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横になると咳が出る原因とは?考えられる病気と対処法を専門医が解説

夜、布団に入って横になった途端に咳が止まらなくなる。ようやく眠りについたと思ったら、咳き込んで目が覚めてしまう。このような経験をお持ちの方は少なくないのではないでしょうか。

日中は比較的落ち着いているのに、横になると急に咳が出始めるという症状は、単なる風邪の名残りとは限りません。実は、この「横になると咳が出る」という症状の裏には、さまざまな原因や病気が隠れている可能性があります。

本記事では、横になると咳が出る原因やメカニズム、考えられる病気、そして自宅でできる対処法から医療機関を受診すべきタイミングまで、詳しく解説していきます。つらい夜間の咳に悩まされている方は、ぜひ参考にしてください。


目次

  1. なぜ横になると咳が出るのか?そのメカニズムを解説
  2. 横になると咳が出る主な原因
  3. 横になると咳が出るときに考えられる病気
  4. 痰が絡む咳と乾いた咳の違い
  5. 自宅でできる対処法
  6. 医療機関を受診すべきタイミング
  7. 医療機関での検査と治療
  8. 日常生活で気をつけたいポイント
  9. まとめ

1. なぜ横になると咳が出るのか?そのメカニズムを解説

横になると咳が出やすくなる現象には、いくつかの生理学的なメカニズムが関係しています。まずは、なぜ体勢を変えるだけで咳が誘発されるのかを理解しておきましょう。

自律神経のはたらきの変化

私たちの体は、交感神経と副交感神経という2つの自律神経によってコントロールされています。日中は体を活発に動かすために交感神経が優位になり、夜間は体を休めるために副交感神経が優位になります。

副交感神経が優位になると、気管支の筋肉が収縮しやすくなり、気道が狭くなる傾向があります。また、気道の分泌物も増加するため、咳が出やすい状態になるのです。夜間や早朝に咳が悪化しやすいのは、この自律神経のリズムが大きく関係しています。

重力の影響による分泌物の移動

立位や座位のときは、重力によって鼻水や痰などの分泌物は下方向に流れていきます。しかし、横になると重力の方向が変わるため、鼻の奥にたまっていた鼻水が喉の方へ流れ落ちやすくなります。これを後鼻漏(こうびろう)といいます。

喉に流れ込んできた鼻水や分泌物が気道を刺激することで、咳が誘発されるのです。特に、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎をお持ちの方は、この後鼻漏による咳が起こりやすい傾向があります。

胃酸の逆流が起こりやすくなる

立っているときは重力の作用で胃の内容物は胃の底にとどまりますが、横になると胃酸が食道へ逆流しやすくなります。逆流した胃酸が喉や気道を刺激することで、咳が出ることがあります。

肺への血液還流の増加

横になると、下半身にたまっていた血液が心臓に戻りやすくなります。心臓の機能が正常であればこれは問題ありませんが、心臓のポンプ機能が低下している方の場合、戻ってきた血液を十分に送り出すことができず、肺に血液がうっ滞することがあります。これにより肺水腫が生じ、咳や息苦しさが出ることがあります。


2. 横になると咳が出る主な原因

横になると咳が出る原因は実にさまざまです。ここでは、代表的な原因について詳しく見ていきましょう。

気道の乾燥

冬の時期や、暖房・エアコンの効いた部屋では、空気が乾燥しやすくなります。空気の通り道である気道が乾燥すると、粘膜のバリア機能が低下し、ささいな刺激にも敏感に反応して咳が出やすくなります。

特に就寝中は口呼吸になりやすく、喉や気道がより乾燥しやすい環境になります。そのため、夜間に咳が悪化する方が多いのです。

気道の圧迫

肥満などで首回りに脂肪がついている方は、横になると気道の一部が圧迫されて狭くなることがあります。気道が狭くなると空気の流れが変化し、これが刺激となって咳を引き起こすことがあります。

また、肥満に伴う睡眠時無呼吸症候群がある場合は、気道が一時的に完全にふさがることもあり、これが咳の原因となることもあります。

アレルギー反応

喘息やアレルギー性鼻炎をお持ちの方は、横になると咳が出やすくなることがあります。特に、布団やカーペット、ソファなどの布製品には、ダニやホコリなどのアレルゲン(アレルギーの原因物質)が潜んでいることが多いです。

横になることでこれらのアレルゲンに近づき、それに反応することで咳が誘発されます。また、アレルゲンによって鼻の中や喉に粘液がたまると、横になった瞬間にその粘液が気道に垂れこみ、咳を引き起こすこともあります。

後鼻漏(こうびろう)

健康な方でも、1日に2〜6リットルもの鼻水が作られており、その約3割は鼻の後方から喉に流れ落ちて、無意識のうちに飲み込んでいます。これが後鼻漏です。

通常の後鼻漏は生理的なもので問題ありませんが、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などで鼻水の量が増えると、喉に流れ落ちる量も増加します。特に夜間に横になると、後鼻漏が増えて喉にたまり、それを排出しようとして咳が出るのです。

胃食道逆流症(GERD)

胃食道逆流症(GERD)とは、胃酸が食道に逆流することで胸やけなどの不快な症状が現れる病気です。横になると胃酸が逆流しやすくなるため、喉や気道が胃酸に刺激されて咳が出ることがあります。

近年、この胃食道逆流症による咳は日本でも増加傾向にあり、長引く咳の原因として重要視されています。


3. 横になると咳が出るときに考えられる病気

横になると咳が出る症状の背景には、さまざまな病気が隠れている可能性があります。ここでは、代表的な疾患について解説します。

咳喘息(せきぜんそく)

咳喘息は、気管支喘息と同様に気道の慢性的な炎症によって生じる病気です。喘息との違いは、咳喘息では「ゼーゼー・ヒューヒュー」という喘鳴や息苦しさがなく、咳だけが唯一の症状として現れることです。

咳喘息の症状は、就寝前から明け方にかけて悪化しやすいという特徴があります。また、会話中や寒暖差、タバコの煙などが刺激となって咳が出やすくなります。季節の変わり目や風邪をひいた後に咳だけが長く残るケースで多く見られます。

咳喘息が臨床的に重要なのは、適切な治療を行わないと喘息に移行してしまう可能性があることです。成人の場合、咳喘息患者の約30%が喘息に移行するという報告もあり、吸入ステロイド薬による治療がその移行率を低下させるとされています。

気管支喘息

気管支喘息は、アレルギー反応などによって気管支に慢性的な炎症が起こり、気道が過敏になっている病気です。ダニやホコリ、カビ、ペットのフケ、冷たい空気などのさまざまな刺激に反応して、発作的に気管支が狭くなり、咳や痰、喘鳴、息苦しさなどの症状が出ます。

喘息の炎症は夜間や早朝に悪化しやすいという特徴があります。これは、この時間帯に体内のコルチコステロイドホルモン(炎症を抑えるホルモン)が最低レベルになることや、副交感神経が優位になって気管支が収縮しやすくなることが関係しています。

喘息は子どもの病気と思われがちですが、大人になってから発症する方も少なくありません。

逆流性食道炎(胃食道逆流症)

逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで食道粘膜に炎症が起こる病気です。胸やけや呑酸(口の中に酸っぱいものがこみ上げてくる症状)が代表的な症状ですが、慢性的な咳も重要な症状の一つです。

特に、横になったときや食後に咳が出やすい場合は、逆流性食道炎が原因である可能性を考える必要があります。夕方から夜にかけて咳がひどくなる傾向があり、これは横になることで胃酸が逆流しやすくなることと、夜間に副交感神経が優位になって気道が過敏になることが関係しています。

近年、成人日本人の約20%がかかっているとも言われており、食生活の欧米化などが原因で増加傾向にあります。

副鼻腔炎(蓄膿症)

副鼻腔炎は、鼻の穴の周囲にある空洞(副鼻腔)に炎症が起こり、膿がたまる病気です。たまった膿が鼻の中にあふれて流れるため、鼻水の量が増え、粘り気も出てきます。

この粘り気のある鼻水が後鼻漏として喉に流れ落ちると、特に横になったときに喉を刺激して咳を引き起こします。副鼻腔炎による咳は、痰が絡んだような湿った咳(湿性咳嗽)であることが多いです。

急性の副鼻腔炎は抗生剤で比較的速やかに改善することが多いですが、3カ月以上続く慢性副鼻腔炎の場合は、マクロライド系抗生剤の少量長期投与などの治療が必要になることがあります。

心不全

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下して、全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態です。心不全が原因で横になると咳が出ることがあり、これは見落とされやすい重要な徴候です。

心臓の機能が低下していると、横になったときに重力の関係で全身から心臓に血液が戻りやすくなりますが、その血液を十分に送り出すことができません。すると血液が肺の中でうっ滞し(肺水腫)、これが咳や息苦しさを引き起こします。

心不全による咳の特徴は、横になると悪化し、起き上がると楽になることです。この状態を「起座呼吸」といい、心不全の重要な徴候の一つです。咳に加えて息切れや息が詰まる感じを伴う場合、足のむくみがある場合は、早めに循環器内科を受診することが重要です。

呼吸器感染症

風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスなどの呼吸器感染症にかかると、気道に炎症が起こり、咳が出やすくなります。症状が強いときや重症化した場合には、横になっても咳が続くことがあります。

これらの感染症では、横になると気道に痰がたまりやすく、咳が出やすくなるという特徴があります。通常は病気が治れば咳も自然におさまりますが、新型コロナウイルスの場合は後遺症として咳が長引くこともあります。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

COPDは、喫煙や大気汚染などの影響により気道や肺が慢性的にダメージを受け、呼吸がしづらくなる病気です。慢性気管支炎や肺気腫などがこれに含まれます。

COPDの方は、横になると呼吸が苦しくなり、咳が出やすくなります。咳とともに痰が頻繁に出る場合は特に注意が必要です。喫煙歴がある方で、慢性的な咳や痰、息切れがある場合は、COPDの可能性を考慮する必要があります。


4. 痰が絡む咳と乾いた咳の違い

横になると出る咳が、痰が絡む「湿性咳嗽」なのか、痰が出ない「乾性咳嗽」なのかによって、考えられる原因が異なってきます。

痰が絡む咳(湿性咳嗽)の原因

痰は、気道や肺に炎症や分泌物があることを示していることが多いです。痰が絡む咳が出る場合、以下のような原因が考えられます。

まず、風邪や気管支炎、肺炎などの感染症です。これらの病気では、気道の炎症によって痰が増加します。次に、慢性気管支炎やCOPDでも、気道からの粘液分泌が過剰になり、痰を伴う咳が続きます。

また、後鼻漏も重要な原因です。副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎があると、鼻水が喉に流れ込み、これを排出しようとして痰が絡んだような咳が出ます。特に夜間や横になったときに咳がひどくなるのが特徴です。

乾いた咳(乾性咳嗽)の原因

痰を伴わない乾いた咳は、気道の過敏性や神経反射によるものが多いとされています。乾いた咳が出る場合、以下のような原因が考えられます。

咳喘息は乾性咳嗽の代表的な原因で、気道の慢性炎症により咳が長期間続きます。また、逆流性食道炎による咳も乾いた咳であることが多く、胃酸が気道を刺激することで引き起こされます。

アトピー咳嗽も乾性咳嗽の原因の一つで、アレルギー体質の方に多く見られます。心不全による咳も、初期には乾いた咳として現れることがあります。


5. 自宅でできる対処法

横になると咳が出るときに、自宅で試せる対処法をいくつかご紹介します。ただし、症状が長引く場合や悪化する場合は、必ず医療機関を受診してください。

こまめな水分摂取

喉が乾燥していると咳が出やすくなるため、こまめな水分摂取が効果的です。寝る前や夜中に目が覚めたときに飲み物を飲んで、喉を潤すことで乾燥を防ぎましょう。

冷たい飲み物よりも温かい飲み物の方が喉への刺激が少なくおすすめです。生姜湯やはちみつレモンなど、体を温め抗炎症作用もある飲み物が良いでしょう。ただし、はちみつは乳児ボツリヌス症のリスクがあるため、1歳未満のお子さんには与えないでください。

部屋の加湿

部屋の湿度を適度に保つことで、喉の乾燥を防ぎ、咳予防に効果的です。理想的な室内湿度は40〜60%程度です。加湿器を使用するか、濡れタオルを室内に干すなどの方法で湿度を保ちましょう。

ただし、加湿しすぎるとカビやダニの繁殖につながり、かえってアレルギー症状を悪化させることがあるため、適度な湿度管理が重要です。

寝る姿勢の工夫

枕を高めにするか、上半身を少し起こした姿勢で寝ると、後鼻漏や胃酸の逆流が起こりにくくなります。クッションや布団を重ねて傾斜をつけるのも効果的です。

また、仰向けだけでなく横向きで眠る方法も検討してみてください。特に右側を下にして寝ると、胃の入り口が上になるため、胃酸の逆流を軽減しやすいとされています。

寝室環境の整備

寝室にたまりやすいホコリやダニは、アレルギー症状を引き起こし、咳の原因になることがあります。寝具は定期的に掃除や日光干しを行い、ダニやホコリの繁殖を抑えましょう。

防ダニの寝具カバーを使用したり、空気清浄機を設置したりするのも効果的です。また、ペットを飼っている方は、寝室にペットを入れないようにすることも検討してください。

寝る前の食事を控える

逆流性食道炎が原因の咳の場合、食後すぐに横になると胃酸が逆流しやすくなります。就寝の2〜3時間前には食事を済ませるようにしましょう。

また、脂っこい食事や刺激物、アルコール、炭酸飲料、カフェインなどは胃酸の逆流を促進することがあるため、特に夕食では控えめにするのがおすすめです。

禁煙

喫煙は気道を刺激し、咳を悪化させます。また、喫煙は気管支喘息やCOPD、逆流性食道炎などさまざまな呼吸器疾患のリスクを高めます。咳に悩んでいる方は、禁煙を強くおすすめします。

鼻うがい

後鼻漏が原因の咳には、鼻うがいが効果的なことがあります。生理食塩水(0.9%の食塩水)を使って鼻腔内を洗浄することで、鼻水や粘液を取り除き、後鼻漏を軽減できます。

市販の鼻うがい用キットも利用できますが、水道水をそのまま使うのは粘膜への刺激が強いため避けてください。体温程度に温めた生理食塩水を使用しましょう。


6. 医療機関を受診すべきタイミング

横になると咳が出る症状が続く場合、以下のようなときは早めに医療機関を受診することをおすすめします。

すぐに受診すべき症状

以下の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

まず、横になると息苦しくなり、起き上がると楽になる場合です。これは心不全の可能性を示唆する重要な徴候であり、「起座呼吸」と呼ばれます。特に足のむくみや動悸を伴う場合は、すぐに循環器内科を受診しましょう。

次に、咳とともに血が混じった痰が出る場合です。これは肺がんや結核、肺炎などの重篤な病気のサインである可能性があります。

また、高熱(38度以上)が続く場合や、急激な体重減少がある場合、胸の痛みを伴う場合も、すぐに医療機関を受診すべき状況です。

早めに受診した方がよい症状

以下の症状がある場合は、できるだけ早く医療機関を受診することをおすすめします。

咳が2週間以上続いている場合は、単なる風邪ではなく、咳喘息や逆流性食道炎、副鼻腔炎などの病気が隠れている可能性があります。特に8週間以上続く咳は「慢性咳嗽」と呼ばれ、専門的な検査と治療が必要になることが多いです。

夜間の咳で睡眠に支障が出ている場合も、早めの受診をおすすめします。睡眠不足は日常生活の質を大きく低下させるだけでなく、さまざまな健康問題につながる可能性があります。

市販の咳止め薬を使用しても改善しない場合や、症状が徐々に悪化している場合も、専門的な診断と治療が必要です。


7. 医療機関での検査と治療

横になると咳が出る症状で医療機関を受診した場合、どのような検査や治療が行われるのでしょうか。

問診

まず、医師による詳しい問診が行われます。咳が始まった時期、どのような時間帯に悪化するか、痰の有無や色、随伴症状(息苦しさ、胸やけ、鼻づまりなど)、既往歴、喫煙歴、ペットの有無などを具体的に伝えることが、診断の助けになります。

聴診

聴診器を使って肺や気管支の音を聞きます。喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)がないか、水泡音(プツプツという音)がないかなどを確認します。呼吸器専門医は、最後のひと吐きまで慎重に聴診を行い、疑われる病気によって聴くポイントを変えて診察します。

画像検査

胸部レントゲン検査やCT検査を行い、肺や気管支の状態を確認します。肺炎や肺がん、結核などの病気がないかを調べるほか、心臓の大きさや肺のうっ血の有無なども確認できます。

副鼻腔炎が疑われる場合は、副鼻腔のレントゲンやCT検査が行われることもあります。

呼吸機能検査

気管支喘息や咳喘息が疑われる場合、呼吸機能検査(スパイロメトリー)が行われます。この検査では、どれだけの空気を吸い込んでどれだけ吐き出せるかを測定し、気道の狭窄の程度を評価します。

呼気一酸化窒素(NO)検査

気道のアレルギー性炎症の程度を評価するために、呼気中の一酸化窒素濃度を測定する検査です。喘息や咳喘息の診断や治療効果の判定に役立ちます。

アレルギー検査

アレルギーが関係している場合は、血液検査やアレルギー検査(皮膚テストなど)を行い、原因となるアレルゲンを特定します。

内視鏡検査

逆流性食道炎が疑われる場合は、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で食道の粘膜の状態を確認します。食道に炎症やただれがないか、食道裂孔ヘルニアの有無なども調べます。

主な治療法

原因疾患に応じて、以下のような治療が行われます。

咳喘息や気管支喘息の場合は、吸入ステロイド薬が基本の治療となります。気管支を広げる薬(気管支拡張薬)を併用することもあります。毎日の適切な治療を続けることで、発作がなく健康な人と同じような生活が送れるようになります。

逆流性食道炎の場合は、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)などの薬が使われます。生活習慣の改善も重要な治療の一環です。

副鼻腔炎の場合は、抗生剤や去痰薬、点鼻ステロイドなどで治療します。慢性化している場合は、マクロライド系抗生剤の少量長期投与が行われることもあります。保存的治療で改善しない場合は、手術が検討されることもあります。

心不全の場合は、利尿薬や血管拡張薬、強心薬などの薬物療法が中心となります。原因疾患(高血圧、心臓弁膜症など)の治療も同時に行われます。


8. 日常生活で気をつけたいポイント

横になると咳が出る症状を予防・改善するために、日常生活で気をつけたいポイントをまとめました。

規則正しい生活リズム

自律神経のバランスを整えるためには、規則正しい生活リズムが重要です。毎日同じ時間に起床・就寝する習慣をつけ、十分な睡眠時間を確保しましょう。

適度な運動

適度な運動は、自律神経のバランスを整え、免疫力を高める効果があります。ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動がおすすめです。ただし、運動誘発性の喘息がある方は、運動前に主治医に相談してください。

ストレス管理

ストレスは自律神経のバランスを乱し、咳を悪化させることがあります。自分なりのストレス解消法を見つけ、こまめにリフレッシュすることが大切です。

バランスの良い食事

免疫力を高めるために、ビタミンやミネラル、たんぱく質をバランスよく摂取しましょう。特に、ビタミンCやビタミンD、亜鉛などは呼吸器の健康維持に重要とされています。

適正体重の維持

肥満は気道の圧迫や胃酸の逆流を引き起こしやすくするため、適正体重を維持することが重要です。特に逆流性食道炎の方は、減量によって症状が改善することが多いと報告されています。

定期的な健康診断

定期的に健康診断を受け、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を早期に発見・治療することが、心不全などの予防につながります。


9. まとめ

横になると咳が出る症状には、気道の乾燥、後鼻漏、胃酸の逆流、アレルギー反応など、さまざまな原因が考えられます。また、その背景には咳喘息や逆流性食道炎、副鼻腔炎、心不全などの病気が隠れている可能性もあります。

自宅でできる対処法としては、こまめな水分摂取、部屋の加湿、寝る姿勢の工夫、寝室環境の整備、禁煙などがあります。ただし、咳が2週間以上続く場合や、起き上がると楽になる息苦しさがある場合、血痰が出る場合などは、早めに医療機関を受診することが重要です。

原因に応じた適切な治療を受けることで、つらい夜間の咳を改善し、快適な睡眠を取り戻すことができます。自己判断で放置せず、気になる症状がある場合は専門医に相談されることをおすすめします。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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