はじめに
「歯が痛いけど、これって虫歯?」「鏡で見ても虫歯かどうかわからない」そんな疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。虫歯は日本人の約9割が経験すると言われる身近な病気でありながら、初期段階では自覚症状が少なく、気づいたときには進行していることも少なくありません。
虫歯を早期に発見し、適切な治療を受けることは、歯の健康を守るために非常に重要です。本記事では、虫歯の見分け方について、症状や進行段階ごとの特徴、セルフチェックのポイントまで詳しく解説します。自分の歯の状態を正しく理解し、早めの対処につなげていただければ幸いです。
虫歯とは?基礎知識を理解する
虫歯のメカニズム
虫歯は、正式には「う蝕(うしょく)」と呼ばれる歯の病気です。口の中に存在する細菌(主にミュータンス菌)が、食べ物や飲み物に含まれる糖分を栄養源として酸を産生し、この酸が歯の表面を溶かすことで発生します。
歯の表面は「エナメル質」という非常に硬い組織で覆われていますが、酸に長時間さらされることで少しずつ溶け出し(脱灰)、やがて穴が開いてしまいます。この穴が虫歯の正体です。
虫歯ができやすい場所
虫歯は歯のどこにでもできる可能性がありますが、特にできやすい場所があります。
- 歯と歯の間(隣接面):歯ブラシが届きにくく、食べかすが残りやすい
- 奥歯の溝(咬合面):複雑な形状をしており、汚れが溜まりやすい
- 歯と歯茎の境目(歯頸部):歯ブラシが当たりにくく、磨き残しが多い
- 詰め物や被せ物の境目:隙間から細菌が侵入しやすい
これらの部位は日常的なセルフチェックでも特に注意して観察する必要があります。
虫歯の進行段階と見分け方
虫歯は進行度によってC0からC4までの5段階に分類されます。それぞれの段階での見た目の特徴や症状を理解することで、自分の歯の状態をある程度判断できるようになります。
C0:初期う蝕(初期虫歯)
見た目の特徴
- 歯の表面に白く濁った部分(白斑)が現れる
- まだ穴は開いていない
- 光沢が失われ、チョークのような白さになる
- 主に奥歯の溝や歯と歯茎の境目に見られる
症状
- 痛みなどの自覚症状はまったくない
- 冷たいものがしみることもない
- 本人が気づかないことがほとんど
見分け方のポイント 明るい場所で鏡を使い、歯の表面をよく観察してください。健康な歯は光沢があり透明感がありますが、初期虫歯の部分は艶がなく、白く濁って見えます。特に前歯の表面や奥歯の溝に白い部分がないかチェックしましょう。
この段階であれば、適切なケアによって再石灰化を促し、虫歯の進行を止めたり、元に戻したりできる可能性があります。
C1:エナメル質の虫歯
見た目の特徴
- 歯の表面に茶色や黒っぽい変色が見られる
- 小さな穴や凹みができ始める
- 歯の溝が茶褐色に着色している
- 歯の透明感が失われる
症状
- 基本的に痛みはない
- 冷たいものや甘いものが一瞬しみることがある(軽度)
- 舌で触ると表面がざらついている感じがする
見分け方のポイント 歯の表面に茶色や黒い点、線が見えたら要注意です。ただし、すべての着色が虫歯とは限りません。コーヒーやお茶による外来性の着色(ステイン)と区別する必要があります。虫歯による変色は歯の内部から起こるため、歯ブラシでこすっても取れません。また、表面を爪で軽く引っかいたときに引っかかる感覚があれば、穴が開いている可能性があります。
C2:象牙質に達した虫歯
見た目の特徴
- はっきりとした穴が確認できる
- 黒褐色の変色が目立つ
- 穴の周囲の歯質が脆くなっている
- 食べ物が詰まりやすくなる
症状
- 冷たいものや甘いものがしみる
- 熱いものでもしみることがある
- 食事中に痛みを感じることがある
- しみる感覚が数秒から数十秒続く
- 歯ブラシが当たると痛い
見分け方のポイント この段階になると、目で見てはっきりと穴が確認できることが多くなります。奥歯の場合、噛む面の溝に黒い線や穴が見える、または歯と歯の間に黒い影が見えることがあります。食事のときに特定の歯に食べ物が挟まりやすくなった、同じ場所でしみる症状が繰り返されるといった変化も、C2段階の虫歯のサインです。
象牙質はエナメル質より柔らかいため、この段階から虫歯の進行速度が速まります。できるだけ早く歯科医院を受診することをおすすめします。
C3:歯髄(神経)に達した虫歯
見た目の特徴
- 大きな穴が開いている
- 歯の一部が欠けたり崩れたりしている
- 深い黒色の変色
- 歯の形が大きく変わっている
症状
- 何もしなくてもズキズキと強く痛む
- 夜間に痛みで目が覚める
- 痛み止めが効きにくい
- 頭痛や顔の腫れを伴うことがある
- 冷たいものより温かいもので強く痛む
- 痛みが顔全体に広がる感じがする
見分け方のポイント この段階は自覚症状が非常に強いため、見分けることは容易です。持続的な強い痛みがある場合は、虫歯が神経に到達している可能性が高いと考えられます。視覚的にも大きな穴や歯の崩壊が確認できることが多いでしょう。
ただし、注意が必要なのは、強い痛みが数日間続いた後、突然痛みが消えることがあることです。これは「治った」のではなく、神経が完全に死んでしまったためです。痛みがなくなっても虫歯は進行し続けるため、必ず歯科医院を受診してください。
C4:歯冠が崩壊した状態
見た目の特徴
- 歯の頭の部分がほとんどなくなり、根だけが残っている
- 黒く変色した根が歯茎から突き出ている
- 周囲の歯茎が腫れていることがある
症状
- 神経が死んでいるため、痛みを感じないことが多い
- 根の先端に膿が溜まると再び激しく痛む
- 歯茎が腫れる
- 噛むと痛い
- 口臭が強くなる
- 頬や顎が腫れることがある
見分け方のポイント 歯がほとんど崩壊して根だけが残っている状態は、見た目ですぐにわかります。痛みがないからといって放置すると、根の先端に膿の袋(根尖病巣)ができ、そこから細菌が全身に広がる可能性もあります。また、隣の健康な歯にも悪影響を及ぼします。
この段階では抜歯が必要になることも多く、治療の選択肢が限られてきます。
自宅でできる虫歯のセルフチェック方法
定期的なセルフチェックは、虫歯の早期発見に非常に有効です。以下の方法を参考に、月に1〜2回程度、自分の歯の状態を確認する習慣をつけましょう。
視覚的チェックの方法
準備するもの
- 明るい照明
- 手鏡(できれば拡大鏡)
- デンタルミラー(歯科用の小さな鏡)があればなお良い
チェック手順
- 前歯の確認
- 明るい場所で、口を大きく開けて前歯を観察します
- 歯の表面に白い斑点、茶色や黒い変色がないかチェック
- 歯と歯の間に黒い影や隙間がないか確認
- 奥歯の確認
- 口を大きく開け、頬を指で引っ張りながら奥歯を観察
- 噛む面の溝に黒い線や穴がないかチェック
- 歯の側面に茶色や黒い部分がないか確認
- 歯茎との境目の確認
- すべての歯について、歯と歯茎の境目を観察
- 白く濁った部分や茶色の変色がないかチェック
- 詰め物・被せ物の確認
- 詰め物の周囲に変色や段差がないか確認
- 詰め物と歯の間に隙間ができていないかチェック
症状によるチェック
見た目だけでなく、以下のような症状がある場合は虫歯の可能性があります。
冷たいもので試すチェック
- 冷水を口に含んで、各歯でしみるかどうか確認
- しみる場所、しみ方の強さ、しみる時間をメモ
甘いもので試すチェック
- 砂糖水や甘いものを食べたときに痛みがないか確認
- 痛む場所を特定する
噛んでチェック
- 食事中にどこか痛む歯がないか意識する
- 食べ物が挟まりやすい場所がないか確認
舌で触るチェック
- 舌で歯の表面をなぞり、ざらつきや穴がないか確認
- 歯の形が変わっていないか、欠けている部分がないかチェック
チェック時の注意点
- 虫歯と思われる部分を強く押したり、尖ったもので突いたりしない
- 痛みがある場合は無理にチェックせず、早めに歯科医院を受診
- セルフチェックはあくまで参考で、確定診断は歯科医師にしかできません
- 歯の裏側や歯と歯の間など、自分では見えにくい場所もあることを理解する
虫歯と間違えやすい症状
虫歯に似た症状を示す他の歯の問題もあります。正しく見分けることで、適切な対処が可能になります。
知覚過敏
特徴
- 冷たいものがしみるが、しみる時間が短い(数秒程度)
- 刺激がなくなるとすぐに痛みが消える
- 歯の表面に穴や変色は見られない
- 歯茎が下がって歯の根元が露出していることが多い
見分け方 虫歯のしみ方は刺激が消えた後も数十秒続くことが多いですが、知覚過敏は刺激がなくなるとすぐに症状が消えます。また、視覚的に虫歯の兆候(変色や穴)が見られない場合は知覚過敏の可能性が高いでしょう。
歯の着色(ステイン)
特徴
- 歯の表面に茶色や黄色の着色がある
- 主にコーヒー、お茶、タバコなどが原因
- 表面的な着色で、穴は開いていない
- 痛みやしみる症状はない
見分け方 虫歯による変色は歯の内部から起こり、歯ブラシでこすっても取れませんが、ステインは表面的な着色なので、専門的なクリーニングで除去できます。また、虫歯は特定の部位(溝や隙間)に発生しやすいですが、ステインは歯の表面全体に広がることが多いです。
酸蝕症
特徴
- 酸性の飲食物によって歯が溶ける
- 歯の表面が薄くなり、透明感が増す
- 歯が黄色く見えることがある(象牙質が透けて見える)
- 歯全体がしみやすくなる
見分け方 虫歯は局所的に発生しますが、酸蝕症は広範囲に歯が溶けます。また、虫歯のような黒褐色の変色ではなく、歯が薄くなって黄色っぽく見えることが特徴です。
歯周病による痛み
特徴
- 歯茎が腫れて痛む
- 歯が浮いたような感じがする
- 噛むと痛い
- 歯茎から出血する
見分け方 虫歯は歯そのものの痛みですが、歯周病は主に歯茎の問題です。歯茎が赤く腫れている、出血する、歯がグラグラするといった症状がある場合は歯周病を疑います。
歯の亀裂(クラック)
特徴
- 歯に目に見えない細かい亀裂が入っている
- 噛んだときに鋭い痛みを感じる
- 冷たいものがしみることもある
- 見た目では虫歯の兆候がない
見分け方 特定のものを噛んだときだけ痛む、または噛む角度によって痛みが変わる場合は、歯の亀裂の可能性があります。虫歯のように常にしみるわけではなく、圧力がかかったときだけ症状が出るのが特徴です。
年齢別・状況別の虫歯の見分け方
子どもの虫歯の見分け方
子どもの虫歯は大人とは異なる特徴があり、見分け方にもコツがあります。
乳歯の虫歯の特徴
- 進行が速い(乳歯は永久歯より柔らかいため)
- 白っぽい虫歯が多い(白濁した部分)
- 前歯の裏側にできやすい(哺乳瓶虫歯)
- 奥歯の溝にできやすい
チェックのポイント
- 前歯の裏側を確認する(哺乳瓶やおやつの与え方が原因のことが多い)
- 歯と歯の間に黒い影がないかチェック
- 子どもが「痛い」と言わなくても、食事を嫌がる、片側だけで噛むなどの行動変化に注目
- 仕上げ磨きの際に歯の色や形の変化を観察
子ども特有の注意点
- 子どもは痛みを正確に表現できないことが多い
- 虫歯があっても「痛くない」と言うことがある
- 定期的な歯科検診(3〜6ヶ月ごと)が特に重要
高齢者の虫歯の見分け方
高齢者には特有の虫歯リスクと特徴があります。
高齢者の虫歯の特徴
- 歯の根元にできる根面う蝕が多い
- 詰め物や被せ物の周囲から虫歯が進行する二次う蝕が多い
- 唾液の分泌が減少し、虫歯リスクが高まる
チェックのポイント
- 歯茎が下がって露出した根元の部分を重点的にチェック
- 古い詰め物の周囲に変色や段差がないか確認
- 口の乾燥感があるかどうか意識する
高齢者特有の注意点
- 痛みを感じにくくなっていることがある
- 複数の歯に同時に問題を抱えていることが多い
- 全身疾患や服用薬の影響で唾液が減少していることがある
妊娠中の虫歯の見分け方
妊娠中は虫歯リスクが高まる時期です。
妊娠中の虫歯リスクが高まる理由
- つわりで歯磨きが十分にできない
- 食事の回数が増える
- ホルモンバランスの変化で唾液の質が変わる
- 歯茎が腫れやすくなる
チェックのポイント
- つわりが落ち着いたら、できるだけ丁寧にセルフチェック
- 歯茎の腫れと虫歯を区別する
- 少しでも異変を感じたら、妊娠中でも歯科受診が可能なので相談
虫歯を発見したらすべきこと
セルフチェックで虫歯が疑われる場合、または虫歯の可能性がある症状がある場合は、以下の対応を取りましょう。
すぐに歯科医院を受診すべき症状
以下の症状がある場合は、できるだけ早く(できれば数日以内に)歯科医院を受診してください。
- 何もしなくてもズキズキと痛む
- 夜間に痛みで目が覚める
- 痛み止めを飲んでも効果がない
- 顔や歯茎が腫れている
- 熱が出ている
- 口が開けにくい
- 食事ができないほどの痛み
これらは虫歯が重症化している、または感染が広がっているサインです。
早めの受診が望ましい症状
以下の症状がある場合は、1〜2週間以内を目安に歯科医院を受診しましょう。
- 冷たいものや甘いものがしみる
- 特定の歯で噛むと痛い
- 歯に黒い変色や穴が見える
- 食べ物が頻繁に同じ場所に挟まる
- 歯の一部が欠けた
応急処置の方法
歯科医院を受診するまでの間、以下の方法で症状を和らげることができます。
痛みがある場合
- 市販の鎮痛剤を服用(用法・用量を守る)
- 冷やしすぎない程度に頬の外側を冷やす
- 刺激物(熱いもの、冷たいもの、甘いもの、硬いもの)を避ける
- 痛む側では噛まないようにする
穴が開いている場合
- 食べかすが詰まらないように食後は口をすすぐ
- 歯ブラシは優しく当てる
- 爪楊枝や尖ったもので穴をつつかない
してはいけないこと
- 痛む歯を舌や指で刺激する
- 市販の詰め物材料で自分で穴を埋める
- アルコールを飲む(痛みが悪化することがある)
- 入浴やスポーツなど、血行が良くなることをする(痛みが強まる)
- 痛いからといって歯磨きを完全にやめる
歯科医院での診断と治療
歯科医院では、以下のような方法で正確な診断が行われます。
診断方法
- 視診:目で見て虫歯の有無を確認
- 触診:専用の器具で歯の硬さや穴の深さを確認
- レントゲン検査:歯と歯の間、詰め物の下など、目に見えない部分の虫歯を発見
- 光学式う蝕検出器:レーザーで虫歯を検出する最新技術
進行段階別の治療方法
C0〜C1の場合
- フッ素塗布による再石灰化促進
- シーラント(予防充填)
- 経過観察
C2の場合
- 虫歯部分を削り、詰め物(レジン、インレーなど)で修復
- 治療回数:1〜2回
C3の場合
- 根管治療(神経を取り除く治療)
- 被せ物(クラウン)で修復
- 治療回数:3〜5回以上
C4の場合
- 抜歯が必要な場合が多い
- 抜歯後はブリッジ、入れ歯、インプラントなどで欠損を補う
虫歯予防の基本
虫歯を見分ける方法を知ることも重要ですが、そもそも虫歯を作らない予防が最も大切です。
正しい歯磨きの方法
基本の磨き方
- 歯ブラシは鉛筆を持つように軽く持つ
- 歯に対して45度の角度で当てる
- 小刻みに動かす(1〜2mmの幅)
- 1本ずつ丁寧に磨く
- 磨く順番を決めて磨き残しを防ぐ
磨く時間と回数
- 1回3分以上、1日2〜3回
- 特に就寝前の歯磨きが重要(睡眠中は唾液が減少するため)
歯ブラシの選び方
- 毛の硬さ:ふつう〜やわらかめ
- ヘッドのサイズ:小さめ(奥歯まで届きやすい)
- 交換時期:1ヶ月に1回
デンタルフロスと歯間ブラシの使用
歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れは約60%しか除去できません。デンタルフロスや歯間ブラシを併用することで、除去率が約80〜90%に上がります。
デンタルフロスの使い方
- 40cm程度の長さを切り取る
- 両手の中指に巻きつけ、1〜2cmの間隔を作る
- 歯と歯の間に優しく挿入し、上下に動かす
- 歯の側面に沿わせて汚れを取る
- 1日1回、特に就寝前に使用
歯間ブラシの選び方と使い方
- 歯と歯の隙間に合ったサイズを選ぶ
- 無理に押し込まない
- 歯茎を傷つけないよう優しく使用
- 歯間に隙間がある場合に効果的
フッ素の活用
フッ素には以下の効果があります。
- 歯の再石灰化を促進
- 歯質を強化
- 虫歯菌の活動を抑制
フッ素の取り入れ方
- フッ素配合歯磨き粉の使用(濃度1000ppm以上が推奨)
- フッ素洗口剤の使用
- 歯科医院でのフッ素塗布(3〜6ヶ月ごと)
フッ素歯磨き粉の効果的な使い方
- 歯磨き粉は歯ブラシの1/3〜1/2程度の量
- 磨いた後のすすぎは少量の水で1回程度
- 磨いた後30分は飲食を控える
食生活の改善
虫歯になりにくい食生活
- 間食の回数を減らす(1日3回の食事+おやつは1〜2回まで)
- 糖分の多い飲食物を控える
- だらだら食べをしない
- 食後は口をすすぐか歯を磨く
- よく噛んで食べる(唾液の分泌を促進)
虫歯予防に良い食品
- チーズ:カルシウムが豊富で再石灰化を促進
- 無糖のガム(キシリトール配合):唾液の分泌を促進
- お茶:カテキンに抗菌作用がある
- 野菜:よく噛むことで唾液が増える
避けるべき習慣
- 寝る前の甘い飲食物
- ペットボトルの飲み物を長時間かけて飲む
- 飴やガムを常に口に入れている
- 炭酸飲料の頻繁な摂取
定期検診の重要性
虫歯の早期発見には、定期的な歯科検診が最も効果的です。
検診の頻度
- 一般的:3〜6ヶ月に1回
- 虫歯になりやすい人:3ヶ月に1回
- 子ども:3〜4ヶ月に1回
- 高齢者:3〜4ヶ月に1回
定期検診で行われること
- 虫歯のチェック
- 歯周病のチェック
- 歯のクリーニング(歯石除去、着色除去)
- ブラッシング指導
- フッ素塗布(希望があれば)
定期検診のメリット
- 初期虫歯の段階で発見できる
- 治療が簡単で、痛みも少ない
- 治療費が安く済む
- 歯を長持ちさせられる
- 口臭予防にもなる
虫歯と全身の健康の関係
虫歯は単なる歯の問題ではなく、全身の健康にも影響を与えることがわかっています。
虫歯が引き起こす全身への影響
感染症のリスク
- 虫歯から細菌が血流に入り、全身に広がる可能性
- 心内膜炎のリスク(特に心臓に既往がある人)
- 糖尿病の悪化(炎症が血糖コントロールを悪化させる)
栄養状態の悪化
- 痛みで十分に噛めなくなる
- 栄養の偏りや不足
- 消化器官への負担
QOL(生活の質)の低下
- 痛みによる睡眠障害
- 集中力の低下
- 社会生活への影響(口臭、見た目など)
虫歯予防が全身の健康につながる
口腔内を清潔に保ち、虫歯を予防することは、以下のような全身の健康維持につながります。
- 誤嚥性肺炎の予防(特に高齢者)
- 心臓病や脳卒中のリスク低減
- 糖尿病の管理改善
- 認知症の予防(よく噛むことが脳の活性化につながる)
- 妊婦の早産・低体重児出産のリスク低減

よくある質問
A. 初期虫歯(C0)の段階であれば、適切なケアとフッ素の使用により再石灰化が起こり、進行を止めたり改善したりする可能性があります。しかし、一度穴が開いてしまった虫歯(C1以降)は自然に治ることはなく、歯科治療が必要です。
A. はい、あります。虫歯の初期段階(C0〜C2)では痛みを感じないことが多く、かなり進行してから痛みが出ることも少なくありません。また、神経が死んでしまった場合(C4)も痛みを感じなくなります。そのため、定期的な検診が重要です。
A. 必ずしもそうではありません。歯の溝の着色や、以前の治療で詰めた物質が変色している場合もあります。ただし、虫歯の可能性もあるため、歯科医院で確認してもらうことをおすすめします。
Q4. 虫歯と知覚過敏の見分け方は?
A. 主な違いは「しみる時間」です。知覚過敏は刺激がなくなるとすぐに(数秒以内)症状が消えますが、虫歯は刺激が消えた後も痛みが続くことが多いです。また、虫歯は視覚的に変色や穴が確認できることが多いですが、知覚過敏では歯の外観に変化がないことが一般的です。
Q5. 詰め物をした歯が虫歯になることはありますか?
A. はい、あります。これを「二次う蝕」といいます。詰め物と歯の間に隙間ができたり、詰め物の周囲から新たに虫歯が発生したりすることがあります。詰め物をした歯も定期的なチェックが必要です。
Q6. 子どもの歯が白くなっているのですが、虫歯ですか?
A. 白くなっている場合、初期虫歯の可能性があります。これは「白斑」と呼ばれ、歯の表面からカルシウムが溶け出し始めている状態です。早期に発見できれば、フッ素の使用やブラッシング改善で進行を止められる可能性があります。小児歯科で相談することをおすすめします。
Q7. 妊娠中に虫歯治療はできますか?
A. 基本的には可能です。特に妊娠中期(安定期)は治療に適した時期です。ただし、妊娠の時期や状態によって治療方法や使用する薬剤に配慮が必要なため、妊娠していることを必ず歯科医師に伝えてください。
Q8. 親知らずの虫歯は放置しても大丈夫ですか?
A. いいえ、放置すべきではありません。親知らずの虫歯は、隣の健康な歯(第二大臼歯)を虫歯にしてしまうリスクがあります。また、痛みや腫れを引き起こすこともあります。親知らずの虫歯は抜歯になることも多いですが、早めに歯科医院で相談しましょう。
まとめ
虫歯の見分け方について、進行段階ごとの特徴やセルフチェックの方法を詳しく解説してきました。重要なポイントを以下にまとめます。
虫歯の見分け方の要点
- C0(初期虫歯):白く濁った部分、痛みなし
- C1(エナメル質):茶色や黒い変色、わずかにしみる
- C2(象牙質):はっきりした穴、冷たいものがしみる
- C3(神経):大きな穴、何もしなくても強く痛む
- C4(歯冠崩壊):根だけ残る、痛みがないこともある
セルフチェックのポイント
- 明るい場所で月1〜2回、鏡を使って歯を観察
- 色の変化、穴、欠けに注意
- しみる、痛むなどの症状にも注目
- 自己判断だけに頼らず、定期検診を受ける
虫歯を発見したら
- 強い痛みや腫れがあれば、すぐに歯科医院へ
- 軽い症状でも早めの受診が大切
- 応急処置は一時的なものと理解する
予防が最も重要
- 正しい歯磨きを1日2〜3回
- デンタルフロスや歯間ブラシの併用
- フッ素の活用
- 規則正しい食生活
- 3〜6ヶ月ごとの定期検診
虫歯は早期発見・早期治療が何より大切です。痛みが出てからでは治療が複雑になり、時間も費用もかかります。定期的なセルフチェックと歯科検診の習慣をつけ、健康な歯を保ちましょう。
少しでも歯に異変を感じたら、「様子を見よう」と放置せず、早めに歯科医院を受診することをおすすめします。皆さまの歯の健康を心から願っています。
参考文献
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「う蝕(虫歯)」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-01-002.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「う蝕の予防」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-01-003.html - 日本歯科医師会「テーマパーク8020」
https://www.jda.or.jp/park/ - 厚生労働省「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/shikakoukuuhoken/index.html - 日本小児歯科学会「子どもの歯の健康」
http://www.jspd.or.jp/ - 厚生労働省 e-ヘルスネット「フッ化物の応用」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-01-004.html - 厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/62-28.html
※本記事は一般的な医学知識に基づいた情報提供を目的としており、個別の診断や治療の代替となるものではありません。歯の健康に関する具体的な問題や症状については、必ず歯科医師にご相談ください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務