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腎盂腎炎の前触れとは?早期発見のための症状と対処法を徹底解説

はじめに

突然の高熱や腰の痛みに襲われたことはありませんか?それは「腎盂腎炎(じんうじんえん)」の可能性があります。腎盂腎炎は、細菌感染によって腎臓に炎症が起こる病気で、適切な治療を行わないと重症化するリスクがあります。

本記事では、腎盂腎炎の前触れとなる症状や、早期発見のポイント、適切な対処法について、医学的根拠に基づいて詳しく解説します。「もしかして腎盂腎炎かも?」と不安を感じている方や、予防法を知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。

腎盂腎炎とは?基礎知識を押さえよう

腎盂腎炎の定義

腎盂腎炎は、腎臓の腎盂(じんう)と呼ばれる部分や腎実質に細菌感染が起こり、炎症を引き起こす疾患です。尿路感染症の一種であり、膀胱炎などの下部尿路感染症が上行性に進展することで発症するケースが多く見られます。

腎臓は体内の老廃物をろ過し、尿として排出する重要な臓器です。この腎臓に炎症が起こると、全身に影響を及ぼす可能性があるため、早期の診断と治療が非常に重要になります。

腎盂腎炎の種類

腎盂腎炎は大きく分けて2つのタイプがあります。

急性腎盂腎炎

急激に発症し、高熱や強い腰痛などの激しい症状が現れます。適切な抗菌薬治療により、多くの場合は完治が期待できますが、治療が遅れると敗血症などの重篤な合併症を引き起こすリスクがあります。

慢性腎盂腎炎

長期間にわたって腎臓の炎症が続く状態です。急性腎盂腎炎を繰り返すことや、尿路の構造的な異常、結石などが原因となって発症します。症状が軽微であることも多いため、気づかないうちに腎機能が低下していることがあります。

発症のメカニズム

腎盂腎炎の多くは、大腸菌をはじめとする腸内細菌が尿道から侵入し、膀胱を経由して尿管を逆流し、腎臓に到達することで発症します。この経路を「上行性感染」と呼びます。

正常な状態では、尿の流れによって細菌は洗い流され、また膀胱や尿道の粘膜には細菌の侵入を防ぐ防御機能が備わっています。しかし、何らかの理由でこの防御機能が低下したり、尿の流れが滞ったりすると、細菌が腎臓まで到達しやすくなります。

腎盂腎炎の前触れとなる症状

膀胱炎症状が最初のサイン

腎盂腎炎の前触れとして、最も重要なのが膀胱炎の症状です。多くの腎盂腎炎は、膀胱炎から始まって上行性に進展するため、以下のような膀胱炎症状が「前触れ」となります。

頻尿・残尿感

トイレに行く回数が明らかに増え、排尿後もすっきりしない感覚が続きます。通常、1日に8回以上トイレに行く場合は頻尿と考えられます。夜間も何度もトイレに起きるようになることがあります。

排尿時の痛みや違和感

排尿する際に尿道や下腹部に痛みや灼熱感を感じます。特に排尿の終わりかけに痛みが強くなることが特徴的です。これは膀胱の炎症による刺激症状です。

尿の濁りや異臭

健康な尿は透明から淡黄色ですが、感染が起こると白っぽく濁ったり、時には血尿が混じったりします。また、通常とは異なる強い臭いを感じることもあります。

下腹部の不快感や痛み

膀胱がある下腹部に重苦しさや鈍い痛みを感じることがあります。特に排尿時や尿を我慢しているときに痛みが増強します。

腎盂腎炎特有の前触れ症状

膀胱炎症状に加えて、以下のような症状が現れてきた場合は、腎盂腎炎への進展を疑う必要があります。

微熱から始まる発熱

腎盂腎炎の初期段階では、37℃台の微熱から始まることがあります。「なんとなく体がだるい」「少し熱っぽい」という程度の症状でも、膀胱炎症状がある場合は注意が必要です。この段階で適切に対処すれば、重症化を防げる可能性が高まります。

腰や背中の違和感

腎臓の位置する腰の上部から背中にかけて、重苦しさや鈍痛を感じ始めます。最初は「疲れかな?」と思う程度の軽い違和感であることも多いですが、徐々に痛みが増していくことが特徴です。

全身のだるさ・倦怠感

普段よりも疲れやすく感じたり、体が重く感じたりします。「風邪のひき始めかな?」と感じる程度のこともありますが、尿の症状と合わせて考えることが重要です。

食欲不振・吐き気

食欲が落ちたり、軽い吐き気を感じたりすることがあります。これは感染による全身性の炎症反応の一部です。

見逃してはいけない警告サイン

以下の症状が現れた場合は、腎盂腎炎がすでに進行している可能性が高く、早急な医療機関の受診が必要です。

38℃以上の高熱

急激に体温が上昇し、38℃を超える高熱が出現します。多くの場合、悪寒を伴い、体がガタガタと震えることもあります。この状態は急性腎盂腎炎の典型的な症状です。

激しい腰痛・背部痛

腎臓の位置(背中の腰より少し上、肋骨の下あたり)に、激しい痛みが現れます。片側のみに痛みが出ることもあれば、両側に出ることもあります。体を動かすと痛みが増強することが特徴です。

叩打痛(こうだつう)

背中の腎臓がある部分を軽く叩くと痛みが響く状態を「叩打痛陽性」といい、腎盂腎炎の重要な診断指標となります。

悪心・嘔吐

強い吐き気や実際に嘔吐することがあります。これは感染が全身に影響を及ぼしている証拠です。

尿量の減少

尿の量が明らかに少なくなったり、色が非常に濃くなったりします。これは腎機能が低下している可能性を示唆します。

腎盂腎炎の前触れを見逃しやすい状況

高齢者の場合

高齢者では典型的な症状が現れにくく、前触れを見逃しやすいという問題があります。

非特異的症状が中心

高熱が出ない、痛みを訴えないなど、典型的な症状が揃わないことがあります。代わりに、「なんとなく元気がない」「食欲がない」「ぼんやりしている」といった非特異的な症状のみが現れることがあります。

認知機能の低下

一時的に意識がぼんやりしたり、普段と違う行動をとったりすることがあります。これを「せん妄」と呼びますが、腎盂腎炎による全身性の炎症反応が原因となっていることがあります。

妊娠中の女性

妊娠中は解剖学的・生理学的変化により腎盂腎炎のリスクが高まります。

ホルモンの影響

妊娠中に増加するプロゲステロンというホルモンの影響で、尿管が拡張し、尿の流れが滞りやすくなります。これにより細菌が増殖しやすい環境が作られます。

症状の見極めの難しさ

妊娠中は頻尿や腰痛などが生理的に起こるため、腎盂腎炎の前触れと区別しにくいことがあります。排尿時の痛みや発熱がある場合は、必ず医療機関を受診することが重要です。

糖尿病患者

糖尿病の方は感染症にかかりやすく、また症状が重症化しやすい傾向があります。

神経障害の影響

糖尿病による神経障害があると、痛みを感じにくくなることがあり、前触れとなる症状に気づきにくくなります。

膀胱機能の低下

糖尿病による自律神経障害で膀胱の機能が低下し、尿が残りやすくなることで感染のリスクが高まります。

腎盂腎炎の原因とリスク因子

主な原因菌

大腸菌

腎盂腎炎の原因の約80〜90%を占めるのが大腸菌(Escherichia coli)です。大腸菌は通常、腸内に存在する細菌ですが、尿道から侵入することで尿路感染症を引き起こします。

その他の原因菌

プロテウス菌、クレブシエラ菌、エンテロコッカス、ブドウ球菌なども原因となることがあります。特に尿路結石がある場合はプロテウス菌、カテーテルを使用している場合は緑膿菌などが関与することもあります。

発症リスクを高める要因

性別による違い

女性は男性に比べて腎盂腎炎になりやすいという特徴があります。これは解剖学的な理由によるもので、女性の尿道は男性よりも短く(約4cm対20cm)、また尿道口が肛門に近いため、腸内細菌が尿道に侵入しやすい構造になっています。

年齢要因

若年女性では性交渉が、高齢者では前立腺肥大や膀胱機能の低下が、リスク要因となります。また、閉経後の女性では女性ホルモンの低下により膣や尿道の自浄作用が低下し、感染リスクが高まります。

尿路の構造的異常

先天性の尿路奇形、膀胱尿管逆流症(尿が膀胱から腎臓へ逆流する状態)などがあると、尿の流れが滞り、細菌が腎臓に到達しやすくなります。

尿路結石

結石があると尿の流れが妨げられ、細菌が増殖しやすい環境が作られます。また、結石自体が細菌の温床となることもあります。

免疫力の低下

糖尿病、がん治療中、免疫抑制剤の使用、HIV感染など、免疫力が低下している状態では感染症にかかりやすくなります。

膀胱機能障害

神経因性膀胱(神経の障害により膀胱が正常に働かない状態)や、排尿障害があると、残尿が多くなり感染のリスクが高まります。

カテーテル使用

尿道カテーテルや膀胱カテーテルを使用していると、カテーテルを伝って細菌が侵入しやすくなります。

生活習慣要因

水分摂取不足、トイレを我慢する習慣、不適切な排尿後の拭き方(女性の場合、後ろから前に拭くと肛門の細菌が尿道口に付着しやすい)なども、感染リスクを高めます。

腎盂腎炎の診断方法

問診と身体診察

症状の確認

医師はまず、いつから、どのような症状があるかを詳しく聞きます。発熱の有無、腰痛の程度や部位、排尿時の症状などが重要な情報となります。

既往歴の確認

過去に尿路感染症にかかったことがあるか、糖尿病などの基礎疾患があるか、妊娠の可能性があるかなども確認します。

身体診察

体温測定、腹部の触診、腎臓の位置の叩打痛の確認などを行います。叩打痛が陽性(痛みを感じる)の場合は、腎盂腎炎の可能性が高いと判断されます。

尿検査

腎盂腎炎の診断において最も基本的で重要な検査です。

尿一般検査(尿定性検査)

試験紙を使って、尿中の白血球、細菌、血液、タンパク質などの有無を調べます。腎盂腎炎では、白血球(膿尿)と細菌が陽性となることが典型的です。

尿沈渣検査

顕微鏡で尿を観察し、白血球、赤血球、細菌、円柱(腎臓の尿細管で作られる物質)などの有無を確認します。白血球円柱が見つかれば、腎実質の感染を示唆します。

尿培養検査

尿中の細菌を培養して、原因菌を特定し、どの抗菌薬が効果的かを調べます(薬剤感受性試験)。結果が出るまで数日かかりますが、適切な抗菌薬を選択するために重要な検査です。

血液検査

炎症マーカー

白血球数、CRP(C反応性タンパク)、赤血球沈降速度(血沈)などを測定します。これらが高値を示す場合は、体内で炎症が起こっていることを示します。

腎機能検査

血清クレアチニン、尿素窒素(BUN)などを測定し、腎臓の機能が正常に保たれているかを確認します。腎盂腎炎が重症化すると腎機能が低下することがあります。

血液培養検査

高熱がある場合や、重症感染が疑われる場合には、血液を採取して細菌の有無を調べます。血液中に細菌が検出される場合は「菌血症」または「敗血症」という状態で、より集中的な治療が必要となります。

画像検査

超音波検査(エコー)

腎臓の大きさや形態、水腎症(尿の流れが妨げられて腎臓が腫れる状態)の有無、結石などを調べます。痛みもなく、放射線被曝もないため、妊婦にも安全に実施できます。

CT検査

より詳細に腎臓や尿路の状態を評価できます。膿瘍(膿がたまった状態)の形成や、尿路の閉塞などを確認することができます。重症例や、治療反応が悪い場合に実施されます。

腎盂腎炎の治療法

抗菌薬治療

腎盂腎炎の治療の基本は抗菌薬の投与です。

初期治療

尿培養の結果が出る前に、経験的に広域スペクトラムの抗菌薬(多くの細菌に効果がある抗菌薬)が投与されます。日本では、セフェム系抗菌薬やフルオロキノロン系抗菌薬がよく使用されます。

抗菌薬の選択

尿培養の結果と薬剤感受性試験の結果が出たら、より効果的な抗菌薬に変更されることもあります。近年、薬剤耐性菌が増加しているため、適切な抗菌薬の選択が重要です。

治療期間

通常、10〜14日間の抗菌薬治療が推奨されています。症状が改善しても、処方された抗菌薬は必ず最後まで飲み切ることが重要です。途中で中断すると、再発したり、耐性菌が出現したりするリスクがあります。

入院治療が必要な場合

以下のような状況では、入院して点滴による治療が必要となることがあります。

  • 高熱が続き、全身状態が悪い場合
  • 経口摂取ができず、脱水症状がある場合
  • 経口抗菌薬では効果が不十分な場合
  • 敗血症の疑いがある場合
  • 妊娠中の場合
  • 高齢者や免疫不全がある場合
  • 尿路閉塞や膿瘍形成などの合併症がある場合

入院期間は、一般的に症状が改善し、解熱してから2〜3日程度ですが、重症度により異なります。

対症療法

解熱鎮痛薬

発熱や痛みに対して、アセトアミノフェンやNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が使用されます。ただし、腎機能が低下している場合には薬剤の選択に注意が必要です。

水分補給

脱水を防ぎ、尿量を確保するために、十分な水分補給が重要です。点滴や経口補水液が使用されることもあります。

外科的治療

尿路結石や膿瘍形成、尿路の構造的異常などがある場合には、外科的な治療が必要となることがあります。

ドレナージ術

膿瘍がある場合、カテーテルを挿入して膿を排出する処置が行われます。

結石除去術

結石が原因となっている場合、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や内視鏡的手術により結石を除去します。

腎盂腎炎の合併症とリスク

急性期の合併症

敗血症(全身性炎症反応症候群)

腎盂腎炎の細菌が血流に入り込み、全身に広がると敗血症となります。敗血症は生命に関わる重篤な状態で、集中治療が必要です。血圧低下、意識障害、多臓器不全などを引き起こす可能性があります。

腎膿瘍

腎臓の中に膿がたまる状態です。通常の抗菌薬治療だけでは改善しにくく、ドレナージ術が必要となることがあります。

腎周囲膿瘍

腎臓の周囲に膿がたまる状態です。腎膿瘍よりもさらに重症で、外科的治療が必要となります。

急性腎障害

重症の腎盂腎炎では、腎臓の機能が急激に低下することがあります。適切な治療により回復することが多いですが、場合によっては一時的な透析治療が必要となることもあります。

慢性期・長期的な影響

慢性腎盂腎炎

急性腎盂腎炎を繰り返すことで、慢性的な腎臓の炎症が続く状態となります。腎機能が徐々に低下し、将来的に慢性腎臓病(CKD)へと進行するリスクがあります。

腎瘢痕

炎症により腎臓に傷跡(瘢痕)が残ることがあります。特に小児期に繰り返し腎盂腎炎を発症した場合、腎瘢痕が形成されやすく、将来的な腎機能低下のリスクとなります。

高血圧

腎臓の障害により、血圧をコントロールする機能が低下し、高血圧を発症することがあります。

妊娠への影響

妊娠中の腎盂腎炎は、早産、低出生体重児、母体の敗血症などのリスクを高めます。そのため、妊娠中の無症候性細菌尿(症状はないが尿に細菌がいる状態)も積極的に治療することが推奨されています。

腎盂腎炎の予防法

日常生活での予防策

十分な水分摂取

1日に1.5〜2リットル程度の水分を摂取することで、尿量が増え、細菌を洗い流す効果があります。ただし、心臓や腎臓に疾患がある方は、医師に相談してください。

規則正しい排尿習慣

尿意を感じたら我慢せず、早めにトイレに行くことが大切です。長時間尿を我慢すると、膀胱内で細菌が増殖しやすくなります。

適切な排尿後の清潔ケア

女性の場合、排尿後は前から後ろへと拭くことで、肛門の細菌が尿道に付着するのを防ぎます。

性交渉後の排尿

性交渉後に排尿することで、尿道に侵入した細菌を洗い流すことができます。

下半身を冷やさない

体が冷えると免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。特に下半身を冷やさないよう注意しましょう。

通気性の良い下着の着用

湿気がこもると細菌が増殖しやすくなるため、通気性の良い綿の下着がおすすめです。

食生活での予防

クランベリージュース

クランベリーに含まれるプロアントシアニジンという成分が、大腸菌が膀胱壁に付着するのを防ぐ効果があるとされています。ただし、効果には個人差があり、また糖分の多い製品には注意が必要です。

ビタミンCの摂取

ビタミンCには尿を酸性化する作用があり、細菌の増殖を抑える効果が期待されます。柑橘類、キウイ、ブロッコリーなどに多く含まれています。

発酵食品

ヨーグルトや納豆などの発酵食品は、腸内環境を整え、免疫力を高める効果があります。

特に注意が必要な人の予防

糖尿病の方

血糖値を適切にコントロールすることが、感染症予防の基本です。医師の指示に従って治療を続けることが重要です。

妊婦の方

妊婦健診での尿検査を必ず受け、無症候性細菌尿が見つかった場合は治療を受けることが大切です。

高齢者

水分摂取を意識的に行い、排尿機能を維持するための運動や、必要に応じて泌尿器科での定期的なチェックを受けることが推奨されます。

再発を繰り返す方

尿路の構造的な問題がないか、専門医での精密検査を受けることをおすすめします。場合によっては、予防的な少量抗菌薬の長期投与が検討されることもあります。

よくある質問(Q&A)

Q1. 膀胱炎と腎盂腎炎の違いは何ですか?

膀胱炎は膀胱の炎症であり、主に排尿時の痛みや頻尿などの症状が現れますが、通常は発熱を伴いません。一方、腎盂腎炎は腎臓の炎症であり、38℃以上の高熱や腰痛を伴い、全身状態に影響を及ぼします。膀胱炎が上行性に進展すると腎盂腎炎となるため、膀胱炎の段階で適切に治療することが重要です。

Q2. 腎盂腎炎は自然に治りますか?

腎盂腎炎は自然治癒することはほとんどなく、適切な抗菌薬治療が必要です。治療せずに放置すると、敗血症などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。症状を感じたら早めに医療機関を受診してください。

Q3. 抗菌薬を飲んでいますが、いつ頃良くなりますか?

通常、抗菌薬の投与開始後、48〜72時間以内に解熱し、症状が改善し始めます。もし3日経っても発熱が続く場合は、薬剤耐性菌の可能性や、膿瘍形成などの合併症が考えられるため、再度医療機関を受診する必要があります。

Q4. 腎盂腎炎は繰り返しやすいですか?

一部の方は腎盂腎炎を繰り返すことがあります。再発の原因としては、尿路の構造的な問題、膀胱尿管逆流、結石、不完全な治療などが考えられます。繰り返す場合は、泌尿器科での精密検査を受けることが推奨されます。

Q5. 妊娠中に腎盂腎炎になったらどうなりますか?

妊娠中の腎盂腎炎は、母体と胎児の両方にリスクがあるため、通常は入院して点滴による治療が行われます。早産や低出生体重児のリスクが高まるため、慎重な管理が必要です。妊娠中の定期的な尿検査により、早期発見が可能です。

Q6. 腎盂腎炎の後、運動や仕事はいつから再開できますか?

症状が完全に改善し、医師の許可が出てから徐々に日常生活に戻していくことが推奨されます。一般的には、解熱後1週間程度は無理をせず、体調を見ながら活動を増やしていきます。激しい運動や重労働は、完全に回復してから再開するようにしましょう。

Q7. 市販薬で対処できますか?

腎盂腎炎は処方される抗菌薬による治療が必要な疾患です。市販の解熱鎮痛薬で一時的に症状が和らぐことはありますが、根本的な治療にはなりません。自己判断で市販薬のみで対処せず、必ず医療機関を受診してください。

Q8. 再発予防のために何か薬を飲み続ける必要がありますか?

一般的な腎盂腎炎では、治療後に予防的な薬を飲み続ける必要はありません。ただし、年に3回以上繰り返す場合や、特定の基礎疾患がある場合には、少量の抗菌薬を長期間服用する「予防的抗菌薬療法」が検討されることがあります。

まとめ

腎盂腎炎は適切に対処すれば治癒可能な疾患ですが、重症化すると生命に関わる合併症を引き起こす可能性があります。特に以下のポイントを覚えておいてください。

腎盂腎炎の前触れチェックリスト

  • □ 排尿時の痛みや違和感がある
  • □ トイレに行く回数が増えた
  • □ 尿が濁っている、または異臭がする
  • □ 下腹部に痛みや不快感がある
  • □ 微熱があり、体がだるい
  • □ 腰や背中に違和感がある
  • □ 食欲がない、吐き気がする
  • □ 38℃以上の発熱がある
  • □ 腰に激しい痛みがある

これらの症状が複数当てはまる場合、特に発熱と腰痛がある場合は、腎盂腎炎の可能性が高いため、速やかに医療機関を受診してください。

早期発見・早期治療の重要性

腎盂腎炎の前触れとなる膀胱炎症状の段階で気づき、適切に対処することが最も重要です。「たかが膀胱炎」と軽視せず、早めに医療機関を受診することで、腎盂腎炎への進展を防ぐことができます。

また、日常生活での予防策を実践することで、感染のリスクを減らすことができます。十分な水分摂取、規則正しい排尿習慣、適切な清潔ケアを心がけましょう。

受診のタイミング

以下の症状がある場合は、迷わず医療機関を受診してください。

  • 38℃以上の発熱
  • 激しい腰痛や背部痛
  • 排尿時の強い痛み
  • 血尿
  • 強い吐き気や嘔吐
  • 尿量の著しい減少

特に、高齢者、妊婦、糖尿病などの基礎疾患がある方は、早めの受診を心がけてください。

腎盂腎炎は適切な治療により完治が期待できる疾患です。気になる症状がある場合は、自己判断せず、専門医の診察を受けることをおすすめします。

参考文献

本記事は、以下の信頼できる医学的情報源を参考に作成しました。

  1. 日本泌尿器科学会「腎盂腎炎診療ガイドライン」 https://www.urol.or.jp/
  2. 日本感染症学会「尿路感染症診療ガイドライン」 http://www.kansensho.or.jp/
  3. 厚生労働省「感染症情報」 https://www.mhlw.go.jp/
  4. 日本腎臓学会「腎疾患の診療指針」 https://jsn.or.jp/
  5. 日本化学療法学会「抗菌薬使用のガイドライン」 http://www.chemotherapy.or.jp/
  6. 国立感染症研究所「感染症疫学センター」 https://www.niid.go.jp/

※本記事は医学的情報を提供するものであり、個別の診断や治療に代わるものではありません。症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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