「ジャスミン茶を飲むとワキガになる」というインターネット上の噂を目にして、不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。華やかな香りでリラックス効果があり、美容や健康に良いとされるジャスミン茶ですが、体臭との関係について心配される声が少なくありません。本記事では、医学的・科学的な根拠に基づいて、この噂の真相を徹底的に解説いたします。また、ワキガ(腋臭症)の正しい知識、ジャスミン茶の成分や効能、体臭と食生活の関係性についても詳しくお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
- 「ジャスミン茶でワキガになる」噂の真相
- ワキガ(腋臭症)の医学的メカニズム
- ワキガの主な原因と遺伝的背景
- ジャスミン茶の基礎知識と含まれる成分
- ジャスミン茶の効能と健康効果
- カフェインと体臭の関係性
- 体臭を悪化させる可能性のある食習慣
- 体臭予防に効果的な生活習慣
- ワキガの治療法と対処法
- 専門医への相談が必要なケース
- よくある質問
「ジャスミン茶でワキガになる」噂の真相
結論から申し上げますと、ジャスミン茶を飲むことでワキガ(腋臭症)を発症することはありません。この噂には医学的・科学的な根拠が一切なく、完全な誤解であると断言できます。
ワキガは、後述するように遺伝的要因によって決まる体質であり、特定の飲食物を摂取したことによって後天的に発症するものではありません。ワキガの有無は主にABCC11という遺伝子の変異に関連しており、食習慣によってワキガ体質に変化することは医学的に考えられません。
噂が広まった背景
では、なぜ「ジャスミン茶でワキガになる」という根拠のない噂が広まったのでしょうか。その理由は明確ではありませんが、いくつかの要因が考えられます。
第一に、「香りの強い食品が体臭に影響する」という一般的な認識が、ジャスミン茶の特徴的で華やかな香りと結びついた可能性があります。にんにくやスパイス類など、香りの強い食品を摂取すると一時的に体臭が変化することがありますが、これはワキガの発症とは全く異なるメカニズムです。
第二に、ジャスミン茶に含まれるカフェインの作用が誤解を招いた可能性があります。カフェインには利尿作用や交感神経を活性化させる作用があり、過剰摂取した場合に発汗量が増加することがあります。発汗量の増加によって一時的に汗臭さが強まる可能性はありますが、これはワキガの発症とは別の現象です。
むしろ、ジャスミン茶に含まれるカテキンやポリフェノールには抗菌作用があり、体臭改善に役立つ可能性があることが知られています。科学的な観点からも、伝統的な知恵の面からも、「ジャスミン茶がワキガを引き起こす」という主張に信憑性はありません。
ワキガ(腋臭症)の医学的メカニズム
ワキガ(腋臭症:えきしゅうしょう)とは何か、そのメカニズムを正しく理解することで、なぜジャスミン茶が原因になり得ないのかがより明確になります。
ワキガとは
ワキガとは、わきの下(腋窩:えきか)から発せられる特有の強い臭いのことを指し、医学的には「腋臭症」と呼ばれています。その臭いは、玉ねぎや鉛筆の芯、スパイス、酢などに例えられることが多く、周囲の人に不快感を与える場合があります。
2種類の汗腺について
ワキガのメカニズムを理解するには、人間の皮膚に存在する2種類の汗腺について知ることが重要です。
エクリン汗腺は全身に分布しており、主に体温調節のために機能します。エクリン汗腺から分泌される汗は99%が水分で構成されており、サラサラとした無色透明の液体です。発汗直後は基本的に無臭であり、暑いときや運動時にかく汗の大部分はこのエクリン汗腺由来のものです。
一方、アポクリン汗腺はわきの下、耳の中、乳輪、外陰部など体の限られた部位にのみ分布しています。アポクリン汗腺から分泌される汗は、タンパク質、脂質、アンモニア、糖質、鉄分などの有機成分を豊富に含んでおり、やや白く濁ってベタベタしています。この汗自体は無臭ですが、皮膚の表面に生息する常在菌(表皮ブドウ球菌、コリネバクテリウムなど)によって分解されることで、ワキガ特有の臭いが発生します。
ワキガ臭の発生メカニズム
ワキガ臭が発生する流れは次のとおりです。まず、アポクリン汗腺から脂質やタンパク質を含む汗が分泌されます。次に、この汗に含まれる有機成分が皮膚表面の常在菌によって分解されます。この分解過程で揮発性の臭気物質が生成され、ワキガ特有の臭いが発生するのです。
つまり、ワキガの臭いは「アポクリン汗腺からの分泌物」と「皮膚常在菌による分解」の2つの要素が組み合わさることで生じます。エクリン汗腺から出る「汗臭い」という臭いとは、発生メカニズムが根本的に異なるのです。
ワキガの主な原因と遺伝的背景
ワキガの発症には、遺伝的要因が最も大きく関与しています。この点を理解することで、特定の飲食物によってワキガが発症するわけではないことがより明確になります。
ABCC11遺伝子の役割
近年の研究により、ワキガの発症には16番目の染色体上にあるABCC11遺伝子が深く関与していることが明らかになっています。日本医科大学武蔵小杉病院によると、ABCC11遺伝子はアポクリン汗腺の分泌物の質に関与しており、腋臭症は遺伝性疾患であるとされています。
ABCC11遺伝子には特定の一塩基多型(SNP)が存在し、この遺伝的バリエーションによって耳垢のタイプ(乾燥型か湿潤型か)や腋臭症のリスクが決定されます。具体的には、GGまたはGAの遺伝子型を持つ人は湿潤型の耳垢を持ち、腋臭症になりやすい傾向があります。一方、AA遺伝子型の人は乾燥型の耳垢を持ち、腋臭症のリスクが低いとされています。
優性遺伝としてのワキガ
ワキガ体質は優性(顕性)遺伝の形式で遺伝することがわかっています。両親のどちらか一方がワキガ体質である場合、子どもがワキガ体質を受け継ぐ確率は約50%とされています。両親ともにワキガ体質である場合は、その確率は約75%から100%に上昇します。
重要な点として、アポクリン汗腺の数と大きさは生まれつき遺伝によって決まっており、後天的に増減することはありません。したがって、食生活や生活習慣によってワキガ体質になることは医学的に考えられないのです。
耳垢との関連性
興味深いことに、ワキガ体質と耳垢のタイプには密接な関連性があります。1937年に日本の医師である足立文太郎氏が世界で初めてこの関連性を発表しました。湿性耳垢(湿った耳垢、アメ耳とも呼ばれる)の人は約80%の確率でワキガを罹患しているとされており、逆に乾性耳垢の人がワキガを持つことは極めてまれです。
これは、耳の中にもアポクリン汗腺が存在しており、同じABCC11遺伝子がアポクリン汗腺の活動と耳垢の性質の両方を制御しているためです。
日本人とワキガの関係
日本人を含む東アジアの人々は、世界的に見るとワキガ体質の人の割合が比較的少ない民族です。日本人においてワキガ体質の人は約10%程度とされており、ヨーロッパやアフリカの人々のほとんどがワキガ体質であるのとは対照的です。
これは、人類の進化の過程でABCC11遺伝子に突然変異が生じ、アポクリン汗腺からの分泌が抑制される遺伝子型(AA型)が東アジアを中心に広まったためと考えられています。日本人は元々野菜や魚中心の和食を食べてきた歴史があり、これも体臭が少ない一因とされることがありますが、根本的な原因は遺伝子にあります。
ジャスミン茶の基礎知識と含まれる成分
ジャスミン茶について正しく理解することで、体臭との関係についてより適切に判断できるようになります。
ジャスミン茶とは
ジャスミン茶(茉莉花茶:モーリーファーチャ)は、緑茶やウーロン茶などの茶葉にジャスミンの花の香りを移して作られる「花茶」の一種です。多くの方がジャスミンの花を乾燥させたハーブティーだと誤解されていますが、実際にはベースとなる茶葉に香りを付けた「センティッド・ティー」なのです。
その製法は、茶葉とジャスミンの花の蕾を一緒に揉み込んで香りを移すというもので、高級なジャスミン茶では、何度も萎えた花を取り出して新しい花を加え、深くまで香りを移すという工程を繰り返します。製造過程において有害な物質が添加されることはありません。
ジャスミン茶に含まれる主な成分
ジャスミン茶には、ベースとなる茶葉由来の成分とジャスミンの花由来の成分が含まれています。
茶葉由来の成分としては、カテキン(ポリフェノールの一種で強力な抗酸化作用を持つ)、タンニン(抗菌作用や消臭作用がある)、カフェイン(覚醒作用や利尿作用がある)、ビタミンC(抗酸化作用やコラーゲン生成をサポート)、ビタミンE(抗酸化作用がある)、ミネラル類(カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)が含まれています。
ジャスミンの花由来の香り成分としては、ベンゼルアセテート(リラックス効果のある香り成分)、リナロール(鎮静効果や抗不安作用のある香り成分)、酢酸ベンジル、シス・ジャスモンなどの精油成分が含まれています。
カフェイン含有量について
ジャスミン茶はカフェインを含む飲み物です。100mlあたり約20mgのカフェインが含まれており、これは緑茶やウーロン茶と同程度です。コーヒー(100mlあたり約60mg)の約3分の1、紅茶(100mlあたり約30mg)の約3分の2にあたります。
健康な成人のカフェイン摂取上限は1日400mg(米国食品医薬品局の指針)とされており、ジャスミン茶であれば1日2リットル程度までは健康上の問題はないと考えられています。
ジャスミン茶の効能と健康効果
ジャスミン茶には、むしろ体臭対策にプラスに働く可能性のある効能が多く含まれています。
リラックス効果
ジャスミン茶の香りの主成分であるベンゼルアセテートとリナロールには、副交感神経の働きを優位にさせ、自律神経の緊張をほぐす効果があります。ストレスはアポクリン汗腺からの発汗を促進させる要因となるため、リラックス効果によってストレスが軽減されれば、間接的に体臭の軽減にもつながる可能性があります。
抗酸化作用
ジャスミン茶に含まれるカテキン、タンニン、ビタミンC、ビタミンEには強力な抗酸化作用があります。活性酸素は細胞の老化を促進し、加齢臭の原因となる過酸化脂質を生成する要因となります。これらの抗酸化成分を摂取することで、体内の酸化ストレスを軽減し、加齢臭の予防に寄与する可能性があります。
抗菌・消臭効果
カテキンには強力な抗菌作用と消臭作用があることが知られています。口臭の元となる口腔内の細菌を殺菌する効果も期待でき、食後にジャスミン茶を飲むことで口臭予防にもつながります。また、消臭効果のあるボディーソープなどにカテキン成分が配合されることも多く、その消臭効果は広く認められています。
脂肪燃焼サポート
ジャスミン茶に含まれるカフェインやカテキンには脂肪燃焼をサポートする効果があるとされています。特定保健用食品(トクホ)として認定されたカテキン配合のジャスミン茶も販売されており、体脂肪が気になる方の食生活の改善に役立つとされています。肥満は発汗量の増加につながるため、適切な体重管理は体臭対策にも有効です。
美肌効果
ビタミンCが豊富に含まれているジャスミン茶は、コラーゲンの生成をサポートし、肌のハリや弾力を保つ効果が期待できます。また、抗酸化作用によりシミやシワの発生を抑制する効果も期待されています。
カフェインと体臭の関係性
「ジャスミン茶でワキガになる」という噂の背景には、カフェインの作用に関する誤解がある可能性があります。カフェインと体臭の関係について正確に理解しておきましょう。
カフェインの利尿作用と脱水
カフェインには利尿作用があり、腎臓の働きを活発化させて尿の生成量を増やします。そのため、過剰に摂取すると摂取した水分量以上を排出してしまい、脱水傾向になる可能性があります。
脱水状態になると血液中の水分が減少し、血液中に溶け込んでいる老廃物や臭い成分の濃度が相対的に高くなります。この濃縮された成分が汗として排出されると、通常よりも臭いが強くなる可能性があります。ただし、これはワキガの発症ではなく、一時的な汗臭さの増加です。
交感神経の活性化と発汗
カフェインには交感神経を活性化させる作用があります。交感神経が優位になると発汗しやすくなり、特にストレス状態では精神性発汗(アポクリン汗腺からの発汗も含む)が促進される可能性があります。
元々ワキガ体質の方が大量にカフェインを摂取した場合、発汗量の増加によってワキガの臭いが一時的に強まる可能性はあります。しかし、これはワキガ体質でない人がワキガを発症するということではありません。
適量摂取の重要性
ジャスミン茶は適量を守って飲む分には、体臭に悪影響を与えることはありません。むしろ、含まれるカテキンの抗菌作用や消臭作用により、体臭対策にプラスに働く可能性のほうが高いと考えられます。重要なのは飲みすぎを避け、他の水分補給も適切に行うことです。1日1リットル程度までであれば、一般的に問題ないとされています。
体臭を悪化させる可能性のある食習慣
ジャスミン茶はワキガの原因にはなりませんが、食生活が体臭に影響を与えることは事実です。どのような食習慣が体臭を悪化させる可能性があるのかを理解しておくことは、日々の生活で役立ちます。
動物性脂肪・タンパク質の過剰摂取
肉類、揚げ物、乳製品など、動物性脂肪やタンパク質が豊富な食品を過剰に摂取すると、皮脂腺やアポクリン汗腺の働きが活発になるとされています。脂質やタンパク質の摂取が増えると、それらが体内で分解しきれずに汗や皮脂として排出され、臭いの原因となる可能性があります。
ただし、日本医科大学武蔵小杉病院によると、食べ物が臭いの原因になるかについては「赤身肉や動物性脂肪やコレステロールなどが臭いを増強するという報告がありますが、現時点では十分な科学的根拠はなくその関連性は不明瞭」とされています。
香辛料・刺激物
にんにく、ねぎ、玉ねぎなど硫化アリルを含む食品や、カレーなどの香辛料を多く含む食事は、体内で代謝され、汗や体臭として排出されることで一時的に臭いを変化させたり強めたりすることがあります。これらは摂取後比較的早い段階で体臭に影響が現れやすい食品です。
アルコール
アルコールは体内で分解される際にアセトアルデヒドという物質を生成します。この物質が汗や呼気として排出されることで、特有の臭いを発することがあります。また、アルコールには利尿作用があるため、脱水を招き、汗の濃度が高まって臭いが強くなる可能性もあります。
腸内環境の乱れを招く食事
腸内環境が乱れると、腸内の悪玉菌が活発になり、タンパク質を分解する際にインドールやスカトールといった臭い成分(糞便臭の原因物質)が発生します。これらの成分が腸から吸収されて血液中に入り、汗として排出されることで体臭の原因となることがあります。偏った食生活、食物繊維不足、便秘などは腸内環境の乱れにつながります。
体臭予防に効果的な生活習慣
ワキガ体質は遺伝的に決まるため、完全に治すには医療的な介入が必要ですが、日常生活での対策によって臭いを軽減することは可能です。
清潔を保つ
ワキガ臭の発生には皮膚常在菌が関与しているため、こまめに清潔を保つことが基本となります。毎日の入浴で薬用石鹸を使って丁寧に洗い、汗をかいたらこまめに拭き取るか着替えることが重要です。日中にアルコール綿で拭くという方法も効果的とされていますが、肌の弱い方は注意が必要です。
制汗剤・デオドラント製品の活用
市販の制汗剤やデオドラント製品を活用することで、臭いを軽減できます。制汗剤には殺菌作用があり、皮膚常在菌を減らすことで臭いの発生を抑制します。皮脂や細菌が減った清潔な状態(入浴後など)に使用すると効果的です。軽度から中度のワキガであれば、制汗剤でかなり臭いを抑えられます。
腋毛の処理
腋毛を処理することで、腋に汗や分泌物が多量に保持されるのを防ぎ、常在菌の培地が減ることで汗の分解量を軽減できます。結果として腋臭臭も軽減できるとされています。ただし、皮膚を傷めると制汗剤も使用できなくなる場合があるため、注意が必要です。
衣類の選び方
通気性の悪い衣類は汗が蒸発しにくく、蒸れて雑菌が繁殖しやすい環境を作ります。綿や麻などの天然素材で通気性の良い衣類を選ぶことで、汗による蒸れを軽減し、臭いの発生を抑えることができます。
バランスの良い食生活
動物性脂肪やタンパク質の過剰摂取を避け、野菜や果物、発酵食品などを積極的に摂取するバランスの良い食生活を心がけましょう。和食中心の食事は体臭対策にも効果的とされています。また、十分な水分摂取も重要です。
ストレス管理
ストレスはアポクリン汗腺からの発汗を促進させる要因となります。十分な睡眠、適度な運動、趣味の時間を確保するなど、ストレスを適切に管理することも体臭対策として重要です。ジャスミン茶のリラックス効果を活用するのも一つの方法です。
ワキガの治療法と対処法
ワキガの臭いが気になり、日常生活に支障をきたしている場合は、医療機関での治療を検討することも選択肢の一つです。
保存的治療(非手術的治療)
軽度のワキガであれば、塩化アルミニウム液の外用など、保存的治療から始めることが一般的です。塩化アルミニウムには汗腺に直接作用して発汗を抑制する効果があります。ただし、日本では塩化アルミニウム配合の制汗剤は主流ではなく、あまり販売されていません。
ボトックス注射(A型ボツリヌス毒素製剤)という選択肢もあります。これはエクリン汗腺の分泌を刺激する神経伝達物質アセチルコリンを抑制し、発汗自体を抑制するものです。1回の注入で4か月から6か月間効果が持続しますが、アポクリン汗腺には直接効果がないため、臭いへの効果は間接的なものとなります。
手術療法
中等度以上のワキガで、保存的治療では十分な効果が得られない場合は、手術療法が検討されます。代表的な手術法として、皮弁法(皮弁剪除法)があります。これは局所麻酔下で腋を切開し、皮膚を裏返してアポクリン腺を直接見ながらハサミで切除していく方法です。保険適用となり、効果は半永久的ですが、腋に2〜4センチ程度の傷跡が残ります。
その他の治療法
マイクロ波を照射してアポクリン汗腺を破壊するミラドライという治療法もあります。切開が不要で傷跡が残らないというメリットがありますが、保険適用外(自費診療)となります。効果は手術と同様に半永久的とされています。
専門医への相談が必要なケース
体臭が気になる場合、すべてがワキガというわけではありません。以下のような場合は、皮膚科や形成外科への受診を検討しましょう。
受診を検討すべき状況
セルフケアを行っても臭いが改善しない場合や、他人から臭いを指摘されたことがある場合は、専門医への相談をお勧めします。耳垢が湿っている方(湿性耳垢・アメ耳)は、ワキガ体質の可能性が高いため、臭いが気になるようであれば受診を検討してください。また、衣類の腋部分に黄色いシミがつきやすい場合も、アポクリン汗腺からの分泌が活発である可能性を示唆しています。
臭いが気になって日常生活に支障をきたしている場合や、対人関係に影響が出ている場合は、精神的な負担を軽減するためにも早めに専門医に相談することをお勧めします。
自臭症の可能性
一方で、実際にはワキガではないにもかかわらず、自分の体臭が気になって仕方がないという「自臭症(自己臭症)」という状態も存在します。これは「気にしすぎ」の状態であり、実際の臭いの程度と本人の認識にずれが生じています。専門医による客観的な診断を受けることで、適切な対応につなげることができます。

よくある質問
いいえ、ジャスミン茶を飲み続けてもワキガになることはありません。ワキガは遺伝的要因によって決まる体質であり、特定の飲食物によって後天的に発症することは医学的に考えられません。むしろ、ジャスミン茶に含まれるカテキンには抗菌作用や消臭作用があり、体臭対策にプラスに働く可能性があります。
ジャスミン茶を過剰に摂取すると、カフェインの利尿作用によって脱水傾向になり、汗の濃度が高まって一時的に体臭が強くなる可能性があります。また、カフェインが交感神経を活性化させることで発汗量が増加する場合もあります。ただし、これはワキガの発症ではなく、適量を守って摂取すれば問題ありません。1日1リットル程度までが目安とされています。
残念ながら、ワキガを食べ物だけで完全に治すことはできません。ワキガは遺伝的にアポクリン汗腺が発達している体質が原因であり、アポクリン汗腺の数は後天的に減少しません。ただし、動物性脂肪の摂取を控えた和食中心の食生活に切り替えることで、臭いを軽減できる可能性はあります。根本的な治療には医療機関での手術が必要です。
耳垢が湿っている(湿性耳垢・アメ耳)人の約80%がワキガを罹患しているとされていますが、必ずしも全員がワキガというわけではありません。湿性耳垢とワキガは同じABCC11遺伝子に関連しているため相関関係がありますが、臭いの程度には個人差があります。逆に、乾性耳垢の人がワキガになることは極めてまれとされています。
ジャスミン茶には体臭予防にプラスに働く可能性のある成分が含まれています。カテキンには抗菌作用と消臭作用があり、口臭や体臭の軽減に寄与する可能性があります。また、抗酸化成分であるビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールは、加齢臭の原因となる過酸化脂質の生成を抑制する効果が期待できます。さらに、リラックス効果によってストレス性発汗を軽減する可能性もあります。
医師がワキガ(腋臭症)と診断した場合、皮弁法(皮弁剪除法)による手術は保険適用となります。3割負担の方で両脇約5万円程度(術前検査・術後通院費は別途)が目安です。一方、ボトックス注射やミラドライなどの治療は自費診療となることが多いです。まずは皮膚科または形成外科を受診して診断を受けることをお勧めします。
参考文献
- ワキガ(腋臭症)の治療〜ニオイの診断と手術〜|日本医科大学武蔵小杉病院
- ワキガの悩みとさようなら!今すぐ試せるケア方法|済生会
- 腋臭症(わきが)|和歌山県立医科大学付属病院形成外科
- 腋臭症|みんなの家庭の医学 WEB版
- 腋臭症|Wikipedia
- ジャスミン茶にはカフェインが含まれる?管理栄養士が適量や効能を解説|トクバイニュース
- tea science tips「花粉症」|お茶百科
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務