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目のきわの白いできもの|原因と正しい治し方を専門医が徹底解説

ふと鏡を見たとき、目のきわやまぶたのふちに白いプツプツができていることに気づいて驚いた経験はありませんか。目のきわにできる白いできものは、多くの場合「マイボーム腺梗塞」や「稗粒腫」といった良性の症状ですが、放置すると目の不快感やドライアイの原因になることもあります。本記事では、目のきわの白いできものの種類や原因、自宅でできるセルフケアから医療機関での治療法まで、詳しく解説します。正しい知識を身につけて、大切な目の健康を守りましょう。


目次

  1. 目のきわの白いできものとは?
  2. 目のきわにできる白いできものの主な種類
  3. それぞれの原因を詳しく解説
  4. 症状と見分け方のポイント
  5. 自宅でできるセルフケア方法
  6. 医療機関での治療法
  7. 予防法と日常生活での注意点
  8. 眼科を受診すべきタイミング
  9. よくある質問(Q&A)
  10. まとめ
  11. 参考文献

1. 目のきわの白いできものとは?

目のきわに白いできものができると、見た目が気になるだけでなく、異物感やゴロゴロした違和感を感じることがあります。これらの白いできものは、まぶたの縁にある「マイボーム腺」という脂腺や、皮膚の表皮にある毛穴の詰まりが原因で発生することがほとんどです。

マイボーム腺は、涙の表面に油分を供給し、涙の蒸発を防ぐ重要な役割を担っています。上まぶたに約25本、下まぶたに約20本あり、まつ毛の生え際のすぐ内側に開口部が並んでいます。この開口部が何らかの原因で詰まると、白いできものとして目に見える形で現れるのです。

目のきわの白いできものは、その原因や発生部位によっていくつかの種類に分類されます。見た目は似ていても、それぞれ治療法や対処法が異なるため、正確に見分けることが大切です。


2. 目のきわにできる白いできものの主な種類

目のきわにできる白いできものには、主に以下の5つの種類があります。それぞれの特徴を理解しておくことで、適切な対処につなげることができます。

マイボーム腺梗塞

マイボーム腺梗塞は、目のきわの白いできものの中で最も一般的なものです。まつ毛の生え際にあるマイボーム腺の出口が詰まり、分泌された油分が固まって白い小さな塊になった状態を指します。見た目は、まぶたのふちに白〜黄白色の小さなプツプツとして現れます。

マイボーム腺から分泌される油分(マイバム)は、正常な状態では透明でサラサラしていますが、加齢やさまざまな要因によって固くなりやすくなります。固まった油分がマイボーム腺の開口部を塞ぐと、白いできものとして目に見えるようになります。

小さいうちは無症状のことが多いですが、大きくなると異物感を感じるようになります。また、マイボーム腺の詰まりが続くと、涙の油分が不足してドライアイの原因にもなります。

稗粒腫(はいりゅうしゅ)

稗粒腫は、目の周りや目の下、まぶたなどにできる直径1〜2mm程度の白〜黄白色の小さなできものです。白ニキビに似た見た目をしていますが、ニキビとは異なり、毛穴の奥にある毛包という袋状の部分に角質(ケラチン)が溜まってできるものです。

稗粒腫はまぶたのふちよりも、目の周りの皮膚にできやすいのが特徴です。痛みやかゆみはなく、感染力もないため、放置しても健康上の問題はありません。しかし、成人になってからできた稗粒腫は自然に消えることがほとんどないため、見た目が気になる場合は皮膚科での治療が必要になります。

乳児期にできた稗粒腫は成長とともに自然に消失することが多いですが、大人になってからできたものは自然治癒を期待することが難しいとされています。

霰粒腫(さんりゅうしゅ)

霰粒腫は、マイボーム腺の出口が詰まり、内部で分泌物が溜まって慢性的な炎症を起こした結果、肉芽腫というしこりができた状態です。マイボーム腺梗塞が進行して発症することもあります。

霰粒腫の特徴は、まぶたの中にコロコロとした硬いしこりを触れることです。通常は痛みを伴いませんが、細菌感染を併発すると赤く腫れて痛みが出ることがあります(急性霰粒腫または化膿性霰粒腫)。初期には白いポツポツとして現れることもあります。

ものもらい(麦粒腫)と混同されやすいですが、霰粒腫は細菌感染が原因ではないため、抗生物質の点眼では効果が期待できません。放置するとしこりが残ってしまうことがあり、自然治癒は難しいため、早めの対処が推奨されます。

麦粒腫(ばくりゅうしゅ)/ものもらい

麦粒腫は、一般的に「ものもらい」「めばちこ」「めいぼ」などと呼ばれる病気です。まぶたの分泌腺に黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などの細菌が感染して化膿し、腫れや痛みを引き起こします。

麦粒腫には、まつ毛の毛根に感染する「外麦粒腫」と、マイボーム腺に感染する「内麦粒腫」の2種類があります。症状が進行すると、腫れた部分の中心に黄色っぽい膿点(白いできもの)ができることがあります。

麦粒腫は細菌感染が原因のため、赤く腫れて痛みを伴うのが特徴です。多くの場合、自然に膿が排出されて治りますが、症状が強い場合や治りが遅い場合は抗菌薬による治療が必要です。なお、ものもらいは人から人へうつることはありません。

結膜結石

結膜結石は、まぶたの裏側(眼瞼結膜)にできる白〜黄色の小さな石のような塊です。カルシウムや脂質などの分泌物が固まったもので、小石のような外観をしています。

結膜結石は結膜の奥深くにできている間は無症状ですが、結膜の表面に露出してくると、瞬きのたびに角膜(黒目)をこすって傷をつけ、ゴロゴロとした異物感や痛み、涙目などの症状を引き起こします。

慢性的な結膜炎やドライアイ、アレルギー、加齢などが原因として考えられていますが、多くは原因不明です。人によっては10個以上できることもあり、体質的にできやすい人もいます。


3. それぞれの原因を詳しく解説

目のきわの白いできものは、それぞれ発生のメカニズムが異なります。原因を理解することで、効果的な予防と対策につなげることができます。

マイボーム腺梗塞の原因

マイボーム腺梗塞の主な原因は、マイボーム腺から分泌される油分の質の変化や、分泌機能の低下です。以下のような要因が影響します。

加齢による影響は大きく、年齢とともにマイボーム腺の油分を押し出す力が弱くなり、詰まりやすくなります。特に高齢者では、マイボーム腺の機能低下が顕著になることが多いです。

脂っこい食事や動物性脂肪の過剰摂取も原因のひとつです。これらは分泌される油分の成分を変化させ、固まりやすくする要因になります。

アイメイクの影響も見逃せません。アイラインやマスカラなどの化粧品がマイボーム腺の開口部を塞いでしまったり、メイクを十分に落とさないことで詰まりを引き起こしたりします。特にまつ毛の生え際までアイラインを引く習慣がある方は注意が必要です。

体温の低下もリスク要因です。マイボーム腺の脂質は28〜32℃で溶け出しますが、まぶたの温度が低い状態が続くと油分が固まりやすくなります。シャワーだけで済ませ、入浴時に体を温めない習慣のある方は、まぶたも温まらずに詰まりやすくなる傾向があります。

コンタクトレンズの長期装用も、マイボーム腺の機能低下に関与するとされています。

稗粒腫の原因

稗粒腫の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下のような要因が関係していると考えられています。

原発性の稗粒腫は、生まれつき皮膚に嚢腫(袋状の構造)ができていることで発生します。胎児期のホルモンバランスや汗腺の未発達などが関係している可能性が指摘されていますが、詳しいメカニズムはわかっていません。

続発性の稗粒腫は、やけどや水ぶくれ、傷などの外傷をきっかけに発生します。皮膚が治癒する過程で嚢腫ができ、そこに角質が溜まることで稗粒腫が形成されます。

ターンオーバーの乱れも原因のひとつです。加齢や生活習慣の乱れによって皮膚の新陳代謝が滞ると、角質が毛穴に溜まりやすくなります。

肌をこする刺激も稗粒腫の発生に関与します。特に乾燥肌やアトピー肌の方、目をこする癖がある方、洗顔時やメイク時に肌を強くこすってしまう方にできやすい傾向があります。

また、ステロイド外用薬を長期間使用している部位にできやすいことも知られています。

霰粒腫・麦粒腫の原因

霰粒腫の直接的な原因は、マイボーム腺の出口が詰まることです。詰まった分泌物が変性して炎症を起こし、肉芽腫という塊を形成します。詰まりの要因としては、不規則な生活や疲労、ストレスによるホルモンバランスの乱れ、油分の多い偏った食事、アイメイクによる分泌腺の閉塞などが挙げられます。

麦粒腫の原因は細菌感染です。原因菌の大部分は、私たちの皮膚や粘膜に常在する黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌です。通常は感染を起こしませんが、睡眠不足や風邪、疲労、ストレスなどで体の抵抗力が低下したときに感染を起こして発症します。

特に夏場は高温多湿で細菌が繁殖しやすく、夏バテや睡眠不足による免疫力の低下も重なりやすいため、麦粒腫が発症しやすい季節です。

汚れた手で目をこすることや、コンタクトレンズの不適切な管理も発症のリスクを高めます。

結膜結石の原因

結膜結石の主な原因は、慢性的な結膜の炎症です。アレルギー性結膜炎やドライアイ、細菌感染、コンタクトレンズの長期使用など、さまざまな要因で結膜に慢性的な刺激が加わると、分泌物(カルシウムや脂質、老廃物など)が結膜下に溜まって固まり、結石を形成します。

加齢も原因のひとつとされており、老化現象の一種として捉えられることもあります。また、体質的に結石ができやすい方もいます。

多くの場合、原因を特定することは難しく、複数の要因が重なって発症すると考えられています。なお、結膜結石は腎臓結石や尿管結石とは成分も原因も異なるため、他の結石症との関連を心配する必要はありません。


4. 症状と見分け方のポイント

目のきわの白いできものは、種類によって症状や見た目に特徴があります。以下のポイントを参考に、自分の症状がどれに当てはまるかを確認してみましょう。ただし、自己判断は難しい場合も多いため、気になる場合は必ず医療機関を受診してください。

マイボーム腺梗塞の特徴

マイボーム腺梗塞は、まつ毛の生え際(まぶたのふち)に白〜黄白色、または透明な小さなプツプツとして現れます。大きさは1mm以下の小さなものから、数mm程度のものまでさまざまです。

形状は球状または管状で、マイボーム腺の開口部から飛び出すように見えることもあります。小さいうちは無症状のことが多く、鏡で注意深く見ないと気づかないこともあります。

大きくなったり、結膜側に飛び出したりすると、ゴロゴロとした異物感や違和感を感じるようになります。また、炎症を起こすとまぶたの縁が赤く腫れることもあります。

稗粒腫の特徴

稗粒腫は、目の周りの皮膚(目の下、まぶた、目尻など)にできる白〜黄白色の硬い小さなできものです。直径は1〜2mm程度で、ドーム状に盛り上がっています。大きいものでは1cm程度になることもあります。

白ニキビに似た見た目ですが、ニキビのように中心に膿があるわけではなく、中身は角質(ケラチン)の塊です。押しても痛みやかゆみはなく、炎症を起こすこともありません。

稗粒腫は自然に消えることがほとんどないため、一度できると長期間そのまま残ります。見た目が気になる場合は医療機関での除去が必要です。

霰粒腫の特徴

霰粒腫は、まぶたの中にコロコロとした硬いしこりを触れることができます。しこりの大きさは数mm〜1cm程度で、まぶたの表面からも腫れとして認識できることがあります。

通常は痛みを伴わず、まぶたを押しても痛くありません。しかし、細菌感染を併発した急性霰粒腫(化膿性霰粒腫)では、赤く腫れて痛みを伴うようになり、麦粒腫と見分けがつきにくくなります。

初期には、まぶたのふちに白いポツポツとして現れることもあります。数週間〜数ヶ月かけて徐々に大きくなることが多く、変化は緩やかです。

麦粒腫の特徴

麦粒腫は、まぶたの一部が赤く腫れて痛みを伴うのが特徴です。押すと痛み、触れなくても痛むこともあります。

症状が進行すると、腫れた部分の中心に黄色っぽい膿点ができることがあります。涙が多くなったり、光に敏感になったり、目にゴミが入ったような異物感を感じることもあります。

麦粒腫は2〜4日で膿が破れて排出され、その後治癒に向かうことが多いです。ただし、内麦粒腫(マイボーム腺の感染)は自然に破れにくく、医療機関での処置が必要になることがあります。

結膜結石の特徴

結膜結石は、まぶたの裏側(眼瞼結膜)にできるため、まぶたをめくらないと見えません。白〜黄色の小さな砂粒状の塊で、1〜数mm程度の大きさです。

結石が結膜の奥に埋まっている間は無症状で、本人も気づいていないことが多いです。しかし、結石が結膜の表面に露出してくると、瞬きのたびに角膜をこすり、ゴロゴロとした異物感、痛み、充血、涙目などの症状が現れます。

特に上まぶたにできた結膜結石が露出すると、角膜に傷をつけやすく、強い痛みの原因になります。

見分け方のまとめ

以下の表を参考に、症状の特徴を比較してみましょう。

種類発生部位見た目痛み特徴
マイボーム腺梗塞まつ毛の生え際白〜透明のプツプツなし(大きいと異物感)まぶたのふちに並ぶ
稗粒腫目の周りの皮膚白〜黄白色の硬い粒なしドーム状に盛り上がる
霰粒腫まぶたの中しこり(初期は白いプツプツ)なし(感染時は痛い)硬くコロコロする
麦粒腫まぶた赤い腫れ、膿点あり赤く腫れて熱を持つ
結膜結石まぶたの裏側白〜黄色の粒露出すると痛いまぶたをめくると見える

5. 自宅でできるセルフケア方法

目のきわの白いできもののうち、マイボーム腺梗塞や軽度の霰粒腫は、自宅でのセルフケアで改善が期待できる場合があります。ここでは、眼科でも推奨されている効果的なセルフケア方法を紹介します。

温罨法(おんあんぽう)

温罨法は、まぶたを温めることでマイボーム腺の詰まりを解消する方法です。マイボーム腺で固まった脂質は28〜32℃で溶け出すため、まぶたを温めると詰まりが緩和されやすくなります。

蒸しタオルを使った温罨法の方法は以下の通りです。まず、清潔なハンドタオルを水で濡らし、水が垂れないように固く絞ります。次に、ラップで包んで電子レンジで1分程度温めます(温度は40℃程度が目安です)。温まったタオルを閉じた目の上に置き、5〜10分間まぶたを温めます。タオルが冷めてきたら、再度温め直すとより効果的です。

温罨法は、朝と晩の1日2回行うことで、より高い効果が得られます。毎日継続して習慣化することが大切です。

市販のホットアイマスクを使用するのも手軽で効果的です。使い捨てタイプのものは衛生的で、外出先や職場でも使いやすいというメリットがあります。電子レンジで温めるタイプの繰り返し使えるアイマスクも経済的です。

入浴時に湯船につかってまぶたを温めるのも効果的な方法です。40℃前後のお湯に10〜15分程度つかり、体全体とともにまぶたも温めましょう。シャワーだけで済ませることが多い方は、意識的に湯船に入る習慣をつけると良いでしょう。

まぶたの清掃(リッドハイジーン)

リッドハイジーンは、まぶたの縁を清潔に保つケア方法です。マイボーム腺の詰まりを予防し、目のきわの白いできものの改善や再発防止に効果があります。

まず、温罨法でまぶたを温めてから行うとより効果的です。温めることでマイボーム腺の油分が柔らかくなり、汚れが落ちやすくなります。

清潔な指の腹を使って、まぶたの縁を優しくマッサージします。上まぶたは上から下に、下まぶたは下から上に向かって、やさしく圧迫するようにマッサージすると、詰まった油分が排出されやすくなります。力を入れすぎないように注意してください。

まつ毛の生え際に溜まった汚れや詰まりを取り除くために、専用のアイシャンプー(まつ毛シャンプー)を使用するのも効果的です。眼科で勧められることも多く、市販のものも販売されています。使用方法は製品の説明に従ってください。

ベビーオイルを使ってまぶたの縁を優しく拭き取る方法もあります。刺激が少なく、メイク汚れの除去にも適しています。綿棒やコットンにベビーオイルを含ませて、まつ毛の生え際を優しく拭き取ります。

その他のセルフケア

マイボーム腺梗塞による白いできものが表面に露出してきた場合、温罨法とマッサージを組み合わせることで、詰まりが自然に取れることがあります。温めた後に清潔な指で優しく圧迫すると、固まった油分が排出されやすくなります。

ただし、無理に押し出そうとしたり、自分で針を使って取り除こうとしたりすることは絶対にやめてください。周囲の組織を傷つけたり、感染を起こしたりするリスクがあります。

市販の抗炎症作用のある目薬を使用することで、軽度の炎症を抑えられる場合もあります。どの目薬が適切かわからない場合は、薬剤師や登録販売者に相談しましょう。

セルフケアを続けても改善しない場合や、痛みや腫れが増す場合は、早めに眼科を受診してください。


6. 医療機関での治療法

自宅でのセルフケアで改善しない場合や、症状が強い場合は、医療機関での治療が必要です。目のきわの白いできものの種類に応じて、さまざまな治療法があります。

マイボーム腺梗塞の治療

マイボーム腺梗塞が小さく、特に症状がない場合は、経過観察となることもあります。温罨法やリッドハイジーンなどのセルフケアを継続しながら、様子を見ます。

異物感がある場合や、見た目が気になる場合は、梗塞を除去する処置を行います。点眼麻酔を行い、まぶたのふちを圧迫して固まりを押し出すか、結膜側の開口部を小さく切開して摘出します。処置は数分で終わり、傷は自然に塞がります。

マイボーム腺梗塞を繰り返す場合は、マイボーム腺機能不全(MGD)の治療を行います。点眼薬や眼軟膏による治療のほか、IPL(Intense Pulsed Light)という光を照射してマイボーム腺の機能を改善させる先進的な治療法もあります。

また、青魚などに多く含まれるオメガ3脂肪酸(不飽和脂肪酸)の摂取も、マイボーム腺の機能改善に効果的とされています。

稗粒腫の治療

稗粒腫は良性で健康上の問題はありませんが、自然に消えることがほとんどないため、見た目が気になる場合は医療機関での除去が必要です。

圧出法は、稗粒腫の一般的な治療法です。メスや注射針で皮膚の表面に小さな穴を開け、内部に溜まった角質の塊をピンセットや専用の器具で押し出して除去します。保険適用で、3割負担で数百円程度の費用です。処置後は数日で傷口がふさがり、ほぼ元通りになります。

炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)による治療も行われています。レーザーを照射して稗粒腫の組織を熱エネルギーで破壊し、除去します。再発率が低いのが特徴です。治療後はかさぶたができ、1〜2週間で自然に剥がれます。自費診療となる場合があります。

ケミカルピーリングは、薬剤を塗布して肌のターンオーバーを促進し、稗粒腫を改善する方法です。複数回の施術が必要で、即効性はありませんが、毛穴や肌荒れの改善も期待できます。

漢方薬のヨクイニン(ハトムギを原料とした薬)は、肌のターンオーバーを正常化させる作用があり、稗粒腫の改善に使われることがあります。長期間の服用が必要です。

霰粒腫の治療

霰粒腫の治療は、詰まった脂による炎症を抑えることが中心です。ステロイドの点眼薬や眼軟膏を使用して炎症を抑えます。温罨法やリッドハイジーンの併用も推奨されます。

しこりが大きい場合や、薬による治療で効果が不十分な場合は、ステロイドの注射(局所注射)を行うことがあります。

それでも改善しない場合や、しこりが大きく視界に影響する場合は、手術(切開摘出)を行います。まぶたの皮膚側または裏側(結膜側)を切開して、溜まった内容物や肉芽腫を取り除きます。局所麻酔で行い、10〜20分程度で終わります。

ただし、高齢者で繰り返し霰粒腫ができる場合や、なかなか改善しない場合は、脂腺癌(しせんがん)という悪性腫瘍の可能性もあるため、摘出した組織を病理検査に提出して診断を確定させることが重要です。

麦粒腫の治療

麦粒腫の治療は、原因となっている細菌を殺すことが基本です。抗菌薬(抗生物質)の点眼薬や眼軟膏を使用します。炎症が強い場合は、内服の抗生物質を併用することもあります。

早期に適切な治療を開始すれば、多くは1〜2週間程度で治癒します。化膿が進んで膿が溜まっている場合は、針で刺したり切開したりして膿を排出させると、治りが早くなることがあります。

温罨法も麦粒腫の治療に有効です。温めることで膿が表面に集まり、自然に破れて排膿しやすくなります。

結膜結石の治療

結膜結石は、無症状であれば特に治療は必要ありません。経過観察を行い、定期的に異変がないかをチェックします。

ゴロゴロとした異物感や痛みが出てきた場合は、結石を除去します。点眼麻酔を行い、針や専用の器具を使って結石を取り除きます。処置は通常2〜3分で終わり、痛みはほとんどありません。

洗眼や点眼によって自然に結石が脱落することもあるため、症状が軽い場合は2〜3日様子を見ることもあります。

結膜結石は再発しやすいため、新たに結石ができて症状が出た場合は、再度除去の処置が必要になります。根本的な治療は、原因となっている慢性結膜炎などを治すことですが、原因の特定が難しいことも多く、長期的な点眼治療が必要になることがあります。


7. 予防法と日常生活での注意点

目のきわの白いできものは、日常生活での心がけで予防できることが多いです。以下のポイントを意識して、目の健康を守りましょう。

まぶたを清潔に保つ

目のきわの白いできものの多くは、まぶたの分泌腺の詰まりや汚れの蓄積が原因です。まぶたを清潔に保つことが、予防の基本になります。

顔を洗う際は、まぶたの縁も意識して優しく洗いましょう。ただし、強くこすりすぎると刺激になるため、優しく丁寧に洗うことが大切です。

洗顔後や入浴後、顔を拭く際は清潔なタオルを使用してください。タオルの共用は避け、定期的に洗濯して清潔なものを使いましょう。

汚れた手で目を触らないように注意してください。目がかゆいときでもこすらず、目薬や冷やしたタオルで対処するようにしましょう。

アイメイクに注意する

アイメイクは、マイボーム腺の詰まりを引き起こす大きな要因のひとつです。特に注意が必要なのは以下の点です。

まつ毛の生え際ギリギリまでアイラインを引くことは、マイボーム腺の出口を直接塞いでしまうため避けましょう。インサイドライン(粘膜ギリギリに引くアイライン)は特にリスクが高いです。

アイメイクはしっかりと落としましょう。クレンジングが不十分だと、化粧品の成分がマイボーム腺を塞いだり、まつ毛ダニ(デモデックス)の繁殖を招いたりする原因になります。アイメイク専用のリムーバーを使用し、まつ毛の生え際まで丁寧にメイクを落としてください。

まつ毛エクステンションやつけまつ毛も、接着剤がマイボーム腺を塞ぐ原因になることがあります。目のきわの白いできものが気になる場合は、一時的に使用を控えることを検討してください。

コンタクトレンズを正しく使用する

コンタクトレンズの不適切な使用は、目のきわの白いできものの原因になります。以下の点に注意してください。

決められた装用時間を守り、つけたまま寝ることは絶対に避けてください。長時間の装用はマイボーム腺の機能低下やドライアイの原因になります。

レンズの消毒と管理を正しく行いましょう。使い捨てレンズは必ず使用期限を守り、使い回しはしないでください。

目に異常を感じたら、すぐにコンタクトレンズの使用を中止し、メガネに切り替えてください。

食生活に気をつける

食生活も、マイボーム腺の機能や皮膚の健康に影響します。

脂っこい食事や動物性脂肪の過剰摂取は、マイボーム腺の分泌物を固まりやすくする原因になります。バランスの良い食事を心がけましょう。

青魚(サバ、イワシ、サンマなど)に多く含まれるオメガ3脂肪酸は、マイボーム腺の機能改善に効果があるとされています。意識的に摂取すると良いでしょう。

生活習慣を整える

睡眠不足や過労、ストレスは、免疫力の低下やホルモンバランスの乱れを招き、目のきわの白いできものの原因になります。

十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活を心がけましょう。疲れを溜めないように、適度な休養を取ることも大切です。

適度な運動や趣味の時間を設けて、ストレスを発散することも、目の健康維持に役立ちます。

まぶたを温める習慣をつける

マイボーム腺の詰まりを予防するために、日常的にまぶたを温める習慣をつけることが効果的です。

入浴時は湯船につかり、まぶたも含めて体全体を温めましょう。40℃前後のお湯に10〜15分程度つかることで、マイボーム腺の脂質が溶けやすくなり、詰まりを予防できます。

寝る前や朝起きたときに、蒸しタオルやホットアイマスクでまぶたを温める習慣も効果的です。特にマイボーム腺梗塞や霰粒腫を繰り返す方は、予防として毎日続けることをおすすめします。


8. 眼科を受診すべきタイミング

目のきわの白いできものは、自宅でのセルフケアで改善することもありますが、以下のような場合は早めに眼科を受診することをおすすめします。

まず、痛みや強い異物感がある場合は受診が必要です。特に、まばたきのたびに痛みを感じる場合や、目を開けていられないほどの異物感がある場合は、角膜に傷がついている可能性があります。早めに受診して適切な治療を受けましょう。

まぶたが赤く腫れている場合も受診が必要です。赤みや腫れは感染を示唆する症状です。麦粒腫や化膿性霰粒腫の可能性があり、抗菌薬による治療が必要になることがあります。

白いできものが大きくなっている場合や、数が増えている場合も受診をおすすめします。放置すると治療が難しくなったり、ドライアイなどの二次的な問題を引き起こしたりする可能性があります。

セルフケアを続けても改善しない場合は、医療機関での治療が必要です。2〜3週間程度のセルフケアで改善が見られない場合は、眼科を受診してください。

視力に影響が出ている場合は、できるだけ早く受診してください。白いできものやしこりが大きくなって眼球を圧迫し、視界がぼやける場合は、早急な治療が必要です。

高齢者で、霰粒腫がなかなか治らない場合や繰り返す場合は、必ず眼科を受診してください。脂腺癌という悪性腫瘍が霰粒腫に似た形で発症することがあるため、病理検査による診断が重要です。

そのほか、自分ではどの種類のできものかわからない場合や、どう対処すればよいか不安な場合は、遠慮なく眼科を受診してください。早期の受診と正確な診断が、適切な治療への第一歩です。


9. よくある質問(Q&A)

目のきわの白いできものについて、患者さんからよくいただく質問にお答えします。

Q1. 目のきわの白いできものは自分で潰しても大丈夫ですか?

A. 自分で潰すことはおすすめしません。気になっても無理に潰そうとすると、以下のようなリスクがあります。
まず、周囲の組織を傷つけてしまう可能性があります。目のきわは繊細な部位であり、特にマイボーム腺は並んで存在しているため、ひとつを傷つけると隣の腺にもダメージを与えることがあります。
次に、感染のリスクがあります。清潔でない手や器具で触ることで、細菌感染を起こす可能性があります。感染が広がると、治療がより複雑になります。
また、症状を悪化させる可能性があります。無理に圧迫したり引っ掻いたりすると、炎症がひどくなり、治りが遅くなることがあります。
白いできものが気になる場合は、眼科を受診して適切な処置を受けてください。

Q2. 目のきわの白いできものは他の人にうつりますか?

A. マイボーム腺梗塞、稗粒腫、霰粒腫、結膜結石は、いずれも感染症ではないため、他の人にうつることはありません。

麦粒腫(ものもらい)は細菌感染が原因ですが、原因菌は私たちの皮膚に常在する菌であり、感染力は非常に弱いため、人から人へうつることはほとんどありません。タオルやお風呂を家族と分ける必要はありませんし、学校や仕事を休む必要もありません。

ただし、はやり目(ウイルス性結膜炎)は強い感染力があり、人にうつります。目が赤く充血し、大量の目やにが出る場合は、はやり目の可能性がありますので、眼科を受診して正確な診断を受けてください。

Q3. 目のきわの白いできものは放置しても大丈夫ですか?

A. 種類によって対応が異なります。

マイボーム腺梗塞は、小さくて症状がなければ様子を見ることもできますが、放置するとドライアイや麦粒腫、霰粒腫の原因になることがあります。セルフケアを行いながら経過を観察し、症状が出てきたら眼科を受診してください。

稗粒腫は良性で健康上の問題はありませんが、自然に消えることがほとんどないため、見た目が気になる場合は医療機関での除去が必要です。

霰粒腫は、放置するとしこりがそのまま残ってしまうことがあります。自然治癒が難しいため、早めの治療をおすすめします。特に高齢者で繰り返す場合は、悪性腫瘍の可能性を除外するためにも受診が必要です。

結膜結石は、無症状であれば特に治療は不要ですが、異物感や痛みが出てきたら除去が必要です。

いずれの場合も、気になる症状がある場合は自己判断せず、眼科を受診することをおすすめします。

Q4. 再発を繰り返すのですが、どうすれば防げますか?

A. 目のきわの白いできもの、特にマイボーム腺梗塞や霰粒腫を繰り返す場合は、以下の対策が効果的です。

毎日の温罨法とリッドハイジーンを習慣化しましょう。予防のためには、症状がないときでも継続的に行うことが大切です。

アイメイクを見直してください。まつ毛の生え際ギリギリのメイクを避け、メイクはしっかりと落とすようにしましょう。目のきわの白いできものが気になる間は、アイメイクを控えることも検討してください。

食生活を改善しましょう。脂っこい食事を控え、オメガ3脂肪酸を含む青魚を積極的に摂取することで、マイボーム腺の機能改善が期待できます。

生活習慣を整えましょう。十分な睡眠、規則正しい生活、ストレスの軽減は、免疫力を高め、目のトラブルを予防します。

繰り返す場合は、マイボーム腺機能不全(MGD)の治療を検討することもあります。眼科で相談してみてください。

Q5. 市販の目薬で治せますか?

A. 市販の目薬で直接治せるわけではありませんが、症状の緩和に役立つ場合があります。

マイボーム腺梗塞による軽度の炎症には、抗炎症作用のある目薬が効果的なことがあります。薬剤師や登録販売者に相談して、適切なものを選んでください。

麦粒腫の初期であれば、市販の抗菌目薬で症状の進行を抑えられることもあります。ただし、症状が強い場合や改善しない場合は、処方薬が必要になりますので眼科を受診してください。

霰粒腫は細菌感染が原因ではないため、市販の抗菌目薬では効果が期待できません。ステロイドの点眼薬や眼軟膏が必要になりますので、眼科を受診してください。

稗粒腫や結膜結石は、目薬では治りません。医療機関での処置が必要です。

いずれの場合も、症状が改善しない場合や悪化する場合は、自己判断で市販薬を使い続けず、眼科を受診してください。


10. まとめ

目のきわの白いできものは、マイボーム腺梗塞、稗粒腫、霰粒腫、麦粒腫、結膜結石など、さまざまな種類があります。いずれも見た目は似ていますが、原因や治療法は異なります。

マイボーム腺梗塞と軽度の霰粒腫は、温罨法やリッドハイジーンなどの自宅でのセルフケアで改善が期待できます。毎日の習慣として続けることが、予防と改善の鍵です。

稗粒腫は自然に消えることがほとんどないため、見た目が気になる場合は皮膚科や眼科での除去が必要です。

麦粒腫は細菌感染が原因のため、抗菌薬による治療が基本です。痛みや腫れが強い場合は早めに眼科を受診してください。

結膜結石は、症状がなければ経過観察で問題ありませんが、異物感や痛みが出てきたら除去の処置が必要です。

予防のためには、まぶたを清潔に保つこと、アイメイクに注意すること、コンタクトレンズを正しく使用すること、バランスの良い食生活を心がけること、規則正しい生活を送ることが大切です。

自己判断で対処することが難しい場合や、症状が改善しない場合、悪化する場合は、早めに眼科を受診してください。正確な診断と適切な治療を受けることが、目の健康を守る第一歩です。

目は大切な感覚器官です。日頃から目の健康に気を配り、少しでも異常を感じたら、お気軽にご相談ください。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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