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貧血に良い食べ物とは?鉄分を効率よく摂取する食事のポイントを詳しく解説

「最近なんだか疲れやすい」「めまいや立ちくらみが気になる」「顔色が悪いと言われることが増えた」――このような症状に心当たりはありませんか?これらは貧血のサインかもしれません。

貧血は、特に女性に多く見られる健康上の問題です。日本人女性のうち、月経のある女性の約5人に1人が貧血であるといわれています。さらに、血液検査では正常値でも体内の貯蔵鉄が不足している「かくれ貧血(潜在性鉄欠乏症)」の方を含めると、その数はさらに多くなります。

貧血の予防や改善には、日々の食生活がとても重要な役割を果たします。この記事では、貧血に良い食べ物や、鉄分を効率よく摂取するための食事のポイントについて詳しく解説していきます。ぜひ毎日の食事づくりの参考にしてください。


目次

  1. 貧血とは?その原因と症状
  2. 貧血の種類について
  3. 鉄分の1日の推奨摂取量
  4. ヘム鉄と非ヘム鉄の違いを理解しよう
  5. 鉄分を多く含む食べ物
  6. 鉄分の吸収を助ける栄養素と食べ物
  7. 鉄分の吸収を妨げる食べ物と飲み物
  8. ビタミンB12と葉酸も貧血予防に重要
  9. 貧血予防のための食事のポイント
  10. おすすめの献立例
  11. 日常生活で気をつけたいこと
  12. まとめ

1. 貧血とは?その原因と症状

貧血とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの量が少なくなった状態を指します。ヘモグロビンは体中に酸素を運ぶ重要な役割を担っているため、これが不足すると全身の細胞に十分な酸素が届かなくなり、さまざまな不調が現れます。

WHOの判定基準では、ヘモグロビン値が男性で13g/dl以下、女性で12g/dl以下の場合を貧血と定義しています。

貧血の主な症状

貧血になると、以下のような症状が現れることがあります。

体全体に関わる症状としては、疲れやすい、だるい、体に力が入らないといった倦怠感があります。また、動悸や息切れを感じやすくなったり、ちょっとした運動でも心臓がドキドキしたりすることがあります。

外見に現れる変化としては、顔色が悪くなる、唇や爪の色が白っぽくなる、まぶたの裏側(結膜)が白くなるなどがあります。慢性的に貧血が続くと、爪が反り返る「さじ状爪」と呼ばれる状態になることもあります。

そのほか、頭痛、めまい、立ちくらみ、耳鳴り、集中力の低下、食欲不振、口内炎ができやすくなる、舌が痛む、食べ物が飲みこみにくくなるといった症状が現れることもあります。

貧血が起こる主な原因

貧血が起こる原因は大きく分けて3つあります。

1つ目は、鉄分などの栄養素の摂取不足です。偏った食事やダイエット、朝食を抜くなどの不規則な食生活によって、ヘモグロビンの材料となる鉄分やたんぱく質、ビタミンが不足することで貧血を引き起こします。

2つ目は、鉄分の需要増加です。成長期や妊娠期、授乳期には、通常よりも多くの鉄分が必要となります。今まで通りの食事をしていても、体が必要とする量が増えることで相対的に不足し、貧血になることがあります。

3つ目は、出血による鉄分の喪失です。月経による出血が多い場合(過多月経)や、消化管からの出血(胃潰瘍、痔など)によって、通常よりも多くの鉄分が体から失われると貧血になります。


2. 貧血の種類について

貧血にはいくつかの種類がありますが、ここでは代表的なものをご紹介します。

鉄欠乏性貧血

貧血のなかで最も多く見られるのが、鉄欠乏性貧血です。体内の鉄分が不足することでヘモグロビンの生成が十分に行われなくなり、貧血を引き起こします。

鉄欠乏性貧血になりやすいのは、月経のある女性(特に過多月経の方)、成長期の子ども、妊娠中や授乳中の女性、過度なダイエットをしている方、偏食傾向のある方などです。

体内には約3~5gの鉄分が存在しており、そのうち約70%はヘモグロビンとして赤血球に含まれています。残りの約30%は「貯蔵鉄」として肝臓や骨髄などにストックされています。鉄分が不足し始めると、まずこの貯蔵鉄が使われるため、すぐには症状が現れません。しかし、貯蔵鉄が枯渇すると、ようやくヘモグロビン値が低下して貧血の症状が現れ始めます。

このように、ヘモグロビン値は正常でも貯蔵鉄が不足している状態を「かくれ貧血(潜在性鉄欠乏症)」といいます。ある調査によると、20~49歳までの閉経前の女性では、約70%もの人が重度のかくれ貧血に該当するフェリチン(貯蔵鉄の指標)30ng/ml未満だったという報告があります。

巨赤芽球性貧血(ビタミンB12欠乏性貧血・葉酸欠乏性貧血)

ビタミンB12または葉酸が不足することで起こる貧血です。これらのビタミンはDNAの合成に必要な成分であり、不足すると赤血球の成熟に異常が起こり、通常より大きなサイズの赤血球がつくられます。

ビタミンB12欠乏の原因としては、胃の全摘出手術を受けた方、萎縮性胃炎のある方、極端な菜食主義(ビーガン)の方などが挙げられます。ビタミンB12は胃から分泌される「内因子」と結合することで吸収されるため、胃の障害があると吸収されにくくなります。

葉酸欠乏の原因としては、偏った食事や過度のアルコール摂取、妊娠期・授乳期における需要の増大などがあります。


3. 鉄分の1日の推奨摂取量

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、鉄分の1日の推奨摂取量は以下のとおりです。

成人男性の場合

18歳以上の成人男性では、1日あたり7.0~7.5mgの鉄分摂取が推奨されています。

成人女性の場合

月経のある成人女性では、1日あたり10.5~11.0mgの鉄分摂取が推奨されています。これは男性よりも多い量であり、月経によって毎月約30mgもの鉄分が失われることを考慮した数値です。

月経のない女性(閉経後など)では、1日あたり6.0~6.5mgとなっています。

妊娠中・授乳中の女性の場合

妊娠初期および授乳期には、通常の推奨量に2.5mgを加えた量が必要です。妊娠中期・後期には、9.5mgを加えた量が推奨されており、妊娠中期・後期では1日16.0mgもの鉄分が必要となります。これは胎児の成長や血液量の増加に対応するためです。

現在の日本人の摂取状況

2022年(令和4年)の国民健康・栄養調査によると、20~29歳の鉄の1日摂取量の平均値は、男性で6.9mg、女性で5.9mgでした。女性の場合、推奨量10.5mgに対して約半分程度しか摂取できていないことがわかります。

理想的な食事をしている人でも1日約10mgの鉄分しか摂れていないといわれており、多くの女性が鉄分不足の状態にあることがうかがえます。


4. ヘム鉄と非ヘム鉄の違いを理解しよう

食品に含まれる鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があります。この2つには大きな違いがあり、効率よく鉄分を摂取するためにはその特性を理解しておくことが大切です。

ヘム鉄とは

ヘム鉄は、肉や魚などの動物性食品に多く含まれる鉄分です。たんぱく質と結合した状態で存在しており、体内への吸収率が高いのが特徴です。ヘム鉄の吸収率は10~30%(一般的には15~25%)といわれています。

ヘム鉄は、後述するタンニンなどの吸収阻害物質の影響を受けにくいという利点もあります。

非ヘム鉄とは

非ヘム鉄は、野菜、豆類、穀類などの植物性食品に多く含まれる鉄分です。無機鉄の形で存在しており、体内への吸収率はヘム鉄に比べてかなり低く、2~5%程度とされています。

ただし、非ヘム鉄はビタミンCや動物性たんぱく質と一緒に摂取することで、吸収率を高めることができます。

日本人の鉄分摂取の特徴

日本人が食事から摂取している鉄分の大部分は、吸収されにくい非ヘム鉄であることがわかっています。これは、日本の食文化が野菜や豆類、海藻類など植物性食品を多く含むためです。そのため、鉄分を効率よく摂取するためには、ヘム鉄を含む食品を積極的に取り入れたり、非ヘム鉄の吸収を高める工夫をすることが重要です。


5. 鉄分を多く含む食べ物

ここでは、鉄分を多く含む食べ物を、動物性食品と植物性食品に分けてご紹介します。

動物性食品(ヘム鉄を多く含む食品)

動物性食品には吸収率の高いヘム鉄が含まれています。特に以下の食品は鉄分が豊富です。

レバー類は鉄分が非常に豊富な食品の代表です。豚レバー100gあたりには約13.0mg、鶏レバーには約9.0mg、牛レバーには約4.0mgの鉄分が含まれています。レバーには鉄分だけでなく、ビタミンB12や葉酸も豊富に含まれているため、貧血予防に非常に効果的な食品といえます。

赤身の肉も鉄分が多い食品です。牛もも肉100gあたりには約2.8mg、牛ヒレ肉には約2.5mgの鉄分が含まれています。

魚介類では、カツオ、マグロ、イワシ、サンマなどの赤身の魚に鉄分が多く含まれています。カツオ100gあたりには約1.9mg、マグロ(赤身)には約1.1mgの鉄分があります。

貝類も鉄分の良い供給源です。特にあさりの水煮缶詰は100gあたり約30.0mgと非常に高い鉄分含有量を誇ります。しじみやカキにも鉄分が豊富に含まれています。

卵も手軽に鉄分を摂取できる食品で、卵黄には約6.0mg/100gの鉄分が含まれています。

植物性食品(非ヘム鉄を多く含む食品)

植物性食品に含まれる非ヘム鉄は吸収率が低いものの、日常的に取り入れやすい食品が多いため、毎日の食事で意識して摂ることが大切です。

大豆製品は鉄分が豊富です。納豆100gあたりには約3.3mg、木綿豆腐には約1.5mg、油揚げには約3.2mgの鉄分が含まれています。豆乳1杯(200ml)でも約1.2mgの鉄分を摂取できます。

緑黄色野菜では、小松菜100gあたりに約2.8mg、ほうれん草には約2.0mg、枝豆には約2.7mgの鉄分が含まれています。

海藻類は非常に鉄分が豊富です。ひじき(乾燥)100gあたりには約55.0mg、青のり(乾燥)には約77.0mgもの鉄分が含まれています。ただし、乾物は一度に大量に食べることは難しいため、毎日少しずつ取り入れることがポイントです。

きのこ類では、乾燥きくらげ100gあたりに約35.0mgの鉄分が含まれています。きくらげは中華料理や炒め物などに加えると、手軽に鉄分を補給できます。

そのほか、ごまや切り干し大根、プルーンなども鉄分が多い食品として知られています。


6. 鉄分の吸収を助ける栄養素と食べ物

鉄分は体内での吸収率が低い栄養素です。特に非ヘム鉄の吸収率を高めるためには、一緒に摂取する栄養素や食べ物が重要になります。

ビタミンC

ビタミンCは非ヘム鉄の吸収を促進する代表的な栄養素です。ビタミンCは、吸収されにくい形の鉄を吸収されやすい形に変換する働きがあります。

ビタミンCを多く含む食品としては、ピーマン、ブロッコリー、キャベツ、じゃがいも、さつまいもなどの野菜類、レモン、オレンジ、キウイフルーツ、いちご、柿などの果物類があります。

鉄分を多く含む食品とビタミンCを含む食品を一緒に食べることで、鉄分の吸収効率が上がります。例えば、ほうれん草のおひたしにレモン汁をかける、小松菜の炒め物にパプリカを加えるなどの工夫が効果的です。

良質なたんぱく質

たんぱく質はヘモグロビンの材料となる重要な栄養素です。また、動物性たんぱく質には非ヘム鉄の吸収を助ける働きもあります。

肉類、魚介類、卵、大豆製品、乳製品など、さまざまな食材からバランスよくたんぱく質を摂取することが大切です。

有機酸(クエン酸・酢酸など)

クエン酸や酢酸などの有機酸も、非ヘム鉄の吸収を高める効果があります。

クエン酸は柑橘類(レモン、グレープフルーツなど)や梅干しに多く含まれています。酢酸は酢に含まれています。

例えば、ひじきの煮物に酢を加える、野菜サラダにレモンドレッシングをかけるなどの工夫で、鉄分の吸収率を高めることができます。

胃酸の分泌を促す食べ物

胃酸の分泌が良くなることでも鉄の吸収率は上がります。酸味のある食べ物や、適度に辛みのある食べ物は胃酸の分泌を促します。

ただし、胃潰瘍などの消化器疾患がある方は、胃酸が増えると症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。


7. 鉄分の吸収を妨げる食べ物と飲み物

鉄分を多く含む食品を食べていても、吸収を妨げる成分と一緒に摂取すると、せっかくの鉄分が体に吸収されにくくなってしまいます。ここでは、鉄分の吸収を妨げる食べ物と飲み物について解説します。

タンニンを含む飲み物

タンニンは、渋みやえぐみの原因となるポリフェノールの一種で、鉄と結合して「タンニン鉄」を形成します。タンニン鉄は腸で吸収されにくいため、鉄分の吸収が妨げられます。

タンニンを多く含む飲み物には、緑茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒー、赤ワインなどがあります。特にコーヒーはタンニン(クロロゲン酸を含む)の含有量が高く、100mlあたり約110mgのタンニンが含まれています。これは紅茶の約37mg、緑茶の約18mgと比較してもかなり高い数値です。

食事中や食後すぐにこれらの飲み物を飲むと、摂取した鉄分がタンニンと結びついて吸収されにくくなります。

ただし、通常の量(カップ1~2杯程度)であれば、それほど気にする必要はありません。貧血が気になる方や鉄分を意識して摂りたい方は、食事の前後30分~1時間はこれらの飲み物を控えるとよいでしょう。

タンニンの少ないお茶を選ぶのも一つの方法です。麦茶、ほうじ茶、杜仲茶などはタンニンが少ないため、食事と一緒に飲んでも問題ありません。

カフェインを含む飲み物

カフェインにも鉄分の吸収を阻害する作用があるといわれています。また、カフェインには利尿作用があり、ビタミンCなどの水溶性ビタミンを体外に排出しやすくする働きがあります。ビタミンCは鉄分の吸収を助ける栄養素であるため、間接的に鉄分の吸収に影響を与える可能性があります。

カフェインを多く含む飲み物には、コーヒー、紅茶、緑茶(特に玉露)、エナジードリンクなどがあります。

カフェインレスコーヒー(デカフェ)はカフェインが少なくなっていますが、タンニン(クロロゲン酸)は含まれているため、食事前後を避けて飲むことをおすすめします。

フィチン酸を含む食品

フィチン酸は玄米や全粒穀物、豆類などに含まれる成分で、鉄分と結合して吸収を妨げる作用があります。

ただし、これらの食品には食物繊維やビタミンB群など、健康に良い成分も多く含まれています。完全に避ける必要はありませんが、貧血が気になる方は、鉄分を多く含む食品とは別のタイミングで摂取するなどの工夫をするとよいでしょう。

シュウ酸を含む食品

シュウ酸はほうれん草、たけのこ、チョコレートなどに含まれる成分で、鉄分の吸収を阻害する作用があります。

ほうれん草は鉄分を多く含む食品としても知られていますが、同時にシュウ酸も含んでいます。ゆでることでシュウ酸を減らすことができるため、ほうれん草は生食よりもゆでて食べることをおすすめします。

食物繊維の過剰摂取

食物繊維は腸内環境を整えるなど健康に良い働きがありますが、過剰に摂取すると鉄分の吸収を妨げることがあります。バランスのよい食事を心がけることが大切です。


8. ビタミンB12と葉酸も貧血予防に重要

貧血予防というと鉄分ばかりが注目されがちですが、ビタミンB12と葉酸も赤血球の生成に欠かせない栄養素です。

ビタミンB12の働きと多く含む食品

ビタミンB12は、葉酸と協力して赤血球を生成する働きがあります。また、神経の正常な機能を維持する役割も担っています。

ビタミンB12は動物性食品にのみ含まれており、植物性食品には基本的に含まれていません。そのため、極端な菜食主義(ビーガン)の方は不足しやすい傾向があります。

ビタミンB12を多く含む食品としては、牛レバー、豚レバー、鶏レバーなどのレバー類、しじみ、あさり、カキなどの貝類、サンマ、イワシなどの魚類、卵黄、チーズなどがあります。

海藻類のなかでは、あまのりなどの真核藻類にビタミンB12が含まれています。

ビタミンB12は水溶性のビタミンであるため、スープや煮汁ごと食べられる調理法がおすすめです。缶詰を汁ごと使うのも効果的です。

葉酸の働きと多く含む食品

葉酸もビタミンB12と同様に、赤血球の生成に関わる重要な栄養素です。特に妊娠初期には胎児の神経管閉鎖障害を予防するために十分な摂取が推奨されています。

葉酸の1日の摂取推奨量は、18歳以上の男女ともに240μg(マイクログラム)です。妊活中や妊娠中の女性はさらに240μgの追加摂取が推奨されています。

葉酸を多く含む食品としては、レバー類(牛レバー、豚レバー、鶏レバー)、枝豆、ブロッコリー、ほうれん草、小松菜、モロヘイヤ、菜の花などの緑色の葉野菜、アスパラガス、大豆、納豆、卵黄、のり、わかめなどの海藻類があります。

葉酸は熱に弱く、長時間の加熱調理で50~95%が破壊されるといわれています。そのため、新鮮な野菜や果物をできるだけ生に近い状態で食べることが効果的です。

ビタミンB12と葉酸を一緒に摂ることの重要性

ビタミンB12と葉酸は、互いに協力して働きます。体の中で葉酸が利用される際にはビタミンB12が必要であるため、どちらか一方だけを補っても十分な効果が得られません。

レバーはビタミンB12と葉酸の両方を豊富に含んでいるため、貧血予防に非常に効果的な食品といえます。


9. 貧血予防のための食事のポイント

ここまで紹介した内容をもとに、貧血予防のための食事のポイントをまとめます。

1日3食、規則正しく食べる

貧血予防の基本は、1日3食を規則正しく食べることです。朝食を抜いたり、過度なダイエットをしたりすると、必要な栄養素が不足しやすくなります。

特に、若い女性に多い「朝食抜き」や「偏った食事によるダイエット」は、貧血の大きな原因となっています。

主食・主菜・副菜をそろえてバランスよく

毎食、主食(ごはん、パン、麺類など)、主菜(肉、魚、卵、大豆製品などのたんぱく質を含むおかず)、副菜(野菜、海藻、きのこなどを使ったおかず)をそろえることで、栄養バランスのよい食事になります。

1日に30品目を目標に、いろいろな食品を組み合わせて食べることが理想的です。

ヘム鉄を含む動物性食品を積極的に取り入れる

吸収率の高いヘム鉄を含む動物性食品を、毎日の食事に取り入れましょう。レバー、赤身の肉、魚介類などを意識して食べることで、効率よく鉄分を摂取できます。

レバーは鉄分が非常に豊富ですが、独特の風味が苦手な方も多いでしょう。レバーペーストにしたり、カレーなど味の濃い料理に入れたりすると食べやすくなります。

非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂取する

野菜や豆類などの植物性食品から鉄分を摂る場合は、ビタミンCを多く含む食品と一緒に食べましょう。ビタミンCの働きで、非ヘム鉄の吸収率がアップします。

例えば、小松菜の炒め物にパプリカを加える、ひじきの煮物に柑橘類の絞り汁をかける、食後にビタミンCが豊富な果物を食べるなどの工夫が効果的です。

食事中の飲み物に注意する

緑茶、紅茶、コーヒーなどタンニンやカフェインを多く含む飲み物は、食事中や食後すぐに飲むのを控えましょう。これらを飲みたい場合は、食後30分~1時間経ってからにするとよいでしょう。

食事中の飲み物としては、麦茶、ほうじ茶、水などがおすすめです。

調理器具を工夫する

鉄鍋や鉄製のフライパンを使って調理すると、鍋から鉄分が溶け出して料理に含まれる鉄分量が増えるといわれています。特に、酢を使った料理やトマト煮込みなど酸味のある料理を作るときに効果的です。

アルコールは控えめに

過度のアルコール摂取は、葉酸の吸収や代謝を妨げます。また、アルコールを食事代わりにしてしまうと、必要な栄養素が不足しやすくなります。お酒は適量を守り、飲みすぎないようにしましょう。


10. おすすめの献立例

ここでは、貧血予防に効果的な献立例をご紹介します。

朝食の例

和食であれば、ご飯、しじみの味噌汁、納豆、ほうれん草のおひたし、焼き魚(サンマやイワシなど)、デザートにキウイフルーツという組み合わせがおすすめです。しじみやほうれん草で鉄分を、キウイフルーツでビタミンCを摂取でき、鉄分の吸収率を高めることができます。

洋食であれば、トースト、スクランブルエッグ、ブロッコリーとトマトのサラダ、オレンジジュースという組み合わせが効果的です。卵から鉄分とたんぱく質を、サラダとオレンジジュースからビタミンCを摂取できます。

昼食の例

あさりとキャベツのパスタ、グリーンサラダ(レモンドレッシング)という組み合わせはいかがでしょうか。あさりには鉄分が豊富に含まれており、レモンドレッシングのビタミンCで吸収率を高められます。

和食であれば、牛丼、ほうれん草の胡麻和え、豆腐の味噌汁、オレンジという組み合わせもおすすめです。牛肉からヘム鉄を、ほうれん草から非ヘム鉄を摂取し、オレンジのビタミンCで吸収を促進します。

夕食の例

レバニラ炒め、ひじきの煮物(レモン汁をかけて)、小松菜と油揚げの味噌汁、ご飯、いちごという組み合わせは、鉄分をしっかり摂れる献立です。レバーとひじきから豊富な鉄分を、レモン汁といちごからビタミンCを摂取できます。

魚料理がお好みの方には、カツオのたたき、枝豆、わかめと豆腐のサラダ、ご飯、味噌汁、グレープフルーツという組み合わせもおすすめです。カツオからヘム鉄を、枝豆や豆腐から植物性たんぱく質と非ヘム鉄を摂取できます。

間食(おやつ)の例

貧血予防を意識した間食としては、ドライプルーン、アーモンドなどのナッツ類、小豆を使った和菓子(おはぎ、お汁粉など)、ココア(牛乳と混ぜて)などがおすすめです。これらは鉄分を含んでおり、小腹が空いたときの栄養補給になります。


11. 日常生活で気をつけたいこと

貧血の症状が気になったら医療機関へ

この記事では食事による貧血予防について解説してきましたが、すでに貧血の症状がある場合は、自己判断で対処せずに医療機関を受診することをおすすめします。

貧血の原因は鉄分不足だけでなく、消化管出血などの疾患が隠れている場合もあります。正確な診断を受けたうえで、適切な治療や食事指導を受けることが大切です。

また、貧血と診断された場合、食事だけで改善するのは難しいことが多く、鉄剤などの投薬治療が必要になることがほとんどです。医師の指示に従って治療を受けましょう。

サプリメントや栄養補助食品の活用

食事からの鉄分摂取が難しい場合は、サプリメントや鉄分を強化した栄養補助食品を活用する方法もあります。

ただし、鉄分のサプリメントは過剰摂取に注意が必要です。鉄分を過剰に摂取すると、便秘や胃腸障害、鉄沈着などの健康障害を引き起こす可能性があります。サプリメントを利用する際は、食事からの摂取量も考慮しながら、適切な量を守ることが大切です。

貧血でない人が予防目的で過剰に鉄分を摂取しても、貧血の予防にはつながらないとされています。個人の判断でサプリメントを大量に摂取することは避け、気になる症状がある場合は医師に相談しましょう。

定期的な健康診断を受ける

貧血は自覚症状が出た時点でかなり進行していることが多いため、定期的に健康診断を受けて血液検査をすることが大切です。自覚症状がなくても、軽度の貧血や「かくれ貧血」が見つかることがあります。

特に月経のある女性、妊娠・授乳中の女性、成長期の子ども、激しい運動をしている方などは、定期的に自分の血液の状態をチェックしておくとよいでしょう。


まとめ

貧血は、日本人女性に非常に多く見られる健康上の問題です。貧血になると、疲れやすさ、めまい、動悸、顔色の悪さなど、日常生活の質を低下させるさまざまな症状が現れます。

貧血の予防と改善には、毎日の食事が重要な役割を果たします。この記事のポイントをまとめると、以下のとおりです。

鉄分を多く含む食品を積極的に摂りましょう。特にレバー、赤身の肉、魚介類などに含まれるヘム鉄は吸収率が高くおすすめです。野菜や豆類に含まれる非ヘム鉄は、ビタミンCと一緒に摂ることで吸収率がアップします。

鉄分の吸収を妨げる飲み物に注意しましょう。緑茶、紅茶、コーヒーなどは食事中や食後すぐを避け、30分~1時間経ってから飲むとよいでしょう。

鉄分だけでなく、ビタミンB12と葉酸も赤血球の生成に欠かせない栄養素です。レバーや貝類、緑色の葉野菜などからバランスよく摂取しましょう。

1日3食を規則正しく、主食・主菜・副菜をそろえてバランスのよい食事を心がけることが基本です。

貧血の症状が気になる場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

日々の食事を少し見直すだけで、貧血の予防や改善につながります。この記事を参考に、鉄分をはじめとする栄養素を意識した食生活を始めてみてください。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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