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「幸せホルモン」オキシトシンの出し方完全ガイド:科学的根拠に基づく分泌促進法

はじめに

「最近、なんだか心が満たされない」「ストレスが溜まっている」と感じることはありませんか?そんなとき、私たちの心と体を癒してくれる物質があります。それが「オキシトシン」です。

オキシトシンは「幸せホルモン」「愛情ホルモン」として近年注目を集めており、ストレス社会に生きる現代人にとって、まさに心身の健康を支える重要な存在といえます。本記事では、オキシトシンとは何か、どのような効果があるのか、そして日常生活でどのように分泌を促すことができるのかについて、科学的根拠に基づいて詳しく解説していきます。

オキシトシンとは何か

オキシトシンの基本情報

オキシトシンは、脳の視床下部という部分で生成され、下垂体後葉から分泌されるホルモンです。9個のアミノ酸からなるペプチドホルモンで、その化学構造は比較的シンプルながら、私たちの心身に多大な影響を与えています。

1906年にイギリスの脳科学者ヘンリー・ハレット・デールによって発見されたオキシトシンは、当初は出産時に子宮を収縮させる作用や母乳の分泌を促す作用が主に知られていました。そのため、その名前もギリシャ語で「早い(okys)出産(tokos)」を意味する言葉から名付けられました。

しかし、近年の研究により、オキシトシンは出産や授乳といった女性特有の機能だけでなく、年齢や性別に関わらず全ての人に分泌され、私たちの社会的行動、感情、記憶など、広範な脳の機能に関わっていることが明らかになってきました。

オキシトシンの分泌メカニズム

山口内分泌疾患研究振興財団の研究によると、オキシトシンは視床下部の室傍核と視索上核の神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉から分泌されます。このホルモンは末梢に放出される場合と、神経伝達物質として脳内で作用する場合の2つのパターンがあります。

末梢に放出されるオキシトシンは、血液中に放出されて全身の臓器に作用します。一方、脳内で分泌されたオキシトシンは、神経伝達物質として脳の様々な部位に働きかけ、私たちの感情や行動に影響を与えているのです。

オキシトシン受容体の役割

オキシトシンの効果を発揮するためには、オキシトシン受容体が重要な役割を果たします。Wikipediaによると、オキシトシン受容体はGタンパク質共役受容体であり、中枢神経、子宮、乳腺のほか、腎臓、心臓、胸腺、膵臓、脂肪組織でも発現が確認されています。

さらに、金沢大学の研究では、血液中のオキシトシンが脳内に移行する際に、RAGE(AGE特異的受容体)という受容体が重要な役割を担っていることが明らかにされました。この発見により、オキシトシンがどのように血液脳関門を通過して脳内で作用するのか、そのメカニズムの一端が解明されつつあります。

オキシトシンがもたらす驚きの効果

精神面への効果

幸福感の向上

オキシトシンの最も代表的な効果は、幸福感をもたらすことです。親しい相手と触れ合ったり、かわいい動物を見たりすると心が癒されるのは、オキシトシンの働きによるものです。

生理学者の研究によると、オキシトシンが増えることで「セロトニン神経」が刺激され、神経伝達物質のひとつである「セロトニン」が分泌されます。セロトニンは精神的な安らぎをつかさどっているため、セロトニンの分泌量が増えると、深いリラックス感や幸福感を得ることができます。

ストレス軽減効果

現代社会において大きな問題となっているストレス。オキシトシンには、このストレスを軽減する優れた効果があります。

ストレスを感じると、私たちの体は「コルチゾール」というストレスホルモンを分泌します。このストレスホルモンが過剰に分泌されると、心拍数の増加、血圧の上昇、免疫機能の低下などが起こります。

医学研究では、オキシトシンには、このストレス反応を適度に抑制する働きがあることが示されています。実験では、オキシトシンを注入したマウスには目立ったストレス反応がなかった一方、オキシトシンの分泌をブロックしたマウスには暴れ回ったり下痢をしたりといったストレス過多の症状が見られました。

不安の緩和

オキシトシンは、不安や心配などを緩和させてくれる働きがあります。オキシトシンが分泌されると副交感神経が優位に働くようになり、心身ともにリラックスするため、不安感が和らぐのです。

心臓にはオキシトシンの受容体が存在し、オキシトシンが心臓の働きに影響を与えることが分かっています。一般的に、オキシトシンは血管を広げて血圧を下げる作用があるため、心拍数が低下することでストレスから心臓を守る働きがあると考えられています。

信頼感と社会性の向上

オキシトシンを鼻からの吸引によって投与する実験では、金銭取引において相手との信頼関係を強める影響があることが示されました。日本経済新聞の記事によると、良好な人間関係にある人同士が一緒に食事をする際、体内でオキシトシンの量が増える傾向があり、信頼感を育んでいるという記憶を強める効果があるそうです。

ただし、順天堂大学の研究では、オキシトシンの分泌には注意も必要であることが指摘されています。オキシトシンは仲間意識を高める一方で、グループに属していない外来者に対して敵対心や攻撃性を生み出すこともあるという研究結果があります。

記憶力の向上

オキシトシンには、記憶力を向上させる効果もあることが研究で明らかになっています。特に、感情を伴う記憶、つまり人との絆や信頼関係に関する記憶を強化する働きがあると考えられています。

身体面への効果

鎮痛作用

オキシトシンには、痛みを軽減する効果があることが研究で示されています。動物実験では、交尾行動の後に血漿オキシトシン量が増加し、また痛みの閾値が上昇する、つまり痛みを感じにくくなることが知られていました。

研究者らは、この効果には脳内のオキシトシンが関係していると予測し、実験を行いました。その結果、オキシトシン受容体に作用してオキシトシンの効果を発現できなくする薬剤を投与すると、鎮痛効果が現れなくなることが確認されました。

近年の研究では、オキシトシンにも鎮痛・抗炎症作用があることが報告されており、慢性的な痛みに悩む患者への新たな治療アプローチとして期待されています。

食欲抑制と代謝促進

オキシトシンは最近「夢の肥満薬」としての研究も進んでおり、食欲抑制や脂肪分解などの効用が報告されています。消化器系への影響として、食欲を抑える効果や、消化管の運動を調節する可能性が示唆されており、満腹感を感じやすくなるなど、食事行動にも影響を与えると考えられています。

心血管系への好影響

オキシトシンは血管を広げて血圧を下げる作用があり、心臓の健康を守る働きがあります。心臓にはオキシトシンの受容体が存在し、オキシトシンが心臓の働きに影響を与えることが分かっています。ストレス状態では心拍数が上昇しますが、オキシトシンによって心拍数が低下することで、心臓への負担が軽減されるのです。

皮膚の健康とアンチエイジング

最近の研究では、オキシトシン濃度の高い人ほど角質水分量が多く、皮膚のバリア機能が高いことや、オキシトシンが毛の成長を促すなど、若々しい体づくりにも役立つことが分かってきました。傷の治癒を促進する可能性も報告されており、美容面でも注目されています。

免疫機能の強化

オキシトシンには免疫機能を強化する効果があることも研究で示されています。ストレスが軽減されることで免疫システムが正常に機能しやすくなり、感染症などに対する抵抗力が高まると考えられています。

医療応用への期待

自閉症治療への可能性

2010年、金沢大学「子どものこころ発達研究センター」が知的障害のある自閉症の人々にオキシトシンを投与したところ、自閉症患者の症状が改善したと発表しました。2014年には東京大、金沢大、福井大、名古屋大の4大学で大規模な臨床試験が行われました。

発作的に大暴れする男子生徒は投与後、自制できるようになり、かんしゃくを起こしやすかった女子生徒の場合、情緒が安定し自傷行為が減ったという事例が報告されています。金沢大の研究者は「オキシトシンはさび付いた歯車を回るようにする潤滑油のようだ」と表現しています。

ただし、日本をはじめ世界のすべての国でオキシトシンを自閉症の治療に使用することは薬事法で認められていません。現在も継続的な研究が進められており、長期利用の安全性や適切な投与量などの課題について検証が行われています。

男性性機能障害への応用

広島大学・岡山大学の共同研究では、オキシトシンの経鼻投与が雄ラットの性的モチベーションと精子機能を同時に改善する革新的な二重作用メカニズムを世界で初めて明らかにしました。

研究では、愛情ホルモンとして知られているオキシトシンを鼻から投与することで、脳の視床下部ニューロンを活性化し性的モチベーションを増強すると同時に、精巣上体機能や副性器活性を向上させ、精子運動率・前進運動率・精子数のすべてを有意に改善することが実証されました。

この研究成果は、従来治療では困難とされる重度の性欲低下と性機能障害の同時改善への新たな治療戦略の可能性を示しています。

オキシトシンの出し方:科学的根拠に基づく10の方法

それでは、日常生活でオキシトシンの分泌を促すための具体的な方法を見ていきましょう。ここでは、科学的研究に基づいた効果的な方法をご紹介します。

1. スキンシップとハグ

オキシトシンの分泌を促す最も効果的な方法は、親しい人とのスキンシップです。家族、恋人、親しい友人とのハグや手をつなぐといった身体的接触は、オキシトシンの分泌を強力に促します。

研究によると、特に安心できる相手との触れ合いが重要であり、信頼関係のある人とのスキンシップほど、オキシトシンの分泌量が多くなることが分かっています。

授乳時のオキシトシンは、単に乳腺を収縮させて乳を出しやすくするだけでなく、母と子の脳内で相互のつながりを記憶にとどめる役割を持つことが確かめられています。これは、スキンシップが単なる身体的接触以上の意味を持つことを示しています。

2. ペットとの触れ合い

人間だけでなく、ペットとの触れ合いもオキシトシンの分泌を促します。特に犬は、太古から人と暮らしてきたため、オキシトシンの分泌量が比較的多く、人との絆を深めやすい動物だといわれています。

猫や犬などの愛らしい動物の動画を見るだけでも、オキシトシンの増加が期待できるという研究結果もあります。ペットを飼っていない方でも、動物の動画を見たり、動物カフェを訪れたりすることで、オキシトシンの分泌を促すことができます。

3. セルフタッチとマッサージ

他者とのスキンシップが難しい場合でも、自分で自分の体に触れる「セルフタッチ」でもオキシトシンの分泌を促すことができます。

皮膚科医の研究によれば、背中上部に15分のマッサージを受けた被験者と、15分間休んだだけの被験者の血中オキシトシン濃度を比べたところ、マッサージを受けたほうが有意に高かったそうです。この実験でマッサージを提供したセラピストは、被験者との会話を最小限にするよう指導されていました。つまり、相手とコミュニケーションをとらなくても、肌に心地よい刺激を受けることでオキシトシンが分泌されるのです。

セルフタッチのコツは、「1秒間に5~10cm程度動かす」ようにタッチすることです。皮膚にはもともと快適さを生み出す神経線維が数多く存在し、神経線維が興奮するとその感覚が脳に到達して、オキシトシンをたくさん分泌します。

花王の研究でも、1秒間に5cmの速さでゆっくりなでると分泌することが確認されています。エステやマッサージサロンでの施術も、皮膚から伝わる心地良い刺激がオキシトシンの分泌を促し、安心感や癒やしをもたらしてくれます。

4. 心を通わせる会話と交流

直接肌が触れなくても、見つめ合う、家族団らんする、楽しく食事するなど、心を通わせるだけでも有意義です。人との交流や絆を深め感謝の気持ちを抱き、相手に関心を持つことでオキシトシンの分泌は促進されます。

親子・夫婦間のスキンシップ、家族への愛、人に対する寛大さなどでオキシトシンの分泌は促進されます。他人に対し「お疲れさま」「ありがとう」など優しい言葉をかけ、穏やかな気持ちで過ごすことでオキシトシンの分泌を促す習慣が整うでしょう。

精神科医によれば、物理的に接触しない「心の触れ合い」もオキシトシンの出し方に含まれるそうです。直接あるいはビデオ通話で会話したり、一緒に過ごしたりすることで、オキシトシンの分泌が促されます。

5. 入浴とリラクゼーション

オキシトシンを分泌させるのに最も手軽で着実な方法は入浴です。ゆったりした気持ちで湯船に浸かることで身体が温まると、良質な睡眠につながります。

温冷交代浴という、お風呂で温かいお湯と冷たい水を交互に入る方法もあります。温度差による「気持ちいい」という感覚が脳を刺激し、分泌されたオキシトシンやセロトニンによって幸福感がもたらされます。

冷たい水に抵抗がある方は、毎日のお風呂をシャワーで済まさず、お湯に浸かるだけでも効果を得られるでしょう。温泉に浸かっているときの「極楽気分」も、セロトニンとオキシトシンの相互作用によるものです。

6. アロマと嗅覚刺激

好きな香りで嗅覚を刺激して、オキシトシンの分泌を促すという方法もあります。実はオキシトシンがある特定の匂いによって分泌されることは、日本メナード化粧品株式会社が実施した研究でも明らかになっています。

研究では、「ローズ」「オレンジフラワー(精油ではネロリ)」「バイオレット」など、天然精油の香りを嗅いだ女性の5分後の唾液を分析したところ、唾液中のオキシトシン濃度が天然精油の香りを嗅ぐ前に比べて上昇したそうです。

1日の終わりや仕事で疲れたときに、アロマの香りを嗅いでリフレッシュすることで、オキシトシンの分泌を促すことができます。好きな香りを選ぶことが重要で、自分が心地よいと感じる香りがオキシトシンの分泌に最も効果的です。

7. 五感を刺激する

オキシトシンは、五感(触覚、味覚、視覚、聴覚、嗅覚)を刺激して心地よさを感じたときに、脳内に放出されやすいとされます。

  • 視覚:美しいものを見る、自然の風景を眺める、美術作品を鑑賞する
  • 聴覚:好きな音楽を聴く、心地よい自然音を聞く
  • 味覚:美味しいものを食べる、楽しい食事を共にする
  • 嗅覚:良い香りを嗅ぐ、アロマを楽しむ
  • 触覚:心地よい素材に触れる、マッサージを受ける

これらの刺激によりオキシトシンはたくさん分泌されます。自分の五感を喜ばせられる方法や趣味を見つけるのも、オキシトシンの分泌を促進させるためには大切なポイントです。

8. 運動

早稲田大学の研究では、高強度インターバル運動によって全身を循環するオキシトシン濃度が増加することが明らかにされました。高強度インターバル運動とは、短時間の高強度運動を、動的休息あるいは静的休息を挟みながら数回繰り返す運動プログラムのことです。

ただし、高強度の運動が苦手な方もいるでしょう。軽い運動でも、自分がやると決めた運動をやり遂げると達成感が得られ、他の幸せホルモン(ドーパミン)と共にオキシトシンの分泌も期待できます。

運動量や内容は人によって異なるので、自分に合った運動を行うようにしましょう。適度な運動は、ストレスホルモンの分泌を抑制し、オキシトシンの分泌を促す環境を整えます。

9. 利他的行動

興味深いことに、マッサージを行うセラピストのほうが、受ける側よりも多くのオキシトシンが出ることが実験で分かりました。オキシトシンは利他的な行動によっても分泌されるので、ボランティア活動をする人や、人に寄り添ったり、優しい気持ちで人をケアしたりする職業の人は、より多く分泌されている可能性があります。

他人に親切にする、感謝する気持ちを持つ、誰かの役に立つといった利他的な行動は、自分自身のオキシトシン分泌を促し、幸福感をもたらしてくれます。

10. 感動体験

感動する映画を見る、本を読む、音楽を聴くなど、心が動かされる体験もオキシトシンの分泌を促します。特に、人間の絆や愛情を描いた作品、美しい自然や芸術作品に触れることで、オキシトシンの分泌が増加することが知られています。

オキシトシンと食事の関係

よく「オキシトシンを増やす食べ物はありますか?」という質問を受けますが、残念ながら特定の食べ物を食べることで直接オキシトシンの分泌が増えるというものはありません。

オキシトシンはスキンシップや感謝する気持ちなどによって分泌が増えるホルモンです。しかし、一緒に過ごして楽しいと思える人と美味しく食事をすることなどが、オキシトシンの分泌を促進させます。

一方、同じく「幸せホルモン」と呼ばれているセロトニンは、脳内の神経伝達物質のひとつで、ドーパミンやノルアドレナリンを制御して精神を安定させる働きを持っています。セロトニンの材料はトリプトファンと呼ばれる必須アミノ酸で、これと一緒にセロトニンの合成を助けるビタミンB6を摂るとより効果的です。

トリプトファンとビタミンB6を多く含む食べ物には次のようなものがあります:

  • 大豆製品:豆腐、味噌、納豆など
  • 乳製品:チーズ、ヨーグルト、牛乳など
  • その他:ピーナッツ、卵、バナナ、まぐろ、かつお

セロトニンは脳と腸の両方から分泌され、気分の安定や睡眠と密接な関係にあります。セロトニンは腸を動かす指令を出す際にも使われるので、腸内環境を整えて便秘を予防に努めることも大切です。

また、オキシトシンが増えることでセロトニン神経が刺激され、セロトニンの分泌も促進されるため、オキシトシンとセロトニンは相互に関連し合っています。食事の面ではセロトニンの分泌が増えるようにトリプトファンやビタミンB6の摂取を心がけ、オキシトシンを増やしたいときは人や動物とスキンシップをとる機会を増やし、食事を美味しく食べることを意識すると良いでしょう。

オキシトシン分泌を妨げる要因

オキシトシンの分泌を促進する方法を知ることと同様に、分泌を妨げる要因を理解することも重要です。

ストレス

オキシトシンの血中濃度を減らしてしまう最大の要因はストレスです。慢性的なストレス状態では、ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が続き、オキシトシンの分泌が抑制されてしまいます。

オキシトシンの分泌量が多ければ多いほど、ストレス状態に耐えられる力が湧いてきます。脳や心が癒され、ストレスが緩和され、心臓の機能を向上させるためです。逆説的ですが、ストレスを軽減するためにはオキシトシンが必要であり、オキシトシンを増やすためにはストレスを減らす必要があるのです。

孤独と社会的孤立

人との交流が少ない状態、社会的に孤立した状態では、オキシトシンの分泌が低下します。特に、信頼できる人との関係性が乏しい場合、オキシトシンの分泌機会が減少してしまいます。

睡眠不足

十分な睡眠が取れていないと、ホルモンバランスが乱れ、オキシトシンの分泌にも悪影響を及ぼします。質の良い睡眠は、オキシトシンを含む様々なホルモンの正常な分泌に不可欠です。

運動不足

適度な運動は、前述のようにオキシトシンの分泌を促します。逆に、運動不足の状態では、オキシトシンの分泌機会が減少してしまいます。

オキシトシン不足のサインと対処法

オキシトシンが不足すると起こる症状

オキシトシンが少なくなったときの症状は以下のとおりです:

  • 気持ちが鬱々とする
  • 言葉が流暢に出てこない
  • 寝つきが悪い
  • 人との関わりを避けたくなる
  • 不安感が強くなる
  • ストレスに弱くなる
  • 疲れやすい
  • 集中力の低下

これらの症状が複数当てはまる場合、オキシトシンが減っている可能性があります。

対処法

オキシトシンが減る主な原因は、加齢とストレスです。できるだけストレスがかからない生活が、オキシトシンの分泌を増やすことにつながります。

とはいえストレス社会の現在、ストレスがまったくない状態をキープするのは難しいかもしれません。規則正しい生活をする、ストレス解消するなどして、ストレスとうまく付き合うようにしましょう。

少しでもストレスを感じたらすぐにケアする習慣や方法を身につけておくことが重要です。本記事で紹介した「オキシトシンの出し方」を日常生活に取り入れることで、オキシトシン不足の症状を改善できる可能性があります。

オキシトシンの注意点

オキシトシンは「幸せホルモン」として多くの良い効果がありますが、いくつか注意すべき点もあります。

過度の信頼による弊害

脳科学者によると、オキシトシンのデメリットとして「人にだまされやすくなる」ことが挙げられています。他人への信頼感情が高まるということは、真偽不明な情報を安易に信じてしまうリスクも高まるということです。

たとえば、詐欺などの被害に遭うのも、オキシトシンによって親しい人の言うことを疑えなくなるためだと考えられます。オキシトシンが人間心理に与える影響はあまりに大きく、米国では薬局でのオキシトシン販売を許可すべきかどうか議論になったほどです。

内集団と外集団への態度の違い

研究により、オキシトシンは仲間意識などの情愛とそれに基づいたグループ集団を発生させるのと同時に、仲間意識による優遇とは相反した選別時の排除意識の発生や、仲間のグループに属していない外来者に対してグループに属する者を防護する反応、およびそれらに起因する敵対心、攻撃性と攻撃抑止を生み出すことが示されています。

つまり、オキシトシンは「身内」への愛情や信頼を高める一方で、「外部」に対しては排他的になる可能性もあるのです。

医療用途の限界

現在、日本をはじめ世界のすべての国でオキシトシンを自閉症の治療に使用することは薬事法で認められていません。研究は進んでいますが、長期利用の安全性や適切な投与量などの課題が残されています。

医療用途でのオキシトシンの使用は、現時点では分娩誘発、微弱陣痛、弛緩出血、胎盤娩出前後、子宮復古不全、帝王切開術(胎児の娩出後)、流産、人工妊娠中絶などに限られています。

日常生活でのオキシトシン習慣

オキシトシンの分泌を日常的に促すために、以下のような習慣を取り入れることをおすすめします。

朝の習慣

  • 起床後、家族とハグをする
  • 朝食を家族や大切な人と一緒に楽しむ
  • ペットと触れ合う時間を持つ
  • 好きな音楽を聴きながら準備する

日中の習慣

  • 職場や学校で、人に感謝の言葉を伝える
  • ランチを気の合う仲間と楽しむ
  • 休憩時間にセルフマッサージをする
  • 窓から自然の景色を眺める

夜の習慣

  • ゆっくりと湯船に浸かる
  • アロマを焚いてリラックスする
  • 家族とその日あった出来事を話す
  • 寝る前に、その日の良かったことを3つ思い出す

週末の習慣

  • 家族や友人と過ごす時間を作る
  • マッサージやエステに行く
  • 感動する映画や本に触れる
  • ボランティア活動に参加する
  • 自然の中で過ごす

他の幸せホルモンとの関係

オキシトシンは単独で働くのではなく、他の神経伝達物質やホルモンと相互に作用しています。

セロトニンとの関係

前述のように、オキシトシンが増えることでセロトニン神経が刺激され、セロトニンの分泌が促進されます。セロトニンは精神的な安らぎをつかさどっており、ホッと癒されるような幸福感をもたらします。

また、オキシトシンは不安や恐怖などネガティブな情報を察知した際にセロトニンの分泌を促し、うつ症状を緩和させるように働きます。

ドーパミンとの関係

オキシトシンによってドーパミンを増やすことができれば、仕事や勉強をいつも以上に頑張ることができるでしょう。ドーパミンは、やる気や集中力をアップさせることで知られています。

β-エンドルフィンとの関係

オキシトシンは、脳で痛みを察知するとβ-エンドルフィンの分泌を促し、結果的に痛みを抑えるというような作用もあります。β-エンドルフィンは高揚や鎮痛、抗ストレス作用を担っており、「脳内麻薬」とも呼ばれています。

これらの「幸せホルモン」は、どれか一つが多く分泌すればよいという訳ではなく、全体のバランスが大切です。オキシトシンを増やすことで、他の幸せホルモンの分泌も促進され、心身の健康により良い効果をもたらすのです。

まとめ:オキシトシンで心身の健康を

オキシトシンは、私たちの心と体に多大な影響を与える重要なホルモンです。幸福感をもたらし、ストレスを軽減し、人との絆を深めるなど、その効果は多岐にわたります。

本記事で紹介した「オキシトシンの出し方」は、特別な道具や薬を必要とせず、日常生活の中で実践できるものばかりです。スキンシップ、マッサージ、入浴、アロマ、五感への刺激、運動、利他的行動など、自分に合った方法を見つけて、日々の生活に取り入れてみてください。

重要なのは、これらの方法を「義務」として行うのではなく、「心地よい」「楽しい」と感じながら実践することです。オキシトシンは「幸せを感じたとき」に分泌されるホルモンですから、無理なく、楽しみながら続けることが何より大切です。

ストレス社会に生きる現代人にとって、オキシトシンは心身の健康を支える強力な味方です。自分を愛でること、他者との絆を大切にすること、そして日々の小さな幸せに気づくこと。これらを意識した生活を送ることで、オキシトシンの分泌が促され、より豊かで健康的な人生を送ることができるでしょう。

参考文献

  1. Wikipedia – オキシトシン
  2. 山口内分泌疾患研究振興財団 – “オキシトシン”の多彩な生理作用
  3. 金沢大学 – 愛情ホルモン「オキシトシン」の分子作用メカニズムを解明
  4. 広島大学 – 男性性機能障害の新規治療法に光?オキシトシン経鼻投与による性的モチベーションと精子機能の二重改善効果
  5. 早稲田大学スポーツ科学研究センター – 高強度インターバル運動とオキシトシン循環に関する研究成果
  6. 順天堂大学 GOOD HEALTH JOURNAL – コロナ禍に。愛情ホルモン「オキシトシン」への期待
  7. 日本経済新聞 – 愛情・信頼ホルモン「オキシトシン」の多彩な働き
  8. 花王メリーズ – 愛情ホルモン「オキシトシン」
  9. グリコ – 安らぎの物質オキシトシン

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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