渋谷は若者文化の発信地であり、ファッションやトレンドに敏感な方が多く集まる街です。そんな渋谷で生活する方々にとって、ワキガや多汗症の悩みは深刻な問題となることがあります。夏の暑い日はもちろん、満員電車や人が密集する場面で汗やニオイが気になり、自信を持てなくなってしまう方も少なくありません。
従来、ワキガや多汗症の治療といえば、皮膚を切開する手術が主流でした。しかし、傷跡が残る、ダウンタイムが長い、入院が必要になるなど、治療に踏み切れない理由も多くありました。そんな中、2018年に厚生労働省から正式に承認を受けた「ミラドライ」は、メスを使わずにワキガ・多汗症を治療できる画期的な方法として注目を集めています。
本記事では、渋谷エリアでミラドライ治療を検討されている方に向けて、治療の仕組みから効果、副作用、他の治療法との比較まで、専門的な知識をわかりやすく解説します。ワキガや多汗症でお悩みの方が正しい情報をもとに治療を選択できるよう、日本皮膚科学会のガイドラインなど信頼性の高い情報源に基づいてお伝えします。
目次
- ワキガ(腋臭症)と多汗症の基礎知識
- ワキガと多汗症の違いを理解する
- なぜワキガや多汗症は起こるのか
- ミラドライとはどのような治療か
- ミラドライの治療メカニズム
- ミラドライ治療の流れ
- ミラドライの効果と持続期間
- ミラドライ治療の副作用とダウンタイム
- ミラドライと他の治療法の比較
- ミラドライ治療を受ける前に知っておきたいこと
- ミラドライ治療に関するよくある質問
- 渋谷でミラドライ治療を受けるメリット
- まとめ
1. ワキガ(腋臭症)と多汗症の基礎知識
ワキガや多汗症は、日常生活に大きな影響を与える症状です。しかし、多くの方がこれらを「体質だから仕方ない」と諦めてしまい、適切な治療を受けていないのが現状です。
日本皮膚科学会の「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」によると、原発性腋窩多汗症(ワキ汗)の日本国内における有病率は約5.8%と推測されており、これは実に531万人以上の患者さんがいる計算になります。また、2020年に日本国内で実施されたWebアンケート調査では、原発性局所多汗症の有病率は10.0%にのぼるという結果も報告されています。
一方で、医療機関への受診経験率はわずか4.6%、受診継続率に至っては0.7%という低さです。つまり、多くの方が症状に悩みながらも、医療機関を受診せずに市販の制汗剤で対処したり、何もせずに我慢したりしているのです。
ワキガや多汗症は決して珍しい症状ではありません。そして近年では、ミラドライをはじめとする効果的な治療法が登場し、症状を大幅に改善できるようになっています。まずは、ワキガと多汗症についての基本的な知識を身につけることから始めましょう。
2. ワキガと多汗症の違いを理解する
ワキガと多汗症は混同されがちですが、実は原因となる汗腺が異なる別の症状です。正確に理解することで、自分に合った治療法を選択しやすくなります。
人間の身体には2種類の汗腺があります。一つは「エクリン汗腺」、もう一つは「アポクリン汗腺」です。
エクリン汗腺は全身のほぼすべての皮膚に分布しており、主に体温調節を目的として汗を分泌します。エクリン汗腺から出る汗は98%以上が水分で、残りはごくわずかな塩分などです。このため、エクリン汗腺からの汗は基本的に無臭で、蒸発しやすいという特徴があります。多汗症は、このエクリン汗腺が過剰に活動することで起こります。
一方、アポクリン汗腺はワキの下、外耳道、乳房周辺、外陰部、肛門周辺など、身体の特定の部位にのみ存在します。アポクリン汗腺から分泌される汗には、脂肪酸、タンパク質、脂質、尿素、アンモニアなどが含まれており、粘り気のある性質を持っています。この汗が皮膚表面の常在菌によって分解されることで、ワキガ特有の強いニオイが発生します。
日本皮膚科学会の公式情報によると、ワキガのニオイの元となる物質は「3メチル2へキセノイン酸」であり、これはアポクリン汗腺から分泌された汗に含まれる脂肪酸が皮膚の常在菌(主にブドウ球菌)によって分解されることで生成されます。
つまり、多汗症が「汗の量」の問題であるのに対し、ワキガは「汗のニオイ」の問題であり、それぞれ原因となる汗腺が異なります。ただし、臨床の現場では両方の症状を合併している方も多く見られます。
3. なぜワキガや多汗症は起こるのか
ワキガや多汗症の原因を理解することは、治療法を選択する上で重要です。
ワキガ(腋臭症)の原因
ワキガは主に遺伝的な要因によって発症します。アポクリン汗腺の数や大きさは生まれつき決まっており、ワキガ体質の方はそうでない方と比べてアポクリン汗腺の数が多く、サイズも大きい傾向があります。
日本皮膚科学会の情報によれば、ワキガは顕性(優性)遺伝の形質であり、親子ともに症状が現れることが多いとされています。両親ともにワキガ体質である場合は約80%、片方の親がワキガ体質である場合は約50%の確率で子どもに遺伝するといわれています。
また、ワキガの発症には性ホルモンも関与しています。アポクリン汗腺は思春期(第二次性徴期)になると性ホルモンの影響で活発に活動を始めるため、ワキガの症状は思春期以降に現れることがほとんどです。男性では中学生から高校生頃、女性では小学校高学年から中学生頃に発症することが多いとされています。
興味深いことに、ワキガの有病率には人種差があります。白人や黒人ではほとんどの方に程度の差はあれワキガがありますが、日本人をはじめとする黄色人種ではその頻度は約10%程度です。これは、16番染色体にあるABCC11遺伝子の違いによるものと考えられています。この遺伝子はワキガだけでなく、耳垢のタイプ(湿型か乾型か)とも関連しており、ワキガ体質の方は耳垢が湿っている傾向があります。
多汗症(原発性腋窩多汗症)の原因
多汗症は、特定の基礎疾患がなく過剰な発汗が生じる状態を指します。日本皮膚科学会の「原発性局所多汗症診療ガイドライン」では、以下の診断基準が示されています。
「局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6か月以上認められ、かつ以下の6項目のうち2項目以上を満たす場合」を原発性局所多汗症と診断します。
その6項目とは、(1)最初に症状が出たのが25歳以下、(2)左右対称性に発汗がみられる、(3)睡眠中は発汗が止まっている、(4)1週間に1回以上の頻度で多汗のエピソードがある、(5)家族歴がある、(6)日常生活に支障をきたす、です。
多汗症の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、交感神経の過剰な活動が関与していると考えられています。緊張やストレス、暑さなどの刺激に対して交感神経が過敏に反応し、通常よりも大量の汗を分泌してしまうのです。
4. ミラドライとはどのような治療か
ミラドライは、マイクロ波(電磁波)を使用してワキの汗腺を破壊する、切らない治療法です。2018年6月4日に厚生労働省から「重度の原発性腋窩多汗症を治療することを目的とした医療機器」として正式に製造販売承認を取得しました(医療機器承認番号:23000BZX00161000)。
ミラドライは、アメリカのMiramar Labs社が2006年に開発し、2010年に日本に上陸した比較的新しい治療機器です。開発国であるアメリカでは、FDA(アメリカ食品医薬品局)から腋窩多汗症、腋臭症(ワキガ)、減毛の3つの適応で承認を取得しています。なお、日本国内では腋窩多汗症のみが薬事承認の対象となっています。
ワキ汗治療機器において、日本の厚生労働省とアメリカのFDAの両方から認可を得ているのはミラドライだけです。この事実は、ミラドライの効果と安全性が厳しい審査基準をクリアして正式に認められていることを意味します。
ミラドライは2009年頃からアメリカで治療が開始され、現在では世界40か国以上で累計20万症例以上の治療実績があります。日本国内でも15,000件以上の治療が行われており、その効果と安全性は多くの臨床データによって裏付けられています。
5. ミラドライの治療メカニズム
ミラドライは5.8GHzのマイクロ波(電磁波)を照射して、ワキの汗腺を熱によって破壊する治療です。マイクロ波は電子レンジでも使用されている技術で、水分に選択的に吸収されて熱を発生させるという特性を持っています。
汗腺は水分を多く含む組織であるため、マイクロ波のエネルギーが効率よく吸収され、熱によって破壊されます。ミラドライでは、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の両方が存在する真皮深層から皮下組織浅層(皮膚表面から2〜3mm程度の深さ)をターゲットとして、汗腺を焼灼・凝固させます。
ミラドライの優れた点は、汗腺だけを選択的に治療できる設計になっていることです。マイクロ波のエネルギーは皮膚表面から汗腺が存在する深さまで到達しますが、皮膚表面と真皮上層は「ハイドロセラミック・クーリングシステム」という冷却装置によって保護されます。このシステムにより、皮膚表面は常に冷却されているため、火傷などのリスクが軽減されています。
また、熱エネルギーが汗腺より深い皮下脂肪層に及ばないよう、照射の深さと幅もコントロールされています。皮下脂肪層は熱エネルギーに対する抵抗が高いため、汗腺が存在するエリアに熱が集中し、それより深い組織へのダメージは最小限に抑えられる仕組みになっています。
重要なのは、一度ミラドライで破壊された汗腺は再生しないという点です。エクリン汗腺もアポクリン汗腺も、いったん熱によって破壊されると復活することはありません。そのため、ミラドライの治療効果は半永久的に持続すると考えられています。
6. ミラドライ治療の流れ
ミラドライ治療は、カウンセリングから施術完了まで通常1日で終わります。入院の必要はなく、施術当日から日常生活に戻ることが可能です。ここでは、一般的な治療の流れをご紹介します。
カウンセリングと診察
まず、医師によるカウンセリングと診察を行います。ワキガや多汗症の症状の程度を確認し、患者さんの希望や生活スタイルを聞き取った上で、ミラドライ治療が適しているかどうかを判断します。
多汗症の診断には「多汗症重症度スケール(HDSS)」が用いられることがあります。これは発汗の程度と日常生活への影響を4段階で評価する指標です。スコア3(発汗をほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある)またはスコア4(発汗をまったく我慢できず、日常生活に常に支障がある)の方が、ミラドライ治療の主な対象となります。
施術当日の準備
施術当日は、事前にワキの毛を剃毛していただきます。また、ワキを清潔な状態にし、制汗剤やデオドラントスプレーなどは使用せずに来院していただきます。
施術当日はまず、治療する範囲をマーキングします。これはミラドライ専用のテンプレートを使用して行い、照射漏れなく均一に治療できるようにするための重要な工程です。
局所麻酔
マーキングが完了したら、局所麻酔を行います。注射による麻酔となりますので、針のチクッとした痛みを感じることがありますが、麻酔が効いてからの施術中は痛みをほとんど感じません。
麻酔の方法は非常に重要で、適切に行うことでミラドライの効果を最大限に引き出すことができます。麻酔薬の濃度や注入量は、患者さんの皮膚の状態やワキの面積によって調整されます。
ミラドライ照射
局所麻酔が効いたことを確認してから、ミラドライによるマイクロ波照射を開始します。ミラドライの機器をワキに当て、皮膚を吸引しながらマイクロ波を照射していきます。
照射の流れは、皮膚の吸引→冷却→マイクロ波照射→再度冷却という順序で行われます。この工程をマーキングした範囲全体に対して繰り返していきます。
施術時間は片側約30分、両ワキで約60〜90分程度です。施術中は冷却システムが作動しているため、熱さを感じることはほとんどありません。
クーリングと終了
照射が完了したら、アイスパックでワキを冷却します。これにより、施術後の腫れや痛みを軽減することができます。
その後、術後に服用する痛み止めなどの薬についての説明と、生活上の注意事項をお伝えして、施術は終了となります。基本的に術後の通院は必要ありませんが、気になることがあればいつでも相談できる体制を整えているクリニックがほとんどです。
7. ミラドライの効果と持続期間
ミラドライの効果と持続期間について、臨床データに基づいてご説明します。
効果の発現
多くの方が、ミラドライ治療後すぐに汗やニオイの減少を実感されます。施術直後から翌日〜3日程度で効果を感じ始める方がほとんどです。
ミラドライの臨床試験では、「多汗症重症度スケール(HDSS)」を用いて効果が評価されました。HDSS スコア3または4に該当する原発性腋窩多汗症患者31名を対象とした試験では、治療後に腋の発汗が抑制され、日常生活の支障が改善されたと報告した患者さんは90.3%にのぼり、この効果は治療から1年経過した後も持続していることが確認されました。また、全体的な患者満足度も90%以上と非常に高い結果が得られています。
汗腺の破壊率
ミラドライは1回の施術で、全体の約70〜80%の汗腺を破壊することができるとされています。つまり、ワキガ・多汗症の症状が70〜80%程度改善することが期待できます。
ただし、100%すべての汗腺を1回の治療で破壊できるわけではありません。これは、汗腺の深さや分布に個人差があることや、技術的な限界によるものです。
効果の持続期間
ミラドライで一度破壊された汗腺は再生しないため、治療効果は半永久的に持続します。これは、ボツリヌス毒素注射(ボトックス注射)のような一時的な効果ではなく、根本的な改善が期待できることを意味します。
ただし、施術後の経過について理解しておくべき点があります。
施術直後は、破壊されなかった汗腺もマイクロ波の熱によってダメージを受け、一時的に機能が停止します。そのため、施術直後は汗やニオイがほとんど感じられなくなることが多いです。
しかし、数か月〜半年程度経過すると、破壊されなかった汗腺がダメージから回復し、再び活動を再開します。その結果、「施術直後より汗が出てきた」「ニオイが少し気になるようになった」と感じる方もいらっしゃいます。
これは「再発」ではありません。ミラドライで破壊された汗腺は元に戻らないため、施術前と比較すれば確実に症状は改善しています。施術後半年程度で効果が安定し、それ以降は70〜80%改善した状態が維持されると考えてください。
2回目の治療について
1回の治療で十分な効果を実感できる方がほとんどですが、より高い効果を希望される場合は2回目の治療も可能です。日本では約10%の方が2回目の治療を受けているというデータがあります。
2回目の治療を行う場合は、1回目から6か月以上の間隔を空けることが推奨されています。
8. ミラドライ治療の副作用とダウンタイム
ミラドライは安全性の高い治療ですが、副作用がまったくないわけではありません。治療を検討される方は、起こりうる副作用とダウンタイムについて正しく理解しておくことが大切です。
一般的な副作用
ミラドライ治療後に多くの方に見られる一時的な副作用には、以下のようなものがあります。
施術部位の腫れは、ほとんどの方に見られる症状です。マイクロ波による熱と局所麻酔の影響で、ワキが腫れぼったくなります。腫れのピークは施術当日の夜から翌日にかけてで、その後は徐々に改善していきます。目立つ腫れは通常1週間程度で落ち着きます。
痛みも一般的な副作用です。局所麻酔が切れる施術後3〜4時間頃から、ヒリヒリするような痛みやズキズキとした鈍い痛みを感じることがあります。痛みの程度には個人差が大きく、痛み止めを1錠飲めば十分という方もいれば、施術当日の夜はシャワーを浴びるのも辛いほど痛いという方もいます。通常、強い痛みは数日で軽減します。
赤みや内出血も見られることがあります。ミラドライの吸引による一時的な赤みや、麻酔注射による内出血が起こる場合があります。これらは通常、1〜2週間程度で自然に消えていきます。
皮膚のつっぱり感やしびれを感じる方もいます。施術部位の皮膚がつっぱる感じや、ワキ周辺の感覚が鈍くなることがあります。これは、汗腺の周囲にある感覚神経の末端もマイクロ波の影響を受けるためです。末梢神経は再生するため、通常3か月前後で感覚は回復します。
稀に見られる副作用
頻度は低いですが、以下のような副作用が見られることもあります。
皮膚の硬化や隆起として、治療部位の皮膚が一時的に硬くなったり、しこりのようなものができたりすることがあります。これは組織の回復過程で起こる現象で、通常数週間〜数か月で改善します。
腕や指先のしびれとして、まれにワキから腕、指先にかけてしびれや違和感を感じることがあります。これも神経への一時的な影響によるもので、通常は数週間から数か月で回復します。
小さな水ぶくれが施術部位にできることがまれにあります。
重要なのは、現時点でミラドライの副作用として一生後遺症が残るような重篤なものは報告されていないということです。上記の副作用はすべて一時的なもので、時間の経過とともに改善します。
ダウンタイムの目安
ダウンタイムとは、施術後に痛みや腫れなどの症状が現れ、それが回復して普段通りの生活に戻るまでの期間を指します。
ミラドライのダウンタイムは、一般的に施術翌日から1週間程度とされています。多くの方が施術翌日から仕事に復帰されていますが、腫れや痛みの程度には個人差があるため、可能であれば施術翌日は休みを取っておくと安心です。
施術当日の夜が痛みや腫れのピークとなることが多いため、アイスパックでしっかり冷やすことが推奨されています。また、施術当日は入浴(湯船に浸かること)を避け、シャワーのみにしてください。血行が促進されると腫れや痛みが悪化する可能性があります。
激しい運動は1週間程度控えることが望ましいです。また、飛行機に乗るなど気圧の変動がある行動も、施術後1週間程度は避けたほうがよいでしょう。
1か月後には痛みや腫れはほとんどなくなり、日常生活に支障をきたすことはありません。半年後には施術の痕もほとんど分からなくなります。
9. ミラドライと他の治療法の比較
ワキガや多汗症の治療法はミラドライだけではありません。それぞれの治療法の特徴を理解し、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
ボツリヌス毒素注射(ボトックス注射)
ボツリヌス毒素注射は、ボツリヌス菌が産生する毒素を利用して汗腺の活動を一時的に抑制する治療法です。日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨されている治療法の一つで、原発性腋窩多汗症に対しては保険適用となっています。
この治療法のメリットは、注射だけで手軽に受けられること、ダウンタイムがほとんどないことです。しかし、効果の持続期間は4〜6か月程度と限られており、効果を維持するためには定期的に繰り返し注射を受ける必要があります。
長期的に見ると、毎年1〜2回の注射を継続する費用と手間がかかることになります。また、ボツリヌス毒素注射は主にエクリン汗腺に作用するため、多汗症には効果がありますが、ワキガ(ニオイ)への効果は限定的です。
外用薬(塗り薬)
2020年に「エクロックゲル」という外用抗コリン薬が発売され、原発性腋窩多汗症の治療選択肢が広がりました。毎日ワキに塗るだけという手軽さがあり、12歳から使用可能です。保険適用であるため、費用負担も比較的少なく済みます。
臨床試験では、約80%の方で発汗が抑えられ、約60%の方が日常生活に支障がなくなる程度まで改善したという結果が報告されています。
ただし、外用薬は使用を継続する必要があり、やめると症状が戻ります。また、ワキガ(ニオイ)への効果については、多汗症ほど確立されていません。
剪除法(手術)
剪除法は、ワキの皮膚を切開し、皮膚を反転させてアポクリン汗腺を直接目視しながらハサミで切除する手術です。日本皮膚科学会のガイドラインでは、腋臭症(ワキガ)に対する最も確実な治療法として位置づけられており、保険適用となっています。
アポクリン汗腺を直接取り除くため、ワキガに対する効果は非常に高く、手術が成功すれば根治が期待できます。保険適用で3割負担の場合、両ワキで約5万円程度という費用面でのメリットもあります。
一方で、デメリットも存在します。まず、皮膚を切開するため、ワキに傷跡が残ります。また、術後は患部の固定・圧迫が必要で、数日から数週間は安静が求められます。入院が必要になる場合もあります。さらに、エクリン汗腺は非常に小さいため手作業で取り除くことが難しく、多汗症への効果は限定的です。
ミラドライの位置づけ
上記の治療法と比較したとき、ミラドライには以下のような特徴があります。
メスを使わないため傷跡が残らず、ダウンタイムが短い点が大きなメリットです。翌日から日常生活に戻ることができ、入院も不要です。
また、エクリン汗腺とアポクリン汗腺の両方を同時に破壊できるため、多汗症とワキガの両方に効果があります。そして、破壊された汗腺は再生しないため、効果は半永久的に持続します。ボトックス注射のように繰り返し治療を受ける必要がありません。
一方、デメリットとしては、保険適用外の自由診療であるため費用が高額になることが挙げられます。一般的な相場は20万円〜50万円程度です。また、1回の治療で破壊できる汗腺は70〜80%程度であり、100%の効果を期待することはできません。
10. ミラドライ治療を受ける前に知っておきたいこと
ミラドライ治療を検討されている方に、事前に知っておいていただきたいポイントをまとめました。
治療を受けられない方
以下に該当する方は、ミラドライ治療を受けることができません。事前の診察で確認されます。
心臓ペースメーカーや他の電子機器が体内に埋め込まれている方は治療を受けられません。ミラドライが照射するマイクロ波が電子機器に影響を与える可能性があるためです。
ワキの近くに金属製のインプラントがある方や、ワキに刺青がある方も治療対象外となります。
ワキの下に悪性腫瘍や悪性皮膚腫瘍がある方も治療を受けることができません。
過去に局所麻酔で具合が悪くなったことがある方は、事前に医師に相談してください。
妊娠中や授乳中の方についても、安全性が確立されていないため治療は控えていただいています。
クリニック選びのポイント
「ミラドライはどこで受けても同じ」というわけではありません。治療効果と副作用の程度は、施術を行うクリニックや医師の技術・経験によって大きく異なります。
適切な照射出力の設定、正確なマーキング、適切な麻酔方法など、さまざまな要素がミラドライの効果を左右します。経験豊富なクリニックでは、これらの要素を患者さん一人ひとりの状態に合わせて最適化し、効果を最大限に引き出しながら副作用を最小限に抑える施術を行います。
クリニックを選ぶ際には、ミラドライの施術実績、医師の専門性と経験、カウンセリングの丁寧さ、アフターフォローの体制などを確認することをお勧めします。複数のクリニックでカウンセリングを受け、比較検討するのも良い方法です。
費用について
ミラドライは保険適用外の自由診療であるため、費用はクリニックによって異なります。一般的な相場は20万円〜50万円程度ですが、照射範囲や出力設定、施術方法(シングル照射かダブル照射か)などによっても変わります。
費用だけで判断するのではなく、治療内容やアフターケアの充実度も含めて総合的に検討することが大切です。また、分割払いやローンに対応しているクリニックも多いので、支払い方法についても確認しておくとよいでしょう。

11. ミラドライ治療に関するよくある質問
ミラドライ治療について、患者さんからよくいただく質問とその回答をまとめました。
局所麻酔を行ってから施術するため、マイクロ波照射中の痛みはほとんどありません。ただし、麻酔の注射時にチクッとした痛みを感じることがあります。痛みに敏感な方には、笑気麻酔を併用するなどの対応をしているクリニックもあります。
基本的には1回の治療で十分な効果を実感できる方がほとんどです。多くのクリニックでは、1回目の治療で高い効果を出すことを目指して、広範囲かつ適切な出力で照射を行っています。
ただし、より高い効果を希望される場合や、1回目の治療で効果が十分でなかった場合は、2回目の治療を受けることも可能です。その場合は、1回目から6か月以上の間隔を空けます。
ワキ毛への影響はありますか
ミラドライにはワキ毛の減毛効果もあります。これは、アポクリン汗腺が毛根の近くに存在するため、マイクロ波照射時に毛根もダメージを受けるためです。
ただし、脱毛効果が得られるのはワキ毛全体の約60%程度とされており、完全に無毛になるわけではありません。また、一時的に毛が薄くなっても、時間が経つと復活してくるケースもあります。
他の部位の汗が増えることはありますか
ミラドライの施術が原因で、ワキ以外の部位(手のひら、足の裏、顔など)の発汗量が増える「代償性発汗」が起こることは基本的にありません。
代償性発汗は、交感神経を切除する手術(ETS手術)などで報告されることがありますが、ミラドライは汗腺を局所的に破壊するだけで神経系には影響を与えないため、このような現象は起こりにくいと考えられています。
以前にワキガの治療を受けていても治療できますか
過去に手術やボトックス注射などのワキガ・多汗症治療を受けていても、ミラドライ治療を受けることは可能です。ただし、以前の治療の内容や術後の状態によっては、治療が難しい場合もあります。まずはカウンセリングで過去の治療歴をお伝えください。
子どもでも治療を受けられますか
ミラドライは基本的に成人を対象とした治療です。アポクリン汗腺が十分に発達する前に治療を行うと、成長後に再び症状が出てくる可能性があります。
一般的に、女性は14歳以上、男性は16歳以上であれば治療が可能とされていますが、思春期のお子さんの場合は、成長の程度や症状の重さを考慮して、医師と相談の上で治療のタイミングを決めることをお勧めします。
12. 渋谷でミラドライ治療を受けるメリット
渋谷は東京の主要ターミナルの一つであり、JR各線、東京メトロ、東急線、京王線など複数の路線が乗り入れています。交通アクセスの良さから、渋谷区内だけでなく、東京都内全域や近県からも通いやすい立地です。
渋谷エリアには美容皮膚科や形成外科が多く集まっており、ミラドライ治療を提供しているクリニックも複数あります。競争が活発なエリアだからこそ、各クリニックが技術の向上やサービスの充実に力を入れており、患者さんにとって選択肢が豊富であることがメリットです。
また、渋谷は若い世代が多く集まる街であり、ワキガや多汗症に悩む若年層の患者さんも多くいらっしゃいます。そのため、渋谷のクリニックには若い患者さんへの対応経験が豊富な医師・スタッフが揃っていることが多く、初めての美容医療でも相談しやすい雰囲気があります。
仕事帰りや学校帰りに通いやすいという点も、渋谷で治療を受けるメリットの一つです。ミラドライはダウンタイムが短い治療ですが、それでも施術当日や翌日は多少の腫れや痛みがあります。アクセスの良い渋谷であれば、施術後もスムーズに帰宅でき、万が一気になることがあった場合の再来院も便利です。
13. まとめ
ワキガや多汗症は、決して珍しい症状ではありません。しかし、ニオイや汗に関する悩みはデリケートな問題であり、一人で抱え込んでしまう方も少なくありません。
ミラドライは、2018年に厚生労働省から承認を受けた、切らないワキガ・多汗症治療です。マイクロ波を照射してエクリン汗腺とアポクリン汗腺の両方を破壊することで、汗もニオイも同時に改善することができます。
従来の手術と比較して、傷跡が残らない、ダウンタイムが短い、入院が不要といったメリットがあり、忙しい現代人にとって受けやすい治療法です。また、破壊された汗腺は再生しないため、効果は半永久的に持続します。
一方で、保険適用外であるため費用が高額になること、1回の治療で100%の効果は得られないことなど、デメリットも存在します。治療を検討される際は、これらの点も含めて医師としっかり相談し、自分に合った治療法かどうかを判断することが大切です。
渋谷はアクセスが良く、ミラドライ治療を提供するクリニックも複数あります。まずはカウンセリングを受けて、ご自身の症状や希望に合った治療プランを相談してみてはいかがでしょうか。
ワキガや多汗症の悩みから解放され、自信を持って毎日を過ごせるようになることを願っています。
参考文献
- 原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版(日本皮膚科学会雑誌)
- 汗の病気―多汗症と無汗症―Q&A(日本皮膚科学会)
- ワキガの悩みとさようなら!今すぐ試せるケア方法(済生会)
- 国内初 切らないワキ汗治療器「miraDry®システム」薬事承認取得に関するご案内(株式会社ジェイメック プレスリリース)
- ワキガ(腋臭症)の治療〜ニオイの診断と手術〜(日本医科大学武蔵小杉病院 形成外科)
- (旧版)原発性局所多汗症診療ガイドライン 2015年改訂版(Mindsガイドラインライブラリ)
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務