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首が痛い:原因・症状・治療法を徹底解説

はじめに

「首が痛い」と感じたことは、多くの方が経験されているのではないでしょうか。デスクワークやスマートフォンの長時間使用が当たり前になった現代社会において、首の痛みは国民病ともいえる症状となっています。

首の痛みは、単なる肩こりから重篤な病気のサインまで、その原因は実に多岐にわたります。多くの場合は適切なケアで改善しますが、中には専門的な治療が必要なケースもあります。本記事では、首が痛いと感じたときに知っておくべき原因、症状、対処法、そして医療機関を受診すべきタイミングについて、医学的根拠に基づいて詳しく解説していきます。

首の痛みの疫学:どれくらいの人が悩んでいる?

首の痛み(頸部痛)は、腰痛に次いで多い筋骨格系の症状です。日本における疫学調査によれば、成人の約10~15%が何らかの首の痛みを抱えているとされています。特に30代から50代の働き盛りの世代に多く見られ、女性の方が男性よりもやや発症率が高い傾向にあります。

厚生労働省の国民生活基礎調査では、自覚症状として訴える人が多い症状の上位に常に「肩こり」がランクインしており、これには首の痛みも含まれています。現代のライフスタイルの変化により、この数字は今後さらに増加していくことが予想されています。

首の構造と機能:痛みが起こるメカニズム

首の痛みを理解するためには、まず首の構造について知っておくことが重要です。

頸椎の構造

首の骨格は7つの頸椎(けいつい)から成り立っています。これらは以下のような特徴があります:

  • 第1頸椎(環椎)と第2頸椎(軸椎): 頭部の回旋運動を担う特殊な構造
  • 第3~7頸椎: 椎間板を挟んで積み重なり、前後の動きや側屈を可能にする
  • 椎間板: 頸椎と頸椎の間にあるクッションの役割を果たす軟骨組織
  • 椎間孔: 神経が通る穴で、ここが狭くなると神経症状が出現

首の筋肉と靭帯

首には多くの筋肉が存在し、頭部を支え、様々な方向への動きを可能にしています:

  • 僧帽筋: 首から肩、背中にかけて広がる大きな筋肉
  • 胸鎖乳突筋: 首の側面を斜めに走る目立つ筋肉
  • 頸部深層筋群: 頸椎を直接支える小さな筋肉群
  • 靭帯: 骨と骨をつなぎ、安定性を保つ結合組織

成人の頭部は約5~6kgの重さがあり、首はこれを常に支え続けています。姿勢が悪くなると首にかかる負担は大幅に増加し、例えば頭部が前方に15度傾くと、首にかかる重さは約12kgにもなるとされています。

首が痛くなる主な原因

首の痛みの原因は非常に多岐にわたります。ここでは代表的な原因について詳しく解説します。

1. 筋筋膜性疼痛(筋肉性の痛み)

最も一般的な原因で、首の痛みを訴える患者さんの約70~80%を占めるとされています。

原因となる要因:

  • 長時間の不良姿勢(デスクワーク、スマートフォン使用)
  • 同じ姿勢の維持
  • 筋肉の緊張や疲労の蓄積
  • ストレスによる筋肉の過緊張
  • 運動不足による筋力低下

特徴的な症状:

  • 首から肩にかけての鈍い痛みやこわばり
  • 朝起きたときに痛みが強い
  • 動かすと痛みが増す、または軽減する
  • 頭痛を伴うことがある
  • 筋肉を押すと圧痛点(トリガーポイント)がある

2. 頸椎椎間板ヘルニア

椎間板の中心部にある髄核が飛び出し、神経を圧迫する状態です。30~50代に多く見られます。

症状の特徴:

  • 首の痛みに加えて、腕や手への放散痛(放散する痛み)
  • 腕や手のしびれ、感覚異常
  • 筋力低下(物を落としやすい、握力の低下)
  • 首を後ろに反らすと症状が悪化することが多い
  • 咳やくしゃみで痛みが増強

日本整形外科学会によれば、頸椎椎間板ヘルニアは中年以降に発症しやすく、適切な治療により多くの場合は保存的治療で改善するとされています。

3. 頸椎症(変形性頸椎症)

加齢に伴う椎間板や椎骨の変性により起こる状態です。40歳以上の約半数に何らかの変化が見られるとされています。

主な症状:

  • 首の動きの制限(特に後屈や回旋)
  • 首を動かすときのゴリゴリという音
  • 慢性的な首の痛みやこわばり
  • 進行すると神経症状を伴うことがある

4. むち打ち損傷(頸椎捻挫)

交通事故やスポーツでの衝突などで、首が前後に急激に揺さぶられることで起こる損傷です。

受傷後の経過:

  • 急性期(受傷直後~数日): 首の痛み、可動域制限、筋肉の緊張
  • 亜急性期(数日~数週間): 頭痛、めまい、吐き気、集中力低下などの症状が出現することも
  • 慢性期(数ヶ月以降): 一部の患者さんでは症状が長期化

受傷直後は症状が軽くても、翌日以降に症状が強くなることが多いため、必ず医療機関を受診することが重要です。

5. ストレートネック(頸椎の生理的前彎の消失)

本来、首の骨は緩やかな前彎(前方へのカーブ)を描いていますが、これが失われた状態です。

現代社会での増加要因:

  • スマートフォンやタブレットの長時間使用
  • 前かがみでのパソコン作業
  • 枕の高さが合っていない
  • 猫背などの不良姿勢

ストレートネックは首への負担を増加させ、慢性的な痛みの原因となります。

6. 頸椎後縦靭帯骨化症(OPLL)

後縦靭帯が骨のように硬くなり、脊髄を圧迫する病気です。日本人に多く見られる疾患として知られています。

疾患の特徴:

  • 50歳以上の男性に多い
  • 遺伝的要因が関与している可能性
  • 初期は無症状のことも多い
  • 進行すると手足のしびれ、歩行障害、排尿障害などが出現

厚生労働省の特定疾患(指定難病)に指定されており、重症例では手術が必要になることもあります。

7. 関節リウマチによる頸椎病変

関節リウマチは全身の関節を侵す自己免疫疾患ですが、頸椎、特に上位頸椎(第1、第2頸椎)が侵されることがあります。

注意すべき症状:

  • 首の痛みと後頭部痛
  • 手足のしびれや脱力
  • 重症例では呼吸困難や嚥下障害

リウマチ患者さんは定期的な頸椎のチェックが必要です。

8. 感染症(化膿性脊椎炎など)

まれではありますが、細菌感染により椎体や椎間板に炎症が起こることがあります。

特徴的な症状:

  • 安静時でも続く強い痛み
  • 発熱
  • 全身倦怠感
  • 炎症反応(血液検査でCRP、白血球数の上昇)

早期の抗生物質治療が必要な緊急性の高い疾患です。

9. 腫瘍

非常にまれですが、頸椎や周囲の組織に腫瘍ができることがあります。

警告サイン:

  • 夜間痛(夜に痛みが強くなる)
  • 安静にしていても改善しない痛み
  • 体重減少
  • 神経症状の急速な進行

10. その他の原因

  • 線維筋痛症: 全身の慢性的な痛みを特徴とする疾患
  • 心因性の痛み: ストレスや不安が身体症状として現れる
  • 内臓疾患の関連痛: 心筋梗塞、胆嚢炎などが首の痛みとして現れることがある
  • 顎関節症: 顎の問題が首の痛みを引き起こすことがある

危険な首の痛み:すぐに受診すべきサイン

首の痛みの多くは深刻ではありませんが、以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。

緊急受診が必要な症状(レッドフラッグサイン)

  1. 突然の激しい首の痛み
    • 特に頭痛を伴う場合(くも膜下出血などの可能性)
  2. 発熱を伴う首の痛み
    • 項部硬直(首が硬くなり前に曲げられない)
    • 髄膜炎の可能性
  3. 手足の脱力やしびれ
    • 両手両足に症状がある場合
    • 脊髄圧迫の可能性
  4. 歩行障害や排尿・排便障害
    • 脊髄の重篤な圧迫を示唆
  5. 外傷後の首の痛み
    • 特に頭を強く打った場合
    • 高齢者や骨粗鬆症のある方の転倒後
  6. がんの既往歴がある方の新しい首の痛み
    • 転移の可能性を考慮
  7. 安静にしても改善しない、または悪化する痛み
    • 特に夜間痛が強い場合
  8. 体重減少を伴う首の痛み
  9. 呼吸困難や嚥下困難を伴う場合

これらの症状がある場合は、夜間や休日であっても救急外来の受診を検討してください。

早めの受診が望ましい症状

  • 痛みが2週間以上続く
  • 市販の鎮痛薬で改善しない
  • 日常生活に支障がある
  • 腕や手のしびれがある
  • 50歳以上で初めて経験する強い首の痛み

首の痛みの診断:どんな検査をする?

医療機関では、問診、身体診察、必要に応じて画像検査などを行い、首の痛みの原因を特定していきます。

問診

医師は以下のような点を詳しく尋ねます:

  • 痛みの場所、性質(鋭い、鈍い、電気が走るようなど)
  • 痛みの程度(VAS:Visual Analogue Scaleなどを使用)
  • いつから痛むか(急性か慢性か)
  • 痛みを悪化させる動作や姿勢
  • 痛みを和らげる要因
  • しびれや脱力などの神経症状の有無
  • 外傷歴
  • 既往歴、家族歴
  • 生活習慣、職業

身体診察

  • 視診: 姿勢、頸椎のアライメント(配列)の確認
  • 触診: 圧痛点、筋肉の緊張、腫脹の有無
  • 可動域検査: 首の動きの範囲と痛みの誘発
  • 神経学的検査:
    • 深部腱反射(上腕二頭筋反射、上腕三頭筋反射など)
    • 筋力検査
    • 感覚検査
    • 病的反射の有無
  • 特殊検査:
    • スパーリングテスト(神経根症状の誘発試験)
    • ジャクソンテスト
    • 椎骨動脈テスト

画像検査

X線検査(レントゲン)

  • 骨の配列、骨折、変形、骨棘の有無を確認
  • 前後・側面・斜位・開口位など複数の角度から撮影
  • 頸椎の不安定性を評価するための動態撮影(前屈・後屈位)を行うこともある

MRI検査(磁気共鳴画像法)

  • 椎間板、神経、脊髄、靭帯などの軟部組織を詳細に評価
  • 椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊髄の圧迫や異常信号の検出に有用
  • 腫瘍や感染症の診断にも重要

CT検査(コンピュータ断層撮影)

  • 骨の詳細な構造を評価
  • 骨折や骨の変形、後縦靭帯骨化症の診断に有用
  • 3D再構成により立体的な理解が可能

その他の検査

  • 脊髄造影: 脊髄や神経根の圧迫を詳細に評価(現在はMRIに置き換わりつつある)
  • 筋電図・神経伝導検査: 神経や筋肉の機能を評価
  • 血液検査: 炎症の程度、リウマチ因子、感染症の有無などを確認

首の痛みの治療法

首の痛みの治療は、原因や重症度に応じて選択されます。多くの場合、まず保存的治療(手術をしない治療)から開始します。

保存的治療

1. 薬物療法

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)

  • ロキソプロフェン、セレコキシブなど
  • 痛みと炎症を抑える
  • 胃腸障害に注意が必要

アセトアミノフェン

  • 比較的副作用が少ない鎮痛薬
  • 軽度から中等度の痛みに有効

筋弛緩薬

  • チザニジンなど
  • 筋肉の緊張を和らげる

神経障害性疼痛治療薬

  • プレガバリン、デュロキセチンなど
  • 神経根症状を伴う痛みに有効

外用薬

  • NSAIDsの湿布や塗り薬
  • 局所での鎮痛効果

ステロイド薬

  • 強い炎症がある場合に短期間使用
  • 長期使用は副作用のリスク

漢方薬

  • 葛根湯、芍薬甘草湯など
  • 体質に合わせた処方

2. 物理療法

温熱療法

  • ホットパック、赤外線照射
  • 血流を改善し、筋肉の緊張を和らげる
  • 急性期の炎症が強い時期は避ける

冷却療法

  • アイスパック
  • 急性期の炎症や腫れを抑える

電気刺激療法(TENS)

  • 経皮的電気神経刺激
  • 痛みの信号を抑制

牽引療法

  • 頸椎を牽引し、椎間の圧力を軽減
  • 椎間板ヘルニアや神経根症に対して行われることがある
  • 効果については議論がある

超音波療法

  • 深部の組織を温める

3. 装具療法

頸椎カラー

  • 急性期に首を安定させる
  • 長期使用は筋力低下を招くため、通常は数日~2週間程度の使用
  • 就寝時や外出時など、必要な時のみ使用することが推奨される

4. 理学療法(リハビリテーション)

運動療法

  • ストレッチ: 首や肩の筋肉を伸ばす
  • 筋力強化: 首を支える筋肉(深部屈筋群など)を鍛える
  • 可動域訓練: 首の動きを改善
  • 姿勢矯正: 正しい姿勢を身につける

マニュアルセラピー(徒手療法)

  • 理学療法士による関節や筋肉への手技
  • モビリゼーション、マニピュレーションなど

日本理学療法士協会では、エビデンスに基づいた理学療法の重要性を強調しており、個々の患者さんの状態に合わせたプログラムの作成が推奨されています。

5. 注射療法

トリガーポイント注射

  • 痛みの引き金点に局所麻酔薬を注射
  • 筋筋膜性疼痛に有効

神経ブロック

  • 痛みを伝える神経に麻酔薬を注射
  • 神経根ブロック、星状神経節ブロックなど

関節内注射

  • 椎間関節への注射

硬膜外ブロック

  • 硬膜外腔にステロイドと局所麻酔薬を注入
  • 強い神経根症状に対して行われることがある

6. 代替医療

鍼治療

  • 東洋医学に基づく治療
  • 一定の効果が報告されている

カイロプラクティック、整体

  • 脊椎の調整
  • 施術者の技術に依存し、まれに悪化例もあるため注意が必要

マッサージ

  • 筋肉の緊張を和らげる
  • リラクゼーション効果

これらの治療法については、医学的なエビデンスが十分でないものもあり、主治医と相談の上、補助的な治療として検討することが望ましいでしょう。

手術療法

保存的治療で改善しない場合や、以下のような状況では手術が検討されます:

手術の適応

  • 脊髄の圧迫による重篤な神経症状(歩行障害、巧緻運動障害など)
  • 保存的治療を3~6ヶ月行っても改善しない強い神経根症状
  • 進行性の神経症状
  • 頸椎の不安定性
  • 腫瘍や感染症など

主な手術方法

  1. 前方除圧固定術
    • 首の前方から椎間板を切除し、骨移植やケージで固定
  2. 後方除圧術(椎弓形成術)
    • 首の後方から脊柱管を広げる
    • 脊柱管狭窄症に対して行われることが多い
  3. 椎間板置換術
    • 人工椎間板に置き換える
    • 日本でも一部の施設で行われている

手術にはリスクも伴うため、十分な説明を受け、納得した上で決断することが重要です。

首の痛みの予防とセルフケア

首の痛みを予防し、症状を軽減するために日常生活でできることがたくさんあります。

姿勢の改善

デスクワーク時の姿勢

  • モニターは目の高さかやや下に設置
  • 椅子の高さを調整し、足が床にしっかりつくように
  • 背もたれを使い、腰をしっかり支える
  • 30分に1回は立ち上がり、ストレッチ

スマートフォン使用時

  • 画面を目の高さまで上げる
  • 長時間の使用を避ける
  • 首を前に突き出さない

睡眠時の姿勢

  • 適切な高さの枕を使用(横向きで肩幅と同じくらいの高さ)
  • 仰向けまたは横向きで寝る(うつぶせは首への負担大)
  • マットレスは適度な硬さのものを選ぶ

ストレッチと運動

首のストレッチ(各10~15秒、無理のない範囲で)

  1. 前屈ストレッチ: あごを胸に近づける
  2. 側屈ストレッチ: 頭を左右に傾ける
  3. 回旋ストレッチ: 顔を左右に向ける
  4. 肩のすくめ運動: 肩を耳に近づけてから脱力

首の筋力強化

  1. 頭押し運動: 手で頭を押し、それに抵抗するように首の力で押し返す(前後左右)
  2. あご引き運動: あごを引いて首の後ろを伸ばす

全身運動

  • ウォーキング、水泳などの有酸素運動
  • 週に3~5回、各30分程度が理想的

生活習慣の改善

ストレス管理

  • 十分な睡眠(7~8時間)
  • リラクゼーション法(深呼吸、瞑想、ヨガなど)
  • 趣味の時間を持つ

体重管理

  • 適正体重の維持
  • バランスの取れた食事

禁煙

  • 喫煙は椎間板の変性を促進させる

適度な水分摂取

  • 椎間板の水分を保つために重要

職場環境の整備

エルゴノミクス(人間工学)の原則

  • 適切な机と椅子の高さ
  • ドキュメントホルダーの使用
  • ヘッドセットの使用(電話を頻繁に使う場合)
  • 照明の適正化

厚生労働省の「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」では、作業環境や作業時間について具体的な指針が示されています。

急性期の対処法

もし首を痛めてしまった場合:

最初の48~72時間(急性期)

  • 安静(ただし、完全な安静は避け、できる範囲で動かす)
  • 冷却(1回15~20分、1日数回)
  • 市販の鎮痛薬の使用(用法用量を守る)
  • 悪化させる動作を避ける

その後(亜急性期以降)

  • 温熱療法への切り替え
  • 徐々に動かす範囲を広げる
  • ストレッチや軽い運動の開始

よくある質問(Q&A)

Q1: 首が痛いとき、冷やすべきですか?温めるべきですか?

A: 基本的には、急性期(痛めてから48~72時間)は冷却、その後は温熱療法が推奨されます。急性期に炎症や腫れがある場合は、冷却により炎症を抑えることができます。その後、筋肉の緊張による痛みが主体となる時期には、温めることで血流が改善し、痛みが和らぐことが多いです。ただし、個人差があるため、自分に合った方法を見つけることが大切です。

Q2: 首の痛みで市販薬を使っても大丈夫ですか?

A: 軽度から中等度の首の痛みに対しては、市販の鎮痛薬(ロキソプロフェン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなど)を短期間使用することは問題ありません。ただし、用法用量を守り、5~7日使用しても改善しない場合は医療機関を受診してください。また、胃腸障害や腎臓病などの持病がある方は、使用前に薬剤師や医師に相談することをお勧めします。

Q3: 首のマッサージは効果がありますか?

A: 筋肉の緊張による首の痛みに対しては、適切なマッサージは効果的です。ただし、強すぎるマッサージは逆効果になることもあります。また、神経症状がある場合や骨の問題が疑われる場合は、マッサージが適さないこともあるため、まず医師の診断を受けることが重要です。

Q4: ストレートネックは治りますか?

A: ストレートネックは姿勢や生活習慣が関与している場合が多く、適切な姿勢矯正やストレッチ、筋力強化により改善が期待できます。ただし、加齢による骨の変化が原因の場合は、完全に元に戻すことは難しいかもしれません。それでも、適切なケアにより症状の軽減や進行の予防は可能です。

Q5: 首が痛いときは運動を控えるべきですか?

A: 急性期で痛みが強い場合は安静が必要ですが、完全に動かさないのは逆効果です。痛みの範囲内で可能な動きは続けることが推奨されています。痛みが落ち着いてきたら、むしろ適度な運動やストレッチを行うことで、回復が早まることが多いです。ただし、神経症状がある場合や外傷後などは、医師の指示に従ってください。

Q6: 首の痛みは何科を受診すればいいですか?

A: 一般的には整形外科が適しています。神経症状が強い場合は脳神経外科も専門領域です。リウマチが疑われる場合はリウマチ科、感染症が疑われる場合は内科なども選択肢となります。まずはかかりつけ医に相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらうのも良い方法です。

Q7: 枕の選び方を教えてください

A: 理想的な枕は、仰向けで寝たときに首の自然なカーブ(前彎)が維持され、頭が沈み込みすぎず浮き上がりすぎない高さのものです。横向きで寝る場合は、肩幅と同じくらいの高さで、頭から背骨が一直線になるものが良いでしょう。素材は好みによりますが、適度な硬さがあり、頭を支えられるものが推奨されます。最近では、オーダーメイドの枕や、専門店での測定サービスもあります。

Q8: 首の痛みは心臓病と関係がありますか?

A: まれですが、心筋梗塞や狭心症の症状として、首や顎、肩の痛みが現れることがあります(関連痛)。特に、運動時や階段を上るときに首から顎にかけての痛みや圧迫感が生じ、安静にすると治まる場合は注意が必要です。胸の痛みや息苦しさ、冷や汗を伴う場合は、すぐに救急車を呼んでください。

Q9: 子どもも首が痛くなることはありますか?

A: 子どもの首の痛みは、大人に比べると少ないですが、ゲームやスマートフォンの長時間使用により増加傾向にあります。子どもの場合、外傷、感染症(咽頭炎からのリンパ節炎など)、まれに腫瘍なども考慮する必要があります。発熱を伴う場合や、首が硬くなって動かせない場合は、すぐに医療機関を受診してください。

Q10: 妊娠中の首の痛みはどうすればいいですか?

A: 妊娠中は体重増加や姿勢の変化により、首や肩に負担がかかりやすくなります。適度なストレッチや姿勢の改善が有効です。薬物療法については、妊娠中に使用できる薬が限られているため、必ず医師や薬剤師に相談してください。一般的に、アセトアミノフェンは妊娠中も比較的安全とされていますが、自己判断での使用は避けましょう。

首の痛みと心理的要因

首の痛みは、身体的な要因だけでなく、心理的・社会的要因も大きく関与することがわかっています。これは生物心理社会モデル(biopsychosocial model)として理解されています。

ストレスと首の痛み

慢性的なストレスは、筋肉の緊張を引き起こし、首の痛みを悪化させます。また、痛みそのものがストレスとなり、悪循環を形成することもあります。

ストレスが首の痛みに影響するメカニズム:

  • 自律神経系の乱れによる筋肉の過緊張
  • 痛みに対する感受性の増加
  • 睡眠障害による回復力の低下
  • 不安や抑うつによる痛みの増幅

慢性痛への移行を防ぐために

急性の痛みが慢性化するのを防ぐためには、早期の適切な対応が重要です:

  • 過度な安静を避け、できる範囲で活動を続ける
  • 痛みに対する正しい理解と前向きな考え方
  • 必要に応じて認知行動療法などの心理的アプローチ
  • 適切な薬物療法により痛みをコントロール
  • 職場や家庭でのサポート体制

日本ペインクリニック学会では、慢性痛の治療において、多面的なアプローチの重要性が強調されています。

まとめ:首の痛みと上手に付き合うために

首の痛みは非常に一般的な症状であり、多くの場合は適切な対処により改善します。しかし、中には重篤な疾患が隠れていることもあるため、警告サインを見逃さないことが重要です。

首の痛みへの対処のポイント:

  1. 原因を理解する: 痛みの原因を知ることで、適切な対処法を選択できます
  2. 早期の対応: 軽度のうちにケアすることで、慢性化を防げます
  3. 生活習慣の見直し: 姿勢や日常動作の改善が予防につながります
  4. 適度な運動とストレッチ: 首を支える筋肉を強化し、柔軟性を保ちます
  5. ストレス管理: 心身のバランスを整えることも重要です
  6. 専門家への相談: 自己判断せず、必要に応じて医療機関を受診しましょう
  7. 継続的なケア: 一度良くなっても、予防的なケアを続けることが再発防止につながります

現代社会において、首の痛みは避けられない問題かもしれません。しかし、正しい知識を持ち、適切な予防と対処を行うことで、首の痛みと上手に付き合い、質の高い日常生活を送ることができます。


参考文献

  1. 日本整形外科学会「頸椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン
  2. 厚生労働省「国民生活基礎調査
  3. 日本ペインクリニック学会「慢性疼痛治療ガイドライン」
  4. 日本脊椎脊髄病学会「頸椎症性脊髄症診療ガイドライン」
  5. 厚生労働省「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン
  6. 日本理学療法士協会「理学療法診療ガイドライン」
  7. 日本リウマチ学会「関節リウマチ診療ガイドライン」
  8. 日本リハビリテーション医学会「リハビリテーション医療における頸部痛の評価と治療」

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
電話予約
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