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Vライン しこり 押すと痛い:原因から治療まで専門医が詳しく解説

Vライン(鼠径部)に「しこり」を発見し、押すと痛みを感じて不安になっている方は少なくありません。この部位は非常にデリケートで、様々な疾患が発症する可能性があるため、「恥ずかしくて受診しにくい」と感じる方も多いでしょう。

しかし、Vラインのしこりは放置すると悪化する可能性があり、適切な診断と治療が重要です。本記事では、アイシークリニック渋谷院の専門医の視点から、Vラインにできるしこりの原因、症状、診断方法、治療法について詳しく解説いたします。

Vラインとは何か

Vラインとは、足の付け根から斜め上に向かうライン、いわゆるビキニライン付近の領域を指します。医学的には「鼠径部(そけいぶ)」と呼ばれ、恥骨の左右外側部分にあたります。この部位には以下の重要な構造が存在します:

  • リンパ節:感染や腫瘍に対する免疫反応の拠点
  • 皮脂腺・汗腺:皮脂や汗の分泌を行う腺組織
  • 毛包:アンダーヘアが生える部分
  • バルトリン腺:女性の膣口付近にある分泌腺
  • 皮下組織:脂肪や結合組織が豊富な層

Vラインがしこりのできやすい理由

Vラインは以下の理由から、しこりができやすい部位として知られています:

  1. 摩擦による刺激:下着や衣服との摩擦が常に加わる
  2. 湿度と温度:汗がこもりやすく、細菌繁殖に適した環境
  3. 毛の処理:カミソリや脱毛による皮膚ダメージ
  4. 分泌腺の多さ:皮脂や汗の分泌が活発
  5. リンパ節の存在:感染に対する免疫反応でリンパ節が腫脹

Vラインにできるしこりの種類と原因

Vラインにできるしこりには、良性から感染性まで様々な種類があります。それぞれの特徴を理解することで、適切な対応が可能になります。

1. バルトリン腺嚢胞・膿瘍

バルトリン腺嚢胞は、女性に特有の疾患で、Vラインのしこりの中でも特に多く見られます。

特徴と症状

  • 発症年齢:20~50歳代の女性に多い
  • 発生部位:膣口の左右どちらか一方(片側性)
  • 大きさ:数mmから卵大まで様々
  • 痛み:初期は無痛、感染すると強い痛み

原因

バルトリン腺は女性の膣口付近の左右に存在する、えんどう豆ほどの大きさの分泌腺です。性行為時の潤滑液を分泌する重要な役割を果たしています。この腺の開口部が何らかの理由で閉塞し、分泌液が蓄積することで嚢胞が形成されます。

閉塞の原因として考えられるもの:

  • 炎症による開口部の腫れ
  • 機械的な外傷(自転車、締め付けの強い下着など)
  • 大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌などの細菌感染
  • 稀に淋菌などの性感染症

進行パターン

  1. 無症状期:小さな嚢胞で痛みなし
  2. 症状出現期:大きくなり圧迫感や違和感
  3. 感染期:細菌感染により膿瘍化、強い痛み・発熱

2. 粉瘤(表皮嚢腫)

**粉瘤(ふんりゅう)**は、皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に角質や皮脂などの老廃物が蓄積された状態です。全身どこにでもできますが、Vラインは特に発症しやすい部位です。

特徴と症状

  • 外観:中央に小さな黒い点(開口部)がある半球状の盛り上がり
  • 大きさ:数mmから数cmまで
  • 硬さ:通常は比較的硬い
  • 痛み:通常は無痛、感染時は強い痛み
  • 臭い:圧迫すると悪臭のあるドロドロした内容物が出ることがある

原因

粉瘤の正確な原因は完全には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています:

  • 外傷による皮膚の陥入
  • 毛包の閉塞
  • ヒトパピローマウイルス(HPV)感染
  • 遺伝的要因

感染時の症状(炎症性粉瘤)

  • 急激な腫れと赤み
  • 激しい痛み
  • 発熱
  • 膿の排出

3. 毛嚢炎・毛包炎

**毛嚢炎(もうのうえん)**は、毛穴に細菌が感染して炎症を引き起こした状態です。デリケートゾーンではアンダーヘアの自己処理をきっかけに生じることが多い疾患です。

特徴と症状

  • 外観:毛穴の部分がプクッと盛り上がる
  • 色調:赤みを帯びた小さな膨らみ
  • 痛み:軽度から中等度の痛み
  • :膿を伴うケースが多い
  • かゆみ:軽度のかゆみを伴うことがある

進行段階

  1. 毛嚢炎:毛穴周囲の軽度な炎症
  2. せつ(おでき):深部まで炎症が進行し、硬いしこりを形成
  3. よう:複数のせつが融合し、膿瘍を形成

原因菌

  • 黄色ブドウ球菌(最も多い)
  • 表皮ブドウ球菌
  • 連鎖球菌
  • 稀にMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)

4. リンパ節腫脹

リンパ節腫脹は、感染症や免疫反応、稀に悪性腫瘍などによってリンパ節が腫れる状態です。

特徴と症状

  • 硬さ:感染性は比較的柔らかく、悪性は硬い
  • 可動性:良性は可動性あり、悪性は固定されることが多い
  • 痛み:感染性は痛みあり、悪性は無痛のことが多い
  • 大きさ:1cm以上に腫大

原因

  • 感染性:細菌・ウイルス感染、性感染症
  • 非感染性:悪性リンパ腫、転移性腫瘍、自己免疫疾患

5. 脂肪腫

脂肪腫は、皮下にできる良性の脂肪の塊で、通常は柔らかく、痛みはありません。

特徴と症状

  • 硬さ:柔らかい(深部では硬く感じることもある)
  • 可動性:周囲組織との癒着がなく可動性良好
  • 痛み:通常は無痛(神経圧迫時は痛みあり)
  • 成長:ゆっくりと大きくなる

6. 鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニアは、腹部の内容物が鼠径部の筋膜の隙間から突出する状態で、「脱腸」とも呼ばれます。

特徴と症状

  • 可変性:立位や腹圧上昇時に膨らみ、臥位で消失
  • 硬さ:比較的柔らかい
  • 痛み:軽度から中等度
  • 嵌頓:突出部が戻らなくなると激痛

押すと痛いしこりの特徴

Vラインにできるしこりで「押すと痛い」症状がある場合、以下の疾患の可能性が高くなります。

感染を伴うしこりの特徴

1. 炎症の5大徴候

  • 発赤(ほっせき):患部が赤くなる
  • 腫脹(しゅちょう):腫れる
  • 疼痛(とうつう):痛み
  • 熱感(ねつかん):患部が熱を持つ
  • 機能障害:歩行困難、座位時の不快感

2. 全身症状

  • 発熱(38度以上)
  • 倦怠感
  • 食欲不振
  • リンパ節の腫れ

痛みの種類と特徴

圧痛(押すと痛い)

  • 鋭い痛み:感染性疾患(バルトリン腺膿瘍、炎症性粉瘤など)
  • 鈍い痛み:リンパ節腫脹、脂肪腫の神経圧迫

自発痛(何もしなくても痛い)

  • 拍動性の痛み:膿瘍形成
  • 持続性の痛み:炎症の進行

運動時痛

  • 歩行時痛:大きなしこりや炎症
  • 座位時痛:バルトリン腺疾患

危険なサインと受診の目安

以下の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診することをお勧めします。

緊急受診が必要な症状

  1. 高熱(38.5度以上)を伴う
  2. 激しい痛みで歩行困難
  3. しこりが急激に大きくなる
  4. 皮膚の色が紫や黒に変化
  5. 膿や血液の大量流出
  6. 全身の倦怠感や意識混濁

早期受診が推奨される症状

  1. 1週間以上持続するしこり
  2. 徐々に大きくなるしこり
  3. 押すと痛いしこり
  4. 発熱を伴うしこり
  5. 日常生活に支障をきたす症状

経過観察で良い場合

  1. 小さく(1cm未満)、痛みのないしこり
  2. 可動性があり、柔らかいしこり
  3. 大きさに変化がないしこり

ただし、40歳以上の方や、家族歴に悪性腫瘍がある方は、念のため受診をお勧めします。

診断方法

Vラインのしこりの診断には、以下の検査が行われます。

1. 問診・視診・触診

問診内容

  • 症状の発症時期
  • 痛みの性質(圧痛、自発痛など)
  • 大きさの変化
  • 発熱の有無
  • 月経周期との関連
  • 性行為の有無
  • 既往歴・家族歴

視診のポイント

  • しこりの大きさ、形状
  • 皮膚の色調変化
  • 開口部の有無
  • 周囲の炎症所見

触診の評価項目

  • 硬さ(軟らかい、硬い、弾性硬)
  • 可動性(良好、制限あり、固定)
  • 圧痛の有無
  • 波動感(液体の貯留を示唆)
  • 境界の明瞭性

2. 血液検査

一般的な血液検査

  • 白血球数:感染症の指標
  • CRP(C反応性蛋白):炎症反応の指標
  • 血沈:炎症の程度を評価

必要に応じて追加される検査

  • 血液培養
  • 腫瘍マーカー
  • 免疫学的検査

3. 画像検査

超音波検査(エコー)

  • 適応:しこりの内部構造の評価
  • 利点:非侵襲的、リアルタイム観察可能
  • 評価項目
    • 嚢胞性か充実性か
    • 血流の有無
    • 周囲組織との関係

CT検査

  • 適応:深部の評価、悪性疑いの場合
  • 利点:詳細な解剖学的情報
  • 造影剤使用:血管分布や炎症の評価

MRI検査

  • 適応:軟部組織の詳細な評価
  • 利点:コントラスト分解能が高い
  • T1・T2強調画像:組織性状の鑑別

4. 細菌学的検査

分泌物の培養検査

  • 目的:原因菌の同定と薬剤感受性試験
  • 検体:膿汁、分泌物
  • 結果判定:48-72時間後

性感染症検査

  • 淋菌・クラミジア検査
  • ヘルペスウイルス検査
  • 梅毒血清反応

5. 病理組織検査

針生検

  • 適応:悪性の疑いがある場合
  • 方法:細い針で組織を採取
  • 利点:外来で施行可能

切除生検

  • 適応:確定診断が必要な場合
  • 方法:しこり全体を摘出
  • 利点:治療と診断を同時に実施

治療方法

Vラインのしこりの治療は、原因疾患によって大きく異なります。

バルトリン腺嚢胞・膿瘍の治療

保存的治療

温坐浴(おんざよく)

  • 方法:5-8cmの湯に患部を10-15分間浸す
  • 頻度:1日2回
  • 効果:軽度の嚢胞では自然消失することがある
  • 適応:40歳未満で症状が軽微な場合

薬物療法

  • 抗生物質:感染を伴う場合
    • セファレキシン(500mg 1日3回)
    • クラリスロマイシン(200mg 1日2回)
  • 消炎鎮痛剤:痛みと炎症の軽減
    • ロキソプロフェン(60mg 1日3回)
    • アセトアミノフェン(500mg 1回)

外科的治療

穿刺吸引

  • 方法:注射針で嚢胞内容液を吸引
  • 利点:侵襲が少ない
  • 欠点:再発率が高い(70-80%)

切開排膿

  • 方法:メスで切開し膿を排出
  • 適応:膿瘍形成時の緊急処置
  • 麻酔:局所麻酔下で施行

開窓術(造袋術)

  • 方法:嚢胞と外陰部表面に永久的な開口部を作成
  • 利点:再発率が低い(10-15%)
  • 手術時間:15-30分
  • 麻酔:局所麻酔または静脈麻酔

Word catheter留置

  • 方法:小さなバルーンカテーテルを嚢胞内に留置
  • 期間:4-6週間
  • 利点:外来で施行可能

摘出術

  • 適応:再発を繰り返す場合、40歳以上
  • 方法:バルトリン腺全体を摘出
  • 注意点:分泌機能の永久的喪失

粉瘤の治療

保存的治療

抗生物質治療(感染時)

  • セファレキシン(500mg 1日3回)
  • クリンダマイシン(300mg 1日3回)

局所治療

  • 抗菌軟膏の塗布
  • 温罨法(おんあんぽう)

外科的治療

単純摘出術

  • 適応:非感染時の小さな粉瘤
  • 方法:嚢胞壁を含めて完全摘出
  • 麻酔:局所麻酔
  • 再発率:ほぼ0%

へそ抜き法

  • 適応:開口部が明瞭な場合
  • 方法:開口部から嚢胞壁を反転摘出
  • 利点:傷跡が小さい

切開排膿+二期的摘出

  • 適応:感染を伴う粉瘤
  • 第一期:切開排膿と感染コントロール
  • 第二期:炎症軽快後に嚢胞摘出

毛嚢炎・毛包炎の治療

軽症例

外用治療

  • ムピロシン軟膏(1日3回塗布)
  • フシジン酸ナトリウム軟膏(1日2-3回)

清潔保持

  • 患部の清潔な洗浄
  • 適切な保湿

中等症〜重症例

全身抗生物質治療

  • セファレキシン(500mg 1日3回、7-10日間)
  • クリンダマイシン(300mg 1日3回、7-10日間)
  • MRSA疑いの場合:バンコマイシン、リネゾリドなど

外科的処置

  • 切開排膿
  • デブリードマン(壊死組織除去)

リンパ節腫脹の治療

感染性リンパ節炎

抗生物質治療

  • 原因菌に応じた適切な抗生物質選択
  • 治療期間:10-14日間

悪性リンパ腫

  • 血液内科での精査・治療
  • 化学療法、放射線治療など

脂肪腫の治療

経過観察

  • 症状がない小さなもの
  • 定期的なサイズチェック

手術摘出

  • 適応
    • 症状を伴う場合
    • 大きくなって美容的問題となる場合
    • 悪性の可能性を否定できない場合
  • 方法:局所麻酔下での摘出術

自宅でできるケア方法

医療機関での治療と並行して、自宅でできるケアも症状の改善に重要な役割を果たします。

基本的なケア

清潔の維持

正しい洗浄方法

  1. 洗浄頻度:1日1-2回
  2. 水温:ぬるま湯(37-38度)
  3. 洗浄剤:低刺激性の石鹸または専用洗浄剤
  4. 方法
    • 前から後ろに向かって優しく洗う
    • ゴシゴシこすらない
    • 指の腹で泡立てて洗う
  5. すすぎ:十分にすすぐ
  6. 乾燥:清潔なタオルで軽く押さえるように水分を取る

避けるべきもの

  • 香料入りの石鹸
  • アルコール系洗浄剤
  • スクラブ入り洗浄剤
  • 過度な洗浄

適切な下着の選択

推奨される下着

  • 素材:綿100%
  • 形状:ゆったりとしたもの
  • :白または淡色(漂白剤の影響を最小限に)

避けるべき下着

  • 化繊素材(ナイロン、ポリエステル)
  • 締め付けの強いもの
  • レースやシームの多いもの

温坐浴の実施方法

準備するもの

  • 清潔な洗面器またはビデ
  • ぬるま湯(38-40度)
  • 清潔なタオル

実施手順

  1. 清潔な環境:使用する洗面器を消毒
  2. 適温の湯:5-8cmの深さまでぬるま湯を張る
  3. 座浴:10-15分間患部を浸す
  4. 頻度:1日2-3回
  5. 後処理:清潔なタオルで水分を取り、よく乾燥させる

注意事項

  • 入浴剤や石鹸は使用しない
  • 長時間の浸漬は避ける
  • 他の人との共用は避ける

生活習慣の改善

食事・栄養

免疫力向上に役立つ食品

  • ビタミンC:柑橘類、イチゴ、ブロッコリー
  • ビタミンE:ナッツ類、植物油
  • 亜鉛:牡蠣、赤身肉、豆類
  • プロバイオティクス:ヨーグルト、発酵食品

避けるべき食品

  • 過度な糖分
  • アルコール
  • 刺激の強い香辛料

睡眠・休息

  • 睡眠時間:7-8時間の質の良い睡眠
  • 就寝環境:適温・適湿の維持
  • ストレス管理:リラクゼーション、瞑想

運動・活動

推奨される運動

  • 軽いウォーキング
  • ストレッチング
  • ヨガ

避けるべき活動

  • 激しい運動
  • 長時間の自転車乗車
  • 締め付けのきつい衣類での運動

痛みの管理

市販薬の使用

外用薬

  • 抗菌軟膏(医師の指示がある場合)
  • 保湿剤

内服薬

  • 解熱鎮痛剤
    • アセトアミノフェン(500mg、1日3回まで)
    • イブプロフェン(200mg、1日3回まで)

注意事項

  • 医師の指示なく抗生物質は使用しない
  • ステロイド外用薬の自己判断での使用は避ける
  • 症状が悪化した場合は速やかに受診

予防方法

Vラインのしこりを予防するためには、日常的な注意とケアが重要です。

アンダーヘアの適切な処理

推奨される方法

トリミング

  • 道具:清潔なハサミまたは電気シェーバー
  • 長さ:2-3cm程度
  • 頻度:月1-2回

医療脱毛

  • 利点:毛嚢炎の根本的予防
  • 方法:レーザー脱毛、IPL脱毛
  • 注意:信頼できる医療機関で実施

避けるべき方法

カミソリでの剃毛

  • 皮膚損傷のリスクが高い
  • 毛嚢炎の原因となりやすい

毛抜きでの処理

  • 毛包への強い刺激
  • 埋没毛の原因

脱毛クリーム

  • デリケートゾーンには刺激が強すぎる
  • アレルギー反応のリスク

日常生活での注意点

衣類の選択

下着

  • 綿素材100%
  • ゆったりとしたフィット
  • 毎日の交換

アウターウェア

  • 締め付けの少ないボトムス
  • 通気性の良い素材
  • 長時間の着用を避ける

生理時のケア

生理用品の選択

  • ナプキン:こまめな交換(2-3時間ごと)
  • タンポン:適切なサイズの選択
  • 月経カップ:清潔な使用

かぶれ対策

  • デリケートゾーン用のナプキン使用
  • 布ナプキンの検討
  • 清潔な環境の維持

性生活での注意

感染予防

  • コンドームの適切な使用
  • パートナーの健康状態の確認
  • 性行為前後の清潔な洗浄

潤滑剤の使用

  • 水溶性潤滑剤の選択
  • 添加物の少ないもの
  • アレルギーテストの実施

定期健診の重要性

婦人科検診

頻度:年1回の定期検診 検査内容

  • 視診・触診
  • 細胞診
  • 超音波検査

セルフチェック

頻度:月1回 方法

  1. 手鏡を使用した観察
  2. 触診による異常の確認
  3. 症状の記録

チェックポイント

  • 新しいしこりの有無
  • 既存のしこりのサイズ変化
  • 痛み・かゆみなどの症状
  • 分泌物の変化

よくある質問(FAQ)

Q1. Vラインのしこりは何科を受診すればよいですか?

A1. 女性の場合は婦人科・産婦人科が最も適切です。特にバルトリン腺関連の疾患が多いためです。婦人科が近くにない場合は、皮膚科形成外科でも診察可能です。男性の場合は泌尿器科または皮膚科を受診してください。

Q2. しこりを発見してからどのくらいで受診すべきですか?

A2. 以下の場合は速やかに受診してください:
痛みを伴う場合:1-2日以内
発熱がある場合:当日中
急激に大きくなる場合:1-2日以内
痛みがない場合でも:1週間以内

Q3. 自分でしこりを潰しても大丈夫ですか?

感染拡大のリスク
周囲組織への損傷
瘢痕形成の可能性
完治の遅延
医療機関での適切な治療を受けることが重要です。

Q4. バルトリン腺嚢胞は性感染症ですか?

A4. 基本的には性感染症ではありません。バルトリン腺の開口部が機械的な刺激や炎症で閉塞することが原因です。ただし、稀に淋菌やクラミジアなどの性感染症が原因となることもあるため、医師の診察で原因を確認することが大切です。

Q5. 妊娠中にVラインのしこりができた場合の対処法は?

A5. 妊娠中は以下の点に注意が必要です:

  • 速やかに産婦人科を受診
  • 使用できる薬剤が制限される
  • 手術の適応も慎重に判断
  • 自己判断での薬剤使用は避ける

かかりつけの産婦人科医に相談することが最も安全です。

Q6. しこりの治療費はどのくらいかかりますか?

A6. 診療内容により異なりますが、保険診療での目安:

診察・検査

  • 初診料:約3,000円
  • 超音波検査:約1,500円
  • 血液検査:約2,000-5,000円

治療費

  • 薬物療法:約1,000-3,000円/月
  • 穿刺吸引:約3,000-5,000円
  • 切開排膿:約5,000-10,000円
  • 開窓術:約15,000-30,000円
  • 摘出術:約20,000-50,000円

※3割負担での概算。詳細は受診時にお尋ねください。

Q7. 治療後の再発予防について教えてください

A7. 再発予防のポイント:

バルトリン腺嚢胞

  • 開窓術を選択することで再発率を下げる
  • 適切な会陰部のケア
  • 刺激の少ない下着の着用

粉瘤

  • 嚢胞壁の完全摘出が重要
  • 摩擦の軽減
  • 清潔な環境の維持

毛嚢炎

  • アンダーヘアの適切な処理
  • 医療脱毛の検討
  • 免疫力の維持

Q8. 市販薬で治療は可能ですか?

A8. 軽症の毛嚢炎以外は市販薬での治療は推奨されません。理由:

  • 原因の正確な診断が必要
  • 適切な抗生物質の選択が重要
  • 外科的処置が必要な場合が多い

症状が軽微でも、まずは医師の診察を受けることをお勧めします。

Q9. パートナーにうつる可能性はありますか?

A9. 疾患により異なります:

感染しないもの

  • バルトリン腺嚢胞(非感染性)
  • 粉瘤
  • 脂肪腫

感染の可能性があるもの

  • 毛嚢炎(直接接触による)
  • 性感染症が原因の場合

不安な場合は、医師に相談し、必要に応じてパートナーも検査を受けることをお勧めします。

Q10. 生理周期と関係はありますか?

A10. 一部の疾患では関連があります:

関連する可能性があるもの

  • バルトリン腺嚢胞:ホルモン変動による分泌量の変化
  • 毛嚢炎:生理用品による刺激

関連しないもの

  • 粉瘤
  • 脂肪腫

症状の変化を記録し、医師に報告すると診断の参考になります。

まとめ

Vラインにできるしこりで「押すと痛い」症状がある場合、様々な原因が考えられます。最も多いのはバルトリン腺嚢胞・膿瘍、粉瘤、毛嚢炎ですが、それぞれ治療法が大きく異なるため、正確な診断が不可欠です。

重要なポイント

  1. 早期受診の重要性
    • 痛みを伴うしこりは感染や炎症の可能性が高い
    • 適切な治療により短期間で改善が期待できる
    • 放置すると症状の悪化や慢性化のリスク
  2. 適切な診療科の選択
    • 女性:婦人科・産婦人科が第一選択
    • 男性:泌尿器科・皮膚科
    • いずれも形成外科での対応も可能
  3. 自己判断の危険性
    • 見た目だけでは正確な診断は困難
    • 自己処置は症状悪化の原因
    • 市販薬による治療の限界
  4. 予防の重要性
    • 適切なデリケートゾーンケア
    • アンダーヘアの正しい処理
    • 定期的な健康チェック
  5. 日常生活での注意
    • 清潔な環境の維持
    • 適切な下着の選択
    • 生活習慣の改善

最終的なアドバイス

Vラインのしこりは、多くの場合適切な診断と治療により完治可能な疾患です。しかし、放置すると症状が悪化し、より侵襲的な治療が必要になったり、日常生活に大きな影響を与えたりする可能性があります。

恥ずかしさを理由に受診を躊躇することなく、気になる症状があれば早めに医療機関を受診してください。当院では、患者様の尊厳を最大限尊重し、プライバシーに配慮した診療を心がけております。些細なことでもお気軽にご相談ください。

また、治療後は再発予防のため、適切なセルフケアと定期的な健康チェックを継続することが大切です。ご不明な点がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。


参考文献

  1. 日本皮膚科学会. 皮膚科診療ガイドライン. 毛包炎・せつ・よう. 2019年版. 日本皮膚科学会ガイドライン
  2. 日本産科婦人科学会. 産婦人科診療ガイドライン. バルトリン腺嚢胞・膿瘍. 2020年版. 日本産科婦人科学会
  3. 日本形成外科学会. 形成外科診療ガイドライン. 表皮嚢腫. 2021年版. 日本形成外科学会
  4. MSDマニュアル家庭版. バルトリン腺嚢胞およびバルトリン腺膿瘍. MSDマニュアル
  5. 日本感染症学会. 皮膚軟部組織感染症診療ガイドライン. 2018年版.
  6. 日本婦人科腫瘍学会. 外陰がん取扱い規約. 第4版. 2019年.
  7. 厚生労働省. 性感染症に関する特定感染症予防指針. 2018年改正版.
  8. World Health Organization. Guidelines for the management of sexually transmitted infections. 2021.
  9. American College of Obstetricians and Gynecologists. Bartholin Gland Cysts and Abscesses. Practice Bulletin No. 205. 2019.
  10. European Society for Primary Care Dermatology. Guidelines for the management of common skin infections. 2020.

免責事項: 本記事は医学的情報の提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状がある場合は、必ず医師の診察を受けてください。治療法や薬剤については、医師の指導のもとで実施してください。


監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務