はじめに
「柴胡加竜骨牡蛎湯がハイリスク薬と聞いたけど、服用しても大丈夫なのだろうか」
不安や不眠、イライラといった症状に対して処方される漢方薬、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)。インターネットで調べると「ハイリスク」という言葉が目に入り、不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
実は、柴胡加竜骨牡蛎湯が「ハイリスク」とされる理由は、決して「危険な薬だから」というわけではありません。むしろ、特に慎重な管理と指導が必要とされる薬として、医療従事者が十分な注意を払って処方・調剤している薬なのです。
この記事では、柴胡加竜骨牡蛎湯がなぜハイリスクとされるのか、その理由を詳しく解説するとともに、安全に服用するために知っておくべき知識をお伝えします。
柴胡加竜骨牡蛎湯とは
柴胡加竜骨牡蛎湯は、中国の古典医学書『傷寒論』に収載されている伝統的な漢方処方です。日本では医療用医薬品として、また一般用医薬品として、長年にわたり使用されてきました。
主な効能・効果
柴胡加竜骨牡蛎湯は、体力が中等度以上で、精神不安がある方の以下のような症状に用いられます。
- 不安、緊張、イライラ
- 不眠
- 動悸
- 神経症
- 更年期神経症
- 高血圧に伴う症状
- 小児夜泣き
- 便秘
なお、メーカーによって適応症に若干の違いがあり、ツムラ製やコタロー製の医療用製剤には「てんかん」の適応が含まれています。この点が後述する「ハイリスク薬」としての分類と深く関わってきます。
配合されている生薬
柴胡加竜骨牡蛎湯は、以下の10種類から11種類の生薬で構成されています。
- 柴胡(サイコ)
- 半夏(ハンゲ)
- 桂皮(ケイヒ)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 黄芩(オウゴン)
- 大棗(タイソウ)
- 人参(ニンジン)
- 竜骨(リュウコツ)
- 牡蛎(ボレイ)
- 生姜(ショウキョウ)
- 大黄(ダイオウ)※製剤により含有の有無が異なる
これらの生薬が組み合わさることで、気の巡りを整え、精神を安定させ、体の熱を冷ます効果を発揮します。
「ハイリスク薬」とは何か
柴胡加竜骨牡蛎湯がハイリスクとされる理由を理解するためには、まず「ハイリスク薬」という概念を正しく理解する必要があります。
ハイリスク薬の定義
ハイリスク薬とは、「特に安全管理が必要な医薬品」のことを指します。これは、使用方法を誤ると患者さんに重大な健康被害を及ぼす可能性がある薬剤のことです。
具体的には、以下のような薬剤が該当します。
- 抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)
- 免疫抑制剤
- 不整脈用剤
- 抗てんかん剤
- 血液凝固阻止剤
- ジギタリス製剤
- テオフィリン製剤
- カリウム製剤(注射)
- 精神神経用剤
- 糖尿病用剤
- 膵臓ホルモン剤
ハイリスク薬=危険な薬ではない
ここで重要なのは、「ハイリスク薬=危険な薬」ではないということです。ハイリスク薬は、適切に使用すれば患者さんの症状改善に大きく貢献する重要な医薬品です。
ハイリスク薬に指定されているのは、副作用の早期発見や服薬指導の徹底によって、より安全に使用するためです。そのため、ハイリスク薬が処方された際には、薬剤師が通常よりも詳しい服薬指導を行うことが義務付けられています。
特定薬剤管理指導加算との関係
医療機関や薬局では、ハイリスク薬を調剤した際に「特定薬剤管理指導加算」という加算を算定することができます。これは、薬剤師が患者さんの服用状況や副作用の有無などを確認し、必要な指導を行ったことに対する評価です。
つまり、ハイリスク薬に指定されているということは、それだけ医療従事者が慎重に管理し、手厚い指導を行っている薬であるという証でもあるのです。
柴胡加竜骨牡蛎湯がハイリスクとされる主な理由
それでは、柴胡加竜骨牡蛎湯がなぜハイリスクとされるのか、その具体的な理由を見ていきましょう。
理由1:てんかんの適応による抗てんかん薬としての分類
柴胡加竜骨牡蛎湯がハイリスク薬として扱われる最大の理由は、ツムラ製とコタロー製の医療用製剤に「てんかん」の適応が含まれているためです。
特定薬剤管理指導加算の算定対象となる医薬品の中に「抗てんかん剤」があり、てんかんの適応を有する薬剤はこれに該当します。そのため、ツムラとコタローの柴胡加竜骨牡蛎湯は、抗てんかん薬としてハイリスク薬に分類されるのです。
ただし、注意していただきたいのは、クラシエ製をはじめとする他のメーカーの柴胡加竜骨牡蛎湯には「てんかん」の適応がないため、ハイリスク薬の対象とはならないという点です。同じ処方名でも、メーカーによって取り扱いが異なるという、やや複雑な状況になっています。
また、実際の臨床現場では、柴胡加竜骨牡蛎湯は主に不安や不眠、神経症などの症状に対して処方されることが多く、てんかんに対して処方されるケースは比較的少ないと考えられます。
理由2:間質性肺炎のリスク
柴胡加竜骨牡蛎湯の重大な副作用として、間質性肺炎が報告されています。これは、柴胡加竜骨牡蛎湯だけでなく、多くの漢方薬で注意が必要とされている副作用です。
間質性肺炎とは
間質性肺炎は、肺の間質という部分に炎症が起こる疾患です。進行すると肺が硬くなり、酸素を取り込む機能が低下してしまいます。
初期症状
間質性肺炎の初期症状には、以下のようなものがあります。
- 空咳(痰を伴わない乾いた咳)
- 息切れ
- 発熱
- 呼吸困難
これらの症状は風邪や気管支炎と似ているため、見逃されやすいのが特徴です。しかし、放置すると重症化する可能性があるため、服用中にこのような症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診する必要があります。
発生頻度と原因
間質性肺炎の発生頻度は「頻度不明」とされており、非常にまれな副作用です。漢方薬による間質性肺炎には、柴胡(サイコ)や黄芩(オウゴン)といった生薬が関与している可能性が指摘されています。柴胡加竜骨牡蛎湯には柴胡が含まれているため、理論的にはリスクがありますが、実際の発生頻度は極めて低いと考えられています。
理由3:肝機能障害のリスク
柴胡加竜骨牡蛎湯のもう一つの重大な副作用として、肝機能障害や黄疸が報告されています。
肝機能障害の症状
肝機能障害が起こると、以下のような症状が現れることがあります。
- 全身倦怠感
- 食欲不振
- 吐き気
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- 尿の色が濃くなる
- 皮膚のかゆみ
メカニズム
肝機能障害が起こるメカニズムとしては、薬の成分が直接肝細胞にダメージを与える場合と、アレルギー反応によって肝臓に炎症が起きる場合があると考えられています。
発生頻度と対策
肝機能障害の発生頻度も「頻度不明」とされており、非常にまれです。しかし、もともと肝臓の病気がある方や、肝臓に負担をかける可能性のある他の薬を服用している方は、より注意が必要です。
柴胡加竜骨牡蛎湯を服用する際は、定期的な肝機能検査を受けることで、早期に異常を発見することができます。特に長期間服用する場合は、医師の指示に従って適切な検査を受けるようにしましょう。
理由4:偽アルドステロン症のリスク
柴胡加竜骨牡蛎湯には「甘草(カンゾウ)」という生薬が含まれています。この甘草によって引き起こされる可能性がある副作用が「偽アルドステロン症」です。
偽アルドステロン症とは
偽アルドステロン症は、血中のアルドステロン(副腎から分泌されるホルモン)が増加していないにもかかわらず、アルドステロン症と似た症状が現れる状態です。
症状
偽アルドステロン症の主な症状には、以下のようなものがあります。
- 血圧上昇
- 手足のむくみ
- 体重増加
- 手足のしびれや脱力感
- 筋力低下
- 頭痛
- 倦怠感
重症化すると、低カリウム血症による不整脈や、筋力低下による転倒、さらには横紋筋融解症に至ることもあります。
メカニズム
甘草の主成分であるグリチルリチン酸が腸内細菌によって代謝されると、グリチルレチン酸という物質に変わります。このグリチルレチン酸が、体内でコルチゾールをコルチゾンに変換する酵素を阻害することで、コルチゾールが増加します。コルチゾールには鉱質コルチコイド作用(ナトリウムの再吸収を促進し、カリウムの排泄を増加させる作用)があるため、結果として偽アルドステロン症の症状が現れるのです。
発生頻度と危険因子
偽アルドステロン症は、甘草の1日摂取量が多いほど発生頻度が高くなることが報告されています。研究によると、甘草1gでの副作用発生率は約1%ですが、6gになると約11%に急増すると報告されています。
一般的に、甘草の1日量が2.5gを超えると偽アルドステロン症の発症リスクが上がるとされています。柴胡加竜骨牡蛎湯に含まれる甘草の量は、製剤にもよりますが1日量で概ね1.25〜2.5g程度であり、単剤使用であれば問題になることは少ないと考えられます。
ただし、以下のような場合はリスクが高まります。
- 複数の甘草含有漢方薬を併用している
- 高齢者
- 女性(男女比は1:2で女性に多い)
- もともと高血圧、心臓病、腎臓病がある
- 利尿薬やインスリン製剤を併用している
- 痩せ型の体格
発症時期と回復
偽アルドステロン症の患者の約40%は、服用開始後3カ月以内に発症すると報告されています。一方で、服用を中止すると比較的速やかに改善し、多くの場合、中止後2日程度で症状が改善し始めます。
その他の副作用
上記の重大な副作用以外にも、柴胡加竜骨牡蛎湯には以下のような副作用が報告されています。
過敏症状
- 発疹
- 発赤
- かゆみ
- 蕁麻疹
これらの症状が現れた場合は、服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。
消化器症状
- 食欲不振
- 胃部不快感
- 腹痛
- 下痢
特に、大黄(ダイオウ)を含む製剤では、下痢や軟便が悪化する可能性があります。胃腸が弱い方や、もともと軟便や下痢がある方は、大黄を含まないツムラ製の製剤の方が適している可能性があります。
注意が必要な方
柴胡加竜骨牡蛎湯の服用に際して、特に注意が必要な方がいます。
服用できない方、または慎重投与が必要な方
以下のような方は、柴胡加竜骨牡蛎湯の服用に注意が必要です。
妊娠中または妊娠の可能性がある方
柴胡加竜骨牡蛎湯に含まれる大黄には、子宮収縮作用および骨盤内臓器の充血作用があるため、流産や早産の危険性があります。そのため、妊娠中または妊娠の可能性がある方への投与は望ましくないとされています。
授乳中の方
大黄中のアントラキノン誘導体が母乳中に移行し、乳児が下痢を起こすことがあります。授乳中の方は、治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮して、授乳の継続または中止を検討する必要があります。
下痢や軟便のある方
大黄の瀉下作用により、これらの症状が悪化するおそれがあります。
著しく胃腸が虚弱な方
食欲不振、胃部不快感、腹痛、下痢などが現れることがあります。
著しく体力が衰えている方
副作用が現れやすくなり、その症状が増強されるおそれがあります。
高齢者
一般に生理機能が低下しているため、減量するなど注意が必要です。
肝機能障害や肺疾患のある方
もともと肝臓や肺に持病がある方は、副作用のリスクが高まる可能性があるため、より慎重な観察が必要です。
高血圧、心臓病、腎臓病のある方
偽アルドステロン症のリスクが高まるため、特に注意が必要です。
併用に注意が必要な薬
以下のような薬を併用している場合は、特に注意が必要です。
- 他の甘草含有漢方薬
- グリチルリチン酸を含む薬(強力ミノファーゲンCなど)
- 利尿薬(フロセミド、トリクロルメチアジドなど)
- インスリン製剤
- 副腎皮質ステロイド
- 大黄を含む他の漢方薬や便秘薬
これらの薬を併用すると、偽アルドステロン症や低カリウム血症のリスクが高まります。必ず医師や薬剤師に、服用中の全ての薬(市販薬やサプリメントを含む)を伝えるようにしましょう。
服用時の注意点
柴胡加竜骨牡蛎湯を安全に服用するために、以下の点に注意しましょう。
用法・用量を守る
医師や薬剤師の指示通りに服用してください。自己判断で量を増やしたり、服用を中止したりしないようにしましょう。
漢方薬の飲み方
漢方薬は一般的に、食前または食間(食事と食事の間、食後2〜3時間後)に服用します。これは、空腹時の方が吸収が良いためです。ただし、胃腸が弱い方は食後に服用しても構いません。
お湯に溶かして服用すると、より効果的とされています。顆粒や粉末の場合は、少量のお湯(60℃程度)に溶かして服用するのが理想的ですが、難しい場合は水で服用しても問題ありません。
定期的な検査
長期間服用する場合は、定期的に以下のような検査を受けることが推奨されます。
- 血液検査(肝機能、腎機能、電解質、特にカリウム値)
- 血圧測定
- 体重測定
これらの検査によって、副作用の早期発見が可能になります。
症状の観察
服用中は、自分の体調の変化に注意を払いましょう。以下のような症状が現れた場合は、すぐに医師や薬剤師に相談してください。
- 空咳、息切れ、発熱
- 全身倦怠感、食欲不振、吐き気
- 黄疸、尿の色が濃くなる
- 手足のむくみ、血圧上昇
- 手足のしびれ、脱力感
- 皮膚の発疹、かゆみ
服用期間
漢方薬は、一般的に効果が現れるまでに時間がかかります。柴胡加竜骨牡蛎湯も、即効性のある薬ではなく、継続して服用することで徐々に効果が現れてきます。
通常、2〜4週間程度服用して効果を判断することが多いですが、症状や体質によって個人差があります。医師の指示に従って、適切な期間服用を続けましょう。
ただし、長期間服用しても症状の改善が見られない場合は、継続投与を避けることとされています。経過を十分に観察し、効果がない場合は医師に相談して、他の治療法を検討する必要があります。
自己判断での中止は避ける
症状が改善したからといって、自己判断で服用を中止するのは避けましょう。漢方薬の効果は緩やかで持続的なため、症状が改善した後も一定期間服用を続けることで、より安定した効果が得られることがあります。
服用の中止や変更を考える場合は、必ず医師に相談してください。
保管方法
漢方薬は湿気を避け、直射日光の当たらない涼しい所に保管してください。開封後は特に湿気に注意し、密栓して保管しましょう。
また、生薬を原料としているため、色調が若干異なることがありますが、効果には変わりありません。
他の漢方薬との違い
柴胡加竜骨牡蛎湯と似た効能を持つ漢方薬がいくつかあります。ここでは、それらとの違いを解説します。
桂枝加竜骨牡蛎湯との違い
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)は、名前が似ており、竜骨と牡蛎を含む点でも共通していますが、適応する体質や症状が異なります。
柴胡加竜骨牡蛎湯は、比較的体力がある方の脳の緊張や興奮からくる不眠に適しています。一方、桂枝加竜骨牡蛎湯は、体力が低下している虚弱な方の精神不安や神経症的な不眠に適しています。
加味逍遙散との違い
加味逍遙散(かみしょうようさん)も、不安やイライラ、不眠症などに用いられる漢方薬です。
柴胡加竜骨牡蛎湯は比較的体力がある方に向いていますが、加味逍遙散は体力が低下し、疲れやすい方に適しています。また、加味逍遙散は特に女性の更年期症状や月経関連の症状に効果的とされています。
抑肝散との違い
抑肝散(よくかんさん)も、神経の高ぶりやイライラ、不眠などに用いられます。
柴胡加竜骨牡蛎湯は動悸や便秘を伴う場合に適していますが、抑肝散は特に怒りっぽさや興奮しやすい、子どもの夜泣きなどに効果的です。また、認知症の周辺症状(BPSD)にも使用されることがあります。
大柴胡湯との違い
大柴胡湯(だいさいことう)も柴胡を含む処方ですが、主な用途が異なります。
柴胡加竜骨牡蛎湯は精神症状が中心ですが、大柴胡湯は便秘やお腹の張り、肩こりなどが顕著な場合に用いられ、ストレスによる過食を抑える働きもあるため、肥満症の治療に使用されることもあります。
実際のリスクの程度
ここまで柴胡加竜骨牡蛎湯のリスクについて詳しく説明してきましたが、実際のリスクの程度はどのくらいなのでしょうか。
重大な副作用の発生頻度は非常に低い
間質性肺炎や肝機能障害といった重大な副作用の発生頻度は「頻度不明」とされており、実際には非常にまれです。これらの副作用は、柴胡加竜骨牡蛎湯に限って起こるものではなく、多くの漢方薬や西洋薬でも報告されている副作用です。
適切な管理下では安全性が高い
柴胡加竜骨牡蛎湯は、長年にわたって使用されてきた実績のある漢方薬です。医師の処方に基づき、適切な用法・用量で服用し、定期的な検査や観察を行えば、安全に使用できる薬です。
依存性や離脱症状はない
精神疾患や不眠症に対する一部の西洋薬(ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬など)とは異なり、柴胡加竜骨牡蛎湯には依存性や離脱症状(薬をやめた時に起こる症状)はありません。これは、漢方薬の大きなメリットの一つです。
ハイリスク薬=より手厚い管理
繰り返しになりますが、ハイリスク薬に指定されているということは、医療従事者がより注意深く管理し、手厚い指導を行っているということです。つまり、患者さんの安全性を高めるための仕組みなのです。

よくある質問
いいえ、柴胡加竜骨牡蛎湯は服用してすぐに眠くなるような即効性のある薬ではありません。体の不調を改善することで、結果として不眠などの症状が改善していく薬です。効果を実感するまでには、通常2〜4週間程度かかることが多いです。
適切な医学的管理の下であれば、長期間の服用も可能です。ただし、定期的な検査(肝機能、腎機能、電解質など)を受け、副作用の早期発見に努めることが重要です。また、長期間服用しても効果が見られない場合は、継続投与を避けることとされています。
Q3. 他の漢方薬と併用できますか?
可能ですが、特に甘草を含む他の漢方薬との併用には注意が必要です。甘草の総摂取量が増えると、偽アルドステロン症のリスクが高まります。必ず医師や薬剤師に相談してください。
Q4. 車の運転に影響はありますか?
柴胡加竜骨牡蛎湯自体は、眠気を引き起こす成分を含んでいないため、一般的には車の運転への影響は少ないと考えられます。ただし、個人差があるため、初めて服用する際は注意が必要です。
Q5. 食事の制限はありますか?
特に食事の制限はありません。ただし、甘草を多く含む食品(醤油、味噌、菓子など)を大量に摂取すると、甘草の総摂取量が増えてリスクが高まる可能性があります。通常の食事であれば問題ありません。
Q6. 子どもでも服用できますか?
柴胡加竜骨牡蛎湯は、小児夜泣きの適応があり、子どもにも処方されることがあります。ただし、年齢や体重に応じた適切な用量の調整が必要です。必ず医師の指示に従ってください。
Q7. ツムラとクラシエ、どちらが良いですか?
どちらが良いかは、患者さんの症状や体質によって異なります。主な違いは、大黄の有無と、てんかんの適応の有無です。ツムラ製には大黄が含まれておらず、下痢のリスクが低い一方、クラシエ製には大黄が含まれ、便秘の改善効果が期待できます。医師が患者さんの状態に合わせて適切なものを処方します。
Q8. 効果が感じられない場合はどうすればよいですか?
2〜4週間程度服用しても効果が感じられない場合は、体質に合っていない可能性があります。漢方薬は個人の体質(証)に合わせて選択することが重要です。効果が感じられない場合は、医師に相談して、他の漢方薬への変更や、治療方針の見直しを検討しましょう。
まとめ
柴胡加竜骨牡蛎湯が「ハイリスク」とされる理由は、以下の通りです。
- 特定のメーカー(ツムラ、コタロー)の製品に「てんかん」の適応があり、抗てんかん薬として特定薬剤管理指導加算の対象となっている
- 間質性肺炎や肝機能障害といった重大な副作用のリスクがある(ただし、発生頻度は非常にまれ)
- 甘草を含むため、偽アルドステロン症のリスクがある(特に複数の甘草含有薬を併用している場合や、高齢者、利尿薬併用者など)
しかし、「ハイリスク薬」というのは「危険な薬」という意味ではなく、「特に慎重な管理と指導が必要な薬」という意味です。柴胡加竜骨牡蛎湯は、適切な医学的管理の下で使用すれば、不安や不眠、イライラなどの症状に対して有効で、比較的安全性の高い治療選択肢となります。
重要なのは、以下の点です。
- 医師の処方に基づいて服用する
- 用法・用量を守る
- 定期的な検査を受ける
- 服用中の体調の変化に注意を払う
- 気になる症状があれば、すぐに医師や薬剤師に相談する
- 他に服用している薬(市販薬やサプリメントを含む)を必ず医師や薬剤師に伝える
これらのポイントを守ることで、柴胡加竜骨牡蛎湯を安全に、効果的に使用することができます。
参考文献
- 日本薬剤師会「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)」 https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/pharmacy-info/high-risk_ver2.pdf
- 日経メディカル処方薬事典「ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(医療用)」 https://medical.nikkeibp.co.jp/
- 西陣病院「漢方薬によく含まれている『甘草』のお話」 https://www.nishijinhp.com/
- 日本医事新報社「甘草を含有する漢方薬の副作用の頻度」 https://www.jmedj.co.jp/
- 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル:偽アルドステロン症」 https://www.mhlw.go.jp/
- ケアネット「漢方薬による偽アルドステロン症、高血圧や認知症と関連」 https://www.carenet.com/
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務