近年、美容業界で「レチノール」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。シワやシミ、毛穴の悩みにアプローチできる成分として注目を集め、2017年には厚生労働省から医薬部外品成分として「シワを改善する」効果が正式に認められています。SNSや美容雑誌でも取り上げられることが増え、レチノール配合のスキンケア製品を手に取る方も多いのではないでしょうか。
しかし、レチノールを使い始めると「肌が赤くなった」「皮がむけてきた」「ヒリヒリする」といった症状が現れることがあります。これは「A反応」と呼ばれる現象で、レチノールを使用する上で避けて通れない重要なポイントです。
A反応について正しく理解していないと、肌に良い変化が起きているにもかかわらず使用をやめてしまったり、逆に本来対処すべき症状を放置してしまったりすることがあります。本記事では、レチノールのA反応について、その仕組みから症状、対処法、予防法まで詳しく解説します。これからレチノールを使い始める方も、すでに使用中でA反応に悩んでいる方も、ぜひ参考にしてください。
目次
- レチノールとは何か
- ビタミンAの種類と特徴
- A反応(レチノイド反応)とは
- A反応が起こるメカニズム
- A反応の主な症状
- A反応の発症時期と継続期間
- A反応が出やすい人の特徴
- A反応が出ない人もいる理由
- A反応とアレルギー反応の違い
- A反応が出たときの正しい対処法
- A反応を予防・軽減する方法
- レチノールの正しい使い方
- レチノールと相性の良い成分
- レチノール使用中の注意点
- 医療機関への相談が必要なケース
- まとめ
1. レチノールとは何か
レチノールとは、ビタミンAの一種です。ビタミンAは脂溶性ビタミンの仲間で、体内では皮膚や目、粘膜の健康維持に深く関わっています。レバーやウナギなどの動物性食品に多く含まれており、健康維持のために欠かせない栄養素として知られています。
美容成分としてのレチノールは、肌のターンオーバー(新陳代謝)を促進し、コラーゲンの生成をサポートする働きがあります。この作用により、シワやシミ、毛穴の開き、ニキビなど、さまざまな肌悩みに効果を発揮することが期待されています。
2017年には、資生堂が約30年にわたる研究の成果として、純粋レチノールによる「シワを改善する」効能効果の承認を厚生労働省から取得しました。これにより、レチノールは日本で唯一、医薬部外品の有効成分としてシワ改善効果が認められた成分となっています。9週間の使用でシワグレード4レベルの深いシワを改善する有効性が確認されており、科学的根拠に基づいた美容成分として高い評価を受けています。
レチノールが注目される理由は、そのマルチな効果にあります。シワ改善だけでなく、肌のターンオーバーを促進することでシミやくすみにアプローチしたり、コラーゲンの産生を促してハリを与えたり、皮脂分泌を抑制してニキビを予防したりと、幅広い肌悩みに対応できる点が大きな魅力です。
2. ビタミンAの種類と特徴
ビタミンAには複数の種類があり、それぞれ効果の強さや肌への刺激が異なります。化粧品や医薬品に使用されるビタミンAについて理解しておくことは、自分に合ったレチノール製品を選ぶ上で非常に重要です。
まず、ビタミンAの活性型には「レチノール」「レチナール」「トレチノイン(レチノイン酸)」の3種類があります。これらは体内で形を変えながらさまざまな働きをしています。
レチノールは代謝によってレチナールに変わり、最終的にトレチノインとなります。レチナールはレチノールに戻ることもありますが、トレチノインに変わると元に戻ることはありません。
トレチノインは、レチノールの50倍から100倍もの生理活性の強さがあるとされています。その効果の強さから、化粧品や医薬部外品への配合は認められておらず、日本では医師の処方が必要な医療用医薬品として使用されています。シミやシワ、ニキビの治療に用いられますが、副作用のリスクも高いため、専門医の指導のもとで使用する必要があります。
一方、レチノールはトレチノインの前段階の物質であり、肌への作用は比較的マイルドです。化粧品や医薬部外品への配合が認められており、自宅でのセルフケアに取り入れやすいのが特徴です。
さらに、レチノールを安定化させた「レチノール誘導体」があります。代表的なものには、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール、プロピオン酸レチノールなどがあり、これらは「レチニルエステル」とも呼ばれています。レチノール誘導体は光や熱、空気に対して安定で分解されにくく、レチノールの欠点を補ってくれます。ただし、効果は純粋レチノールよりも穏やかです。
効果と刺激の強さを順に並べると、次のようになります。刺激が弱い順から、パルミチン酸レチノール、プロピオン酸レチノール、酢酸レチノール、レチノール(純粋レチノール)、レチナール、トレチノインとなります。初めてレチノールを使う方や敏感肌の方は、パルミチン酸レチノールなど刺激の弱いものから始めることをおすすめします。
3. A反応(レチノイド反応)とは
A反応とは、レチノールやトレチノインなどのビタミンA製品を肌に塗布した際に起こる一時的な肌の副反応のことです。「レチノイド反応」「レチノール反応」「ビタミンA反応」とも呼ばれ、海外では「レチノールバーン(retinol burn)」という表現も使われています。
A反応は、ビタミンAによって急激に新陳代謝が促されることで起こります。肌がビタミンAに慣れていない状態で使用を開始すると、ターンオーバーが活性化されることで、一時的にさまざまな症状が現れるのです。
この反応は決して悪いものではありません。むしろ、肌の新陳代謝であるターンオーバーのサイクルが整い始めているサインとも言えます。ターンオーバーが乱れると、ニキビや肌荒れ、毛穴トラブル、乾燥、くすみ、シミなど、さまざまな肌トラブルが起こりやすくなります。ビタミンAを肌に塗布してターンオーバーのサイクルが正常に機能することは、肌にとって好ましいことであり、その過程で起こるA反応は、むしろ肌にとって良い状態に向かっている証拠なのです。
ただし、A反応と思い込んでいても、実際には他の原因で肌荒れが生じている場合もあります。症状が強かったり長引いたりする場合は、自己判断せずに皮膚科を受診することが大切です。
4. A反応が起こるメカニズム
A反応が起こる要因の一つは、ビタミンAが不足した状態の肌に急速にビタミンAを補給したためです。
肌にレチノールを塗布すると、レチノール受容体を介して肌に吸収されます。しかし、もともとビタミンAが不足している肌は、受容体で受け取れるレチノールの量も相対的に少なくなっています。肌の中にビタミンAを受け取る受容体が不足していることで、細胞外にあふれたビタミンAが刺激となり、赤みや炎症が起こると考えられています。
つまり、ビタミンAが不足している肌に急激にレチノールを補給すると、過剰な刺激となって炎症を引き起こすのです。
逆に言えば、肌がビタミンAに慣れていないことが原因でA反応が出ている場合は、レチノールを使い続けることでA反応は徐々に治まっていきます。肌がビタミンAを受け取る受容体を増やし、レチノールを上手に吸収できるようになるからです。
また、レチノールには皮脂の分泌を抑制する作用がありますが、皮脂は肌の保湿にも重要な役割を果たしています。レチノールが皮脂を作る細胞の受容体に作用することで、肌が乾燥しやすくなることもA反応の一因と考えられています。
さらに、レチノールは表皮細胞の分化と増殖を促進します。これにより細胞同士の接着が弱まり、皮膚が薄く敏感になることで、赤みやヒリヒリ感、皮むけなどの症状が現れることがあります。
5. A反応の主な症状
A反応で見られる主な症状には、次のようなものがあります。
赤みは、A反応でもっとも一般的に見られる症状です。レチノールを塗布した部位が赤くなり、炎症を起こしたような状態になります。症状が重い場合には、火傷のように赤く腫れぼったくなることもあります。
乾燥も多くの方が経験する症状です。レチノールには皮脂の分泌を抑える作用があるため、肌の水分保持機能が一時的に低下し、カサつきや乾燥を感じやすくなります。
皮むけは、ターンオーバーが促進されることで古い角質が剥がれやすくなるために起こります。ポロポロと皮がむけたり、粉を吹いたような状態になったりすることがあります。
ヒリヒリ感やかゆみも、A反応の典型的な症状です。特にレチノールを塗布した直後にピリピリとした刺激を感じやすく、肌が敏感になっていることを示しています。かゆみについては、我慢できずに掻いてしまうと症状が悪化し、色素沈着や傷跡が残ってしまう可能性があるため、注意が必要です。
腫れが生じることもあります。これは免疫反応の一種で、虫刺されで腫れるのと同じような反応です。目元や口元など皮膚の薄い部分や、レチノールを厚く塗ってしまった部分に腫れが出やすい傾向があります。
ニキビの一時的な悪化も、A反応の症状として見られることがあります。ターンオーバーが促進されることで、毛穴の中に詰まっていた皮脂や老廃物が表面に押し出され、一時的にニキビが増えたように見えることがあります。これは肌の中にあった汚れが排出されている過程であり、使用を続けることで改善していくことがほとんどです。
6. A反応の発症時期と継続期間
A反応は、レチノール製品の使い始めや、レチノール濃度を上げたとき、使用量を増やしたときに起こりやすいのが特徴です。
発症時期としては、レチノールを使い始めて1日から5日後に現れやすいとされています。この初期の数日間は肌の変化を注視し、異変がないかを確認することが大切です。
継続期間には個人差がありますが、多くの場合1週間から2週間程度で症状は落ち着いていきます。肌がレチノールに慣れると、自然と症状は軽減していきます。
ただし、肌質やレチノールの濃度によっては、1カ月から2カ月ほど続く場合もあります。特にビタミンAが不足していた肌の場合は、肌を慣れさせるのに時間がかかることがあります。
重要なのは、A反応が続いている間も、症状が強すぎなければレチノールの使用を完全にやめないことです。使用を中断してしまうと、再開したときにまたA反応が出る恐れがあります。使用量や頻度を調整しながら継続することで、肌が徐々にビタミンAに慣れていきます。
ただし、1カ月以上症状が続く場合はA反応ではない可能性があります。他の原因で皮膚症状が出ている可能性も考えられるため、皮膚科を受診して相談することをおすすめします。
7. A反応が出やすい人の特徴
A反応が出やすいのは、次のような特徴を持つ方です。
もともと肌にビタミンAが少ない人は、A反応が出やすいとされています。紫外線を浴びる機会が多い方や、バランスの偏った食生活を送っている方は、肌のビタミンA量が不足しがちです。
敏感肌の方や乾燥肌の方も、A反応が出やすい傾向があります。肌のバリア機能が低下している状態では、レチノールの刺激を受けやすくなります。
アトピー性皮膚炎の方や、光線過敏症(日光アレルギー)の方も、レチノールに対して強く反応が出ることがあります。
初めてレチノールを使用する方は、肌がビタミンAに慣れていないため、A反応が出やすくなります。また、いきなり高濃度のレチノールを使用したり、使用量が多すぎたりする場合も、A反応が強く出る原因となります。
体調や肌のコンディションによっても、症状の出方は変わります。疲れているときやストレスが溜まっているとき、生理前などのホルモンバランスが乱れやすい時期は、A反応が出やすくなることがあります。
8. A反応が出ない人もいる理由
レチノールを使用しても、A反応がまったく出ない方もいます。これは肌質や状態によって反応が異なるためで、A反応が出ないからといってレチノールの効果がないわけではありません。
普段からビタミンAを含む食品を多く摂取している方や、以前からビタミンA配合の化粧品を使用していた方は、肌がビタミンAに慣れているためA反応が出にくい傾向があります。
また、肌のバリア機能が強い方や、角質層がしっかりしている方も、レチノールの刺激を受けにくいことがあります。
低濃度のレチノールから始めて徐々に濃度を上げていった方は、肌が段階的にビタミンAに慣れていくため、A反応を感じずに使用できることがあります。
A反応が出ない場合でも、レチノールはきちんと肌に作用しています。肌の変化を注意深く観察しながら、継続して使用することが大切です。
9. A反応とアレルギー反応の違い
A反応は一時的な反応であり、肌がレチノールに慣れていくことで症状は自然に治まっていきます。しかし、A反応だと思っていた症状が、実はアレルギー反応や接触皮膚炎(かぶれ)だった、というケースもあります。
A反応とアレルギー反応を見分けるポイントがいくつかあります。
A反応の場合、症状は使用を続けることで徐々に軽減していきます。また、レチノールの使用量や頻度を減らすことで症状がコントロールできることがほとんどです。
一方、アレルギー反応の場合、使用を続けても症状が改善せず、むしろ悪化していくことがあります。強いかゆみを伴ったり、水ぶくれやじゅくじゅくした湿疹ができたりする場合は、アレルギー反応の可能性があります。
また、レチノール以外の配合成分に反応している場合もあります。レチノール製品には、安定化のためにさまざまな成分が配合されていることがあり、それらの成分が肌に合わない可能性も考えられます。
次のような症状がある場合は、A反応ではなくアレルギー反応や炎症の可能性があるため、使用を中止して皮膚科を受診してください。水ぶくれができる、じゅくじゅくした湿疹が出る、激しい痛みを伴う、1カ月以上症状が続く、日常生活に支障が出るほどの不快感がある場合です。
10. A反応が出たときの正しい対処法
A反応が出た場合、適切に対処することで症状を軽減しながらレチノールの効果を引き出すことができます。
軽度の赤みや乾燥、皮むけの場合は、レチノールの使用を継続しても問題ありません。ただし、使用頻度を減らすことが効果的です。毎日使用していた場合は、2日から3日おきに使用するなど、肌の様子を見ながら調整しましょう。
使用量を減らすことも有効です。レチノールの使用量が多いと、肌の受容量を超えてしまい刺激となります。使用量を半分程度に減らして様子を見てください。
保湿を徹底することも重要です。A反応が出ているときは肌のバリア機能が一時的に低下しているため、保湿力の高いクリームをプラスしましょう。セラミドやヒアルロン酸が配合された製品がおすすめです。
グリチルリチン酸ジカリウムが配合された製品を使用するのも効果的です。グリチルリチン酸ジカリウムは、医薬部外品として皮膚の炎症抑制効果が認められている成分で、A反応による炎症を和らげる働きがあります。
耐えがたいほどの赤みや肌荒れ、ひどい皮むけがある場合は、一旦レチノールの使用を中止して、肌のバリア機能を回復させるケアに切り替えましょう。セラミドやワセリン(プロペト)が配合されたシンプルなスキンケアがおすすめです。症状が落ち着いてから、より慎重な形で再チャレンジしてください。
症状がなかなか治まらない場合は、非ステロイド系の抗炎症剤を併用することも選択肢の一つです。ただし、自己判断での使用は避け、皮膚科で相談することをおすすめします。
11. A反応を予防・軽減する方法
A反応を完全に防ぐことは難しいですが、いくつかの工夫で症状を軽減することができます。
低濃度から始めることが、A反応を予防するもっとも効果的な方法です。初めてレチノールを使う場合は、0.01パーセント程度の低濃度から始めましょう。肌が慣れてきたら、徐々に濃度を上げていくのがおすすめです。高濃度のレチノールは刺激が強く、肌トラブルを引き起こす可能性が高くなります。
使用頻度を少なくすることも効果的です。最初は週に1回から2回の使用から始め、肌の反応を見ながら徐々に頻度を増やしていきましょう。敏感肌の方は、週に2日(夜に1回)から開始して、1週目は月曜日と木曜日、2週目は月曜日、木曜日、土曜日といった具合に、徐々に日数を増やしていくことをおすすめします。
使用量を控えめにすることも大切です。指定の用量よりも少ない量から始め、パール粒大程度を顔全体に優しく塗布しましょう。多く塗れば効果が高まるわけではなく、むしろ刺激が強くなってしまいます。
保湿後にレチノールを使用することで、肌への刺激が低減することが報告されています。洗顔後すぐにレチノールを塗布するのではなく、化粧水や美容液で肌を整えた後に使用しましょう。
夜のスキンケアで使用するのが基本です。レチノールは紫外線に弱い性質があり、日中に使用すると効果が低下したり、肌への刺激が強くなったりする可能性があります。
レチノール使用中は、他の刺激の強いスキンケアを控えることも大切です。スクラブやピーリングなどの物理的な刺激の強い製品は避け、優しいスキンケアを心がけましょう。また、レーザー治療やケミカルピーリングなどの美容施術も一時的に控えたほうが良いでしょう。
パッチテストを事前に行うことも、A反応の予防に有効です。レチノール製品を使い始める前に、腕の内側など目立たない部分に少量塗布して、肌の反応を確認してから顔に使用することをおすすめします。
12. レチノールの正しい使い方
レチノールの効果を最大限に引き出すためには、正しい使い方を守ることが重要です。
使用するタイミングは、基本的に夜のスキンケアがおすすめです。レチノールは紫外線に弱いため、夜に使用することで成分の効果を守ることができます。また、肌のターンオーバーは夜間に活発になるため、夜に使用することでより効果的に作用します。
スキンケアの順番としては、洗顔後、化粧水で肌を整えた後にレチノールを使用します。レチノールは油溶性ビタミンのため、油分に溶かして配合されることが多く、洗顔直後の肌に塗ると後に使う化粧水などが浸透しにくくなる場合があります。化粧水や美容液の後、クリームの前に使用するのが一般的です。ただし、製品によって使用順序が異なる場合がありますので、説明書をよく確認してください。
使用量は、製品の説明に従いましょう。一般的にはパール粒大程度を顔全体に優しく塗布します。目元や口元など皮膚の薄い部分は、より強く反応が出やすいため注意が必要です。
お手入れの最後は、保湿クリームをたっぷり塗って肌を保護しましょう。レチノールを使用すると、ターンオーバー促進作用により一時的にバリア機能が下がり、肌が乾燥しやすい状態になります。保湿を徹底することで、A反応を軽減し、レチノールの効果を引き出すことができます。
レチノールは継続使用が大切です。効果を実感するまでに最低でも数週間はかかるのが一般的で、くすみやシワの改善を感じるには3カ月から半年程度の継続が必要な場合もあります。焦らず、肌の様子を見ながら続けていきましょう。
13. レチノールと相性の良い成分
レチノールは単体でも効果的ですが、相性の良い美容成分と併せて使うことで、さらに効果を高めることができます。
ナイアシンアミドは、レチノールと非常に相性の良い成分です。ナイアシンアミドはビタミンBの一種で、肌のバリア機能を高め、コラーゲンやエラスチンの産生を促進する働きがあります。レチノールと併用することで、肌をパワフルに引き締め、シワやたるみを改善する効果が期待できます。また、ナイアシンアミドにはレチノールによる刺激を緩和する作用もあります。
ヒアルロン酸も、レチノールとの相性が良い成分です。優れた保湿効果を持つヒアルロン酸が、レチノールの刺激を弱めるクッションのような役割を果たしてくれます。レチノールによる乾燥を防ぎながら、肌にたっぷりのうるおいを与えることができます。
セラミドは、肌のバリア機能をサポートする成分です。レチノール使用中は一時的にバリア機能が低下しやすいため、セラミド配合の化粧品を併用することで、肌を保護しながらレチノールの効果を引き出すことができます。
グリチルリチン酸ジカリウムは、抗炎症作用に優れた成分です。A反応による赤みや炎症を和らげる効果があり、レチノールとの併用でニキビの悪化を防いでくれます。
ビタミンCも、レチノールと組み合わせることで高い効果を発揮します。ビタミンCは抗酸化作用があり、シミやくすみにアプローチする成分です。朝にビタミンC、夜にレチノールというように使い分けることで、総合的な美肌ケアが可能になります。
14. レチノール使用中の注意点
レチノールを使用する際には、いくつかの注意点があります。
紫外線対策を徹底することは非常に重要です。レチノールを使用すると、肌のターンオーバーが促進されることで角質層が薄くなり、紫外線に対して敏感になります。日焼けを防ぐためにも、レチノール使用中は日焼け止めの塗布を忘れないようにしましょう。SPF30以上の日焼け止めを使用し、帽子や日傘などで紫外線対策を徹底することが大切です。
保管場所にも気をつけてください。レチノールは光や空気、熱に弱く、酸化しやすい性質があります。高温になる場所や日光が当たる場所は避け、冷暗所で保管しましょう。酸化したレチノールを使用すると、肌への刺激につながります。
妊娠中や授乳中の方は、レチノールの使用を控えることが推奨されています。高濃度のビタミンAは胎児への影響が懸念されるためです。使用を検討する場合は、必ず医師に相談してください。
過度な使用は避けましょう。より早く効果を出したいからといって、高濃度のレチノールを大量に塗ったり、使用頻度を急に増やしたりすると、A反応が強く出る原因となります。焦らず、肌の様子を見ながら少しずつ使用量や頻度を調整していくことが大切です。
洗顔のしすぎにも注意が必要です。洗顔料(界面活性剤)を使用しての洗顔は、肌のバリア機能を壊す原因となります。A反応が出ている間は、洗顔料での洗顔は1日1回から2回までとし、ぬるま湯洗顔などを併用しましょう。洗顔はなるべくこすらず優しく洗い、タオルの摩擦も肌への刺激につながるため、押し付けるようにして優しく水分を拭き取ってください。
15. 医療機関への相談が必要なケース
A反応は一時的なもので、多くの場合は自然に治まっていきます。しかし、次のような場合は、皮膚科などの医療機関を受診することをおすすめします。
症状が1カ月以上続く場合は、A反応ではなく別の原因で皮膚症状が出ている可能性があります。アレルギー反応や接触皮膚炎、その他の皮膚疾患の可能性も考えられるため、専門医の診断を受けることが大切です。
症状が改善する兆しがなく、むしろ悪化している場合も、医療機関への相談が必要です。A反応であれば、使用を続けることで徐々に症状は軽減していきますが、悪化している場合は他の原因が考えられます。
赤みや痛みが強く、日常生活に支障をきたすような場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。特に、水ぶくれができたり、じゅくじゅくした湿疹が出たり、激しい痛みを伴ったりする場合は、使用を中止して速やかに医師の診察を受けてください。
また、レチノールを使用したいけれどA反応が心配、という方も、使用を開始する前に皮膚科で相談することをおすすめします。肌の状態を診てもらい、自分に合ったレチノール製品や使用方法についてアドバイスを受けることで、より安全にレチノールを取り入れることができます。

16. まとめ
レチノールは、シワ改善効果が厚生労働省に認められた数少ない成分の一つであり、正しく使用することで美肌への大きな味方となります。
A反応は、レチノールを使い始めたときに起こりやすい一時的な肌の反応です。赤みや乾燥、皮むけなどの症状が現れることがありますが、これは肌のターンオーバーが促進され、ビタミンAに慣れていく過程で起こるものです。多くの場合、1週間から2週間程度で症状は落ち着いていきます。
A反応を軽減するためには、低濃度から始めること、使用頻度を少なくすること、保湿を徹底することが大切です。症状が出た場合は、使用量や頻度を調整しながら継続することで、肌が徐々にビタミンAに慣れていきます。
ただし、症状が強すぎる場合や長く続く場合は、A反応ではなく他の原因が考えられます。自己判断せずに皮膚科を受診し、適切な対処を受けることが重要です。
レチノールを正しく使いこなすことで、シワやシミ、毛穴の悩みにアプローチし、健やかで美しい肌を目指すことができます。焦らず、自分の肌と向き合いながら、レチノールを上手に取り入れていきましょう。
参考文献
- 有効成分純粋レチノールによるしわを改善する効能効果の承認を日本で初めて取得 – 資生堂
- 2017年1月20日 薬事・食品衛生審議会 化粧品・医薬部外品部会 議事録 – 厚生労働省
- レチノールの基本情報・配合目的・安全性 – 化粧品成分オンライン
- 実は肌に良い状態!レチノイン酸やレチノールによるA反応について解説 – 日比谷ヒフ科クリニック
- レチノールとトレチノインの違い・肌への効果 – 肌のクリニック
- レチノールとは?期待できる効果やポイント・注意点 – 北海道科学大学
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務