はじめに
ふと身体を触ったときに「あれ、こんなところにしこりがある?」と気づいた経験はありませんか。皮膚の下に感じるしこりや膨らみは、多くの方にとって不安の種となるものです。「悪いものではないだろうか」「放っておいても大丈夫なのだろうか」という疑問が頭をよぎることでしょう。
実は、皮膚やその下の組織にできるしこりは非常に多くの種類があり、その原因もさまざまです。しこりの多くは良性の腫瘍であり、すぐに命に関わるようなものではありません。しかし、中には早期の治療が必要な悪性のものも存在するため、自己判断で放置することは避けるべきです。
本記事では、渋谷エリアで皮膚のしこりにお悩みの方に向けて、しこりの種類や原因、良性と悪性の見分け方、そして適切な治療法について、専門的な視点から分かりやすく解説していきます。皮膚のしこりについて正しい知識を持つことで、適切なタイミングでの受診につなげていただければ幸いです。
皮膚のしこりとは何か
皮膚のしこりとは、皮膚や皮下組織にできたコブやできものの総称です。医学的には「皮膚腫瘍」や「皮下腫瘤」と呼ばれます。しこりは身体のあらゆる場所にできる可能性があり、その大きさは米粒程度の小さなものから、10センチを超える大きなものまでさまざまです。硬さについても、柔らかく押すと動くものから、硬くてほとんど動かないものまで多様な特徴があります。
しこりができる原因としては、脂肪組織の増殖、皮膚から剥がれ落ちるはずの角質や皮脂の蓄積、細菌やウイルスへの感染、外傷や手術により皮膚の一部が内部に入り込むこと、発生異常、皮膚の老化など、多岐にわたります。原因によって治療法も異なるため、まずはしこりの正体を正確に診断することが重要です。
良性のしこりと悪性のしこりの違い
皮膚にできるしこりには、大きく分けて良性のものと悪性のものがあります。この違いを理解しておくことは、適切な対応を取るうえで非常に重要です。
良性腫瘍の特徴
良性のしこりは、周囲の組織を押しのけるように増殖し、肉眼的にも顕微鏡的にも周囲との境界が明瞭であることが特徴です。成長のスピードは比較的ゆっくりで、放置しても直ちに命に関わることはありません。ただし、徐々に大きくなることで見た目の問題が生じたり、神経を圧迫してしびれや痛みを引き起こしたりすることがあります。また、一部の良性腫瘍は悪性に転化する可能性もあるため、経過観察や早期治療が推奨される場合もあります。
良性腫瘍の代表例としては、粉瘤(アテローム)、脂肪腫、ガングリオン、石灰化上皮腫、脂漏性角化症、イボなどが挙げられます。これらは皮膚科や形成外科で日常的に診療される疾患です。
悪性腫瘍の特徴
一方、悪性のしこりは隣接する正常な組織に入り込んでいく浸潤性を持ち、体の他の部位に広がっていく転移を起こす可能性があります。悪性腫瘍を疑う特徴としては、硬くでこぼこした表面、押しても動かない、急速に大きくなる、出血する、ジクジクする、周囲との境界が不鮮明である、などが挙げられます。
悪性の皮膚腫瘍には、基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性黒色腫(メラノーマ)、乳房外ページェット病などがあります。皮膚の下にできるしこりでは、脂肪肉腫などの軟部肉腫も悪性腫瘍として注意が必要です。
見分け方のポイント
良性と悪性を完全に見分けることは一般の方には難しく、専門医による診察と必要に応じた検査が不可欠です。しかし、以下のようなポイントは受診の目安として参考になります。
表面の硬さと可動性については、良性腫瘍は一般的に表面が滑らかで柔らかく、押すとコロコロと動くことが多いです。一方、悪性腫瘍は周囲の組織と癒着しているため硬く、押しても動きにくい傾向があります。
出血や悪臭の有無も重要な判断材料です。悪性腫瘍の場合、表面がジクジクと湿っていたり、膿による悪臭や出血が見られたりすることがあります。特に出血はがん化のサインである可能性があるため要注意です。
大きさの変化についても注目すべきです。急激に大きくなるしこりは悪性の可能性が高いため、早急な受診が必要です。良性であっても徐々に大きくなるものは多いですが、成長のスピードが明らかに速い場合は警戒が必要です。
代表的な良性のしこり
ここからは、皮膚に見られる代表的な良性のしこりについて詳しく解説していきます。
粉瘤(アテローム・表皮嚢腫)
粉瘤は皮膚の下にできる良性腫瘍の中で最も頻度が高いものの一つです。アテロームや表皮嚢腫とも呼ばれ、本来であれば皮膚から剥がれ落ちるはずの角質や皮脂が、皮膚の内部にできた袋状の組織の中に溜まることで生じます。
粉瘤は身体のどの部分にもできる可能性がありますが、特に顔、首、背中、耳の後ろ、お尻などに発生しやすい傾向があります。大きさは数ミリから数センチまでさまざまで、初期には痛みがなく、肌色または白色でニキビのように見えることもあります。しこりの中央部には黒い点状の開口部(へそ)があることが特徴で、圧迫すると臭いのあるドロドロとした内容物が出てくることがあります。
粉瘤は放置しても自然に治ることはなく、時間とともに少しずつ大きくなっていきます。また、細菌感染を起こすと赤く腫れて痛みを伴う「炎症性粉瘤」となり、日常生活に支障をきたすこともあります。粉瘤の治療には外科的な手術が必要で、袋状の組織ごと完全に摘出しないと再発する可能性があります。
粉瘤の手術には主に二つの方法があります。一つは「くり抜き法(へそ抜き法)」で、トレパンという円筒状のメスを使って小さな穴を開け、内容物を絞り出した後に袋を引き抜く方法です。傷が小さく済むため傷跡が目立ちにくいというメリットがあります。もう一つは「切開法」で、粉瘤の直上の皮膚を紡錘形に切開し、袋ごと摘出する方法です。くり抜き法より切開が大きくなりますが、再発のリスクが低く、大きな粉瘤や癒着のある粉瘤、炎症を繰り返した粉瘤にも対応できます。
参考:済生会「しこり」
脂肪腫(リポーマ)
脂肪腫は皮下に発生する軟部組織の腫瘍の中で最も多く見られる良性腫瘍です。脂肪細胞が増殖して塊となったもので、薄い膜(被膜)に包まれています。外観としては、皮膚がドーム状に盛り上がり、触ると柔らかいしこりとして感じられます。
脂肪腫は幼少期に発生すると考えられていますが、非常にゆっくりと成長するため、40〜50歳代になってから発見されることが多いです。女性に多いとされ、肥満者にできやすい傾向もあります。身体のどこにでも発生する可能性がありますが、特に背中、肩、首に多く、次いで上腕、お尻、太ももなど体幹に近い四肢に見られます。顔や頭皮、膝下などに発生することは比較的まれです。
大きさは数ミリ程度の小さなものから、10センチ以上になるものまでさまざまです。通常は痛みなどの症状はありませんが、大きくなると神経を圧迫してしびれや痛みを生じることがあります。また、血管成分が多い「血管脂肪腫」は痛みを伴いやすく、多発する傾向があります。
脂肪腫の発生原因は完全には解明されていませんが、外傷との関連や染色体異常の関与が推測されています。また、肥満、高脂血症、糖尿病をお持ちの方にできやすい傾向があるとの報告もあります。
脂肪腫は良性腫瘍ですが、自然に消えることはなく、内容物が液体ではないため注射器で吸い出すこともできません。治療には手術による摘出が必要です。脂肪腫は時間とともに大きくなる傾向があるため、小さいうちに摘出することで傷跡も小さくて済みます。また、まれに悪性の脂肪肉腫との鑑別が必要な場合があり、5センチ以上の大きなものは病理検査を行うことが推奨されます。
参考:日本医科大学武蔵小杉病院「脂肪腫と良性悪性の判断と手術」
ガングリオン
ガングリオンは関節や腱鞘(腱を包む組織)の周囲にできる良性の腫瘤で、内部にゼリー状の粘液が詰まっていることが特徴です。最も典型的なのは手関節の背側(手の甲側)にできるもので、手首の関節包につながっています。その他、手首の母指側の掌側、指の付け根の掌側、足首、膝などにもできることがあります。
ガングリオンの大きさは米粒大からピンポン玉大までさまざまで、硬さも柔らかいものから硬いものまであります。皮膚の色は通常変わらず、しこりができる以外には症状がないことが多いです。ただし、神経のそばにできると神経を圧迫して、しびれや痛み、運動麻痺などを引き起こすことがあります。
ガングリオンは関節や腱鞘の潤滑油である滑液が袋に送り込まれ、濃縮してゼリー状になることで発生すると考えられています。若い女性に多く見られますが、必ずしも手をよく使う人にできるわけではありません。ただし、手を使いすぎると腫瘤が大きくなることはあります。
ガングリオンは良性腫瘍であるため、症状がなければ放置しても特に問題はありません。自然に消失することもあります。ただし、診断を確定するためにも整形外科を受診することが推奨されます。治療としては、注射針を刺して内容物を吸引する方法が一般的で、何回か吸引を繰り返すうちに治ることもあります。再発を繰り返す場合や、神経症状が強い場合には手術による切除が検討されます。
石灰化上皮腫
石灰化上皮腫は、皮膚の一部が石灰のように硬くなる良性の皮下腫瘍です。毛根にある毛母細胞から発生するため「毛母腫」とも呼ばれます。
石灰化上皮腫の最大の特徴は、触ると石のように硬いしこりとして感じられることです。皮膚の直下にでき、押すと皮膚の下で動きます。皮膚の色は通常正常ですが、腫瘍の上の皮膚が薄くなると黄白色や青黒い色に透けて見えることがあります。大きさは0.5〜3センチ程度のものが多いですが、まれに5センチ以上になることもあります。
石灰化上皮腫は比較的若い人、特に子どもの顔(まぶた付近)、首、腕などにできやすいのが特徴です。20歳以下の若年層に多く見られますが、40歳代以降にも発生することがあります。発生原因は完全には解明されていませんが、タンパク質の一種である「β-カテニン」の調節異常が一因とされています。
石灰化上皮腫は自然に消失することはなく、ゆっくりと成長していくため、外科的な摘出術が必要となります。良性腫瘍なので転移の心配はありませんが、放置すると大きくなり、治療時の傷跡も大きくなってしまいます。小さいうちに摘出することで、傷跡を最小限に抑えることができます。
悪性が疑われるしこりの特徴
良性のしこりについて理解したうえで、悪性が疑われる場合の特徴についても知っておくことが重要です。以下のような症状がある場合は、できるだけ早く専門医を受診してください。
急速な増大
短期間で明らかに大きくなるしこりは、悪性の可能性を考慮する必要があります。良性腫瘍も徐々に大きくなることはありますが、悪性腫瘍は成長のスピードが速い傾向があります。数週間から数ヶ月で目に見えて大きくなった場合は要注意です。
不規則な形状と境界不明瞭
悪性腫瘍は周囲の組織に浸潤していくため、形が不規則で左右非対称であることが多いです。また、周囲との境界がぼやけてはっきりしないことも特徴です。良性腫瘍は境界が明瞭で、形も比較的整っていることが多いです。
硬さと可動性の低下
悪性腫瘍は周囲の組織と癒着しているため、触ると硬く、押しても動きにくいことが多いです。一方、良性腫瘍は独立しているため、押すとコロコロと動くことが多いです。
出血やジクジクした状態
表面から出血する、ジクジクして治らない傷のような状態が続く、かさぶたができては取れてを繰り返すといった症状は、悪性腫瘍を疑うサインです。特に出血は重要な警告サインとなります。
色の変化
ほくろと間違われやすい悪性黒色腫(メラノーマ)では、色が黒または褐色で、色の濃淡がまだらになっていることがあります。また、大きさが6ミリを超えるほくろや、急にできた・大きくなったほくろは注意が必要です。
長期間治らない傷
傷のようなものができたが何週間たっても治らない、ただれた状態が続くといった場合も、皮膚がんの可能性があります。
これらの症状に一つでも当てはまる場合は、自己判断せずに専門医を受診することを強くお勧めします。悪性腫瘍であっても、早期に発見して適切な治療を受ければ完治できるケースは多くあります。
しこりの検査と診断
皮膚のしこりを正確に診断するためには、専門医による診察と必要に応じた検査が行われます。ここでは一般的な検査方法について解説します。
視診と触診
まずは医師が肉眼でしこりの外観を観察し、実際に触って硬さや可動性、大きさなどを確認します。しこりの部位や形状、皮膚の色の変化なども重要な診断材料となります。経験豊富な医師であれば、視診と触診だけである程度の診断をつけることができます。
ダーモスコピー検査
ダーモスコピーは特殊な拡大鏡を使って皮膚の表面から深層部までを詳細に観察する検査です。特にほくろと悪性黒色腫の鑑別において有用で、皮膚を切らずに病変の性質をある程度判断することができます。色素性病変の診断には欠かせない検査となっています。
超音波検査(エコー検査)
超音波を使ってしこりの大きさ、形状、内部の性状、存在する深さなどを確認します。痛みがなく、放射線被曝もないため、身体への負担が少ない検査です。脂肪腫と粉瘤の鑑別や、脂肪腫の深さの評価などに有用です。
CT検査・MRI検査
しこりが大きい場合や深部にある場合、周囲の血管や神経との位置関係を確認する必要がある場合には、CTやMRI検査が行われることがあります。特にMRI検査は軟部組織の評価に優れており、脂肪腫の診断や悪性腫瘍との鑑別に有用です。
病理検査(生検)
最も確実な診断方法は、しこりの一部または全部を採取して顕微鏡で調べる病理検査です。腫瘍が良性か悪性かを確定診断することができます。小さなしこりであれば治療を兼ねて全摘出し、摘出した組織を病理検査に提出することが一般的です。大きなしこりや悪性が疑われる場合には、まず一部を採取して診断を確定してから治療方針を決定することもあります。
しこりの治療法
皮膚のしこりの治療法は、しこりの種類や大きさ、発生部位、患者様の希望などによって異なります。ここでは代表的な治療法について解説します。
経過観察
しこりが小さく、症状がなく、良性であることが明らかな場合には、すぐに治療せず経過観察となることがあります。ただし、定期的に診察を受けて大きさの変化などをチェックすることが重要です。
外科的切除術
多くのしこりは外科手術によって摘出することで根治が可能です。
粉瘤の場合は、袋状の組織(嚢腫壁)ごと完全に摘出することが重要です。内容物だけを絞り出しても袋が残っていると必ず再発します。手術方法としては、くり抜き法(へそ抜き法)と切開法があり、粉瘤の状態に応じて適切な方法が選択されます。
脂肪腫の場合は、腫瘍を被膜ごと一塊として摘出します。脂肪腫と周囲の正常な脂肪組織の境界がはっきりしていることが多いため、比較的摘出しやすい腫瘍です。ただし、筋肉内に発生した深在性脂肪腫の場合は摘出が難しいこともあります。
石灰化上皮腫の場合は、腫瘍が脆くて崩れやすいため、丁寧に摘出する必要があります。不完全な摘出は再発の原因となります。
手術は多くの場合、局所麻酔による日帰り手術で行うことができます。手術時間はしこりの大きさや部位によりますが、10分から30分程度で終わることが多いです。形成外科専門医による手術では、傷跡ができるだけ目立たないように配慮した切開デザインと縫合が行われます。
穿刺吸引
ガングリオンの場合は、注射針を刺して内容物のゼリー状粘液を吸引する治療が行われることがあります。身体への負担が少ない治療ですが、袋自体は残るため再発する可能性があります。何度か吸引を繰り返すうちに袋が縮小して再発しにくくなることもあります。
切開排膿
炎症を起こして膿が溜まっている粉瘤(炎症性粉瘤)の場合は、まず切開して膿を排出することで炎症を鎮めます。炎症が強い状態で袋ごと摘出しようとすると、袋が周囲と癒着していて完全に取り切れず、再発のリスクが高まります。そのため、炎症が落ち着いてから改めて根治手術を行うのが一般的です。
形成外科と皮膚科の違い
皮膚のしこりで受診する場合、形成外科と皮膚科のどちらを選べばよいか迷われる方も多いでしょう。両者の特徴を理解して、ご自身の状況に合った診療科を選ぶことが大切です。
皮膚科
皮膚科は全身の皮膚に関する疾患を幅広く診療する診療科です。しこりが粉瘤なのかニキビなのか、あるいは他の皮膚疾患なのかを判断してもらいたい場合や、まずは診断をつけてほしい場合には皮膚科への受診が適しています。内服薬や外用薬による治療が中心となる疾患では、皮膚科での治療がスムーズに行われることが多いです。
形成外科
形成外科は身体の表面に生じた変形や欠損、異常などを修復する診療科で、機能だけでなく見た目の仕上がりも重視しています。しこりの摘出手術を希望する場合、特に顔や首など目立つ部位にしこりがある場合には、形成外科での治療が推奨されます。形成外科では切開のデザインや縫合技術に優れており、傷跡が目立ちにくい仕上がりを目指した治療が可能です。
どちらを選ぶべきか
結論として、「しこりが何なのか知りたい」「まずは診断を受けたい」という場合は皮膚科または形成外科のどちらでも問題ありません。「手術で取り除きたい」「傷跡をできるだけ目立たなくしたい」という場合は形成外科が適しています。また、日帰り手術を希望する場合や、皮膚腫瘍の摘出経験が豊富な医師に診てもらいたい場合には、形成外科専門医のいるクリニックを受診することをお勧めします。
放置するとどうなるか
皮膚のしこりを放置した場合に起こりうる問題について解説します。
良性腫瘍を放置した場合
粉瘤を放置した場合は、時間とともに少しずつ大きくなっていきます。また、細菌感染を起こして炎症性粉瘤となり、赤く腫れて強い痛みを伴うことがあります。感染がひどくなると皮膚が破れて膿が出てきたり、臭いが発生したりすることもあります。大きくなればなるほど手術時の切開も大きくなり、傷跡も目立ちやすくなります。ごくまれに悪性化したケースも報告されています。
脂肪腫を放置した場合も、徐々に大きくなっていくことが多いです。大きくなると見た目の問題が生じるほか、神経を圧迫してしびれや痛みを引き起こすこともあります。また、大きくなるほど手術時の傷跡も大きくなり、手術の難易度も上がります。
ガングリオンを放置した場合は、神経を圧迫している場合には神経症状が悪化する可能性があります。圧迫が長期間続くと、ガングリオンを除去しても神経の回復に時間がかかったり、症状が残存したりすることがあります。
悪性腫瘍を放置した場合
悪性腫瘍を放置した場合は、腫瘍が周囲の組織に浸潤して広がり、やがて他の臓器に転移する可能性があります。進行すればするほど治療が困難になり、予後も悪くなります。皮膚がんは早期に発見して適切に切除すれば完治することが多いため、早期発見・早期治療が非常に重要です。
早めの受診を
以上のように、しこりを放置することには様々なリスクがあります。たとえ良性であっても、小さいうちに対処することで治療の負担を軽減できます。しこりに気づいたら、なるべく早く専門医の診察を受けることをお勧めします。
手術後の経過とケア
しこりの摘出手術を受けた後の経過とケアについて解説します。
術後の一般的な経過
手術当日は傷口をガーゼで覆い、テープで圧迫固定した状態で帰宅します。手術翌日くらいまでは出血のリスクがあるため、激しい運動や飲酒は控える必要があります。
シャワーは通常、翌日から可能です。ただし、湯船に浸かることは抜糸までは控えていただくことが多いです。抜糸は手術後7日〜14日程度で行います。
傷跡は最初は赤みがありますが、時間の経過とともに徐々に目立たなくなっていきます。傷の治り方には個人差がありますが、数ヶ月から1年程度かけて落ち着いていくのが一般的です。
傷跡を目立たなくするためのケア
傷跡をできるだけ目立たなくするためには、術後のケアも重要です。医師の指示に従って軟膏を塗布したり、テープを貼ったりすることで、傷跡の仕上がりを良くすることができます。また、紫外線は傷跡を目立たせる原因となるため、日焼け止めを塗るなどの紫外線対策も大切です。
再発について
粉瘤や脂肪腫は、手術で完全に摘出すれば再発することはほとんどありません。ただし、袋や被膜が一部でも残っていると再発の可能性があります。また、体質的にできやすい方の場合は、別の場所に新たに発生することがあります。これは厳密には「再発」ではなく「新規発生」ですが、気になる場合は同様に摘出することができます。
渋谷エリアで皮膚のしこりにお悩みの方へ
渋谷は東京を代表する繁華街であり、多くのクリニックが集まるエリアです。皮膚のしこりでお悩みの方にとって、アクセスの良さは受診のしやすさにつながります。
当院アイシークリニック渋谷院は、渋谷駅から徒歩圏内に位置し、お仕事帰りや休日にも通院しやすい立地にあります。日本形成外科学会認定の形成外科専門医が在籍しており、粉瘤、脂肪腫、石灰化上皮腫などの皮膚腫瘍に対する日帰り手術を数多く行っております。
皮膚のしこりでお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。丁寧な診察と分かりやすい説明を心がけ、患者様一人ひとりに最適な治療法をご提案いたします。

よくあるご質問
しこりの種類や状態によって異なります。良性で症状がない場合は、経過観察で様子を見ることもあります。ただし、炎症を起こしている場合や悪性が疑われる場合は、早めの治療が必要です。まずは診察を受けて、適切な対応についてご相談ください。
手術は局所麻酔で行うため、手術中の痛みはほとんどありません。麻酔の注射時にチクッとした痛みがありますが、極細の針を使用するなどの工夫により、痛みを軽減しています。術後も鎮痛剤を処方しますので、通常は強い痛みに悩まされることはありません。
Q3. 手術の傷跡は目立ちますか?
形成外科専門医による手術では、傷跡ができるだけ目立たないよう、皮膚の緊張線(シワの方向)に沿った切開デザインや、繊細な縫合技術を用いています。傷跡は時間とともに目立たなくなりますが、完全に消えるわけではありません。気になる場合は、術後のケアについてもご相談ください。
Q4. 手術後、仕事や日常生活に支障はありますか?
日帰り手術の場合、通常は翌日から普段通りの生活を送ることができます。ただし、激しい運動や飲酒は術後1週間程度控えていただくことが多いです。また、部位によっては一時的に動作の制限が必要な場合もあります。詳しくは手術時にご説明いたします。
Q5. 健康保険は使えますか?
粉瘤、脂肪腫、石灰化上皮腫などの皮膚腫瘍の摘出手術は、健康保険が適用されます。費用は腫瘍の大きさや部位によって異なりますが、3割負担の場合で数千円から1万円程度が目安です。また、民間の医療保険に加入されている場合は、手術給付金の対象となることもありますので、ご加入の保険会社にお問い合わせください。
まとめ
皮膚にできるしこりには様々な種類があり、その多くは良性の腫瘍です。しかし、自己判断で放置することは避け、専門医の診察を受けることが重要です。
良性のしこりであっても、放置すると大きくなったり、炎症を起こしたりすることがあります。小さいうちに治療することで、傷跡も小さくて済み、治療の負担も軽減できます。
悪性が疑われるしこりについては、早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。急に大きくなった、出血する、治らない傷がある、といった症状がある場合は、できるだけ早く受診してください。
渋谷エリアで皮膚のしこりにお悩みの方は、アイシークリニック渋谷院にご相談ください。専門医による丁寧な診察と、患者様の状態に合わせた最適な治療をご提供いたします。
参考文献・引用
- 済生会「しこり」
https://www.saiseikai.or.jp/medical/symptom/lump/ - 日本整形外科学会「ガングリオン」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/ganglion.html - 日本医科大学武蔵小杉病院「脂肪腫と良性悪性の判断と手術」
https://www.nms.ac.jp/kosugi-h/section/plastic-surgery/shibousyutoryouseiakuseinohandantosyujutsu.html - 東京大学大学院医学系研究科 形成外科学分野「皮膚腫瘍とは?皮膚のできものやしこりについて」
https://plastic.m.u-tokyo.ac.jp/clinical/426/ - 慶應義塾大学病院KOMPAS「皮膚の腫瘍」
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000284.html - 東京逓信病院「脂肪腫について」
https://www.hospital.japanpost.jp/tokyo/shinryo/keisei/shibousyu.html - メディカルノート「石灰化上皮腫について」
https://medicalnote.jp/diseases/石灰化上皮腫 - 中外製薬「しこりの原因は?考えられる病気の特徴やチェックポイント」
https://oshiete-gan.jp/lymphoma/concerns/symptoms/lump.html
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務