はじめに
脇の下から発せられる独特なにおい。「もしかして自分はワキガなのでは?」と不安を感じながらも、誰にも相談できずに悩んでいる方は少なくありません。電車やエレベーターなどの密閉空間で、自分のにおいが周囲に迷惑をかけていないか気になってしまう。仕事や人間関係にまで影響が及び、コンプレックスとなってしまうケースも多く見られます。
ワキガ(腋臭症)は、日本人の約10人に1人が該当するといわれる体質的な症状です。決して珍しい症状ではなく、また適切な治療によって改善が期待できる症状でもあります。本記事では、渋谷エリアでワキガ治療をお探しの方に向けて、ワキガの原因やメカニズムから、セルフチェック方法、日常生活での対策、そして専門的な治療法まで、包括的に解説いたします。
正しい知識を身につけることで、ご自身に最適な対処法を見つける一助となれば幸いです。
第1章 ワキガとは何か?医学的な定義と基礎知識
腋臭症(えきしゅうしょう)の概要
ワキガは医学的には「腋臭症(えきしゅうしょう)」と呼ばれ、主に脇の下から特有の強いにおいを発する症状のことを指します。「ワキガ」という呼び名は、アポクリン汗腺の多い「腋」の「下」からにおいが発生することに由来しています。
重要な点として、ワキガは病気というよりも「体質」として捉えられています。つまり、体に何らかの害を及ぼすものではなく、放置しても悪化するといった性質のものではありません。しかしながら、日本においてはにおいに対する意識が強い傾向があり、欧米では生理現象として広く受け入れられているワキガも、日本では深刻な悩みにつながりやすいという特徴があります。
日本人におけるワキガ体質の割合は約10〜15%程度とされています。これに対して、欧米人では70〜90%、アフリカ系の方ではほぼ100%がワキガ体質であるといわれています。つまり、世界的に見ると日本人はむしろ体臭が少ない人種であり、だからこそ少数であるワキガ体質の方が目立ちやすく、悩みが深刻化しやすいという側面があるのです。
2種類の汗腺とワキガのメカニズム
私たちの体には2種類の汗腺(汗を分泌する器官)が存在します。それぞれの特徴を理解することが、ワキガのメカニズムを知る上で重要です。
1つ目は「エクリン汗腺」です。エクリン汗腺は全身の皮膚に広く分布しており、主に体温調節の役割を担っています。分泌される汗の99%が水分で構成されており、サラサラとした性質を持っています。蒸発しやすいため、拭き取ればにおいはあまり気になりません。
2つ目が「アポクリン汗腺」です。アポクリン汗腺は脇の下、耳の中、乳輪周辺、陰部など、体の特定の部位に存在しています。この汗腺から分泌される汗は、たんぱく質や脂質、鉄分、脂肪酸、アンモニアなどの成分を含み、ベタベタとした粘り気のある性質を持っています。
ワキガのにおいが発生するメカニズムは以下の通りです。アポクリン汗腺から分泌された汗そのものは、実は無臭です。しかし、この汗に含まれる脂肪酸やたんぱく質などの成分が、皮膚表面に存在する常在菌によって分解されることで、独特のにおいが発生します。
東京大学医科学研究所と大阪公立大学の共同研究グループによると、ワキガのにおいは約9割の人がミルク様臭(M型)、酸様臭(A型)、カレースパイス様臭(C型)のいずれかに分類されることが明らかになっています。特にカレースパイス様臭の発生には、常在性ブドウ球菌(Staphylococcus hominis)が重要な役割を果たしていることが遺伝子レベルの解析で判明しています。
参考文献:東京大学医科学研究所「腋臭症のニオイの原因となる菌を遺伝子レベルで解析」
ワキガと多汗症の違い
ワキガと多汗症は混同されやすいですが、原因となる汗腺が異なります。
ワキガはアポクリン汗腺からの汗が原因であり、「においの強さ」が主な症状となります。一方、多汗症はエクリン汗腺からの過剰な発汗が原因であり、「汗の量の多さ」が主な症状です。エクリン汗腺から分泌される汗はほとんどが水分であるため、多汗症単独ではワキガのような独特のにおいは発生しません。
ただし、実際にはワキガと多汗症を併発している方も多く、両者の症状が重なって悩みが深刻化するケースも少なくありません。汗の量が多いとにおいが広がりやすくなるため、相乗的に症状が強く現れることがあります。
第2章 ワキガの原因と発症のメカニズム
遺伝による影響
ワキガの最も大きな原因は「遺伝」です。ワキガ体質は顕性遺伝(優性遺伝)の形式をとることが科学的に明らかになっています。
遺伝の確率について具体的に見てみましょう。両親のどちらか一方がワキガ体質の場合、子供に遺伝する確率は約50%です。両親ともにワキガ体質の場合は、遺伝する確率は約75〜80%にまで上昇します。また、祖父母からの隔世遺伝も起こり得るため、両親がワキガでなくても発症する可能性があります。
この遺伝的な特性に関わっているのが「ABCC11遺伝子」です。この遺伝子は16番染色体上に存在し、アポクリン汗腺からの分泌物の質を決定しています。長崎大学の研究グループによると、調査対象となったワキガの方の98.7%が、このABCC11遺伝子の特定の塩基配列(GまたはGA型)を持っていたことが報告されています。
ABCC11遺伝子には3つのタイプがあります。
- AA型:乾燥型耳垢、ワキガのリスクが低い
- GA型:湿潤型耳垢、ワキガのリスクが中程度〜高い
- GG型:湿潤型耳垢、ワキガのリスクが高い
この遺伝子の違いは耳垢の性状にも影響を与えます。日本人の約70〜80%は乾燥した耳垢(AA型)を持っていますが、湿った耳垢を持つ方の約80%がワキガ体質であるといわれています。
参考文献:Yoshiura K, et al. A SNP in the ABCC11 gene is the determinant of human earwax type. Nature Genetics 38, 324–330 (2006).
ホルモンと思春期の影響
アポクリン汗腺は思春期になると性ホルモンの影響を受けて発達し始めます。そのため、ワキガの症状が現れ始めるのは主に思春期以降となります。
発症時期の目安として、女性では小学校高学年〜中学生頃、男性では中学生〜高校生頃に症状が現れ始めることが多いです。アポクリン汗腺は20代でピークを迎え、その後は加齢とともに徐々に活動が低下していく傾向があります。
女性の場合は、月経周期や妊娠、出産といったホルモンバランスの変化によって、一時的にワキガのにおいが強くなることがあります。これはアポクリン汗腺が女性ホルモンの影響を受けるためです。
生活習慣による影響
遺伝的にワキガ体質を持っている場合でも、生活習慣によってにおいの強さは変化します。以下のような要因がワキガの症状を悪化させる可能性があります。
食生活については、肉類や揚げ物など動物性の脂質やたんぱく質が豊富な食品は、アポクリン汗腺や皮脂腺を刺激し、においを強くする可能性があります。また、ニンニクやネギなど硫化アリルを含む食品も、体臭を強くする作用があるとされています。
ストレスや緊張もにおいを強める要因となります。精神的なストレスがかかると、アポクリン汗腺からの発汗が促進されます。緊張して脇汗をかきやすくなる経験は多くの方がお持ちではないでしょうか。
運動不足や不規則な生活リズムも関係しています。普段あまり汗をかかない生活を続けていると、老廃物が体内に溜まりやすくなります。そして久しぶりに汗をかいた際に、溜まっていた老廃物が一気に排出されるため、においが強くなってしまうことがあります。
飲酒や喫煙も汗腺を刺激し、体臭を強くする要因となり得ます。アルコールは体内で分解される過程でアセトアルデヒドを生成し、これが汗に混じって排出されることでにおいの原因となります。
第3章 自分がワキガかどうかを知る方法
セルフチェックのポイント
自分がワキガかどうか気になっている方のために、いくつかのチェックポイントをご紹介します。以下の項目に複数該当する場合は、ワキガ体質である可能性が高いと考えられます。
まず確認すべきは「耳垢の状態」です。耳垢がベタベタと湿っている(キャラメル状や溶けたバターのような状態)場合、ワキガ体質である可能性が高いです。これは耳の中にもアポクリン汗腺が存在するためで、その分泌物によって耳垢が湿った状態になります。乾燥した耳垢の方がワキガと診断されることは極めて稀であり、皮膚科学会においても「耳垢がドライであるのに、ワキガだと診断したケースはない」という調査結果が報告されています。
次に「家族歴」を確認しましょう。両親や兄弟姉妹、祖父母にワキガ体質の方がいる場合、遺伝している可能性があります。ワキガは優性遺伝するため、家系的な傾向を把握することは重要な手がかりとなります。
「衣服の黄ばみ」も重要なサインです。白いシャツや下着の脇部分に黄色や黄土色のシミができやすい場合、アポクリン汗腺から分泌されるリポフスチンという色素成分が原因である可能性があります。通常の汗(エクリン汗腺由来)ではこのような黄ばみは生じにくいため、ワキガのサインと考えられます。
「脇毛に白い粉が付着する」場合も注意が必要です。この白い粉の正体は、アポクリン汗腺からの分泌物が結晶化したものです。ただし、制汗剤の残りかすや塩分との混同に注意が必要です。
「脇毛の量や質」も関係しています。脇毛が濃い、または広範囲に生えている場合、毛穴の数が多く、それに伴ってアポクリン汗腺も多い可能性があります。女性の場合は1つの毛穴から2本の毛が生えていることが多い方、男性の場合は細くて柔らかい毛質の方にワキガ体質が多いという傾向も報告されています。
ガーゼテストによる客観的評価
より客観的にワキガの程度を確認する方法として、「ガーゼテスト」があります。これは医療機関でも用いられる検査法で、自宅でも実施可能です。
ガーゼテストの手順は以下の通りです。まず清潔なガーゼを脇の下に挟み、5〜10分間軽い運動を行います。その後、ガーゼを取り出してにおいを確認します。自分のにおいには慣れてしまって気づきにくい場合があるため、可能であれば家族など信頼できる人に協力してもらうとより正確に判定できます。
ガーゼテストの結果は5段階で評価されます。
- レベル1:においがまったくしない(問題なし)
- レベル2:わずかににおう程度(生理的な範囲)
- レベル3:鼻を近づけるとにおいがわかる(軽度のワキガ)
- レベル4:鼻を近づけなくてもにおいがわかる(中等度のワキガ)
- レベル5:手に持っただけで強いにおいがする(重度のワキガ)
一般的に、レベル3以上がワキガと診断される目安となります。レベル3の軽度であれば日常のケアで対処できる場合もありますが、レベル4〜5の中等度〜重度の場合は、専門医への相談をおすすめします。
自己臭恐怖症に注意
ここで一つ注意していただきたいのが「自己臭恐怖症(自己臭症)」の存在です。これは、実際にはにおいがほとんどないにもかかわらず、自分のにおいが他人を不快にさせていると思い込んでしまう状態を指します。
興味深いことに、においがあまり強くない人ほど自覚症状が強くなる傾向があるという報告もあります。周囲から直接においを指摘されたことがない場合や、セルフチェックでレベル2以下の結果であった場合は、過度に心配する必要はないかもしれません。
ただし、自己判断には限界があります。気になる症状がある場合は、専門医に相談して客観的な評価を受けることが、悩みを解消する第一歩となるでしょう。
第4章 日常生活でできるワキガ対策
清潔を保つための基本ケア
ワキガの根本的な解決には専門的な治療が必要な場合もありますが、日常生活でのケアによって、においをある程度抑えることは可能です。
最も基本的な対策は「脇を清潔に保つこと」です。日本医科大学武蔵小杉病院の形成外科では、以下のような生活指導が推奨されています。
こまめにシャワーを浴びることで、汗や皮脂、細菌の蓄積を防ぎます。入浴の際は薬用せっけんを使用すると、より効果的に細菌の繁殖を抑えることができます。日中も可能であれば、汗をかいた後は濡れタオルやアルコール綿で脇を拭き取るようにしましょう。ただし、肌が弱い方はアルコール綿による刺激に注意が必要です。
参考文献:日本医科大学武蔵小杉病院「ワキガ(腋臭症)の治療」
衣類選びも重要なポイントです。化学繊維の衣類は通気性が悪く、蒸れやすいため、においがこもりやすくなります。綿や麻などの天然素材の衣類を選ぶと、通気性が良く、においが軽減される傾向があります。
脇毛の処理も検討すべき対策の一つです。脇毛があると汗が毛に付着して蒸発しにくくなり、細菌が繁殖しやすい環境が作られます。脇毛を処理することで、においの発生を間接的に抑える効果が期待できます。
制汗剤・デオドラント製品の活用
制汗剤やデオドラント製品は、日常的なにおい対策として広く活用されています。これらの製品には主に2つの作用があります。
「制汗作用」は、塩化アルミニウムやクロルヒドロキシアルミニウムなどの成分によって汗の分泌を抑える作用です。「殺菌作用」は、イソプロピルメチルフェノールやベンザルコニウム塩化物などの成分によって、においの原因となる細菌の繁殖を抑える作用です。
製品を選ぶ際のポイントとして、ワキガ対策には両方の作用を備えた「制汗デオドラント」タイプがおすすめです。形状としては、クリームタイプが肌への密着性が高く、効果が持続しやすいといわれています。また、香料付きの製品はワキガのにおいと混ざって不快なにおいになる可能性があるため、無香料タイプを選ぶと安心です。
使用するタイミングにも注意が必要です。最も効果的なのは、入浴後や外出前など、肌が清潔で乾いた状態のときに使用することです。すでに汗をかいている状態では効果が薄れるため、まずは汗を拭き取ってから使用しましょう。
ただし、制汗剤はあくまで一時的な対処法であり、根本的な治療ではありません。また、過剰な使用は毛穴の詰まりや肌荒れを引き起こす可能性もあるため、適度な使用を心がけてください。
食生活の見直し
食生活とワキガのにおいには一定の関係があるとされています。日本形成外科学会の診療ガイドラインでも、動物性脂肪や赤身肉の大量摂取を控えることが推奨されています(推奨度C1)。
においを強くする可能性がある食品としては、肉類(特に赤身肉)、揚げ物、脂っこい食事、乳製品(過剰摂取の場合)、ニンニク、ネギ類などが挙げられます。
一方、においを抑える効果が期待される食品としては、緑黄色野菜、果物、玄米などビタミンCやビタミンEを含む抗酸化作用のある食品、海藻類などアルカリ性の食品があります。
バランスの良い食事を心がけ、脂質やたんぱく質の過剰摂取を避けることで、においの軽減につながる可能性があります。
ストレス管理と生活習慣の改善
精神的なストレスはアポクリン汗腺を刺激し、発汗を促進します。十分な睡眠をとること、適度な運動でストレスを発散すること、リラックスする時間を設けることなどが、においの軽減に寄与する可能性があります。
また、適度に運動をして汗をかく習慣をつけることも重要です。普段から汗をかいていると、老廃物が徐々に排出されるため、急に大量の汗をかいたときのにおいが軽減されるといわれています。
第5章 医療機関で受けられるワキガ治療
日常生活での対策には限界があり、根本的な改善を目指す場合には医療機関での治療が必要となります。ワキガ治療には様々な選択肢があり、症状の程度やライフスタイル、予算に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。
外用薬による治療
軽度のワキガや、まずは手軽な治療から始めたい方には、外用薬による治療があります。
「塩化アルミニウム製剤」は、医療機関で処方される制汗外用薬です。市販の制汗剤よりも高濃度の塩化アルミニウムが含まれており、汗腺の出口を塞いで発汗を抑える効果があります。
近年では「エクロックゲル5%」や「ラピフォートワイプ2.5%」といった新しい外用薬も登場しています。これらは原発性腋窩多汗症に対して保険適用が認められており、汗を分泌する神経伝達物質(アセチルコリン)の働きを抑制することで効果を発揮します。
外用薬のメリットは、手軽に始められること、費用が比較的安いこと、ダウンタイムがないことです。デメリットとしては、効果が一時的であること、毎日の使用が必要であること、肌への刺激が生じる場合があることが挙げられます。
ボツリヌス毒素注射(ボトックス注射)
ボツリヌス毒素(ボトックス)を脇の下に注射する治療法です。この注射によって、汗を分泌する神経伝達物質であるアセチルコリンの働きがブロックされ、発汗が抑制されます。
施術時間は両脇で5〜10分程度と短く、施術当日から日常生活に戻ることができます。効果は注射後2〜3日で現れ始め、約4〜6か月間持続します。効果が切れると再び症状が現れるため、継続的な治療が必要です。
費用は使用する薬剤によって異なりますが、1回あたり約2万円〜8万円程度が相場です。原発性腋窩多汗症と診断された場合は保険適用となることもあります。
注意点として、ボトックス注射は主にエクリン汗腺に作用するため、多汗症には高い効果がありますが、ワキガ(においの問題)に対する効果は限定的です。においよりも汗の量が主な悩みである方に適した治療といえるでしょう。
ミラドライ(マイクロ波治療)
ミラドライは、マイクロ波(電磁波)を照射して汗腺を熱破壊する治療法です。アメリカFDA(食品医薬品局)および日本の厚生労働省から承認を受けた医療機器であり、「切らないワキガ治療」として近年注目を集めています。
治療のメカニズムは次の通りです。5.8GHzのマイクロ波を脇に照射すると、水分を多く含む汗腺(アポクリン汗腺とエクリン汗腺の両方)に選択的にエネルギーが吸収され、熱により汗腺が破壊されます。同時に皮膚表面はハンドピースの冷却システムで保護されるため、表面へのダメージは最小限に抑えられます。
ミラドライのメリットとして、皮膚を切開しないため傷跡が残らないこと、ダウンタイムが短く翌日から日常生活に戻れること、1回の治療で長期的な効果が期待できること、ワキガと多汗症の両方に効果があることが挙げられます。
デメリットとしては、保険適用外であり費用が高額(20万円〜50万円程度)であること、施術後に腫れや痛みが数日〜数週間続くことがあること、汗腺を100%除去できるわけではなく一部症状が残る可能性があることがあります。
長期追跡研究によると、ミラドライ治療1年後でも81.7%の発汗減少が維持されていたという報告があります。破壊された汗腺は再生しないため、効果は半永久的とされています。ただし、成長期の方が治療を受けた場合は、その後の体の成長とともに残った汗腺が発達する可能性があります。
剪除法(皮弁法):保険適用の手術療法
剪除法(せんじょほう)は、皮弁法や直視下摘除法とも呼ばれ、ワキガの手術療法として最も高い効果が認められている治療法です。また、ワキガ治療の中で唯一、健康保険が適用される手術方法でもあります。
手術の手順は以下の通りです。まず脇の下のシワに沿って3〜5cm程度切開を行います。次に皮膚を裏返すように反転させ、目視でアポクリン汗腺を確認しながら、特殊なハサミで一つ一つ丁寧に切除していきます。最後に切開部を縫合し、ガーゼで圧迫固定して終了となります。
手術時間は片脇で約60〜90分程度です。通常は片脇ずつ手術を行い、日帰りで実施可能です。術後は圧迫固定が必要で、約1週間後に抜糸を行います。
剪除法のメリットとして、保険適用のため費用を抑えられること(3割負担で両脇約4〜5万円程度)、においの原因であるアポクリン汗腺を直接目視しながら確実に除去できること、効果が半永久的であること、多汗症にも効果があることが挙げられます。
デメリットとしては、切開を伴うため傷跡が残ること(ただし脇のシワに沿って切開するため目立ちにくい)、術後の圧迫固定やダウンタイムが必要であること(約1〜2週間は安静が求められる)、血腫や皮膚壊死などの合併症のリスクがあることがあります。
保険適用の条件として、医師がワキガ(腋臭症)と診断した場合に適用されます。単なる汗の量が多いだけでは適用されない場合があります。
参考文献:日本形成外科学会「形成外科診療ガイドライン 2021年版」腋臭症診療ガイドライン
各治療法の比較
治療法を選択する際の参考として、各治療法の特徴をまとめます。
外用薬は費用が最も安く(月数千円程度)、手軽に始められますが、効果は一時的で継続的な使用が必要です。軽度のワキガの方や、まずは試してみたい方に適しています。
ボトックス注射は1回2〜8万円程度で、施術時間も短くダウンタイムがほぼありません。効果は4〜6か月持続します。汗の量を減らしたい方、一時的な対策をしたい方に適しています。
ミラドライは20〜50万円程度と高額ですが、切らずに長期的な効果が得られます。傷跡を残したくない方、ダウンタイムを短くしたい方に適しています。
剪除法は保険適用で4〜5万円程度と比較的安価で、最も確実な効果が期待できます。傷跡とダウンタイムは必要ですが、確実に治したい方、費用を抑えたい方に適しています。
第6章 ワキガ治療の専門クリニックの選び方
専門医の重要性
ワキガ治療を受ける際は、経験豊富な専門医がいるクリニックを選ぶことが重要です。特に手術療法の場合、医師の技術力によって治療効果や術後の傷跡の残り方に差が生じます。
形成外科専門医や皮膚科専門医が在籍しているかどうかは、クリニック選びの一つの目安となります。また、ワキガ治療の症例数が豊富であることも重要なポイントです。
カウンセリングの充実度
治療前のカウンセリングが丁寧に行われるかどうかも確認しましょう。自分の症状がどの程度なのか、どの治療法が最も適しているのか、治療のメリットとデメリット、費用、ダウンタイムなど、納得いくまで説明を受けられることが大切です。
不安なことや疑問点を気軽に相談できる雰囲気かどうかも、クリニック選びの重要な要素です。
アフターフォロー体制
治療後のフォロー体制が整っているかどうかも確認すべきポイントです。特に手術療法の場合は、術後の経過観察や、万が一合併症が生じた場合の対応体制が重要となります。
再診料やフォローアップの内容についても、事前に確認しておくと安心です。
費用の透明性
治療にかかる総費用が明確に提示されるかどうかも重要です。初診料、検査料、治療費、麻酔代、術後の薬代など、すべてを含めた費用を事前に確認しましょう。後から追加費用が発生するようなクリニックは避けるべきです。
渋谷エリアでの治療をお考えの方へ
渋谷は交通アクセスが良く、多くのワキガ治療クリニックが集まるエリアです。仕事帰りや休日の通院にも便利な立地が多く、忙しい方でも治療を受けやすい環境が整っています。
アイシークリニック渋谷院では、保険適用の剪除法からミラドライ、ボトックス注射まで、幅広い治療オプションをご用意しております。形成外科専門医をはじめとする経験豊富な医師が、お一人おひとりの症状やご希望に合わせた最適な治療プランをご提案いたします。
まずは無料カウンセリングにて、お気軽にご相談ください。においの悩みは非常にデリケートな問題ですが、専門家に相談することで解決への道が開けることがあります。一人で抱え込まず、専門医の診察を受けてみることをおすすめします。

第7章 よくあるご質問
ワキガは体質によるものであり、アポクリン汗腺の数や大きさは生まれつき決まっています。そのため、自然に完治することは基本的にありません。ただし、加齢とともにアポクリン汗腺の活動が低下するため、年齢を重ねると症状が軽くなることはあります。また、生活習慣の改善によってにおいを抑えられる場合もありますが、根本的な治療には医療機関での処置が必要です。
ワキガの症状は思春期から現れ始めることが多いですが、治療を受ける適切な時期は治療法によって異なります。ボトックス注射や外用薬は中高生でも受けられる場合がありますが、手術療法はアポクリン汗腺が十分に発達してから(高校生以上)が望ましいとされています。成長期に手術を行うと、その後にアポクリン汗腺が発達して症状が再発する可能性があるためです。
Q3. ワキガは周りの人にうつりますか?
ワキガは感染症ではなく、遺伝的な体質によるものです。そのため、周囲の人にうつることはありません。同様に、後天的にワキガ体質になることもありません。ただし、生活習慣の変化によって一時的ににおいが強くなることはあります。
Q4. 制汗剤を使い続けるとワキガが悪化しますか?
制汗剤の使用がワキガの直接的な原因になることはありません。ただし、過剰に使用すると毛穴が詰まったり、肌荒れを起こしたりする可能性があります。また、殺菌力の強すぎる製品を頻繁に使用すると、皮膚の善玉菌まで減少し、かえってにおいが強くなる可能性も指摘されています。適度な使用を心がけ、肌に異常を感じたら使用を中止して医師に相談してください。
Q5. 手術後、においは完全になくなりますか?
剪除法による手術では、においの原因となるアポクリン汗腺を直接目視しながら除去するため、高い効果が期待できます。多くの方がにおいをほとんど気にならなくなったと報告しています。ただし、汗腺を100%除去することは技術的に困難であり、わずかなにおいが残る場合もあります。手術前に医師から期待できる効果について詳しく説明を受け、納得した上で手術を受けることが大切です。
Q6. ミラドライと手術、どちらがいいですか?
どちらが良いかは、ご自身の症状の程度、ライフスタイル、予算、傷跡やダウンタイムに対する考え方によって異なります。傷跡を残したくない方やダウンタイムを短くしたい方にはミラドライが適しています。一方、費用を抑えたい方や確実な効果を求める方には保険適用の剪除法が適している場合があります。カウンセリングで医師と相談し、ご自身に合った治療法を選択することをおすすめします。
Q7. 治療費は医療費控除の対象になりますか?
保険適用で行われる剪除法は医療費控除の対象となります。また、自由診療であっても、医師が治療の必要性を認めた場合は医療費控除の対象となることがあります。詳しくは税務署や税理士にご確認ください。また、生命保険や医療保険に加入している場合、手術給付金が受け取れる可能性もあります。事前に保険会社に確認することをおすすめします。
おわりに
ワキガは決して珍しい症状ではなく、適切な対処法を知ることで悩みを軽減できる可能性があります。本記事では、ワキガの原因やメカニズムから、セルフチェック方法、日常生活での対策、そして医療機関で受けられる様々な治療法について解説いたしました。
大切なのは、一人で悩みを抱え込まないことです。においの問題はとてもデリケートですが、専門医に相談することで客観的な評価を受けられ、自分に合った解決策を見つけることができます。
アイシークリニック渋谷院では、ワキガ・多汗症でお悩みの方のご相談を承っております。経験豊富な専門医が丁寧にカウンセリングを行い、お一人おひとりの症状やご希望に沿った治療プランをご提案いたします。保険適用の手術から最新の治療法まで幅広い選択肢をご用意しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
においの悩みから解放され、自信を持って毎日を過ごせるよう、私たちがサポートいたします。
参考文献
- 日本形成外科学会, 日本創傷外科学会, 日本頭蓋顎顔面外科学会(編)「形成外科診療ガイドライン 1 2021年版 皮膚疾患/頭頸部・顔面疾患/体幹・四肢疾患」金原出版, 2021年
- Yoshiura K, Kinoshita A, Ishida T, et al. A SNP in the ABCC11 gene is the determinant of human earwax type. Nature Genetics 38, 324–330 (2006).
- 東京大学医科学研究所「腋臭症(わきが)のニオイの原因となる菌を遺伝子レベルで解析 ―ファージ由来の抗菌剤の開発に期待!―」2024年4月 https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00281.html
- 日本医科大学武蔵小杉病院 形成外科「ワキガ(腋臭症)の治療〜ニオイの診断と手術~」 https://www.nms.ac.jp/kosugi-h/section/plastic-surgery/guide_wakiga.html
- 社会福祉法人恩賜財団済生会「ワキガの悩みとさようなら!今すぐ試せるケア方法」 https://www.saiseikai.or.jp/medical/column/body_odor/
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務