はじめに
妊娠中の定期健診で「妊娠糖尿病の疑いがあります」と言われ、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。妊娠糖尿病は決して珍しい病気ではなく、現在では妊婦さんの約7〜12%が診断されています。最も重要なのは、適切な食事管理によって血糖値をコントロールすることで、母体と赤ちゃんの健康を守ることができるということです。
この記事では、アイシークリニック渋谷院が、妊娠糖尿病の基礎知識から、具体的な食事療法、実践的なメニュー例まで、医学的根拠に基づいた情報を分かりやすく解説します。
妊娠糖尿病とは何か
妊娠糖尿病の定義
妊娠糖尿病(Gestational Diabetes Mellitus: GDM)とは、妊娠中にはじめて発見または発症した、糖尿病には至らない糖代謝異常のことを指します。日本産科婦人科学会、日本糖尿病学会、日本糖尿病・妊娠学会の三学会が共同で定めた定義によると、「妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病に至っていない耐糖能異常」とされています。
重要なのは、妊娠前から糖尿病があった場合(糖尿病合併妊娠)とは区別されるという点です。妊娠糖尿病は多くの場合、出産後には血糖値が正常に戻りますが、将来的な糖尿病リスクが高まることが知られています。
妊娠糖尿病が起こるメカニズム
妊娠中は、胎盤からさまざまなホルモンが分泌されます。これらのホルモン、特にヒト胎盤性ラクトーゲン(HPL)などは、赤ちゃんに十分な栄養を送るために血糖値を上げる働きをします。しかし、この過程で血糖値を下げる働きをするインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が生じます。
通常、膵臓からのインスリン分泌が増えることでこの変化に対応できますが、もともとインスリンの働きが弱めの体質の方や、膵臓のインスリン分泌能力に限界がある方では、血糖値のコントロールがうまくいかなくなり、妊娠糖尿病を発症することがあります。
診断基準と検査方法
妊娠糖尿病の診断には、75g経口ブドウ糖負荷試験(75g OGTT)が用いられます。この検査は、妊娠初期から中期(特に24〜28週)にかけて実施されることが一般的です。
診断基準は以下のいずれか1項目以上を満たす場合とされています:
- 空腹時血糖値: 92mg/dL以上
- 負荷後1時間値: 180mg/dL以上
- 負荷後2時間値: 153mg/dL以上
多くの場合、妊婦さん本人に自覚症状はほとんどありません。そのため、定期的な妊婦健診でのスクリーニングが非常に重要です。
妊娠糖尿病になりやすい人の特徴
以下のような因子を持つ方は、妊娠糖尿病のリスクが高いとされています:
- 35歳以上の高齢出産
- BMI 25以上の肥満
- 家族(特に両親や兄弟)に糖尿病患者がいる
- 過去の妊娠で妊娠糖尿病の既往がある
- 巨大児(出生体重4,000g以上)を出産したことがある
- 原因不明の流産や早産の経験がある
- 羊水過多を指摘されたことがある
ただし、これらの因子がなくても妊娠糖尿病になる可能性はありますので、すべての妊婦さんが検査を受けることが推奨されています。
妊娠糖尿病が母体と胎児に及ぼす影響
母体への影響
妊娠糖尿病を適切に管理しないと、母体にさまざまな合併症のリスクが生じます。
妊娠高血圧症候群: 血糖値が高い状態が続くと、妊娠高血圧症候群を合併しやすくなります。これにより、母体の腎臓や肝臓に負担がかかり、重症化すると母子ともに危険な状態になることがあります。
羊水過多: 高血糖により胎児の尿量が増え、羊水が過剰に増える羊水過多が起こることがあります。これは早産のリスクを高めます。
帝王切開率の増加: 後述する巨大児のリスクが高まることで、経腟分娩が困難になり、帝王切開が必要となる可能性が高まります。
将来の糖尿病リスク: 最も重要な点として、妊娠糖尿病を経験した女性は、出産後5〜10年以内に2型糖尿病を発症するリスクが高くなることが報告されています。そのため、産後も継続的な健康管理が必要です。
胎児・新生児への影響
母体の高血糖は、胎盤を通じて胎児にも影響を及ぼします。
巨大児: 胎盤を通して過剰な糖分が赤ちゃんに送られると、赤ちゃんの体重が増えすぎて巨大児(出生体重4,000g以上)になることがあります。これにより難産になるリスクが高まり、分娩時に赤ちゃんが産道で肩が引っかかる肩甲難産などの合併症が起こる可能性があります。
新生児低血糖: 母体の高血糖に対応するため、胎児期に赤ちゃんの膵臓からインスリンが過剰に分泌されています。出生後、母体からの糖供給が突然途絶えると、過剰なインスリンにより赤ちゃんが低血糖状態になることがあります。新生児低血糖は、適切に治療されないと脳に障害を残す可能性があります。
呼吸障害: 妊娠糖尿病の赤ちゃんは、肺の成熟が遅れることがあり、出生後に呼吸窮迫症候群などの呼吸障害を起こすリスクが高まります。
将来の健康リスク: 妊娠糖尿病の母親から生まれた子どもは、将来的に肥満やメタボリックシンドローム、2型糖尿病を発症するリスクが高いことが報告されています。
食事療法の重要性と基本原則
なぜ食事療法が治療の中心なのか
妊娠糖尿病の治療において、食事療法は最も基本的かつ重要な治療法です。妊娠中は、薬物療法の選択肢が限られており、経口血糖降下薬は原則として使用できません。また、激しい運動も妊娠中は制限されるため、食事による血糖コントロールが治療の中心となります。
食事療法といっても、単なる「食事制限」ではありません。むしろ、赤ちゃんの発育に必要な栄養をしっかりと摂りながら、血糖値の急激な上昇を防ぐ食べ方を心がけることが目的です。日本糖尿病・妊娠学会によると、妊娠中の理想的な食事療法は以下の3つの条件を満たす必要があります:
- 母体と胎児がともに健全に妊娠を維持するのに必要なエネルギーを供給すること
- 食後の高血糖を起こさないこと
- 空腹時のケトン体産生を亢進させないこと
血糖コントロールの目標値
日本産科婦人科学会が推奨する妊娠糖尿病の血糖コントロール目標は以下の通りです:
目標①: 空腹時血糖値95mg/dL未満 かつ 食後1時間値140mg/dL未満
または
目標②: 空腹時血糖値95mg/dL未満 かつ 食後2時間値120mg/dL未満
この目標値を達成することで、母体と胎児の合併症リスクを大幅に減らすことができます。
1日の摂取エネルギー量の計算方法
標準体重と必要エネルギー量の算出
妊娠糖尿病の食事療法では、まず自分に適した1日の摂取エネルギー量を知ることが重要です。
ステップ1: 標準体重を計算する
標準体重(kg) = 身長(m) × 身長(m) × 22
計算例: 身長160cmの場合
- 1.6 × 1.6 × 22 = 56.32kg
ステップ2: 身体活動量を考慮する
次に、日頃の活動量に応じたエネルギー係数を掛けます。
| 活動レベル | 内容 | エネルギー係数 |
|---|---|---|
| 軽度 | デスクワーク中心、家事が主 | 30 |
| 中等度 | 立ち仕事が多い、外回りの営業 | 35 |
| 重度 | 力仕事が中心、激しい運動習慣 | 40 |
基本必要量(kcal) = 標準体重(kg) × エネルギー係数
計算例: 標準体重56.32kg、軽度活動の場合
- 56.32 × 30 = 1,690kcal
ステップ3: 妊娠週数による付加量を加える
妊娠の時期によって、赤ちゃんの成長と母体の変化に必要なエネルギーが異なります。
| 妊娠時期 | 付加量 |
|---|---|
| 妊娠初期(〜13週) | +50kcal |
| 妊娠中期(14〜27週) | +250kcal |
| 妊娠後期(28週〜) | +450kcal |
ただし重要な注意点: BMI 25以上の方(肥満)は、週数に関わらず付加量は加えません。エネルギー制限が必要なためです。
最終計算例: 標準体重56.32kg、軽度活動、妊娠後期(28週以降)の場合
- 1,690kcal + 450kcal = 2,140kcal/日
管理栄養士との相談が大切
上記の計算はあくまで目安です。実際には、個々の体格、活動量、妊娠経過、血糖値の推移などを総合的に判断する必要があります。必ず医療機関で医師や管理栄養士の指導を受けて、自分に適したエネルギー量を設定してもらいましょう。
食事の基本ルール
栄養バランスの黄金比
妊娠糖尿病の食事療法では、1日の総摂取エネルギーのうち、以下のような栄養バランスが推奨されています:
- 炭水化物: 50〜60%
- たんぱく質: 20%以下
- 脂質: 20〜30%
炭水化物について
炭水化物は血糖値を上げる主な栄養素ですが、極端に制限すると母体がエネルギー不足になり、ケトン体が過剰に産生されて赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性があります。適切な量の炭水化物を、血糖値が上がりにくい方法で摂取することが重要です。
たんぱく質について
肉、魚、卵、大豆製品などから良質なたんぱく質を摂取しましょう。たんぱく質は筋肉や臓器、赤ちゃんの体を作る重要な栄養素です。ただし、腎機能に問題がある場合は制限が必要なこともあるため、医師に確認してください。
脂質について
脂質は全体の20〜30%を目標とします。ただし、25%を超える場合は、バターや肉の脂身などの飽和脂肪酸を減らし、魚や植物油に含まれる不飽和脂肪酸を増やすように工夫しましょう。オメガ3脂肪酸を豊富に含む青魚(サバ、サンマ、イワシなど)は特におすすめです。
主食・主菜・副菜のバランス
1日3回(または分割食の場合は5〜6回)の食事を、主食+主菜+副菜の組み合わせで構成すると、自然と栄養バランスが整います。
- 主食: ごはん、パン、麺類など(炭水化物)
- 主菜: 肉、魚、卵、大豆製品など(たんぱく質)
- 副菜: 野菜、海藻、きのこ類など(食物繊維、ビタミン、ミネラル)
これに果物や乳製品を適度に組み合わせることで、バランスの取れた食事になります。
食べる順番を意識する「ベジタブルファースト」
同じメニューでも、食べる順番を工夫するだけで血糖値の上昇を緩やかにすることができます。
推奨される食べる順番:
- 野菜・海藻・きのこ類(食物繊維が豊富なもの)
- 肉・魚・卵・大豆製品(たんぱく質)
- ごはん・パン・麺類(炭水化物)
この順番で食べることを「ベジタブルファースト」といいます。食物繊維が糖の吸収を緩やかにし、血糖値の急激な上昇を抑える効果があります。サラダや野菜の煮物などから食べ始める習慣をつけましょう。
よく噛んでゆっくり食べる
早食いは血糖値の急上昇を招きます。一口につき20〜30回噛むことを意識し、1回の食事に20〜30分かけてゆっくり食べるようにしましょう。よく噛むことで満腹中枢が刺激され、食べすぎの予防にもつながります。
分割食(ぶんかつしょく)の活用
妊娠糖尿病の食事療法で特に重要なのが「分割食」という考え方です。
分割食とは
分割食とは、1日の総摂取エネルギー量は変えずに、食事回数を5〜6回に分けて少しずつ食べる方法です。1回の食事量を減らすことで、食後の血糖値の急激な上昇を抑えることができます。
分割食の具体例
従来の3回食: 朝食・昼食・夕食
↓
分割食(6回食)の例:
- 朝食(7:00)
- 朝の補食(10:00)
- 昼食(12:30)
- 午後の補食(15:00)
- 夕食(18:00)
- 就寝前の補食(21:00)
補食(間食)は、次の食事から少量を取り分けて食べます。例えば、昼食のごはんを少し減らして、その分を午後の補食として果物やヨーグルトと一緒に食べるなどです。
分割食のメリット
- 食後の血糖値の急激な上昇を防ぐ
- 空腹時間が短くなることで、ケトン体の過剰産生を防ぐ
- 空腹によるストレスが軽減される
- つわりや胃もたれがある時期でも食べやすい
分割食を取り入れる際は、必ず医師や管理栄養士に相談し、自分に適した回数と時間帯について指導を受けましょう。
GI値を意識した食品選び
GI値とは
GI(Glycemic Index:グリセミック・インデックス)とは、食後の血糖値の上昇度を示す指標です。ブドウ糖を摂取した時の血糖値上昇を100として、各食品を相対的に数値化したものです。
- 高GI食品(70以上): 血糖値が急激に上がりやすい
- 中GI食品(56〜69): 血糖値の上昇は中程度
- 低GI食品(55以下): 血糖値の上昇が緩やか
主食の選び方
同じ炭水化物でも、GI値は食品によって大きく異なります。
高GI食品(避けたい主食)
- 食パン(白)、フランスパン: GI 90以上
- 精白米: GI 84
- もち: GI 80
- うどん: GI 85
低〜中GI食品(推奨される主食)
- 玄米: GI 56
- 雑穀米: GI 55
- 全粒粉パン: GI 50
- ライ麦パン: GI 58
- そば: GI 54
- パスタ(全粒粉): GI 50
国立成育医療研究センターの資料によると、白米を玄米や雑穀米に、食パンをライ麦パンに換えるだけで食物繊維の量が大幅に増え、血糖値の上昇を抑えることができます。
具体例:
- 白米1膳(150g): 食物繊維 0.5g
- 玄米1膳(150g): 食物繊維 2.1g(約4倍!)
その他の食品のGI値
野菜類
- じゃがいも: GI 90(高)
- かぼちゃ: GI 65(中)
- にんじん: GI 39(低)
- ほうれん草、ブロッコリー、キャベツ: GI 25以下(低)
果物
- スイカ: GI 72(高)
- バナナ: GI 55(中)
- りんご: GI 36(低)
- いちご: GI 29(低)
甘味料
- 上白糖、グラニュー糖: GI 109(高)
- はちみつ: GI 88(高)
- ラカント(エリスリトール): GI 0(低)
低GI食品を選ぶことは重要ですが、それだけでなく総合的な栄養バランスと適切な量を守ることも忘れないでください。
推奨される食品と避けるべき食品
積極的に摂りたい食品
野菜類(特に緑黄色野菜と葉物野菜)
- ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、アスパラガス
- トマト、ピーマン、なす
- キャベツ、レタス、白菜
- きゅうり、大根
ポイント: 食物繊維が豊富で、ビタミン、ミネラルも補給できます。1日350g以上を目標に、毎食たっぷり食べましょう。
海藻類
- わかめ、昆布、ひじき、もずく、めかぶ
ポイント: 水溶性食物繊維が豊富で、血糖値の上昇を緩やかにします。低カロリーなのも嬉しいポイントです。
きのこ類
- しいたけ、しめじ、えのき、まいたけ、エリンギ
ポイント: 食物繊維が豊富で、ビタミンDも含まれます。料理のかさ増しにも最適です。
豆類・大豆製品
- 納豆、豆腐、厚揚げ、油揚げ
- 枝豆、大豆、ひよこ豆
ポイント: 良質な植物性たんぱく質と食物繊維が摂れます。イソフラボンなど女性に嬉しい栄養素も豊富です。
魚類
- サバ、サンマ、イワシ、アジなどの青魚
- 鮭、タラ、カレイなどの白身魚
ポイント: たんぱく質とDHA・EPAなどのオメガ3脂肪酸が豊富です。赤ちゃんの脳の発達にも重要な栄養素です。
乳製品(無糖のもの)
- 牛乳、無糖ヨーグルト、チーズ
ポイント: カルシウムとたんぱく質が摂れます。ただし、加糖タイプは避け、無糖のものを選びましょう。
ナッツ類(無塩・素焼き)
- アーモンド、くるみ、カシューナッツ
ポイント: 良質な脂質、食物繊維、ビタミンEが豊富です。ただしカロリーが高いので、1日ひとつかみ(20g)程度に。
控えめにしたい食品
精製された炭水化物
- 白米、食パン、うどん、白いパスタ
- 菓子パン、クロワッサン
対策: 完全に避ける必要はありませんが、玄米や雑穀米、全粒粉製品に置き換えることを検討しましょう。
でんぷん質の多い野菜
- じゃがいも、さつまいも、里芋、山芋
- かぼちゃ、とうもろこし
対策: これらの野菜は糖質が多いため、食べる量に注意が必要です。主食の一部として考え、ごはんの量を調整しましょう。
加工肉・脂肪の多い肉
- ソーセージ、ハム、ベーコン
- 豚バラ肉、鶏皮、霜降り肉
対策: たんぱく質は重要ですが、脂肪の少ない部位(鶏むね肉、ささみ、豚ヒレ肉など)を選びましょう。
避けるべき食品
砂糖を多く含む食品・飲料
- ケーキ、クッキー、ドーナツ、アイスクリーム
- チョコレート、キャンディー、グミ
- ジュース、炭酸飲料、スポーツドリンク
- 加糖ヨーグルト、加糖練乳
理由: これらは血糖値を急激に上昇させ、適切なコントロールを困難にします。
果物缶詰・ドライフルーツ
- 缶詰のみかん、パイナップル、桃
- レーズン、ドライマンゴー、ドライいちじく
理由: シロップ漬けやドライフルーツは糖分が凝縮されており、血糖値を上げやすくなります。
インスタント食品・ファストフード
- カップラーメン、インスタント焼きそば
- ハンバーガー、フライドポテト、ピザ
理由: 炭水化物と脂質が多く、栄養バランスが偏っています。塩分も多いため妊娠高血圧のリスクも高まります。
アルコール
- ビール、ワイン、日本酒、焼酎、カクテル類
理由: 妊娠中のアルコール摂取は、妊娠糖尿病の有無に関わらず胎児性アルコール症候群のリスクがあるため、絶対に避けてください。
具体的な献立例とレシピ
1日の献立例(分割食6回・約1,800kcal)
朝食(7:00 / 約450kcal)
- 雑穀ごはん 軽く1杯(100g)
- 焼き鮭 1切れ
- ほうれん草のおひたし
- 豆腐とわかめの味噌汁
- 無糖ヨーグルト 1個
朝の補食(10:00 / 約100kcal)
- りんご 1/4個
- アーモンド 5粒
昼食(12:30 / 約550kcal)
- 玄米ごはん 軽く1杯(100g)
- 鶏むね肉の照り焼き
- キャベツとにんじんのコールスロー
- きのこのソテー
- 野菜スープ
午後の補食(15:00 / 約100kcal)
- チーズ 2切れ
- トマト 小1個
夕食(18:00 / 約500kcal)
- 玄米ごはん 軽く1杯(100g)
- サバの味噌煮
- 小松菜とえのきの和え物
- 大根とこんにゃくの煮物
- もずく酢
就寝前の補食(21:00 / 約100kcal)
- 無糖ヨーグルト 1個
- いちご 3〜4粒
簡単でおすすめのレシピ3選
レシピ1: 豆苗と卵のスープ(1人分 約80kcal)
材料:
- 豆苗 1/2パック
- 卵 1個
- 水 300ml
- 中華だし(顆粒) 小さじ1
- 塩・こしょう 少々
作り方:
- 豆苗を洗い、根元を切り落とし、3cm長さに切る
- 卵をボウルに割りほぐし、塩少々を加える
- 鍋に水と中華だしを入れて沸騰させる
- 豆苗を加えて1〜2分煮る
- 再び沸騰したら、溶き卵を箸で少しずつ回し入れ、ふわっと浮いてきたら火を止める
- 塩・こしょうで味を調えて完成
ポイント: 豆苗は食物繊維が豊富で、卵は良質なたんぱく質源です。あっさりしているので食欲がない時にもおすすめです。
レシピ2: きのこと小松菜の和え物(1人分 約50kcal)
材料:
- しめじ 1/2パック(50g)
- 小松菜 2株(100g)
- ポン酢 大さじ1
- すりごま 小さじ1
作り方:
- しめじは石づきを取り、小房に分ける
- 小松菜は洗って4cm長さに切る
- 鍋に湯を沸かし、しめじを1分茹でて取り出す
- 同じ湯で小松菜を30秒茹でて、冷水にとり水気を絞る
- ボウルにしめじと小松菜を入れ、ポン酢とすりごまで和える
- 冷蔵庫で10分ほど冷やすとより美味しい
ポイント: きのこは食物繊維が豊富で低カロリー。小松菜はカルシウムと鉄分が豊富で妊婦さんに最適な食材です。
レシピ3: 鶏むね肉の梅しそ巻き(1人分 約180kcal)
材料:
- 鶏むね肉 100g
- 梅干し 1個
- 大葉 3枚
- 塩・こしょう 少々
- 料理酒 大さじ1
- オリーブオイル 小さじ1
作り方:
- 鶏むね肉は1cm厚さのそぎ切りにし、塩・こしょうをふる
- 梅干しは種を取り除き、包丁でたたいてペースト状にする
- 大葉は洗って水気を切る
- 鶏肉に梅ペーストを薄く塗り、大葉を乗せてくるくると巻く
- フライパンにオリーブオイルを熱し、巻き終わりを下にして鶏肉を並べる
- 中火で焼き色がついたら裏返し、料理酒を加えて蓋をして5分蒸し焼きにする
- 中まで火が通ったら完成
ポイント: 鶏むね肉は高たんぱく・低脂肪でヘルシー。梅干しのクエン酸が疲労回復にも効果的です。大葉の香りで塩分控えめでも美味しく食べられます。
間食(おやつ)の上手な選び方
妊娠糖尿病だからといって、間食を完全に我慢する必要はありません。むしろ、適切な間食(補食)は分割食の一環として推奨されることもあります。大切なのは、何を、いつ、どれくらい食べるかです。
間食の基本ルール
- カロリーは1回100kcal以下を目安に
- 1日の総摂取エネルギーの範囲内で
- 血糖値を上げにくい食品を選ぶ
- 食事の2〜3時間後に食べる
おすすめの間食
乳製品
- 無糖ヨーグルト 100g(約60kcal)
- プレーンヨーグルト+いちご3粒(約80kcal)
- カッテージチーズ 50g(約50kcal)
- 牛乳 コップ1杯200ml(約140kcal)
メリット: カルシウムとたんぱく質が摂れます。骨の健康維持に重要です。
果物(適量)
- りんご 1/4個(約50kcal)
- みかん 1個(約45kcal)
- いちご 5〜6粒(約30kcal)
- キウイ 1個(約50kcal)
メリット: ビタミンCや食物繊維が摂れます。ただし、食べすぎは糖分過多になるので適量を守りましょう。
ナッツ類
- 素焼きアーモンド 10粒(約60kcal)
- 無塩くるみ 3〜4個(約70kcal)
- ミックスナッツ ひとつかみ(約90kcal)
メリット: 良質な脂質、ビタミンE、食物繊維が豊富。噛みごたえがあり満足感が得られます。
野菜スティック
- きゅうり、にんじん、セロリなど(約20kcal)
メリット: 低カロリーで食物繊維とビタミンが摂れます。噛むことで満足感も得られます。
豆腐スイーツ
- 絹ごし豆腐+きなこ(約100kcal)
- 豆腐プリン(手作り・砂糖控えめ)(約80kcal)
メリット: たんぱく質が摂れて、スイーツの満足感も得られます。
避けたい間食
- ケーキ、ドーナツ、クッキーなどの洋菓子
- 大福、どら焼き、まんじゅうなどの和菓子
- スナック菓子、ポテトチップス
- チョコレート、キャンディー
- ジュース、加糖コーヒー飲料
これらは糖分や脂肪分が多く、血糖値を急激に上げてしまうため避けましょう。
甘いものが食べたい時の工夫
どうしても甘いものが食べたくなることもありますよね。そんな時は以下の工夫を試してみてください。
- ラカントなどの糖質ゼロ甘味料を使った手作りスイーツ
- カカオ70%以上の高カカオチョコレート(1〜2かけらのみ)
- 寒天ゼリー(果汁少なめ、ラカントで甘みをつける)
- 無糖ヨーグルト+ラカント+フルーツ少々
適度に息抜きをしながら、上手に血糖コントロールを続けることが大切です。
外食時の注意点とメニュー選び
妊娠糖尿病と診断されても、工夫次第で外食を楽しむことは可能です。大切なのは、メニュー選びと食べ方の工夫です。
外食時の基本ルール
- 定食スタイルを選ぶ(主食+主菜+副菜のバランス)
- 野菜が多いメニューを選ぶ
- 揚げ物や脂っこいものは避ける
- ごはんは少なめ、おかわりはしない
- ベジタブルファーストを実践する
- 単品メニュー(丼、麺類のみ)は避ける
おすすめの外食メニュー
和食
- 焼き魚定食(ごはん少なめ)
- 刺身定食
- 豆腐料理(湯豆腐、冷奴など)
- 野菜の煮物定食
ポイント: 和食は栄養バランスが良く、野菜も摂りやすいのでおすすめです。ただし、煮物は意外と砂糖が多いこともあるので、食べすぎには注意しましょう。
洋食
- グリルチキンサラダ
- 白身魚のムニエル+サラダ
- 野菜たっぷりのポトフ
- シーフードサラダ
ポイント: クリーム系のソースやバター多用の料理は避け、シンプルな調理法のものを選びましょう。
中華
- 野菜炒め定食
- 蒸し鶏のサラダ
- 野菜スープ
- 豆腐料理(麻婆豆腐は少なめに)
ポイント: 中華料理は油と調味料が多いことがあります。野菜中心のメニューを選び、炒飯や麺類は控えましょう。
避けたい外食メニュー
- 牛丼、親子丼などの丼もの(炭水化物のみ、野菜少ない)
- ラーメン、うどん(炭水化物のみ、塩分多い)
- カツ丼、天丼(揚げ物+炭水化物)
- ピザ、パスタ(炭水化物多い)
- ハンバーガー、フライドポテト(脂質多い)
- カレーライス(GI値高い)
ファミリーレストランでの工夫
ファミリーレストランでは、以下のような工夫ができます:
- サイドメニューの活用: サラダ、温野菜、豆腐などを追加注文
- ドレッシング別添え: 脂質の取りすぎを防ぐ
- ごはん少なめ・おかわり無し: 店員さんに伝える
- 揚げ物の衣を外す: カロリーカット
- セットドリンクは無糖のものに: お茶、ウーロン茶、ブラックコーヒーなど
コンビニ食の選び方
忙しい時や体調が優れない時、コンビニを利用することもあるでしょう。以下のような組み合わせがおすすめです:
組み合わせ例1:
- おにぎり(玄米、雑穀米)1個
- サラダチキン
- カット野菜サラダ
- 無糖ヨーグルト
組み合わせ例2:
- 野菜たっぷりスープ
- ゆで卵
- チーズ
- りんご
ポイント: ローソンの「ロカボシリーズ」など、低糖質商品を活用するのも良い方法です。ただし、商品の栄養成分表示を必ず確認しましょう。
妊娠糖尿病における運動の役割
食事療法とともに、適度な運動も血糖コントロールに効果的です。ただし、妊娠中の運動には注意が必要ですので、必ず医師の許可を得てから始めてください。
運動のメリット
- インスリンの効きが良くなる(インスリン抵抗性の改善)
- 体重増加のコントロール
- ストレス解消
- 筋力維持
- 分娩に向けた体力づくり
推奨される運動
ウォーキング
- 頻度: 週に3〜4回以上
- 時間: 1回30分〜1時間程度
- 強度: 会話ができる程度の速さ
- タイミング: 食後1時間後がおすすめ(血糖値が上がりやすい時間帯)
マタニティヨガ
- 呼吸法や柔軟性の向上
- リラックス効果
- 妊娠中の体の変化に合わせた動き
マタニティスイミング
- 関節への負担が少ない
- 全身運動ができる
- リラックス効果
運動時の注意点
- 医師の許可を得てから開始
- 体調が悪い日は無理をしない
- 水分補給をこまめに
- 転倒に注意する
- お腹が張ったら すぐに中止
- 炎天下や極寒時は避ける
以下の症状がある場合は、運動を中止してすぐに医療機関を受診してください:
- お腹の張りや痛み
- 出血
- 破水感
- めまい、ふらつき
- 激しい動悸
産後のフォローアップと将来の健康管理
産後の血糖値チェック
妊娠糖尿病の多くは出産後に血糖値が正常に戻ります。しかし、すべての方がそうとは限らないため、日本産科婦人科学会では産後6〜12週の間に75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を受けることを推奨しています。
この検査で血糖値が正常化していることを確認することが重要です。もし異常が続いている場合は、糖尿病または糖尿病予備群として継続的な治療が必要になります。
将来の糖尿病リスク
妊娠糖尿病を経験した女性は、将来2型糖尿病を発症するリスクが一般の女性の約7倍高いことが報告されています。特に産後5〜10年の間にリスクが高まるとされています。
しかし、適切な生活習慣を維持することで、このリスクを大幅に減らすことができます。
産後の生活習慣で心がけること
母乳育児を推奨
母乳育児は、母体の血糖コントロールを改善し、将来の糖尿病リスクを下げる効果があることが研究で示されています。可能であれば母乳育児を続けましょう。
健康的な食生活の継続
妊娠中に学んだ食事管理の知識は、産後も家族全員の健康維持に役立ちます:
- 野菜中心の食事
- 精製されていない穀物(玄米、全粒粉製品)
- 良質なたんぱく質
- 適切な量のコントロール
定期的な運動習慣
- 産後の体力回復に合わせて徐々に運動を再開
- ウォーキング、軽いジョギング、ヨガなど
- 週に150分以上の中等度の運動を目標に
適正体重の維持
- BMI 18.5〜24.9の範囲を目指す
- 急激なダイエットは避け、長期的な視点で体重管理を
- 授乳中は無理な食事制限をしない
定期的な健康診断
- 年に1回は血糖値の検査を受ける
- HbA1c、空腹時血糖値、可能であれば75g OGTT
- 血圧、脂質(コレステロール、中性脂肪)の検査も
ストレス管理と十分な睡眠
- 育児のストレスをため込まない
- 家族のサポートを積極的に受ける
- 質の良い睡眠を心がける(睡眠不足は血糖値を上げやすくします)
次回妊娠時の注意
妊娠糖尿病の既往がある方は、次回妊娠時にも再発する可能性が高くなります(約30〜50%)。次回妊娠を計画する際は:
- 妊娠前に内科または糖尿病専門医を受診
- 血糖値を評価してもらう
- 妊娠前から適正体重を維持
- 妊娠初期から厳重な血糖管理
- 早期に産科医に妊娠糖尿病の既往を伝える

よくある質問(FAQ)
A: 妊娠糖尿病自体は遺伝しませんが、糖尿病になりやすい体質(インスリン抵抗性が高いなど)は遺伝的要因の影響を受けます。両親や兄弟に糖尿病患者がいる場合、リスクは高まります。ただし、生活習慣の改善で予防・管理が可能です。
A: はい、血糖値が適切にコントロールされていれば、多くの場合、普通分娩(経腟分娩)が可能です。ただし、赤ちゃんが大きくなりすぎた場合(巨大児)や、母体に重度の合併症がある場合は、帝王切開が選択されることもあります。
Q3: インスリン注射は赤ちゃんに影響しますか?
A: いいえ、インスリンは胎盤を通過しないため、赤ちゃんへの直接的な影響はありません。むしろ、高血糖を放置する方が赤ちゃんにとって危険です。食事療法だけで血糖コントロールが不十分な場合は、医師の指示に従ってインスリン療法を受けることが重要です。
Q4: つわりで食事が摂れない時はどうすればいいですか?
A: つわりがひどい時は、無理に食べる必要はありません。以下の工夫を試してみてください:
- 少量ずつ、食べられるものを食べる
- 冷たいものや酸味のあるものが食べやすいことも
- 水分補給をこまめに
- ゼリーやヨーグルトなど、のどごしの良いものを
- 主治医に相談し、点滴などの処置が必要か確認する
Q5: 外食や会食が多い場合の対処法は?
A: 完全に外食を避ける必要はありません。以下のポイントを守りましょう:
- 野菜中心のメニューを選ぶ
- ごはんやパンは少なめに
- 揚げ物は避け、焼き物や蒸し物を選ぶ
- 食べる順番(ベジタブルファースト)を守る
- どうしても困る場合は、事前に血糖値測定を行い、自分の体の反応を知る
まとめ:前向きに取り組む妊娠糖尿病の食事管理
妊娠糖尿病と診断されると、最初は戸惑いや不安を感じるかもしれません。しかし、適切な食事療法を実践することで、血糖値をコントロールし、健康な赤ちゃんを出産することは十分に可能です。
本記事の重要ポイント
- 妊娠糖尿病は珍しくない: 妊婦さんの約7〜12%が診断されます
- 食事療法が治療の中心: 適切な食事管理で血糖値をコントロールできます
- 必要な栄養はしっかり摂る: 食事制限ではなく、食べ方の工夫が大切
- 血糖値を上げにくい食事の3原則:
- 野菜から食べる(ベジタブルファースト)
- よく噛んでゆっくり食べる
- 分割食で1回の食事量を調整
- 低GI食品を選ぶ: 玄米、全粒粉製品、野菜、豆類を積極的に
- 産後のフォローアップが重要: 将来の糖尿病予防のため継続的な健康管理を
前向きに取り組むために
妊娠糖尿病の食事療法は、単なる病気の治療ではなく、自分と赤ちゃんの健康を守る大切な取り組みです。妊娠中に学んだ健康的な食生活の知識は、産後の育児や家族全員の健康管理にも必ず役立ちます。
「制限」ではなく「工夫」と考え、新しいレシピに挑戦したり、家族と一緒に健康的な食事を楽しんだりしながら、前向きに取り組んでいきましょう。
一人で抱え込まず、医師、管理栄養士、助産師などの医療チームと連携しながら、安心して妊娠生活を送ってください。
参考文献
本記事は、以下の信頼できる医療機関・学会の情報を参考に作成しました。
- 日本産科婦人科学会「妊娠糖尿病」
- 日本糖尿病・妊娠学会「糖尿病と妊娠に関するQ&A」
- 糖尿病情報センター「妊娠と糖尿病」
- 国立成育医療研究センター「妊娠糖尿病女性のための食事」
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務