「ロラゼパムを飲むと痩せる」「ワイパックスにはダイエット効果がある」といったインターネット上の情報を目にして、気になっている方もいらっしゃるかもしれません。ロラゼパムは、不安や緊張を和らげるために処方されるベンゾジアゼピン系抗不安薬であり、神経症や心身症の治療に広く使用されています。しかしながら、ロラゼパムには直接的な痩身効果や体重減少作用はありません。本記事では、ロラゼパムの基本的な作用機序から、なぜ「痩せる」という誤解が生じるのか、服用中に体重が変化する可能性のあるケース、そして抗不安薬と体重の関係について、医学的な観点から詳しく解説いたします。不安や緊張でお悩みの方、ロラゼパムを処方されている方、体重変化について心配されている方は、ぜひ最後までお読みください。適切な知識を身につけることで、安全かつ効果的な治療を続けていただくことができます。
目次
- ロラゼパムとはどのような薬か
- ロラゼパムの作用機序とGABAの働き
- ロラゼパムで痩せるという噂の真相
- 体重減少が起こりうるケース
- 体重増加が起こりうるケース
- 不安やストレスと体重変化の関係
- ロラゼパムの主な副作用
- ロラゼパムの依存性と離脱症状
- 抗不安薬を服用する際の注意点
- 体重変化が気になる場合の対処法
- よくある質問
- まとめ
ロラゼパムとはどのような薬か
ロラゼパムは、ベンゾジアゼピン系に分類される抗不安薬です。日本では「ワイパックス」という商品名で広く知られており、1978年から医療現場で使用されてきた長い歴史を持つ薬剤です。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、脳の興奮を抑制することで不安や緊張を和らげる効果があり、精神科や心療内科だけでなく、内科などでも処方されることがあります。
ロラゼパムの適応症として、添付文書には以下のように記載されています。神経症における不安、緊張、抑うつ、そして心身症(自律神経失調症、心臓神経症)における身体症候ならびに不安、緊張、抑うつです。つまり、不安や緊張が強い状態を改善し、心身の安定を図ることを目的として処方される薬剤であり、体重を減少させたり、ダイエットを補助したりする目的で使用される薬ではありません。
ロラゼパムの特徴として、効果の発現が比較的速やかであること、作用時間が中間型(半減期約12時間)であること、そして肝臓での代謝がグルクロン酸抱合という経路を経ることが挙げられます。この代謝経路の特徴により、高齢者や肝機能に不安のある患者さんにも比較的使用しやすいとされています。通常、成人の場合は1日1〜3mgを2〜3回に分けて経口投与します。投与量は年齢や症状により適宜増減されます。
ロラゼパムの作用機序とGABAの働き
ロラゼパムがどのようにして不安や緊張を和らげるのかを理解するためには、脳内の神経伝達物質であるGABA(γ-アミノ酪酸、ガンマアミノ酪酸)の働きについて知る必要があります。GABAは、脳内で最も重要な抑制性神経伝達物質の一つであり、神経細胞の興奮を抑える役割を担っています。いわば「脳のブレーキ」のような働きをする物質です。
ロラゼパムは、脳内に広く存在するGABA受容体(GABAA受容体)とベンゾジアゼピン受容体の複合体に結合します。この結合により、GABA受容体の構造がわずかに変化し、GABAがより強く受容体に結合できるようになります。その結果、GABAの神経抑制作用が増強され、脳の過剰な興奮状態が鎮められます。これにより、不安や緊張が軽減され、心身がリラックスした状態になるのです。
ロラゼパムを含むベンゾジアゼピン系薬剤には、主に5つの作用があります。第一に抗不安作用です。これは不安や心配といった気持ちを和らげる効果です。第二に鎮静作用があり、精神的な興奮を落ち着かせてリラックスさせる効果があります。第三に催眠作用として、眠気を誘い寝つきを良くする効果が期待できます。第四に筋弛緩作用があり、筋肉の緊張を和らげます。第五に抗けいれん作用として、脳の異常な興奮を抑えてけいれん発作を鎮める効果があります。
重要なのは、これらの作用の中に脂肪燃焼を促進したり、代謝を高めたり、食欲を抑制したりするような作用は含まれていないということです。ロラゼパムはあくまでも脳の興奮を抑える薬であり、体重に直接影響を与える薬理作用は持っていません。
ロラゼパムで痩せるという噂の真相
インターネット上では「ロラゼパムを飲むと痩せる」「ワイパックスにダイエット効果がある」といった情報が散見されますが、これは医学的には正確ではありません。ロラゼパムの添付文書や医学的な情報において、ロラゼパムが直接的に体重を減少させる効果があるという記載は存在しません。医薬品医療機器総合機構(PMDA)が公開している添付文書においても、痩身効果や体重減少効果については言及されていません。
では、なぜこのような誤解が生まれるのでしょうか。いくつかの可能性が考えられます。一つ目は、副作用による間接的な影響です。ロラゼパムの副作用として、稀に吐き気や食欲不振が報告されています。これらの症状により食事量が減少し、結果として体重が減るケースがあるかもしれません。しかし、これは薬の「効果」ではなく「副作用」であり、意図せぬ体重減少は健康上望ましいものではありません。
二つ目は、ストレスや不安による過食の改善です。強いストレスや不安を抱えている人の中には、ストレス解消として過食に走る方がいます。ロラゼパムを服用して不安が和らぐことで、ストレスによる過食が改善され、食事量が正常化して体重が安定したり減少したりするケースがあります。しかし、これはロラゼパム自体の作用ではなく、不安症状の改善に伴う間接的な変化です。
三つ目は、個人差や他の要因との混同です。体重は食事、運動、生活習慣、他の薬剤、基礎疾患など、様々な要因によって変動します。たまたまロラゼパムを服用し始めた時期に他の要因で体重が減少した場合、それをロラゼパムの効果と誤認する可能性があります。
結論として、ロラゼパムを「痩せる薬」として期待して服用することは完全な誤りです。体重管理を目的としてロラゼパムが処方されることは決してありません。もし体重の変化について心配な点があれば、自己判断せずに必ず主治医や薬剤師に相談してください。
体重減少が起こりうるケース
ロラゼパムに直接的な痩身効果はありませんが、服用中に間接的に体重が減少する可能性のあるケースがいくつか存在します。これらを正しく理解しておくことは、服用中の体調管理において重要です。
まず、副作用による食欲低下のケースがあります。ロラゼパムの副作用として、吐き気や食欲不振が報告されています。これらの消化器系の症状により、食事を摂る気力が低下したり、実際に食べられる量が減少したりすることがあります。特に服用開始直後や増量時に起こりやすい傾向がありますが、多くの場合は体が薬に慣れるにつれて軽減していきます。ただし、これらの症状が持続する場合や、明らかな体重減少を伴う場合は、速やかに医師に相談する必要があります。
次に、ストレス性過食の改善によるケースです。不安やストレスが強い状態が続くと、一部の人は「やけ食い」や「ストレス食い」と呼ばれる過食行動に走ることがあります。これは、食べることで一時的に不安を紛らわせようとする行動パターンです。ロラゼパムによって不安やストレスが軽減されると、この過食行動が自然と収まり、食事量が正常化することがあります。その結果として体重が減少に向かうケースがあります。
また、体重増加を起こしやすい他の薬剤からの切り替えのケースもあります。精神科で使用される薬剤の中には、体重増加を起こしやすいものがあります。例えば、一部の抗精神病薬や三環系抗うつ薬などは体重増加の副作用が知られています。これらの薬剤からロラゼパムに処方が変更された場合、相対的に体重が減少することがあります。
さらに、不安軽減による活動量増加のケースがあります。強い不安や緊張は、外出を控えたり、運動を避けたりする原因になることがあります。ロラゼパムによって不安が軽減されると、日常生活の活動量が増加し、消費カロリーが増えることで体重が減少する可能性もあります。
いずれの場合も、体重減少が急激であったり、持続的であったりする場合は、薬の副作用だけでなく他の健康上の問題が隠れている可能性もあります。定期的な受診時に体重の変化について医師に報告し、適切な指導を受けることが大切です。
体重増加が起こりうるケース
一方で、ロラゼパムを服用中に体重が増加するケースも存在します。実際のところ、体重増加の方が体重減少よりも起こりやすい可能性があるとも言われています。どのようなケースで体重増加が起こりうるのかを理解しておきましょう。
最も一般的なケースは、不安軽減による食欲回復です。強い不安やストレスを抱えている状態では、交感神経が優位になり、食欲が抑制されることがあります。「緊張で食事が喉を通らない」という経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。ロラゼパムによって不安が和らぐと、抑えられていた食欲が回復し、以前よりも食べられるようになることがあります。これは治療がうまくいっている証拠とも言えますが、食べ過ぎには注意が必要です。
次に、副作用による活動量低下のケースがあります。ロラゼパムの最も多い副作用は眠気です。添付文書によると、約6.9%の服用者に眠気が現れるとされています。また、倦怠感やだるさも比較的多く報告される副作用です。これらの症状により日中の活動量が減少し、消費カロリーが低下することで体重増加につながる可能性があります。特に、服用開始直後や増量時には眠気が強く出ることがあるため注意が必要です。
また、むくみによる見かけ上の体重増加のケースも報告されています。ベンゾジアゼピン系薬剤の副作用として、まれにむくみ(浮腫)が生じることがあります。むくみは体内に水分が貯留した状態であり、実際の脂肪増加とは異なりますが、体重計の数値は増加します。むくみが気になる場合は医師に相談してください。
さらに、精神的安定による生活習慣の変化も影響することがあります。不安や緊張が強い状態では、常に神経が高ぶっているため、基礎代謝がやや高くなっている場合があります。ロラゼパムによってリラックスした状態になると、この緊張状態が解消され、エネルギー消費が減少することがあります。また、精神的に安定することで間食が増えたり、食事を楽しめるようになったりすることも体重増加の一因となりえます。
体重増加が気になる場合は、まず生活習慣を見直してみてください。バランスの良い食事、適度な運動、規則正しい生活リズムを心がけることで、薬の副作用による体重変化を最小限に抑えることができます。それでも体重増加が続く場合は、医師に相談して対策を検討してもらいましょう。
不安やストレスと体重変化の関係
ロラゼパムと体重の関係を理解するためには、そもそも不安やストレスが体重にどのような影響を与えるのかを知っておくことが重要です。不安やストレスは、複雑なメカニズムを通じて体重に影響を与えます。
まず、ストレスと食欲低下の関係について説明します。強い不安やストレスにさらされると、体は「闘争・逃走反応」と呼ばれる緊急モードに入ります。この状態では交感神経が優位になり、消化機能が抑制されます。その結果、食欲が低下し、食事を摂る気力が失われることがあります。また、ストレスホルモンであるアドレナリンやノルアドレナリンの分泌が増加すると、脳の摂食中枢が抑制され、空腹感を感じにくくなります。慢性的なストレス状態が続くと、体重が減少していくことがあります。
一方で、ストレスと過食の関係も無視できません。ストレスがかかると、副腎皮質から「コルチゾール」というストレスホルモンが分泌されます。コルチゾールは血糖値を上昇させる働きがありますが、同時に食欲を増進させる作用もあります。また、コルチゾールは精神の安定に関与するセロトニンの分泌を抑制するため、食欲の歯止めが利かなくなることがあります。その結果、「やけ食い」や「ストレス食い」と呼ばれる過食行動につながり、体重が増加することがあります。
不安障害やうつ病などの精神疾患でも、食欲の変化は重要な症状の一つです。うつ病では、多くの場合食欲が低下し体重が減少しますが、逆に過食になるケースもあります。不安障害では、持続的な不安感により吐き気や胃の不快感が生じ、食欲が低下することがあります。これらの精神疾患の治療として抗不安薬や抗うつ薬が処方され、症状が改善すると、食欲も正常化していきます。
このように、不安やストレスと体重変化の関係は一様ではなく、個人によって異なる反応が起こります。ロラゼパムを服用して不安が軽減されたとき、体重がどちらに変化するかは、その人がもともと持っていた食欲パターンやストレス反応のパターンによって異なります。だからこそ、ロラゼパム自体に「痩せる効果」や「太る効果」があるわけではなく、不安症状の変化に伴う間接的な体重変化が起こりうるのです。
ロラゼパムの主な副作用
ロラゼパムを安全に使用するためには、起こりうる副作用について理解しておくことが大切です。すべての人に副作用が現れるわけではありませんが、服用中に気になる症状があれば、早めに医師や薬剤師に相談してください。
最も頻度の高い副作用は眠気です。臨床試験では約6.9%の服用者に眠気が認められています。これはロラゼパムの持つ鎮静作用によるもので、特に服用開始直後や増量時に起こりやすい傾向があります。眠気のため、ロラゼパム服用中は自動車の運転や危険を伴う機械の操作は禁止されています。
次に多い副作用はふらつき、めまい、立ちくらみです。発現頻度は約3.2%と報告されています。これも中枢神経系の抑制作用によるもので、特に高齢者では転倒のリスクが高まるため注意が必要です。起き上がるときや階段の上り下りなどは慎重に行いましょう。
その他にも、倦怠感や脱力感、口の渇き、吐き気、食欲不振といった症状が比較的よく報告されています。これらの症状は、多くの場合、体が薬に慣れるにつれて軽減していきますが、症状がつらい場合や持続する場合は医師に相談してください。
まれに、「奇異反応」と呼ばれる通常とは逆の反応が起こることがあります。不安を和らげるはずの薬で、かえって興奮したり、多弁になったり、攻撃的になったり、イライラが増したりすることがあります。このような症状が現れた場合は、速やかに医師に報告してください。
また、記憶に関する副作用として「一過性前向性健忘」が報告されています。これは、薬を服用した後の出来事を思い出せなくなる症状で、特に高用量を服用した場合やアルコールとの併用時に起こりやすいとされています。服用中は飲酒を避けることが強く推奨されます。
重大な副作用としては、依存性、離脱症状(後述)、呼吸抑制、刺激興奮、錯乱などが添付文書に記載されています。これらの重大な副作用は頻度は低いものの、起こった場合には適切な医療的対応が必要です。
ロラゼパムの依存性と離脱症状
ロラゼパムを含むベンゾジアゼピン系薬剤を服用する際に、最も注意すべき点の一つが依存性です。厚生労働省も、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性について注意喚起を行っています。依存性とは、薬を使い続けることで、薬なしではいられなくなったり、薬をやめると様々な症状が現れたりする状態を指します。
依存性には大きく分けて2種類あります。一つは精神的依存です。これは「薬を飲まないと不安でいられない」「薬がないと落ち着かない」というように、精神的に薬に頼ってしまう状態です。症状が再発するのではないかという恐怖や、薬の効果への期待から、手放せなくなります。
もう一つは身体的依存です。これは、薬を一定期間服用していた体が、薬がある状態に慣れてしまい、薬の服用を急に中止したり減量したりすると、様々な不快な症状(離脱症状)が現れる状態です。体が薬の存在を前提とした状態から、薬がない状態へ急激に変化することに対応できないために起こります。
ロラゼパムの離脱症状としては、不安、不眠、焦燥感、易刺激性、知覚異常、発汗、震え、頭痛、筋肉痛、吐き気などが報告されています。これらの症状は、もともとの不安症状と似ていることもあり、「やはり薬がないとダメだ」と誤解してしまうことがあります。離脱症状は、長期間服用していた場合や高用量を服用していた場合に起こりやすくなります。
依存性を防ぐためには、以下の点に注意することが重要です。まず、医師の指示を守り、自己判断で用量を増やしたり、長期間漫然と服用を続けたりしないことです。ロラゼパムの添付文書には「連用により薬物依存を生じることがあるので、漫然とした継続投与による長期使用を避けること」と明記されています。
薬を中止する際は、絶対に自己判断で急にやめないでください。急な中止は離脱症状を引き起こす可能性があります。減量や中止は必ず医師の指導のもとで、徐々に行う必要があります。一般的には、1〜2週間ごとに用量の10〜25%ずつ減らしていくような慎重な方法が取られます。
抗不安薬を服用する際の注意点
ロラゼパムを安全かつ効果的に使用するために、いくつかの重要な注意点があります。これらを守ることで、副作用のリスクを最小限に抑え、治療効果を最大限に引き出すことができます。
第一に、医師の指示通りに服用することが最も重要です。処方された用量、服用回数、服用のタイミングを守りましょう。効果が感じられないからといって自己判断で用量を増やしたり、逆に調子が良いからといって勝手に服用をやめたりすることは避けてください。効果や副作用について気になることがあれば、次回の診察時に医師に相談してください。
第二に、アルコールとの併用は厳禁です。ロラゼパムとアルコールはともに中枢神経を抑制する作用があり、併用すると作用が増強されて危険です。過度の鎮静、呼吸抑制、意識障害などが起こる可能性があります。ロラゼパム服用中は、飲酒を控えてください。
第三に、他の薬との相互作用に注意が必要です。睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬、一部の風邪薬やアレルギー薬など、中枢神経に作用する薬と併用すると、作用が強く出すぎることがあります。他の医療機関で処方されている薬や、市販薬、サプリメントについても、必ず医師や薬剤師に伝えてください。お薬手帳を活用することをお勧めします。
第四に、服用中は自動車の運転や危険を伴う機械の操作は避けてください。ロラゼパムは眠気や注意力の低下を引き起こす可能性があり、重大な事故につながるおそれがあります。
第五に、妊娠中や授乳中の服用については、特に慎重な判断が必要です。妊娠中の服用は、胎児への影響が懸念されます。また、ロラゼパムは母乳中に移行することが報告されており、新生児に眠気や体重減少などの影響を与える可能性があります。妊娠中または授乳中の方、妊娠の可能性がある方は、必ず医師に相談してください。
第六に、高齢者は副作用が出やすいため、より慎重な使用が求められます。眠気やふらつきによる転倒のリスクが高まるほか、認知機能への影響も懸念されます。高齢者では、通常より少ない用量から開始することが推奨されています。
体重変化が気になる場合の対処法
ロラゼパムを服用中に体重の変化が気になる場合、どのように対処すればよいのでしょうか。体重の増減が気になるからといって、自己判断で薬の服用をやめることは絶対に避けてください。以下に、適切な対処法をご紹介します。
まず、体重の変化を記録しておくことをお勧めします。毎日同じ時間帯(できれば朝起きてトイレを済ませた後など)に体重を測定し、記録しておきましょう。また、食事の内容や量、運動量なども合わせて記録しておくと、体重変化の原因を分析するのに役立ちます。
次に、記録した情報をもとに、次回の診察時に医師に相談してください。体重がどのくらい変化したのか、いつ頃から変化が始まったのか、食事や運動などの生活習慣に変化はあったかなどを伝えることで、医師は適切な判断を下すことができます。場合によっては、薬の用量調整や他の薬への変更を検討してもらえることもあります。
体重増加を防ぐためには、バランスの良い食事を心がけることが大切です。主食、主菜、副菜をバランスよく摂取し、脂質や糖質の過剰摂取を避けましょう。特に、精神的に安定して食欲が回復した場合、以前よりも食べ過ぎてしまうことがあるため、適切な食事量を意識することが重要です。
適度な運動も体重管理に有効です。ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう。運動は体重管理だけでなく、不安やストレスの軽減にも効果があります。ただし、薬の副作用で眠気やふらつきがある場合は、運動の種類やタイミングに注意が必要です。
十分な睡眠を取ることも大切です。睡眠不足は食欲を増進させるホルモンの分泌を促し、体重増加につながることが知られています。規則正しい生活リズムを心がけ、質の良い睡眠を確保しましょう。
体重減少が気になる場合も、同様に医師に相談することが重要です。食欲不振や吐き気などの副作用が原因であれば、対症療法や薬の調整を検討してもらえます。また、体重減少には薬以外の原因(消化器疾患、甲状腺疾患、悪性腫瘍など)が隠れている可能性もあるため、必要に応じて精密検査を受けることも大切です。

よくある質問
いいえ、ロラゼパムに直接的な痩身効果はありません。ロラゼパムは脳の興奮を抑えて不安や緊張を和らげる薬であり、脂肪燃焼や代謝促進、食欲抑制といった作用は持っていません。インターネット上で「ロラゼパムで痩せた」という情報を見かけることがありますが、これは副作用による食欲低下や、不安軽減に伴うストレス性過食の改善など、間接的な要因によるものと考えられます。体重管理を目的としてロラゼパムを使用することは適切ではありません。
自己判断で薬の服用を中止することは絶対に避けてください。ロラゼパムを急にやめると離脱症状が起こる可能性があります。体重増加が気になる場合は、まず次回の診察時に医師に相談してください。体重増加の原因を一緒に探り、食生活や運動習慣の見直し、必要に応じて薬の用量調整や変更を検討してもらえます。精神症状の治療を継続しながら体重管理を行うことが大切です。
はい、ロラゼパムは成分名(一般名)であり、ワイパックスはファイザー社が販売している先発医薬品の商品名です。両者は同じ有効成分を含んでおり、効果や副作用は基本的に同じです。現在は後発医薬品(ジェネリック医薬品)も多数発売されており、「ロラゼパム錠○○mg○○」という名称で処方されることもあります。いずれも同じロラゼパムという薬です。
はい、ロラゼパムの副作用として食欲不振や吐き気が報告されています。これらは比較的まれな副作用ですが、特に服用開始直後に現れることがあります。多くの場合は体が薬に慣れるにつれて症状は軽減しますが、食欲不振が持続したり、体重減少が著しい場合は医師に相談してください。場合によっては薬の変更や対症療法を検討してもらえます。
ロラゼパムの服用期間は症状や状態によって異なり、医師が個別に判断します。一般的に、ベンゾジアゼピン系抗不安薬は長期間の連用を避けることが推奨されています。添付文書には「漫然とした継続投与による長期使用を避けること」と記載されており、これは依存性のリスクを考慮したものです。通常は数週間から数ヶ月の使用が想定されますが、必要に応じて継続することもあります。服用期間については主治医とよく相談してください。
ロラゼパムを服用しながらでも、適切な方法でのダイエットは可能です。バランスの良い食事と適度な運動を心がけることで、健康的に体重管理を行うことができます。ただし、極端な食事制限は精神状態に悪影響を与える可能性があるため、無理のない範囲で行いましょう。また、薬の副作用で眠気やふらつきがある場合は、激しい運動は避けてください。体重管理について不安がある場合は、医師や管理栄養士に相談することをお勧めします。
いいえ、ロラゼパムは市販では購入できません。ロラゼパムは「処方箋医薬品」に指定されており、医師の診察を受けて発行された処方箋がなければ薬局で購入することはできません。また、向精神薬に指定されているため、処方日数にも上限が設けられています。インターネットなどで無許可で販売されているものは違法であり、品質や安全性が保証されないため、絶対に購入しないでください。
まとめ
本記事では、「ロラゼパム 痩せる」というキーワードに関連して、ロラゼパムの基本的な情報から体重変化との関係まで、詳しく解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。
ロラゼパムは、ベンゾジアゼピン系に分類される抗不安薬であり、脳内のGABA受容体に作用して神経の興奮を抑えることで、不安や緊張を和らげる効果があります。神経症や心身症における不安、緊張、抑うつの治療に使用される薬剤です。
ロラゼパムには、直接的な痩身効果や体重減少効果はありません。「ロラゼパムで痩せる」という情報は医学的に正確ではなく、誤解に基づいています。ロラゼパムの薬理作用には、脂肪燃焼、代謝促進、食欲抑制といった作用は含まれていません。体重管理を目的としてロラゼパムを使用することは不適切です。
ロラゼパム服用中に体重が変化することはありえますが、それは間接的な要因によるものです。体重減少が起こりうるケースとしては、副作用による食欲低下、ストレス性過食の改善、体重増加を起こしやすい他の薬からの切り替えなどがあります。一方、体重増加が起こりうるケースとしては、不安軽減による食欲回復、眠気や倦怠感による活動量低下、むくみなどがあります。
ロラゼパムの主な副作用としては、眠気、ふらつき、めまい、倦怠感などがあります。また、長期間の服用や高用量の服用により依存性が生じる可能性があるため、医師の指示を守り、漫然とした長期使用は避けることが重要です。服用を中止する際は、自己判断で急にやめず、必ず医師の指導のもとで徐々に減量してください。
体重変化が気になる場合は、自己判断で服用を中止するのではなく、医師に相談してください。体重を記録しておき、診察時に情報を提供することで、適切な対応を検討してもらえます。また、バランスの良い食事や適度な運動など、健康的な生活習慣を心がけることも大切です。
ロラゼパムは、適切に使用すれば不安や緊張を和らげる効果的な薬です。しかし、その効果や副作用、リスクを正しく理解した上で使用することが重要です。薬に関する疑問や不安があれば、遠慮なく主治医や薬剤師に相談してください。専門家とのコミュニケーションを通じて、あなたに最適な治療法を見つけていくことが、心身の健康を取り戻すための最も確実な道です。
参考文献
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA)医療用医薬品情報検索
- KEGG MEDICUS ワイパックス錠添付文書情報
- 厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル ベンゾジアゼピン受容体作動薬の治療薬依存
- 厚生労働省 催眠鎮静薬、抗不安薬及び抗てんかん薬の依存性に係る添付文書改訂について
- 日経メディカル処方薬事典 ベンゾジアゼピン系抗不安薬の解説
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 健康情報サイト
免責事項:この記事は、ロラゼパムに関する一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスに代わるものではありません。治療に関する決定は、必ず医師や薬剤師の指導に従ってください。
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務