善につなげることができます:

  • 十分な水分摂取
  • 禁煙
  • 適度な運動
  • バランスの良い食事
  • ストレス管理

気になる症状がある場合や、健康診断で再検査を勧められた場合は、お早めにご相談ください。

ヘマトクリット値が高い」と指摘されて、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ヘマトクリットという言葉自体、日常生活ではあまり耳にしない専門用語であるため、それが何を意味するのか、高いとどのような問題があるのかがわかりにくいかもしれません。

この記事では、ヘマトクリット値が高い場合に考えられる原因や症状、放置した場合のリスク、そして日常生活でできる改善方法について、わかりやすく解説していきます。健康診断の結果が気になる方、再検査を勧められた方はぜひ参考にしてください。

Q. ヘマトクリット値が高くなる主な原因は何ですか?

ヘマトクリット値が高くなる原因は、大きく「相対的多血症」と「絶対的多血症」に分かれます。相対的多血症は脱水が最多原因で、絶対的多血症は喫煙・睡眠時無呼吸症候群・肺疾患などが主因です。骨髄の遺伝子変異による真性多血症も存在します。

📖 目次

  1. ヘマトクリットとは何か
  2. ヘマトクリット値の基準値について
  3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か
  4. ヘマトクリット値が高くなる原因
  5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状
  6. 放置した場合のリスクと合併症
  7. 検査方法と受診すべき診療科
  8. 多血症の種類と診断
  9. 治療方法について
  10. 日常生活での予防と改善方法
  11. 病院を受診する目安
  12. まとめ

🩸 1. ヘマトクリットとは何か

ヘマトクリットとは、血液中に赤血球が占める割合をパーセンテージ(%)で表した数値のことです。「ヘマト」は血液、「クリット」は分離を意味しており、血液を遠心分離器にかけて測定することからこの名前がついています。

血液は大きく分けて、固形成分である「血球」と、液体成分である「血漿(けっしょう)」に分けられます。

血球には以下が含まれます:

  • 赤血球(最も多くを占める)
  • 白血球
  • 血小板

ヘマトクリット値は、この血液全体に対する赤血球の容積の割合を示しています。

簡単に言えば、ヘマトクリット値は「血液の濃さ」を表す指標といえます。この数値が高ければ血液は濃くドロドロした状態であり、低ければ血液は薄くサラサラした状態であることを意味します。

赤血球は体中に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質が肺で酸素と結合し、全身の組織に酸素を届けています。そのため、赤血球の量は体の機能を維持するうえで非常に重要であり、多すぎても少なすぎても問題が生じます。

健康診断の血液検査では、赤血球数、ヘモグロビン濃度とともにヘマトクリット値も測定されており、これら3つの指標を組み合わせて貧血や多血症の診断に活用されています。

📊 2. ヘマトクリット値の基準値について

ヘマトクリット値の基準値は、性別や年齢、検査機関によって若干異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、成人の基準値として以下の数値が示されています。

  • 男性の基準値:40〜50%程度
  • 女性の基準値:34〜45%程度

男性の方が女性よりも高い傾向にありますが、これは女性は月経によって定期的に血液が失われるため、相対的に赤血球の割合が低くなりやすいことが理由のひとつです。

また、一般的な医療機関では以下のような基準値が用いられることが多いです。

男性の場合:
・正常範囲:38.5%〜48.9%
高値:52.9%以上

女性の場合:
・正常範囲:35.5%〜43.9%
高値:47.0%以上

一方、世界保健機関(WHO)による多血症の診断基準では、より厳格な数値が設定されています。

  • 男性:ヘマトクリット値が49%を超える場合に多血症が疑われる
  • 女性:ヘマトクリット値が48%を超える場合に多血症が疑われる

なお、ヘマトクリット値は測定するタイミングによっても変動します。朝、昼、夜で数値が異なることがありますし、採血前の飲水制限の影響を受けることもあります。健康診断では採血前に食事や水分を控えるよう指示されることが多いため、軽い脱水状態となり、ヘマトクリット値が実際よりもやや高めに出ることがあります。

🔍 3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か

ヘマトクリット値が基準値よりも高いということは、血液中の赤血球の割合が多くなっている状態を意味します。これは一般的に「血液が濃い」「血液がドロドロしている」と表現されることがあります。この状態は医学的には「多血症」または「赤血球増加症」と呼ばれます。

血液が濃くなると、血液の粘稠度(粘り気)が高まります。粘り気の高い血液は血管の中をスムーズに流れにくくなるため、全身の血流が悪くなります。特に細い血管では血液が通過しにくくなり、さまざまな臓器への酸素や栄養の供給が低下する可能性があります。

また、血液がドロドロしていると、血管の中で血液が固まりやすくなります。これが血栓(血の塊)の形成につながり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患の原因となることがあります。

ただし、ヘマトクリット値が高いからといって、必ずしも深刻な病気があるとは限りません。一時的な脱水や生活習慣の影響で数値が上昇していることも多く、原因によっては生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

重要なのは、ヘマトクリット値が高いと指摘された場合に、その原因が何であるかを正しく把握することです。原因によって対処法が大きく異なるため、自己判断せずに医療機関で適切な検査を受けることが大切です。

⚠️ 4. ヘマトクリット値が高くなる原因

ヘマトクリット値が高くなる原因はさまざまであり、大きく分けて「相対的多血症」と「絶対的多血症」の2つに分類されます。

💧 相対的多血症

相対的多血症とは、実際に赤血球が増加しているわけではなく、血漿(血液の液体成分)が減少することで見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。血液中の水分が少なくなることで、相対的に赤血球の濃度が高く見えるのです。

相対的多血症の主な原因:

  • 脱水(最も多い原因)
    • 下痢や嘔吐
    • 発汗
    • 発熱
    • 水分摂取不足
  • 季節的要因
    • 夏場の熱中症
    • 秋から冬の乾燥した季節での脱水
    • マスク着用による渇きの自覚低下
  • ストレス多血症
    • 慢性的なストレス
    • 精神的緊張
    • 過度の飲酒・喫煙
    • 肥満
高桑康太 医師・当院治療責任者

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まず最も多いのは脱水による相対的多血症です。健康診断では朝食を抜いて採血することが多く、水分も控えがちになるため、実際よりも高く測定されることがよくあります。まずは十分な水分補給を行い、再検査を受けることをお勧めします。

ストレス多血症と呼ばれる状態も相対的多血症の一種です。働き盛りの中年男性に多くみられ、高血圧、高脂血症、高尿酸血症を伴うことが多いのが特徴です。

利尿作用のある飲み物の過剰摂取も脱水を招く原因となります:

  • コーヒー
  • 緑茶
  • その他カフェインを多く含む飲み物

🫁 絶対的多血症(二次性多血症)

絶対的多血症とは、実際に血液中の赤血球が増加している状態です。その中でも、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している場合を「二次性多血症」といいます。

二次性多血症の主な原因:

1. 喫煙(最も多い原因)

  • タバコの煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンと結合
  • 一酸化炭素とヘモグロビンの結合力は酸素の約200倍
  • 体内が酸素不足に陥り、赤血球の産生が増加

2. 睡眠時無呼吸症候群

  • 睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする
  • 慢性的な低酸素状態
  • 酸素不足を補おうとして赤血球が増加

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • 肥満気味
  • いびきが大きい
  • 日中の眠気がある
  • 家族から呼吸が止まっていると指摘されたことがある

3. その他の原因

  • 肺疾患(COPD、肺気腫など)
  • 心疾患(心不全、先天性心疾患など)
  • 高地での生活
  • 腎疾患
  • エリスロポエチン産生腫瘍(腎細胞がん、肝細胞がんなど)

🧬 絶対的多血症(真性多血症)

真性多血症は、骨髄で赤血球を作る造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、赤血球が異常に増殖する病気です。

真性多血症の特徴:

  • 骨髄増殖性腫瘍のひとつに分類
  • 10万人あたり年間2人程度が発症(比較的まれ)
  • 60歳前後に発症のピーク
  • 95%以上の症例でJAK2遺伝子の変異を認める

JAK2遺伝子の変異により、細胞増殖のシグナルが常に活性化された状態となり、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球がどんどん作られてしまいます。赤血球だけでなく、白血球や血小板も増加することがあります。

真性多血症は適切な治療を受ければ10年以上の生存が期待できる疾患ですが、放置すると血栓症のリスクが高まります。また、一部の患者さんでは長期経過の中で骨髄線維症や急性白血病に移行することがあるため、定期的な経過観察が必要です。

🤕 5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状

ヘマトクリット値が高い状態、すなわち多血症では、血液の粘稠度が増すことでさまざまな症状が現れることがあります。ただし、軽度の多血症では無症状のことも多く、健康診断で偶然発見されるケースも少なくありません。

多血症で現れやすい症状:

脳・神経症状

  • 頭痛
  • めまい・ふらつき
  • 耳鳴り
  • 視力障害
  • 思考力の低下

皮膚症状

  • 顔面の紅潮やほてり
  • 皮膚の赤み(特に顔や手足)
  • 入浴後のかゆみ(真性多血症に特徴的)

全身症状

  • 疲労感や脱力感
  • 息切れ(特に運動時)
  • 動悸

循環器症状

  • 高血圧
  • 血液がドロドロになることで心臓により強い力が必要

その他の症状

  • 痛風(高尿酸血症)
  • 脾臓の腫れ(脾腫)による腹部膨満感
  • 食欲低下
  • 発熱・寝汗・体重減少(真性多血症の場合)

入浴後のかゆみは真性多血症の特徴的な症状で、「aquagenic pruritus(アクアジェニック プルリタス)」と呼ばれます。温かいお湯に浸かることで誘発されるかゆみで、ヒスタミンなどの物質が関与していると考えられています。

⚡ 6. 放置した場合のリスクと合併症

ヘマトクリット値が高い状態を放置すると、さまざまな深刻な合併症を引き起こす可能性があります。最も注意すべきは血栓症です。

血栓症のリスク

血液がドロドロした状態が続くと、血管の中で血液が固まって血栓(血の塊)ができやすくなります。

主な血栓症:

  • 脳梗塞
    • 手足の麻痺やしびれ
    • 言葉が出にくくなる
    • 意識障害
  • 心筋梗塞
    • 胸を締め付けられるような激しい痛み
    • 息苦しさ
    • 冷や汗
    • 最悪の場合は心停止
  • 下肢深部静脈血栓症
    • 脚のむくみや痛み、腫れ
    • 血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
    • 突然の呼吸困難や胸痛
    • 最悪の場合は突然死

その他の合併症

高血圧の持続により:

  • 動脈硬化の進行
  • 血管が脆くなる
  • 脳出血のリスク増加

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合:

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 不整脈
  • 心不全
  • 日中の眠気による事故リスク

真性多血症の長期的リスク:

  • 骨髄線維症への移行(10〜15%程度)
  • 急性白血病への移行(1〜2.5%程度)

🔬 7. 検査方法と受診すべき診療科

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まずは再検査を受けることが大切です。一時的な脱水などが原因であれば、再検査で正常値に戻っていることもあります。

再検査の注意点

  • 検査前に十分な水分を摂取
  • 健康診断では朝食を抜いても、水分はしっかり摂る
  • 検査機関の指示に従う

受診すべき診療科

まず内科を受診しましょう。内科で以下の検査を行います:

  • 血液検査(血液全般の状態を調査)
    • 赤血球数
    • ヘモグロビン濃度
    • 白血球数
    • 血小板数
  • 脱水の有無を確認する検査
  • 他の臓器に異常がないかを調べる検査

原因特定のための検査

エリスロポエチン(赤血球産生ホルモン)の血中濃度測定:

  • 二次性多血症:エリスロポエチン濃度が高め
  • 真性多血症:エリスロポエチン濃度が低め〜正常範囲

JAK2遺伝子変異の検査

  • 血液検査で実施可能
  • 95%以上の真性多血症患者さんでJAK2変異を検出

確定診断のための検査

  • 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
  • 画像検査
    • 胸部CT検査
    • 腹部CT検査
    • 心エコー検査
  • 睡眠ポリグラフ検査(睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合)

詳しい検査や専門的な治療が必要な場合は、血液内科への紹介となることがあります。真性多血症などの血液疾患は血液内科の専門領域です。

📋 8. 多血症の種類と診断

多血症は、その原因によっていくつかの種類に分類されます。正確な診断を受けることで、適切な治療方針を立てることができます。

💧 相対的多血症(見かけ上の多血症)

相対的多血症は、実際には赤血球の総量は増えていないものの、血漿量の減少によって見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。

診断のポイント:

  • 血液検査で赤血球数やヘマトクリット値が高い
  • 総血液量は変わっていない
  • 水分補給をして再検査を行うと数値が正常化することが多い

ストレス多血症(ガイスベック症候群)は相対的多血症の一種で、以下を背景に発症:

  • 慢性的なストレス
  • 高血圧
  • 肥満
  • 喫煙
  • 過度の飲酒

🔄 二次性多血症

二次性多血症は、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している状態です。体内の酸素不足を補おうとして赤血球の産生が亢進することが主な原因です。

診断のポイント:

  • エリスロポエチン濃度が高い
  • 何らかの原因で慢性的な低酸素状態が続いている
  • 原因疾患の特定が重要

原因検索のための問診・検査:

  • 喫煙歴
  • 睡眠時の無呼吸の有無
  • 肺疾患や心疾患の既往
  • 肺機能検査
  • 心エコー検査
  • 腹部CT検査(腎臓や肝臓の腫瘍の有無を確認)

🧬 真性多血症

真性多血症は、骨髄の造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球が過剰に産生される病気です。慢性骨髄増殖性腫瘍に分類されます。

2016年のWHO分類による真性多血症の診断基準

大基準:

  1. ヘモグロビン値が男性で16.5g/dL超、女性で16.0g/dL超、またはヘマトクリット値が男性で49%超、女性で48%超
  2. 骨髄生検で三系統(赤血球系、白血球系、血小板系)の血球増加を伴う過形成髄
  3. JAK2 V617F変異またはJAK2エクソン12変異が存在すること

小基準:

  • 血清エリスロポエチン値が正常範囲以下であること

診断条件:

  • 大基準を3つすべて満たす
  • または大基準の最初の2つと小基準を満たす

💊 9. 治療方法について

多血症の治療は、その原因によって大きく異なります。相対的多血症と二次性多血症は原因の除去や基礎疾患の治療が中心となりますが、真性多血症では血栓症の予防を目的とした積極的な治療が必要となります。

💧 相対的多血症の治療

脱水が原因の場合

  • 適切な水分補給(一日1〜1.5リットルを目安)
  • こまめな水分摂取
  • カフェインやアルコールだけでなく、水やお茶も併せて摂取

ストレス多血症の場合

  • 禁煙
  • 節酒
  • 適度な運動
  • ストレス管理
  • 減量
  • 高血圧、脂質異常症、糖尿病などの合併症治療

🔄 二次性多血症の治療

二次性多血症では、原因となっている基礎疾患の治療が最優先です。

喫煙が原因の場合

  • 禁煙が必要
  • 一酸化炭素ヘモグロビンが減少
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合

  • CPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療
  • 睡眠中に鼻や口からゆるやかに空気を送り込む装置
  • 気道の閉塞を防いで無呼吸を改善
  • 肥満がある場合は減量も重要

その他の疾患が原因の場合

  • 肺疾患・心疾患:それぞれの疾患に対する治療
  • 酸素療法が必要になることもある
  • 治療が困難な場合:瀉血療法を検討

🧬 真性多血症の治療

真性多血症の治療目標は、血栓症の予防と症状の改善です。ヘマトクリット値を45%未満にコントロールすることが推奨されています。

瀉血療法

治療の中心となるのは瀉血療法です。

  • 献血と同じ方法で静脈から血液を抜き取る
  • 1回に200〜500mLの血液を抜き取る
  • 週に1〜2回程度のペース
  • 高齢者や心血管疾患患者:1回100〜200mLに減量して頻回実施
  • 体内の鉄分も除去し、赤血球産生を抑制する効果もある

薬物療法

低用量アスピリン(75〜100mg/日):

  • 血栓症の予防
  • 血小板の働きを抑制
  • 出血リスクがある場合は使用を控える

細胞減少療法(血栓症リスクが高い患者):

  • 60歳以上の方
  • 血栓症の既往がある方

第一選択薬:ヒドロキシウレア(ハイドレア)

  • 骨髄での血球産生を抑制
  • 比較的副作用が少ない
  • 長期使用による二次発がんのリスクが完全には否定されていない

JAK2阻害薬:ルキソリチニブ(ジャカビ)

  • ヒドロキシウレアが効果不十分・副作用で使用不可の場合
  • JAK2の異常な活性化を抑制
  • 血球数の正常化
  • 脾腫の縮小
  • 全身症状の改善

🌱 10. 日常生活での予防と改善方法

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、日常生活でできる予防・改善方法がいくつかあります。特に相対的多血症やストレス多血症の場合は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することも少なくありません。

💧 十分な水分摂取を心がける

脱水はヘマトクリット値を上昇させる最も一般的な原因です。

水分摂取のポイント:

  • 一日を通してこまめに水分を摂取
  • 目安:食事以外に1日1〜1.5リットル
  • 少量をこまめに摂取(一度に大量摂取は避ける)

タイミング:

  • 起床時
  • 食事の前後
  • 入浴の前後
  • 就寝前

注意点:

  • カフェインを含む飲み物(コーヒー、緑茶)は利尿作用がある
  • カフェインを含まない水や麦茶も併せて摂取
  • アルコールも利尿作用が強いため、飲酒後は必ず水で水分補給
  • 夜間のトイレが気になっても、夕方までは積極的に水分摂取

🚭 禁煙する

喫煙は多血症の最も多い原因のひとつであり、禁煙は効果的な改善策です。

禁煙の効果:

  • 一酸化炭素がヘモグロビンと結合することがなくなる
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制
  • ヘマトクリット値の低下が期待できる

その他の健康効果:

  • 肺がんリスクの低下
  • 心筋梗塞リスクの低下
  • 脳卒中リスクの低下
  • COPDリスクの低下

自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診して専門的なサポートを受けることをおすすめします。

🏃 適度な運動を行う

ウォーキングなどの有酸素運動は、全身の血流を促進し、血液の循環を改善する効果があります。

運動の効果:

  • 血流がよくなることで血液の粘稠度が下がる
  • 血栓ができにくくなる
  • 肥満の解消

運動の目安:

  • 週に3〜5回
  • 1回30分程度
  • 激しい運動は脱水を招くため避ける
  • 運動中はこまめに水分補給

肥満は睡眠時無呼吸症候群やストレス多血症のリスク要因となるため、適正体重を維持することが多血症の予防・改善に役立ちます。

🍽️ 食事に気をつける

ヘマトクリット値が高い場合、食事面でも注意が必要です。

控えめにすべき食材

  • 鉄分を多く含む食材(過剰摂取は避ける)
    • ほうれん草
    • レバー
    • 牛肉
    • しじみ
  • 鉄分のサプリメント(医師に相談のうえで中止を検討)
  • 脂質の多い食事(血液をドロドロにしやすい)
    • 揚げ物
    • 脂っこい肉料理
  • プリン体を多く含む食品
    • ビールの酵母
    • レバー
    • 干物

積極的に摂取すべき食材

  • バランスの良い食事
  • 野菜や果物

😌 ストレス管理を心がける

慢性的なストレスはストレス多血症の原因となります。

ストレス管理のポイント:

  • 自分なりのストレス解消法を見つける
  • 定期的にリフレッシュする
  • 十分な睡眠を確保
  • 毎日同じ時間に就寝・起床する習慣
  • 質の良い睡眠を心がける

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • いびきがひどい
  • 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
  • 日中の眠気がひどい

これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。

🛁 入浴時の注意点

入浴は脱水の原因になりやすいため注意が必要です。

入浴時の注意点:

  • 入浴前に水分を摂取
  • 長時間の入浴を避ける
  • 熱すぎるお湯への入浴を避ける
  • 適度な温度と時間を心がける

真性多血症の方で入浴後のかゆみがある場合:

  • お湯の温度をぬるめにする
  • 体を洗うときは皮膚を強くこすらず優しく洗う

🏥 11. 病院を受診する目安

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、どのタイミングで病院を受診すべきでしょうか。以下に目安をまとめます。

必ず受診すべき場合

健康診断で以下の判定を受けた場合:

  • 「要受診」
  • 「要精密検査」
  • 「要再検査」

特に初めてヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、原因を特定するための検査が必要です。

早めに受診することをおすすめする症状

  • 頭痛やめまいが続く
  • 顔や手足が赤くなっている
  • 疲労感や息切れがある
  • 入浴後にかゆみがある
  • 高血圧を指摘されている

これらの症状は多血症に伴って現れることがあり、適切な治療が必要なサインである可能性があります。

緊急受診が必要な症状(すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶ)

脳梗塞や脳出血の症状の可能性:

  • 突然の激しい頭痛
  • 手足のしびれや麻痺
  • ろれつが回らない
  • 意識がもうろうとする

心筋梗塞や肺塞栓症の症状の可能性:

  • 胸を締め付けられるような痛み
  • 呼吸困難
  • 冷や汗

多血症は放置すると血栓症のリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要です。健康診断で異常を指摘された場合は、自己判断で様子を見るのではなく、まずは医療機関で相談するようにしましょう。

🏥 11. 病院を受診する目安

📝 12. まとめ

ヘマトクリット値が高いということは、血液中の赤血球の割合が多く、血液が濃い状態であることを意味します。この状態は「多血症」と呼ばれ、原因によって以下に分類されます:

  • 相対的多血症
  • 二次性多血症
  • 真性多血症

各種多血症の特徴と治療

相対的多血症:脱水やストレスによって起こる見かけ上の多血であり、水分補給や生活習慣の改善で改善することが多い

二次性多血症:喫煙や睡眠時無呼吸症候群などが原因で起こり、原因疾患の治療によって改善が期待できる

真性多血症:骨髄の遺伝子異常によって起こる血液疾患であり、瀉血療法や薬物療法による治療が必要

重要なリスク

多血症を放置すると、血液の粘稠度が高まり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な血栓症を引き起こすリスクがあります。健康診断でヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。

日常生活での予防・改善方法

以下を心がけることで、多血症の予防・改善につなげることができます:

  • 十分な水分摂取
  • 禁煙
  • 適度な運動
  • バランスの良い食事
  • ストレス管理

気になる症状がある場合や、健康診断で再検査を勧められた場合は、お早めにご相談ください。

ヘマトクリット値が高い」と指摘されて、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ヘマトクリットという言葉自体、日常生活ではあまり耳にしない専門用語であるため、それが何を意味するのか、高いとどのような問題があるのかがわかりにくいかもしれません。

この記事では、ヘマトクリット値が高い場合に考えられる原因や症状、放置した場合のリスク、そして日常生活でできる改善方法について、わかりやすく解説していきます。健康診断の結果が気になる方、再検査を勧められた方はぜひ参考にしてください。

Q. 多血症を放置するとどのようなリスクがありますか?

多血症を放置すると、血液の粘稠度が増して血栓が形成されやすくなります。その結果、脳梗塞・心筋梗塞・肺塞栓症などの重篤な血栓症を引き起こすリスクが高まります。真性多血症では長期的に骨髄線維症や急性白血病へ移行する可能性もあります。

📖 目次

  1. ヘマトクリットとは何か
  2. ヘマトクリット値の基準値について
  3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か
  4. ヘマトクリット値が高くなる原因
  5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状
  6. 放置した場合のリスクと合併症
  7. 検査方法と受診すべき診療科
  8. 多血症の種類と診断
  9. 治療方法について
  10. 日常生活での予防と改善方法
  11. 病院を受診する目安
  12. まとめ

🩸 1. ヘマトクリットとは何か

ヘマトクリットとは、血液中に赤血球が占める割合をパーセンテージ(%)で表した数値のことです。「ヘマト」は血液、「クリット」は分離を意味しており、血液を遠心分離器にかけて測定することからこの名前がついています。

血液は大きく分けて、固形成分である「血球」と、液体成分である「血漿(けっしょう)」に分けられます。

血球には以下が含まれます:

  • 赤血球(最も多くを占める)
  • 白血球
  • 血小板

ヘマトクリット値は、この血液全体に対する赤血球の容積の割合を示しています。

簡単に言えば、ヘマトクリット値は「血液の濃さ」を表す指標といえます。この数値が高ければ血液は濃くドロドロした状態であり、低ければ血液は薄くサラサラした状態であることを意味します。

赤血球は体中に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質が肺で酸素と結合し、全身の組織に酸素を届けています。そのため、赤血球の量は体の機能を維持するうえで非常に重要であり、多すぎても少なすぎても問題が生じます。

健康診断の血液検査では、赤血球数、ヘモグロビン濃度とともにヘマトクリット値も測定されており、これら3つの指標を組み合わせて貧血や多血症の診断に活用されています。

📊 2. ヘマトクリット値の基準値について

ヘマトクリット値の基準値は、性別や年齢、検査機関によって若干異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、成人の基準値として以下の数値が示されています。

  • 男性の基準値:40〜50%程度
  • 女性の基準値:34〜45%程度

男性の方が女性よりも高い傾向にありますが、これは女性は月経によって定期的に血液が失われるため、相対的に赤血球の割合が低くなりやすいことが理由のひとつです。

また、一般的な医療機関では以下のような基準値が用いられることが多いです。

男性の場合:
・正常範囲:38.5%〜48.9%
高値:52.9%以上

女性の場合:
・正常範囲:35.5%〜43.9%
高値:47.0%以上

一方、世界保健機関(WHO)による多血症の診断基準では、より厳格な数値が設定されています。

  • 男性:ヘマトクリット値が49%を超える場合に多血症が疑われる
  • 女性:ヘマトクリット値が48%を超える場合に多血症が疑われる

なお、ヘマトクリット値は測定するタイミングによっても変動します。朝、昼、夜で数値が異なることがありますし、採血前の飲水制限の影響を受けることもあります。健康診断では採血前に食事や水分を控えるよう指示されることが多いため、軽い脱水状態となり、ヘマトクリット値が実際よりもやや高めに出ることがあります。

🔍 3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か

ヘマトクリット値が基準値よりも高いということは、血液中の赤血球の割合が多くなっている状態を意味します。これは一般的に「血液が濃い」「血液がドロドロしている」と表現されることがあります。この状態は医学的には「多血症」または「赤血球増加症」と呼ばれます。

血液が濃くなると、血液の粘稠度(粘り気)が高まります。粘り気の高い血液は血管の中をスムーズに流れにくくなるため、全身の血流が悪くなります。特に細い血管では血液が通過しにくくなり、さまざまな臓器への酸素や栄養の供給が低下する可能性があります。

また、血液がドロドロしていると、血管の中で血液が固まりやすくなります。これが血栓(血の塊)の形成につながり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患の原因となることがあります。

ただし、ヘマトクリット値が高いからといって、必ずしも深刻な病気があるとは限りません。一時的な脱水や生活習慣の影響で数値が上昇していることも多く、原因によっては生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

重要なのは、ヘマトクリット値が高いと指摘された場合に、その原因が何であるかを正しく把握することです。原因によって対処法が大きく異なるため、自己判断せずに医療機関で適切な検査を受けることが大切です。

⚠️ 4. ヘマトクリット値が高くなる原因

ヘマトクリット値が高くなる原因はさまざまであり、大きく分けて「相対的多血症」と「絶対的多血症」の2つに分類されます。

💧 相対的多血症

相対的多血症とは、実際に赤血球が増加しているわけではなく、血漿(血液の液体成分)が減少することで見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。血液中の水分が少なくなることで、相対的に赤血球の濃度が高く見えるのです。

相対的多血症の主な原因:

  • 脱水(最も多い原因)
    • 下痢や嘔吐
    • 発汗
    • 発熱
    • 水分摂取不足
  • 季節的要因
    • 夏場の熱中症
    • 秋から冬の乾燥した季節での脱水
    • マスク着用による渇きの自覚低下
  • ストレス多血症
    • 慢性的なストレス
    • 精神的緊張
    • 過度の飲酒・喫煙
    • 肥満
高桑康太 医師・当院治療責任者

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まず最も多いのは脱水による相対的多血症です。健康診断では朝食を抜いて採血することが多く、水分も控えがちになるため、実際よりも高く測定されることがよくあります。まずは十分な水分補給を行い、再検査を受けることをお勧めします。

ストレス多血症と呼ばれる状態も相対的多血症の一種です。働き盛りの中年男性に多くみられ、高血圧、高脂血症、高尿酸血症を伴うことが多いのが特徴です。

利尿作用のある飲み物の過剰摂取も脱水を招く原因となります:

  • コーヒー
  • 緑茶
  • その他カフェインを多く含む飲み物

🫁 絶対的多血症(二次性多血症)

絶対的多血症とは、実際に血液中の赤血球が増加している状態です。その中でも、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している場合を「二次性多血症」といいます。

二次性多血症の主な原因:

1. 喫煙(最も多い原因)

  • タバコの煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンと結合
  • 一酸化炭素とヘモグロビンの結合力は酸素の約200倍
  • 体内が酸素不足に陥り、赤血球の産生が増加

2. 睡眠時無呼吸症候群

  • 睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする
  • 慢性的な低酸素状態
  • 酸素不足を補おうとして赤血球が増加

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • 肥満気味
  • いびきが大きい
  • 日中の眠気がある
  • 家族から呼吸が止まっていると指摘されたことがある

3. その他の原因

  • 肺疾患(COPD、肺気腫など)
  • 心疾患(心不全、先天性心疾患など)
  • 高地での生活
  • 腎疾患
  • エリスロポエチン産生腫瘍(腎細胞がん、肝細胞がんなど)

🧬 絶対的多血症(真性多血症)

真性多血症は、骨髄で赤血球を作る造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、赤血球が異常に増殖する病気です。

真性多血症の特徴:

  • 骨髄増殖性腫瘍のひとつに分類
  • 10万人あたり年間2人程度が発症(比較的まれ)
  • 60歳前後に発症のピーク
  • 95%以上の症例でJAK2遺伝子の変異を認める

JAK2遺伝子の変異により、細胞増殖のシグナルが常に活性化された状態となり、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球がどんどん作られてしまいます。赤血球だけでなく、白血球や血小板も増加することがあります。

真性多血症は適切な治療を受ければ10年以上の生存が期待できる疾患ですが、放置すると血栓症のリスクが高まります。また、一部の患者さんでは長期経過の中で骨髄線維症や急性白血病に移行することがあるため、定期的な経過観察が必要です。

🤕 5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状

ヘマトクリット値が高い状態、すなわち多血症では、血液の粘稠度が増すことでさまざまな症状が現れることがあります。ただし、軽度の多血症では無症状のことも多く、健康診断で偶然発見されるケースも少なくありません。

多血症で現れやすい症状:

脳・神経症状

  • 頭痛
  • めまい・ふらつき
  • 耳鳴り
  • 視力障害
  • 思考力の低下

皮膚症状

  • 顔面の紅潮やほてり
  • 皮膚の赤み(特に顔や手足)
  • 入浴後のかゆみ(真性多血症に特徴的)

全身症状

  • 疲労感や脱力感
  • 息切れ(特に運動時)
  • 動悸

循環器症状

  • 高血圧
  • 血液がドロドロになることで心臓により強い力が必要

その他の症状

  • 痛風(高尿酸血症)
  • 脾臓の腫れ(脾腫)による腹部膨満感
  • 食欲低下
  • 発熱・寝汗・体重減少(真性多血症の場合)

入浴後のかゆみは真性多血症の特徴的な症状で、「aquagenic pruritus(アクアジェニック プルリタス)」と呼ばれます。温かいお湯に浸かることで誘発されるかゆみで、ヒスタミンなどの物質が関与していると考えられています。

⚡ 6. 放置した場合のリスクと合併症

ヘマトクリット値が高い状態を放置すると、さまざまな深刻な合併症を引き起こす可能性があります。最も注意すべきは血栓症です。

血栓症のリスク

血液がドロドロした状態が続くと、血管の中で血液が固まって血栓(血の塊)ができやすくなります。

主な血栓症:

  • 脳梗塞
    • 手足の麻痺やしびれ
    • 言葉が出にくくなる
    • 意識障害
  • 心筋梗塞
    • 胸を締め付けられるような激しい痛み
    • 息苦しさ
    • 冷や汗
    • 最悪の場合は心停止
  • 下肢深部静脈血栓症
    • 脚のむくみや痛み、腫れ
    • 血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
    • 突然の呼吸困難や胸痛
    • 最悪の場合は突然死

その他の合併症

高血圧の持続により:

  • 動脈硬化の進行
  • 血管が脆くなる
  • 脳出血のリスク増加

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合:

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 不整脈
  • 心不全
  • 日中の眠気による事故リスク

真性多血症の長期的リスク:

  • 骨髄線維症への移行(10〜15%程度)
  • 急性白血病への移行(1〜2.5%程度)

🔬 7. 検査方法と受診すべき診療科

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まずは再検査を受けることが大切です。一時的な脱水などが原因であれば、再検査で正常値に戻っていることもあります。

再検査の注意点

  • 検査前に十分な水分を摂取
  • 健康診断では朝食を抜いても、水分はしっかり摂る
  • 検査機関の指示に従う

受診すべき診療科

まず内科を受診しましょう。内科で以下の検査を行います:

  • 血液検査(血液全般の状態を調査)
    • 赤血球数
    • ヘモグロビン濃度
    • 白血球数
    • 血小板数
  • 脱水の有無を確認する検査
  • 他の臓器に異常がないかを調べる検査

原因特定のための検査

エリスロポエチン(赤血球産生ホルモン)の血中濃度測定:

  • 二次性多血症:エリスロポエチン濃度が高め
  • 真性多血症:エリスロポエチン濃度が低め〜正常範囲

JAK2遺伝子変異の検査

  • 血液検査で実施可能
  • 95%以上の真性多血症患者さんでJAK2変異を検出

確定診断のための検査

  • 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
  • 画像検査
    • 胸部CT検査
    • 腹部CT検査
    • 心エコー検査
  • 睡眠ポリグラフ検査(睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合)

詳しい検査や専門的な治療が必要な場合は、血液内科への紹介となることがあります。真性多血症などの血液疾患は血液内科の専門領域です。

📋 8. 多血症の種類と診断

多血症は、その原因によっていくつかの種類に分類されます。正確な診断を受けることで、適切な治療方針を立てることができます。

💧 相対的多血症(見かけ上の多血症)

相対的多血症は、実際には赤血球の総量は増えていないものの、血漿量の減少によって見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。

診断のポイント:

  • 血液検査で赤血球数やヘマトクリット値が高い
  • 総血液量は変わっていない
  • 水分補給をして再検査を行うと数値が正常化することが多い

ストレス多血症(ガイスベック症候群)は相対的多血症の一種で、以下を背景に発症:

  • 慢性的なストレス
  • 高血圧
  • 肥満
  • 喫煙
  • 過度の飲酒

🔄 二次性多血症

二次性多血症は、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している状態です。体内の酸素不足を補おうとして赤血球の産生が亢進することが主な原因です。

診断のポイント:

  • エリスロポエチン濃度が高い
  • 何らかの原因で慢性的な低酸素状態が続いている
  • 原因疾患の特定が重要

原因検索のための問診・検査:

  • 喫煙歴
  • 睡眠時の無呼吸の有無
  • 肺疾患や心疾患の既往
  • 肺機能検査
  • 心エコー検査
  • 腹部CT検査(腎臓や肝臓の腫瘍の有無を確認)

🧬 真性多血症

真性多血症は、骨髄の造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球が過剰に産生される病気です。慢性骨髄増殖性腫瘍に分類されます。

2016年のWHO分類による真性多血症の診断基準

大基準:

  1. ヘモグロビン値が男性で16.5g/dL超、女性で16.0g/dL超、またはヘマトクリット値が男性で49%超、女性で48%超
  2. 骨髄生検で三系統(赤血球系、白血球系、血小板系)の血球増加を伴う過形成髄
  3. JAK2 V617F変異またはJAK2エクソン12変異が存在すること

小基準:

  • 血清エリスロポエチン値が正常範囲以下であること

診断条件:

  • 大基準を3つすべて満たす
  • または大基準の最初の2つと小基準を満たす

💊 9. 治療方法について

多血症の治療は、その原因によって大きく異なります。相対的多血症と二次性多血症は原因の除去や基礎疾患の治療が中心となりますが、真性多血症では血栓症の予防を目的とした積極的な治療が必要となります。

💧 相対的多血症の治療

脱水が原因の場合

  • 適切な水分補給(一日1〜1.5リットルを目安)
  • こまめな水分摂取
  • カフェインやアルコールだけでなく、水やお茶も併せて摂取

ストレス多血症の場合

  • 禁煙
  • 節酒
  • 適度な運動
  • ストレス管理
  • 減量
  • 高血圧、脂質異常症、糖尿病などの合併症治療

🔄 二次性多血症の治療

二次性多血症では、原因となっている基礎疾患の治療が最優先です。

喫煙が原因の場合

  • 禁煙が必要
  • 一酸化炭素ヘモグロビンが減少
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合

  • CPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療
  • 睡眠中に鼻や口からゆるやかに空気を送り込む装置
  • 気道の閉塞を防いで無呼吸を改善
  • 肥満がある場合は減量も重要

その他の疾患が原因の場合

  • 肺疾患・心疾患:それぞれの疾患に対する治療
  • 酸素療法が必要になることもある
  • 治療が困難な場合:瀉血療法を検討

🧬 真性多血症の治療

真性多血症の治療目標は、血栓症の予防と症状の改善です。ヘマトクリット値を45%未満にコントロールすることが推奨されています。

瀉血療法

治療の中心となるのは瀉血療法です。

  • 献血と同じ方法で静脈から血液を抜き取る
  • 1回に200〜500mLの血液を抜き取る
  • 週に1〜2回程度のペース
  • 高齢者や心血管疾患患者:1回100〜200mLに減量して頻回実施
  • 体内の鉄分も除去し、赤血球産生を抑制する効果もある

薬物療法

低用量アスピリン(75〜100mg/日):

  • 血栓症の予防
  • 血小板の働きを抑制
  • 出血リスクがある場合は使用を控える

細胞減少療法(血栓症リスクが高い患者):

  • 60歳以上の方
  • 血栓症の既往がある方

第一選択薬:ヒドロキシウレア(ハイドレア)

  • 骨髄での血球産生を抑制
  • 比較的副作用が少ない
  • 長期使用による二次発がんのリスクが完全には否定されていない

JAK2阻害薬:ルキソリチニブ(ジャカビ)

  • ヒドロキシウレアが効果不十分・副作用で使用不可の場合
  • JAK2の異常な活性化を抑制
  • 血球数の正常化
  • 脾腫の縮小
  • 全身症状の改善

🌱 10. 日常生活での予防と改善方法

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、日常生活でできる予防・改善方法がいくつかあります。特に相対的多血症やストレス多血症の場合は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することも少なくありません。

💧 十分な水分摂取を心がける

脱水はヘマトクリット値を上昇させる最も一般的な原因です。

水分摂取のポイント:

  • 一日を通してこまめに水分を摂取
  • 目安:食事以外に1日1〜1.5リットル
  • 少量をこまめに摂取(一度に大量摂取は避ける)

タイミング:

  • 起床時
  • 食事の前後
  • 入浴の前後
  • 就寝前

注意点:

  • カフェインを含む飲み物(コーヒー、緑茶)は利尿作用がある
  • カフェインを含まない水や麦茶も併せて摂取
  • アルコールも利尿作用が強いため、飲酒後は必ず水で水分補給
  • 夜間のトイレが気になっても、夕方までは積極的に水分摂取

🚭 禁煙する

喫煙は多血症の最も多い原因のひとつであり、禁煙は効果的な改善策です。

禁煙の効果:

  • 一酸化炭素がヘモグロビンと結合することがなくなる
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制
  • ヘマトクリット値の低下が期待できる

その他の健康効果:

  • 肺がんリスクの低下
  • 心筋梗塞リスクの低下
  • 脳卒中リスクの低下
  • COPDリスクの低下

自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診して専門的なサポートを受けることをおすすめします。

🏃 適度な運動を行う

ウォーキングなどの有酸素運動は、全身の血流を促進し、血液の循環を改善する効果があります。

運動の効果:

  • 血流がよくなることで血液の粘稠度が下がる
  • 血栓ができにくくなる
  • 肥満の解消

運動の目安:

  • 週に3〜5回
  • 1回30分程度
  • 激しい運動は脱水を招くため避ける
  • 運動中はこまめに水分補給

肥満は睡眠時無呼吸症候群やストレス多血症のリスク要因となるため、適正体重を維持することが多血症の予防・改善に役立ちます。

🍽️ 食事に気をつける

ヘマトクリット値が高い場合、食事面でも注意が必要です。

控えめにすべき食材

  • 鉄分を多く含む食材(過剰摂取は避ける)
    • ほうれん草
    • レバー
    • 牛肉
    • しじみ
  • 鉄分のサプリメント(医師に相談のうえで中止を検討)
  • 脂質の多い食事(血液をドロドロにしやすい)
    • 揚げ物
    • 脂っこい肉料理
  • プリン体を多く含む食品
    • ビールの酵母
    • レバー
    • 干物

積極的に摂取すべき食材

  • バランスの良い食事
  • 野菜や果物

😌 ストレス管理を心がける

慢性的なストレスはストレス多血症の原因となります。

ストレス管理のポイント:

  • 自分なりのストレス解消法を見つける
  • 定期的にリフレッシュする
  • 十分な睡眠を確保
  • 毎日同じ時間に就寝・起床する習慣
  • 質の良い睡眠を心がける

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • いびきがひどい
  • 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
  • 日中の眠気がひどい

これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。

🛁 入浴時の注意点

入浴は脱水の原因になりやすいため注意が必要です。

入浴時の注意点:

  • 入浴前に水分を摂取
  • 長時間の入浴を避ける
  • 熱すぎるお湯への入浴を避ける
  • 適度な温度と時間を心がける

真性多血症の方で入浴後のかゆみがある場合:

  • お湯の温度をぬるめにする
  • 体を洗うときは皮膚を強くこすらず優しく洗う

🏥 11. 病院を受診する目安

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、どのタイミングで病院を受診すべきでしょうか。以下に目安をまとめます。

必ず受診すべき場合

健康診断で以下の判定を受けた場合:

  • 「要受診」
  • 「要精密検査」
  • 「要再検査」

特に初めてヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、原因を特定するための検査が必要です。

早めに受診することをおすすめする症状

  • 頭痛やめまいが続く
  • 顔や手足が赤くなっている
  • 疲労感や息切れがある
  • 入浴後にかゆみがある
  • 高血圧を指摘されている

これらの症状は多血症に伴って現れることがあり、適切な治療が必要なサインである可能性があります。

緊急受診が必要な症状(すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶ)

脳梗塞や脳出血の症状の可能性:

  • 突然の激しい頭痛
  • 手足のしびれや麻痺
  • ろれつが回らない
  • 意識がもうろうとする

心筋梗塞や肺塞栓症の症状の可能性:

  • 胸を締め付けられるような痛み
  • 呼吸困難
  • 冷や汗

多血症は放置すると血栓症のリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要です。健康診断で異常を指摘された場合は、自己判断で様子を見るのではなく、まずは医療機関で相談するようにしましょう。

🏥 11. 病院を受診する目安

Q. ヘマトクリット値が高い場合の日常的な改善方法は?

ヘマトクリット値が高い場合、1日1〜1.5リットルを目安にこまめな水分補給を行うことが基本です。また、禁煙・週3〜5回30分程度の有酸素運動・バランスの良い食事・ストレス管理も有効です。特に相対的多血症やストレス多血症は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

📝 12. まとめ

ヘマトクリット値が高いということは、血液中の赤血球の割合が多く、血液が濃い状態であることを意味します。この状態は「多血症」と呼ばれ、原因によって以下に分類されます:

  • 相対的多血症
  • 二次性多血症
  • 真性多血症

各種多血症の特徴と治療

相対的多血症:脱水やストレスによって起こる見かけ上の多血であり、水分補給や生活習慣の改善で改善することが多い

二次性多血症:喫煙や睡眠時無呼吸症候群などが原因で起こり、原因疾患の治療によって改善が期待できる

真性多血症:骨髄の遺伝子異常によって起こる血液疾患であり、瀉血療法や薬物療法による治療が必要

重要なリスク

多血症を放置すると、血液の粘稠度が高まり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な血栓症を引き起こすリスクがあります。健康診断でヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。

日常生活での予防・改善方法

以下を心がけることで、多血症の予防・改善につなげることができます:

  • 十分な水分摂取
  • 禁煙
  • 適度な運動
  • バランスの良い食事
  • ストレス管理

気になる症状がある場合や、健康診断で再検査を勧められた場合は、お早めにご相談ください。

ヘマトクリット値が高い」と指摘されて、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ヘマトクリットという言葉自体、日常生活ではあまり耳にしない専門用語であるため、それが何を意味するのか、高いとどのような問題があるのかがわかりにくいかもしれません。

この記事では、ヘマトクリット値が高い場合に考えられる原因や症状、放置した場合のリスク、そして日常生活でできる改善方法について、わかりやすく解説していきます。健康診断の結果が気になる方、再検査を勧められた方はぜひ参考にしてください。

📖 目次

  1. ヘマトクリットとは何か
  2. ヘマトクリット値の基準値について
  3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か
  4. ヘマトクリット値が高くなる原因
  5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状
  6. 放置した場合のリスクと合併症
  7. 検査方法と受診すべき診療科
  8. 多血症の種類と診断
  9. 治療方法について
  10. 日常生活での予防と改善方法
  11. 病院を受診する目安
  12. まとめ

🩸 1. ヘマトクリットとは何か

ヘマトクリットとは、血液中に赤血球が占める割合をパーセンテージ(%)で表した数値のことです。「ヘマト」は血液、「クリット」は分離を意味しており、血液を遠心分離器にかけて測定することからこの名前がついています。

血液は大きく分けて、固形成分である「血球」と、液体成分である「血漿(けっしょう)」に分けられます。

血球には以下が含まれます:

  • 赤血球(最も多くを占める)
  • 白血球
  • 血小板

ヘマトクリット値は、この血液全体に対する赤血球の容積の割合を示しています。

簡単に言えば、ヘマトクリット値は「血液の濃さ」を表す指標といえます。この数値が高ければ血液は濃くドロドロした状態であり、低ければ血液は薄くサラサラした状態であることを意味します。

赤血球は体中に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質が肺で酸素と結合し、全身の組織に酸素を届けています。そのため、赤血球の量は体の機能を維持するうえで非常に重要であり、多すぎても少なすぎても問題が生じます。

健康診断の血液検査では、赤血球数、ヘモグロビン濃度とともにヘマトクリット値も測定されており、これら3つの指標を組み合わせて貧血や多血症の診断に活用されています。

📊 2. ヘマトクリット値の基準値について

ヘマトクリット値の基準値は、性別や年齢、検査機関によって若干異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、成人の基準値として以下の数値が示されています。

  • 男性の基準値:40〜50%程度
  • 女性の基準値:34〜45%程度

男性の方が女性よりも高い傾向にありますが、これは女性は月経によって定期的に血液が失われるため、相対的に赤血球の割合が低くなりやすいことが理由のひとつです。

また、一般的な医療機関では以下のような基準値が用いられることが多いです。

男性の場合:
・正常範囲:38.5%〜48.9%
高値:52.9%以上

女性の場合:
・正常範囲:35.5%〜43.9%
高値:47.0%以上

一方、世界保健機関(WHO)による多血症の診断基準では、より厳格な数値が設定されています。

  • 男性:ヘマトクリット値が49%を超える場合に多血症が疑われる
  • 女性:ヘマトクリット値が48%を超える場合に多血症が疑われる

なお、ヘマトクリット値は測定するタイミングによっても変動します。朝、昼、夜で数値が異なることがありますし、採血前の飲水制限の影響を受けることもあります。健康診断では採血前に食事や水分を控えるよう指示されることが多いため、軽い脱水状態となり、ヘマトクリット値が実際よりもやや高めに出ることがあります。

🔍 3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か

ヘマトクリット値が基準値よりも高いということは、血液中の赤血球の割合が多くなっている状態を意味します。これは一般的に「血液が濃い」「血液がドロドロしている」と表現されることがあります。この状態は医学的には「多血症」または「赤血球増加症」と呼ばれます。

血液が濃くなると、血液の粘稠度(粘り気)が高まります。粘り気の高い血液は血管の中をスムーズに流れにくくなるため、全身の血流が悪くなります。特に細い血管では血液が通過しにくくなり、さまざまな臓器への酸素や栄養の供給が低下する可能性があります。

また、血液がドロドロしていると、血管の中で血液が固まりやすくなります。これが血栓(血の塊)の形成につながり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患の原因となることがあります。

ただし、ヘマトクリット値が高いからといって、必ずしも深刻な病気があるとは限りません。一時的な脱水や生活習慣の影響で数値が上昇していることも多く、原因によっては生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

重要なのは、ヘマトクリット値が高いと指摘された場合に、その原因が何であるかを正しく把握することです。原因によって対処法が大きく異なるため、自己判断せずに医療機関で適切な検査を受けることが大切です。

⚠️ 4. ヘマトクリット値が高くなる原因

ヘマトクリット値が高くなる原因はさまざまであり、大きく分けて「相対的多血症」と「絶対的多血症」の2つに分類されます。

💧 相対的多血症

相対的多血症とは、実際に赤血球が増加しているわけではなく、血漿(血液の液体成分)が減少することで見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。血液中の水分が少なくなることで、相対的に赤血球の濃度が高く見えるのです。

相対的多血症の主な原因:

  • 脱水(最も多い原因)
    • 下痢や嘔吐
    • 発汗
    • 発熱
    • 水分摂取不足
  • 季節的要因
    • 夏場の熱中症
    • 秋から冬の乾燥した季節での脱水
    • マスク着用による渇きの自覚低下
  • ストレス多血症
    • 慢性的なストレス
    • 精神的緊張
    • 過度の飲酒・喫煙
    • 肥満
高桑康太 医師・当院治療責任者

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まず最も多いのは脱水による相対的多血症です。健康診断では朝食を抜いて採血することが多く、水分も控えがちになるため、実際よりも高く測定されることがよくあります。まずは十分な水分補給を行い、再検査を受けることをお勧めします。

ストレス多血症と呼ばれる状態も相対的多血症の一種です。働き盛りの中年男性に多くみられ、高血圧、高脂血症、高尿酸血症を伴うことが多いのが特徴です。

利尿作用のある飲み物の過剰摂取も脱水を招く原因となります:

  • コーヒー
  • 緑茶
  • その他カフェインを多く含む飲み物

🫁 絶対的多血症(二次性多血症)

絶対的多血症とは、実際に血液中の赤血球が増加している状態です。その中でも、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している場合を「二次性多血症」といいます。

二次性多血症の主な原因:

1. 喫煙(最も多い原因)

  • タバコの煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンと結合
  • 一酸化炭素とヘモグロビンの結合力は酸素の約200倍
  • 体内が酸素不足に陥り、赤血球の産生が増加

2. 睡眠時無呼吸症候群

  • 睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする
  • 慢性的な低酸素状態
  • 酸素不足を補おうとして赤血球が増加

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • 肥満気味
  • いびきが大きい
  • 日中の眠気がある
  • 家族から呼吸が止まっていると指摘されたことがある

3. その他の原因

  • 肺疾患(COPD、肺気腫など)
  • 心疾患(心不全、先天性心疾患など)
  • 高地での生活
  • 腎疾患
  • エリスロポエチン産生腫瘍(腎細胞がん、肝細胞がんなど)

🧬 絶対的多血症(真性多血症)

真性多血症は、骨髄で赤血球を作る造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、赤血球が異常に増殖する病気です。

真性多血症の特徴:

  • 骨髄増殖性腫瘍のひとつに分類
  • 10万人あたり年間2人程度が発症(比較的まれ)
  • 60歳前後に発症のピーク
  • 95%以上の症例でJAK2遺伝子の変異を認める

JAK2遺伝子の変異により、細胞増殖のシグナルが常に活性化された状態となり、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球がどんどん作られてしまいます。赤血球だけでなく、白血球や血小板も増加することがあります。

真性多血症は適切な治療を受ければ10年以上の生存が期待できる疾患ですが、放置すると血栓症のリスクが高まります。また、一部の患者さんでは長期経過の中で骨髄線維症や急性白血病に移行することがあるため、定期的な経過観察が必要です。

🤕 5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状

ヘマトクリット値が高い状態、すなわち多血症では、血液の粘稠度が増すことでさまざまな症状が現れることがあります。ただし、軽度の多血症では無症状のことも多く、健康診断で偶然発見されるケースも少なくありません。

多血症で現れやすい症状:

脳・神経症状

  • 頭痛
  • めまい・ふらつき
  • 耳鳴り
  • 視力障害
  • 思考力の低下

皮膚症状

  • 顔面の紅潮やほてり
  • 皮膚の赤み(特に顔や手足)
  • 入浴後のかゆみ(真性多血症に特徴的)

全身症状

  • 疲労感や脱力感
  • 息切れ(特に運動時)
  • 動悸

循環器症状

  • 高血圧
  • 血液がドロドロになることで心臓により強い力が必要

その他の症状

  • 痛風(高尿酸血症)
  • 脾臓の腫れ(脾腫)による腹部膨満感
  • 食欲低下
  • 発熱・寝汗・体重減少(真性多血症の場合)

入浴後のかゆみは真性多血症の特徴的な症状で、「aquagenic pruritus(アクアジェニック プルリタス)」と呼ばれます。温かいお湯に浸かることで誘発されるかゆみで、ヒスタミンなどの物質が関与していると考えられています。

⚡ 6. 放置した場合のリスクと合併症

ヘマトクリット値が高い状態を放置すると、さまざまな深刻な合併症を引き起こす可能性があります。最も注意すべきは血栓症です。

血栓症のリスク

血液がドロドロした状態が続くと、血管の中で血液が固まって血栓(血の塊)ができやすくなります。

主な血栓症:

  • 脳梗塞
    • 手足の麻痺やしびれ
    • 言葉が出にくくなる
    • 意識障害
  • 心筋梗塞
    • 胸を締め付けられるような激しい痛み
    • 息苦しさ
    • 冷や汗
    • 最悪の場合は心停止
  • 下肢深部静脈血栓症
    • 脚のむくみや痛み、腫れ
    • 血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
    • 突然の呼吸困難や胸痛
    • 最悪の場合は突然死

その他の合併症

高血圧の持続により:

  • 動脈硬化の進行
  • 血管が脆くなる
  • 脳出血のリスク増加

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合:

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 不整脈
  • 心不全
  • 日中の眠気による事故リスク

真性多血症の長期的リスク:

  • 骨髄線維症への移行(10〜15%程度)
  • 急性白血病への移行(1〜2.5%程度)

🔬 7. 検査方法と受診すべき診療科

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まずは再検査を受けることが大切です。一時的な脱水などが原因であれば、再検査で正常値に戻っていることもあります。

再検査の注意点

  • 検査前に十分な水分を摂取
  • 健康診断では朝食を抜いても、水分はしっかり摂る
  • 検査機関の指示に従う

受診すべき診療科

まず内科を受診しましょう。内科で以下の検査を行います:

  • 血液検査(血液全般の状態を調査)
    • 赤血球数
    • ヘモグロビン濃度
    • 白血球数
    • 血小板数
  • 脱水の有無を確認する検査
  • 他の臓器に異常がないかを調べる検査

原因特定のための検査

エリスロポエチン(赤血球産生ホルモン)の血中濃度測定:

  • 二次性多血症:エリスロポエチン濃度が高め
  • 真性多血症:エリスロポエチン濃度が低め〜正常範囲

JAK2遺伝子変異の検査

  • 血液検査で実施可能
  • 95%以上の真性多血症患者さんでJAK2変異を検出

確定診断のための検査

  • 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
  • 画像検査
    • 胸部CT検査
    • 腹部CT検査
    • 心エコー検査
  • 睡眠ポリグラフ検査(睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合)

詳しい検査や専門的な治療が必要な場合は、血液内科への紹介となることがあります。真性多血症などの血液疾患は血液内科の専門領域です。

📋 8. 多血症の種類と診断

多血症は、その原因によっていくつかの種類に分類されます。正確な診断を受けることで、適切な治療方針を立てることができます。

💧 相対的多血症(見かけ上の多血症)

相対的多血症は、実際には赤血球の総量は増えていないものの、血漿量の減少によって見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。

診断のポイント:

  • 血液検査で赤血球数やヘマトクリット値が高い
  • 総血液量は変わっていない
  • 水分補給をして再検査を行うと数値が正常化することが多い

ストレス多血症(ガイスベック症候群)は相対的多血症の一種で、以下を背景に発症:

  • 慢性的なストレス
  • 高血圧
  • 肥満
  • 喫煙
  • 過度の飲酒

🔄 二次性多血症

二次性多血症は、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している状態です。体内の酸素不足を補おうとして赤血球の産生が亢進することが主な原因です。

診断のポイント:

  • エリスロポエチン濃度が高い
  • 何らかの原因で慢性的な低酸素状態が続いている
  • 原因疾患の特定が重要

原因検索のための問診・検査:

  • 喫煙歴
  • 睡眠時の無呼吸の有無
  • 肺疾患や心疾患の既往
  • 肺機能検査
  • 心エコー検査
  • 腹部CT検査(腎臓や肝臓の腫瘍の有無を確認)

🧬 真性多血症

真性多血症は、骨髄の造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球が過剰に産生される病気です。慢性骨髄増殖性腫瘍に分類されます。

2016年のWHO分類による真性多血症の診断基準

大基準:

  1. ヘモグロビン値が男性で16.5g/dL超、女性で16.0g/dL超、またはヘマトクリット値が男性で49%超、女性で48%超
  2. 骨髄生検で三系統(赤血球系、白血球系、血小板系)の血球増加を伴う過形成髄
  3. JAK2 V617F変異またはJAK2エクソン12変異が存在すること

小基準:

  • 血清エリスロポエチン値が正常範囲以下であること

診断条件:

  • 大基準を3つすべて満たす
  • または大基準の最初の2つと小基準を満たす

💊 9. 治療方法について

多血症の治療は、その原因によって大きく異なります。相対的多血症と二次性多血症は原因の除去や基礎疾患の治療が中心となりますが、真性多血症では血栓症の予防を目的とした積極的な治療が必要となります。

💧 相対的多血症の治療

脱水が原因の場合

  • 適切な水分補給(一日1〜1.5リットルを目安)
  • こまめな水分摂取
  • カフェインやアルコールだけでなく、水やお茶も併せて摂取

ストレス多血症の場合

  • 禁煙
  • 節酒
  • 適度な運動
  • ストレス管理
  • 減量
  • 高血圧、脂質異常症、糖尿病などの合併症治療

🔄 二次性多血症の治療

二次性多血症では、原因となっている基礎疾患の治療が最優先です。

喫煙が原因の場合

  • 禁煙が必要
  • 一酸化炭素ヘモグロビンが減少
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合

  • CPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療
  • 睡眠中に鼻や口からゆるやかに空気を送り込む装置
  • 気道の閉塞を防いで無呼吸を改善
  • 肥満がある場合は減量も重要

その他の疾患が原因の場合

  • 肺疾患・心疾患:それぞれの疾患に対する治療
  • 酸素療法が必要になることもある
  • 治療が困難な場合:瀉血療法を検討

🧬 真性多血症の治療

真性多血症の治療目標は、血栓症の予防と症状の改善です。ヘマトクリット値を45%未満にコントロールすることが推奨されています。

瀉血療法

治療の中心となるのは瀉血療法です。

  • 献血と同じ方法で静脈から血液を抜き取る
  • 1回に200〜500mLの血液を抜き取る
  • 週に1〜2回程度のペース
  • 高齢者や心血管疾患患者:1回100〜200mLに減量して頻回実施
  • 体内の鉄分も除去し、赤血球産生を抑制する効果もある

薬物療法

低用量アスピリン(75〜100mg/日):

  • 血栓症の予防
  • 血小板の働きを抑制
  • 出血リスクがある場合は使用を控える

細胞減少療法(血栓症リスクが高い患者):

  • 60歳以上の方
  • 血栓症の既往がある方

第一選択薬:ヒドロキシウレア(ハイドレア)

  • 骨髄での血球産生を抑制
  • 比較的副作用が少ない
  • 長期使用による二次発がんのリスクが完全には否定されていない

JAK2阻害薬:ルキソリチニブ(ジャカビ)

  • ヒドロキシウレアが効果不十分・副作用で使用不可の場合
  • JAK2の異常な活性化を抑制
  • 血球数の正常化
  • 脾腫の縮小
  • 全身症状の改善

🌱 10. 日常生活での予防と改善方法

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、日常生活でできる予防・改善方法がいくつかあります。特に相対的多血症やストレス多血症の場合は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することも少なくありません。

💧 十分な水分摂取を心がける

脱水はヘマトクリット値を上昇させる最も一般的な原因です。

水分摂取のポイント:

  • 一日を通してこまめに水分を摂取
  • 目安:食事以外に1日1〜1.5リットル
  • 少量をこまめに摂取(一度に大量摂取は避ける)

タイミング:

  • 起床時
  • 食事の前後
  • 入浴の前後
  • 就寝前

注意点:

  • カフェインを含む飲み物(コーヒー、緑茶)は利尿作用がある
  • カフェインを含まない水や麦茶も併せて摂取
  • アルコールも利尿作用が強いため、飲酒後は必ず水で水分補給
  • 夜間のトイレが気になっても、夕方までは積極的に水分摂取

🚭 禁煙する

喫煙は多血症の最も多い原因のひとつであり、禁煙は効果的な改善策です。

禁煙の効果:

  • 一酸化炭素がヘモグロビンと結合することがなくなる
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制
  • ヘマトクリット値の低下が期待できる

その他の健康効果:

  • 肺がんリスクの低下
  • 心筋梗塞リスクの低下
  • 脳卒中リスクの低下
  • COPDリスクの低下

自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診して専門的なサポートを受けることをおすすめします。

🏃 適度な運動を行う

ウォーキングなどの有酸素運動は、全身の血流を促進し、血液の循環を改善する効果があります。

運動の効果:

  • 血流がよくなることで血液の粘稠度が下がる
  • 血栓ができにくくなる
  • 肥満の解消

運動の目安:

  • 週に3〜5回
  • 1回30分程度
  • 激しい運動は脱水を招くため避ける
  • 運動中はこまめに水分補給

肥満は睡眠時無呼吸症候群やストレス多血症のリスク要因となるため、適正体重を維持することが多血症の予防・改善に役立ちます。

🍽️ 食事に気をつける

ヘマトクリット値が高い場合、食事面でも注意が必要です。

控えめにすべき食材

  • 鉄分を多く含む食材(過剰摂取は避ける)
    • ほうれん草
    • レバー
    • 牛肉
    • しじみ
  • 鉄分のサプリメント(医師に相談のうえで中止を検討)
  • 脂質の多い食事(血液をドロドロにしやすい)
    • 揚げ物
    • 脂っこい肉料理
  • プリン体を多く含む食品
    • ビールの酵母
    • レバー
    • 干物

積極的に摂取すべき食材

  • バランスの良い食事
  • 野菜や果物

😌 ストレス管理を心がける

慢性的なストレスはストレス多血症の原因となります。

ストレス管理のポイント:

  • 自分なりのストレス解消法を見つける
  • 定期的にリフレッシュする
  • 十分な睡眠を確保
  • 毎日同じ時間に就寝・起床する習慣
  • 質の良い睡眠を心がける

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • いびきがひどい
  • 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
  • 日中の眠気がひどい

これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。

🛁 入浴時の注意点

入浴は脱水の原因になりやすいため注意が必要です。

入浴時の注意点:

  • 入浴前に水分を摂取
  • 長時間の入浴を避ける
  • 熱すぎるお湯への入浴を避ける
  • 適度な温度と時間を心がける

真性多血症の方で入浴後のかゆみがある場合:

  • お湯の温度をぬるめにする
  • 体を洗うときは皮膚を強くこすらず優しく洗う

🏥 11. 病院を受診する目安

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、どのタイミングで病院を受診すべきでしょうか。以下に目安をまとめます。

必ず受診すべき場合

健康診断で以下の判定を受けた場合:

  • 「要受診」
  • 「要精密検査」
  • 「要再検査」

特に初めてヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、原因を特定するための検査が必要です。

早めに受診することをおすすめする症状

  • 頭痛やめまいが続く
  • 顔や手足が赤くなっている
  • 疲労感や息切れがある
  • 入浴後にかゆみがある
  • 高血圧を指摘されている

これらの症状は多血症に伴って現れることがあり、適切な治療が必要なサインである可能性があります。

緊急受診が必要な症状(すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶ)

脳梗塞や脳出血の症状の可能性:

  • 突然の激しい頭痛
  • 手足のしびれや麻痺
  • ろれつが回らない
  • 意識がもうろうとする

心筋梗塞や肺塞栓症の症状の可能性:

  • 胸を締め付けられるような痛み
  • 呼吸困難
  • 冷や汗

多血症は放置すると血栓症のリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要です。健康診断で異常を指摘された場合は、自己判断で様子を見るのではなく、まずは医療機関で相談するようにしましょう。

🏥 11. 病院を受診する目安

📝 12. まとめ

ヘマトクリット値が高いということは、血液中の赤血球の割合が多く、血液が濃い状態であることを意味します。この状態は「多血症」と呼ばれ、原因によって以下に分類されます:

  • 相対的多血症
  • 二次性多血症
  • 真性多血症

各種多血症の特徴と治療

相対的多血症:脱水やストレスによって起こる見かけ上の多血であり、水分補給や生活習慣の改善で改善することが多い

二次性多血症:喫煙や睡眠時無呼吸症候群などが原因で起こり、原因疾患の治療によって改善が期待できる

真性多血症:骨髄の遺伝子異常によって起こる血液疾患であり、瀉血療法や薬物療法による治療が必要

重要なリスク

多血症を放置すると、血液の粘稠度が高まり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な血栓症を引き起こすリスクがあります。健康診断でヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。

日常生活での予防・改善方法

以下を心がけることで、多血症の予防・改善につなげることができます:

  • 十分な水分摂取
  • 禁煙
  • 適度な運動
  • バランスの良い食事
  • ストレス管理

気になる症状がある場合や、健康診断で再検査を勧められた場合は、お早めにご相談ください。

ヘマトクリット値が高い」と指摘されて、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ヘマトクリットという言葉自体、日常生活ではあまり耳にしない専門用語であるため、それが何を意味するのか、高いとどのような問題があるのかがわかりにくいかもしれません。

この記事では、ヘマトクリット値が高い場合に考えられる原因や症状、放置した場合のリスク、そして日常生活でできる改善方法について、わかりやすく解説していきます。健康診断の結果が気になる方、再検査を勧められた方はぜひ参考にしてください。

Q. 多血症を放置するとどのようなリスクがありますか?

多血症を放置すると、血液の粘稠度が増して血栓が形成されやすくなります。その結果、脳梗塞・心筋梗塞・肺塞栓症などの重篤な血栓症を引き起こすリスクが高まります。真性多血症では長期的に骨髄線維症や急性白血病へ移行する可能性もあります。

📖 目次

  1. ヘマトクリットとは何か
  2. ヘマトクリット値の基準値について
  3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か
  4. ヘマトクリット値が高くなる原因
  5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状
  6. 放置した場合のリスクと合併症
  7. 検査方法と受診すべき診療科
  8. 多血症の種類と診断
  9. 治療方法について
  10. 日常生活での予防と改善方法
  11. 病院を受診する目安
  12. まとめ

🩸 1. ヘマトクリットとは何か

ヘマトクリットとは、血液中に赤血球が占める割合をパーセンテージ(%)で表した数値のことです。「ヘマト」は血液、「クリット」は分離を意味しており、血液を遠心分離器にかけて測定することからこの名前がついています。

血液は大きく分けて、固形成分である「血球」と、液体成分である「血漿(けっしょう)」に分けられます。

血球には以下が含まれます:

  • 赤血球(最も多くを占める)
  • 白血球
  • 血小板

ヘマトクリット値は、この血液全体に対する赤血球の容積の割合を示しています。

簡単に言えば、ヘマトクリット値は「血液の濃さ」を表す指標といえます。この数値が高ければ血液は濃くドロドロした状態であり、低ければ血液は薄くサラサラした状態であることを意味します。

赤血球は体中に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質が肺で酸素と結合し、全身の組織に酸素を届けています。そのため、赤血球の量は体の機能を維持するうえで非常に重要であり、多すぎても少なすぎても問題が生じます。

健康診断の血液検査では、赤血球数、ヘモグロビン濃度とともにヘマトクリット値も測定されており、これら3つの指標を組み合わせて貧血や多血症の診断に活用されています。

📊 2. ヘマトクリット値の基準値について

ヘマトクリット値の基準値は、性別や年齢、検査機関によって若干異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、成人の基準値として以下の数値が示されています。

  • 男性の基準値:40〜50%程度
  • 女性の基準値:34〜45%程度

男性の方が女性よりも高い傾向にありますが、これは女性は月経によって定期的に血液が失われるため、相対的に赤血球の割合が低くなりやすいことが理由のひとつです。

また、一般的な医療機関では以下のような基準値が用いられることが多いです。

男性の場合:
・正常範囲:38.5%〜48.9%
高値:52.9%以上

女性の場合:
・正常範囲:35.5%〜43.9%
高値:47.0%以上

一方、世界保健機関(WHO)による多血症の診断基準では、より厳格な数値が設定されています。

  • 男性:ヘマトクリット値が49%を超える場合に多血症が疑われる
  • 女性:ヘマトクリット値が48%を超える場合に多血症が疑われる

なお、ヘマトクリット値は測定するタイミングによっても変動します。朝、昼、夜で数値が異なることがありますし、採血前の飲水制限の影響を受けることもあります。健康診断では採血前に食事や水分を控えるよう指示されることが多いため、軽い脱水状態となり、ヘマトクリット値が実際よりもやや高めに出ることがあります。

🔍 3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か

ヘマトクリット値が基準値よりも高いということは、血液中の赤血球の割合が多くなっている状態を意味します。これは一般的に「血液が濃い」「血液がドロドロしている」と表現されることがあります。この状態は医学的には「多血症」または「赤血球増加症」と呼ばれます。

血液が濃くなると、血液の粘稠度(粘り気)が高まります。粘り気の高い血液は血管の中をスムーズに流れにくくなるため、全身の血流が悪くなります。特に細い血管では血液が通過しにくくなり、さまざまな臓器への酸素や栄養の供給が低下する可能性があります。

また、血液がドロドロしていると、血管の中で血液が固まりやすくなります。これが血栓(血の塊)の形成につながり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患の原因となることがあります。

ただし、ヘマトクリット値が高いからといって、必ずしも深刻な病気があるとは限りません。一時的な脱水や生活習慣の影響で数値が上昇していることも多く、原因によっては生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

重要なのは、ヘマトクリット値が高いと指摘された場合に、その原因が何であるかを正しく把握することです。原因によって対処法が大きく異なるため、自己判断せずに医療機関で適切な検査を受けることが大切です。

⚠️ 4. ヘマトクリット値が高くなる原因

ヘマトクリット値が高くなる原因はさまざまであり、大きく分けて「相対的多血症」と「絶対的多血症」の2つに分類されます。

💧 相対的多血症

相対的多血症とは、実際に赤血球が増加しているわけではなく、血漿(血液の液体成分)が減少することで見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。血液中の水分が少なくなることで、相対的に赤血球の濃度が高く見えるのです。

相対的多血症の主な原因:

  • 脱水(最も多い原因)
    • 下痢や嘔吐
    • 発汗
    • 発熱
    • 水分摂取不足
  • 季節的要因
    • 夏場の熱中症
    • 秋から冬の乾燥した季節での脱水
    • マスク着用による渇きの自覚低下
  • ストレス多血症
    • 慢性的なストレス
    • 精神的緊張
    • 過度の飲酒・喫煙
    • 肥満
高桑康太 医師・当院治療責任者

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まず最も多いのは脱水による相対的多血症です。健康診断では朝食を抜いて採血することが多く、水分も控えがちになるため、実際よりも高く測定されることがよくあります。まずは十分な水分補給を行い、再検査を受けることをお勧めします。

ストレス多血症と呼ばれる状態も相対的多血症の一種です。働き盛りの中年男性に多くみられ、高血圧、高脂血症、高尿酸血症を伴うことが多いのが特徴です。

利尿作用のある飲み物の過剰摂取も脱水を招く原因となります:

  • コーヒー
  • 緑茶
  • その他カフェインを多く含む飲み物

🫁 絶対的多血症(二次性多血症)

絶対的多血症とは、実際に血液中の赤血球が増加している状態です。その中でも、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している場合を「二次性多血症」といいます。

二次性多血症の主な原因:

1. 喫煙(最も多い原因)

  • タバコの煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンと結合
  • 一酸化炭素とヘモグロビンの結合力は酸素の約200倍
  • 体内が酸素不足に陥り、赤血球の産生が増加

2. 睡眠時無呼吸症候群

  • 睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする
  • 慢性的な低酸素状態
  • 酸素不足を補おうとして赤血球が増加

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • 肥満気味
  • いびきが大きい
  • 日中の眠気がある
  • 家族から呼吸が止まっていると指摘されたことがある

3. その他の原因

  • 肺疾患(COPD、肺気腫など)
  • 心疾患(心不全、先天性心疾患など)
  • 高地での生活
  • 腎疾患
  • エリスロポエチン産生腫瘍(腎細胞がん、肝細胞がんなど)

🧬 絶対的多血症(真性多血症)

真性多血症は、骨髄で赤血球を作る造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、赤血球が異常に増殖する病気です。

真性多血症の特徴:

  • 骨髄増殖性腫瘍のひとつに分類
  • 10万人あたり年間2人程度が発症(比較的まれ)
  • 60歳前後に発症のピーク
  • 95%以上の症例でJAK2遺伝子の変異を認める

JAK2遺伝子の変異により、細胞増殖のシグナルが常に活性化された状態となり、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球がどんどん作られてしまいます。赤血球だけでなく、白血球や血小板も増加することがあります。

真性多血症は適切な治療を受ければ10年以上の生存が期待できる疾患ですが、放置すると血栓症のリスクが高まります。また、一部の患者さんでは長期経過の中で骨髄線維症や急性白血病に移行することがあるため、定期的な経過観察が必要です。

🤕 5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状

ヘマトクリット値が高い状態、すなわち多血症では、血液の粘稠度が増すことでさまざまな症状が現れることがあります。ただし、軽度の多血症では無症状のことも多く、健康診断で偶然発見されるケースも少なくありません。

多血症で現れやすい症状:

脳・神経症状

  • 頭痛
  • めまい・ふらつき
  • 耳鳴り
  • 視力障害
  • 思考力の低下

皮膚症状

  • 顔面の紅潮やほてり
  • 皮膚の赤み(特に顔や手足)
  • 入浴後のかゆみ(真性多血症に特徴的)

全身症状

  • 疲労感や脱力感
  • 息切れ(特に運動時)
  • 動悸

循環器症状

  • 高血圧
  • 血液がドロドロになることで心臓により強い力が必要

その他の症状

  • 痛風(高尿酸血症)
  • 脾臓の腫れ(脾腫)による腹部膨満感
  • 食欲低下
  • 発熱・寝汗・体重減少(真性多血症の場合)

入浴後のかゆみは真性多血症の特徴的な症状で、「aquagenic pruritus(アクアジェニック プルリタス)」と呼ばれます。温かいお湯に浸かることで誘発されるかゆみで、ヒスタミンなどの物質が関与していると考えられています。

⚡ 6. 放置した場合のリスクと合併症

ヘマトクリット値が高い状態を放置すると、さまざまな深刻な合併症を引き起こす可能性があります。最も注意すべきは血栓症です。

血栓症のリスク

血液がドロドロした状態が続くと、血管の中で血液が固まって血栓(血の塊)ができやすくなります。

主な血栓症:

  • 脳梗塞
    • 手足の麻痺やしびれ
    • 言葉が出にくくなる
    • 意識障害
  • 心筋梗塞
    • 胸を締め付けられるような激しい痛み
    • 息苦しさ
    • 冷や汗
    • 最悪の場合は心停止
  • 下肢深部静脈血栓症
    • 脚のむくみや痛み、腫れ
    • 血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
    • 突然の呼吸困難や胸痛
    • 最悪の場合は突然死

その他の合併症

高血圧の持続により:

  • 動脈硬化の進行
  • 血管が脆くなる
  • 脳出血のリスク増加

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合:

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 不整脈
  • 心不全
  • 日中の眠気による事故リスク

真性多血症の長期的リスク:

  • 骨髄線維症への移行(10〜15%程度)
  • 急性白血病への移行(1〜2.5%程度)

🔬 7. 検査方法と受診すべき診療科

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まずは再検査を受けることが大切です。一時的な脱水などが原因であれば、再検査で正常値に戻っていることもあります。

再検査の注意点

  • 検査前に十分な水分を摂取
  • 健康診断では朝食を抜いても、水分はしっかり摂る
  • 検査機関の指示に従う

受診すべき診療科

まず内科を受診しましょう。内科で以下の検査を行います:

  • 血液検査(血液全般の状態を調査)
    • 赤血球数
    • ヘモグロビン濃度
    • 白血球数
    • 血小板数
  • 脱水の有無を確認する検査
  • 他の臓器に異常がないかを調べる検査

原因特定のための検査

エリスロポエチン(赤血球産生ホルモン)の血中濃度測定:

  • 二次性多血症:エリスロポエチン濃度が高め
  • 真性多血症:エリスロポエチン濃度が低め〜正常範囲

JAK2遺伝子変異の検査

  • 血液検査で実施可能
  • 95%以上の真性多血症患者さんでJAK2変異を検出

確定診断のための検査

  • 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
  • 画像検査
    • 胸部CT検査
    • 腹部CT検査
    • 心エコー検査
  • 睡眠ポリグラフ検査(睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合)

詳しい検査や専門的な治療が必要な場合は、血液内科への紹介となることがあります。真性多血症などの血液疾患は血液内科の専門領域です。

📋 8. 多血症の種類と診断

多血症は、その原因によっていくつかの種類に分類されます。正確な診断を受けることで、適切な治療方針を立てることができます。

💧 相対的多血症(見かけ上の多血症)

相対的多血症は、実際には赤血球の総量は増えていないものの、血漿量の減少によって見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。

診断のポイント:

  • 血液検査で赤血球数やヘマトクリット値が高い
  • 総血液量は変わっていない
  • 水分補給をして再検査を行うと数値が正常化することが多い

ストレス多血症(ガイスベック症候群)は相対的多血症の一種で、以下を背景に発症:

  • 慢性的なストレス
  • 高血圧
  • 肥満
  • 喫煙
  • 過度の飲酒

🔄 二次性多血症

二次性多血症は、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している状態です。体内の酸素不足を補おうとして赤血球の産生が亢進することが主な原因です。

診断のポイント:

  • エリスロポエチン濃度が高い
  • 何らかの原因で慢性的な低酸素状態が続いている
  • 原因疾患の特定が重要

原因検索のための問診・検査:

  • 喫煙歴
  • 睡眠時の無呼吸の有無
  • 肺疾患や心疾患の既往
  • 肺機能検査
  • 心エコー検査
  • 腹部CT検査(腎臓や肝臓の腫瘍の有無を確認)

🧬 真性多血症

真性多血症は、骨髄の造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球が過剰に産生される病気です。慢性骨髄増殖性腫瘍に分類されます。

2016年のWHO分類による真性多血症の診断基準

大基準:

  1. ヘモグロビン値が男性で16.5g/dL超、女性で16.0g/dL超、またはヘマトクリット値が男性で49%超、女性で48%超
  2. 骨髄生検で三系統(赤血球系、白血球系、血小板系)の血球増加を伴う過形成髄
  3. JAK2 V617F変異またはJAK2エクソン12変異が存在すること

小基準:

  • 血清エリスロポエチン値が正常範囲以下であること

診断条件:

  • 大基準を3つすべて満たす
  • または大基準の最初の2つと小基準を満たす

💊 9. 治療方法について

多血症の治療は、その原因によって大きく異なります。相対的多血症と二次性多血症は原因の除去や基礎疾患の治療が中心となりますが、真性多血症では血栓症の予防を目的とした積極的な治療が必要となります。

💧 相対的多血症の治療

脱水が原因の場合

  • 適切な水分補給(一日1〜1.5リットルを目安)
  • こまめな水分摂取
  • カフェインやアルコールだけでなく、水やお茶も併せて摂取

ストレス多血症の場合

  • 禁煙
  • 節酒
  • 適度な運動
  • ストレス管理
  • 減量
  • 高血圧、脂質異常症、糖尿病などの合併症治療

🔄 二次性多血症の治療

二次性多血症では、原因となっている基礎疾患の治療が最優先です。

喫煙が原因の場合

  • 禁煙が必要
  • 一酸化炭素ヘモグロビンが減少
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合

  • CPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療
  • 睡眠中に鼻や口からゆるやかに空気を送り込む装置
  • 気道の閉塞を防いで無呼吸を改善
  • 肥満がある場合は減量も重要

その他の疾患が原因の場合

  • 肺疾患・心疾患:それぞれの疾患に対する治療
  • 酸素療法が必要になることもある
  • 治療が困難な場合:瀉血療法を検討

🧬 真性多血症の治療

真性多血症の治療目標は、血栓症の予防と症状の改善です。ヘマトクリット値を45%未満にコントロールすることが推奨されています。

瀉血療法

治療の中心となるのは瀉血療法です。

  • 献血と同じ方法で静脈から血液を抜き取る
  • 1回に200〜500mLの血液を抜き取る
  • 週に1〜2回程度のペース
  • 高齢者や心血管疾患患者:1回100〜200mLに減量して頻回実施
  • 体内の鉄分も除去し、赤血球産生を抑制する効果もある

薬物療法

低用量アスピリン(75〜100mg/日):

  • 血栓症の予防
  • 血小板の働きを抑制
  • 出血リスクがある場合は使用を控える

細胞減少療法(血栓症リスクが高い患者):

  • 60歳以上の方
  • 血栓症の既往がある方

第一選択薬:ヒドロキシウレア(ハイドレア)

  • 骨髄での血球産生を抑制
  • 比較的副作用が少ない
  • 長期使用による二次発がんのリスクが完全には否定されていない

JAK2阻害薬:ルキソリチニブ(ジャカビ)

  • ヒドロキシウレアが効果不十分・副作用で使用不可の場合
  • JAK2の異常な活性化を抑制
  • 血球数の正常化
  • 脾腫の縮小
  • 全身症状の改善

🌱 10. 日常生活での予防と改善方法

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、日常生活でできる予防・改善方法がいくつかあります。特に相対的多血症やストレス多血症の場合は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することも少なくありません。

💧 十分な水分摂取を心がける

脱水はヘマトクリット値を上昇させる最も一般的な原因です。

水分摂取のポイント:

  • 一日を通してこまめに水分を摂取
  • 目安:食事以外に1日1〜1.5リットル
  • 少量をこまめに摂取(一度に大量摂取は避ける)

タイミング:

  • 起床時
  • 食事の前後
  • 入浴の前後
  • 就寝前

注意点:

  • カフェインを含む飲み物(コーヒー、緑茶)は利尿作用がある
  • カフェインを含まない水や麦茶も併せて摂取
  • アルコールも利尿作用が強いため、飲酒後は必ず水で水分補給
  • 夜間のトイレが気になっても、夕方までは積極的に水分摂取

🚭 禁煙する

喫煙は多血症の最も多い原因のひとつであり、禁煙は効果的な改善策です。

禁煙の効果:

  • 一酸化炭素がヘモグロビンと結合することがなくなる
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制
  • ヘマトクリット値の低下が期待できる

その他の健康効果:

  • 肺がんリスクの低下
  • 心筋梗塞リスクの低下
  • 脳卒中リスクの低下
  • COPDリスクの低下

自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診して専門的なサポートを受けることをおすすめします。

🏃 適度な運動を行う

ウォーキングなどの有酸素運動は、全身の血流を促進し、血液の循環を改善する効果があります。

運動の効果:

  • 血流がよくなることで血液の粘稠度が下がる
  • 血栓ができにくくなる
  • 肥満の解消

運動の目安:

  • 週に3〜5回
  • 1回30分程度
  • 激しい運動は脱水を招くため避ける
  • 運動中はこまめに水分補給

肥満は睡眠時無呼吸症候群やストレス多血症のリスク要因となるため、適正体重を維持することが多血症の予防・改善に役立ちます。

🍽️ 食事に気をつける

ヘマトクリット値が高い場合、食事面でも注意が必要です。

控えめにすべき食材

  • 鉄分を多く含む食材(過剰摂取は避ける)
    • ほうれん草
    • レバー
    • 牛肉
    • しじみ
  • 鉄分のサプリメント(医師に相談のうえで中止を検討)
  • 脂質の多い食事(血液をドロドロにしやすい)
    • 揚げ物
    • 脂っこい肉料理
  • プリン体を多く含む食品
    • ビールの酵母
    • レバー
    • 干物

積極的に摂取すべき食材

  • バランスの良い食事
  • 野菜や果物

😌 ストレス管理を心がける

慢性的なストレスはストレス多血症の原因となります。

ストレス管理のポイント:

  • 自分なりのストレス解消法を見つける
  • 定期的にリフレッシュする
  • 十分な睡眠を確保
  • 毎日同じ時間に就寝・起床する習慣
  • 質の良い睡眠を心がける

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • いびきがひどい
  • 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
  • 日中の眠気がひどい

これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。

🛁 入浴時の注意点

入浴は脱水の原因になりやすいため注意が必要です。

入浴時の注意点:

  • 入浴前に水分を摂取
  • 長時間の入浴を避ける
  • 熱すぎるお湯への入浴を避ける
  • 適度な温度と時間を心がける

真性多血症の方で入浴後のかゆみがある場合:

  • お湯の温度をぬるめにする
  • 体を洗うときは皮膚を強くこすらず優しく洗う

🏥 11. 病院を受診する目安

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、どのタイミングで病院を受診すべきでしょうか。以下に目安をまとめます。

必ず受診すべき場合

健康診断で以下の判定を受けた場合:

  • 「要受診」
  • 「要精密検査」
  • 「要再検査」

特に初めてヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、原因を特定するための検査が必要です。

早めに受診することをおすすめする症状

  • 頭痛やめまいが続く
  • 顔や手足が赤くなっている
  • 疲労感や息切れがある
  • 入浴後にかゆみがある
  • 高血圧を指摘されている

これらの症状は多血症に伴って現れることがあり、適切な治療が必要なサインである可能性があります。

緊急受診が必要な症状(すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶ)

脳梗塞や脳出血の症状の可能性:

  • 突然の激しい頭痛
  • 手足のしびれや麻痺
  • ろれつが回らない
  • 意識がもうろうとする

心筋梗塞や肺塞栓症の症状の可能性:

  • 胸を締め付けられるような痛み
  • 呼吸困難
  • 冷や汗

多血症は放置すると血栓症のリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要です。健康診断で異常を指摘された場合は、自己判断で様子を見るのではなく、まずは医療機関で相談するようにしましょう。

🏥 11. 病院を受診する目安

Q. ヘマトクリット値が高い場合の日常的な改善方法は?

ヘマトクリット値が高い場合、1日1〜1.5リットルを目安にこまめな水分補給を行うことが基本です。また、禁煙・週3〜5回30分程度の有酸素運動・バランスの良い食事・ストレス管理も有効です。特に相対的多血症やストレス多血症は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

📝 12. まとめ

ヘマトクリット値が高いということは、血液中の赤血球の割合が多く、血液が濃い状態であることを意味します。この状態は「多血症」と呼ばれ、原因によって以下に分類されます:

  • 相対的多血症
  • 二次性多血症
  • 真性多血症

各種多血症の特徴と治療

相対的多血症:脱水やストレスによって起こる見かけ上の多血であり、水分補給や生活習慣の改善で改善することが多い

二次性多血症:喫煙や睡眠時無呼吸症候群などが原因で起こり、原因疾患の治療によって改善が期待できる

真性多血症:骨髄の遺伝子異常によって起こる血液疾患であり、瀉血療法や薬物療法による治療が必要

重要なリスク

多血症を放置すると、血液の粘稠度が高まり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な血栓症を引き起こすリスクがあります。健康診断でヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。

日常生活での予防・改善方法

以下を心がけることで、多血症の予防・改善につなげることができます:

  • 十分な水分摂取
  • 禁煙
  • 適度な運動
  • バランスの良い食事
  • ストレス管理

気になる症状がある場合や、健康診断で再検査を勧められた場合は、お早めにご相談ください。

ヘマトクリット値が高い」と指摘されて、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ヘマトクリットという言葉自体、日常生活ではあまり耳にしない専門用語であるため、それが何を意味するのか、高いとどのような問題があるのかがわかりにくいかもしれません。

この記事では、ヘマトクリット値が高い場合に考えられる原因や症状、放置した場合のリスク、そして日常生活でできる改善方法について、わかりやすく解説していきます。健康診断の結果が気になる方、再検査を勧められた方はぜひ参考にしてください。

📖 目次

  1. ヘマトクリットとは何か
  2. ヘマトクリット値の基準値について
  3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か
  4. ヘマトクリット値が高くなる原因
  5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状
  6. 放置した場合のリスクと合併症
  7. 検査方法と受診すべき診療科
  8. 多血症の種類と診断
  9. 治療方法について
  10. 日常生活での予防と改善方法
  11. 病院を受診する目安
  12. まとめ

🩸 1. ヘマトクリットとは何か

ヘマトクリットとは、血液中に赤血球が占める割合をパーセンテージ(%)で表した数値のことです。「ヘマト」は血液、「クリット」は分離を意味しており、血液を遠心分離器にかけて測定することからこの名前がついています。

血液は大きく分けて、固形成分である「血球」と、液体成分である「血漿(けっしょう)」に分けられます。

血球には以下が含まれます:

  • 赤血球(最も多くを占める)
  • 白血球
  • 血小板

ヘマトクリット値は、この血液全体に対する赤血球の容積の割合を示しています。

簡単に言えば、ヘマトクリット値は「血液の濃さ」を表す指標といえます。この数値が高ければ血液は濃くドロドロした状態であり、低ければ血液は薄くサラサラした状態であることを意味します。

赤血球は体中に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質が肺で酸素と結合し、全身の組織に酸素を届けています。そのため、赤血球の量は体の機能を維持するうえで非常に重要であり、多すぎても少なすぎても問題が生じます。

健康診断の血液検査では、赤血球数、ヘモグロビン濃度とともにヘマトクリット値も測定されており、これら3つの指標を組み合わせて貧血や多血症の診断に活用されています。

📊 2. ヘマトクリット値の基準値について

ヘマトクリット値の基準値は、性別や年齢、検査機関によって若干異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、成人の基準値として以下の数値が示されています。

  • 男性の基準値:40〜50%程度
  • 女性の基準値:34〜45%程度

男性の方が女性よりも高い傾向にありますが、これは女性は月経によって定期的に血液が失われるため、相対的に赤血球の割合が低くなりやすいことが理由のひとつです。

また、一般的な医療機関では以下のような基準値が用いられることが多いです。

男性の場合:
・正常範囲:38.5%〜48.9%
高値:52.9%以上

女性の場合:
・正常範囲:35.5%〜43.9%
高値:47.0%以上

一方、世界保健機関(WHO)による多血症の診断基準では、より厳格な数値が設定されています。

  • 男性:ヘマトクリット値が49%を超える場合に多血症が疑われる
  • 女性:ヘマトクリット値が48%を超える場合に多血症が疑われる

なお、ヘマトクリット値は測定するタイミングによっても変動します。朝、昼、夜で数値が異なることがありますし、採血前の飲水制限の影響を受けることもあります。健康診断では採血前に食事や水分を控えるよう指示されることが多いため、軽い脱水状態となり、ヘマトクリット値が実際よりもやや高めに出ることがあります。

🔍 3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か

ヘマトクリット値が基準値よりも高いということは、血液中の赤血球の割合が多くなっている状態を意味します。これは一般的に「血液が濃い」「血液がドロドロしている」と表現されることがあります。この状態は医学的には「多血症」または「赤血球増加症」と呼ばれます。

血液が濃くなると、血液の粘稠度(粘り気)が高まります。粘り気の高い血液は血管の中をスムーズに流れにくくなるため、全身の血流が悪くなります。特に細い血管では血液が通過しにくくなり、さまざまな臓器への酸素や栄養の供給が低下する可能性があります。

また、血液がドロドロしていると、血管の中で血液が固まりやすくなります。これが血栓(血の塊)の形成につながり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患の原因となることがあります。

ただし、ヘマトクリット値が高いからといって、必ずしも深刻な病気があるとは限りません。一時的な脱水や生活習慣の影響で数値が上昇していることも多く、原因によっては生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

重要なのは、ヘマトクリット値が高いと指摘された場合に、その原因が何であるかを正しく把握することです。原因によって対処法が大きく異なるため、自己判断せずに医療機関で適切な検査を受けることが大切です。

⚠️ 4. ヘマトクリット値が高くなる原因

ヘマトクリット値が高くなる原因はさまざまであり、大きく分けて「相対的多血症」と「絶対的多血症」の2つに分類されます。

💧 相対的多血症

相対的多血症とは、実際に赤血球が増加しているわけではなく、血漿(血液の液体成分)が減少することで見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。血液中の水分が少なくなることで、相対的に赤血球の濃度が高く見えるのです。

相対的多血症の主な原因:

  • 脱水(最も多い原因)
    • 下痢や嘔吐
    • 発汗
    • 発熱
    • 水分摂取不足
  • 季節的要因
    • 夏場の熱中症
    • 秋から冬の乾燥した季節での脱水
    • マスク着用による渇きの自覚低下
  • ストレス多血症
    • 慢性的なストレス
    • 精神的緊張
    • 過度の飲酒・喫煙
    • 肥満
高桑康太 医師・当院治療責任者

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まず最も多いのは脱水による相対的多血症です。健康診断では朝食を抜いて採血することが多く、水分も控えがちになるため、実際よりも高く測定されることがよくあります。まずは十分な水分補給を行い、再検査を受けることをお勧めします。

ストレス多血症と呼ばれる状態も相対的多血症の一種です。働き盛りの中年男性に多くみられ、高血圧、高脂血症、高尿酸血症を伴うことが多いのが特徴です。

利尿作用のある飲み物の過剰摂取も脱水を招く原因となります:

  • コーヒー
  • 緑茶
  • その他カフェインを多く含む飲み物

🫁 絶対的多血症(二次性多血症)

絶対的多血症とは、実際に血液中の赤血球が増加している状態です。その中でも、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している場合を「二次性多血症」といいます。

二次性多血症の主な原因:

1. 喫煙(最も多い原因)

  • タバコの煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンと結合
  • 一酸化炭素とヘモグロビンの結合力は酸素の約200倍
  • 体内が酸素不足に陥り、赤血球の産生が増加

2. 睡眠時無呼吸症候群

  • 睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする
  • 慢性的な低酸素状態
  • 酸素不足を補おうとして赤血球が増加

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • 肥満気味
  • いびきが大きい
  • 日中の眠気がある
  • 家族から呼吸が止まっていると指摘されたことがある

3. その他の原因

  • 肺疾患(COPD、肺気腫など)
  • 心疾患(心不全、先天性心疾患など)
  • 高地での生活
  • 腎疾患
  • エリスロポエチン産生腫瘍(腎細胞がん、肝細胞がんなど)

🧬 絶対的多血症(真性多血症)

真性多血症は、骨髄で赤血球を作る造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、赤血球が異常に増殖する病気です。

真性多血症の特徴:

  • 骨髄増殖性腫瘍のひとつに分類
  • 10万人あたり年間2人程度が発症(比較的まれ)
  • 60歳前後に発症のピーク
  • 95%以上の症例でJAK2遺伝子の変異を認める

JAK2遺伝子の変異により、細胞増殖のシグナルが常に活性化された状態となり、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球がどんどん作られてしまいます。赤血球だけでなく、白血球や血小板も増加することがあります。

真性多血症は適切な治療を受ければ10年以上の生存が期待できる疾患ですが、放置すると血栓症のリスクが高まります。また、一部の患者さんでは長期経過の中で骨髄線維症や急性白血病に移行することがあるため、定期的な経過観察が必要です。

🤕 5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状

ヘマトクリット値が高い状態、すなわち多血症では、血液の粘稠度が増すことでさまざまな症状が現れることがあります。ただし、軽度の多血症では無症状のことも多く、健康診断で偶然発見されるケースも少なくありません。

多血症で現れやすい症状:

脳・神経症状

  • 頭痛
  • めまい・ふらつき
  • 耳鳴り
  • 視力障害
  • 思考力の低下

皮膚症状

  • 顔面の紅潮やほてり
  • 皮膚の赤み(特に顔や手足)
  • 入浴後のかゆみ(真性多血症に特徴的)

全身症状

  • 疲労感や脱力感
  • 息切れ(特に運動時)
  • 動悸

循環器症状

  • 高血圧
  • 血液がドロドロになることで心臓により強い力が必要

その他の症状

  • 痛風(高尿酸血症)
  • 脾臓の腫れ(脾腫)による腹部膨満感
  • 食欲低下
  • 発熱・寝汗・体重減少(真性多血症の場合)

入浴後のかゆみは真性多血症の特徴的な症状で、「aquagenic pruritus(アクアジェニック プルリタス)」と呼ばれます。温かいお湯に浸かることで誘発されるかゆみで、ヒスタミンなどの物質が関与していると考えられています。

⚡ 6. 放置した場合のリスクと合併症

ヘマトクリット値が高い状態を放置すると、さまざまな深刻な合併症を引き起こす可能性があります。最も注意すべきは血栓症です。

血栓症のリスク

血液がドロドロした状態が続くと、血管の中で血液が固まって血栓(血の塊)ができやすくなります。

主な血栓症:

  • 脳梗塞
    • 手足の麻痺やしびれ
    • 言葉が出にくくなる
    • 意識障害
  • 心筋梗塞
    • 胸を締め付けられるような激しい痛み
    • 息苦しさ
    • 冷や汗
    • 最悪の場合は心停止
  • 下肢深部静脈血栓症
    • 脚のむくみや痛み、腫れ
    • 血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
    • 突然の呼吸困難や胸痛
    • 最悪の場合は突然死

その他の合併症

高血圧の持続により:

  • 動脈硬化の進行
  • 血管が脆くなる
  • 脳出血のリスク増加

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合:

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 不整脈
  • 心不全
  • 日中の眠気による事故リスク

真性多血症の長期的リスク:

  • 骨髄線維症への移行(10〜15%程度)
  • 急性白血病への移行(1〜2.5%程度)

🔬 7. 検査方法と受診すべき診療科

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まずは再検査を受けることが大切です。一時的な脱水などが原因であれば、再検査で正常値に戻っていることもあります。

再検査の注意点

  • 検査前に十分な水分を摂取
  • 健康診断では朝食を抜いても、水分はしっかり摂る
  • 検査機関の指示に従う

受診すべき診療科

まず内科を受診しましょう。内科で以下の検査を行います:

  • 血液検査(血液全般の状態を調査)
    • 赤血球数
    • ヘモグロビン濃度
    • 白血球数
    • 血小板数
  • 脱水の有無を確認する検査
  • 他の臓器に異常がないかを調べる検査

原因特定のための検査

エリスロポエチン(赤血球産生ホルモン)の血中濃度測定:

  • 二次性多血症:エリスロポエチン濃度が高め
  • 真性多血症:エリスロポエチン濃度が低め〜正常範囲

JAK2遺伝子変異の検査

  • 血液検査で実施可能
  • 95%以上の真性多血症患者さんでJAK2変異を検出

確定診断のための検査

  • 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
  • 画像検査
    • 胸部CT検査
    • 腹部CT検査
    • 心エコー検査
  • 睡眠ポリグラフ検査(睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合)

詳しい検査や専門的な治療が必要な場合は、血液内科への紹介となることがあります。真性多血症などの血液疾患は血液内科の専門領域です。

📋 8. 多血症の種類と診断

多血症は、その原因によっていくつかの種類に分類されます。正確な診断を受けることで、適切な治療方針を立てることができます。

💧 相対的多血症(見かけ上の多血症)

相対的多血症は、実際には赤血球の総量は増えていないものの、血漿量の減少によって見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。

診断のポイント:

  • 血液検査で赤血球数やヘマトクリット値が高い
  • 総血液量は変わっていない
  • 水分補給をして再検査を行うと数値が正常化することが多い

ストレス多血症(ガイスベック症候群)は相対的多血症の一種で、以下を背景に発症:

  • 慢性的なストレス
  • 高血圧
  • 肥満
  • 喫煙
  • 過度の飲酒

🔄 二次性多血症

二次性多血症は、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している状態です。体内の酸素不足を補おうとして赤血球の産生が亢進することが主な原因です。

診断のポイント:

  • エリスロポエチン濃度が高い
  • 何らかの原因で慢性的な低酸素状態が続いている
  • 原因疾患の特定が重要

原因検索のための問診・検査:

  • 喫煙歴
  • 睡眠時の無呼吸の有無
  • 肺疾患や心疾患の既往
  • 肺機能検査
  • 心エコー検査
  • 腹部CT検査(腎臓や肝臓の腫瘍の有無を確認)

🧬 真性多血症

真性多血症は、骨髄の造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球が過剰に産生される病気です。慢性骨髄増殖性腫瘍に分類されます。

2016年のWHO分類による真性多血症の診断基準

大基準:

  1. ヘモグロビン値が男性で16.5g/dL超、女性で16.0g/dL超、またはヘマトクリット値が男性で49%超、女性で48%超
  2. 骨髄生検で三系統(赤血球系、白血球系、血小板系)の血球増加を伴う過形成髄
  3. JAK2 V617F変異またはJAK2エクソン12変異が存在すること

小基準:

  • 血清エリスロポエチン値が正常範囲以下であること

診断条件:

  • 大基準を3つすべて満たす
  • または大基準の最初の2つと小基準を満たす

💊 9. 治療方法について

多血症の治療は、その原因によって大きく異なります。相対的多血症と二次性多血症は原因の除去や基礎疾患の治療が中心となりますが、真性多血症では血栓症の予防を目的とした積極的な治療が必要となります。

💧 相対的多血症の治療

脱水が原因の場合

  • 適切な水分補給(一日1〜1.5リットルを目安)
  • こまめな水分摂取
  • カフェインやアルコールだけでなく、水やお茶も併せて摂取

ストレス多血症の場合

  • 禁煙
  • 節酒
  • 適度な運動
  • ストレス管理
  • 減量
  • 高血圧、脂質異常症、糖尿病などの合併症治療

🔄 二次性多血症の治療

二次性多血症では、原因となっている基礎疾患の治療が最優先です。

喫煙が原因の場合

  • 禁煙が必要
  • 一酸化炭素ヘモグロビンが減少
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合

  • CPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療
  • 睡眠中に鼻や口からゆるやかに空気を送り込む装置
  • 気道の閉塞を防いで無呼吸を改善
  • 肥満がある場合は減量も重要

その他の疾患が原因の場合

  • 肺疾患・心疾患:それぞれの疾患に対する治療
  • 酸素療法が必要になることもある
  • 治療が困難な場合:瀉血療法を検討

🧬 真性多血症の治療

真性多血症の治療目標は、血栓症の予防と症状の改善です。ヘマトクリット値を45%未満にコントロールすることが推奨されています。

瀉血療法

治療の中心となるのは瀉血療法です。

  • 献血と同じ方法で静脈から血液を抜き取る
  • 1回に200〜500mLの血液を抜き取る
  • 週に1〜2回程度のペース
  • 高齢者や心血管疾患患者:1回100〜200mLに減量して頻回実施
  • 体内の鉄分も除去し、赤血球産生を抑制する効果もある

薬物療法

低用量アスピリン(75〜100mg/日):

  • 血栓症の予防
  • 血小板の働きを抑制
  • 出血リスクがある場合は使用を控える

細胞減少療法(血栓症リスクが高い患者):

  • 60歳以上の方
  • 血栓症の既往がある方

第一選択薬:ヒドロキシウレア(ハイドレア)

  • 骨髄での血球産生を抑制
  • 比較的副作用が少ない
  • 長期使用による二次発がんのリスクが完全には否定されていない

JAK2阻害薬:ルキソリチニブ(ジャカビ)

  • ヒドロキシウレアが効果不十分・副作用で使用不可の場合
  • JAK2の異常な活性化を抑制
  • 血球数の正常化
  • 脾腫の縮小
  • 全身症状の改善

🌱 10. 日常生活での予防と改善方法

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、日常生活でできる予防・改善方法がいくつかあります。特に相対的多血症やストレス多血症の場合は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することも少なくありません。

💧 十分な水分摂取を心がける

脱水はヘマトクリット値を上昇させる最も一般的な原因です。

水分摂取のポイント:

  • 一日を通してこまめに水分を摂取
  • 目安:食事以外に1日1〜1.5リットル
  • 少量をこまめに摂取(一度に大量摂取は避ける)

タイミング:

  • 起床時
  • 食事の前後
  • 入浴の前後
  • 就寝前

注意点:

  • カフェインを含む飲み物(コーヒー、緑茶)は利尿作用がある
  • カフェインを含まない水や麦茶も併せて摂取
  • アルコールも利尿作用が強いため、飲酒後は必ず水で水分補給
  • 夜間のトイレが気になっても、夕方までは積極的に水分摂取

🚭 禁煙する

喫煙は多血症の最も多い原因のひとつであり、禁煙は効果的な改善策です。

禁煙の効果:

  • 一酸化炭素がヘモグロビンと結合することがなくなる
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制
  • ヘマトクリット値の低下が期待できる

その他の健康効果:

  • 肺がんリスクの低下
  • 心筋梗塞リスクの低下
  • 脳卒中リスクの低下
  • COPDリスクの低下

自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診して専門的なサポートを受けることをおすすめします。

🏃 適度な運動を行う

ウォーキングなどの有酸素運動は、全身の血流を促進し、血液の循環を改善する効果があります。

運動の効果:

  • 血流がよくなることで血液の粘稠度が下がる
  • 血栓ができにくくなる
  • 肥満の解消

運動の目安:

  • 週に3〜5回
  • 1回30分程度
  • 激しい運動は脱水を招くため避ける
  • 運動中はこまめに水分補給

肥満は睡眠時無呼吸症候群やストレス多血症のリスク要因となるため、適正体重を維持することが多血症の予防・改善に役立ちます。

🍽️ 食事に気をつける

ヘマトクリット値が高い場合、食事面でも注意が必要です。

控えめにすべき食材

  • 鉄分を多く含む食材(過剰摂取は避ける)
    • ほうれん草
    • レバー
    • 牛肉
    • しじみ
  • 鉄分のサプリメント(医師に相談のうえで中止を検討)
  • 脂質の多い食事(血液をドロドロにしやすい)
    • 揚げ物
    • 脂っこい肉料理
  • プリン体を多く含む食品
    • ビールの酵母
    • レバー
    • 干物

積極的に摂取すべき食材

  • バランスの良い食事
  • 野菜や果物

😌 ストレス管理を心がける

慢性的なストレスはストレス多血症の原因となります。

ストレス管理のポイント:

  • 自分なりのストレス解消法を見つける
  • 定期的にリフレッシュする
  • 十分な睡眠を確保
  • 毎日同じ時間に就寝・起床する習慣
  • 質の良い睡眠を心がける

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • いびきがひどい
  • 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
  • 日中の眠気がひどい

これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。

🛁 入浴時の注意点

入浴は脱水の原因になりやすいため注意が必要です。

入浴時の注意点:

  • 入浴前に水分を摂取
  • 長時間の入浴を避ける
  • 熱すぎるお湯への入浴を避ける
  • 適度な温度と時間を心がける

真性多血症の方で入浴後のかゆみがある場合:

  • お湯の温度をぬるめにする
  • 体を洗うときは皮膚を強くこすらず優しく洗う

🏥 11. 病院を受診する目安

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、どのタイミングで病院を受診すべきでしょうか。以下に目安をまとめます。

必ず受診すべき場合

健康診断で以下の判定を受けた場合:

  • 「要受診」
  • 「要精密検査」
  • 「要再検査」

特に初めてヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、原因を特定するための検査が必要です。

早めに受診することをおすすめする症状

  • 頭痛やめまいが続く
  • 顔や手足が赤くなっている
  • 疲労感や息切れがある
  • 入浴後にかゆみがある
  • 高血圧を指摘されている

これらの症状は多血症に伴って現れることがあり、適切な治療が必要なサインである可能性があります。

緊急受診が必要な症状(すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶ)

脳梗塞や脳出血の症状の可能性:

  • 突然の激しい頭痛
  • 手足のしびれや麻痺
  • ろれつが回らない
  • 意識がもうろうとする

心筋梗塞や肺塞栓症の症状の可能性:

  • 胸を締め付けられるような痛み
  • 呼吸困難
  • 冷や汗

多血症は放置すると血栓症のリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要です。健康診断で異常を指摘された場合は、自己判断で様子を見るのではなく、まずは医療機関で相談するようにしましょう。

🏥 11. 病院を受診する目安

📝 12. まとめ

ヘマトクリット値が高いということは、血液中の赤血球の割合が多く、血液が濃い状態であることを意味します。この状態は「多血症」と呼ばれ、原因によって以下に分類されます:

  • 相対的多血症
  • 二次性多血症
  • 真性多血症

各種多血症の特徴と治療

相対的多血症:脱水やストレスによって起こる見かけ上の多血であり、水分補給や生活習慣の改善で改善することが多い

二次性多血症:喫煙や睡眠時無呼吸症候群などが原因で起こり、原因疾患の治療によって改善が期待できる

真性多血症:骨髄の遺伝子異常によって起こる血液疾患であり、瀉血療法や薬物療法による治療が必要

重要なリスク

多血症を放置すると、血液の粘稠度が高まり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な血栓症を引き起こすリスクがあります。健康診断でヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。

日常生活での予防・改善方法

以下を心がけることで、多血症の予防・改善につなげることができます:

  • 十分な水分摂取
  • 禁煙
  • 適度な運動
  • バランスの良い食事
  • ストレス管理

気になる症状がある場合や、健康診断で再検査を勧められた場合は、お早めにご相談ください。

ヘマトクリット値が高い」と指摘されて、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ヘマトクリットという言葉自体、日常生活ではあまり耳にしない専門用語であるため、それが何を意味するのか、高いとどのような問題があるのかがわかりにくいかもしれません。

この記事では、ヘマトクリット値が高い場合に考えられる原因や症状、放置した場合のリスク、そして日常生活でできる改善方法について、わかりやすく解説していきます。健康診断の結果が気になる方、再検査を勧められた方はぜひ参考にしてください。

Q. ヘマトクリット値が高くなる主な原因は何ですか?

ヘマトクリット値が高くなる原因は、大きく「相対的多血症」と「絶対的多血症」に分かれます。相対的多血症は脱水が最多原因で、絶対的多血症は喫煙・睡眠時無呼吸症候群・肺疾患などが主因です。骨髄の遺伝子変異による真性多血症も存在します。

📖 目次

  1. ヘマトクリットとは何か
  2. ヘマトクリット値の基準値について
  3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か
  4. ヘマトクリット値が高くなる原因
  5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状
  6. 放置した場合のリスクと合併症
  7. 検査方法と受診すべき診療科
  8. 多血症の種類と診断
  9. 治療方法について
  10. 日常生活での予防と改善方法
  11. 病院を受診する目安
  12. まとめ

🩸 1. ヘマトクリットとは何か

ヘマトクリットとは、血液中に赤血球が占める割合をパーセンテージ(%)で表した数値のことです。「ヘマト」は血液、「クリット」は分離を意味しており、血液を遠心分離器にかけて測定することからこの名前がついています。

血液は大きく分けて、固形成分である「血球」と、液体成分である「血漿(けっしょう)」に分けられます。

血球には以下が含まれます:

  • 赤血球(最も多くを占める)
  • 白血球
  • 血小板

ヘマトクリット値は、この血液全体に対する赤血球の容積の割合を示しています。

簡単に言えば、ヘマトクリット値は「血液の濃さ」を表す指標といえます。この数値が高ければ血液は濃くドロドロした状態であり、低ければ血液は薄くサラサラした状態であることを意味します。

赤血球は体中に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質が肺で酸素と結合し、全身の組織に酸素を届けています。そのため、赤血球の量は体の機能を維持するうえで非常に重要であり、多すぎても少なすぎても問題が生じます。

健康診断の血液検査では、赤血球数、ヘモグロビン濃度とともにヘマトクリット値も測定されており、これら3つの指標を組み合わせて貧血や多血症の診断に活用されています。

📊 2. ヘマトクリット値の基準値について

ヘマトクリット値の基準値は、性別や年齢、検査機関によって若干異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、成人の基準値として以下の数値が示されています。

  • 男性の基準値:40〜50%程度
  • 女性の基準値:34〜45%程度

男性の方が女性よりも高い傾向にありますが、これは女性は月経によって定期的に血液が失われるため、相対的に赤血球の割合が低くなりやすいことが理由のひとつです。

また、一般的な医療機関では以下のような基準値が用いられることが多いです。

男性の場合:
・正常範囲:38.5%〜48.9%
高値:52.9%以上

女性の場合:
・正常範囲:35.5%〜43.9%
高値:47.0%以上

一方、世界保健機関(WHO)による多血症の診断基準では、より厳格な数値が設定されています。

  • 男性:ヘマトクリット値が49%を超える場合に多血症が疑われる
  • 女性:ヘマトクリット値が48%を超える場合に多血症が疑われる

なお、ヘマトクリット値は測定するタイミングによっても変動します。朝、昼、夜で数値が異なることがありますし、採血前の飲水制限の影響を受けることもあります。健康診断では採血前に食事や水分を控えるよう指示されることが多いため、軽い脱水状態となり、ヘマトクリット値が実際よりもやや高めに出ることがあります。

🔍 3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か

ヘマトクリット値が基準値よりも高いということは、血液中の赤血球の割合が多くなっている状態を意味します。これは一般的に「血液が濃い」「血液がドロドロしている」と表現されることがあります。この状態は医学的には「多血症」または「赤血球増加症」と呼ばれます。

血液が濃くなると、血液の粘稠度(粘り気)が高まります。粘り気の高い血液は血管の中をスムーズに流れにくくなるため、全身の血流が悪くなります。特に細い血管では血液が通過しにくくなり、さまざまな臓器への酸素や栄養の供給が低下する可能性があります。

また、血液がドロドロしていると、血管の中で血液が固まりやすくなります。これが血栓(血の塊)の形成につながり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患の原因となることがあります。

ただし、ヘマトクリット値が高いからといって、必ずしも深刻な病気があるとは限りません。一時的な脱水や生活習慣の影響で数値が上昇していることも多く、原因によっては生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

重要なのは、ヘマトクリット値が高いと指摘された場合に、その原因が何であるかを正しく把握することです。原因によって対処法が大きく異なるため、自己判断せずに医療機関で適切な検査を受けることが大切です。

⚠️ 4. ヘマトクリット値が高くなる原因

ヘマトクリット値が高くなる原因はさまざまであり、大きく分けて「相対的多血症」と「絶対的多血症」の2つに分類されます。

💧 相対的多血症

相対的多血症とは、実際に赤血球が増加しているわけではなく、血漿(血液の液体成分)が減少することで見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。血液中の水分が少なくなることで、相対的に赤血球の濃度が高く見えるのです。

相対的多血症の主な原因:

  • 脱水(最も多い原因)
    • 下痢や嘔吐
    • 発汗
    • 発熱
    • 水分摂取不足
  • 季節的要因
    • 夏場の熱中症
    • 秋から冬の乾燥した季節での脱水
    • マスク着用による渇きの自覚低下
  • ストレス多血症
    • 慢性的なストレス
    • 精神的緊張
    • 過度の飲酒・喫煙
    • 肥満
高桑康太 医師・当院治療責任者

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まず最も多いのは脱水による相対的多血症です。健康診断では朝食を抜いて採血することが多く、水分も控えがちになるため、実際よりも高く測定されることがよくあります。まずは十分な水分補給を行い、再検査を受けることをお勧めします。

ストレス多血症と呼ばれる状態も相対的多血症の一種です。働き盛りの中年男性に多くみられ、高血圧、高脂血症、高尿酸血症を伴うことが多いのが特徴です。

利尿作用のある飲み物の過剰摂取も脱水を招く原因となります:

  • コーヒー
  • 緑茶
  • その他カフェインを多く含む飲み物

🫁 絶対的多血症(二次性多血症)

絶対的多血症とは、実際に血液中の赤血球が増加している状態です。その中でも、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している場合を「二次性多血症」といいます。

二次性多血症の主な原因:

1. 喫煙(最も多い原因)

  • タバコの煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンと結合
  • 一酸化炭素とヘモグロビンの結合力は酸素の約200倍
  • 体内が酸素不足に陥り、赤血球の産生が増加

2. 睡眠時無呼吸症候群

  • 睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする
  • 慢性的な低酸素状態
  • 酸素不足を補おうとして赤血球が増加

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • 肥満気味
  • いびきが大きい
  • 日中の眠気がある
  • 家族から呼吸が止まっていると指摘されたことがある

3. その他の原因

  • 肺疾患(COPD、肺気腫など)
  • 心疾患(心不全、先天性心疾患など)
  • 高地での生活
  • 腎疾患
  • エリスロポエチン産生腫瘍(腎細胞がん、肝細胞がんなど)

🧬 絶対的多血症(真性多血症)

真性多血症は、骨髄で赤血球を作る造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、赤血球が異常に増殖する病気です。

真性多血症の特徴:

  • 骨髄増殖性腫瘍のひとつに分類
  • 10万人あたり年間2人程度が発症(比較的まれ)
  • 60歳前後に発症のピーク
  • 95%以上の症例でJAK2遺伝子の変異を認める

JAK2遺伝子の変異により、細胞増殖のシグナルが常に活性化された状態となり、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球がどんどん作られてしまいます。赤血球だけでなく、白血球や血小板も増加することがあります。

真性多血症は適切な治療を受ければ10年以上の生存が期待できる疾患ですが、放置すると血栓症のリスクが高まります。また、一部の患者さんでは長期経過の中で骨髄線維症や急性白血病に移行することがあるため、定期的な経過観察が必要です。

🤕 5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状

ヘマトクリット値が高い状態、すなわち多血症では、血液の粘稠度が増すことでさまざまな症状が現れることがあります。ただし、軽度の多血症では無症状のことも多く、健康診断で偶然発見されるケースも少なくありません。

多血症で現れやすい症状:

脳・神経症状

  • 頭痛
  • めまい・ふらつき
  • 耳鳴り
  • 視力障害
  • 思考力の低下

皮膚症状

  • 顔面の紅潮やほてり
  • 皮膚の赤み(特に顔や手足)
  • 入浴後のかゆみ(真性多血症に特徴的)

全身症状

  • 疲労感や脱力感
  • 息切れ(特に運動時)
  • 動悸

循環器症状

  • 高血圧
  • 血液がドロドロになることで心臓により強い力が必要

その他の症状

  • 痛風(高尿酸血症)
  • 脾臓の腫れ(脾腫)による腹部膨満感
  • 食欲低下
  • 発熱・寝汗・体重減少(真性多血症の場合)

入浴後のかゆみは真性多血症の特徴的な症状で、「aquagenic pruritus(アクアジェニック プルリタス)」と呼ばれます。温かいお湯に浸かることで誘発されるかゆみで、ヒスタミンなどの物質が関与していると考えられています。

⚡ 6. 放置した場合のリスクと合併症

ヘマトクリット値が高い状態を放置すると、さまざまな深刻な合併症を引き起こす可能性があります。最も注意すべきは血栓症です。

血栓症のリスク

血液がドロドロした状態が続くと、血管の中で血液が固まって血栓(血の塊)ができやすくなります。

主な血栓症:

  • 脳梗塞
    • 手足の麻痺やしびれ
    • 言葉が出にくくなる
    • 意識障害
  • 心筋梗塞
    • 胸を締め付けられるような激しい痛み
    • 息苦しさ
    • 冷や汗
    • 最悪の場合は心停止
  • 下肢深部静脈血栓症
    • 脚のむくみや痛み、腫れ
    • 血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
    • 突然の呼吸困難や胸痛
    • 最悪の場合は突然死

その他の合併症

高血圧の持続により:

  • 動脈硬化の進行
  • 血管が脆くなる
  • 脳出血のリスク増加

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合:

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 不整脈
  • 心不全
  • 日中の眠気による事故リスク

真性多血症の長期的リスク:

  • 骨髄線維症への移行(10〜15%程度)
  • 急性白血病への移行(1〜2.5%程度)

🔬 7. 検査方法と受診すべき診療科

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まずは再検査を受けることが大切です。一時的な脱水などが原因であれば、再検査で正常値に戻っていることもあります。

再検査の注意点

  • 検査前に十分な水分を摂取
  • 健康診断では朝食を抜いても、水分はしっかり摂る
  • 検査機関の指示に従う

受診すべき診療科

まず内科を受診しましょう。内科で以下の検査を行います:

  • 血液検査(血液全般の状態を調査)
    • 赤血球数
    • ヘモグロビン濃度
    • 白血球数
    • 血小板数
  • 脱水の有無を確認する検査
  • 他の臓器に異常がないかを調べる検査

原因特定のための検査

エリスロポエチン(赤血球産生ホルモン)の血中濃度測定:

  • 二次性多血症:エリスロポエチン濃度が高め
  • 真性多血症:エリスロポエチン濃度が低め〜正常範囲

JAK2遺伝子変異の検査

  • 血液検査で実施可能
  • 95%以上の真性多血症患者さんでJAK2変異を検出

確定診断のための検査

  • 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
  • 画像検査
    • 胸部CT検査
    • 腹部CT検査
    • 心エコー検査
  • 睡眠ポリグラフ検査(睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合)

詳しい検査や専門的な治療が必要な場合は、血液内科への紹介となることがあります。真性多血症などの血液疾患は血液内科の専門領域です。

📋 8. 多血症の種類と診断

多血症は、その原因によっていくつかの種類に分類されます。正確な診断を受けることで、適切な治療方針を立てることができます。

💧 相対的多血症(見かけ上の多血症)

相対的多血症は、実際には赤血球の総量は増えていないものの、血漿量の減少によって見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。

診断のポイント:

  • 血液検査で赤血球数やヘマトクリット値が高い
  • 総血液量は変わっていない
  • 水分補給をして再検査を行うと数値が正常化することが多い

ストレス多血症(ガイスベック症候群)は相対的多血症の一種で、以下を背景に発症:

  • 慢性的なストレス
  • 高血圧
  • 肥満
  • 喫煙
  • 過度の飲酒

🔄 二次性多血症

二次性多血症は、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している状態です。体内の酸素不足を補おうとして赤血球の産生が亢進することが主な原因です。

診断のポイント:

  • エリスロポエチン濃度が高い
  • 何らかの原因で慢性的な低酸素状態が続いている
  • 原因疾患の特定が重要

原因検索のための問診・検査:

  • 喫煙歴
  • 睡眠時の無呼吸の有無
  • 肺疾患や心疾患の既往
  • 肺機能検査
  • 心エコー検査
  • 腹部CT検査(腎臓や肝臓の腫瘍の有無を確認)

🧬 真性多血症

真性多血症は、骨髄の造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球が過剰に産生される病気です。慢性骨髄増殖性腫瘍に分類されます。

2016年のWHO分類による真性多血症の診断基準

大基準:

  1. ヘモグロビン値が男性で16.5g/dL超、女性で16.0g/dL超、またはヘマトクリット値が男性で49%超、女性で48%超
  2. 骨髄生検で三系統(赤血球系、白血球系、血小板系)の血球増加を伴う過形成髄
  3. JAK2 V617F変異またはJAK2エクソン12変異が存在すること

小基準:

  • 血清エリスロポエチン値が正常範囲以下であること

診断条件:

  • 大基準を3つすべて満たす
  • または大基準の最初の2つと小基準を満たす

💊 9. 治療方法について

多血症の治療は、その原因によって大きく異なります。相対的多血症と二次性多血症は原因の除去や基礎疾患の治療が中心となりますが、真性多血症では血栓症の予防を目的とした積極的な治療が必要となります。

💧 相対的多血症の治療

脱水が原因の場合

  • 適切な水分補給(一日1〜1.5リットルを目安)
  • こまめな水分摂取
  • カフェインやアルコールだけでなく、水やお茶も併せて摂取

ストレス多血症の場合

  • 禁煙
  • 節酒
  • 適度な運動
  • ストレス管理
  • 減量
  • 高血圧、脂質異常症、糖尿病などの合併症治療

🔄 二次性多血症の治療

二次性多血症では、原因となっている基礎疾患の治療が最優先です。

喫煙が原因の場合

  • 禁煙が必要
  • 一酸化炭素ヘモグロビンが減少
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合

  • CPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療
  • 睡眠中に鼻や口からゆるやかに空気を送り込む装置
  • 気道の閉塞を防いで無呼吸を改善
  • 肥満がある場合は減量も重要

その他の疾患が原因の場合

  • 肺疾患・心疾患:それぞれの疾患に対する治療
  • 酸素療法が必要になることもある
  • 治療が困難な場合:瀉血療法を検討

🧬 真性多血症の治療

真性多血症の治療目標は、血栓症の予防と症状の改善です。ヘマトクリット値を45%未満にコントロールすることが推奨されています。

瀉血療法

治療の中心となるのは瀉血療法です。

  • 献血と同じ方法で静脈から血液を抜き取る
  • 1回に200〜500mLの血液を抜き取る
  • 週に1〜2回程度のペース
  • 高齢者や心血管疾患患者:1回100〜200mLに減量して頻回実施
  • 体内の鉄分も除去し、赤血球産生を抑制する効果もある

薬物療法

低用量アスピリン(75〜100mg/日):

  • 血栓症の予防
  • 血小板の働きを抑制
  • 出血リスクがある場合は使用を控える

細胞減少療法(血栓症リスクが高い患者):

  • 60歳以上の方
  • 血栓症の既往がある方

第一選択薬:ヒドロキシウレア(ハイドレア)

  • 骨髄での血球産生を抑制
  • 比較的副作用が少ない
  • 長期使用による二次発がんのリスクが完全には否定されていない

JAK2阻害薬:ルキソリチニブ(ジャカビ)

  • ヒドロキシウレアが効果不十分・副作用で使用不可の場合
  • JAK2の異常な活性化を抑制
  • 血球数の正常化
  • 脾腫の縮小
  • 全身症状の改善

🌱 10. 日常生活での予防と改善方法

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、日常生活でできる予防・改善方法がいくつかあります。特に相対的多血症やストレス多血症の場合は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することも少なくありません。

💧 十分な水分摂取を心がける

脱水はヘマトクリット値を上昇させる最も一般的な原因です。

水分摂取のポイント:

  • 一日を通してこまめに水分を摂取
  • 目安:食事以外に1日1〜1.5リットル
  • 少量をこまめに摂取(一度に大量摂取は避ける)

タイミング:

  • 起床時
  • 食事の前後
  • 入浴の前後
  • 就寝前

注意点:

  • カフェインを含む飲み物(コーヒー、緑茶)は利尿作用がある
  • カフェインを含まない水や麦茶も併せて摂取
  • アルコールも利尿作用が強いため、飲酒後は必ず水で水分補給
  • 夜間のトイレが気になっても、夕方までは積極的に水分摂取

🚭 禁煙する

喫煙は多血症の最も多い原因のひとつであり、禁煙は効果的な改善策です。

禁煙の効果:

  • 一酸化炭素がヘモグロビンと結合することがなくなる
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制
  • ヘマトクリット値の低下が期待できる

その他の健康効果:

  • 肺がんリスクの低下
  • 心筋梗塞リスクの低下
  • 脳卒中リスクの低下
  • COPDリスクの低下

自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診して専門的なサポートを受けることをおすすめします。

🏃 適度な運動を行う

ウォーキングなどの有酸素運動は、全身の血流を促進し、血液の循環を改善する効果があります。

運動の効果:

  • 血流がよくなることで血液の粘稠度が下がる
  • 血栓ができにくくなる
  • 肥満の解消

運動の目安:

  • 週に3〜5回
  • 1回30分程度
  • 激しい運動は脱水を招くため避ける
  • 運動中はこまめに水分補給

肥満は睡眠時無呼吸症候群やストレス多血症のリスク要因となるため、適正体重を維持することが多血症の予防・改善に役立ちます。

🍽️ 食事に気をつける

ヘマトクリット値が高い場合、食事面でも注意が必要です。

控えめにすべき食材

  • 鉄分を多く含む食材(過剰摂取は避ける)
    • ほうれん草
    • レバー
    • 牛肉
    • しじみ
  • 鉄分のサプリメント(医師に相談のうえで中止を検討)
  • 脂質の多い食事(血液をドロドロにしやすい)
    • 揚げ物
    • 脂っこい肉料理
  • プリン体を多く含む食品
    • ビールの酵母
    • レバー
    • 干物

積極的に摂取すべき食材

  • バランスの良い食事
  • 野菜や果物

😌 ストレス管理を心がける

慢性的なストレスはストレス多血症の原因となります。

ストレス管理のポイント:

  • 自分なりのストレス解消法を見つける
  • 定期的にリフレッシュする
  • 十分な睡眠を確保
  • 毎日同じ時間に就寝・起床する習慣
  • 質の良い睡眠を心がける

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • いびきがひどい
  • 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
  • 日中の眠気がひどい

これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。

🛁 入浴時の注意点

入浴は脱水の原因になりやすいため注意が必要です。

入浴時の注意点:

  • 入浴前に水分を摂取
  • 長時間の入浴を避ける
  • 熱すぎるお湯への入浴を避ける
  • 適度な温度と時間を心がける

真性多血症の方で入浴後のかゆみがある場合:

  • お湯の温度をぬるめにする
  • 体を洗うときは皮膚を強くこすらず優しく洗う

🏥 11. 病院を受診する目安

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、どのタイミングで病院を受診すべきでしょうか。以下に目安をまとめます。

必ず受診すべき場合

健康診断で以下の判定を受けた場合:

  • 「要受診」
  • 「要精密検査」
  • 「要再検査」

特に初めてヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、原因を特定するための検査が必要です。

早めに受診することをおすすめする症状

  • 頭痛やめまいが続く
  • 顔や手足が赤くなっている
  • 疲労感や息切れがある
  • 入浴後にかゆみがある
  • 高血圧を指摘されている

これらの症状は多血症に伴って現れることがあり、適切な治療が必要なサインである可能性があります。

緊急受診が必要な症状(すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶ)

脳梗塞や脳出血の症状の可能性:

  • 突然の激しい頭痛
  • 手足のしびれや麻痺
  • ろれつが回らない
  • 意識がもうろうとする

心筋梗塞や肺塞栓症の症状の可能性:

  • 胸を締め付けられるような痛み
  • 呼吸困難
  • 冷や汗

多血症は放置すると血栓症のリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要です。健康診断で異常を指摘された場合は、自己判断で様子を見るのではなく、まずは医療機関で相談するようにしましょう。

🏥 11. 病院を受診する目安

📝 12. まとめ

ヘマトクリット値が高いということは、血液中の赤血球の割合が多く、血液が濃い状態であることを意味します。この状態は「多血症」と呼ばれ、原因によって以下に分類されます:

  • 相対的多血症
  • 二次性多血症
  • 真性多血症

各種多血症の特徴と治療

相対的多血症:脱水やストレスによって起こる見かけ上の多血であり、水分補給や生活習慣の改善で改善することが多い

二次性多血症:喫煙や睡眠時無呼吸症候群などが原因で起こり、原因疾患の治療によって改善が期待できる

真性多血症:骨髄の遺伝子異常によって起こる血液疾患であり、瀉血療法や薬物療法による治療が必要

重要なリスク

多血症を放置すると、血液の粘稠度が高まり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な血栓症を引き起こすリスクがあります。健康診断でヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。

日常生活での予防・改善方法

以下を心がけることで、多血症の予防・改善につなげることができます:

  • 十分な水分摂取
  • 禁煙
  • 適度な運動
  • バランスの良い食事
  • ストレス管理

気になる症状がある場合や、健康診断で再検査を勧められた場合は、お早めにご相談ください。

ヘマトクリット値が高い」と指摘されて、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ヘマトクリットという言葉自体、日常生活ではあまり耳にしない専門用語であるため、それが何を意味するのか、高いとどのような問題があるのかがわかりにくいかもしれません。

この記事では、ヘマトクリット値が高い場合に考えられる原因や症状、放置した場合のリスク、そして日常生活でできる改善方法について、わかりやすく解説していきます。健康診断の結果が気になる方、再検査を勧められた方はぜひ参考にしてください。

Q. 多血症を放置するとどのようなリスクがありますか?

多血症を放置すると、血液の粘稠度が増して血栓が形成されやすくなります。その結果、脳梗塞・心筋梗塞・肺塞栓症などの重篤な血栓症を引き起こすリスクが高まります。真性多血症では長期的に骨髄線維症や急性白血病へ移行する可能性もあります。

📖 目次

  1. ヘマトクリットとは何か
  2. ヘマトクリット値の基準値について
  3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か
  4. ヘマトクリット値が高くなる原因
  5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状
  6. 放置した場合のリスクと合併症
  7. 検査方法と受診すべき診療科
  8. 多血症の種類と診断
  9. 治療方法について
  10. 日常生活での予防と改善方法
  11. 病院を受診する目安
  12. まとめ

🩸 1. ヘマトクリットとは何か

ヘマトクリットとは、血液中に赤血球が占める割合をパーセンテージ(%)で表した数値のことです。「ヘマト」は血液、「クリット」は分離を意味しており、血液を遠心分離器にかけて測定することからこの名前がついています。

血液は大きく分けて、固形成分である「血球」と、液体成分である「血漿(けっしょう)」に分けられます。

血球には以下が含まれます:

  • 赤血球(最も多くを占める)
  • 白血球
  • 血小板

ヘマトクリット値は、この血液全体に対する赤血球の容積の割合を示しています。

簡単に言えば、ヘマトクリット値は「血液の濃さ」を表す指標といえます。この数値が高ければ血液は濃くドロドロした状態であり、低ければ血液は薄くサラサラした状態であることを意味します。

赤血球は体中に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質が肺で酸素と結合し、全身の組織に酸素を届けています。そのため、赤血球の量は体の機能を維持するうえで非常に重要であり、多すぎても少なすぎても問題が生じます。

健康診断の血液検査では、赤血球数、ヘモグロビン濃度とともにヘマトクリット値も測定されており、これら3つの指標を組み合わせて貧血や多血症の診断に活用されています。

📊 2. ヘマトクリット値の基準値について

ヘマトクリット値の基準値は、性別や年齢、検査機関によって若干異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、成人の基準値として以下の数値が示されています。

  • 男性の基準値:40〜50%程度
  • 女性の基準値:34〜45%程度

男性の方が女性よりも高い傾向にありますが、これは女性は月経によって定期的に血液が失われるため、相対的に赤血球の割合が低くなりやすいことが理由のひとつです。

また、一般的な医療機関では以下のような基準値が用いられることが多いです。

男性の場合:
・正常範囲:38.5%〜48.9%
高値:52.9%以上

女性の場合:
・正常範囲:35.5%〜43.9%
高値:47.0%以上

一方、世界保健機関(WHO)による多血症の診断基準では、より厳格な数値が設定されています。

  • 男性:ヘマトクリット値が49%を超える場合に多血症が疑われる
  • 女性:ヘマトクリット値が48%を超える場合に多血症が疑われる

なお、ヘマトクリット値は測定するタイミングによっても変動します。朝、昼、夜で数値が異なることがありますし、採血前の飲水制限の影響を受けることもあります。健康診断では採血前に食事や水分を控えるよう指示されることが多いため、軽い脱水状態となり、ヘマトクリット値が実際よりもやや高めに出ることがあります。

🔍 3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か

ヘマトクリット値が基準値よりも高いということは、血液中の赤血球の割合が多くなっている状態を意味します。これは一般的に「血液が濃い」「血液がドロドロしている」と表現されることがあります。この状態は医学的には「多血症」または「赤血球増加症」と呼ばれます。

血液が濃くなると、血液の粘稠度(粘り気)が高まります。粘り気の高い血液は血管の中をスムーズに流れにくくなるため、全身の血流が悪くなります。特に細い血管では血液が通過しにくくなり、さまざまな臓器への酸素や栄養の供給が低下する可能性があります。

また、血液がドロドロしていると、血管の中で血液が固まりやすくなります。これが血栓(血の塊)の形成につながり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患の原因となることがあります。

ただし、ヘマトクリット値が高いからといって、必ずしも深刻な病気があるとは限りません。一時的な脱水や生活習慣の影響で数値が上昇していることも多く、原因によっては生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

重要なのは、ヘマトクリット値が高いと指摘された場合に、その原因が何であるかを正しく把握することです。原因によって対処法が大きく異なるため、自己判断せずに医療機関で適切な検査を受けることが大切です。

⚠️ 4. ヘマトクリット値が高くなる原因

ヘマトクリット値が高くなる原因はさまざまであり、大きく分けて「相対的多血症」と「絶対的多血症」の2つに分類されます。

💧 相対的多血症

相対的多血症とは、実際に赤血球が増加しているわけではなく、血漿(血液の液体成分)が減少することで見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。血液中の水分が少なくなることで、相対的に赤血球の濃度が高く見えるのです。

相対的多血症の主な原因:

  • 脱水(最も多い原因)
    • 下痢や嘔吐
    • 発汗
    • 発熱
    • 水分摂取不足
  • 季節的要因
    • 夏場の熱中症
    • 秋から冬の乾燥した季節での脱水
    • マスク着用による渇きの自覚低下
  • ストレス多血症
    • 慢性的なストレス
    • 精神的緊張
    • 過度の飲酒・喫煙
    • 肥満
高桑康太 医師・当院治療責任者

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まず最も多いのは脱水による相対的多血症です。健康診断では朝食を抜いて採血することが多く、水分も控えがちになるため、実際よりも高く測定されることがよくあります。まずは十分な水分補給を行い、再検査を受けることをお勧めします。

ストレス多血症と呼ばれる状態も相対的多血症の一種です。働き盛りの中年男性に多くみられ、高血圧、高脂血症、高尿酸血症を伴うことが多いのが特徴です。

利尿作用のある飲み物の過剰摂取も脱水を招く原因となります:

  • コーヒー
  • 緑茶
  • その他カフェインを多く含む飲み物

🫁 絶対的多血症(二次性多血症)

絶対的多血症とは、実際に血液中の赤血球が増加している状態です。その中でも、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している場合を「二次性多血症」といいます。

二次性多血症の主な原因:

1. 喫煙(最も多い原因)

  • タバコの煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンと結合
  • 一酸化炭素とヘモグロビンの結合力は酸素の約200倍
  • 体内が酸素不足に陥り、赤血球の産生が増加

2. 睡眠時無呼吸症候群

  • 睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする
  • 慢性的な低酸素状態
  • 酸素不足を補おうとして赤血球が増加

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • 肥満気味
  • いびきが大きい
  • 日中の眠気がある
  • 家族から呼吸が止まっていると指摘されたことがある

3. その他の原因

  • 肺疾患(COPD、肺気腫など)
  • 心疾患(心不全、先天性心疾患など)
  • 高地での生活
  • 腎疾患
  • エリスロポエチン産生腫瘍(腎細胞がん、肝細胞がんなど)

🧬 絶対的多血症(真性多血症)

真性多血症は、骨髄で赤血球を作る造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、赤血球が異常に増殖する病気です。

真性多血症の特徴:

  • 骨髄増殖性腫瘍のひとつに分類
  • 10万人あたり年間2人程度が発症(比較的まれ)
  • 60歳前後に発症のピーク
  • 95%以上の症例でJAK2遺伝子の変異を認める

JAK2遺伝子の変異により、細胞増殖のシグナルが常に活性化された状態となり、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球がどんどん作られてしまいます。赤血球だけでなく、白血球や血小板も増加することがあります。

真性多血症は適切な治療を受ければ10年以上の生存が期待できる疾患ですが、放置すると血栓症のリスクが高まります。また、一部の患者さんでは長期経過の中で骨髄線維症や急性白血病に移行することがあるため、定期的な経過観察が必要です。

🤕 5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状

ヘマトクリット値が高い状態、すなわち多血症では、血液の粘稠度が増すことでさまざまな症状が現れることがあります。ただし、軽度の多血症では無症状のことも多く、健康診断で偶然発見されるケースも少なくありません。

多血症で現れやすい症状:

脳・神経症状

  • 頭痛
  • めまい・ふらつき
  • 耳鳴り
  • 視力障害
  • 思考力の低下

皮膚症状

  • 顔面の紅潮やほてり
  • 皮膚の赤み(特に顔や手足)
  • 入浴後のかゆみ(真性多血症に特徴的)

全身症状

  • 疲労感や脱力感
  • 息切れ(特に運動時)
  • 動悸

循環器症状

  • 高血圧
  • 血液がドロドロになることで心臓により強い力が必要

その他の症状

  • 痛風(高尿酸血症)
  • 脾臓の腫れ(脾腫)による腹部膨満感
  • 食欲低下
  • 発熱・寝汗・体重減少(真性多血症の場合)

入浴後のかゆみは真性多血症の特徴的な症状で、「aquagenic pruritus(アクアジェニック プルリタス)」と呼ばれます。温かいお湯に浸かることで誘発されるかゆみで、ヒスタミンなどの物質が関与していると考えられています。

⚡ 6. 放置した場合のリスクと合併症

ヘマトクリット値が高い状態を放置すると、さまざまな深刻な合併症を引き起こす可能性があります。最も注意すべきは血栓症です。

血栓症のリスク

血液がドロドロした状態が続くと、血管の中で血液が固まって血栓(血の塊)ができやすくなります。

主な血栓症:

  • 脳梗塞
    • 手足の麻痺やしびれ
    • 言葉が出にくくなる
    • 意識障害
  • 心筋梗塞
    • 胸を締め付けられるような激しい痛み
    • 息苦しさ
    • 冷や汗
    • 最悪の場合は心停止
  • 下肢深部静脈血栓症
    • 脚のむくみや痛み、腫れ
    • 血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
    • 突然の呼吸困難や胸痛
    • 最悪の場合は突然死

その他の合併症

高血圧の持続により:

  • 動脈硬化の進行
  • 血管が脆くなる
  • 脳出血のリスク増加

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合:

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 不整脈
  • 心不全
  • 日中の眠気による事故リスク

真性多血症の長期的リスク:

  • 骨髄線維症への移行(10〜15%程度)
  • 急性白血病への移行(1〜2.5%程度)

🔬 7. 検査方法と受診すべき診療科

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まずは再検査を受けることが大切です。一時的な脱水などが原因であれば、再検査で正常値に戻っていることもあります。

再検査の注意点

  • 検査前に十分な水分を摂取
  • 健康診断では朝食を抜いても、水分はしっかり摂る
  • 検査機関の指示に従う

受診すべき診療科

まず内科を受診しましょう。内科で以下の検査を行います:

  • 血液検査(血液全般の状態を調査)
    • 赤血球数
    • ヘモグロビン濃度
    • 白血球数
    • 血小板数
  • 脱水の有無を確認する検査
  • 他の臓器に異常がないかを調べる検査

原因特定のための検査

エリスロポエチン(赤血球産生ホルモン)の血中濃度測定:

  • 二次性多血症:エリスロポエチン濃度が高め
  • 真性多血症:エリスロポエチン濃度が低め〜正常範囲

JAK2遺伝子変異の検査

  • 血液検査で実施可能
  • 95%以上の真性多血症患者さんでJAK2変異を検出

確定診断のための検査

  • 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
  • 画像検査
    • 胸部CT検査
    • 腹部CT検査
    • 心エコー検査
  • 睡眠ポリグラフ検査(睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合)

詳しい検査や専門的な治療が必要な場合は、血液内科への紹介となることがあります。真性多血症などの血液疾患は血液内科の専門領域です。

📋 8. 多血症の種類と診断

多血症は、その原因によっていくつかの種類に分類されます。正確な診断を受けることで、適切な治療方針を立てることができます。

💧 相対的多血症(見かけ上の多血症)

相対的多血症は、実際には赤血球の総量は増えていないものの、血漿量の減少によって見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。

診断のポイント:

  • 血液検査で赤血球数やヘマトクリット値が高い
  • 総血液量は変わっていない
  • 水分補給をして再検査を行うと数値が正常化することが多い

ストレス多血症(ガイスベック症候群)は相対的多血症の一種で、以下を背景に発症:

  • 慢性的なストレス
  • 高血圧
  • 肥満
  • 喫煙
  • 過度の飲酒

🔄 二次性多血症

二次性多血症は、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している状態です。体内の酸素不足を補おうとして赤血球の産生が亢進することが主な原因です。

診断のポイント:

  • エリスロポエチン濃度が高い
  • 何らかの原因で慢性的な低酸素状態が続いている
  • 原因疾患の特定が重要

原因検索のための問診・検査:

  • 喫煙歴
  • 睡眠時の無呼吸の有無
  • 肺疾患や心疾患の既往
  • 肺機能検査
  • 心エコー検査
  • 腹部CT検査(腎臓や肝臓の腫瘍の有無を確認)

🧬 真性多血症

真性多血症は、骨髄の造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球が過剰に産生される病気です。慢性骨髄増殖性腫瘍に分類されます。

2016年のWHO分類による真性多血症の診断基準

大基準:

  1. ヘモグロビン値が男性で16.5g/dL超、女性で16.0g/dL超、またはヘマトクリット値が男性で49%超、女性で48%超
  2. 骨髄生検で三系統(赤血球系、白血球系、血小板系)の血球増加を伴う過形成髄
  3. JAK2 V617F変異またはJAK2エクソン12変異が存在すること

小基準:

  • 血清エリスロポエチン値が正常範囲以下であること

診断条件:

  • 大基準を3つすべて満たす
  • または大基準の最初の2つと小基準を満たす

💊 9. 治療方法について

多血症の治療は、その原因によって大きく異なります。相対的多血症と二次性多血症は原因の除去や基礎疾患の治療が中心となりますが、真性多血症では血栓症の予防を目的とした積極的な治療が必要となります。

💧 相対的多血症の治療

脱水が原因の場合

  • 適切な水分補給(一日1〜1.5リットルを目安)
  • こまめな水分摂取
  • カフェインやアルコールだけでなく、水やお茶も併せて摂取

ストレス多血症の場合

  • 禁煙
  • 節酒
  • 適度な運動
  • ストレス管理
  • 減量
  • 高血圧、脂質異常症、糖尿病などの合併症治療

🔄 二次性多血症の治療

二次性多血症では、原因となっている基礎疾患の治療が最優先です。

喫煙が原因の場合

  • 禁煙が必要
  • 一酸化炭素ヘモグロビンが減少
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合

  • CPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療
  • 睡眠中に鼻や口からゆるやかに空気を送り込む装置
  • 気道の閉塞を防いで無呼吸を改善
  • 肥満がある場合は減量も重要

その他の疾患が原因の場合

  • 肺疾患・心疾患:それぞれの疾患に対する治療
  • 酸素療法が必要になることもある
  • 治療が困難な場合:瀉血療法を検討

🧬 真性多血症の治療

真性多血症の治療目標は、血栓症の予防と症状の改善です。ヘマトクリット値を45%未満にコントロールすることが推奨されています。

瀉血療法

治療の中心となるのは瀉血療法です。

  • 献血と同じ方法で静脈から血液を抜き取る
  • 1回に200〜500mLの血液を抜き取る
  • 週に1〜2回程度のペース
  • 高齢者や心血管疾患患者:1回100〜200mLに減量して頻回実施
  • 体内の鉄分も除去し、赤血球産生を抑制する効果もある

薬物療法

低用量アスピリン(75〜100mg/日):

  • 血栓症の予防
  • 血小板の働きを抑制
  • 出血リスクがある場合は使用を控える

細胞減少療法(血栓症リスクが高い患者):

  • 60歳以上の方
  • 血栓症の既往がある方

第一選択薬:ヒドロキシウレア(ハイドレア)

  • 骨髄での血球産生を抑制
  • 比較的副作用が少ない
  • 長期使用による二次発がんのリスクが完全には否定されていない

JAK2阻害薬:ルキソリチニブ(ジャカビ)

  • ヒドロキシウレアが効果不十分・副作用で使用不可の場合
  • JAK2の異常な活性化を抑制
  • 血球数の正常化
  • 脾腫の縮小
  • 全身症状の改善

🌱 10. 日常生活での予防と改善方法

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、日常生活でできる予防・改善方法がいくつかあります。特に相対的多血症やストレス多血症の場合は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することも少なくありません。

💧 十分な水分摂取を心がける

脱水はヘマトクリット値を上昇させる最も一般的な原因です。

水分摂取のポイント:

  • 一日を通してこまめに水分を摂取
  • 目安:食事以外に1日1〜1.5リットル
  • 少量をこまめに摂取(一度に大量摂取は避ける)

タイミング:

  • 起床時
  • 食事の前後
  • 入浴の前後
  • 就寝前

注意点:

  • カフェインを含む飲み物(コーヒー、緑茶)は利尿作用がある
  • カフェインを含まない水や麦茶も併せて摂取
  • アルコールも利尿作用が強いため、飲酒後は必ず水で水分補給
  • 夜間のトイレが気になっても、夕方までは積極的に水分摂取

🚭 禁煙する

喫煙は多血症の最も多い原因のひとつであり、禁煙は効果的な改善策です。

禁煙の効果:

  • 一酸化炭素がヘモグロビンと結合することがなくなる
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制
  • ヘマトクリット値の低下が期待できる

その他の健康効果:

  • 肺がんリスクの低下
  • 心筋梗塞リスクの低下
  • 脳卒中リスクの低下
  • COPDリスクの低下

自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診して専門的なサポートを受けることをおすすめします。

🏃 適度な運動を行う

ウォーキングなどの有酸素運動は、全身の血流を促進し、血液の循環を改善する効果があります。

運動の効果:

  • 血流がよくなることで血液の粘稠度が下がる
  • 血栓ができにくくなる
  • 肥満の解消

運動の目安:

  • 週に3〜5回
  • 1回30分程度
  • 激しい運動は脱水を招くため避ける
  • 運動中はこまめに水分補給

肥満は睡眠時無呼吸症候群やストレス多血症のリスク要因となるため、適正体重を維持することが多血症の予防・改善に役立ちます。

🍽️ 食事に気をつける

ヘマトクリット値が高い場合、食事面でも注意が必要です。

控えめにすべき食材

  • 鉄分を多く含む食材(過剰摂取は避ける)
    • ほうれん草
    • レバー
    • 牛肉
    • しじみ
  • 鉄分のサプリメント(医師に相談のうえで中止を検討)
  • 脂質の多い食事(血液をドロドロにしやすい)
    • 揚げ物
    • 脂っこい肉料理
  • プリン体を多く含む食品
    • ビールの酵母
    • レバー
    • 干物

積極的に摂取すべき食材

  • バランスの良い食事
  • 野菜や果物

😌 ストレス管理を心がける

慢性的なストレスはストレス多血症の原因となります。

ストレス管理のポイント:

  • 自分なりのストレス解消法を見つける
  • 定期的にリフレッシュする
  • 十分な睡眠を確保
  • 毎日同じ時間に就寝・起床する習慣
  • 質の良い睡眠を心がける

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • いびきがひどい
  • 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
  • 日中の眠気がひどい

これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。

🛁 入浴時の注意点

入浴は脱水の原因になりやすいため注意が必要です。

入浴時の注意点:

  • 入浴前に水分を摂取
  • 長時間の入浴を避ける
  • 熱すぎるお湯への入浴を避ける
  • 適度な温度と時間を心がける

真性多血症の方で入浴後のかゆみがある場合:

  • お湯の温度をぬるめにする
  • 体を洗うときは皮膚を強くこすらず優しく洗う

🏥 11. 病院を受診する目安

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、どのタイミングで病院を受診すべきでしょうか。以下に目安をまとめます。

必ず受診すべき場合

健康診断で以下の判定を受けた場合:

  • 「要受診」
  • 「要精密検査」
  • 「要再検査」

特に初めてヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、原因を特定するための検査が必要です。

早めに受診することをおすすめする症状

  • 頭痛やめまいが続く
  • 顔や手足が赤くなっている
  • 疲労感や息切れがある
  • 入浴後にかゆみがある
  • 高血圧を指摘されている

これらの症状は多血症に伴って現れることがあり、適切な治療が必要なサインである可能性があります。

緊急受診が必要な症状(すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶ)

脳梗塞や脳出血の症状の可能性:

  • 突然の激しい頭痛
  • 手足のしびれや麻痺
  • ろれつが回らない
  • 意識がもうろうとする

心筋梗塞や肺塞栓症の症状の可能性:

  • 胸を締め付けられるような痛み
  • 呼吸困難
  • 冷や汗

多血症は放置すると血栓症のリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要です。健康診断で異常を指摘された場合は、自己判断で様子を見るのではなく、まずは医療機関で相談するようにしましょう。

🏥 11. 病院を受診する目安

Q. ヘマトクリット値が高い場合の日常的な改善方法は?

ヘマトクリット値が高い場合、1日1〜1.5リットルを目安にこまめな水分補給を行うことが基本です。また、禁煙・週3〜5回30分程度の有酸素運動・バランスの良い食事・ストレス管理も有効です。特に相対的多血症やストレス多血症は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

📝 12. まとめ

ヘマトクリット値が高いということは、血液中の赤血球の割合が多く、血液が濃い状態であることを意味します。この状態は「多血症」と呼ばれ、原因によって以下に分類されます:

  • 相対的多血症
  • 二次性多血症
  • 真性多血症

各種多血症の特徴と治療

相対的多血症:脱水やストレスによって起こる見かけ上の多血であり、水分補給や生活習慣の改善で改善することが多い

二次性多血症:喫煙や睡眠時無呼吸症候群などが原因で起こり、原因疾患の治療によって改善が期待できる

真性多血症:骨髄の遺伝子異常によって起こる血液疾患であり、瀉血療法や薬物療法による治療が必要

重要なリスク

多血症を放置すると、血液の粘稠度が高まり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な血栓症を引き起こすリスクがあります。健康診断でヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。

日常生活での予防・改善方法

以下を心がけることで、多血症の予防・改善につなげることができます:

  • 十分な水分摂取
  • 禁煙
  • 適度な運動
  • バランスの良い食事
  • ストレス管理

気になる症状がある場合や、健康診断で再検査を勧められた場合は、お早めにご相談ください。

ヘマトクリット値が高い」と指摘されて、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ヘマトクリットという言葉自体、日常生活ではあまり耳にしない専門用語であるため、それが何を意味するのか、高いとどのような問題があるのかがわかりにくいかもしれません。

この記事では、ヘマトクリット値が高い場合に考えられる原因や症状、放置した場合のリスク、そして日常生活でできる改善方法について、わかりやすく解説していきます。健康診断の結果が気になる方、再検査を勧められた方はぜひ参考にしてください。

📖 目次

  1. ヘマトクリットとは何か
  2. ヘマトクリット値の基準値について
  3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か
  4. ヘマトクリット値が高くなる原因
  5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状
  6. 放置した場合のリスクと合併症
  7. 検査方法と受診すべき診療科
  8. 多血症の種類と診断
  9. 治療方法について
  10. 日常生活での予防と改善方法
  11. 病院を受診する目安
  12. まとめ

🩸 1. ヘマトクリットとは何か

ヘマトクリットとは、血液中に赤血球が占める割合をパーセンテージ(%)で表した数値のことです。「ヘマト」は血液、「クリット」は分離を意味しており、血液を遠心分離器にかけて測定することからこの名前がついています。

血液は大きく分けて、固形成分である「血球」と、液体成分である「血漿(けっしょう)」に分けられます。

血球には以下が含まれます:

  • 赤血球(最も多くを占める)
  • 白血球
  • 血小板

ヘマトクリット値は、この血液全体に対する赤血球の容積の割合を示しています。

簡単に言えば、ヘマトクリット値は「血液の濃さ」を表す指標といえます。この数値が高ければ血液は濃くドロドロした状態であり、低ければ血液は薄くサラサラした状態であることを意味します。

赤血球は体中に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質が肺で酸素と結合し、全身の組織に酸素を届けています。そのため、赤血球の量は体の機能を維持するうえで非常に重要であり、多すぎても少なすぎても問題が生じます。

健康診断の血液検査では、赤血球数、ヘモグロビン濃度とともにヘマトクリット値も測定されており、これら3つの指標を組み合わせて貧血や多血症の診断に活用されています。

📊 2. ヘマトクリット値の基準値について

ヘマトクリット値の基準値は、性別や年齢、検査機関によって若干異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、成人の基準値として以下の数値が示されています。

  • 男性の基準値:40〜50%程度
  • 女性の基準値:34〜45%程度

男性の方が女性よりも高い傾向にありますが、これは女性は月経によって定期的に血液が失われるため、相対的に赤血球の割合が低くなりやすいことが理由のひとつです。

また、一般的な医療機関では以下のような基準値が用いられることが多いです。

男性の場合:
・正常範囲:38.5%〜48.9%
高値:52.9%以上

女性の場合:
・正常範囲:35.5%〜43.9%
高値:47.0%以上

一方、世界保健機関(WHO)による多血症の診断基準では、より厳格な数値が設定されています。

  • 男性:ヘマトクリット値が49%を超える場合に多血症が疑われる
  • 女性:ヘマトクリット値が48%を超える場合に多血症が疑われる

なお、ヘマトクリット値は測定するタイミングによっても変動します。朝、昼、夜で数値が異なることがありますし、採血前の飲水制限の影響を受けることもあります。健康診断では採血前に食事や水分を控えるよう指示されることが多いため、軽い脱水状態となり、ヘマトクリット値が実際よりもやや高めに出ることがあります。

🔍 3. ヘマトクリット値が高いとはどういう状態か

ヘマトクリット値が基準値よりも高いということは、血液中の赤血球の割合が多くなっている状態を意味します。これは一般的に「血液が濃い」「血液がドロドロしている」と表現されることがあります。この状態は医学的には「多血症」または「赤血球増加症」と呼ばれます。

血液が濃くなると、血液の粘稠度(粘り気)が高まります。粘り気の高い血液は血管の中をスムーズに流れにくくなるため、全身の血流が悪くなります。特に細い血管では血液が通過しにくくなり、さまざまな臓器への酸素や栄養の供給が低下する可能性があります。

また、血液がドロドロしていると、血管の中で血液が固まりやすくなります。これが血栓(血の塊)の形成につながり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な疾患の原因となることがあります。

ただし、ヘマトクリット値が高いからといって、必ずしも深刻な病気があるとは限りません。一時的な脱水や生活習慣の影響で数値が上昇していることも多く、原因によっては生活習慣の改善だけで数値が正常化することもあります。

重要なのは、ヘマトクリット値が高いと指摘された場合に、その原因が何であるかを正しく把握することです。原因によって対処法が大きく異なるため、自己判断せずに医療機関で適切な検査を受けることが大切です。

⚠️ 4. ヘマトクリット値が高くなる原因

ヘマトクリット値が高くなる原因はさまざまであり、大きく分けて「相対的多血症」と「絶対的多血症」の2つに分類されます。

💧 相対的多血症

相対的多血症とは、実際に赤血球が増加しているわけではなく、血漿(血液の液体成分)が減少することで見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。血液中の水分が少なくなることで、相対的に赤血球の濃度が高く見えるのです。

相対的多血症の主な原因:

  • 脱水(最も多い原因)
    • 下痢や嘔吐
    • 発汗
    • 発熱
    • 水分摂取不足
  • 季節的要因
    • 夏場の熱中症
    • 秋から冬の乾燥した季節での脱水
    • マスク着用による渇きの自覚低下
  • ストレス多血症
    • 慢性的なストレス
    • 精神的緊張
    • 過度の飲酒・喫煙
    • 肥満
高桑康太 医師・当院治療責任者

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まず最も多いのは脱水による相対的多血症です。健康診断では朝食を抜いて採血することが多く、水分も控えがちになるため、実際よりも高く測定されることがよくあります。まずは十分な水分補給を行い、再検査を受けることをお勧めします。

ストレス多血症と呼ばれる状態も相対的多血症の一種です。働き盛りの中年男性に多くみられ、高血圧、高脂血症、高尿酸血症を伴うことが多いのが特徴です。

利尿作用のある飲み物の過剰摂取も脱水を招く原因となります:

  • コーヒー
  • 緑茶
  • その他カフェインを多く含む飲み物

🫁 絶対的多血症(二次性多血症)

絶対的多血症とは、実際に血液中の赤血球が増加している状態です。その中でも、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している場合を「二次性多血症」といいます。

二次性多血症の主な原因:

1. 喫煙(最も多い原因)

  • タバコの煙に含まれる一酸化炭素がヘモグロビンと結合
  • 一酸化炭素とヘモグロビンの結合力は酸素の約200倍
  • 体内が酸素不足に陥り、赤血球の産生が増加

2. 睡眠時無呼吸症候群

  • 睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする
  • 慢性的な低酸素状態
  • 酸素不足を補おうとして赤血球が増加

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • 肥満気味
  • いびきが大きい
  • 日中の眠気がある
  • 家族から呼吸が止まっていると指摘されたことがある

3. その他の原因

  • 肺疾患(COPD、肺気腫など)
  • 心疾患(心不全、先天性心疾患など)
  • 高地での生活
  • 腎疾患
  • エリスロポエチン産生腫瘍(腎細胞がん、肝細胞がんなど)

🧬 絶対的多血症(真性多血症)

真性多血症は、骨髄で赤血球を作る造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、赤血球が異常に増殖する病気です。

真性多血症の特徴:

  • 骨髄増殖性腫瘍のひとつに分類
  • 10万人あたり年間2人程度が発症(比較的まれ)
  • 60歳前後に発症のピーク
  • 95%以上の症例でJAK2遺伝子の変異を認める

JAK2遺伝子の変異により、細胞増殖のシグナルが常に活性化された状態となり、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球がどんどん作られてしまいます。赤血球だけでなく、白血球や血小板も増加することがあります。

真性多血症は適切な治療を受ければ10年以上の生存が期待できる疾患ですが、放置すると血栓症のリスクが高まります。また、一部の患者さんでは長期経過の中で骨髄線維症や急性白血病に移行することがあるため、定期的な経過観察が必要です。

🤕 5. ヘマトクリット値が高い場合に現れる症状

ヘマトクリット値が高い状態、すなわち多血症では、血液の粘稠度が増すことでさまざまな症状が現れることがあります。ただし、軽度の多血症では無症状のことも多く、健康診断で偶然発見されるケースも少なくありません。

多血症で現れやすい症状:

脳・神経症状

  • 頭痛
  • めまい・ふらつき
  • 耳鳴り
  • 視力障害
  • 思考力の低下

皮膚症状

  • 顔面の紅潮やほてり
  • 皮膚の赤み(特に顔や手足)
  • 入浴後のかゆみ(真性多血症に特徴的)

全身症状

  • 疲労感や脱力感
  • 息切れ(特に運動時)
  • 動悸

循環器症状

  • 高血圧
  • 血液がドロドロになることで心臓により強い力が必要

その他の症状

  • 痛風(高尿酸血症)
  • 脾臓の腫れ(脾腫)による腹部膨満感
  • 食欲低下
  • 発熱・寝汗・体重減少(真性多血症の場合)

入浴後のかゆみは真性多血症の特徴的な症状で、「aquagenic pruritus(アクアジェニック プルリタス)」と呼ばれます。温かいお湯に浸かることで誘発されるかゆみで、ヒスタミンなどの物質が関与していると考えられています。

⚡ 6. 放置した場合のリスクと合併症

ヘマトクリット値が高い状態を放置すると、さまざまな深刻な合併症を引き起こす可能性があります。最も注意すべきは血栓症です。

血栓症のリスク

血液がドロドロした状態が続くと、血管の中で血液が固まって血栓(血の塊)ができやすくなります。

主な血栓症:

  • 脳梗塞
    • 手足の麻痺やしびれ
    • 言葉が出にくくなる
    • 意識障害
  • 心筋梗塞
    • 胸を締め付けられるような激しい痛み
    • 息苦しさ
    • 冷や汗
    • 最悪の場合は心停止
  • 下肢深部静脈血栓症
    • 脚のむくみや痛み、腫れ
    • 血栓が肺に飛ぶと肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
    • 突然の呼吸困難や胸痛
    • 最悪の場合は突然死

その他の合併症

高血圧の持続により:

  • 動脈硬化の進行
  • 血管が脆くなる
  • 脳出血のリスク増加

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合:

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 不整脈
  • 心不全
  • 日中の眠気による事故リスク

真性多血症の長期的リスク:

  • 骨髄線維症への移行(10〜15%程度)
  • 急性白血病への移行(1〜2.5%程度)

🔬 7. 検査方法と受診すべき診療科

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、まずは再検査を受けることが大切です。一時的な脱水などが原因であれば、再検査で正常値に戻っていることもあります。

再検査の注意点

  • 検査前に十分な水分を摂取
  • 健康診断では朝食を抜いても、水分はしっかり摂る
  • 検査機関の指示に従う

受診すべき診療科

まず内科を受診しましょう。内科で以下の検査を行います:

  • 血液検査(血液全般の状態を調査)
    • 赤血球数
    • ヘモグロビン濃度
    • 白血球数
    • 血小板数
  • 脱水の有無を確認する検査
  • 他の臓器に異常がないかを調べる検査

原因特定のための検査

エリスロポエチン(赤血球産生ホルモン)の血中濃度測定:

  • 二次性多血症:エリスロポエチン濃度が高め
  • 真性多血症:エリスロポエチン濃度が低め〜正常範囲

JAK2遺伝子変異の検査

  • 血液検査で実施可能
  • 95%以上の真性多血症患者さんでJAK2変異を検出

確定診断のための検査

  • 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
  • 画像検査
    • 胸部CT検査
    • 腹部CT検査
    • 心エコー検査
  • 睡眠ポリグラフ検査(睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合)

詳しい検査や専門的な治療が必要な場合は、血液内科への紹介となることがあります。真性多血症などの血液疾患は血液内科の専門領域です。

📋 8. 多血症の種類と診断

多血症は、その原因によっていくつかの種類に分類されます。正確な診断を受けることで、適切な治療方針を立てることができます。

💧 相対的多血症(見かけ上の多血症)

相対的多血症は、実際には赤血球の総量は増えていないものの、血漿量の減少によって見かけ上ヘマトクリット値が高くなっている状態です。

診断のポイント:

  • 血液検査で赤血球数やヘマトクリット値が高い
  • 総血液量は変わっていない
  • 水分補給をして再検査を行うと数値が正常化することが多い

ストレス多血症(ガイスベック症候群)は相対的多血症の一種で、以下を背景に発症:

  • 慢性的なストレス
  • 高血圧
  • 肥満
  • 喫煙
  • 過度の飲酒

🔄 二次性多血症

二次性多血症は、何らかの基礎疾患や環境要因が原因で赤血球が増加している状態です。体内の酸素不足を補おうとして赤血球の産生が亢進することが主な原因です。

診断のポイント:

  • エリスロポエチン濃度が高い
  • 何らかの原因で慢性的な低酸素状態が続いている
  • 原因疾患の特定が重要

原因検索のための問診・検査:

  • 喫煙歴
  • 睡眠時の無呼吸の有無
  • 肺疾患や心疾患の既往
  • 肺機能検査
  • 心エコー検査
  • 腹部CT検査(腎臓や肝臓の腫瘍の有無を確認)

🧬 真性多血症

真性多血症は、骨髄の造血幹細胞に遺伝子変異が生じることで、エリスロポエチンの刺激がなくても赤血球が過剰に産生される病気です。慢性骨髄増殖性腫瘍に分類されます。

2016年のWHO分類による真性多血症の診断基準

大基準:

  1. ヘモグロビン値が男性で16.5g/dL超、女性で16.0g/dL超、またはヘマトクリット値が男性で49%超、女性で48%超
  2. 骨髄生検で三系統(赤血球系、白血球系、血小板系)の血球増加を伴う過形成髄
  3. JAK2 V617F変異またはJAK2エクソン12変異が存在すること

小基準:

  • 血清エリスロポエチン値が正常範囲以下であること

診断条件:

  • 大基準を3つすべて満たす
  • または大基準の最初の2つと小基準を満たす

💊 9. 治療方法について

多血症の治療は、その原因によって大きく異なります。相対的多血症と二次性多血症は原因の除去や基礎疾患の治療が中心となりますが、真性多血症では血栓症の予防を目的とした積極的な治療が必要となります。

💧 相対的多血症の治療

脱水が原因の場合

  • 適切な水分補給(一日1〜1.5リットルを目安)
  • こまめな水分摂取
  • カフェインやアルコールだけでなく、水やお茶も併せて摂取

ストレス多血症の場合

  • 禁煙
  • 節酒
  • 適度な運動
  • ストレス管理
  • 減量
  • 高血圧、脂質異常症、糖尿病などの合併症治療

🔄 二次性多血症の治療

二次性多血症では、原因となっている基礎疾患の治療が最優先です。

喫煙が原因の場合

  • 禁煙が必要
  • 一酸化炭素ヘモグロビンが減少
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制

睡眠時無呼吸症候群が原因の場合

  • CPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療
  • 睡眠中に鼻や口からゆるやかに空気を送り込む装置
  • 気道の閉塞を防いで無呼吸を改善
  • 肥満がある場合は減量も重要

その他の疾患が原因の場合

  • 肺疾患・心疾患:それぞれの疾患に対する治療
  • 酸素療法が必要になることもある
  • 治療が困難な場合:瀉血療法を検討

🧬 真性多血症の治療

真性多血症の治療目標は、血栓症の予防と症状の改善です。ヘマトクリット値を45%未満にコントロールすることが推奨されています。

瀉血療法

治療の中心となるのは瀉血療法です。

  • 献血と同じ方法で静脈から血液を抜き取る
  • 1回に200〜500mLの血液を抜き取る
  • 週に1〜2回程度のペース
  • 高齢者や心血管疾患患者:1回100〜200mLに減量して頻回実施
  • 体内の鉄分も除去し、赤血球産生を抑制する効果もある

薬物療法

低用量アスピリン(75〜100mg/日):

  • 血栓症の予防
  • 血小板の働きを抑制
  • 出血リスクがある場合は使用を控える

細胞減少療法(血栓症リスクが高い患者):

  • 60歳以上の方
  • 血栓症の既往がある方

第一選択薬:ヒドロキシウレア(ハイドレア)

  • 骨髄での血球産生を抑制
  • 比較的副作用が少ない
  • 長期使用による二次発がんのリスクが完全には否定されていない

JAK2阻害薬:ルキソリチニブ(ジャカビ)

  • ヒドロキシウレアが効果不十分・副作用で使用不可の場合
  • JAK2の異常な活性化を抑制
  • 血球数の正常化
  • 脾腫の縮小
  • 全身症状の改善

🌱 10. 日常生活での予防と改善方法

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、日常生活でできる予防・改善方法がいくつかあります。特に相対的多血症やストレス多血症の場合は、生活習慣の改善だけで数値が正常化することも少なくありません。

💧 十分な水分摂取を心がける

脱水はヘマトクリット値を上昇させる最も一般的な原因です。

水分摂取のポイント:

  • 一日を通してこまめに水分を摂取
  • 目安:食事以外に1日1〜1.5リットル
  • 少量をこまめに摂取(一度に大量摂取は避ける)

タイミング:

  • 起床時
  • 食事の前後
  • 入浴の前後
  • 就寝前

注意点:

  • カフェインを含む飲み物(コーヒー、緑茶)は利尿作用がある
  • カフェインを含まない水や麦茶も併せて摂取
  • アルコールも利尿作用が強いため、飲酒後は必ず水で水分補給
  • 夜間のトイレが気になっても、夕方までは積極的に水分摂取

🚭 禁煙する

喫煙は多血症の最も多い原因のひとつであり、禁煙は効果的な改善策です。

禁煙の効果:

  • 一酸化炭素がヘモグロビンと結合することがなくなる
  • 体内の酸素供給が改善
  • 赤血球の過剰産生が抑制
  • ヘマトクリット値の低下が期待できる

その他の健康効果:

  • 肺がんリスクの低下
  • 心筋梗塞リスクの低下
  • 脳卒中リスクの低下
  • COPDリスクの低下

自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診して専門的なサポートを受けることをおすすめします。

🏃 適度な運動を行う

ウォーキングなどの有酸素運動は、全身の血流を促進し、血液の循環を改善する効果があります。

運動の効果:

  • 血流がよくなることで血液の粘稠度が下がる
  • 血栓ができにくくなる
  • 肥満の解消

運動の目安:

  • 週に3〜5回
  • 1回30分程度
  • 激しい運動は脱水を招くため避ける
  • 運動中はこまめに水分補給

肥満は睡眠時無呼吸症候群やストレス多血症のリスク要因となるため、適正体重を維持することが多血症の予防・改善に役立ちます。

🍽️ 食事に気をつける

ヘマトクリット値が高い場合、食事面でも注意が必要です。

控えめにすべき食材

  • 鉄分を多く含む食材(過剰摂取は避ける)
    • ほうれん草
    • レバー
    • 牛肉
    • しじみ
  • 鉄分のサプリメント(医師に相談のうえで中止を検討)
  • 脂質の多い食事(血液をドロドロにしやすい)
    • 揚げ物
    • 脂っこい肉料理
  • プリン体を多く含む食品
    • ビールの酵母
    • レバー
    • 干物

積極的に摂取すべき食材

  • バランスの良い食事
  • 野菜や果物

😌 ストレス管理を心がける

慢性的なストレスはストレス多血症の原因となります。

ストレス管理のポイント:

  • 自分なりのストレス解消法を見つける
  • 定期的にリフレッシュする
  • 十分な睡眠を確保
  • 毎日同じ時間に就寝・起床する習慣
  • 質の良い睡眠を心がける

睡眠時無呼吸症候群の可能性がある症状:

  • いびきがひどい
  • 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された
  • 日中の眠気がひどい

これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。

🛁 入浴時の注意点

入浴は脱水の原因になりやすいため注意が必要です。

入浴時の注意点:

  • 入浴前に水分を摂取
  • 長時間の入浴を避ける
  • 熱すぎるお湯への入浴を避ける
  • 適度な温度と時間を心がける

真性多血症の方で入浴後のかゆみがある場合:

  • お湯の温度をぬるめにする
  • 体を洗うときは皮膚を強くこすらず優しく洗う

🏥 11. 病院を受診する目安

ヘマトクリット値が高いと指摘された場合、どのタイミングで病院を受診すべきでしょうか。以下に目安をまとめます。

必ず受診すべき場合

健康診断で以下の判定を受けた場合:

  • 「要受診」
  • 「要精密検査」
  • 「要再検査」

特に初めてヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、原因を特定するための検査が必要です。

早めに受診することをおすすめする症状

  • 頭痛やめまいが続く
  • 顔や手足が赤くなっている
  • 疲労感や息切れがある
  • 入浴後にかゆみがある
  • 高血圧を指摘されている

これらの症状は多血症に伴って現れることがあり、適切な治療が必要なサインである可能性があります。

緊急受診が必要な症状(すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶ)

脳梗塞や脳出血の症状の可能性:

  • 突然の激しい頭痛
  • 手足のしびれや麻痺
  • ろれつが回らない
  • 意識がもうろうとする

心筋梗塞や肺塞栓症の症状の可能性:

  • 胸を締め付けられるような痛み
  • 呼吸困難
  • 冷や汗

多血症は放置すると血栓症のリスクが高まるため、早期発見・早期治療が重要です。健康診断で異常を指摘された場合は、自己判断で様子を見るのではなく、まずは医療機関で相談するようにしましょう。

🏥 11. 病院を受診する目安

📝 12. まとめ

ヘマトクリット値が高いということは、血液中の赤血球の割合が多く、血液が濃い状態であることを意味します。この状態は「多血症」と呼ばれ、原因によって以下に分類されます:

  • 相対的多血症
  • 二次性多血症
  • 真性多血症

各種多血症の特徴と治療

相対的多血症:脱水やストレスによって起こる見かけ上の多血であり、水分補給や生活習慣の改善で改善することが多い

二次性多血症:喫煙や睡眠時無呼吸症候群などが原因で起こり、原因疾患の治療によって改善が期待できる

真性多血症:骨髄の遺伝子異常によって起こる血液疾患であり、瀉血療法や薬物療法による治療が必要

重要なリスク

多血症を放置すると、血液の粘稠度が高まり、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な血栓症を引き起こすリスクがあります。健康診断でヘマトクリット値の異常を指摘された場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。

日常生活での予防・改善方法

以下を心がけることで、多血症の予防・改善につなげることができます:

  • 十分な水分摂取
  • 禁煙
  • 適度な運動
  • バランスの良い食事
  • ストレス管理

気になる症状がある場合や、健康診断で再検査を勧められた場合は、お早めにご相談ください。

監修者医師

高桑 康太 医師

保有資格

ミラドライ認定医

略歴

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

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