鏡を見るたびに気になるほうれい線。年齢を重ねるにつれて深くなっていくこの溝は、見た目年齢を大きく左右する要因の一つです。ほうれい線を改善する方法として、近年特に注目を集めているのがヒアルロン酸注入治療です。メスを使わずに短時間で効果を実感できることから、多くの方に選ばれています。しかし、ヒアルロン酸注入を検討される際には、効果だけでなく、持続期間やリスクについても正しく理解しておくことが大切です。本記事では、ほうれい線へのヒアルロン酸注入について、その効果からリスク、クリニック選びのポイントまで詳しく解説します。
目次
- ほうれい線とは
- ほうれい線ができる原因とメカニズム
- ヒアルロン酸とは何か
- ほうれい線へのヒアルロン酸注入の効果
- 注入量の目安と施術の流れ
- ヒアルロン酸製剤の種類と特徴
- 効果の持続期間について
- ヒアルロン酸注入のメリット
- ヒアルロン酸注入のリスクと副作用
- 施術を受ける前に知っておきたいこと
- 施術後のケアと注意点
- 他の治療法との比較
- クリニック選びのポイント
- よくある質問
- まとめ
ほうれい線とは
ほうれい線とは、小鼻の両側から口角に向かってハの字型に伸びる溝のことを指します。医学用語では「鼻唇溝(びしんこう)」と呼ばれ、英語では「Nasolabial fold」と表現されます。漢字では「法令線」と書き、中国の面相学における「法令紋」に由来しています。
実は、ほうれい線は赤ちゃんから大人まで誰にでも存在するものです。笑ったときに現れる溝として、表情を豊かにする自然な構造の一部といえます。しかし、加齢とともにこの溝が深くなり、表情を変えていないときでも目立つようになると、顔全体が老けた印象を与えてしまいます。
ほうれい線が気になり始める年代は個人差がありますが、一般的には30代前後から意識する方が多くなります。アンケート調査によると、20代から40代の女性のうち約3人に1人がほうれい線に悩んでいるとされており、年代が上がるにつれてその割合は増加する傾向にあります。
ほうれい線は、厳密にいうと「シワ」とは異なります。シワは肌のハリが失われてたるむことで皮膚がよれたものですが、ほうれい線は頬と口元の境界線にできる溝であり、「たるみじわ」の一種として分類されます。この違いを理解することは、適切な治療法を選択するうえで重要なポイントとなります。
ほうれい線ができる原因とメカニズム
ほうれい線が目立つようになる原因は複合的であり、さまざまな要因が関係しています。主な原因について詳しく見ていきましょう。
加齢による肌のハリ低下
私たちの肌は、表皮・真皮・皮下組織の3層から構成されています。真皮層には肌のハリや弾力を保つコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸といった成分が存在しますが、これらは加齢とともに減少していきます。
コラーゲンやエラスチンの生成力は18歳頃をピークに低下し始め、25歳から28歳頃になると肌のハリに衰えが見え始めます。これらの成分を産生する線維芽細胞の機能も年齢とともに低下するため、肌の弾力が失われ、頬の組織がほうれい線に乗るようにたるむことで溝が深くなっていきます。
表情筋の衰え
顔には30種類以上の表情筋が存在し、これらの筋肉が皮膚や脂肪を支えています。加齢や表情を動かす機会の減少により表情筋が衰えると、支える力が弱まって顔全体がたるみ、ほうれい線が目立つようになります。
特に頬や口元の筋肉の衰えは、ほうれい線に直接影響を与えます。マスク生活が続いたことで口角を意識的に動かす機会が減り、表情筋が衰えてしまったという方も少なくありません。
骨密度の低下と骨の萎縮
あまり知られていませんが、顔の骨も加齢とともに変化します。骨密度が低下し、頭蓋骨が痩せることで、その上に載っている筋肉や脂肪、皮膚を十分に支えられなくなります。特に頬骨周辺の骨が痩せると、重力の影響で組織が下垂し、ほうれい線を深くする原因となります。
皮下脂肪の変化
頬の皮下脂肪も加齢や体重変動により位置が変化します。若い頃は頬の高い位置にあった脂肪が、加齢とともに下垂して口元に溜まることで、ほうれい線周辺のボリュームが増し、溝がより深く見えるようになります。
一方で、急激なダイエットなどで皮下脂肪が減少すると、肌にハリがなくなりたるみが目立つこともあります。適正体重を維持することが、ほうれい線予防にも重要です。
紫外線による光老化
紫外線、特にUV-Aは真皮層まで到達し、コラーゲンやエラスチンを産生する線維芽細胞にダメージを与えます。長年にわたって紫外線を浴び続けることで、肌の弾力が失われ、ほうれい線が深くなりやすくなります。これを「光老化」と呼びます。
乾燥
肌の乾燥はバリア機能を低下させ、外部からのダメージを受けやすい状態を作ります。保湿が不十分だと肌のハリが失われ、小じわやほうれい線が目立ちやすくなります。特に冬場やエアコンの効いた室内では、肌が乾燥しやすいため注意が必要です。
生活習慣の影響
日常的な習慣もほうれい線に影響を与えます。うつむきがちな姿勢でスマートフォンを長時間見続けたり、寝るときにいつも同じ方向を下にしていたりすると、重力の影響で頬がたるみやすくなります。また、頬杖をつく癖や片側だけで食べ物を噛む習慣も、ほうれい線を悪化させる要因となります。
骨格的要因
頬骨の位置や口元の突出具合など、生まれつきの骨格によってもほうれい線の目立ちやすさは異なります。口元がやや前方に出ている骨格の方は、笑ったときなどに皮膚が折れ曲がりやすく、若いうちからほうれい線が目立つケースもあります。
ヒアルロン酸とは何か
ヒアルロン酸は、私たちの体内にもともと存在する成分です。皮膚や目、関節、血管、内臓などあらゆる場所に存在し、細胞と細胞の間を満たす役割を担っています。
ヒアルロン酸の最大の特徴は、その驚異的な保水力にあります。1gのヒアルロン酸は約2リットルから6リットルもの水分を抱え込むことができるとされており、肌の潤いやハリを保つうえで非常に重要な成分です。
肌においては、真皮層に多く存在し、コラーゲンやエラスチンとともに肌の弾力性や柔軟性を維持しています。しかし、体内のヒアルロン酸は20代をピークに減少し始め、40代では約半分、60代では約4分の1にまで減少するといわれています。
美容医療で使用されるヒアルロン酸製剤は、この体内に存在する成分と同様の構造を持つものを人工的に精製したものです。もともと体内に存在する成分であるため、アレルギー反応が起こりにくく、安全性が高いのが特徴です。注入されたヒアルロン酸は時間とともに体内の酵素(ヒアルロニダーゼ)によって分解され、自然に吸収されていきます。
ほうれい線へのヒアルロン酸注入の効果
ヒアルロン酸注入は、ほうれい線の改善において非常に効果的な治療法として広く認知されています。具体的にどのような効果が期待できるのかを解説します。
シワ・溝の改善効果
ヒアルロン酸をほうれい線の溝に直接注入することで、内側から皮膚を持ち上げ、くぼんだ部分をふっくらとさせます。これにより、深く刻まれた溝が目立たなくなり、なめらかな肌表面を取り戻すことができます。
化粧品によるケアでは真皮層まで有効成分を届けることは難しいですが、ヒアルロン酸注入は真皮層に直接働きかけるため、より確実な効果が期待できます。
即効性のある効果
ヒアルロン酸注入の大きな魅力は、施術直後から効果を実感できる点です。注入したその場でボリュームアップが確認でき、鏡を見ながら仕上がりを調整することも可能です。
施術時間も約5分から10分程度と短く、忙しい方でも気軽に受けられる治療法といえます。
リフトアップ効果
ほうれい線だけでなく、頬の高い位置にヒアルロン酸を注入することで、顔全体のリフトアップ効果を得ることもできます。頬のボリュームが回復すると、たるみによって生じていたほうれい線も自然と目立たなくなります。
近年は、シワを単に埋めるだけでなく、顔全体のバランスを考えた「ヒアルロン酸リフト」という考え方が主流になっています。骨格や靭帯の土台となる部分にヒアルロン酸を注入し、顔全体を引き上げることで、より自然で若々しい印象を作り出すことができます。
肌質改善効果
ヒアルロン酸の保水作用により、注入部位の肌がふっくらとしてハリが出ます。また、繰り返し注入を行うことで、周囲のコラーゲン生成が促進され、肌質全体の改善が期待できるという報告もあります。
注入量の目安と施術の流れ
注入量の目安
ほうれい線の改善に必要なヒアルロン酸の量は、シワの深さや肌の状態によって個人差があります。一般的な目安としては、片側あたり0.5ccから1.0cc程度、両側で1ccから2cc程度が標準的な量とされています。
ただし、頬のたるみが強い場合や、顔全体のリフトアップを目指す場合は、より多くの量が必要になることもあります。必要な注入量は、診察時に医師と相談しながら決定することが重要です。
施術の流れ
ヒアルロン酸注入の施術は、以下のような流れで行われます。
まず、医師によるカウンセリングで、お悩みの内容や希望する仕上がりについて詳しくヒアリングします。ほうれい線の状態を確認し、適した治療法や使用する製剤、注入量についての提案を受けます。
施術前には、写真撮影や洗顔、麻酔(必要に応じて)を行います。ヒアルロン酸製剤の多くには局所麻酔薬(リドカイン)が含まれているため、注入時の痛みは軽減されます。痛みに敏感な方には、表面麻酔クリームを塗布してから施術を行うこともあります。
施術は細い針を使ってヒアルロン酸を注入していきます。施術時間は5分から10分程度で完了します。注入後すぐに効果を確認でき、必要に応じて微調整を行います。
施術後は特別なダウンタイムはほとんどなく、直後からメイクも可能です。ただし、内出血が出る場合もあるため、その場合はコンシーラーなどでカバーしていただきます。
ヒアルロン酸製剤の種類と特徴
ヒアルロン酸製剤は世界中で多くのメーカーから販売されており、それぞれに特徴があります。ほうれい線治療に使用される代表的な製剤について解説します。
厚生労働省承認製剤
日本で厚生労働省の承認を受けているヒアルロン酸製剤は、品質や安全性が厳しい審査を経て認められた製品です。
アラガン社の「ジュビダームビスタ」シリーズは、国内で最初に厚生労働省の承認を受けた製剤で、世界シェアトップを誇ります。同社独自のVYCROSS(バイクロス)技術により、高分子と低分子のヒアルロン酸を網目状に組み合わせた構造を持ち、持続性と自然な仕上がりを両立しています。
ジュビダームビスタシリーズには複数の種類があり、部位や目的に応じて使い分けられます。ほうれい線の治療には、「ボリューマXC」(頬のボリュームアップとリフトアップに適する)や「ボリフトXC」(中程度のシワ改善に適する)がよく使用されます。持続期間は製剤によって異なりますが、約12ヶ月から18ヶ月程度とされています。
ガルデルマ社の「レスチレン」シリーズも、世界70カ国以上で使用されている歴史のある製剤です。1996年に発売されて以来、多くの実績を持ち、日本でも厚生労働省の承認を受けています。独自のNASHA技術により、天然のヒアルロン酸に近い構造を維持しているのが特徴です。
製剤選びのポイント
ヒアルロン酸製剤は、硬さや持続性、なじみやすさなどの特性がそれぞれ異なります。ほうれい線の深さや肌の状態、希望する仕上がりによって最適な製剤は変わってきます。
比較的深いほうれい線には、ある程度の硬さを持った製剤が適しています。一方、浅いシワや動きの多い部位には、柔らかくて肌になじみやすい製剤が向いています。
どの製剤を使用するかは、医師の診断と相談のうえで決定することが重要です。厚生労働省やアメリカのFDA、ヨーロッパのCEマークなど、公的機関の承認を受けた製剤を使用しているクリニックを選ぶことで、安全性を担保することができます。
効果の持続期間について
ヒアルロン酸注入の効果は永続的ではなく、時間とともに徐々に体内に吸収されていきます。持続期間について詳しく解説します。
一般的な持続期間
ヒアルロン酸の持続期間は、使用する製剤の種類や注入量、注入部位、個人の体質によって異なります。一般的には半年から2年程度とされています。
製剤別の目安として、比較的柔らかい製剤で6ヶ月から1年程度、硬めの製剤で1年から1年半程度の効果が期待できます。最新のVYCROSS技術を使用した製剤では、18ヶ月以上効果が持続するものもあります。
効果の減少について
注入されたヒアルロン酸は、体内に存在する「ヒアルロニダーゼ」という酵素によって徐々に分解されていきます。分解のスピードには個人差があり、代謝が活発な方ほど早く吸収される傾向があります。
初めて施術を受ける方は、比較的ヒアルロン酸の吸収が早い傾向にあるといわれています。しかし、繰り返し施術を受けることで、ヒアルロン酸の周りにコラーゲンの膜が形成され、吸収が阻害されるため、効果の持続期間が長くなることが報告されています。
効果を長持ちさせるコツ
ヒアルロン酸の効果をできるだけ長く維持するためには、以下のポイントに注意しましょう。
施術後は注入部位を強く押したり、マッサージしたりすることは避けてください。特に施術後1週間程度は、形が安定するまで刺激を与えないことが大切です。
また、紫外線対策をしっかり行うことで、肌のダメージを防ぎ、ヒアルロン酸の効果を長持ちさせることができます。日焼け止めの使用や帽子、日傘の活用を心がけましょう。
十分な保湿ケアも重要です。肌が乾燥するとバリア機能が低下し、ヒアルロン酸の分解が早まる可能性があります。
効果が完全になくなる前に定期的にメンテナンスの注入を行うことで、常にほうれい線が目立たない状態を維持することができます。
ヒアルロン酸注入のメリット
ほうれい線の改善方法としてヒアルロン酸注入が選ばれる理由について、そのメリットを整理します。
メスを使わない手軽さ
ヒアルロン酸注入は、注射による治療であるためメスを使用しません。顔に傷が残る心配がなく、切開を伴う手術に比べて心理的なハードルが低いといえます。
短い施術時間
施術時間は約5分から10分程度と非常に短く、忙しい方でもスキマ時間に受けることができます。仕事の合間や買い物ついでに施術を受けるという方も少なくありません。
ダウンタイムがほとんどない
施術直後からメイクが可能であり、日常生活にすぐに戻ることができます。多少の腫れや内出血が出ることはありますが、通常は数日から1週間程度で改善します。
即効性がある
施術直後から効果を実感できるのは、ヒアルロン酸注入の大きな魅力です。特別なイベントの前など、すぐに結果を出したいときにも適しています。
効果の調整が可能
注入量を調整することで、仕上がりをコントロールできます。控えめな変化を希望する方から、しっかりとした効果を求める方まで、個々のニーズに応じた治療が可能です。
万が一の際に修正ができる
ヒアルロン酸は、ヒアルロニダーゼという溶解酵素によって分解することができます。仕上がりに満足できない場合や、トラブルが生じた場合には、このヒアルロン酸溶解注射で修正することが可能です。これは、永続的な治療法にはない大きなメリットといえます。
アレルギーリスクが低い
ヒアルロン酸はもともと体内に存在する成分であるため、アレルギー反応が起こりにくいとされています。アレルギー体質の方でも比較的安心して受けられる治療法です。
ヒアルロン酸注入のリスクと副作用
ヒアルロン酸注入は安全性の高い治療法ですが、医療行為である以上、リスクや副作用が全くないわけではありません。施術を検討される方は、以下のリスクについて十分に理解しておくことが重要です。
一般的な副作用
以下の症状は比較的よく見られるもので、通常は数日から1週間程度で自然に改善します。
注射を行うため、針を刺した部位に軽い痛みや違和感が残ることがあります。これは通常2週間以内に自然に消失します。
針が血管にあたることで内出血が生じることがあります。目立つ場合でも、1週間から2週間程度で消退します。
注入部位やその周辺に腫れやむくみが出ることがあります。また、ヒアルロン酸が一時的に水分を吸収することで、施術直後よりも少し膨らんで見えることもあります。これらは通常数日で落ち着きます。
中等度の副作用
注入した部位にしこりができることがあります。これはヒアルロン酸が均等に分布しなかった場合や、注入量が多かった場合に起こりやすく、時間とともに自然に解消されることが多いですが、気になる場合はヒアルロン酸溶解注射で対応できます。
目の周りなど皮膚の薄い部位では、注入したヒアルロン酸が青っぽく透けて見える「チンダル現象」が起こることがあります。これは、製剤の選択や注入層を適切に行うことで予防できます。
重篤な副作用
発生頻度は非常に低いですが、重篤な副作用についても理解しておく必要があります。
血管閉塞は、ヒアルロン酸注入において最も注意すべき合併症です。ヒアルロン酸が血管内に入ったり、血管を圧迫したりすることで血流障害が起こり、皮膚の壊死や、最悪の場合には失明につながる可能性があります。
特に眉間や鼻、ほうれい線周辺は血管が豊富な部位であり、細心の注意が必要です。注入中に強い痛みを感じたり、皮膚の色が白くなったりした場合は、すぐに医師に伝えることが重要です。
このようなリスクを回避するためには、解剖学的な知識と豊富な経験を持つ医師による施術を受けることが不可欠です。
感染
注射部位から細菌が入ることで感染を起こすことがあります。症状としては、赤み、腫れ、痛み、熱感などが見られます。感染が疑われる場合は、すみやかに医療機関を受診してください。
アレルギー反応
ヒアルロン酸自体は体内に存在する成分であるためアレルギーは起こりにくいですが、稀にアレルギー反応が生じることがあります。皮膚の発疹、かゆみ、腫れなどの症状が見られた場合は、早急に対応が必要です。
また、施術後数日から数週間経ってから赤みや腫れ、しこりが出現する「遅延型アレルギー」が起こることもあります。アレルギー体質の方は、事前に医師にお伝えください。
施術を受ける前に知っておきたいこと
ヒアルロン酸注入を検討される際に、事前に確認しておくべきポイントをまとめました。
カウンセリングの重要性
施術前のカウンセリングは非常に重要です。医師にご自身の悩みや希望する仕上がりを詳しく伝え、治療方法やリスクについて十分な説明を受けましょう。納得したうえで施術を受けることが、満足のいく結果につながります。
事前に医師に伝えるべきこと
以下のような項目は、必ず事前に医師に伝えてください。過去にヒアルロン酸注入やその他の美容施術を受けたことがあるか、アレルギー体質かどうか、現在服用している薬やサプリメント、妊娠中または授乳中かどうか、出血しやすい体質かどうか、ケロイド体質かどうかといった点が重要です。
特に、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)やサプリメント(EPAやDHA、ビタミンE、魚油など)を服用している場合は、内出血のリスクが高まるため、事前に相談が必要です。
施術を受けられない場合
以下に該当する方は、施術を受けられない場合があります。妊娠中または授乳中の方、施術部位に感染症や皮膚疾患がある方、ヒアルロン酸製剤やリドカインに対してアレルギーがある方、重度の基礎疾患がある方などです。該当する可能性がある場合は、必ず医師に確認してください。
施術後のケアと注意点
施術後の過ごし方によって、効果の持続や仕上がりに差が出ることがあります。以下の注意点を守りましょう。
施術当日の注意点
施術直後からメイクは可能ですが、注入部位を強くこすらないように注意してください。洗顔も優しく行いましょう。
当日は激しい運動や長時間の入浴、サウナなど、血行を促進する行為は避けてください。腫れや内出血が増す可能性があります。
飲酒も血行を促進するため、当日は控えることをおすすめします。
施術後1週間程度の注意点
注入部位を押したり、強くマッサージしたりすることは避けてください。ヒアルロン酸が安定する前に刺激を与えると、形が崩れる原因になります。
うつ伏せで寝ることも、注入部位に圧力がかかるため避けましょう。
歯科治療や顔面マッサージ、エステなども、施術後1週間程度は控えることをおすすめします。
異常を感じた場合の対応
以下のような症状が見られた場合は、すみやかに施術を受けたクリニックに連絡してください。強い痛みが続く場合、皮膚の色が白くなったり紫色に変色したりした場合、異常な腫れや熱感がある場合、視力に異常を感じた場合などは特に注意が必要です。
特に血管閉塞による症状は、早期発見・早期治療が重要です。異変を感じたらためらわずに相談しましょう。
他の治療法との比較
ほうれい線の改善方法は、ヒアルロン酸注入以外にもいくつかあります。それぞれの特徴を理解し、ご自身に合った治療法を選択することが大切です。
糸リフト(スレッドリフト)
医療用の溶ける糸を皮下に挿入し、たるみを物理的に引き上げる治療法です。施術直後からリフトアップ効果を実感でき、糸が吸収される過程でコラーゲン生成も促進されます。
ヒアルロン酸注入と比べると、より強力なリフトアップ効果が期待できますが、ダウンタイムがやや長く、費用も高くなる傾向があります。
HIFU(ハイフ)
高密度焦点式超音波を使用して、肌の深部にある筋膜(SMAS層)に熱エネルギーを与え、引き締め効果を得る治療法です。メスを使わずにリフトアップできることが特徴です。
即効性ではヒアルロン酸注入に劣りますが、自然な引き締め効果を求める方に適しています。持続期間は3ヶ月から1年程度です。
脂肪注入
自身の脂肪をほうれい線に注入する治療法です。自分の組織を使用するためアレルギーの心配がなく、定着した脂肪は長期間効果が持続するメリットがあります。
ただし、脂肪を採取する必要があるため施術が大がかりになり、ダウンタイムも長くなります。また、定着率に個人差があるというデメリットもあります。
グロースファクター注入
成長因子を注入することで、コラーゲンの生成を促進し、肌のハリを取り戻す治療法です。効果が現れるまでに時間がかかりますが、一度定着すると長期間効果が持続します。
フェイスリフト手術
メスを使って皮膚や筋膜を引き上げる外科手術です。最も確実な効果が期待できますが、ダウンタイムが長く、費用も高額になります。
クリニック選びのポイント
ヒアルロン酸注入の効果や安全性は、医師の技術力に大きく左右されます。信頼できるクリニックを選ぶためのポイントを解説します。
医師の経験と資格
ヒアルロン酸注入は一見シンプルな治療に見えますが、解剖学的な知識と高い技術力が求められます。施術を担当する医師の経歴や経験、専門分野を確認しましょう。
形成外科専門医や美容外科専門医の資格を持つ医師、ヒアルロン酸製剤メーカーから認定を受けた医師であれば、より安心です。
使用する製剤の品質
厚生労働省やアメリカのFDA、ヨーロッパのCEマークなど、公的機関の承認を受けた製剤を使用しているかを確認しましょう。価格が極端に安いクリニックでは、品質保証がされていない製剤が使われている可能性があります。
カウンセリングの丁寧さ
カウンセリングで十分な時間をかけて説明してくれるか、質問にきちんと答えてくれるかは、クリニック選びの重要なポイントです。メリットだけでなく、デメリットやリスクについても正直に説明してくれるクリニックを選びましょう。
アフターフォロー体制
施術後に何か問題が生じた場合に、すぐに対応してもらえる体制が整っているかを確認しましょう。緊急時の連絡先や対応方法についても、事前に聞いておくことをおすすめします。
症例写真や口コミ
実際の症例写真を見ることで、そのクリニックの仕上がりの傾向を確認できます。また、口コミや評判も参考になりますが、個人差があることも念頭に置いておきましょう。

よくある質問
注射を行うため全く痛みがないわけではありませんが、現在使用されている製剤の多くには麻酔薬(リドカイン)が含まれており、痛みは軽減されています。痛みに敏感な方には、表面麻酔クリームを塗布してから施術を行うことも可能です。
使用する製剤や個人差によりますが、一般的に6ヶ月から2年程度効果が持続します。効果が減少してきたら、メンテナンスの注入を行うことで、常にきれいな状態を維持できます。
ヒアルロン酸を打ち続けても大丈夫ですか?
ヒアルロン酸はもともと体内に存在する成分であるため、適切な量と頻度で打ち続けても健康面への影響はないとされています。むしろ、繰り返し注入することで効果の持続期間が長くなるというメリットもあります。ただし、過度な注入は不自然な仕上がりの原因となるため、医師と相談しながら適切な量を維持することが大切です。
施術後、いつからメイクできますか?
施術直後からメイクは可能です。ただし、注入部位を強くこすらないように優しくメイクしてください。
腫れや内出血はどのくらいで治りますか?
軽度の腫れは数日、内出血は1週間から2週間程度で改善するのが一般的です。内出血が気になる場合は、コンシーラーでカバーできます。
ヒアルロン酸注入とボトックス注射の違いは何ですか?
ヒアルロン酸注入は、シワの溝を内側から持ち上げてボリュームを出す治療です。一方、ボトックス注射は筋肉の動きを抑制することで表情ジワを改善する治療です。ほうれい線のような「たるみ」によるシワにはヒアルロン酸、額や眉間の「表情」によるシワにはボトックスが適しています。両方を組み合わせて使用することもあります。
失敗したらどうなりますか?
仕上がりに満足できない場合や、しこりができた場合などは、ヒアルロン酸溶解注射(ヒアルロニダーゼ)でヒアルロン酸を溶かすことができます。これにより、元の状態に戻すことが可能です。この修正ができる点が、ヒアルロン酸注入の大きなメリットの一つです。
まとめ
ほうれい線へのヒアルロン酸注入は、メスを使わず短時間で効果を実感できる、非常に優れた治療法です。加齢や生活習慣によって深くなったほうれい線を改善し、若々しい印象を取り戻すことができます。
ヒアルロン酸はもともと体内に存在する成分であるため安全性が高く、アレルギー反応も起こりにくいとされています。万が一仕上がりに満足できない場合でも、溶解注射で修正できるという安心感もあります。
一方で、医療行為である以上、リスクや副作用が全くないわけではありません。特に血管閉塞による皮膚壊死や失明といった重篤な合併症については、発生頻度は低いものの、十分な理解が必要です。
安全で満足のいく治療を受けるためには、経験豊富な医師による施術と、厚生労働省承認などの品質が保証された製剤の使用が欠かせません。カウンセリングでしっかりと説明を受け、納得したうえで施術に臨むことが大切です。
ほうれい線でお悩みの方は、まずは信頼できるクリニックでカウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。ご自身の状態に合った最適な治療法について、専門家に相談することで、より良い選択ができるはずです。
参考文献
- ほうれい線の原因と改善方法|品川スキンクリニック
- 医師監修|ほうれい線の原因は?目立たなくする対策や意外な落とし穴とは?|アラガン・エステティックス・ビューティー
- 気になるほうれい線はどう扱えばいい?ほうれい線の原因と対策まとめ|美容皮膚科タカミクリニック
- ほうれい線がない人ってどんな人?予防法から施術まで解説|日比谷ヒフ科クリニック
- 年齢とともに気になるシワやほうれい線…その原因と今からできる対策|KOSE
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務