「ワキの臭いが気になるけれど、どの病院で相談すればいいのかわからない」「ワキガの治療は保険が使えるの?」このような疑問や不安を抱えている方は少なくありません。ワキガ(腋臭症)は日本人の約10%に見られる症状であり、臭いへの悩みから日常生活や対人関係に支障をきたすケースも珍しくありません。しかし、適切な病院を選び、正しい治療を受けることで、多くの方が臭いの悩みから解放されています。本記事では、ワキガの原因や仕組みから、病院の選び方、治療法の種類、保険適用の条件まで、専門医の知見に基づいて詳しく解説します。臭いの悩みを抱える方が、自分に合った治療法と医療機関を見つけられるよう、必要な情報をお伝えしてまいります。
目次
- ワキガ(腋臭症)とは
- ワキガの原因とメカニズム
- ワキガの診断方法
- ワキガ治療で病院を受診すべき人
- ワキガ治療を受けられる病院の種類
- ワキガの治療法の種類と特徴
- ワキガ治療の保険適用について
- ワキガ治療の病院選びのポイント
- ワキガ手術の流れと術後のケア
- ワキガの自己ケアと日常生活での対策
- よくある質問
- まとめ
ワキガ(腋臭症)とは
ワキガは医学的には「腋臭症(えきしゅうしょう)」と呼ばれ、腋窩(わきの下)から特有の強い臭いを発する状態を指します。通常の汗臭さとは異なり、ワキガの臭いは独特で、ネギやゴボウのような臭い、鉛筆の芯の臭い、クミンやカレースパイスのような臭い、酢のような臭いなど、さまざまな表現で例えられることがあります。
ワキガは病気ではなく、体質的な特徴の一つです。しかし、その臭いが本人や周囲の人に不快感を与え、社会生活に支障をきたす場合には、医療機関での治療対象となります。日本では約10%の人がワキガ体質であるとされており、欧米やアフリカ系の人々と比較するとその割合は低い傾向にあります。これは人種による遺伝的な差異が関係しています。
ワキガの特徴として、思春期以降に症状が顕在化することが挙げられます。アポクリン汗腺は第二次性徴期に発達するため、女性では初潮前後、男性では思春期にあたる時期から臭いが気になり始めることが多いです。また、加齢とともに症状が軽減する傾向もありますが、個人差が大きいのが実情です。
ワキガの原因とメカニズム
汗腺の種類と役割
人間の皮膚には2種類の汗腺が存在します。一つは「エクリン腺」で、全身に分布し、主に体温調節のために汗を分泌します。エクリン腺から分泌される汗は99%が水分で構成されており、サラサラとしていて基本的に無臭です。もう一つが「アポクリン腺」で、こちらがワキガの主な原因となる汗腺です。
アポクリン腺は、腋窩(わきの下)のほか、外耳道、乳輪、外陰部、肛門周辺など、特定の部位にのみ存在します。アポクリン腺から分泌される汗は、脂質、タンパク質、糖質、アンモニア、鉄分、色素などを含んでおり、エクリン腺からの汗と比べて粘り気があるのが特徴です。
臭いが発生するメカニズム
アポクリン腺から分泌される汗自体は無臭ですが、皮膚表面に存在する常在菌(主にブドウ球菌などのグラム陽性球菌)がこの汗に含まれる成分を分解することで、特有の臭いが発生します。具体的には、汗に含まれる脂肪酸が細菌によって低級脂肪酸に分解されることで悪臭が生じるのです。
ワキガの臭いの原因物質としては、3-メチル-2-ヘキサン酸(いわゆるワキガ臭の主成分)、3-ヒドロキシ-3-メチルヘキサン酸(カレースパイス様の臭い)、3-メチル-3-スルファニルヘキサノール(硫黄臭)などが特定されています。これらの物質の産生量や組み合わせには個人差があり、人によって臭いの質や強さが異なります。
遺伝的要因とABCC11遺伝子
ワキガは遺伝的要因が大きく関与する体質です。ワキガは常染色体優性遺伝の形式をとり、両親のどちらかがワキガの場合、子どもに遺伝する確率は約50%とされています。両親ともにワキガ体質の場合は、その確率は約80%に上昇します。
ワキガと密接に関連しているのが「ABCC11遺伝子」です。この遺伝子はアポクリン腺の分泌物の組成に関与しており、ABCC11のG型(機能型)を持つ人はワキガ体質になりやすく、A型(機能喪失型)を持つ人はワキガになりにくいことがわかっています。東アジア人ではA型が80-95%を占めるのに対し、ヨーロッパやアフリカではわずか0-3%と低い割合です。この遺伝子は耳垢のタイプにも影響を与えるため、湿性耳垢(いわゆる「アメ耳」)の人は約80%がワキガ体質であるといわれています。
生活習慣や環境要因
ワキガ体質は遺伝によって決まりますが、臭いの強さは生活習慣や環境要因によっても変化します。動物性脂肪やタンパク質を多く含む食事、香辛料を多用した食事は、アポクリン腺からの分泌物を増加させ、臭いを強くする可能性があります。また、ストレスや緊張、睡眠不足、運動不足といった生活習慣の乱れも臭いを悪化させる要因となりえます。女性の場合、月経周期によってホルモンバランスが変動し、月経前や排卵期に臭いが強くなることもあります。
ワキガの診断方法
ワキガかどうかを判断するためには、医療機関での診察が必要です。ワキガの診断は主に問診と臭いの客観的評価によって行われます。
ガーゼテスト(昭和大学方式)
日本で広く用いられている診断方法が「ガーゼテスト」です。これは、脇の下にガーゼを15〜20分間挟んでいただき、そのガーゼの臭いを医師が嗅いで判定する方法です。臭いの強さは5段階で評価され、一般的にレベル3以上(明らかに臭いが認められる状態)が手術の適応とされます。ただし、臭いの評価は医師の主観的判断に委ねられる部分があり、完全に客観的な評価基準が確立されているわけではありません。
問診による確認事項
診察では、以下のような項目について問診が行われます。耳垢が湿っているかどうか(湿性耳垢はワキガとの関連性が高い)、両親や血縁者にワキガの人がいるか(家族歴の確認)、他人から臭いを指摘されたことがあるか(他覚的な評価)、衣類のワキ部分に黄色いシミができやすいか(アポクリン腺分泌物に含まれるリポフスチンという色素が原因)、腋毛が太く量が多いか(アポクリン腺が多い傾向を示唆)などです。
自己臭症との鑑別
ワキガの診察において重要なのが「自己臭症(自己臭恐怖症)」との鑑別です。自己臭症とは、実際には他人が気になるほどの臭いがないにもかかわらず、自分に強い臭いがあると思い込んでしまう状態を指します。この場合、外科的治療を行っても満足感が得られないことが多いため、心療内科や精神科への紹介が検討されることもあります。逆に、本人は臭いに気づいていなくても、家族や周囲の人が気になって受診を勧めるケースもあります。
ワキガ治療で病院を受診すべき人
ワキガ体質であっても、すべての人が治療を必要とするわけではありません。しかし、以下のような状況に該当する場合は、医療機関への相談を検討することをお勧めします。
まず、市販の制汗剤やデオドラント製品を使用しても臭いが十分に抑えられない場合です。軽度のワキガであれば制汗剤で対処できることもありますが、中等度から重度の場合は医療的な介入が必要になることがあります。次に、臭いのことが気になって対人関係や仕事に支障をきたしている場合です。人前に出ることへの不安、電車やエレベーターなど閉鎖空間での緊張、衣類の色選びへの過度なこだわりなど、日常生活に影響が出ている場合は治療を検討すべきでしょう。
また、家族や友人から臭いについて指摘されたことがある場合、他人に指摘されるレベルの臭いは、社会生活において問題となりうるため、専門家への相談が望ましいです。さらに、洋服のワキ部分が頻繁に黄ばむ場合や、汗をかく季節になると特に臭いが気になる場合も、受診の目安となります。
ワキガ治療を受けられる病院の種類
形成外科
ワキガの外科的治療を専門的に行うのが形成外科です。形成外科は、皮膚や皮下組織の機能障害や外形の変形を手術的方法によって治療する診療科であり、ワキガ手術においては傷跡を最小限に抑えながら効果的な治療を行う技術を持っています。日本形成外科学会専門医が在籍する医療機関であれば、より専門性の高い治療を受けられる可能性が高いでしょう。保険適用のワキガ手術(剪除法など)は形成外科で受けられることが多いです。
皮膚科
皮膚科では、ワキガの診断や軽度の症状に対する保存的治療(外用薬の処方など)を受けることができます。また、多汗症に対するボトックス注射や外用薬(エクロックゲル、ラピフォートワイプなど)の処方を行っている皮膚科もあります。ただし、手術が必要な場合は形成外科への紹介となることが一般的です。
美容外科・美容クリニック
美容外科や美容クリニックでは、ミラドライやビューホットなどの自費診療によるワキガ治療を受けることができます。これらの治療は保険適用外ですが、傷跡を残さない、ダウンタイムが短いといったメリットがあります。ただし、美容クリニックによって技術力や対応に差があるため、クリニック選びは慎重に行う必要があります。
大学病院・総合病院
大学病院や総合病院の形成外科でもワキガ治療を受けることができます。高度な医療設備が整っており、全身麻酔下での手術や入院治療にも対応できるメリットがあります。また、術後の合併症などが生じた場合にも迅速に対応できる体制が整っています。ただし、予約から手術までに時間がかかることや、通院の利便性という点ではクリニックに劣ることがあります。
ワキガの治療法の種類と特徴
保存的治療(非手術的治療)
軽度から中等度のワキガに対しては、まず保存的治療が試みられることがあります。
制汗剤・デオドラント製品については、市販の制汗剤や医療用の制汗剤(塩化アルミニウム製剤など)を腋に塗布することで、汗の分泌を抑制し、臭いの発生を軽減します。軽度のワキガであれば、これだけで十分に対処できることもあります。
ボトックス注射(ボツリヌス毒素製剤)は、汗を分泌する神経への信号を一時的にブロックし、発汗量を減少させる治療です。施術時間は5〜10分程度と短く、傷跡も残りません。効果の持続期間は4〜6か月程度で、継続的な治療が必要となります。重度の原発性腋窩多汗症と診断された場合は保険適用となることがありますが、ワキガ治療としては基本的に自費診療となります。費用は2〜8万円程度が相場です。
外用薬として、原発性腋窩多汗症に対しては、エクロックゲルやラピフォートワイプといった保険適用の外用薬が使用できます。これらは汗腺からの汗の分泌を抑制する作用があり、12歳以上から使用可能です。多汗症に伴う臭いの軽減には効果がありますが、ワキガの根本治療ではありません。
手術的治療(外科的治療)
中等度から重度のワキガに対しては、アポクリン腺を除去する外科的治療が効果的です。
剪除法(皮弁法・反転剪除法)は、現在最も広く行われているワキガ手術の方法です。腋のシワに沿って3〜5cm程度切開し、皮膚を裏返してアポクリン腺を直接目で見ながら一つ一つ切除していきます。医師の直視下で汗腺を確実に除去できるため、高い効果が期待できます。保険適用が可能で、3割負担の場合、両脇で約5万円程度です。術後は1〜2週間程度の安静とガーゼによる圧迫固定が必要です。傷跡は腋のシワに隠れますが、完全に消えるわけではありません。
皮下組織掻爬法(ひかそしきそうはほう)は、小さな切開から専用の器具を挿入し、皮下組織ごとアポクリン腺を掻き出す方法です。剪除法と比べて傷が小さいメリットがありますが、汗腺の取り残しが生じやすく、効果がやや劣ることがあります。
クアドラカット法は、特殊な吸引器具を使用して汗腺を除去する方法です。傷が小さく、ダウンタイムも短いのが特徴ですが、自費診療となり、費用は20〜40万円程度です。
非侵襲的治療(切らない治療)
ミラドライは、マイクロ波を腋に照射してアポクリン腺とエクリン腺を熱で破壊する治療法です。皮膚を切開しないため傷跡が残らず、施術時間は両脇で約1〜1.5時間程度です。多汗症治療としては厚生労働省の認可を受けていますが、腋臭症治療としての認可はなく、自費診療となります。費用は20〜45万円程度が相場で、一度破壊された汗腺は再生しないため、効果は半永久的とされています。ただし、医師の技術力によって効果に差が出ることがあり、重度のワキガの場合は複数回の治療が必要になることもあります。
ビューホットは、韓国で開発された治療機器で、高周波を使用して汗腺を破壊します。ミラドライと同様に切らない治療法ですが、日本での普及はミラドライほど進んでいません。
ワキガ治療の保険適用について
保険適用の条件
ワキガ(腋臭症)は厚生労働省が認める疾患であり、医師が腋臭症と診断した場合、一定の手術方法については健康保険が適用されます。保険適用を受けるための条件としては、医師による腋臭症の診断がなされていること、日常生活に支障をきたすレベルの症状があること、保険適用が認められている術式を選択することなどが挙げられます。
単に「臭いが気になる」という美容目的では保険適用とならない場合があります。医師が客観的に臭いを確認し、社会生活上の問題があると判断した場合に、保険適用での治療が可能となります。
保険適用される治療法
保険適用が認められている治療法は限られています。剪除法(皮弁法)が代表的で、3割負担の場合、両脇で約4〜5万円程度の自己負担となります。これに加えて、術前の血液検査や術後の通院費用が数千円程度かかります。また、術後の合併症などが生じた場合も、保険診療の範囲内で対応されます。
一方、ミラドライ、ビューホット、ボトックス注射(多汗症としての適応を除く)、レーザー治療などは保険適用外の自費診療となります。
医療費控除について
ワキガ治療が医療費控除の対象となるかどうかは、治療の目的によって異なります。医師が腋臭症と診断し、治療が必要と判断した場合の保険診療や自費診療は、医療費控除の対象となる可能性があります。一方、美容目的や予防目的の治療、本人の希望のみで行う軽度の症状への治療は対象外となることがあります。詳細については税務署や税理士にご相談ください。
ワキガ治療の病院選びのポイント
ワキガ治療を成功させるためには、適切な病院・クリニック選びが重要です。以下のポイントを参考にしてください。
診療科の確認
ワキガ治療は主に形成外科または皮膚科で受けることができます。手術による根治的治療を希望する場合は形成外科を、まずは診断や保存的治療から始めたい場合は皮膚科を受診するとよいでしょう。美容クリニックでは自費診療が中心となることが多いため、保険適用を希望する場合は事前に確認が必要です。
医師の専門性と実績
ワキガ手術は医師の技術力によって結果が大きく左右されます。日本形成外科学会専門医や、ワキガ治療の豊富な症例実績を持つ医師が在籍しているかどうかを確認しましょう。また、ホームページで症例写真や実績が公開されているクリニックは、治療に自信を持っている証拠といえます。
カウンセリングの丁寧さ
初回カウンセリングで、医師が丁寧に症状を確認し、複数の治療選択肢を提示してくれるかどうかは重要なポイントです。一方的に高額な自費診療を勧めてくるクリニックや、リスクや術後経過について十分な説明がないクリニックは避けた方がよいでしょう。納得いくまで質問できる雰囲気かどうかも確認してください。
費用の透明性
治療費用が明確に提示されているかどうかも重要です。保険診療の場合の費用、自費診療の場合の費用、術後のフォローアップにかかる費用など、総額がいくらになるのかを事前に確認しましょう。極端に安い価格を提示しているクリニックは、後から追加料金が発生する可能性もあるため注意が必要です。
アフターケア体制
ワキガ手術後は定期的な通院が必要です。術後のフォローアップ体制が整っているか、万が一合併症が生じた場合の対応はどうなっているかを確認しましょう。術後の経過観察をきちんと行ってくれる病院を選ぶことで、より良い治療結果を得ることができます。
ワキガ手術の流れと術後のケア
手術前の準備
ワキガ手術を受ける前には、術前検査として血液検査が行われます。また、手術の内容、リスク、術後の経過について医師から説明を受け、同意書に署名します。手術前日は入浴して体を清潔にし、当日のアルコール摂取は避けてください。手術後は腕を動かしにくくなるため、前開きでゆったりとした服装で来院することをお勧めします。
手術当日の流れ
剪除法の場合、局所麻酔を行った後に手術が開始されます。手術時間は両脇で1〜2時間程度です。麻酔が効いている間は痛みを感じることはほとんどありません。手術後は血腫を防ぐためのドレーンを留置し、ガーゼで圧迫固定を行います。多くの場合、日帰り手術が可能ですが、全身麻酔を希望する場合や医師の判断により入院となることもあります。
術後のケアと経過
手術後2〜3日間はできるだけ安静に過ごす必要があります。腕を大きく動かしたり、重い物を持ったりすることは避けてください。ドレーンは通常3〜5日後に抜去され、抜糸は1〜2週間後に行われます。術後の痛みは鎮痛剤で管理できる程度ですが、個人差があります。
傷が完全に治癒するまでには3〜4週間程度かかります。この間、激しい運動やサウナなどは控えてください。術後1か月、3か月の時点で経過観察のための通院があり、傷跡の状態と臭いの改善効果を確認します。傷跡は腋のシワに沿っているため目立ちにくいですが、完全に消えることはありません。また、色素沈着や瘢痕形成が起こる場合もあります。
手術のリスクと合併症
ワキガ手術には一定のリスクが伴います。術後出血や血腫の形成、感染、傷跡の肥厚化やケロイド形成、皮膚壊死、色素沈着、しびれや知覚異常などが起こりうる合併症として挙げられます。また、汗腺を完全に取りきれず臭いが残ってしまうケースや、一度改善しても再発するケースもあります。これらのリスクについては、手術前に医師から十分な説明を受けておくことが大切です。
ワキガの自己ケアと日常生活での対策
医療機関での治療とあわせて、日常生活での自己ケアも臭いの軽減に効果的です。
清潔を保つ
ワキガの臭いは汗と細菌の作用によって発生するため、腋を清潔に保つことが基本です。こまめにシャワーを浴びる、入浴時には薬用せっけんを使用する、日中はアルコール綿で腋を拭く(肌が弱い方は注意)といった対策が有効です。また、制汗剤は皮脂や細菌が少ない清潔な状態で使用するとより効果的です。
腋毛の処理
腋毛は汗や皮脂を留め、細菌が繁殖しやすい環境を作ります。腋毛を剃る、または脱毛することで、臭いの原因となる物質が蓄積しにくくなり、制汗剤の効果も高まります。医療脱毛やレーザー脱毛を行うことで、より長期的な効果が期待できます。
衣類の選び方
通気性の良い天然素材(綿、麻など)の衣類を選ぶことで、汗の蒸発を促し、臭いがこもりにくくなります。化学繊維は汗を吸収しにくく、臭いが残りやすいため避けた方がよいでしょう。また、一度着た衣類は早めに洗濯し、臭いが染みつかないようにすることも大切です。
食生活の見直し
動物性脂肪やタンパク質の過剰摂取、香辛料を多用した食事は臭いを強くする可能性があります。野菜や魚を中心としたバランスの良い食事を心がけることで、臭いの軽減につながることがあります。また、十分な水分摂取も汗の濃度を下げる効果が期待できます。
ストレス管理
ストレスや緊張はアポクリン腺からの発汗を促進し、臭いを強くする要因となります。十分な睡眠、適度な運動、リラクゼーションなどを取り入れて、ストレスを上手に管理することも大切です。

よくある質問
ワキガの診察・治療は、主に形成外科または皮膚科で受けることができます。手術による根治的治療を希望する場合は形成外科を、まずは診断や保存的治療(制汗剤の処方など)から始めたい場合は皮膚科を受診するとよいでしょう。保険適用での治療を希望する場合は、保険診療を行っている医療機関かどうかを事前に確認することをお勧めします。
はい、医師が腋臭症(ワキガ)と診断し、日常生活に支障をきたすレベルの症状があると判断された場合、剪除法(皮弁法)などの手術については健康保険が適用されます。3割負担の場合、両脇で約4〜5万円程度の自己負担となります。ただし、ミラドライやボトックス注射などは保険適用外となります。
剪除法などの外科的手術でアポクリン腺を除去した場合、効果は半永久的に持続します。ただし、手術で汗腺を100%除去することは難しく、70〜90%程度の除去が一般的です。残存した汗腺から若干の臭いが出る可能性はありますが、多くの場合、気にならないレベルまで改善します。再発率は手術方法や医師の技術によって異なりますが、一般的には5〜20%程度とされています。
思春期前のお子さまでも手術を受けることは可能ですが、アポクリン腺は思春期に発達するため、成長途中で手術を行うと、後から発達する汗腺を取り残すことになります。そのため、一般的には女子で14歳以上、男子で16歳以上での手術が推奨されています。成長期のお子さまの場合は、再手術が必要になる可能性があることを理解したうえで、医師とよく相談してください。
剪除法の場合、術後2〜3日間は安静が必要で、腕を大きく動かすことは避ける必要があります。ドレーン(血液を排出する管)は3〜5日後に抜去され、抜糸は1〜2週間後に行われます。日常生活に完全に戻れるまでには約3〜4週間かかります。激しい運動や重い荷物を持つことは、術後2〜3週間は控える必要があります。仕事復帰のタイミングは職種によって異なりますので、医師に相談してください。
どちらを選ぶかは、症状の重さ、予算、ダウンタイムの許容度、傷跡への抵抗感などによって異なります。ミラドライは傷跡が残らずダウンタイムも短いメリットがありますが、保険適用外で費用が高額(20〜45万円程度)です。一方、剪除法は保険適用で費用を抑えられ、効果も確実ですが、傷跡が残り、術後の安静期間が長くなります。重度のワキガで確実な効果を求める場合は剪除法が、傷跡を避けたい中等度の方にはミラドライが向いていることが多いです。
いいえ、ワキガは人にうつることはありません。ワキガは遺伝的な体質によるものであり、感染症ではないため、ワキガの人と接触したり、同じ衣類を着たりしても、ワキガになることはありません。途中から突然ワキガになるということもありません。
まとめ
ワキガ(腋臭症)は、アポクリン腺から分泌される汗が皮膚常在菌によって分解されることで特有の臭いが発生する体質的な状態です。日本人の約10%に見られ、遺伝的要因が大きく関与しています。ワキガの治療には、制汗剤やボトックス注射などの保存的治療から、剪除法などの外科的手術、ミラドライなどの非侵襲的治療まで、さまざまな選択肢があります。
病院選びにおいては、形成外科または皮膚科を受診し、ワキガ治療の実績が豊富な医師のもとで治療を受けることが重要です。保険適用の手術を希望する場合は、保険診療を行っている医療機関かどうかを事前に確認してください。治療法の選択にあたっては、症状の重さ、予算、ダウンタイムの許容度、傷跡への抵抗感などを総合的に考慮し、医師とよく相談したうえで決定することをお勧めします。
ワキガの悩みは一人で抱え込まず、まずは専門の医療機関に相談することが解決への第一歩です。アイシークリニック渋谷院では、ワキガ・多汗症でお悩みの方に対して、丁寧なカウンセリングと適切な治療をご提案しております。臭いの悩みから解放され、より快適な日常を取り戻すために、お気軽にご相談ください。
参考文献
- 原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版 – 日本皮膚科学会雑誌
- 腋臭症(わきが) – 日本形成外科学会
- 汗の病気―多汗症と無汗症― Q5 – 日本皮膚科学会
- ワキガ(腋臭症)の治療〜ニオイの診断と手術〜 – 日本医科大学武蔵小杉病院
- 診断・検査(原発性腋窩多汗症) – マルホ株式会社 医療関係者向けサイト
- ボトックス 原発性腋窩多汗症 診断・治療 – グラクソ・スミスクライン株式会社
※本記事の内容は一般的な医学情報であり、個別の診断・治療を行うものではありません。症状がある場合は医療機関を受診してください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務