「唇の周りにニキビができてしまった」「唇のできものがニキビなのかヘルペスなのかわからない」とお悩みの方は少なくありません。唇周りは顔の中でも目立ちやすい部位であるため、ニキビができると見た目が気になるだけでなく、会話や食事のたびに痛みを感じることもあります。唇周りのニキビは、胃腸の不調やホルモンバランスの乱れ、不適切なスキンケアなど、さまざまな要因が複雑に絡み合って発生します。本記事では、唇周りにできるニキビの原因や特徴、口唇ヘルペスとの見分け方、そして適切な治療法やセルフケアについて、皮膚科専門医の知見に基づいて詳しく解説します。正しい知識を身につけることで、唇ニキビの予防と早期改善を目指しましょう。
目次
- 唇周りにニキビができる原因とは
- 唇ニキビとヘルペスの違いと見分け方
- 唇周りにできるニキビの種類と進行段階
- 唇ニキビの治療法
- 唇ニキビを予防するためのセルフケア
- 唇ニキビに関するよくある質問
- まとめ
唇周りにニキビができる原因とは
唇周りにニキビができる原因は多岐にわたります。ニキビは医学的には「尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)」と呼ばれ、毛穴に皮脂が詰まり、アクネ菌が増殖することで炎症を起こす皮膚疾患です。日本皮膚科学会の発表によると、日本人の約90%以上がニキビを経験するとされており、非常に身近な肌トラブルといえます。唇周りは他の部位とは異なる特徴を持っているため、ニキビが発生しやすい環境が整いやすいのです。
胃腸の不調との関係
唇周りや口元にできるニキビは、胃腸が弱っているときに発生しやすいと考えられています。口元は消化器官とつながりが深い部位であるため、胃腸の調子が悪くなると、その不調がニキビという形で現れることがあります。具体的には、胃腸の血流が悪化すると、唇周辺の肌に十分な栄養が運ばれなくなり、肌のバリア機能が低下したり、肌のターンオーバー(細胞の生まれ変わり)が乱れたりします。
また、空腹時に薬を服用すると胃が荒れやすくなり、口周りや唇付近にニキビができることがあります。これは、胃が服用した薬を食べ物だと認識して過剰に胃酸を分泌し、胃粘膜を荒らしてしまうことが原因とされています。暴飲暴食や刺激物の摂取も胃腸に負担をかけ、結果として唇周りのニキビにつながることがあるため注意が必要です。
便秘もまた、唇ニキビを引き起こす原因の一つです。便秘になると腸内で悪玉菌が増加し、有害物質が大量に発生します。この有害物質が皮脂などと一緒に排出される際に毛穴詰まりを起こし、ニキビの発生につながるのです。
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスの乱れは、唇周りのニキビ発生に大きく関わっています。特に女性の場合、生理前になるとプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が増加し、皮脂の分泌が活発になることでニキビができやすくなります。口周りやあご周辺は、ホルモンバランスの影響を特に受けやすい部位とされており、男性の口周りにひげが生えるように、この部位はホルモンの変動に敏感に反応します。
睡眠不足や過度なストレスは、ホルモンの調整機能を乱す原因となります。睡眠不足になると自律神経の交感神経が過剰に働き、体が興奮状態になります。この状態が続くと自律神経が乱れ、胃腸の不調へとつながり、悪化していくことで口周りのニキビの発生につながります。規則正しい生活と心身のリラックスを心がけることが、ホルモンバランスを整え、ニキビ予防につながります。
乾燥による皮脂の過剰分泌
唇周辺は皮膚が薄く、水分保持力が低いため、非常に乾燥しやすい部位です。肌が乾燥すると、潤いを補おうとして皮脂が過剰に分泌されます。この過剰に分泌された皮脂が毛穴に詰まり、ニキビの原因となるのです。特に冬場の乾燥した時期や、エアコンの効いた室内で長時間過ごすと、唇周りの乾燥が進みやすくなります。
洗顔後の保湿を怠ると、鼻の下や唇周りが乾燥してしまいます。また、リップクリームを塗るときに唇のみを保湿し、周囲の皮膚への保湿を忘れてしまうケースも多く見られます。乾燥を防ぐためには、唇だけでなくその周囲の皮膚もしっかりと保湿することが重要です。
外部刺激による影響
唇周りは外部からの刺激を受けやすい部位であり、さまざまな刺激がニキビの原因となります。口元のムダ毛やひげを頻繁に処理する人は、カミソリの刺激によって口周りにニキビができることがあります。特に切れ味の悪いカミソリを使用すると、うまく剃れないために肌を傷つけ、結果的にニキビを招いてしまいます。カミソリを使用する場合は、切れ味の良いものを使用し、複数回剃らずに一度で剃り切る、深剃りをやめるなどの工夫が必要です。
マスクの長時間着用も、唇周りのニキビを悪化させる要因の一つです。マスク内部は高温多湿になりやすく、皮膚にとって大きな負担となります。また、マスクとの摩擦が肌を刺激し、毛穴詰まりや雑菌の繁殖につながることがあります。
頻繁にリップグロスを塗り直す習慣や、ファンデーションを厚塗りする習慣がある方は、唇周りに油分や化学成分が溜まりやすくなります。また、唇を触るクセがある方は、手についた雑菌が付着しやすく、肌トラブルを起こしやすい傾向があります。
化粧品による影響
口紅やリップクリームの成分が肌に合っていないと、唇周りにニキビができることがあります。使用頻度が低い化粧品は古くなりやすく、また汚れや菌が付着していることもあります。このような化粧品を使用すると、菌を広げてしまう可能性があります。1シーズンで使い切れなかった口紅やリップは使用を控え、汚れてきたら表面を薄くカットして清潔に保つことが大切です。
落ちにくい口紅を落とすためのポイントメイク落としは、通常のクレンジングより洗浄力が高いため、必要な潤いまで取り除いてしまうことがあります。クレンジング剤は汚れを落としすぎても残りすぎてもよくないため、選び方が重要なポイントとなります。ニキビが発生しにくい成分で作られている「ノンコメドジェニックテスト済み」の製品や、敏感肌用のものを選ぶとよいでしょう。
唇ニキビとヘルペスの違いと見分け方
唇周りにできるブツブツには、「ニキビ」と「ヘルペス」があります。どちらも見た目が似ていることから区別がつきにくい場合がありますが、原因や治療法がまったく異なるため、正しく見分けることが重要です。
ニキビの特徴
ニキビは、毛穴に皮脂や古い角質が詰まり、その中でアクネ菌が増殖することで発生します。ニキビの根本的な原因は細菌の繁殖による炎症であり、吹き出物の中心に白い芯があるのが特徴です。初期の白ニキビや黒ニキビは痛みがないことが多いですが、炎症を起こした赤ニキビや膿のある黄ニキビになると、痛みを伴うことがあります。
重要な点として、唇そのもの(赤い粘膜部分)には毛穴がほとんど存在しないため、基本的にニキビはできません。ニキビは毛穴がある皮膚の部分、つまり唇の周囲や縁の近くにできます。唇の赤い部分にできものがある場合は、ニキビではなく別の原因を疑う必要があります。
口唇ヘルペスの特徴
口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の感染によって起こる病気です。このウイルスは非常に感染力が強く、日本では成人の約45%が感染しているとされています。一度感染すると、ウイルスは症状が治まった後も神経節に潜伏し続け、免疫力が低下したときに再び活性化して症状を引き起こします。
口唇ヘルペスの特徴は、水ぶくれができることです。ニキビのような白い芯はなく、透明や黄色味を帯びた水疱が複数集まって現れます。症状が出る前には、唇やその周囲にピリピリ、チクチクとした違和感やかゆみ、ほてりなどの前兆を感じることが多く、再発を繰り返す人はこの段階で気づくことができます。前兆から半日ほどで赤く腫れ、1〜3日後に水ぶくれができます。
口唇ヘルペスは毛穴のない唇の上にもできることがあり、これはニキビとの大きな違いです。また、発熱、だるさ、頭痛などの全身症状を伴うこともあります。通常は1〜2週間でかさぶたになり治癒しますが、疲労やストレス、風邪などで免疫力が低下すると再発しやすく、年に数回再発する人もいます。
見分け方のポイント
ニキビとヘルペスを見分けるポイントはいくつかあります。まず、できる場所に注目しましょう。唇の上(赤い粘膜部分)にできている場合は、毛穴がないためニキビではなくヘルペスの可能性が高くなります。ただし、唇と皮膚の境目付近にできている場合はどちらの可能性もあります。
次に、できものの見た目を確認します。白い芯がある場合はニキビ、透明や黄色味を帯びた水ぶくれの場合はヘルペスの可能性が高いです。また、症状の出方も異なります。ヘルペスは症状が出る前にピリピリ、チクチクとした独特の違和感があり、ニキビにはこのような前駆症状がありません。
水ぶくれの中にはウイルスがたくさん存在するため、ヘルペスの場合は患部を触ったり破ったりしないように注意が必要です。また、他人への感染リスクもあるため、タオルやコップなどの共用は避けましょう。自分で判断がつかない場合や、症状が悪化してきた場合は、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。ニキビとヘルペスでは治療法がまったく異なるため、正確な診断を受けることが重要です。
唇周りにできるニキビの種類と進行段階
ニキビは症状によっていくつかの段階に分けられます。唇周りのニキビも同様に、進行段階によって見た目や症状が変化します。それぞれの特徴を理解することで、適切なケアや治療のタイミングを知ることができます。
白ニキビ(閉鎖面皰)
白ニキビは、ニキビの初期段階です。毛穴の出口が閉じた状態で皮脂が溜まり、白く盛り上がって見えます。この段階ではまだ炎症は起きておらず、痛みもほとんどありません。毛穴の中には皮脂や古い角質が詰まっており、アクネ菌が増殖しやすい環境が整っています。この段階で適切なケアを行えば、炎症を起こさずに治すことが可能です。
黒ニキビ(開放面皰)
黒ニキビは、毛穴の出口が開いた状態で皮脂が酸化し、黒く見えるものです。毛穴に詰まった皮脂が空気に触れて酸化することで、黒っぽい色になります。白ニキビと同様にこの段階ではまだ炎症は起きていないため、痛みはありません。適切な洗顔と保湿を行い、毛穴の詰まりを解消することが重要です。
赤ニキビ(紅色丘疹)
赤ニキビは、毛穴に詰まった皮脂を栄養源としてアクネ菌が増殖し、炎症を起こした状態です。赤く腫れて痛みを伴うことが多く、触ると悪化するため注意が必要です。この段階になると、セルフケアだけでは改善が難しくなることもあり、皮膚科での治療が推奨されます。炎症が長引くと、周囲の組織にダメージを与え、ニキビ跡が残る可能性が高くなります。
黄ニキビ(膿疱)
黄ニキビは、赤ニキビがさらに悪化し、膿が溜まった状態です。白や黄色の膿が中心に見え、強い痛みを伴います。この段階まで進行すると、セルフケアでは適切に治すことが困難です。無理に膿を出そうとすると、菌が広がったり、傷跡が残ったりする恐れがあります。早めに皮膚科を受診し、適切な抗生物質などの治療を受けることが重要です。
ニキビ跡について
炎症が強かったり長引いたりしたニキビは、治った後も跡が残ることがあります。ニキビ跡には、赤みが残るタイプ、茶色い色素沈着が残るタイプ、凹んだクレーター状になるタイプなどがあります。日本皮膚科学会のガイドラインでは、早期に適切な治療を行うことで瘢痕(ニキビ跡)の形成を予防できるとされています。唇周りは表情が集まる場所でもあり、小さなニキビでも目立ちやすいため、炎症が起きた段階で早めに対処することが大切です。
唇ニキビの治療法
唇周りのニキビの治療は、日本皮膚科学会が策定した「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」に基づいて行われます。治療法は、ニキビの種類や進行段階に応じて選択されます。
外用薬による治療
皮膚科での治療では、まず外用薬(塗り薬)が処方されることが一般的です。主に使用される外用薬には、毛穴の詰まりを改善する薬と、炎症を抑える抗菌薬があります。
毛穴の詰まりを改善する代表的な薬には、アダパレン(ディフェリン)や過酸化ベンゾイル(ベピオ)があります。アダパレンは毛穴の角化異常を改善し、面皰(コメド)を減少させる効果があります。過酸化ベンゾイルは、抗菌作用と角層を剥がす作用を併せ持ち、毛穴の詰まりを解消しながらアクネ菌の増殖も抑えます。これらの薬は、白ニキビや黒ニキビの段階から使用することで、炎症を予防する効果が期待できます。
炎症を起こした赤ニキビや黄ニキビには、外用抗菌薬が追加されることがあります。クリンダマイシン(ダラシン)、ナジフロキサシン(アクアチム)、オゼノキサシン(ゼビアックス)などが代表的です。ただし、抗菌薬は耐性菌の発生を防ぐため、長期使用は避け、アダパレンや過酸化ベンゾイルと併用することが推奨されています。
これらの外用薬には、塗り始めに皮膚の乾燥やヒリヒリ感、赤みなどの刺激症状が出ることがあります。これは薬が効いている証拠でもありますが、症状がつらい場合は医師に相談しましょう。保湿剤を併用したり、使用量や塗布範囲を調整したりすることで、多くの場合は継続が可能です。
内服薬による治療
炎症が強い場合や、外用薬だけでは改善が見られない場合は、内服薬が処方されることがあります。内服抗菌薬として、ドキシサイクリン(ビブラマイシン)やミノサイクリン(ミノマイシン)などのテトラサイクリン系抗生物質がよく使用されます。これらの薬はアクネ菌に対する抗菌作用に加え、抗炎症効果も期待できます。
ただし、内服抗菌薬は薬剤耐性菌の発生を防ぐため、おおむね3ヶ月以内を目安に使用期間を限定することがガイドラインで推奨されています。炎症が軽快したら、内服薬は中止し、外用薬による維持療法に移行します。
ホルモンバランスの乱れが原因と考えられる場合には、漢方薬が処方されることもあります。十味敗毒湯、清上防風湯、荊芥連翹湯などが代表的で、体質改善を通じてニキビのできにくい肌を目指します。また、ビタミン剤が補助的に処方されることもあります。
皮膚科を受診するタイミング
唇周りのニキビは、以下のような場合に皮膚科を受診することをおすすめします。まず、炎症を起こして赤く腫れている場合や、膿が溜まっている場合は、早めの受診が望ましいです。炎症が長引くとニキビ跡が残るリスクが高まります。
また、セルフケアを続けても改善しない場合や、同じ場所に繰り返しニキビができる場合も受診を検討しましょう。市販薬を使用したが悪化した場合や、ニキビなのかヘルペスなのか判断がつかない場合も、医療機関での診断が必要です。
唇周りにできものがある場合は、皮膚科が第一選択となります。粘膜嚢胞など口の中にも症状がある場合や、口腔内の病変が疑われる場合は、歯科や口腔外科を受診することもあります。
唇ニキビを予防するためのセルフケア
唇周りのニキビを予防するためには、日々のスキンケアや生活習慣の見直しが重要です。ニキビは再発しやすい慢性疾患であり、一度治っても継続的なケアを怠ると再び発生してしまいます。正しいセルフケアを習慣化することで、ニキビのできにくい肌を目指しましょう。
正しい洗顔方法
洗顔はスキンケアの基本であり、ニキビ予防において最も重要なステップの一つです。過剰な皮脂や古い角質、汚れを取り除くことで、毛穴詰まりを防ぎます。洗顔の基本は、朝と夜の1日2回です。朝は夜の間に分泌された皮脂を、夜は日中の汚れやメイクを落とすために洗顔を行います。
洗顔の際は、まず手をきれいに洗ってから行いましょう。洗顔料はしっかりと泡立て、きめ細かい泡を作ります。大きな気泡のゆるい泡だと、肌への摩擦が起きやすくなるため注意が必要です。泡立てネットを使用すると、簡単にきめ細かい泡を作ることができます。
洗う際は、ゴシゴシこすらずに、泡で膜を作るようにして優しく洗います。唇周りはデリケートな部位なので、特に刺激を与えないように注意し、撫でるようにして洗いましょう。すすぎは水かぬるま湯で十数回行い、洗顔料が残らないように丁寧に洗い流します。洗顔料のすすぎ残しは、肌への刺激となりニキビの原因になることがあります。
洗顔の時間は20〜30秒程度を目安にし、長時間洗いすぎないようにしましょう。洗いすぎると必要な皮脂まで落としてしまい、乾燥や刺激の原因になります。
適切な保湿ケア
洗顔後は速やかに保湿を行いましょう。洗顔直後の肌は皮脂が洗い流されているため、乾燥が進みやすい状態です。洗顔後5分程度で肌の水分量は減少し始め、洗顔前よりも乾燥してしまうこともあります。
保湿のポイントは、化粧水でたっぷり水分を補給した後、乳液やジェルなど軽めの油分が配合されたアイテムで肌を保護することです。ベタつきが苦手だからといって乳液を省くと、乾燥から守ろうとして皮脂が過剰に分泌され、かえってニキビができやすくなります。水分と油分のバランスを整えることが大切です。
保湿アイテムを選ぶ際は、「ノンコメドジェニックテスト済み」の表示があるものを選ぶとよいでしょう。これは、ニキビの原因となる毛穴詰まりを起こしにくい処方であることをテストで確認した製品です。また、唇周りは敏感な部位なので、敏感肌用のアイテムもおすすめです。敏感肌用アイテムには、肌の炎症を抑える成分が配合されていることが多く、ニキビを予防しながら肌を整える効果が期待できます。
リップクリームを塗る際は、唇だけでなくその周囲の皮膚にも保湿を忘れないようにしましょう。唇の境目は乾燥しやすく、ニキビができやすい部分です。
食生活の改善
唇周りのニキビは胃腸の不調と関連が深いため、食生活の見直しが重要です。暴飲暴食は避け、バランスの良い食事を1日3回、規則正しく摂るようにしましょう。胃腸に負担をかける刺激物や油っこい食事は控えめにし、冷たい飲み物や食事よりも温かいものを選ぶことで、胃腸への負担を軽減できます。
ビタミン類の摂取も肌の健康維持に役立ちます。ビタミンAは肌のターンオーバーを正常化し、ビタミンB群は皮脂の分泌をコントロールする働きがあります。ビタミンCには抗炎症作用があり、ニキビ跡の改善にも効果が期待できます。野菜や果物を積極的に摂取し、必要に応じてサプリメントで補うことも一つの方法です。
便秘も唇ニキビの原因となるため、食物繊維を含む食品や発酵食品を積極的に摂り、腸内環境を整えることも大切です。十分な水分補給も便秘予防に役立ちます。
生活習慣の見直し
睡眠不足やストレスは、ホルモンバランスや自律神経を乱し、ニキビの原因となります。十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活リズムを心がけましょう。睡眠中には成長ホルモンが分泌され、肌の修復や再生が行われるため、質の良い睡眠はニキビ予防に欠かせません。
ストレスを完全になくすことは難しいですが、趣味や運動などでリフレッシュする時間を持ち、自分なりのストレス解消法を見つけておくことが大切です。適度な運動は血行を促進し、肌の新陳代謝を活性化させる効果もあります。ただし、過度な運動は逆にストレスとなることもあるため、無理のない範囲で行いましょう。
唇周りを触るクセがある人は、意識して触らないようにすることも重要です。手には多くの雑菌が付着しており、唇周りに触れることで菌を広げてしまう恐れがあります。また、マスクを長時間着用する場合は、清潔なマスクを使用し、可能であれば時々マスクを外して換気を行うようにしましょう。
ニキビができてしまったときの対処法
万が一、唇周りにニキビができてしまった場合は、とにかく触らないことが大切です。触る刺激で治りが遅れるだけでなく、他の場所に広げてしまう原因にもなります。ニキビを潰すことは絶対に避けましょう。膿を無理に出そうとすると、炎症が悪化したり、跡が残ったりする恐れがあります。
ニキビができている間は、グロスやリップクリームなどはできるだけ使用を控えましょう。これらの製品に含まれる油分がニキビの治りを遅くする可能性があります。メイクも薄めにし、クレンジングでしっかり落とすようにします。
炎症がひどい場合や、なかなか改善しない場合は、自己判断でケアを続けるのではなく、皮膚科を受診しましょう。早めに適切な治療を受けることで、ニキビ跡を残さずに治すことができます。

唇ニキビに関するよくある質問
軽度の白ニキビや黒ニキビであれば、適切なスキンケアを続けることで自然に治ることが多いです。ただし、炎症を起こした赤ニキビや膿が溜まった黄ニキビは、自然治癒を待つと悪化したり、跡が残ったりする可能性があります。炎症がある場合は、早めに皮膚科を受診して適切な治療を受けることをおすすめします。また、同じ場所に繰り返しニキビができる場合も、専門医に相談した方がよいでしょう。
ニキビを自分で潰すことは絶対に避けてください。潰すことで細菌が周囲に広がり、炎症が悪化する恐れがあります。また、無理に膿を出そうとすると、毛穴や周囲の組織を傷つけてしまい、ニキビ跡(瘢痕)が残るリスクが高まります。特に唇周りは目立ちやすい部位なので、跡が残ると気になってしまいます。どうしても気になる場合は、皮膚科で面皰圧出という専門的な処置を受けることができます。
見分けるポイントはいくつかあります。まず、できる場所です。唇の赤い粘膜部分にできている場合は毛穴がないためヘルペスの可能性が高いです。次に見た目の違いです。ニキビは白い芯があるのに対し、ヘルペスは透明や黄色味を帯びた水ぶくれができます。また、ヘルペスは発症前にピリピリ・チクチクとした違和感があり、発熱や倦怠感を伴うこともあります。判断に迷う場合は、自己判断せずに皮膚科を受診しましょう。治療法が異なるため、正確な診断が重要です。
唇周りにニキビが繰り返しできる主な原因として、胃腸の不調、ホルモンバランスの乱れ、乾燥、外部刺激などが考えられます。胃腸が弱っていると消化機能の低下が口周りのニキビとして現れやすくなります。また、生理前のホルモン変動やストレス・睡眠不足による自律神経の乱れも関係しています。マスクの摩擦やカミソリによる刺激、化粧品の成分が合わないことも原因となります。原因を特定し、生活習慣やスキンケアを見直すことで、繰り返しを防ぐことができます。
ニキビがあるときでもメイクは可能ですが、いくつかの注意点があります。まず、ニキビ部分を隠そうとしてファンデーションを厚塗りすると、かえってニキビを刺激して悪化させる場合があります。できるだけ薄めのメイクを心がけましょう。また、リップグロスや口紅の成分がニキビに触れてかぶれを起こすこともあるため、ニキビがある間は使用を控えるか、ニキビ部分を避けて塗るようにします。メイクを落とす際は、クレンジングでしっかり汚れを落とし、洗顔料でダブル洗顔を行いましょう。
市販のニキビ薬でも軽度のニキビには効果が期待できます。イブプロフェンピコノールやイソプロピルメチルフェノールなどの成分を含む塗り薬が市販されています。ただし、市販薬で改善しない場合や、炎症が強い場合は、自己判断で使い続けるのではなく皮膚科を受診しましょう。皮膚科では、アダパレンや過酸化ベンゾイルなど、より効果の高い処方薬を使った治療を受けることができます。また、ニキビと思っていたものがヘルペスだった場合は、市販のニキビ薬では効果がありません。
まとめ
唇周りにできるニキビは、胃腸の不調やホルモンバランスの乱れ、乾燥、外部刺激など、さまざまな要因が複雑に絡み合って発生します。唇そのもの(赤い粘膜部分)には毛穴がないためニキビはできませんが、唇の周囲や縁付近は皮脂分泌が多く、メイクや食べ物の汚れが付着しやすいため、ニキビができやすい環境にあります。
唇周りにできるブツブツには、ニキビのほかに口唇ヘルペスの可能性もあります。ニキビは白い芯があるのに対し、ヘルペスは水ぶくれができるのが特徴です。治療法がまったく異なるため、判断に迷う場合は自己判断せずに皮膚科を受診することが大切です。
ニキビの治療は、日本皮膚科学会のガイドラインに基づいて行われます。毛穴の詰まりを改善するアダパレンや過酸化ベンゾイル、炎症を抑える外用抗菌薬、必要に応じて内服薬が処方されます。早期に適切な治療を受けることで、ニキビ跡を残さずに治すことができます。
日々のセルフケアでは、正しい洗顔と適切な保湿が基本となります。洗顔はきめ細かい泡で優しく洗い、すすぎ残しがないように注意しましょう。保湿では、化粧水で水分を補給した後、軽めの乳液やジェルで肌を保護します。また、バランスの良い食事、十分な睡眠、ストレス管理も、ニキビ予防には欠かせません。
唇周りのニキビは、体からのサインかもしれません。繰り返しできる場合は、胃腸の調子やストレス状態、生活習慣を見直してみましょう。正しいケアを続けることで、ニキビのできにくい健やかな肌を目指すことができます。症状が気になる場合は、一人で悩まずに専門医に相談することをおすすめします。
参考文献
- 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
- 公益社団法人日本皮膚科学会「一般公開ガイドライン」
- 第一三共ヘルスケア「口唇ヘルペス|ひふ研」
- 大正製薬「口唇(こうしん)ヘルペスとは?原因・症状・対処法を知って正しく付き合おう|大正健康ナビ」
- 佐藤製薬「口唇ヘルペスと症状|アラセナS」
- マルホ株式会社「口唇ヘルペスの症状と再発する原因|ワッツヘルペス」
- 田辺三菱製薬「口唇ヘルペスの症状・治療法|ヒフノコトサイト」
- 持田ヘルスケア「ニキビ肌の正しいスキンケアについて」
- 資生堂「ニキビ予防|原因からケア方法、スキンケアの選び方&おすすめ商品紹介」
- ノブ「にきび肌のスキンケアで大切なこと」
- 小林製薬「ニキビを予防するためのスキンケア|オードムーゲ」
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務