はじめに
乳酸アシドーシスは、体内に乳酸が過剰に蓄積することで血液が酸性に傾く危険な病態です。発症頻度は決して高くないものの、一度発症すると致死率が約50%にも達する極めて重篤な疾患として知られています。
近年、糖尿病治療薬であるメトホルミンの普及に伴い、この副作用としての乳酸アシドーシスが医療現場で注目されています。しかし、乳酸アシドーシスはメトホルミンだけでなく、さまざまな原因によって引き起こされる可能性があります。
本記事では、一般の方にもわかりやすく、乳酸アシドーシスの基本的なメカニズムから症状、原因、診断、治療法、そして予防法まで、包括的に解説していきます。アイシークリニック渋谷院では、患者様の健康管理をサポートするため、最新の医療情報を提供しています。
乳酸アシドーシスとは
乳酸とアシドーシスの基本
まず、乳酸アシドーシスを理解するために、「乳酸」と「アシドーシス」という2つの言葉について説明します。
乳酸は、私たちの体内で糖質が代謝される際に生成される物質です。通常、私たちの体は酸素を使って効率よくエネルギーを作り出していますが、酸素が不足したり、何らかの理由で通常の代謝経路がうまく機能しなかったりすると、乳酸が多く産生されます。
厚生労働省のe-ヘルスネットによれば、乳酸は糖質が解糖系(嫌気的代謝)で代謝・分解されてできる生成物で、身体の中では筋肉でエネルギーを作るとき、糖(グリコーゲン)が分解されてできるものです。
一方、アシドーシスとは、血液が通常よりも酸性に傾いた状態を指します。人間の血液は通常、pH7.35〜7.45という弱アルカリ性に保たれていますが、このバランスが崩れて酸性側に傾くとアシドーシスと呼ばれます。
乳酸アシドーシスは、体内で乳酸が過剰に蓄積し、または乳酸の代謝が低下することで、血液が酸性に傾く病態です。具体的には、血液のpHが7.35未満に低下し、血中乳酸濃度が5mmol/L(45mg/dL)以上になった状態を指します。
乳酸アシドーシスの分類
乳酸アシドーシスは、その原因によって大きく3つのタイプに分類されます。
A型乳酸アシドーシス
A型は、組織への酸素供給が不足することで起こるタイプです。これはアシドーシスの中でも最も重篤になりやすいとされています。体内への酸素供給が不足すると、嫌気解糖という酸素を用いずにエネルギーを生み出す仕組みが働きます。この過程で過剰な乳酸が生成されるため、血液が酸性に傾きやすくなります。
主な原因としては、心筋梗塞や不整脈による心原性ショック、敗血症、出血、重症呼吸器疾患などがあります。日本救急医学会の定義でも、ショック、重症呼吸器疾患、播種性血管内凝固(DIC)などが原因として挙げられています。
B型乳酸アシドーシス
B型は、低酸素血症がなくても、ミトコンドリアの異常などにより嫌気性解糖が進行するタイプです。糖尿病治療薬であるビグアナイド系薬剤(メトホルミンなど)の使用、肝機能障害、悪性腫瘍、アルコールの多飲などが原因となります。
B型はさらに細かく以下の3つに分類されます。
- B1型:基礎疾患(糖尿病、肝疾患、腎疾患、悪性腫瘍など)によるもの
- B2型:薬剤や毒物によるもの(メトホルミン、アルコール、サリチル酸など)
- B3型:先天性代謝異常によるもの
D-乳酸アシドーシス
D-乳酸アシドーシスは、比較的まれなタイプです。通常、体内で産生されるのはL-乳酸ですが、腸切除や空腸バイパス手術を受けた方では、結腸でD-乳酸が生成されやすくなります。D-乳酸は人体内では代謝されないため、血中に蓄積されることでアシドーシスを引き起こします。
炭水化物の過剰摂取に続いて発生する錯乱、運動失調、言語不明瞭などの神経症状が特徴的です。
乳酸アシドーシスの原因
乳酸アシドーシスの原因は多岐にわたります。ここでは、主な原因について詳しく解説します。
メトホルミンと乳酸アシドーシス
現在、乳酸アシドーシスの原因として最も注目されているのが、2型糖尿病の治療薬であるメトホルミンです。メトホルミンは世界中で1億2,000万人以上が使用している優れた糖尿病治療薬ですが、まれに乳酸アシドーシスを引き起こすことが知られています。
メトホルミンの作用機序
メトホルミンは、主に肝臓での糖新生を抑制することで血糖値を下げる薬剤です。通常、体内で産生された乳酸は、肝臓での糖新生という過程で消費されてグルコース(糖)に変換されます。しかし、メトホルミンを服用すると、この糖新生が抑制されるため、乳酸が肝臓で消費されにくくなり、体内に蓄積しやすくなるのです。
日本糖尿病学会は「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」を公表しており、乳酸アシドーシスの発現を防ぐための詳細なガイドラインを示しています。
メトホルミン関連乳酸アシドーシスのリスク因子
メトホルミンによる乳酸アシドーシスは、以下のようなリスク因子がある場合に発症しやすくなります。
腎機能障害
メトホルミンは腎排泄型の薬剤であるため、腎機能が低下している患者では血中濃度が高くなり、乳酸アシドーシスを起こしやすくなります。そのため、推定糸球体濾過量(eGFR)が30mL/min/1.73㎡未満の患者には投与が禁忌とされています。
厚生労働省の医薬品・医療機器等安全性情報では、2019年8月にメトホルミンの添付文書改訂に関する重要な情報が発信されました。この改訂により、腎機能障害患者への投与基準がより明確化され、eGFRに基づく腎機能評価が推奨されるようになりました。
肝機能障害
乳酸は肝臓で代謝されてエネルギーに変換されるため、肝機能が低下している方でも体内で乳酸が増え、血液が酸性に傾きやすくなります。
脱水状態
脱水状態では腎機能が一時的に低下し、メトホルミンの血中濃度が上昇しやすくなります。シックデイ(発熱、下痢、嘔吐などで食事摂取が困難な状態)の際には、特に注意が必要です。日本糖尿病協会のガイドラインでも、シックデイの際には脱水が懸念されるため、いったん服薬を中止して主治医に相談することが推奨されています。
過度のアルコール摂取
アルコールは肝臓における乳酸の代謝を低下させます。また、脱水状態を引き起こすこともあるため、メトホルミンを服用している方は適量にとどめることが重要です。
高齢者
高齢者では腎機能や肝機能が低下している場合が多く、血清クレアチニン値が正常範囲内であっても実際の腎機能は低下していることがあります。特に75歳以上の高齢者では、より慎重な判断が必要とされています。
ヨード造影剤の使用
CTやX線検査などで使用されるヨード造影剤は、腎機能を一時的に低下させる可能性があります。そのため、検査前にはメトホルミンの投与を一時的に中止し、造影剤投与後48時間は投与を再開しないことが推奨されています。
メトホルミン関連乳酸アシドーシスの発症頻度
メトホルミンによる乳酸アシドーシスの発症頻度は年間10万人あたり数人程度と極めてまれですが、一旦発症すると死亡率は50%に達するとされています。しかし、近年の研究では、適切な使用条件下でのメトホルミンと乳酸アシドーシスの関連性について、より慎重な見方も示されています。
その他の原因
心血管系疾患
心筋梗塞、不整脈、心不全などにより心拍出量が低下すると、全身の組織への酸素供給が不足し、A型乳酸アシドーシスを引き起こす可能性があります。
敗血症
重症感染症では、全身の炎症反応により組織の酸素需要が増大し、相対的な酸素不足状態となります。また、敗血症性ショックでは血液循環が障害され、組織への酸素供給が低下します。
呼吸不全
肺疾患などにより呼吸機能が著しく低下すると、血液中の酸素濃度が低下し、組織の低酸素状態を引き起こします。
肝不全
重症肝不全では、乳酸を代謝する肝臓の機能が著しく低下するため、乳酸が蓄積しやすくなります。
悪性腫瘍
がん細胞は正常細胞よりも多くの乳酸を産生することが知られており、進行がんでは乳酸アシドーシスのリスクが高まります。
ビタミンB1欠乏
ビタミンB1(チアミン)は糖代謝に重要な役割を果たしており、その欠乏により乳酸の代謝が障害されます。特にアルコール依存症の方では注意が必要です。
乳酸アシドーシスの症状
乳酸アシドーシスの症状は、初期の比較的軽度なものから、進行した重篤なものまで多岐にわたります。重要なのは、初期症状を見逃さず、早期に医療機関を受診することです。
初期症状
乳酸アシドーシスの初期には、以下のような症状が現れることがあります。これらは非特異的な症状であり、他の疾患でも見られるため、見過ごされやすいという特徴があります。
消化器症状
- 悪心(吐き気)
- 嘔吐
- 腹痛
- 下痢
- 食欲不振
これらの消化器症状は、メトホルミンを服用している方では、薬剤の一般的な副作用である胃腸障害との区別が難しい場合があります。通常の副作用の場合は軽度で一過性であり、一時的な減量や休薬により症状が回復することが多いのですが、症状がひどい場合や継続する場合は乳酸アシドーシスを疑う必要があります。
全身症状
- 全身倦怠感
- 疲労感
- 筋肉痛
- 脱力感
体がエネルギーを効率よく作り出せなくなるため、だるさや疲れを感じやすくなります。
進行した症状
乳酸アシドーシスが進行し、血液のpHが著しく低下すると、体のさまざまな機能に深刻な影響が出始め、以下のような重篤な症状が現れます。
呼吸器症状
- クスマウル呼吸(深く、速く、大きい呼吸)
- 過呼吸
- 息苦しさ
クスマウル呼吸は、アシドーシスを代償しようとして体が過剰な酸(二酸化炭素)を積極的に排出しようとする防御反応です。深く速い呼吸が特徴で、アシドーシスが重度であることを示す重要なサインです。
循環器症状
- 血圧低下
- 低体温
- ショック状態
乳酸アシドーシスは心臓の収縮力を低下させ、血管を拡張させる作用があります。これらが重なると、血圧が維持できなくなり、ショック状態に陥ることがあります。
神経症状
- 意識障害
- 混乱
- 傾眠(眠気が強く、すぐに眠ってしまう状態)
- 昏睡
脳の機能が低下し、意識レベルが徐々に低下していきます。アシドーシスそのものや、原因となっている病態による脳への影響が考えられます。
患者様が気づきやすいサイン
患者様自身が比較的自覚しやすい兆候としては、以下のようなものがあります。
- 全身の強いだるさ
- 息苦しさ
- 吐き気や嘔吐
- 原因不明の腹痛
特に、メトホルミンなどのビグアナイド系薬剤を服用している方や、糖尿病などの持病がある方で体調が優れないとき(シックデイ)にこれらの症状が現れたら、単なる風邪や疲れだと放置せず、乳酸アシドーシスの可能性を疑い、早めに医療機関に相談することが重要です。
乳酸アシドーシスの診断
乳酸アシドーシスの診断には、包括的な臨床評価と特定の検査が必要です。
診断基準
乳酸アシドーシスの診断には、以下の基準が用いられます。
- 血液pH < 7.35
- 血中乳酸濃度 > 5〜6 mmol/L(45〜54 mg/dL以上)
なお、乳酸濃度およびpHがこれほど極端に変化していない病態は、「高乳酸血症」と呼ばれます。
診断プロセス
病歴聴取と身体診察
医療従事者は、まず患者様の症状、病歴、そして潜在的なリスク要因を評価します。特に以下の点が重要です。
- 糖尿病治療薬(特にメトホルミン)の使用歴
- 基礎疾患の有無(心疾患、肝疾患、腎疾患、悪性腫瘍など)
- 最近の感染症や体調不良の有無
- アルコール摂取歴
- 最近の造影剤使用歴
血液検査
乳酸アシドーシスを確認するために、いくつかの検査が行われます。
動脈血ガス分析
最も重要な検査です。動脈から採血し、以下の項目を測定します。
- pH(酸性度)
- 二酸化炭素分圧(PaCO2)
- 酸素分圧(PaO2)
- 重炭酸イオン濃度(HCO3−)
- 乳酸濃度
この検査により、アシドーシスの有無とその程度、呼吸性か代謝性かの判別、低酸素血症の有無などが分かります。
血液生化学検査
- 腎機能(クレアチニン、eGFR)
- 肝機能(AST、ALT、ビリルビンなど)
- 電解質(ナトリウム、カリウム、クロールなど)
- 血糖値
- アニオンギャップ(血液中の陽イオンと陰イオンのバランス)
乳酸アシドーシスでは高アニオンギャップ性の代謝性アシドーシスを呈することが特徴的です。
その他の検査
原因を特定するために、以下のような検査が追加されることがあります。
- 胸部X線検査:肺炎や心不全の有無を確認
- 心電図:心筋梗塞や不整脈の有無を確認
- 腹部CT検査:腸管虚血や悪性腫瘍の有無を確認
- 血液培養:敗血症の有無を確認
D-乳酸アシドーシスの診断
D-乳酸アシドーシスでは、通常の乳酸検査ではD-乳酸への感度が低いため、特異的なD-乳酸濃度測定検査が必要になることがあります。腸の問題など複数の原因を有する可能性のある患者で、アシドーシスの原因を明らかにするために使用されます。
また、重炭酸イオン濃度の低下から予測されるよりもアニオンギャップが小さく、尿浸透圧ギャップ(尿浸透圧の計算値と測定値との差)が存在する可能性があることも特徴です。
乳酸アシドーシスの治療
乳酸アシドーシスの治療は、原因疾患の治療と全身管理が基本となります。メトホルミンに特異的な拮抗薬は存在しないため、支持療法が中心となります。
基本的な治療方針
原因疾患の治療
乳酸アシドーシスの治療で最も重要なのは、その原因となっている疾患や状態の治療です。
- A型:ショックや低酸素血症の改善が最優先
- B型:原因薬剤の中止、基礎疾患の治療
- D-乳酸アシドーシス:食事療法、プロバイオティクスの投与
酸素化の改善
低酸素症を認めている場合は、酸素療法を行います。場合によっては、人工呼吸器を用いることで酸素化を改善します。
循環管理
循環血漿量の不足を補うために十分な輸液を行います。血圧低下が著しい場合は、昇圧剤(ノルアドレナリン、バソプレシンなど)を使用することもあります。ただし、昇圧薬の中には乳酸値が高いと効きにくくなるものや、β2アドレナリン受容体を刺激する薬剤の中にはさらに乳酸値を上昇させるものがあるため、慎重な選択が必要です。
アシデミアの補正
重篤なアシデミアの状態は、上に挙げたようなさまざまな症状を引き起こします。そのため、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム、メイロン®)を投与することで血液のアルカリ化を図ることがあります。
ただし、重炭酸の投与は高アニオンギャップ性アシドーシスでは危険な可能性があるため、通常はpH < 7.00〜7.10の場合に限定して使用されます。
血液浄化療法
メトホルミン関連乳酸アシドーシスなど重症例では、血液浄化療法が有効な治療選択肢となります。
血液浄化療法の適応
The EXTRIP workgroupは、メトホルミン関連乳酸アシドーシスにおいて以下の条件で血液浄化療法の導入を推奨しています。
- 乳酸値 20 mmol/L以上
- pH 7.0以下
- 全身管理と支持療法が奏功しない例
それ以外にも、ショック、腎機能障害、肝機能障害、意識障害の進行を合併する例では血液浄化療法導入の閾値を下げるべきとされています。
血液浄化療法の種類
- 間欠的血液透析(HD):第一選択とされる
- 持続的血液濾過透析(CHDF):循環動態が不安定な場合に選択
メトホルミンは分子量が165Daと小分子であり血液透析で除去可能なため、乳酸アシドーシスや電解質異常の是正という面でも有効です。
血液浄化療法の注意点
メトホルミンは小分子ですが、分布容積が1〜5 L/kgと大きく、一度血中濃度が低下しても赤血球をはじめとした細胞内コンパートメントに移行したメトホルミンが血漿へ再分布することで血中濃度が再上昇する可能性があります。そのため、血液浄化療法が長期化する例も報告されています。
血液浄化療法離脱の目安は「乳酸値3 mmol/L以下かつpH 7.35以上」とされていますが、再分布による血中濃度の再上昇の可能性があるため、離脱に際しては乳酸アシドーシスの再燃に留意する必要があります。
D-乳酸アシドーシスの治療
D-乳酸アシドーシスの治療法には、以下のようなものがあります。
- 炭水化物を制限した食事療法
- プロバイオティクス(善玉菌)の投与
- 抗生物質による腸内細菌叢の調整
乳酸アシドーシスの予防
乳酸アシドーシスは発症すると重篤であるため、発症自体を予防することが最も重要です。
メトホルミン服用者への注意事項
メトホルミンを服用している方は、以下の点に注意してください。
腎機能の定期的なチェック
メトホルミンは腎排泄型の薬剤であるため、定期的に腎機能(eGFR)を確認することが重要です。特に高齢者では、血清クレアチニン値が正常範囲内であっても実際の腎機能は低下していることがあるため、eGFRによる評価が推奨されています。
シックデイの対応
発熱、下痢、嘔吐、食事摂取不良など、体調が悪いとき(シックデイ)には、脱水が懸念されるため、いったん服薬を中止し、主治医に相談することが推奨されています。
脱水の予防
日常生活において適度な水分摂取を心がけることが重要です。特に夏場の屋外作業時やスポーツ時は脱水が起こりやすいため、こまめな水分補給を心がけましょう。
アルコール摂取の制限
過度のアルコール摂取は、肝臓における乳酸の代謝を低下させ、また脱水状態を引き起こすため、適量にとどめることが重要です。肝疾患などがある場合は禁酒が推奨されます。
造影剤検査前後の対応
CTやX線検査などでヨード造影剤を使用する場合は、検査前にメトホルミンの投与を一時的に中止し、造影剤投与後48時間は投与を再開しないことが推奨されています。必ず主治医に相談してください。
初期症状への注意
悪心、嘔吐、腹痛、下痢などの胃腸症状、倦怠感、筋肉痛などの初期症状が現れた場合には、直ちに医療機関を受診することが重要です。
ハイリスク患者への対応
以下のような患者様には、メトホルミンの投与を避けるか、より慎重な判断が必要です。
- 重度の腎機能障害患者(eGFR < 30 mL/min/1.73㎡)
- 肝機能障害患者
- 心血管・肺機能障害患者
- 75歳以上の高齢者(新規投与の場合)
- 経口摂取が困難な患者や寝たきりなど全身状態が悪い患者
- 手術前後の患者
一般的な予防策
メトホルミンを服用していない方でも、以下の点に注意することで乳酸アシドーシスのリスクを減らすことができます。
基礎疾患の適切な管理
心疾患、肝疾患、腎疾患、糖尿病などの基礎疾患がある方は、定期的に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
感染症の早期治療
敗血症は乳酸アシドーシスの重要な原因の一つです。感染症の兆候(発熱、悪寒、全身倦怠感など)がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
適度な運動と健康的な生活習慣
心血管系の健康を維持することで、組織への酸素供給を良好に保つことができます。バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙などの健康的な生活習慣を心がけましょう。
アイシークリニック渋谷院からのメッセージ
乳酸アシドーシスは、発症頻度は低いものの、一旦発症すると生命に関わる重篤な病態です。しかし、適切な知識を持ち、リスク因子を理解し、初期症状に注意することで、多くの場合予防することが可能です。
特にメトホルミンを服用されている方は、定期的な腎機能チェック、シックデイの対応、脱水の予防、アルコール摂取の制限など、日常的な注意が重要です。また、初期症状と思われる症状が現れた場合には、自己判断せず速やかに医療機関を受診することが大切です。

まとめ
乳酸アシドーシスについて、重要なポイントをまとめます。
- 乳酸アシドーシスとは:体内に乳酸が過剰に蓄積し、血液が酸性に傾く病態で、致死率が約50%と極めて重篤な疾患です。
- 分類:A型(組織の低酸素状態)、B型(薬剤や基礎疾患)、D-乳酸アシドーシス(腸切除後など)の3タイプに分類されます。
- 主な原因:メトホルミンなどのビグアナイド系薬剤、心血管系疾患、敗血症、呼吸不全、肝不全、悪性腫瘍などが挙げられます。
- 症状:初期には悪心、嘔吐、腹痛、倦怠感、筋肉痛など非特異的な症状が現れ、進行すると過呼吸、血圧低下、意識障害、昏睡などの重篤な症状へと進行します。
- 診断:動脈血ガス分析により、pH < 7.35、血中乳酸濃度 > 5〜6 mmol/Lで診断されます。
- 治療:原因疾患の治療が最も重要です。重症例では血液浄化療法が有効です。
- 予防:メトホルミン服用者は腎機能の定期チェック、シックデイの対応、脱水予防、アルコール制限などが重要です。
- 早期受診の重要性:初期症状が現れた場合は、自己判断せず速やかに医療機関を受診することが重要です。
健康管理において最も大切なのは、定期的な健康チェックと異常の早期発見です。体調に少しでも不安を感じたら、遠慮なく医療機関にご相談ください。
参考文献
- 日本救急医学会 – 乳酸アシドーシス
- 日本糖尿病学会 – メトホルミンの適正使用に関するRecommendation
- 日本糖尿病協会 – メトホルミンの適正使用に関するRecommendation
- 厚生労働省e-ヘルスネット – 乳酸
- 国立国際医療研究センター糖尿病情報センター – ビグアナイド薬と乳酸アシドーシス
- 糖尿病ネットワーク – メトホルミンの副作用「乳酸アシドーシス」を抑える治療法を開発
- 健康長寿ネット – 乳酸とは
- Wikipedia – 乳酸アシドーシス
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務