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女性の右胸が痛い原因とは?考えられる病気と受診の目安を医師が解説

突然、右側の胸に痛みを感じると、「何か重大な病気ではないか」と不安になる方も多いのではないでしょうか。特に女性の場合、乳がんをはじめとする乳腺疾患への心配から、強い不安を覚えることも少なくありません。

右胸の痛みには、筋肉や神経の問題から、消化器系の疾患、女性ホルモンの影響によるものまで、実にさまざまな原因が考えられます。左胸の痛みは心臓疾患との関連が強く意識されますが、右胸の痛みは心臓との関連が比較的少なく、むしろ肺や肝臓、胆のう、筋肉、神経といった他の臓器や組織が原因となるケースが多いのが特徴です。

本記事では、女性に多い右胸の痛みの原因について、考えられる疾患ごとに詳しく解説するとともに、受診の目安や適切な診療科についてもご紹介します。自己判断は禁物ですが、正しい知識を持つことで、適切な対応につなげていただければ幸いです。


目次

  1. 右胸の痛みとは
  2. 女性に多い右胸の痛みの原因
  3. 乳腺に関連する痛み
  4. 筋骨格系が原因の胸の痛み
  5. 呼吸器系が原因の胸の痛み
  6. 消化器系が原因の胸の痛み
  7. 感染症が原因の胸の痛み
  8. ストレスや心因性の胸の痛み
  9. 危険な胸痛の見分け方
  10. 右胸が痛いときは何科を受診すべきか
  11. 検査と診断について
  12. 日常生活でできる予防と対策
  13. まとめ

1. 右胸の痛みとは

胸部には、心臓、肺、食道、胃の一部、肝臓、胆のう、そして肋骨や筋肉、神経など、多くの重要な臓器や組織が存在しています。そのため、「胸が痛い」という症状ひとつをとっても、その原因はきわめて多岐にわたります。

右側の胸に限定した痛みの場合、左側にある心臓が直接的な原因となることは比較的少ないとされています。ただし、心臓疾患でも右胸に痛みが放散するケースがないわけではありませんので、完全に否定することはできません。

右胸の痛みを評価する際には、いくつかの観点から症状を整理することが重要です。まず、痛みの性質がどのようなものかという点です。チクチク、ズキズキ、締め付けられるような痛み、圧迫感など、痛みの感じ方によって原因が異なることがあります。次に、痛みの場所と広がりです。痛みが限定的なのか、背中や肩、腕などに広がるのかによっても、疑われる疾患は変わってきます。さらに、痛みの持続時間や発生するタイミング、深呼吸や体を動かしたときに痛みが変化するかどうかなども、診断の重要な手がかりとなります。

特に女性の場合、月経周期やホルモンバランスの変動が胸の痛みに影響することも珍しくありません。生理前に乳房が張って痛むという経験をお持ちの方も多いでしょう。このような生理的な変化による痛みと、病的な原因による痛みを区別することも、適切な対応のためには欠かせません。


2. 女性に多い右胸の痛みの原因

女性が右胸に痛みを感じる場合、その原因として考えられる疾患や状態は数多くあります。大きく分類すると、以下のようなカテゴリーに分けることができます。

まず、乳腺に関連する原因があります。乳腺症や乳腺のう胞、乳腺炎などがこれにあたります。女性ホルモンの影響を受けやすい乳腺組織は、月経周期に伴って変化し、痛みを生じることがあります。

次に、筋骨格系の原因です。肋間神経痛、筋肉の緊張や炎症、肋骨の骨折や打撲などが含まれます。デスクワークや不良姿勢が続いている方、運動後に痛みを感じる方は、この可能性を考慮する必要があります。

呼吸器系の原因としては、胸膜炎や肺炎、気胸などが挙げられます。これらの疾患では、呼吸に伴って痛みが変化することが特徴的です。

消化器系の原因も見逃せません。逆流性食道炎は胸やけとともに胸痛を引き起こすことがあり、胆石症や胆嚢炎では右上腹部から右胸にかけて痛みが放散することがあります。

感染症による原因としては、帯状疱疹が代表的です。水痘ウイルスが再活性化して発症するこの疾患は、特に50代以降の女性に多くみられます。

最後に、ストレスや心理的要因による心因性の胸痛があります。検査で器質的な異常が見つからないにもかかわらず、胸に痛みや違和感を覚えるケースで、胸痛症候群や心臓神経症と呼ばれることもあります。


3. 乳腺に関連する痛み

乳腺症とは

乳腺症は、30代から50代の女性によくみられる良性の状態で、女性ホルモンのバランスが乱れることによって生じると考えられています。病気というよりは、乳腺組織の生理的な変化の一つとして捉えられることが多く、多くの場合は特別な治療を必要としません。

乳腺症の主な症状は、乳房の痛みや張り、しこりのような感触などです。痛みはズキズキ、チクチクと表現されることが多く、乳房全体に鈍く広がることもあれば、局所的に感じることもあります。特徴的なのは、生理前に症状が強くなり、生理が始まると軽減する傾向があることです。

乳腺症では、片方だけに痛みが生じることも珍しくありません。右胸だけ、あるいは左胸の一箇所だけに痛みを感じるなど、症状の出方には個人差があります。これは乳腺の分布が一人ひとり異なり、乳腺の密度が高い部分と低い部分があるためです。

乳腺症と乳がんの関係について心配される方も多いですが、乳腺症のほとんどは乳がんとは無関係とされています。ただし、乳がんの初期には痛みがないことがほとんどですので、しこりや乳頭からの分泌物、皮膚の変化などの症状がある場合は、乳腺外科を受診して検査を受けることが重要です。

月経周期との関連

女性の乳房は、月経周期に伴うホルモン変動の影響を強く受けます。排卵後から月経開始までの期間、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増加すると、乳腺が発達して乳房が張り、痛みを感じやすくなります。

この生理的な変化による乳房痛は、両側に生じることが多いものの、片側だけが強く痛む場合もあります。右側の乳房だけに痛みを感じる方もおり、毎月同じような症状が繰り返される場合は、月経周期との関連を疑うことができます。

閉経後は女性ホルモンの分泌が減少するため、乳腺症の症状は自然と軽減することが多いです。ただし、閉経後にホルモン補充療法を受けている方や、50代、60代でも乳房痛を訴える方もおられますので、気になる症状がある場合は医療機関で相談することをおすすめします。

乳腺のう胞

乳腺のう胞とは、乳管の中に液体がたまって袋状になった状態です。袋も含め全体が正常な組織で構成されており、悪性の病気ではありません。月経前にむくみやすくなる時期に乳管に水がたまり、のう胞ができることがあります。

のう胞が大きくなると、その部分に局所的な痛みを感じたり、しこりとして触れたりすることがあります。閉経後は乳腺のう胞は消えていくことが多く、症状も治まります。


4. 筋骨格系が原因の胸の痛み

肋間神経痛

肋間神経痛は、肋骨に沿って走行する肋間神経が何らかの原因で刺激されることで生じる痛みです。病名ではなく症状を指す言葉であり、さまざまな原因によって引き起こされます。

肋間神経は、脊髄から出て肋骨に沿って脇腹や胸のあたりまで伸びている神経です。胸から腹部にかけての皮膚の感覚や、筋肉の運動を担っています。この神経が圧迫されたり、刺激を受けたりすると、突発的な痛みやしびれが生じます。

肋間神経痛の痛みは、ズキズキ、ピリピリ、電気が走るような痛みと表現されることが多いです。痛みは体の左右どちらか片側に現れるのが特徴で、右胸だけに痛みを感じるケースも多くあります。深呼吸や咳、くしゃみ、体をひねるといった動作で痛みが増強することがあります。

肋間神経痛の原因としては、姿勢の悪さ、長時間のデスクワーク、ストレス、疲労、帯状疱疹、胸椎椎間板ヘルニア、肋骨骨折などが挙げられます。原因がはっきりしないものを特発性肋間神経痛と呼び、原因が特定されるものを続発性肋間神経痛と呼びます。

若い女性に多いとされる胸痛症候群も、肋間神経痛の一種と考えられています。10代から20代の若年女性にチクチク、ピリピリとした痛みがピンポイントに生じ、原因不明のまま経過観察となることが多いですが、成長に伴って自然と改善していくケースがほとんどです。

筋肉の緊張と痛み

胸部の筋肉が過度に緊張したり、炎症を起こしたりすることで、右胸に痛みを感じることがあります。特に、姿勢の崩れや長時間同じ姿勢を続けることによる肩こり、背中のこりから、胸部の筋肉にも緊張が波及することがあります。

運動や重いものを持ち上げた後に右胸が痛む場合は、筋肉痛や軽度の筋肉損傷が原因である可能性があります。この場合、特定の動作で痛みが悪化し、安静にしていると軽減する傾向があります。

デスクワークが中心の方や、スマートフォンの長時間使用で前かがみの姿勢が続いている方は、胸郭周りの筋肉に負担がかかりやすい状態にあります。正しい姿勢を心がけ、適度なストレッチを取り入れることで、筋肉の緊張を和らげることができます。

肋骨骨折と打撲

肋骨骨折は、転倒や事故などの外傷によって生じることが多いですが、激しい咳やくしゃみが繰り返されることで疲労骨折として起こる場合もあります。骨粗鬆症がある方では、軽い衝撃でも骨折してしまうことがあるため、注意が必要です。

肋骨骨折の特徴は、骨折部分に鋭い痛みや圧痛があることです。体を動かしたとき、深呼吸や咳をしたときに痛みが強くなる傾向があります。骨折部分に大きなずれがなければ手術の必要はなく、安静にして経過を見ることが多いですが、痛みが強い場合や呼吸に支障がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。

肋軟骨炎

肋軟骨炎は、肋骨と胸骨を結ぶ軟骨部分に炎症が起こる状態です。胸の前面、特に胸骨のあたりに痛みを感じることが多いですが、右側に限局して痛みが生じることもあります。

深呼吸や特定の動作で痛みが増強することがあり、押すと痛みを感じる(圧痛がある)のが特徴です。原因は明らかでないことが多いですが、過度な運動や上気道感染に続いて発症することがあります。


5. 呼吸器系が原因の胸の痛み

胸膜炎

胸膜炎は、肺を覆っている胸膜に炎症が起こり、胸水がたまる病気です。細菌やウイルスなどの感染症が原因となることが多く、発熱や悪寒を伴うことがあります。

胸膜炎の痛みは、鈍い痛みから鋭い痛みまでさまざまですが、呼吸によって痛みが変動することが特徴的です。特に深呼吸をすると痛みが強くなることが多いです。右側の胸膜に炎症が起これば、右胸に限局した痛みとして現れます。

肺炎

肺炎は、細菌やウイルスなどの病原体が肺に感染して炎症を起こす病気です。高熱、咳、痰、息苦しさなどの症状を伴うことが一般的ですが、炎症が胸膜にまで及ぶと、胸痛を感じることがあります。

右側の肺に肺炎が起これば、右胸や右背中に痛みを感じることがあります。咳をしたときや深呼吸をしたときに痛みが増強することが多いです。

気胸

気胸は、肺の外側の胸膜に穴があき、肺がしぼんでしまう病気です。やせ型の若い男性に多いとされていますが、女性でも発症することがあります。特に月経に関連して発症する月経随伴性気胸は、女性特有の病態です。

気胸の症状は、突然の胸痛と息苦しさです。痛みは深呼吸で増強することが多く、右肺に気胸が起これば右胸の痛みとして現れます。症状が軽い場合は安静で経過を見ることもありますが、肺のしぼみ方が大きい場合は、胸腔ドレナージなどの治療が必要になります。

肺塞栓症

肺塞栓症は、肺の血管に血栓が詰まる病気です。多くは足の深部静脈にできた血栓が血流にのって肺に到達することで起こります。長時間の飛行機移動などで発症する「エコノミークラス症候群」として知られています。

症状は、突然の胸痛や息苦しさ、速い脈拍などで、時に失神を伴うこともあります。命に関わる重篤な病気であり、疑われる場合は直ちに救急医療機関を受診する必要があります。


6. 消化器系が原因の胸の痛み

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで、食道粘膜に炎症を起こす病気です。胸やけ、呑酸(酸っぱいものがこみ上げてくる感覚)、胸の痛みなどの症状を引き起こします。

逆流性食道炎による胸痛は、胸骨の裏側あたりに感じることが多いですが、右胸にまで痛みが及ぶこともあります。特徴的なのは、食後に症状が悪化すること、横になると症状が強くなることです。また、心臓病の胸痛と似たような強い痛みが生じることもあり、「非心臓性胸痛」と呼ばれることがあります。

日本人の15から20パーセントが逆流性食道炎に罹患しているとされ、食生活の欧米化やストレス社会の影響もあり、増加傾向にあります。治療には、胃酸の分泌を抑える薬や、生活習慣の改善が有効です。

胆石症と胆嚢炎

胆石症は、胆のうや胆管に結石(胆石)ができる病気です。日本人の成人の10人に1人が胆石を持っているとも言われ、特に40代以降の女性に多いとされています。

胆石があるだけでは症状がないことも多いですが、胆石が胆のうの出口をふさいだり、胆管に落ちたりすると、「胆石発作」と呼ばれる激しい痛みが生じます。痛みは右上腹部やみぞおちに感じることが多いですが、右胸や右肩、背中に放散することもあります。脂肪分の多い食事の後に症状が出やすいのが特徴です。

胆嚢炎は、胆石が原因で胆のうに炎症が起こる病気です。右季肋部(右の肋骨の下あたり)の激しい痛みに加え、発熱、吐き気、嘔吐などの症状を伴うことがあります。深く呼吸すると痛みが強くなることもあります。胆嚢炎は、早期に適切な治療を行わないと重症化することがあるため、疑われる場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。

女性ホルモンの一つであるエストロゲンは、血中コレステロールを増加させる働きがあるため、女性は男性に比べて胆石ができやすい傾向にあります。特に40代以降の女性では、女性ホルモンの変動とともに胆石のリスクが高まりますので、右上腹部から右胸にかけての痛みがある場合は、胆石症の可能性も考慮に入れる必要があります。


7. 感染症が原因の胸の痛み

帯状疱疹

帯状疱疹は、子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が原因で起こる病気です。水ぼうそうが治った後もウイルスは体内の神経節に潜伏しており、加齢や疲労、ストレスなどで免疫力が低下すると再び活性化して、帯状疱疹として発症します。

日本人成人の90パーセント以上がこのウイルスを体内に持っており、80歳までにおよそ3人に1人が帯状疱疹を発症すると言われています。50代から発症率が高くなり、疲労やストレスがきっかけになることも多いです。

帯状疱疹の症状は、体の左右どちらか片側に、神経の走行に沿って帯状に赤い発疹や水ぶくれが現れることです。右胸から背中にかけて、肋骨に沿って症状が出ることも多くあります。

特徴的なのは、皮膚の症状が出る前に、ピリピリ、チクチクとした痛みやかゆみが数日から1週間ほど先行することです。この時期には皮疹がないため、肋間神経痛や心臓病と間違われることもあります。痛みが出た後に赤い発疹や水ぶくれが現れれば、帯状疱疹の診断がつきます。

帯状疱疹は早期に抗ウイルス薬による治療を開始することが重要です。治療が遅れると、皮膚症状が治った後も長期間痛みが残る「帯状疱疹後神経痛」に移行することがあります。50歳以上の方は帯状疱疹予防ワクチンを接種することで、発症リスクを下げることができます。


8. ストレスや心因性の胸の痛み

心臓神経症と胸痛症候群

心臓に器質的な異常がないにもかかわらず、胸痛や動悸、息苦しさなどの症状が現れる状態を「心臓神経症」や「胸痛症候群」と呼ぶことがあります。これらは自律神経の乱れが原因で生じると考えられており、ストレスや不安、緊張などがきっかけとなることが多いです。

心臓神経症は、不安感の強い人や、女性に多くみられると言われています。症状としては、胸痛、動悸、息苦しさ、胸の圧迫感などがあり、心臓病の症状とよく似ています。ただし、心電図やレントゲン、血液検査などを行っても、心臓に異常は見つかりません。

若い女性に多いとされる胸痛症候群は、14歳から20歳までの年齢層でしばしば見られます。痛みはチクチク、ピリピリとした刺すような痛みが多く、指で指し示すことができるピンポイントの痛みであることが特徴です。原因不明ですが、成長に伴って改善することが多いとされています。

ストレスと胸痛の関係

ストレスは自律神経のバランスを崩し、心臓や呼吸、血管の働きに影響を与えます。強いストレスが続くと、交感神経が過剰に働き、心拍数や血圧が上昇した状態が続きます。これにより、心臓に負担がかかり、胸痛や動悸として感じることがあります。

また、ストレスによって呼吸が浅く速くなる「過換気」の状態になると、体内の二酸化炭素濃度が低下し、手足のしびれや胸の圧迫感、息苦しさを感じることがあります。

ストレス性の胸痛の特徴としては、安静時に症状が出やすいこと、痛みがズキズキ、チクチクといった感じであること、症状が長時間(時に1日以上)続くことがあること、などが挙げられます。強い不安感や不眠などの精神的な症状を伴うこともあります。

ただし、「ストレスが原因だから大丈夫」と自己判断することは危険です。胸痛がある場合は、まず心臓や肺などの器質的な異常がないことを確認するために、医療機関を受診することが大切です。


9. 危険な胸痛の見分け方

胸痛にはさまざまな原因がありますが、中には命に関わる重篤な疾患が隠れている場合があります。以下のような症状がある場合は、すぐに救急医療機関を受診してください。

まず、冷や汗を伴う胸痛は危険なサインです。胸痛とともに冷や汗をかく場合は、心筋梗塞などの重篤な疾患の可能性が高いです。

次に、今までに経験したことのないような激しい痛みにも注意が必要です。引き裂かれるような激痛や、失神を伴うような痛みは、大動脈解離などの緊急疾患を疑います。

呼吸困難を伴う胸痛も警戒すべき症状です。胸痛とともに息苦しさや呼吸が速くなる場合は、肺塞栓症や気胸などの可能性があります。

また、痛みが腕や顎、背中に広がる場合、圧迫感や締め付けられるような痛みの場合、吐き気や嘔吐を伴う場合なども、心臓疾患の可能性を考慮する必要があります。

特に、胸の真ん中あたりが締め付けられるような痛みで、手のひらで胸全体を押さえるような感じ(正確な場所を指で指し示せない痛み)は、心臓病の胸痛の特徴とされています。逆に、指で「ここ」と指し示せるようなピンポイントの痛みは、肋間神経痛や帯状疱疹の可能性が高いと言われています。


10. 右胸が痛いときは何科を受診すべきか

右胸に痛みがある場合、症状や状態によって適切な診療科が異なります。どこを受診すべきか迷った場合は、まず内科や総合内科を受診し、医師の診察によって専門科を紹介してもらうのが安心です。

胸の痛みがあり、原因がわからない場合は、循環器内科または呼吸器内科の受診がすすめられます。心臓と肺の病気は胸痛の頻度が高く、緊急性を有することもあるためです。

乳房に関連する痛みやしこりがある場合は、乳腺外科を受診しましょう。マンモグラフィや超音波検査で乳がんなどの可能性を確認することができます。

体を動かすと痛みが変化する場合や、痛みの場所がはっきりしている場合は、整形外科が適切かもしれません。肋間神経痛や筋骨格系の問題が疑われる場合は、整形外科で診察を受けることができます。

胸やけや呑酸を伴う場合は、消化器内科を受診しましょう。逆流性食道炎や胆石症などの消化器疾患が原因である可能性があります。

皮膚に発疹や水ぶくれがある場合は、皮膚科を受診してください。帯状疱疹の可能性があり、早期治療が重要です。

ストレスや不安が強く、検査で異常がない場合は、心療内科や精神科への相談も選択肢となります。


11. 検査と診断について

右胸の痛みの原因を探るためには、まず詳しい問診が行われます。どのような痛みか、どこが痛いか、どのくらい持続するか、どのような時に痛むか、他に症状があるかなどを確認します。

その後、身体診察を行い、必要に応じて各種検査が実施されます。基本的な検査としては、胸部レントゲン検査、心電図検査、血液検査があります。これらの検査で心臓や肺の異常、炎症の有無などを確認します。

必要に応じて、より詳しい精密検査が行われることもあります。胸腹部CT検査では、肺や心臓、胆のうなどの状態を詳しく確認できます。心臓超音波検査(心エコー)では、心臓の動きや弁の状態を観察できます。上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)では、食道や胃の状態を直接観察し、逆流性食道炎などの診断が可能です。

乳房に関連する症状がある場合は、マンモグラフィや乳房超音波検査が行われます。これらの検査で乳腺の状態を確認し、必要に応じて細胞診や組織検査が追加されることもあります。


12. 日常生活でできる予防と対策

右胸の痛みを予防し、症状を和らげるために、日常生活で心がけられることがあります。

まず、正しい姿勢を保つことが大切です。長時間のデスクワークやスマートフォンの使用で前かがみの姿勢が続くと、背中や胸部の筋肉に負担がかかり、肋間神経痛のリスクが高まります。定期的に姿勢を正し、ストレッチを取り入れましょう。

適度な運動も効果的です。ウォーキングやヨガなどの軽い運動は、血液の循環を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果があります。ただし、症状がある時に無理な運動は避けてください。

ストレス管理も重要です。ストレスは自律神経のバランスを崩し、胸痛の原因となることがあります。十分な睡眠、リラックスできる時間の確保、趣味の時間などを大切にしましょう。

食生活の改善も心がけましょう。脂肪分の多い食事は胆石のリスクを高め、暴飲暴食は逆流性食道炎の原因となります。バランスの良い食事を心がけ、食後すぐに横にならないようにしましょう。

体を冷やさないことも大切です。体が冷えると血流が悪くなり、筋肉が硬くなって神経を圧迫することがあります。薄着やクーラーの当たりすぎに注意し、入浴で体を温めましょう。

50歳以上の方は、帯状疱疹予防ワクチンの接種を検討してみてください。帯状疱疹の発症リスクを下げ、発症しても重症化を予防する効果が期待できます。


13. まとめ

女性の右胸の痛みには、乳腺症や月経周期に関連した痛み、肋間神経痛、逆流性食道炎、胆石症、帯状疱疹、ストレスによる心因性の痛みなど、実にさまざまな原因が考えられます。

右胸の痛みは心臓疾患との関連が比較的少ないとされていますが、症状だけで自己判断することは危険です。冷や汗を伴う激しい痛み、呼吸困難、今までに経験したことのないような痛みがある場合は、すぐに救急医療機関を受診してください。

症状が比較的軽い場合でも、痛みが繰り返される場合や、なかなか改善しない場合は、医療機関で適切な検査を受けることをおすすめします。原因を特定し、適切な治療を受けることで、多くの胸痛は改善が期待できます。

「この程度の症状で受診してもいいのか」と迷われる方もいらっしゃいますが、胸の違和感や痛みが気になる場合は、遠慮なく医療機関にご相談ください。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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