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つらい涙が出る原因と対処法|ストレス・うつ病・PMSとの関係を医師監修で解説

仕事中や通勤途中、ふとした瞬間に理由もなく涙があふれてくる。悲しいわけでもないのに涙が止まらない。こうした経験をお持ちの方は、決して少なくありません。「つらい」「しんどい」と感じながらも、自分の状態がよくわからず、誰にも相談できずに一人で抱え込んでいる方も多いのではないでしょうか。涙が出ること自体は人間にとって自然な反応であり、ストレス解消にも役立つものです。しかし、理由のない涙が頻繁に出る、涙が止まらない状態が続くといった場合には、心や体からのSOSサインである可能性があります。本記事では、つらくて涙が出てしまう原因について、精神的な側面と身体的な側面の両方から詳しく解説します。また、ご自身でできる対処法や、専門家への相談が必要となる目安についてもお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。


目次

  1. 涙が出る仕組みと3つの種類
  2. つらくて涙が出る原因(精神的な側面)
  3. つらくて涙が出る原因(身体的な側面)
  4. 涙が出ることと関連する精神疾患
  5. ホルモンバランスの変化と涙の関係
  6. 涙を流すことのメリットとストレス解消効果
  7. つらくて涙が出るときの対処法
  8. 専門家への相談が必要な目安
  9. よくある質問
  10. まとめ

涙が出る仕組みと3つの種類

涙は私たちの目を守り、心の健康を維持するために欠かせない存在です。涙がどのようにして作られ、流れるのかを理解することで、「つらくて涙が出る」という現象についてより深く知ることができます。

涙の生成と流れる仕組み

涙は主に上まぶたの外側にある涙腺で作られます。作られた涙は目の表面を覆い、角膜や結膜を潤しながら保護しています。余分な涙は、目頭にある涙点から涙小管、涙嚢、鼻涙管を通って鼻腔へと排出されます。泣くと鼻水が出るのは、この仕組みによるものです。涙には水分のほか、電解質、タンパク質、糖分などの栄養素、さらには抗菌物質も含まれています。そのため涙は、目の表面を乾燥から守るだけでなく、目に栄養を届けたり、ゴミやほこりを洗い流したり、細菌などから目を守る働きをしています。

涙の3つの種類

涙には大きく分けて3つの種類があります。1つ目は「基礎分泌の涙」です。これは目の表面を常に潤すために、無意識のうちに少量ずつ分泌されている涙です。目の機能を正常に保つために欠かせないものであり、私たちが「泣いている」と意識することなく流れています。2つ目は「反射の涙」です。目にゴミが入ったとき、玉ねぎを切って目にしみたときなど、外部からの刺激を受けたときに出る涙がこれにあたります。異物を洗い流し、目を保護するための防御反応として機能しています。3つ目は「情動の涙」です。悲しいとき、嬉しいとき、感動したときなど、感情の動きに伴って流れる涙です。この情動の涙は人間特有のものと考えられており、「つらくて涙が出る」という現象は主にこの情動の涙に関係しています。

つらくて涙が出る原因(精神的な側面)

理由もなく涙が出る、些細なことで涙が止まらなくなるといった状態は、精神的なストレスが大きく関わっていることが多いです。ここでは、つらさを感じて涙が出る精神的な原因について詳しく見ていきましょう。

ストレスの蓄積とセロトニンの関係

私たちが強いストレスを感じると、精神を安定させる働きを持つ神経伝達物質「セロトニン」の機能が低下します。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、心のバランスを保つために重要な役割を果たしています。セロトニンの機能が低下すると、感情のコントロールが難しくなり、涙もろくなったり、今まで泣かなかったような些細なことでも涙が出てしまうという現象が起きます。また、長期にわたってストレスを抱え込むと、副腎からコルチゾールというストレスホルモンが過剰に分泌されます。涙を流すことで、このコルチゾールの血中濃度が低下することが知られています。つまり、急に涙が出るのは、溜まったストレスを体が自然に解消しようとする反応であるとも考えられるのです。

自律神経のバランスの乱れ

自律神経には、体を興奮させる「交感神経」と、リラックスさせる「副交感神経」があり、通常はそれぞれがバランスを取りながら働いています。しかし、過度なストレスや疲労、睡眠不足などが続くと、このバランスが崩れてしまいます。涙は副交感神経が優位なときに出やすくなります。ストレス状態が続くと交感神経が過剰に働き、そのバランスを取り戻そうとして副交感神経が急激に活発になることがあります。このとき、感情とは関係なく涙があふれてくることがあるのです。風に当たると涙がたくさん出る、光を見ると涙が止まらないなどの症状も、自律神経の乱れが関与していると考えられています。

心の疲弊と限界のサイン

急に涙が出たり、涙が止まらなくなったりするのは、心からのSOSサインかもしれません。ストレスや疲労が蓄積し、心が限界に近づいている可能性があります。仕事や人間関係、家庭の問題など、日々のさまざまなストレスが積み重なると、自分でも気づかないうちに心身が疲弊していきます。その結果、これまでは問題なくやり過ごせていたことでも、涙があふれてしまうようになります。特に、職場に近づくと涙が出る、仕事中に涙が出る、キャパオーバーになって泣いてしまうなど、特定の状況で涙が出やすくなっている場合は、その状況自体がストレスの原因となっている可能性が高いでしょう。

つらくて涙が出る原因(身体的な側面)

涙が出る原因は精神的なものだけではありません。目の病気や身体的な問題によって涙が増えることもあります。ここでは、身体的な側面から涙が出る原因を見ていきましょう。

流涙症(涙目)とは

目が過剰な涙で常に潤んでいたり、涙が流れ出て止まらないような状態を「流涙症」といいます。涙で困って眼科を受診する方は意外に多く、患者さんの5人に1人ぐらいいるとも言われています。流涙症には、涙の分泌量が増える「分泌過剰型」と、涙の排出がうまくいかない「排出障害型」があります。分泌過剰型は、目に異物が入ったとき、花粉症やアレルギー性結膜炎、ドライアイなどで目が刺激を受けたときに起こりやすいです。排出障害型は、涙道閉塞や結膜弛緩症などによって、涙がうまく鼻に流れていかなくなることで起こります。

目の病気による涙の増加

さまざまな目の病気が涙の増加を引き起こすことがあります。代表的なものとして、アレルギー性結膜炎があります。花粉やハウスダストなどのアレルゲンに反応して、目のかゆみや充血、涙が出るなどの症状が現れます。また、ドライアイも涙の増加を引き起こすことがあります。一見矛盾しているように思えますが、ドライアイで目の表面が乾燥すると、その刺激に反応して涙腺から涙が過剰に分泌されることがあるのです。逆さまつげ(睫毛内反)も涙の原因となります。まつげが内側を向いて眼球を刺激することで、涙が出やすくなります。高齢の方では、結膜弛緩症といって白目の部分がたるんでしまう病気が流涙症の原因となることもあります。

涙道の問題

涙の通り道である涙道に問題があると、涙がうまく排出されずにあふれてしまいます。鼻涙管閉塞は、涙が鼻に流れていく管が詰まってしまう病気です。先天的なものと後天的なものがあり、後天的なものは加齢や感染症、外傷などが原因となることがあります。涙嚢炎は、涙嚢という涙をためておく袋に細菌感染が起こる病気です。目やにが出たり、涙が多くなったりする症状が見られます。これらの身体的な原因による涙は、悲しい感情とは関係なく出るため、「悲しくないのに涙が出る」という訴えにつながることがあります。

涙が出ることと関連する精神疾患

理由もなく涙が出る、涙が止まらないという症状が続く場合、精神疾患が背景にある可能性も考えられます。ここでは、涙の症状と関連する主な精神疾患について解説します。

うつ病

うつ病は、脳の神経伝達物質であるセロトニンの機能が低下することで起こる病気です。落ち込んだ気持ちや悲しい気持ちが長期間続き、日常生活に支障をきたします。うつ病の初期症状として、涙もろくなることがよく見られます。今まで泣かなかったような些細なことでも涙が出てしまったり、理由もなく涙があふれてきたりします。うつ病では、涙もろくなる以外にも、気分の落ち込みが続く、興味や喜びを感じられなくなる、食欲がない、眠れない、疲れやすい、集中力が低下するなどの症状が現れます。これらの症状が2週間以上続く場合は、医療機関への受診をお勧めします。なお、重度のうつ病では逆に泣くことが難しくなることがあります。治療が進んで泣けるようになることは、回復のきざしである場合もあります。

適応障害

適応障害は、環境の変化や特定のストレスに対してうまく適応できず、心身に不調が現れる状態です。職場に近づくと涙が出る、仕事中に涙が出る、キャパオーバーになって泣いてしまうなど、原因となるストレスがはっきりしている場合は、適応障害の可能性が考えられます。適応障害の特徴は、ストレスの原因から離れると症状が改善することです。例えば、仕事がストレスの原因である場合、休日には症状が軽くなることがあります。涙が止まらないなどの症状のほか、不安、不眠、憂鬱な気分、集中力の低下などの精神的・身体的症状が出現します。適切な治療を受ければ経過は良好ですが、対処せずに放置すると、うつ病などの他の精神疾患に移行する恐れがあります。

自律神経失調症

自律神経失調症は、自律神経のバランスが崩れることでさまざまな身体的・精神的症状が現れる状態です。急に涙が出る、感情の浮き沈みが激しいといった症状は、自律神経のバランスの乱れによるものかもしれません。自律神経失調症の原因は、ストレスや生活習慣の乱れ、過労、睡眠不足など、日常生活に密接に関連しています。特に現代社会では、過度なストレスや精神的な負担が原因となることが多いと言われています。自律神経失調症では、涙が出やすくなる以外にも、動悸、めまい、頭痛、不眠、倦怠感、手足の冷えなど、多岐にわたる症状が現れることがあります。

その他の関連する精神疾患

双極性障害(躁うつ病)は、気分が高揚する躁状態と気分が落ち込むうつ状態を繰り返す疾患です。涙が出ることに加え、気分の大きな落差が見られる場合は、双極性障害の可能性も考えられます。心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、生死に関わるような強い衝撃の出来事を経験し、その体験が自分の意思とは関係なく繰り返しよみがえる反応です。きっかけとなる出来事に心当たりがある場合は、PTSDの可能性が考えられます。パニック障害は、場所や時間に関係なく強い恐怖・不安・苦痛が突然生じたり、動悸やめまい・息苦しさなどの発作を伴う疾患です。発作に伴って涙が出ることもあります。

ホルモンバランスの変化と涙の関係

女性の場合、ホルモンバランスの変化が涙もろさに大きく影響することがあります。月経周期や妊娠、更年期など、ライフステージによって女性ホルモンは大きく変動し、それに伴って心身にさまざまな変化が現れます。

月経前症候群(PMS)と涙もろさ

月経前症候群(PMS)は、生理が始まる前の3日から10日ほど前から起こる心と体のさまざまな不調のことです。月経がある女性の約70から80パーセントが月経前に何らかの症状を経験すると言われています。PMSの症状は200種類以上あるとも言われ、その中には「涙もろくなる」「わけもなく涙が出る」といった症状も含まれています。イライラする、怒りっぽくなる、憂鬱な気分になるなどの精神的な症状と、頭痛、腹痛、むくみなどの身体的な症状が複合的に現れることが多いです。PMSの症状は月経が始まると自然に消えたり軽くなったりするのが特徴です。PMSの原因ははっきりとはわかっていませんが、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの変動が関わっていると考えられています。

月経前不快気分障害(PMDD)

PMSよりもさらに精神的な症状が重い場合、月経前不快気分障害(PMDD)と診断されることがあります。PMDDでは、突然悲しくなったり涙もろくなったりする症状が強く出ることがあります。抑うつ気分、不安、緊張、イライラ、怒りっぽさなどの精神症状が著しく、日常生活に大きな支障をきたします。PMDDは医学的な治療が必要な状態であり、適切な診断と治療によって症状の改善が期待できます。月経周期に合わせて症状が悪化し、月経が始まると症状が改善するというパターンがある場合は、婦人科や心療内科への相談をお勧めします。

更年期障害と涙の症状

更年期とは、閉経前後の約10年間、一般的に45歳から55歳頃までの時期を指します。この時期には卵巣機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少します。更年期には、のぼせ、ほてり、発汗、動悸、めまいなどの身体的症状に加え、イライラ、憂鬱感、不安感などの精神的症状が現れることがあります。急に涙もろくなったり、感情のコントロールが難しくなったりすることも、更年期障害の症状の一つです。最近では、ストレスによってホルモンバランスを崩すことも多く、30代や40代でもプレ更年期障害として同様の症状が現れることがあります。更年期の症状には個人差が大きく、ほとんど症状を感じない方もいれば、日常生活に支障が出るほど強い症状を経験する方もいます。

涙を流すことのメリットとストレス解消効果

涙を流すことには、実はさまざまなメリットがあります。「泣くことは恥ずかしい」「涙を見せるのは弱さだ」という価値観を持つ方もいるかもしれませんが、科学的には涙を流すことは心身の健康に良い効果をもたらすことがわかっています。

ストレスホルモンの排出

慢性的なストレスは、心臓発作のリスクを高めたり、脳に損傷を与えたり、消化器官の潰瘍、緊張性頭痛、偏頭痛などの疾病につながったりすると言われています。涙には、コルチゾールと呼ばれるストレスホルモンを低下させる作用があります。コルチゾールは心身の健康に悪影響を及ぼすため、涙を流すことでストレスホルモンを体外に排出するデトックス効果が期待できます。泣いた後になぜか気持ちがスッキリするのは、このためかもしれません。

自律神経のバランス調整

ストレスを感じると交感神経が働き、心拍数や血圧が上がります。逆に、リラックスしていると副交感神経が働き、心拍数や血圧が下がります。涙を流すと、副交感神経が活発になり、体がリラックスした状態になります。つまり、涙を流すことで、ストレスで興奮した状態から一気にリラックス状態へと切り替わるのです。通常、睡眠で脳の疲労を解消しようとすると7から8時間の睡眠時間が必要になりますが、泣くことでそれよりはるかに短い時間で脳のストレスを解消できるとも言われています。

セロトニンの活性化

感動して涙を流すと、脳の前頭前野の血流がアップします。前頭前野の血流がアップすると、その近くにあるセロトニン神経が刺激され、セロトニンの分泌が増加します。セロトニンは精神の安定や安心感、平常心を保つために重要な神経伝達物質です。泣いた後に気持ちがスッキリするのは、セロトニンが増加して心が落ち着くためでもあります。感動できる映画や小説に触れて涙を流すことは、健康にも良い影響があると言えるでしょう。

涙に含まれる物質の効果

涙の中には、苦痛を和らげるエンドルフィンというホルモンも含まれています。エンドルフィンの鎮静作用はモルヒネより大きいとも言われており、痛いときに涙を流すことは、人体の仕組みとしても理にかなっています。また、感情的な涙にはさまざまなホルモンが含まれており、それらを分泌・排出することで心身のバランスを調整していると考えられています。紀元1世紀から「涙を流すことで怒りを分散させている」「涙を流すと気が晴れる」と言われてきたように、泣くことの効用は古くから認識されていたのです。

つらくて涙が出るときの対処法

つらくて涙が出てしまうとき、どのように対処すればよいのでしょうか。ここでは、ご自身でできる対処法をご紹介します。

ストレスの原因を把握する

まずは、ご自身が抱えているストレスの原因を考えてみましょう。特に大きな出来事が短期間で続いた場合、気づかないうちにストレスが溜まっていることがあります。心身ともに無理をしていないか、振り返って確認することが大切です。ストレスの原因がわかっている場合は、可能であれば一度そこから離れてみることも重要です。例えば、仕事に対してストレスを感じている場合は、1日でも仕事を休んでみたり、せめて昼休みに外の空気を吸いに行ったりするだけでも違います。定期的に、無理をしていないか生活を振り返り、ストレスを発散する機会を設けることで、ストレスを抱え込まないようにしましょう。

気持ちを書き出す

急に涙が出るときは、自分の気持ちをノートやメモに書き出すことが効果的です。自分の気持ちを客観視しやすくなり、心の中を整理することができます。自分の気持ちを書き出すことは、1980年代から提唱されているストレス解消法です。アメリカの社会心理学者によると、過去のトラウマとなった出来事について書くことで、健康状態が改善する効果が見られたという研究結果もあります。思っていることを紙に書き出すと思考が整理されるため、ストレスが緩和されます。日記のような形式でなくても構いません。その日感じたこと、モヤモヤしていることを自由に書き出してみましょう。

規則正しい生活を心がける

睡眠不足は脳の機能を低下させ、感情のコントロールを難しくします。十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活リズムを維持することが大切です。また、起床直後に朝日を浴びると、セロトニンの分泌が活性化されます。セロトニンは精神を安定させる効果があるため、朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びる習慣をつけるとよいでしょう。バランスの良い食事も重要です。セロトニンの原料となるトリプトファンは、カツオやマグロ、乳製品、大豆製品、ナッツ類、バナナなどに含まれています。これらの食品を意識的に取り入れることで、セロトニンの生成をサポートできます。

適度な運動を取り入れる

運動は、自律神経を整えて交感神経と副交感神経の働きを高める効果があります。気分の落ち込みの改善やストレスの発散にも効果的です。特にリズミカルな運動は、セロトニン神経を活性化するのに効果があります。ウォーキング、ジョギング、水泳、ダンスなど、一定のリズムを刻む運動を継続して行うと、セロトニンの分泌が促進されます。まずは軽いウォーキングから始めてみましょう。ヨガやストレッチなどのゆったりとした運動も、体の緊張をほぐし精神的なリラックスにつながるためお勧めです。リズム運動は毎日行うことが重要で、3か月ほど続けるとセロトニンの基礎値が上がり、ストレス耐性の強い体質になると言われています。

涙を我慢しない

涙を流したいと感じたときは、可能であれば我慢せずに涙を流しましょう。先述のとおり、涙を流すことにはストレス解消効果があります。泣きたいのに我慢して泣かないでいることが癖になってしまうと、素直に泣いた場合よりもより多くのストレスを感じてしまうことがあります。泣きたいという正常な反応に対してきちんと泣くことで、感情の処理や気持ちの整理をすることができるのです。感動できる映画やドラマを観て涙を流すことも、ストレス解消法として効果的です。週末などに泣ける作品を見て、1週間分のストレスを洗い流してみてはいかがでしょうか。ただし、「泣いてはいけない場面」で我慢しながら泣いてしまうと、かえってストレスが増大することもあります。泣いても大丈夫な環境で、気兼ねなく涙を流せることが大切です。

周囲の人に相談する

ストレスを感じたときや環境を変えたいと思ったときは、一人で抱え込まずに誰かに相談することがとても大切です。家族や友人、話しやすい同僚などに相談してみましょう。相談することで、新たな視点を得られたり、解決策が見つかったりすることもあります。また、話を聞いてもらうだけでも気持ちが軽くなることがあります。相談する内容がまとまらなくても、自分の思っていることを正直に伝えることが大切です。身近に相談できる人がいない場合は、公的な相談窓口を利用することもできます。厚生労働省が運営する「こころの耳」では、電話やメールで相談を受け付けています。

専門家への相談が必要な目安

セルフケアを試みても症状が改善しない場合や、日常生活に支障が出ている場合は、専門家に相談することを検討しましょう。ここでは、医療機関への受診が必要となる目安についてお伝えします。

このような症状があれば受診を検討しましょう

以下のような症状が見られる場合は、心療内科や精神科への受診をお勧めします。理由のわからない涙が2週間以上続いている。涙だけでなく、気分の落ち込みや意欲の低下が著しい。眠れない、食欲がないなどの身体症状が悪化している。仕事や家事、学業などに集中できず、日常生活に支障が出ている。「消えてしまいたい」「自分には価値がない」といった否定的な考えが頻繁に浮かぶ。急に涙もろくなる、涙が止まらない、頻繁に泣くといった症状が続いている。以前はできていたことができなくなった。これらの症状が2週間以上続く場合は、うつ病の可能性があります。うつ病も体の病気と同じく、早期発見・早期治療が大切です。受診を迷うほどに「つらい」「苦しい」と感じているなら、その苦痛から解放されるためにも専門家に相談しましょう。

心療内科と精神科の違い

心療内科は、ストレスや心理的な要因が関与する身体の症状を主に扱います。一方、精神科は、うつ病や不安障害、統合失調症など、主に精神的な症状を扱います。実際には両者の境界はあいまいで、どちらに相談しても適切な科を紹介してもらえることがほとんどです。涙が止まらない、気分が落ち込むなどの症状がある場合は、まず心療内科か精神科を受診するとよいでしょう。どこに相談すればよいかわからない場合は、かかりつけ医に相談することもできます。症状や状況に応じて、適切な専門医を紹介してくれます。また、各自治体の精神保健福祉センターや、厚生労働省の「こころの健康相談統一ダイヤル」でも相談を受け付けています。

目の症状が気になる場合

精神的な原因だけでなく、目自体の問題で涙が出ている可能性もあります。涙目と同時に、目の痛み、かゆみ、充血、目やにがある場合や、視力の低下を感じる場合は、まず眼科を受診することをお勧めします。眼科では、涙の分泌量や涙道の通りを調べる検査を行い、流涙症の原因を特定します。目の病気が原因であれば、点眼薬や手術などの治療によって症状を改善できることがあります。

女性特有の症状が疑われる場合

月経周期と連動して涙もろくなる、更年期に入ってから感情のコントロールが難しくなったなど、ホルモンバランスの変化が関係していると思われる場合は、婦人科への相談も検討しましょう。PMSや更年期障害に対しては、生活習慣の改善や漢方薬、ホルモン補充療法など、さまざまな治療法があります。月経周期に合わせて症状が悪化し、月経期間になると症状が改善するといったパターンがある場合は、婦人科で相談することで適切な治療を受けられます。

よくある質問

悲しくないのに涙が出るのはなぜですか?

悲しくないのに涙が出る原因はいくつか考えられます。精神的な面では、ストレスの蓄積や自律神経の乱れ、セロトニンの機能低下などが関係していることがあります。また、うつ病や適応障害、自律神経失調症などの精神疾患の症状として現れることもあります。女性の場合は、月経前症候群(PMS)や更年期障害によるホルモンバランスの変化が原因となることもあります。身体的な面では、ドライアイや結膜弛緩症、涙道閉塞などの目の病気が原因で涙があふれることがあります。症状が続く場合は、心療内科や眼科など、症状に応じた医療機関への受診をお勧めします。

涙が止まらないのはうつ病のサインですか?

急に涙もろくなる、涙が止まらない、頻繁に泣くといった症状は、うつ病の初期症状である可能性があります。ただし、涙が出ること自体は正常な感情表現であり、それだけでうつ病とは言えません。うつ病の場合は、涙もろくなる以外にも、気分の落ち込みが2週間以上続く、興味や喜びを感じられない、食欲がない、眠れない、疲れやすい、集中力が低下するなどの症状が見られます。これらの症状が複数当てはまり、日常生活に支障が出ている場合は、心療内科や精神科への受診をお勧めします。なお、重度のうつ病では逆に泣けなくなることがあり、治療が進んで泣けるようになることは回復のきざしである場合もあります。

仕事中や通勤途中に涙が出てしまうのですが、どうすればよいですか?

職場に近づくと涙が出る、仕事中に涙が出るという場合は、仕事や職場環境が大きなストレスの原因となっている可能性があります。このような状態は適応障害の症状である可能性もあります。まずは、仕事の進め方や量を見直し、可能であれば上司や同僚に相談してみましょう。一人で解決が難しい場合は、産業医や会社の相談窓口を利用することもできます。十分な休息をとり、睡眠時間を確保することも大切です。症状が続く場合や、日常生活に大きな支障が出ている場合は、心療内科や精神科を受診することをお勧めします。ストレスの原因から離れることで症状が改善することも多いため、休職を含めた選択肢について医師と相談することも検討してください。

生理前になると涙もろくなるのは普通ですか?

生理前に涙もろくなるのは、月経前症候群(PMS)の症状として珍しいことではありません。月経がある女性の約70から80パーセントが月経前に何らかの症状を経験すると言われており、涙もろくなることはその症状の一つです。PMSは女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの変動が関わっていると考えられています。症状は月経が始まると自然に軽くなることが特徴です。ただし、症状が強く日常生活に支障が出ている場合や、精神的な症状が著しい場合は、月経前不快気分障害(PMDD)の可能性もあります。症状がつらい場合は、婦人科や心療内科で相談することで、適切な治療やアドバイスを受けられます。

涙が出るときはどの病院に行けばよいですか?

涙が出る原因によって、受診すべき診療科が異なります。精神的なストレスが原因と思われる場合や、気分の落ち込み、不安、不眠などの症状を伴う場合は、心療内科や精神科を受診しましょう。目のかゆみ、充血、目やに、視力低下などの目の症状を伴う場合は、まず眼科を受診することをお勧めします。月経周期に関連して涙もろくなる場合や、更年期の症状が疑われる場合は、婦人科への相談も検討してください。どこに相談すればよいかわからない場合は、まずかかりつけ医に相談すると、症状に応じた適切な専門医を紹介してもらえます。また、厚生労働省が運営する「こころの耳」や各自治体の精神保健福祉センターでも相談を受け付けています。

まとめ

つらくて涙が出てしまうという症状には、さまざまな原因が考えられます。精神的なストレスの蓄積、自律神経のバランスの乱れ、セロトニンの機能低下、うつ病や適応障害などの精神疾患、月経前症候群や更年期障害によるホルモンバランスの変化、そして目の病気など、その背景は多岐にわたります。涙を流すこと自体は人間にとって自然な反応であり、ストレス解消にも役立ちます。しかし、理由もなく涙が頻繁に出る、涙が止まらない状態が続くといった場合には、心や体からのSOSサインである可能性があります。ご自身でできる対処法として、ストレスの原因を把握すること、気持ちを書き出すこと、規則正しい生活を心がけること、適度な運動を取り入れること、涙を我慢しないこと、そして周囲の人に相談することなどがあります。しかし、症状が2週間以上続いたり、日常生活に支障が出ていたりする場合は、専門家への相談をお勧めします。心療内科や精神科、眼科、婦人科など、症状に応じた医療機関を受診することで、適切な診断と治療を受けることができます。一人で抱え込まず、まずは信頼できる人や専門家に相談してみてください。あなたの涙は、心と体が休息を求めているサインかもしれません。その声に耳を傾け、ご自身を大切にしていただければ幸いです。


参考文献

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、医療上のアドバイスに代わるものではありません。症状が気になる場合は、必ず医療機関を受診してください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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