はじめに
「私には一日どれくらいのカロリーが必要なの?」「ダイエット中は何カロリーまで減らしていいの?」このような疑問を持つ女性は少なくありません。カロリーは私たちの体を動かすエネルギー源であり、生命活動を維持するために欠かせないものです。
しかし、必要なカロリー量は年齢、身長、体重、活動量などによって一人ひとり異なります。適切なカロリー摂取は健康維持やダイエットの成功に直結する一方で、極端なカロリー制限は健康を害する可能性もあります。
本記事では、成人女性に必要なカロリーについて、科学的根拠に基づいた情報を詳しく解説します。自分に合った適正カロリーを知り、健康的な食生活を送るための参考にしていただければ幸いです。
カロリーとは何か?基礎知識を理解する
カロリーの定義
カロリー(calorie)とは、エネルギーの単位の一つです。正確には「1gの水の温度を1℃上げるのに必要なエネルギー量」を1カロリーと定義します。私たちが日常的に使う「カロリー」は、実際には「キロカロリー(kcal)」を指しており、1kcalは1,000カロリーに相当します。
食品に含まれる三大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)は、体内で分解されてエネルギーとなります。それぞれのエネルギー量は以下の通りです。
- 炭水化物:1gあたり約4kcal
- たんぱく質:1gあたり約4kcal
- 脂質:1gあたり約9kcal
体内でのカロリーの使われ方
私たちの体は、摂取したカロリーを主に3つの用途で消費しています。
基礎代謝(60〜70%)
基礎代謝とは、生命を維持するために最低限必要なエネルギー消費のことです。呼吸、心臓の拍動、体温の維持、細胞の新陳代謝など、安静にしていても消費されるエネルギーを指します。成人女性の場合、一日の総消費カロリーの約60〜70%が基礎代謝によるものです。
身体活動代謝(20〜30%)
日常生活での動作や運動によって消費されるエネルギーです。歩く、階段を上る、家事をするなどの日常活動から、スポーツなどの運動まで含まれます。活動量が多いほど、この割合は高くなります。
食事誘発性熱産生(10%)
食事を摂取した際、消化・吸収のプロセスで消費されるエネルギーです。食べ物を消化し、栄養素を体内に取り込む過程でもエネルギーが必要となり、摂取カロリーの約10%が使われます。
成人女性に必要な一日のカロリー量
厚生労働省の基準値
厚生労働省が策定する「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、年齢や身体活動レベル別に推定エネルギー必要量が示されています。
身体活動レベルは以下の3段階に分類されます。
- レベルI(低い):生活の大部分が座位で、静的な活動が中心
- レベルII(ふつう):座位中心だが、職場内での移動や立位作業、通勤、買い物、家事、軽いスポーツなどを含む
- レベルIII(高い):移動や立位の多い仕事への従事、または活発な運動習慣がある
年齢・活動レベル別の推定エネルギー必要量
以下は、成人女性の年齢と身体活動レベル別の推定エネルギー必要量(kcal/日)です。
| 年齢 | 身体活動レベルI(低い) | 身体活動レベルII(ふつう) | 身体活動レベルIII(高い) |
|---|---|---|---|
| 18〜29歳 | 1,700 | 2,000 | 2,300 |
| 30〜49歳 | 1,750 | 2,050 | 2,350 |
| 50〜64歳 | 1,650 | 1,950 | 2,250 |
| 65〜74歳 | 1,550 | 1,850 | 2,100 |
| 75歳以上 | 1,400 | 1,650 | – |
この表から分かるように、一般的なデスクワーク中心の生活を送る30代女性の場合、一日に必要なカロリーは約2,050kcalとなります。
個人差を考慮する重要性
上記の数値はあくまで平均的な体格の女性を想定した目安です。実際に必要なカロリー量は、以下の要因によって大きく変動します。
- 身長・体重(体格)
- 筋肉量
- 基礎代謝率
- 遺伝的要因
- ホルモンバランス
- 生活環境(気温など)
そのため、自分に合った適正カロリーを知るには、個別の計算が必要となります。
自分に必要なカロリーを計算する方法
基礎代謝量の計算
まず、自分の基礎代謝量を知ることが重要です。基礎代謝量の推定には、いくつかの計算式がありますが、ここでは広く使われている「ハリス・ベネディクト方程式(改良版)」をご紹介します。
女性の基礎代謝量(kcal/日)の計算式
基礎代謝量 = 655 + (9.6 × 体重kg) + (1.7 × 身長cm) - (4.7 × 年齢)
計算例
30歳、身長160cm、体重55kgの女性の場合:
基礎代謝量 = 655 + (9.6 × 55) + (1.7 × 160) - (4.7 × 30)
= 655 + 528 + 272 - 141
= 1,314kcal/日
一日の総消費カロリーの計算
基礎代謝量が分かったら、身体活動レベルを掛け合わせて、一日の総消費カロリー(推定エネルギー必要量)を算出します。
活動レベル係数
- 低い(ほぼ運動なし):基礎代謝量 × 1.2
- やや低い(軽い運動週1〜2回):基礎代謝量 × 1.375
- 普通(中程度の運動週3〜5回):基礎代謝量 × 1.55
- 高い(激しい運動週6〜7回):基礎代謝量 × 1.725
- 非常に高い(肉体労働や1日2回のトレーニング):基礎代謝量 × 1.9
計算例
上記の女性が週に2〜3回程度の軽い運動をしている場合:
総消費カロリー = 1,314 × 1.55 = 2,037kcal/日
この女性の場合、体重を維持するには一日約2,000kcalの摂取が必要ということになります。
簡易的な計算方法
より簡単に計算したい場合は、以下の簡易計算式も利用できます。
体重維持に必要なカロリー
- デスクワーク中心:体重(kg) × 25〜30
- 立ち仕事や軽い運動あり:体重(kg) × 30〜35
- 活動的な仕事や定期的な運動:体重(kg) × 35〜40
体重55kgでデスクワーク中心の場合:55 × 28 = 1,540〜1,650kcal程度が目安となります。
ただし、これらの計算式はあくまで推定値であり、個人差があることを理解しておく必要があります。
ダイエット時のカロリー設定
健康的な減量ペース
ダイエットを行う際、多くの方が「できるだけ早く痩せたい」と考えがちです。しかし、急激な体重減少は健康を害するリスクが高く、リバウンドの原因にもなります。
農林水産省や栄養学の専門家は、健康的な減量ペースとして「1ヶ月に体重の5%以内」を推奨しています。体重60kgの方であれば、1ヶ月に3kg以内、1週間で0.5〜1kg程度が適切です。
必要なカロリー赤字の計算
体脂肪1kgを減らすには、約7,200kcalのカロリー赤字が必要とされています。1ヶ月で2kg減量したい場合の計算は以下の通りです。
必要なカロリー赤字 = 7,200kcal × 2kg = 14,400kcal
1日あたりのカロリー赤字 = 14,400kcal ÷ 30日 = 480kcal
つまり、一日の消費カロリーより480kcal少なく摂取すれば、1ヶ月で約2kgの減量が期待できます。
ダイエット時の適正カロリー摂取量
ダイエット中であっても、基礎代謝量を下回るカロリー制限は避けるべきです。基礎代謝量以下の食事を続けると、以下のような問題が生じる可能性があります。
- 筋肉量の減少
- 基礎代謝の低下
- 栄養不足による体調不良
- ホルモンバランスの乱れ
- 月経不順
- 骨密度の低下
- リバウンドのリスク増加
推奨されるカロリー設定
一般的に、以下の範囲でカロリー設定を行うことが推奨されます。
- 基礎代謝量以上を確保
- 総消費カロリーの10〜20%減を目安とする
- 最低でも1,200kcal以上は摂取する(身長や体格により異なる)
設定例
総消費カロリーが2,000kcalの女性の場合:
- 穏やかなダイエット:2,000 × 0.9 = 1,800kcal
- 標準的なダイエット:2,000 × 0.85 = 1,700kcal
- やや厳しめのダイエット:2,000 × 0.8 = 1,600kcal
基礎代謝が1,300kcalの場合、1,600kcal程度の摂取が安全な範囲といえます。
ライフステージ別のカロリー管理
妊娠中の女性
妊娠中は胎児の成長と母体の健康維持のため、通常よりも多くのエネルギーが必要となります。厚生労働省の「妊産婦のための食事バランスガイド」では、妊娠期ごとに以下の付加量が推奨されています。
- 妊娠初期(〜13週):+50kcal/日
- 妊娠中期(14〜27週):+250kcal/日
- 妊娠後期(28週〜):+450kcal/日
妊娠前の必要カロリーが2,000kcalの女性の場合、妊娠後期には約2,450kcalが必要となります。
ただし、妊娠中の過度な体重増加も問題となるため、医師や管理栄養士の指導のもとで適切なカロリー管理を行うことが重要です。
授乳中の女性
授乳期は母乳の生成のために多くのエネルギーを必要とします。厚生労働省の基準では、授乳婦には通常の必要量に加えて+350kcal/日の付加が推奨されています。
母乳育児を行っている場合、通常よりも多くのカロリーを摂取しても体重が減少することがあります。これは母乳生成に多くのエネルギーが使われるためです。
授乳中の極端なダイエットは、母乳の質や量に影響を与える可能性があるため、医師や助産師に相談しながら適切な栄養管理を行うことが大切です。
更年期の女性
更年期(一般的に45〜55歳頃)を迎えると、女性ホルモンの減少に伴い基礎代謝が低下する傾向があります。同じ食生活を続けていても体重が増えやすくなるのはこのためです。
更年期以降の女性は、以下の点に注意したカロリー管理が推奨されます。
- 若い頃と同じカロリー摂取では過剰になる可能性
- 筋肉量を維持するための適度な運動とたんぱく質摂取
- 骨粗鬆症予防のためのカルシウムとビタミンD摂取
- 生活習慣病予防のための適正体重維持
基礎代謝の低下を考慮し、50代以降は若い頃より100〜200kcal程度少なめの設定が適切な場合が多いです。
カロリーだけでない、栄養バランスの重要性
PFCバランスとは
カロリー摂取量と同様に重要なのが、三大栄養素のバランスです。PFCバランスとは、Protein(たんぱく質)、Fat(脂質)、Carbohydrate(炭水化物)の摂取比率を指します。
厚生労働省が推奨する成人女性のPFCバランスは以下の通りです。
- たんぱく質:13〜20%
- 脂質:20〜30%
- 炭水化物:50〜65%
1,800kcalの食事における各栄養素の目安
- たんぱく質:58〜90g(232〜360kcal、15〜20%で計算)
- 脂質:40〜60g(360〜540kcal、20〜30%で計算)
- 炭水化物:225〜293g(900〜1,170kcal、50〜65%で計算)
ビタミン・ミネラルの必要性
カロリーと三大栄養素だけでなく、ビタミンやミネラルも健康維持に欠かせません。特に女性が不足しがちな栄養素として以下が挙げられます。
鉄分
月経のある女性は鉄欠乏性貧血のリスクが高く、1日10.5〜11mg(月経あり)の鉄分摂取が推奨されています。レバー、赤身肉、大豆製品、ほうれん草などに多く含まれます。
カルシウム
骨の健康維持に重要で、成人女性は1日650mgの摂取が推奨されます。乳製品、小魚、大豆製品、緑黄色野菜などが良い供給源です。
葉酸
妊娠を計画している女性や妊娠初期の女性には特に重要で、1日240μg(妊娠初期は+240μg)の摂取が推奨されます。緑黄色野菜、果物、豆類などに含まれます。
ビタミンD
カルシウムの吸収を助け、骨の健康に重要です。1日8.5μgの摂取が推奨されており、魚類、きのこ類、卵などに含まれます。日光浴も体内でのビタミンD生成に役立ちます。
食物繊維の重要性
食物繊維は腸内環境を整え、便秘予防、生活習慣病予防に役立ちます。成人女性は1日18g以上の食物繊維摂取が推奨されています。
野菜、果物、全粒穀物、豆類、海藻類などに多く含まれます。カロリー制限中でも食物繊維を十分に摂取することで満腹感が得られやすくなります。
健康的なカロリー管理の実践方法
食事記録のすすめ
自分が実際にどれくらいのカロリーを摂取しているか把握するには、食事記録が有効です。最近ではスマートフォンアプリで簡単にカロリー計算ができるようになっています。
食事記録を続けることで、以下のメリットがあります。
- 実際の摂取カロリーの把握
- 食習慣の傾向の理解
- 問題点の発見と改善
- 意識的な食事選択の促進
最初は面倒に感じるかもしれませんが、2〜3週間続けると自然と食品のカロリーが分かるようになり、記録なしでもおおよその摂取量が把握できるようになります。
適切な食事回数と時間配分
一日のカロリーをどのように配分するかも重要です。一般的には1日3食が基本ですが、以下のような工夫も効果的です。
朝食の重要性
朝食を抜くと、昼食や夕食で過食しやすくなります。また、体内時計のリズムを整える意味でも朝食は重要です。1日の摂取カロリーの25〜30%を朝食に割り当てるとよいでしょう。
昼食でしっかり摂る
活動量が多い日中は、食事から得たエネルギーを消費しやすい時間帯です。昼食で1日の35〜40%のカロリーを摂取するのが理想的です。
夕食は控えめに
夜は活動量が減り、就寝前の食事は脂肪として蓄積されやすくなります。夕食は1日の30〜35%程度に抑え、就寝3時間前までには食事を終えることが推奨されます。
間食の取り入れ方
1日の総カロリー内であれば、適度な間食は問題ありません。むしろ空腹時間が長すぎると、次の食事で血糖値が急上昇しやすくなります。
間食は1日200kcal以内を目安とし、果物、ナッツ、ヨーグルトなど栄養価の高いものを選ぶとよいでしょう。
外食時のカロリー管理
現代の生活では外食の機会も多いでしょう。外食時は以下のポイントを意識することで、カロリーオーバーを防げます。
- メニューのカロリー表示を確認する
- 定食スタイルを選び、バランスよく食べる
- 揚げ物より焼き物や蒸し物を選ぶ
- ご飯の量を調整する(大盛りを避ける)
- 野菜から食べ始める
- ゆっくりよく噛んで食べる
- ドリンクのカロリーに注意する
外食が多い日が続いた場合は、翌日以降の食事で調整するなど、週単位でバランスを取ることも有効です。
運動とカロリー消費
カロリー管理は食事だけでなく、運動による消費カロリーの増加も効果的です。
有酸素運動の効果
ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動は、脂肪燃焼に効果的です。
- ウォーキング(時速4km):約150kcal/時間
- ジョギング(時速8km):約400kcal/時間
- 水泳(クロール):約500kcal/時間
- サイクリング(時速20km):約350kcal/時間
※体重60kgの女性の場合の目安
筋力トレーニングの重要性
筋力トレーニングは運動中の消費カロリーは有酸素運動ほど多くありませんが、筋肉量が増えることで基礎代謝が上がり、長期的なカロリー消費増加につながります。
週2〜3回、30分程度の筋力トレーニングを取り入れることで、基礎代謝を維持・向上させることができます。
日常生活の活動量を増やす
特別な運動時間を確保できない場合も、日常生活での活動量を増やすことでカロリー消費を高められます。
- エレベーターではなく階段を使う
- 一駅分歩く
- 立って家事をする時間を増やす
- デスクワーク中もこまめに立ち上がる
- 買い物は徒歩や自転車で行く
これらの小さな積み重ねが、1日100〜200kcalの消費増加につながります。
カロリー制限の注意点とリスク
極端なカロリー制限の危険性
早く痩せたいという気持ちから、極端なカロリー制限を行う方がいますが、以下のようなリスクがあります。
栄養失調
必要な栄養素が不足し、疲労感、めまい、貧血、免疫力低下などの症状が現れます。
筋肉量の減少
カロリー不足が続くと、体は筋肉を分解してエネルギーを得ようとします。筋肉量が減ると基礎代謝が下がり、かえって痩せにくい体質になってしまいます。
ホルモンバランスの乱れ
極端なカロリー制限は女性ホルモンの分泌に影響を与え、月経不順や無月経を引き起こす可能性があります。
骨密度の低下
カルシウムやビタミンDの不足、女性ホルモンの減少により、骨密度が低下し、将来的な骨粗鬆症のリスクが高まります。
摂食障害のリスク
過度なダイエットは、拒食症や過食症などの摂食障害を引き起こす可能性があります。
リバウンド
極端なカロリー制限は継続が困難で、元の食生活に戻した際にリバウンドしやすくなります。基礎代謝が下がっているため、以前より太りやすくなることもあります。
医師の診察が必要なケース
以下のような症状がある場合は、自己判断でのカロリー制限を中止し、医療機関を受診することをお勧めします。
- 極度の疲労感や倦怠感
- 頻繁なめまいや立ちくらみ
- 月経が3ヶ月以上止まっている
- 体重が1ヶ月に5kg以上減少した
- 食事に対する恐怖感や罪悪感がある
- 過度な体重への執着がある
- 嘔吐や下剤の乱用
これらは栄養不足や摂食障害のサインである可能性があります。
健康的な体重の維持
理想的なのは、無理なカロリー制限ではなく、長期的に維持できる健康的な食生活を確立することです。
適正体重の目安
BMI(Body Mass Index)は体重と身長から算出される肥満度の指標で、以下の式で計算されます。
BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
日本肥満学会の基準では、以下のように分類されます。
- 低体重(やせ):BMI 18.5未満
- 普通体重:BMI 18.5以上25未満
- 肥満(1度):BMI 25以上30未満
- 肥満(2度):BMI 30以上35未満
健康的な体重の目安はBMI 18.5〜24.9の範囲内とされています。BMI 22が最も病気になりにくいとされる「標準体重」です。
計算例
身長160cmの女性の場合:
- 標準体重:1.6 × 1.6 × 22 = 56.3kg
- 普通体重の範囲:47.4kg〜63.9kg
この範囲内であれば、無理なダイエットは必要ありません。

よくある質問(Q&A)
最初は大変に感じるかもしれませんが、スマートフォンのカロリー計算アプリを使えば、食品名を入力するだけで自動計算してくれます。また、2〜3週間記録を続けると、よく食べるもののカロリーが自然と覚えられ、おおよその計算ができるようになります。
完璧を目指す必要はありません。±100kcal程度の誤差は許容範囲と考え、大まかな把握から始めてみましょう。
夜遅い食事が太りやすいとされる理由は、主に以下の点です。
第一に、夜は活動量が少なく、摂取したカロリーを消費しにくい時間帯です。第二に、睡眠中は代謝が低下するため、就寝前の食事は脂肪として蓄積されやすくなります。第三に、体内時計に関わるBMAL1というたんぱく質が夜間に増加し、脂肪の合成を促進します。
ただし、総摂取カロリーが同じであれば、食事時間による差は大きくないという研究もあります。理想は就寝3時間前までに食事を終えることですが、仕事などでそれが難しい場合は、消化の良いもの、低カロリーのものを選ぶとよいでしょう。
Q3. 炭水化物を減らせば、カロリーを気にしなくてもいいですか?
炭水化物制限(糖質制限)ダイエットは効果的な方法の一つですが、カロリーを全く無視してよいわけではありません。
炭水化物を減らしても、たんぱく質や脂質を過剰に摂取すれば、総カロリーが消費カロリーを上回り、体重は増加します。特に脂質は1gあたり9kcalと高カロリーなため、注意が必要です。
バランスの取れた食事と適切なカロリー管理を組み合わせることが、健康的なダイエットの基本です。
Q4. カロリーゼロ食品なら、いくら食べても大丈夫ですか?
「カロリーゼロ」と表示されている食品でも、完全に0kcalではない場合があります。日本の食品表示基準では、100mlあたり5kcal未満であれば「カロリーゼロ」と表示できます。
また、人工甘味料を使用したカロリーゼロ飲料を大量に摂取すると、甘味への依存や食欲増加を招く可能性も指摘されています。
カロリーゼロ食品も適度な量を心がけることが大切です。
Q5. 運動せずに食事制限だけで痩せられますか?
理論上、消費カロリーが摂取カロリーを上回れば体重は減少します。そのため、運動なしでも食事制限だけで減量は可能です。
ただし、運動を取り入れることには以下のメリットがあります。
- 筋肉量を維持し、基礎代謝の低下を防ぐ
- 体のラインを美しく整える
- 心肺機能の向上
- ストレス解消
- リバウンドしにくい体質作り
健康的で持続可能なダイエットのためには、適度な運動と食事管理の両方を組み合わせることが推奨されます。
Q6. 生理前は食欲が増しますが、これは普通ですか?
はい、生理前(月経前)に食欲が増すのは多くの女性に見られる正常な現象です。これは黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響によるもので、体が妊娠に備えてエネルギーを蓄えようとするためです。
生理前は無理に我慢せず、以下のような工夫をするとよいでしょう。
- 3食しっかり食べて空腹を防ぐ
- 食物繊維の多い食品で満腹感を得る
- ナッツや果物など栄養価の高い間食を選ぶ
- 水分をしっかり摂る
- 適度な運動でストレスを発散する
生理が始まれば食欲は自然と落ち着くことがほとんどです。月経周期による体重変動は1〜2kg程度は正常範囲内と考え、長期的な視点でカロリー管理を行いましょう。
Q7. 年齢とともに痩せにくくなったのはなぜですか?
年齢とともに痩せにくくなる主な理由は以下の通りです。
基礎代謝の低下
加齢とともに筋肉量が減少し、基礎代謝が低下します。10代をピークに、10年ごとに基礎代謝は約2〜3%ずつ低下すると言われています。
活動量の減少
年齢とともに日常的な活動量や運動量が減る傾向があります。
ホルモンバランスの変化
特に女性は、更年期以降の女性ホルモン減少により、脂肪がつきやすく筋肉がつきにくくなります。
対策としては、以下が有効です。
- 若い頃より摂取カロリーを控えめにする
- 筋力トレーニングで筋肉量を維持する
- たんぱく質を十分に摂取する
- 日常的な活動量を意識的に増やす
年齢に応じた適切なカロリー管理と運動習慣が重要です。
まとめ
成人女性に必要なカロリーは、年齢、身長、体重、活動量などによって個人差がありますが、一般的には1,400〜2,350kcal程度です。自分に必要な適正カロリーを知るには、基礎代謝量を計算し、活動レベルを考慮することが重要です。
ダイエットを行う場合も、基礎代謝量を下回る極端なカロリー制限は避け、健康的なペースで減量することが大切です。1ヶ月に体重の5%以内、週に0.5〜1kg程度が適切な減量ペースとされています。
カロリー管理と同様に、PFCバランスやビタミン・ミネラルなど、栄養バランスにも注意を払う必要があります。特に女性は鉄分、カルシウム、葉酸などが不足しがちなため、意識的に摂取しましょう。
食事記録をつける、適切な食事回数と時間配分を心がける、適度な運動を取り入れるなど、実践的な方法を組み合わせることで、健康的なカロリー管理が可能になります。
極端なカロリー制限は、栄養失調、筋肉量減少、ホルモンバランスの乱れ、摂食障害などのリスクがあります。健康を損なうような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
理想的なのは、短期的なダイエットではなく、長期的に維持できる健康的な食生活を確立することです。適正体重(BMI 18.5〜24.9)の範囲内であれば、無理な減量は必要ありません。
参考文献
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
- 厚生労働省「妊産婦のための食事バランスガイド」
- 農林水産省「食育の推進」
- 厚生労働省「生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット」
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2020年版)策定検討会報告書
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務