「電車の中で脇汗が気になって吊り革につかまれない」「会議中、脇の臭いが周囲に伝わっていないか不安で集中できない」——。脇の汗や臭いに関するお悩みは、想像以上に多くの方が抱えている身近な問題です。特に渋谷のような都心で働く方にとって、通勤時の満員電車や重要なビジネスシーンでの脇汗・臭いは、日常生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。
本記事では、脇汗や脇の臭いが生じるメカニズムから、ご自宅でできるセルフケア、そして医療機関で受けられる治療法まで、専門医の監修のもと詳しく解説いたします。脇汗や臭いのお悩みは、適切な対策と治療によって大きく改善することが可能です。一人で悩まず、正しい知識を身につけて、自信を持った毎日を取り戻しましょう。
脇汗・臭いが発生するメカニズム
汗腺の種類と役割を理解する
私たちの皮膚には、汗を分泌する器官である汗腺が存在しています。汗腺にはエクリン汗腺とアポクリン汗腺という2種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
エクリン汗腺は全身のほぼすべての皮膚に分布しており、主に体温調節の役割を担っています。暑い日や運動後に全身から出る汗は、このエクリン汗腺から分泌されるものです。エクリン汗腺から出る汗は約99%が水分で構成されており、サラサラとした質感でほぼ無臭という特徴があります。
一方、アポクリン汗腺は脇の下、乳輪周辺、外陰部、耳の中など、身体の限られた部位にのみ存在しています。アポクリン汗腺から分泌される汗には、タンパク質、脂質、糖質、アンモニアなどの成分が含まれており、やや粘り気のある白濁した汗となります。
ここで重要なのは、アポクリン汗腺から出る汗自体も、分泌された直後は実は無臭であるという点です。では、なぜ脇から独特の臭いが発生するのでしょうか。
臭いが発生する仕組み
脇の臭いが発生する主な原因は、皮膚に常在する細菌の働きにあります。私たちの皮膚表面には、黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌など、さまざまな常在菌が存在しています。これらの細菌がアポクリン汗腺から分泌された汗に含まれる脂質やタンパク質を分解することで、独特の臭いを持つ物質が生成されます。
臭いの原因となる主な物質としては、3-メチル-2-ヘキセン酸という脂肪酸が知られています。この物質は古い雑巾のような臭いを特徴とし、1991年にアメリカの研究機関によって腋臭症の原因物質として報告されました。
また、硫黄臭の原因となる3-メチル-3-スルファニルヘキサン-1-オールという物質も重要です。これは生臭く鼻をつくような臭いを特徴としています。興味深いことに、この物質は汗腺から分泌される際にはアミノ酸の一種であるシステインと結合した無臭の状態で存在しており、皮膚の細菌によって分解されることで初めて臭いを発するようになります。
さらに、カレーのスパイスのような臭いを生じさせる3-ヒドロキシ-3-メチルヘキサン酸も腋臭の原因物質として知られています。
2024年に発表された東京大学医科学研究所と大阪公立大学の共同研究では、腋臭症患者の皮膚常在菌叢を詳細に解析し、臭いの種類によって関与する細菌が異なることが明らかになりました。この研究によると、日本人の腋臭症患者の約9割は、ミルク様臭、酸様臭、カレースパイス様臭のいずれかに分類されるとのことです。
脇汗が多くなる原因
脇汗の量が増加する原因はさまざまです。
温熱性発汗は、気温が高い日や運動後など、体温が上昇した際に起こる発汗です。身体は汗を蒸発させることで体温を下げようとするため、暑い環境では自然と汗の量が増加します。
精神性発汗は、緊張やストレス、不安などの精神的な要因によって生じる発汗です。この発汗は温熱性発汗とは異なり、手のひら、足の裏、脇の下など局所的に現れることが特徴です。交感神経が過剰に活性化されることで起こるため、ストレスの多い現代社会では多くの方が経験されています。
味覚性発汗は、香辛料の効いた辛い料理を食べた際に起こる発汗で、主に額や鼻周辺に現れます。食事が終わると自然に汗が引くのが特徴です。
また、自律神経の乱れも脇汗が増加する原因となります。睡眠不足、不規則な生活習慣、過度なストレスなどによって交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、必要以上に汗をかきやすくなることがあります。
多汗症と腋臭症（ワキガ）の違い
脇の汗や臭いに関する症状には、多汗症と腋臭症（ワキガ）という2つの異なる疾患概念があります。両者は混同されやすいですが、原因となる汗腺が異なります。
多汗症とは
多汗症は、体温調節の必要がないにもかかわらず、日常生活に支障をきたすほどの過剰な発汗が生じる疾患です。多汗症による汗は主にエクリン汗腺から分泌されるため、汗自体は無色で臭いもほとんどありません。
日本皮膚科学会の「原発性局所多汗症診療ガイドライン」では、明らかな原因がないまま過剰な発汗が6ヵ月以上続き、以下の6項目のうち2項目以上に該当する場合を多汗症と診断しています。
診断基準として、最初の症状が25歳以下で出現していること、左右両側で同様の発汗がみられること、睡眠中は発汗が止まっていること、週に1回以上の頻度で多汗エピソードがあること、家族に同様の症状を持つ方がいること、そして多汗により日常生活に支障が生じていることが挙げられます。
日本人における原発性腋窩多汗症の有病率は約5.75%、つまり約20人に1人が該当するとされており、決して珍しい疾患ではありません。
腋臭症（ワキガ）とは
腋臭症は、アポクリン汗腺から分泌される汗が皮膚の常在菌によって分解されることで、独特の強い臭いを発する状態を指します。日本人における腋臭症の割合は約10~15%程度とされています。
腋臭症の特徴として、遺伝的要因が大きく関与していることが挙げられます。両親のどちらかが腋臭症の場合、子どもに遺伝する確率は約50%、両親ともに腋臭症の場合は約80%の確率で遺伝するといわれています。これは、アポクリン汗腺の数や大きさが遺伝的に決定されるためです。
また、腋臭症の方はアポクリン汗腺が一般の方よりも大きく、その数も多い傾向があります。アポクリン汗腺は思春期に発達するため、腋臭症の症状も思春期以降に現れることが多く、加齢とともに症状が軽減していくことも特徴です。
両者の合併について
実際の臨床では、原発性腋窩多汗症と腋臭症が合併しているケースも少なくありません。エクリン汗腺からの過剰な発汗により脇の下が湿った状態が続くと、細菌が繁殖しやすい環境が整い、アポクリン汗腺からの汗の分解も促進されるためです。
そのため、脇汗の量と臭いの両方にお悩みの方も多くいらっしゃいます。このような場合には、多汗症と腋臭症の両方に対してアプローチすることが効果的な治療につながります。
ご自身でできる腋臭症・ワキガのセルフチェック
脇の臭いが気になっていても、実際に腋臭症なのかどうか判断が難しいと感じる方も多いでしょう。嗅覚は同じ臭いに長時間さらされると慣れてしまう性質があるため、自分自身の体臭を正確に把握することは簡単ではありません。以下のセルフチェック項目を参考に、ご自身の状態を確認してみてください。
耳垢の状態を確認する
耳垢が湿っているかどうかは、腋臭症の可能性を判断する重要な指標の一つです。耳の中にはアポクリン汗腺が存在しており、この汗腺の活動が活発な方は耳垢が湿った状態になります。耳垢が湿っている方の約80%が腋臭症体質であるという報告があります。
耳垢には、乾燥してカサカサした乾性耳垢と、ベタベタと湿った湿性耳垢の2タイプがあります。日本人では約70~80%が乾性耳垢、約20~30%が湿性耳垢とされています。
ただし、入浴後など外的要因で耳の中が濡れている状態での確認は正確な判断ができませんので、耳が乾いた状態で確認するようにしましょう。また、耳垢が湿っているからといって必ずしも腋臭症というわけではなく、あくまで一つの参考指標として捉えてください。
衣服の脇部分の黄ばみ
アポクリン汗腺から分泌される汗には、リポフスチンという色素成分が含まれています。そのため、腋臭症の方は白いシャツやインナーの脇部分が黄色く変色しやすい傾向があります。
洗濯しても落ちにくい黄ばみや、新しい衣服でもすぐに脇部分が変色してしまう場合は、腋臭症の可能性を考慮する必要があるでしょう。
家族歴の確認
先述のとおり、腋臭症は遺伝的要因が大きく関与しています。両親や兄弟姉妹に腋臭症の方がいる場合、ご自身も腋臭症体質である可能性が高くなります。
脇毛の状態
脇毛が多い方、特に女性で脇毛が太く1つの毛穴から複数の毛が生えている方や、男性で柔らかい猫毛のような脇毛の方は、アポクリン汗腺が多い傾向があるとされています。
脇毛は汗や皮脂を溜め込みやすく、細菌が繁殖する温床になりやすいため、脇毛の処理をすることで臭いの軽減が期待できます。
ガーゼテストによる確認
より客観的に確認したい場合は、ガーゼテストという方法があります。清潔なガーゼを脇に挟んだ状態で数分間軽い運動を行い、そのガーゼの臭いを第三者に嗅いでもらう方法です。医療機関でも行われている検査方法で、臭いの強さを5段階で判定します。
日常生活でできるセルフケア
脇汗や臭いは、日常生活での適切なケアによってある程度軽減することが可能です。まずは以下のセルフケアを試してみましょう。
清潔を保つ
基本中の基本ですが、脇の下を清潔に保つことが最も重要です。汗をかいたらこまめに拭き取り、雑菌の繁殖を防ぎましょう。
汗を拭き取る際は、乾いたタオルでゴシゴシ拭くよりも、湿らせたタオルや汗拭きシートを使用することをおすすめします。汗には体温を下げる働きがあるため、乾いたタオルで完全に拭き取ってしまうと体温が下がりにくくなり、かえって汗をかきやすくなることがあります。
入浴時には脇の下をしっかり洗って汗や皮脂を落とすことが大切ですが、洗いすぎには注意が必要です。過度な洗浄は皮膚と常在菌のバランスを崩す原因となる場合があります。
制汗剤・デオドラント剤の活用
市販の制汗剤やデオドラント剤は、脇汗・臭い対策の強い味方です。ただし、両者には異なる働きがあることを理解しておくとよいでしょう。
制汗剤は、汗の出口を一時的に引き締める収れん作用により発汗量を抑える効果があります。代表的な成分としては、クロルヒドロキシアルミニウム、フェノールスルホン酸亜鉛、ミョウバンなどがあります。
一方、デオドラント剤は臭いの原因となる細菌の繁殖を抑えたり、発生した臭いを吸着したりする効果があります。殺菌成分としてはイソプロピルメチルフェノールなどが配合されています。
汗の量と臭いの両方が気になる方は、制汗成分とデオドラント成分の両方が配合された制汗デオドラント剤を選ぶとよいでしょう。
制汗剤を使用する際のポイントとして、汗をかく前の清潔な肌に使用することが効果的です。外出前や入浴後の肌が清潔な状態で塗布しましょう。また、スプレータイプよりもロールオンタイプやスティックタイプ、クリームタイプの方が肌への密着度が高く、効果が持続しやすい傾向があります。
脇毛の処理
脇毛は汗や皮脂を溜め込み、細菌が繁殖しやすい環境を作ります。脇毛を処理することで通気性が良くなり、蒸れを防いで臭いを軽減することが期待できます。
カミソリでの自己処理は肌への負担が大きく、傷つけてしまうとかえって状態が悪化する可能性があります。肌への負担を考慮すると、医療脱毛などの専門的な処理方法も選択肢として検討する価値があるでしょう。
衣服の素材選び
着用する衣服の素材も脇汗・臭い対策において重要です。綿やリネンなどの天然素材は吸湿性・通気性に優れており、汗を素早く吸収して蒸れを防いでくれます。
脇汗パッド付きのインナーや、消臭・抗菌加工が施された衣類を活用するのも効果的です。脇汗パッドは衣服の内側に貼り付けて使用し、汗を吸収することで汗ジミや黄ばみを防ぎます。
色選びとしては、黒やネイビーなど暗い色の衣服は汗ジミが目立ちにくいというメリットがあります。
食生活の改善
食生活も脇の臭いに影響を与えます。脂質の多い肉類、揚げ物、バターやチーズなどの乳製品は、アポクリン汗腺の働きを活発にし、汗に含まれる脂肪分を増加させるため、臭いが強くなる原因となることがあります。
野菜や海藻、きのこなどのアルカリ性食品は、体内の酸化を抑え、体臭の原因物質を軽減する効果が期待できます。また、めかぶやもずく、納豆など腸内環境を整える食材も、体臭対策に効果的です。
アルコールの過剰摂取も体臭を強める原因となります。体内で消化しきれなかったアルコールは汗として分泌されるため、飲酒後は体臭が強くなりやすいことを覚えておきましょう。
ストレス管理
精神的なストレスは交感神経を刺激し、アポクリン汗腺からの発汗を促進します。日常生活の中でリラックスする時間を設け、ストレスを上手にコントロールすることも脇汗・臭い対策として重要です。
深呼吸や軽いストレッチ、ぬるめのお風呂でゆっくり入浴するなど、自分なりのリラクゼーション方法を見つけてみてください。
医療機関で受けられる治療法
セルフケアで十分な効果が得られない場合や、症状が日常生活に大きな支障をきたしている場合は、医療機関での治療を検討することをおすすめします。近年は治療の選択肢も増え、患者様の症状や希望に合わせた治療が可能になっています。
外用薬による治療
2020年以降、原発性腋窩多汗症に対する保険適用の外用薬が相次いで登場し、治療の選択肢が大きく広がりました。
エクロックゲルは、2020年11月に発売された日本初の保険適用の原発性腋窩多汗症治療薬です。有効成分のソフピロニウム臭化物は、エクリン汗腺のムスカリンM3受容体に作用し、交感神経から伝えられる発汗の指令をブロックすることで発汗を抑制します。1日1回、左右の脇にそれぞれポンプ1押し分の薬液を塗布する簡便な使用方法で、12歳以上の方に処方可能です。
ラピフォートワイプは、2022年5月に発売された1回使い切りのシート型製剤です。薬液が染み込んだ不織布で脇を拭くことで有効成分を塗布します。個包装で持ち運びやすく、衛生的に使用できる点が特徴です。9歳以上の方に処方可能で、エクロックゲルと同様の作用機序で発汗を抑制します。
いずれの外用薬も、使い始めの数日間は効果を実感しにくいことがありますが、継続して使用することで効果が現れてきます。副作用としては、塗布部位の皮膚炎、口渇、散瞳などが報告されています。閉塞隅角緑内障や前立腺肥大による排尿障害がある方は使用できませんので、必ず医師に相談してください。
塩化アルミニウム製剤は、汗腺の出口を塞いで発汗を抑える作用があり、従来から多汗症治療に使用されてきました。保険適用外ですが、医療機関で処方される院内製剤として入手可能です。
ボトックス注射（ボツリヌス毒素製剤）
ボトックス注射は、ボツリヌス菌から抽出した神経毒素を精製した医薬品を脇の皮膚に注射する治療法です。神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を阻害することで、汗腺への信号伝達を遮断し、発汗を抑制します。
2012年から重度の原発性腋窩多汗症に対して保険適用が認められています。保険適用の条件としては、原発性腋窩多汗症の診断基準を満たし、重症度が高いと医師が判断した場合に限られます。
効果は注射後2~3日で現れ始め、1週間程度でピークに達します。効果の持続期間は個人差がありますが、一般的に4~9ヵ月程度とされています。そのため、効果を維持するためには定期的な再注射が必要です。
保険適用の場合、3割負担で約15,000~20,000円程度の費用となります。施術時間は5~10分程度と短く、ダウンタイムもほとんどないため、忙しい方でも受けやすい治療です。
なお、ボトックス注射は主にエクリン汗腺に作用するため、汗の量を減らす効果は高いですが、腋臭症の臭いを直接抑える効果は限定的です。ただし、発汗が減少することで脇が乾燥し、細菌の繁殖が抑えられる結果、間接的に臭いが軽減されることはあります。
手術治療（剪除法・皮弁法）
剪除法（皮弁法、反転剪除法とも呼ばれます）は、腋臭症に対する保険適用の手術療法です。脇の下のシワに沿って4~5cm程度切開し、皮膚を反転させて裏側にあるアポクリン汗腺を医師が直接目視しながら丁寧に除去していきます。
この手術は、さまざまな腋臭症治療の中で最も効果が高いとされています。臭いの原因であるアポクリン汗腺を直接確認しながら除去するため、約80~95%の汗腺を取り除くことが可能で、強い臭いにも有効です。一度除去したアポクリン汗腺は再生しないため、半永久的な効果が期待できます。
保険適用のため、3割負担の場合は片脇約21,000~26,000円、両脇で約40,000~50,000円程度の費用で治療を受けることができます。
ただし、切開を伴う手術のため、術後は一定期間の安静が必要です。圧迫固定を行い、約1週間後に抜糸となります。傷跡が残る可能性があること、術後の腫れや内出血、皮膚のひきつれなどが生じる可能性があることも理解しておく必要があります。傷跡は時間とともに目立たなくなっていきますが、完全に消えることはありません。
ミラドライ
ミラドライは、マイクロ波を利用して汗腺を破壊する治療法です。2010年に日本に導入され、皮膚を切開することなくアポクリン汗腺とエクリン汗腺の両方に対してアプローチできる画期的な治療として注目されています。
マイクロ波は水分に反応する特性を持っており、汗腺の水分にピンポイントで熱を加えて破壊します。冷却システムにより皮膚表面は保護されるため、やけどのリスクが低減されています。
1回の施術で両脇の治療が完了し、傷跡が残らない点がメリットです。一度破壊された汗腺は再生しないため、効果は半永久的に持続します。汗の量の減少と臭いの軽減の両方が期待でき、脱毛効果も得られます。
ただし、ミラドライは保険適用外の治療となるため、費用は自己負担となります。一般的な相場は両脇で20~50万円程度です。
受診のタイミングと診察の流れ
こんな時は医療機関への相談を
以下のような状況に当てはまる場合は、医療機関への相談をおすすめします。
市販の制汗剤やデオドラント剤を使っても効果が感じられない場合、脇汗や臭いが原因で日常生活に支障をきたしている場合、人目が気になって外出や対人関係を避けてしまう場合、着たい服が着られない・仕事に集中できないなど具体的な困りごとがある場合は、専門医に相談することで解決の糸口が見つかる可能性があります。
脇汗や臭いの悩みは「体質だから仕方ない」と諦めてしまう方も多いですが、現在はさまざまな治療法が確立されています。一人で悩まず、まずは医療機関に相談してみることをおすすめします。
診察の流れ
医療機関を受診すると、まず問診が行われます。症状の程度や発症時期、日常生活への影響、家族歴などについて詳しくお聞きします。
多汗症の診断には、先述の診断基準に照らし合わせて重症度を評価します。腋臭症の診断では、ガーゼテストにより臭いの強さを5段階で判定することがあります。
診断結果と患者様のご希望、ライフスタイルなどを総合的に考慮した上で、最適な治療法をご提案いたします。外用薬での治療を希望される方、注射での治療を検討したい方、根本的な手術治療をご希望の方など、それぞれのニーズに合わせた治療が可能です。
よくあるご質問
脇から分泌される汗の量は、全身の発汗量から考えると微量です。そのため、脇汗を抑えても体温調節に支障が生じることは理論上考えにくく、健康を害する心配はほとんどありません。
制汗剤の使用により耐性が生じることは一般的にはありません。ただし、過剰な使用は毛穴の詰まりや皮膚トラブルの原因となる可能性があります。用法用量を守って使用することが大切です。
ワキガは人にうつりますか？
ワキガは感染症ではないため、他人にうつることはありません。アポクリン汗腺の数や活動量は遺伝的に決まるものであり、一緒に過ごしたからといってワキガになることはありません。
脱毛するとワキガが悪化しますか？
脱毛によってワキガが悪化することはありません。むしろ、脇毛がなくなることで通気性が良くなり、細菌が繁殖しにくくなるため、臭いの軽減につながることが期待できます。
子どもでも治療は受けられますか？
多汗症の保険適用外用薬は、エクロックゲルが12歳以上、ラピフォートワイプが9歳以上から使用可能です。お子様の症状でお悩みの場合もお気軽にご相談ください。
まとめ
脇汗や臭いのお悩みは、適切な対策と治療によって大きく改善することが可能です。まずは日常生活でのセルフケアを心がけ、それでも十分な効果が得られない場合は、ためらわずに医療機関を受診することをおすすめします。
近年は保険適用の外用薬も登場し、従来よりも気軽に治療を始められるようになりました。脇汗や臭いは単なる「体質」として片付けられる問題ではなく、適切な治療によって改善できる症状です。
渋谷エリアで脇汗や臭いにお悩みの方は、ぜひ一度専門医にご相談ください。患者様一人ひとりの症状やご希望に合わせて、最適な治療法をご提案いたします。
参考文献
- 日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」日本皮膚科学会雑誌, 2023年133巻13号 p.3025-3056 https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/133/13/133_3025/_article/-char/ja/
- 日本皮膚科学会「汗の病気―多汗症と無汗症― Q5」皮膚科Q&A https://qa.dermatol.or.jp/qa32/q05.html
- 東京大学医科学研究所「腋臭症（わきが）のニオイの原因となる菌を遺伝子レベルで解析」2024年4月 https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00281.html
- マルホ株式会社「脇汗スッキリProject」 https://www.maruho.co.jp/kanja/wakiase/about/
- 兵庫医科大学病院「原発性腋窩（えきか）多汗症」みんなの医療ガイド https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/112
- Wikipedia「3-メチル-2-ヘキセン酸」 https://ja.wikipedia.org/wiki/3-メチル-2-ヘキセン酸
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務