鏡を見るたびに気になるニキビ跡。赤みや色素沈着、クレーター状の凹みなど、ニキビ跡のタイプはさまざまですが、一度できてしまうとセルフケアだけでは改善が難しいケースも少なくありません。とくにクレーター状のニキビ跡は真皮層までダメージが及んでいるため、肌のターンオーバーだけでは元に戻らないことがほとんどです。本記事では、ニキビ跡を消すための効果的な治療法について、種類別に詳しく解説いたします。ニキビ跡の原因やメカニズムを正しく理解し、あなたに合った治療法を見つけるための参考にしていただければ幸いです。アイシークリニック渋谷院では、患者様一人ひとりの肌状態やニキビ跡のタイプに応じた最適な治療プランをご提案しております。
目次
- ニキビ跡とは?種類と特徴を知ろう
- ニキビ跡ができる原因とメカニズム
- ニキビ跡を消すための治療法(赤み・炎症後紅斑)
- ニキビ跡を消すための治療法(色素沈着)
- ニキビ跡を消すための治療法(クレーター・凹み)
- セルフケアでニキビ跡を改善する方法
- ニキビ跡治療に必要な期間と回数の目安
- ニキビ跡を作らないための予防法
- よくある質問
- まとめ
ニキビ跡とは?種類と特徴を知ろう
ニキビ跡とは、ニキビが治った後に肌に残る痕跡のことを指します。ニキビの炎症が収まった後も、赤みや茶色い色素沈着、肌表面の凹凸などが残ってしまった状態です。ニキビ跡は大きく分けて4つの種類に分類されます。
赤みのあるニキビ跡(炎症後紅斑)
ニキビの炎症が治まった後、毛細血管が拡張した状態が続き、赤みが残っている状態です。皮膚科学的には「炎症後紅斑」と呼ばれます。炎症により増えたり拡張したりした毛細血管と、血管の周囲に残るリンパ球という細胞が原因となっています。比較的軽度なニキビ跡で、時間とともに自然に改善することが多いですが、半年以上経っても消えない場合もあります。赤みが残る期間は個人差がありますが、通常は数か月から1年程度で徐々に薄くなっていきます。
色素沈着によるニキビ跡(炎症後色素沈着)
ニキビの炎症によってメラノサイトが活性化し、メラニン色素が過剰に生成されることで、茶色っぽいシミのように残る状態です。皮膚科学的には「炎症後色素沈着」と呼ばれます。やけどや虫さされの痕が黒ずんでしまうのと同じ現象です。一般的に炎症後1か月頃に色のピークとなり、その後徐々に薄くなります。消えるまでの期間には個人差があり、3か月から半年、長いと1年以上かかることもあります。紫外線を浴びると色素沈着が悪化する場合があるため、日焼け対策が重要です。
クレーター状のニキビ跡(萎縮性瘢痕)
ニキビの炎症が真皮層まで及び、皮膚組織が破壊されてしまった状態です。医学用語では「萎縮性瘢痕」といいます。真皮層はターンオーバー(肌の生まれ変わり)が行われないため、一度クレーター状になってしまうと自然治癒することはほとんどありません。クレーター状のニキビ跡はさらに以下の3つのタイプに分類されます。
アイスピック型は、針で刺したような深く小さな穴が特徴です。毛穴のように見えることもあり、直径2mm以下の小さな凹みですが、深さがあるため治療が最も困難とされています。ボックスカー型は、角ばった四角い形状の凹みで、水痘(みずぼうそう)の跡に似ています。浅いものから深いものまであり、境界がはっきりしているのが特徴です。ローリング型は、なだらかで丸みのある凹みで、皮下組織が瘢痕組織によって引っ張られることで生じます。光が当たる角度によって影ができ、波打つように見えることがあります。
膨らみのあるニキビ跡(肥厚性瘢痕・ケロイド)
ニキビによって壊された皮膚を修復する際に、コラーゲンが過剰に生成されることで、肌が盛り上がったりしこりができたりした状態です。肥厚性瘢痕やケロイドと呼ばれ、胸やあご、肩などにできやすい傾向があります。体質によって発生しやすさが異なり、ケロイド体質の方は特に注意が必要です。
ニキビ跡ができる原因とメカニズム
ニキビ跡がなぜできてしまうのか、そのメカニズムを理解することは、予防と適切な治療を行ううえで非常に重要です。ニキビは毛穴に皮脂や古い角質が詰まり、アクネ菌が増殖して炎症を起こすことで発生します。この炎症のプロセスと、炎症後の皮膚の修復過程において、ニキビ跡が形成されます。
炎症の長期化と真皮へのダメージ
ニキビの炎症が長引くと、皮膚の奥にある真皮層にまでダメージが及びます。炎症を抑えるために活動する白血球が周囲の健康な組織まで攻撃してしまい、真皮層の細胞やコラーゲン線維が破壊されます。真皮層は表皮層と異なりターンオーバーによる再生がほとんど行われないため、適切な修復が行われず、クレーター状の凹みとして残ってしまうのです。
ニキビを潰すことによる悪影響
ニキビを自分で潰してしまうと、周辺の皮膚組織に傷をつけることになります。不衛生な手で触ることで新たな細菌が侵入したり、炎症がさらに広がったりする危険性があります。ニキビの中にある膿や皮脂が周囲の組織に漏れ出すと、炎症が深部に広がり、より深刻なニキビ跡の原因となります。また、潰すことで傷が深くなり、真皮層までダメージが及ぶ可能性が高くなります。
紫外線によるダメージ
紫外線はメラニン色素の生成を促進し、ニキビ跡の色素沈着を悪化させる大きな原因となります。炎症によってダメージを受けている肌は紫外線の影響を受けやすく、バリア機能が低下しているため、より深刻な色素沈着を引き起こす可能性があります。また、紫外線はニキビ自体の炎症を悪化させることもあり、新たなニキビ跡を作るリスクも高めます。
ターンオーバーの乱れ
肌のターンオーバー(新陳代謝)が乱れると、メラニン色素の排出がうまくいかず、色素沈着が長引く原因となります。ストレス、睡眠不足、栄養バランスの偏り、加齢などによってターンオーバーが正常に機能しなくなると、ニキビ跡の改善にも時間がかかります。また、ターンオーバーの乱れは毛穴の詰まりを引き起こし、新たなニキビができやすい状態を作ってしまいます。
ニキビ跡を消すための治療法(赤み・炎症後紅斑)
赤みのあるニキビ跡は、炎症の名残として毛細血管が拡張した状態が続いていることが原因です。時間の経過とともに自然に改善することが多いですが、より早く改善したい場合には医療機関での治療が効果的です。
Vビームレーザー(色素レーザー)
Vビームは厚生労働省が認可した医療機器で、ニキビ跡の赤みの原因となっている拡張した毛細血管にレーザーを照射する施術です。レーザーの光が血液中のヘモグロビンに吸収されることで、拡張した血管を選択的に治療することができます。1回だけで症状を改善することは難しいため、基本的に複数回の施術が必要です。個人差はありますが、1か月に1回の頻度で施術した場合は3回から5回が目安となります。
IPL(光治療)
IPL(Intense Pulsed Light)は、広域の波長を持つ光を照射することで、赤みの原因となる血管や色素沈着にアプローチする治療法です。レーザーと異なり複数の波長を同時に照射できるため、赤みと色素沈着が混在しているニキビ跡にも効果が期待できます。ダウンタイムが比較的短いのも特徴で、施術後すぐにメイクが可能な場合がほとんどです。
外用薬による治療
赤みに対しては、抗炎症作用のある外用薬が処方されることがあります。アラントインやグリチルリチン酸ジカリウムなどの抗炎症成分が配合された薬剤が使用されます。また、ビタミンC誘導体を含む外用薬も抗炎症作用があり、赤みの軽減に効果が期待できます。日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」では、ビタミンC外用について一定の効果が認められています。
ニキビ跡を消すための治療法(色素沈着)
茶色い色素沈着によるニキビ跡は、炎症によって過剰に生成されたメラニン色素が肌に沈着した状態です。時間の経過とともに自然に薄くなっていくことが多いですが、積極的に治療することでより早い改善が期待できます。
ケミカルピーリング
ケミカルピーリングは、グリコール酸やサリチル酸などの酸性の薬剤を肌に塗布し、古い角質やメラニンを含む表皮細胞を剥離させる治療法です。ピーリングにより肌のターンオーバーが促進され、メラニン色素の排出が促されます。また、毛穴の詰まりを改善し、ニキビの予防にも効果があります。日本皮膚科学会のガイドラインでも、痤瘡の萎縮性瘢痕に対するケミカルピーリングについて言及されています。
トレチノイン・ハイドロキノン療法
トレチノインはビタミンA誘導体で、肌のターンオーバーを強力に促進する効果があります。表皮細胞の分裂を活性化させ、メラニン色素を含む古い細胞を押し出すことで、色素沈着を改善します。ハイドロキノンはメラニンの生成を抑制し、既存のメラニンを還元(薄く)する作用があります。この2つを併用することで、より効果的な色素沈着治療が可能になります。ただし、刺激が強いため、使用中は赤みや皮むけなどの副作用が生じることがあり、医師の指導のもとで使用する必要があります。
レーザートーニング
レーザートーニングは、低出力のレーザーを繰り返し照射することで、メラニン色素を徐々に分解・排出させる治療法です。肝斑やシミの治療に広く用いられますが、ニキビ跡による色素沈着にも効果があります。従来のレーザー治療と比較してダウンタイムが短く、炎症後色素沈着のリスクも低いのが特徴です。複数回の施術を重ねることで、徐々に肌のトーンが均一になっていきます。
イオン導入・エレクトロポレーション
イオン導入は、電気の力でビタミンCなどの有効成分を肌の奥深くまで届ける施術です。通常のスキンケアでは届かない真皮層まで成分を浸透させることができるため、より高い効果が期待できます。エレクトロポレーションはさらに進化した技術で、電気パルスによって一時的に細胞膜に微細な穴を開け、高分子の成分も導入可能にしています。ニキビ跡の赤みや色素沈着の改善に効果があり、ダウンタイムがほとんどないのも魅力です。
ニキビ跡を消すための治療法(クレーター・凹み)
クレーター状のニキビ跡は、真皮層までダメージが及んでいるため、セルフケアや自然治癒での改善は非常に困難です。医療機関での専門的な治療が必要となりますが、近年は様々な治療法が開発され、以前よりも大幅な改善が期待できるようになっています。
ダーマペン
ダーマペンは、極細の針(33G、外径0.2mm)を搭載したペン型の医療機器で、肌に微細な穴を無数に開けることで、肌の自己再生力を引き出す治療法です。ダーマペン4は米国FDAの承認を得ており、最大3.0mmの深さまでアプローチすることが可能です。
治療のメカニズムは、針で肌に微細な傷をつけることで、創傷治癒過程が活性化されるというものです。傷を修復しようとする過程で線維芽細胞が活発になり、コラーゲンやエラスチンの生成が促進されます。これにより、クレーター状のニキビ跡が内側から徐々に盛り上がり、凹みが目立たなくなっていきます。ダーマペン4治療後のコラーゲン産生は、治療直後から始まり、約6か月間にわたって継続されることが知られています。
また、ダーマペンによって開けられた微細な穴から成長因子などの薬剤を浸透させる「ドラッグデリバリー」という方法も効果的です。ヴェルベットスキン(ダーマペン4とマッサージピールの組み合わせ)などの複合治療も人気があります。治療回数の目安は5回程度で、1か月に1回の頻度で施術を行います。深いクレーターの場合は10回程度必要になることもあります。
フラクショナルCO2レーザー
フラクショナルCO2レーザーは、炭酸ガスレーザーをドット状(点状)に照射することで、肌に微細な穴を開けて肌の再生を促す治療法です。従来のCO2レーザーは肌全体を削る方法でしたが、フラクショナル技術により正常な部分を残しながら点状に照射するため、治療リスクが大幅に軽減されました。厚生労働省の認可を受けている機器もあり、CO2RE(コア2)は皮膚のフラクショナルリサーフェシングを目的とした美容レーザー装置として国内初の製造販売承認を取得しています。
レーザーによる熱エネルギーで皮膚に微細な穴を開けることで、創傷治癒反応が活性化されます。穴が修復される過程でコラーゲンが増生され、肌の引き締め効果と凹凸の平坦化が期待できます。1回の治療で皮膚の約10%から15%が再生するとされ、5回を1クールとして治療を行います。深いクレーター状のニキビ跡には、さらに回数を重ねることでより高い効果が期待できます。研究データによると、4回の炭酸ガスフラクショナルレーザー治療後、51%から75%の改善が41.3%の患者で見られたという報告もあります。
ダウンタイムはダーマペンよりもやや長く、施術後は赤みやカサブタが1週間から2週間程度続くことがあります。また、炎症後色素沈着のリスクがあるため、術後の紫外線対策と保湿ケアが重要です。
サブシジョン
サブシジョンは、ローリング型やボックスカー型のニキビ跡に特に有効な治療法です。クレーターの下にある硬くなった瘢痕組織(線維性の癒着)を、特殊な針を使って物理的に剥離する方法です。瘢痕組織が皮膚を引っ張っている状態を解消することで、凹みが改善されます。
サブシジョン単独でも効果がありますが、ジュベルック(ポリ乳酸を含む薬剤)やヒアルロン酸を注入することで、コラーゲン生成を促進し、より効果的に凹みを改善することができます。マイクロサブシジョンという細い針で瘢痕組織を剥がし、そこにコラーゲン生成を促す薬剤を注入することで、肌のへこみを内側から改善していきます。
TCAクロス(TCAピーリング)
TCAクロスは、深いアイスピック型やボックスカー型のニキビ跡に改善効果が期待できる治療法です。高濃度のトリクロロ酢酸(TCA)をピンポイントでニキビ跡の凹みに塗布し、皮膚に意図的に化学熱傷を起こさせます。これにより、体がもつ本来の治癒力でコラーゲンの生成が促され、ニキビ跡を盛り上げていきます。深い凹みに対して効果的ですが、治療には熟練した技術が必要です。
ポテンツァ・シルファーム(ニードルRF)
ポテンツァやシルファームは、マイクロニードル(微細な針)の先端から高周波(RF:ラジオ波)エネルギーを照射する最新の治療機器です。針を肌に刺入しながら同時に熱エネルギーを与えることで、真皮層でのコラーゲン生成を強力に促進します。ダーマペンと高周波治療のメリットを組み合わせた治療法で、クレーター状のニキビ跡や毛穴の開きに効果があります。創傷治癒と肌再生を促し、肌の凹凸を改善していきます。
ヒアルロン酸注入
クレーター状のニキビ跡に対して、ヒアルロン酸を直接注入することで凹みを物理的に持ち上げる方法です。即効性があり、注入直後から凹みが目立たなくなります。ただし、ヒアルロン酸は時間とともに体内に吸収されるため、効果を維持するには定期的な再注入が必要です。日本皮膚科学会のガイドラインでも、痤瘡の萎縮性瘢痕に対する充填剤注射について言及されており、治療オプションの一つとして認められています。
ピコフラクショナルレーザー
ピコレーザーを搭載した機器の中には、FDA(米国食品医薬品局)でニキビ跡改善における認可を取得しているものがあります。ピコフラクショナルという施術方法では、お肌に極小の穴を開けることで、皮膚の自然治癒力とともに新しい皮膚への再生を促します。肌表面にはダメージを与えず、皮下組織の真皮層にアプローチしてコラーゲンやエラスチンの生成を促進します。従来のフラクショナルレーザーと比較してダウンタイムが短く、24時間ほどで赤みなどが落ち着くため、肌への負担が少ないのが特徴です。
セルフケアでニキビ跡を改善する方法
軽度の赤みや色素沈着によるニキビ跡であれば、日常のセルフケアで改善できる場合もあります。ただし、クレーター状のニキビ跡はセルフケアでの改善は困難ですので、医療機関での治療をお勧めします。セルフケアによってニキビ跡を改善するには、半年から1年程度かかるケースもあるため、根気強くケアを継続することが大切です。
ビタミンC誘導体を取り入れたスキンケア
ビタミンCには、メラニンの生成を抑制する作用と、生成されたメラニンを無色化する還元作用があります。また、コラーゲン産生を促す作用や、肌のターンオーバーを正常化する作用も持っています。これらの働きにより、赤みや色素沈着によるニキビ跡の改善が期待できます。
ただし、純粋なビタミンC(ピュアビタミンC)は安定性が低く、空気や紫外線に触れるとすぐに酸化してしまいます。そのため、スキンケア製品には安定性を高めた「ビタミンC誘導体」が配合されています。ビタミンC誘導体には水溶性、脂溶性、両親媒性(APPS)などの種類があり、それぞれ特徴が異なります。高浸透タイプのAPPSを含む化粧水や美容液は、肌への浸透性が高く、より効果的なケアが期待できます。
紫外線対策の徹底
紫外線はメラニン色素の生成を促進し、ニキビ跡の色素沈着を悪化させる大きな原因です。色素沈着によってほかの皮膚より色が暗くなっている部分は、紫外線をより吸収しやすいため、さらに色素沈着が悪化する恐れがあります。紫外線は夏だけでなく1年中降り注いでいるため、季節を問わずSPF25以上の日焼け止めを毎日使用し、日傘や帽子を活用するなど徹底した対策が必要です。
保湿ケアの重要性
肌の乾燥はバリア機能を低下させ、外部刺激に対する抵抗力を弱めます。バリア機能が低下すると、ニキビ跡の治癒が遅れたり、新たなニキビができやすくなったりします。特にニキビの炎症によってすでにダメージを受けている肌は、保湿ケアが欠かせません。化粧水で水分を補給した後、乳液やクリームで適度な油分を補い、肌の水分が逃げないようにすることが大切です。ヒアルロン酸やセラミドなどの保湿成分が配合された製品を選ぶと効果的です。
ビタミンB群・ビタミンCの食事からの摂取
肌の再生に必要な栄養素を食事から積極的に摂取することも重要です。ビタミンB群は肌の新陳代謝を促進させる作用があり、魚や卵、乳製品、レバーなどに多く含まれています。ビタミンB2は皮脂の分泌を制御し、ビタミンB6はタンパク質の代謝に関わっています。ビタミンCはメラニン生成抑制作用やコラーゲン生成促進作用があり、緑黄色野菜やフルーツに豊富に含まれています。これらの栄養素をバランスよく摂取することで、内側からニキビ跡の改善をサポートできます。
適度な運動と質の良い睡眠
適度な運動は血行を促進し、肌のターンオーバーを活性化させます。汗をかくことで毛穴にたまった皮脂や老廃物が排出されやすくなり、肌の水分量も増加します。また、質の良い睡眠は成長ホルモンの分泌を促し、肌の修復や再生に重要な役割を果たします。睡眠不足はターンオーバーの乱れを招き、ニキビ跡の改善を遅らせる原因となります。
ニキビ跡治療に必要な期間と回数の目安
ニキビ跡の治療に必要な期間は、ニキビ跡の種類や症状の程度、選択する治療法によって大きく異なります。ここでは、各タイプのニキビ跡と治療法ごとの目安をご紹介します。
赤みのあるニキビ跡の治療期間
赤みのあるニキビ跡は、自然治癒でも半年から1年程度で改善することが多いですが、医療機関での治療を受けることでより早い改善が期待できます。Vビームレーザーの場合、1か月に1回の頻度で3回から5回程度の施術が目安となります。軽度の赤みであれば、3か月程度で改善を実感できることもあります。
色素沈着の治療期間
色素沈着によるニキビ跡は、ケミカルピーリングやトレチノイン・ハイドロキノン療法などで3か月から6か月程度で目立たなくなることが多いです。レーザートーニングの場合は、1週間から2週間に1回の頻度で5回から10回程度の施術が目安です。色素沈着が濃い場合はさらに時間がかかることがあります。
クレーターの治療期間
クレーター状のニキビ跡は最も治療に時間がかかり、完全に消すことは難しい場合もありますが、治療を続けることで凹みを目立たなくすることは可能です。ダーマペンの場合、1か月に1回の頻度で5回程度が基本的な目安となり、深いクレーターには10回程度必要になることもあります。フラクショナルCO2レーザーは、1か月から3か月の間隔で3回から5回程度の施術が必要です。トータルで半年から1年以上の治療期間を見込む必要があります。
なお、ニキビ跡の深さや個人の回復力によって治療効果は大きく異なるため、一概に何回で治るとは言えません。中には20年前のニキビ跡が改善した症例もありますので、長年悩んでいる方もあきらめずにご相談ください。
ニキビ跡を作らないための予防法
ニキビ跡の治療はできてしまってからでは時間も費用もかかります。最も重要なのは、ニキビ跡を作らないことです。日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」でも強調されているように、ニキビ跡治療はまず「ニキビを新しく作らないこと」が最も重要です。
ニキビを潰さない・触らない
ニキビが気になって触ったり潰したりしてしまうと、炎症が悪化してニキビ跡が残りやすくなります。膿を出そうと潰すことで周辺の皮膚に傷がつき、細菌が広がって新たなニキビの原因になることもあります。ニキビができた場合は極力触らず、どうしても気になる場合は皮膚科を受診して医師に処置してもらうことをお勧めします。
早期に皮膚科を受診する
ニキビは「たかがニキビ」と放置せず、早めに治療することが大切です。炎症を起こした赤ニキビや黄ニキビになってしまった場合は、なるべく早く皮膚科を受診して適切な治療を受けましょう。日本皮膚科学会のガイドラインでは、急性炎症期にはアダパレンや過酸化ベンゾイル(BPO)などの外用薬を使用し、炎症を早期に抑えて瘢痕形成を回避することが推奨されています。
適切なスキンケアを心がける
正しい洗顔と保湿は、ニキビ予防の基本です。洗顔は1日2回程度が推奨されており、洗顔が足りないとニキビができやすく、多すぎると肌が乾燥して皮脂の過剰分泌を招きます。ぬるま湯か水で顔を濡らし、たっぷりの泡で摩擦をかけないようにやさしく洗いましょう。洗顔後は清潔なタオルでこすらずに押さえ拭きし、すぐに保湿を行います。また、ノンコメドジェニック(毛穴が詰まりにくい処方)の製品を選ぶことも大切です。
生活習慣の見直し
バランスの良い食生活、十分な睡眠、適度な運動、ストレスの軽減は、肌の健康を保つうえで欠かせません。脂っこい食事や甘いものの摂りすぎは皮脂分泌を促進し、ニキビができやすい環境を作ります。野菜や果物を積極的に摂り、規則正しい生活を心がけましょう。

よくある質問
ニキビ跡のタイプによって異なります。赤みのあるニキビ跡や軽度の色素沈着は、時間の経過とともに自然に改善することが多く、半年から1年程度で薄くなっていくことがあります。ただし、クレーター状のニキビ跡は真皮層にまでダメージが及んでいるため、肌のターンオーバーだけでは改善が難しく、医療機関での専門的な治療が必要です。
どちらも創傷治癒力を利用してコラーゲン生成を促す治療ですが、特徴が異なります。フラクショナルCO2レーザーは出力を自由に調整でき、より強力な治療が可能ですが、ダウンタイムが長めです。ダーマペンは針が垂直に刺さるため肌へのダメージが少なく、施術翌日からメイクが可能なほどダウンタイムが短いのが特徴です。症状や希望するダウンタイム、生活スタイルに応じて医師と相談して選択することをお勧めします。
多くの治療では麻酔クリームを使用するため、施術中の痛みはかなり軽減されます。ダーマペンやフラクショナルレーザーは、麻酔クリームを塗布して20分から30分ほど待ってから施術を行うため、痛みを最小限に抑えることができます。ピーリングやイオン導入などはほとんど痛みを感じない施術です。痛みに弱い方は事前に医師にご相談ください。
セルフダーマペンなど自宅ケア用品も販売されていますが、医療機関での治療と比較すると効果は限定的です。誤った使用方法でニキビ跡の症状をさらに悪化させたり、感染症を引き起こしたりするリスクがあります。また、肌に穴を開ける行為は医療行為に該当するため、クレーター治療など本格的な改善を目指す場合は、医療機関で専門的な治療を受けることをお勧めします。
治療法によって異なります。ダーマペンは施術直後から赤みが出ますが、翌日にはファンデーションでカバーできる程度になることがほとんどです。フラクショナルCO2レーザーは、軽めの照射で赤みが1日から3日程度、強めの照射で1週間から2週間持続します。点状のカサブタができることもありますが、自然に剥がれ落ちます。ケミカルピーリングやイオン導入はダウンタイムがほとんどありません。
はい、何年も前にできたニキビ跡でも治療は可能です。症状によって少し異なりますが、20年前のニキビ跡が改善した治療例も報告されています。ニキビ跡の深さや範囲、肌質によって治療回数や期間は変わりますが、適切な治療を継続することで改善が期待できます。長年悩んでいる方も、まずはカウンセリングでご相談ください。
まとめ
ニキビ跡を消すためには、まず自分のニキビ跡がどのタイプなのかを正確に把握し、それに適した治療法を選択することが重要です。赤みや色素沈着であれば比較的改善しやすく、セルフケアと医療機関での治療を組み合わせることで、数か月から半年程度で目立たなくなることが期待できます。一方、クレーター状のニキビ跡は真皮層までダメージが及んでいるため、自然治癒は困難であり、ダーマペンやフラクショナルレーザーなどの専門的な治療が必要です。
また、ニキビ跡の治療と並行して、新しいニキビを作らないための予防も欠かせません。ニキビを潰さない、早期に皮膚科を受診する、適切なスキンケアを行うなど、日常の心がけがニキビ跡の予防につながります。日本皮膚科学会のガイドラインでも、ニキビ跡治療において最も重要なのは「ニキビを新しく作らないこと」と強調されています。
ニキビ跡でお悩みの方は、セルフケアだけで解決しようとせず、まずは専門医にご相談ください。アイシークリニック渋谷院では、患者様一人ひとりの肌状態やニキビ跡のタイプを丁寧に診察し、最適な治療プランをご提案いたします。長年悩んでいたニキビ跡も、適切な治療を継続することで改善が期待できます。美しい肌を取り戻すための第一歩として、ぜひお気軽にカウンセリングにお越しください。
参考文献
- 公益社団法人日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
- Mindsガイドラインライブラリ「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
- 日本皮膚科学会雑誌「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
- 厚生労働省「アキュテイン(ACCUTANE)に関する注意喚起について」
- AMR臨床リファレンスセンター「ニキビ治療と薬剤耐性」
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務