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ヘモグロビンが低いとどうなる?原因・症状・改善法を医師が詳しく解説

健康診断の結果を見て、「ヘモグロビンが低い」と指摘されて不安になった方も多いのではないでしょうか。ヘモグロビンは私たちの体内で酸素を運搬する重要な役割を担っており、その数値が低下すると「貧血」という状態になります。

貧血は「よくある症状」と軽く見られがちですが、放置すると日常生活に支障をきたすだけでなく、背景に重大な病気が隠れている可能性もあります。本記事では、ヘモグロビンの基礎知識から、低下する原因、具体的な症状、そして改善・予防のための方法まで、わかりやすく解説します。ご自身の健康管理にお役立てください。

目次

  1. ヘモグロビンとは何か
  2. ヘモグロビンの基準値と検査方法
  3. ヘモグロビンが低い状態(貧血)とは
  4. ヘモグロビンが低いときに現れる症状
  5. ヘモグロビンが低くなる原因
  6. 貧血の種類と特徴
  7. 検査と診断の流れ
  8. 治療法について
  9. 食事による予防と改善
  10. 日常生活で気をつけたいこと
  11. 医療機関を受診すべきタイミング
  12. まとめ
  13. よくある質問
  14. 参考文献

この記事のポイント

ヘモグロビン低下(貧血)は疲労・動悸・めまいを引き起こし、背景に重大疾患が潜む場合もある。原因は鉄・ビタミン不足・出血・造血機能異常など多様で、原因に応じた治療と鉄分を意識したバランス食が重要。症状がなくても健診で指摘されたら医療機関への受診が必須。

🩸 1. ヘモグロビンとは何か

ヘモグロビンの役割

ヘモグロビンとは、血液中の赤血球に含まれる赤い色素をもったタンパク質のことです。健康診断では「血色素量」や「Hb」と表記されることもあります。

ヘモグロビンは、以下の2つの成分から構成されています:

  • ヘム:鉄を含む成分で酸素と結合しやすい性質を持つ
  • グロビン:タンパク質でできた成分

ヘムに含まれる鉄分が酸素と結合しやすい性質を持っているため、ヘモグロビンは全身に酸素を届ける運搬役として非常に重要な働きをしています。

具体的には、ヘモグロビンは:

  1. 肺で取り込んだ酸素と結びつく
  2. 血管を通じて体中の細胞へと酸素を届ける
  3. 各組織で発生した二酸化炭素を受け取る
  4. 再び肺へと運んで排出する

いわば「酸素の宅配便」のような役割を果たしています。私たちの血液が赤く見えるのも、このヘモグロビンが赤い色素を持っているためです。

ヘモグロビンと健康の関係

ヘモグロビンの量は、私たちの健康状態を反映する重要な指標の一つです。ヘモグロビンが正常範囲内であれば、体の隅々まで十分な酸素が行き渡り、細胞は正常に機能することができます。

しかし、何らかの原因でヘモグロビンの量が減少すると、全身が酸素不足の状態に陥り、さまざまな不調が現れるようになります。

また、ヘモグロビンの数値は単に貧血の有無を示すだけでなく、背景にある疾患を発見するきっかけにもなります。そのため、健康診断でヘモグロビンの値を定期的にチェックすることは、健康管理において非常に大切です。

Q. ヘモグロビンが低いと体にどんな影響が出る?

ヘモグロビンが低下すると全身の細胞が酸素不足になり、疲労感・動悸・息切れ・めまい・顔色不良などの症状が現れます。貧血が進行すると心臓が拍動を速めて代償しようとし、長期的には心不全などの合併症を引き起こすリスクもあります。

📊 2. ヘモグロビンの基準値と検査方法

ヘモグロビンの基準値

ヘモグロビンの基準値は、性別や年齢によって異なります。世界保健機関(WHO)では、貧血の定義として以下の基準を示しています。

区分貧血の基準(ヘモグロビン値)
成人男性(15歳以上)13.0g/dL未満
成人女性(15歳以上)12.0g/dL未満
高齢者11.0g/dL未満
小児(6〜14歳)12.0g/dL未満
幼児(6か月〜6歳)11.0g/dL未満
妊婦11.0g/dL未満

日本人間ドック学会の判定区分(2024年度版)では、血色素(ヘモグロビン)の基準範囲として、男性で13.1〜16.3g/dL、女性で12.1〜14.5g/dL程度が正常範囲とされています。

ただし、検査機関や使用する測定機器によって若干の差異がある場合もあるため、検査結果の解釈は医師に相談することをお勧めします。

検査方法

ヘモグロビンの測定は、一般的な血液検査で行われます。採血した血液を分析装置にかけることで、血液1デシリットル(dL)あたりに含まれるヘモグロビンの量をグラム(g)単位で測定します。

健康診断や人間ドックでは必ず含まれる検査項目であり、特別な準備は必要ありません。

血液検査では、ヘモグロビン値だけでなく、以下の項目も同時に測定されます:

  • 赤血球数(RBC)
  • ヘマトクリット値(Hct)
  • その他の血液指標

これらの数値を総合的に評価することで、貧血の有無やその程度、さらには貧血のタイプを推測することができます。

⚠️ 3. ヘモグロビンが低い状態(貧血)とは

貧血の定義

貧血とは、血液中のヘモグロビン濃度が基準値を下回った状態のことを指します。貧血は特定の病気の名前ではなく、さまざまな原因によって引き起こされる「状態」を表す言葉です。

ヘモグロビンが減少すると、血液が全身に運べる酸素の量が減り、体の組織が酸素不足に陥ります。

貧血の重症度

貧血は、ヘモグロビン値によって軽度、中等度、重度に分類されることがあります。

重症度ヘモグロビン値の目安
軽度貧血10〜12g/dL程度(女性)、10〜13g/dL程度(男性)
中等度貧血7〜10g/dL程度
重度貧血7g/dL未満

ただし、この分類はあくまで目安であり、症状の出方には個人差があります。貧血がゆっくりと進行した場合、ヘモグロビン値がかなり低くなっても症状が軽いことがあります。逆に、急速に貧血が進行した場合は、ヘモグロビン値がそれほど低下していなくても強い症状が現れることがあります。

高桑康太 医師・当院治療責任者

貧血は「ただの疲れ」と見過ごされがちですが、重大な病気のサインである可能性もあります。特に高齢の方の貧血は、がんや内臓疾患が隠れていることもあるため、健康診断で指摘された場合は自己判断せず、必ず専門医にご相談ください。

貧血が体に与える影響

ヘモグロビンが減少すると、体は酸素不足を補おうとしてさまざまな代償機能を働かせます:

  • 心臓:より多くの血液を送り出そうとして拍動を速める
  • 呼吸:荒くなって酸素を多く取り込もうとする

このような状態が続くと、心臓に負担がかかり、長期的には心不全などの合併症を引き起こす可能性もあります。

また、脳への酸素供給が減少すると、以下のような症状が生じることもあります:

  • 集中力の低下
  • 記憶力の減退
  • 判断力の低下

特に成長期の子どもや妊娠中の女性においては、貧血が発達や妊娠経過に影響を与えることがあるため、早期の発見と適切な対応が重要です。

Q. 鉄欠乏性貧血の治療はどのくらいかかる?

鉄欠乏性貧血の治療は鉄剤の内服が基本で、1〜2か月程度でヘモグロビン値は改善します。ただし体内の貯蔵鉄(フェリチン)を十分に補充するため、正常化後もさらに3〜6か月の継続服用が必要です。症状が改善しても自己判断で中止すると再発する可能性があります。

😵 4. ヘモグロビンが低いときに現れる症状

代表的な症状

ヘモグロビンが低下して貧血になると、全身の細胞が酸素不足になるため、さまざまな症状が現れます。

疲労感・倦怠感

最も多く見られる症状です:

  • 十分に休んでも疲れが取れない
  • 少し動いただけで疲れてしまう
  • 体の隅々まで酸素が行き渡らないため、エネルギーを十分に作り出すことができない

動悸・息切れ

貧血の典型的な症状です:

  • 酸素を運ぶヘモグロビンが減少すると、心臓は少ない酸素をより効率的に全身に届けようとして拍動を速める
  • 階段を上がったり、軽い運動をしたりするだけで息が上がる

めまい・立ちくらみ

脳への酸素供給が減少することで起こります:

  • 特に急に立ち上がったときに症状が出やすい
  • 長時間立っていたときにも起こりやすい
  • ひどい場合は転倒する危険もある

頭痛・頭重感

  • 脳が酸素不足になることで起こる
  • 頭が重い、ズキズキ痛むといった症状

顔色が悪くなる

貧血の特徴的なサインです:

  • ヘモグロビンが血液に赤い色を与えているため、減少すると顔色や唇の色、爪の色が青白くなる
  • 周囲の人から「顔色が悪いね」と指摘されて気づくことも

進行すると現れる症状

貧血が長期間続いたり、重症化したりすると、より深刻な症状が現れることがあります。

爪の変形

貧血が進行した際に見られる特徴的な症状の一つです:

  • 爪の中央がへこんでスプーンのような形になる「スプーン爪(匙状爪)」
  • 鉄欠乏性貧血に特徴的な所見
  • 爪が薄くなって割れやすくなることも

口角炎・舌炎

  • 唇の両端(口角)がひび割れて痛む
  • 舌がツルツルになって痛みを感じる
  • 粘膜の細胞が酸素不足で十分に再生できなくなるため

食欲不振・異食症

  • 食欲がなくなる
  • 氷を無性に食べたくなる(氷食症)
  • 土や紙などを食べたくなるといった異常な食欲(異食症)
  • これらは特に鉄欠乏性貧血で見られやすい症状

手足の冷えやしびれ

  • 末梢の血流が悪くなることで起こる
  • 体は重要な臓器への血流を優先するため、手足などの末梢部分への血流が減少

貧血による手足の冷えは、末端冷え性と症状が似ているため、区別が重要です。

症状が出にくいケースもある

貧血は、その進行速度によって症状の出方が大きく異なります。ゆっくりと進行する貧血の場合、体が酸素不足の状態に徐々に適応していくため、ヘモグロビン値がかなり低くなっても自覚症状がほとんどないことがあります。

このため、健康診断で初めて貧血を指摘されて驚く方も少なくありません。

自覚症状がないからといって貧血を放置していると、知らないうちに重症化していたり、背景にある病気が進行していたりすることがあります。健康診断でヘモグロビン値の低下を指摘された場合は、症状の有無にかかわらず医療機関を受診することが大切です。

🔍 5. ヘモグロビンが低くなる原因

ヘモグロビンが低下する原因は大きく分けて、以下の4つに分類できます:

  1. 血液の材料が不足している場合
  2. 血液を作る機能に問題がある場合
  3. 血液が失われている場合
  4. 血液が壊れている場合

血液の材料不足

ヘモグロビンを作るためには、鉄、ビタミンB12、葉酸、タンパク質などの栄養素が必要です。これらが不足すると、十分な量のヘモグロビンを作ることができなくなります。

鉄不足

  • ヘモグロビンの主要な構成成分であるヘムを作るために不可欠
  • 食事からの鉄分摂取が不足したり、鉄の吸収が悪くなったりすると鉄欠乏性貧血を引き起こす
  • 特に若い女性やダイエット中の方、成長期の子どもなどは鉄が不足しやすい

ビタミンB12・葉酸不足

  • 赤血球を正常に作るために必要なビタミン
  • 不足すると、赤血球が正常に成熟できなくなり、巨赤芽球性貧血という貧血を起こす
  • ビタミンB12は主に動物性食品に含まれているため、極端な菜食主義の方や胃の手術を受けた方は不足しやすい

タンパク質不足

  • ヘモグロビンのグロビン部分を作るために必要
  • 過度なダイエットや食事量の極端な減少、偏った食生活を続けていると貧血になることがある

血液を作る機能の異常

骨髄で血液を作る機能自体に問題がある場合も、貧血の原因となります。

再生不良性貧血

  • 骨髄の造血機能が低下し、赤血球だけでなく白血球や血小板も減少
  • 自己免疫の異常や、薬剤、ウイルス感染などが原因となることもある
  • 原因不明のことも多い疾患

骨髄異形成症候群

  • 主に高齢者に見られる病気
  • 骨髄で異常な血液細胞が作られるようになる
  • 貧血だけでなく、白血球減少や血小板減少を伴うことも
  • 一部は白血病に移行することがある

腎性貧血

  • 腎臓の機能が低下することで起こる貧血
  • 腎臓は赤血球の産生を促すホルモンであるエリスロポエチンを分泌
  • 腎機能が低下するとこのホルモンの分泌が減少し、貧血が起こる
  • 人工透析を受けている方や慢性腎不全の方に多い

出血による血液の喪失

体内で出血が起こると、血液とともにヘモグロビンも失われ、貧血になります。

月経による出血

  • 女性の貧血の最も多い原因の一つ
  • 特に月経量が多い方(過多月経)や、子宮筋腫などの婦人科疾患がある方は鉄欠乏性貧血になりやすい

消化管出血

以下の疾患によって起こります:

  • 胃潰瘍
  • 十二指腸潰瘍
  • 胃がん
  • 大腸がん
  • 痔など

出血量が少ない場合は自覚症状がなく、慢性的な出血によって徐々に貧血が進行することがあります。便が黒っぽくなる(タール便)、便に血が混じるなどの症状がある場合は注意が必要です。

その他の出血

  • 外傷
  • 手術後の出血
  • 鼻血の頻発など

赤血球の破壊(溶血)

赤血球が通常よりも早く壊れてしまう状態を溶血といい、溶血性貧血と呼ばれます。

自己免疫性溶血性貧血

  • 免疫システムが誤って自分自身の赤血球を攻撃してしまう病気
  • 赤血球に対する抗体が作られ、赤血球が次々と破壊されて貧血が起こる

発作性夜間ヘモグロビン尿症

  • 赤血球の膜に異常があり、壊れやすい赤血球が作られる病気
  • 寝ている間に赤血球が壊れ、早朝に茶褐色の尿が出ることがある

遺伝性溶血性貧血

  • 遺伝性球状赤血球症などの先天性の溶血性貧血も存在

慢性疾患に伴う貧血

がん、関節リウマチ、甲状腺疾患、肝臓病などの慢性疾患があると、それに伴って貧血が起こることがあります。これは二次性貧血または慢性疾患に伴う貧血と呼ばれ、全貧血の約3分の1を占めるとされています。

特に高齢者では、貧血の背景にこれらの慢性疾患が隠れていることが多いため、原因を詳しく調べることが重要です。

高齢者における「説明不能の貧血」

65歳以上の高齢者の貧血のうち、2〜3割程度は明確な原因が特定できない「説明不能の貧血」に分類されます。加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の減少、潜在的な炎症などが関係していると考えられていますが、詳細なメカニズムはまだ十分に解明されていません。

📋 6. 貧血の種類と特徴

貧血は原因によってさまざまな種類に分類されます。それぞれの特徴を理解することで、適切な治療につなげることができます

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血は、最も頻度の高い貧血で、全貧血の70〜80%を占めるとされています。鉄が不足することでヘモグロビンの合成が十分に行えなくなり、貧血が起こります。

主な原因

  • 食事からの鉄分摂取不足
  • 月経や消化管出血による鉄の喪失
  • 妊娠や授乳による鉄需要の増加

若い女性に特に多く、4人に1人が経験しているとも言われています。

特徴

  • 赤血球が小さく(小球性)、ヘモグロビン濃度が低い(低色素性)
  • 血液検査では血清フェリチン(貯蔵鉄の指標)の低下、総鉄結合能(TIBC)の上昇などが見られる

治療

  • 原因となっている出血などがあればその治療を行う
  • 鉄剤の内服が基本
  • 鉄剤の服用で1〜2か月程度でヘモグロビン値は改善
  • 体内の貯蔵鉄を補充するために、さらに3〜6か月程度の服用を継続することが推奨

巨赤芽球性貧血

巨赤芽球性貧血は、ビタミンB12または葉酸の不足によって起こる貧血です。これらのビタミンが不足すると、赤血球のDNA合成が障害され、赤血球が正常に成熟できなくなります。

ビタミンB12欠乏の原因

  • 胃の全摘出や萎縮性胃炎によるビタミンB12の吸収障害
  • 極端な菜食主義による摂取不足
  • ビタミンB12は肝臓に5年程度貯蔵されるため、原因が生じてから実際に貧血が現れるまでに数年かかることがある

葉酸欠乏の原因

  • 偏食やアルコールの大量摂取
  • 妊娠による需要増加

特徴

  • 赤血球が大きく(大球性)なる
  • ビタミンB12欠乏の場合は、しびれや感覚障害などの神経症状を伴うことがある

治療

  • ビタミンB12欠乏の場合は筋肉注射や静脈注射
  • 葉酸欠乏の場合は内服で補充
  • 重要:ビタミンB12欠乏症に葉酸だけを投与すると貧血は改善しても神経症状が悪化する可能性があるため、必ず原因を特定してから治療開始

再生不良性貧血

再生不良性貧血は、骨髄の造血機能が低下し、赤血球だけでなく白血球や血小板も減少する病気です。国の指定難病に認定されています。

原因

  • 自己免疫機序によるものが多い
  • 薬剤やウイルス感染、化学物質への曝露
  • 原因が特定できない特発性の場合も多い

症状

  • 貧血による疲労感や息切れ
  • 白血球減少による感染症にかかりやすさ
  • 血小板減少による出血しやすさ(あざができやすい、歯茎からの出血など)

治療

重症度や年齢によって異なる:

  • 免疫抑制療法
  • 造血幹細胞移植
  • 支持療法(輸血など)

腎性貧血

腎性貧血は、腎機能の低下によって起こる貧血です。腎臓は赤血球の産生を促すホルモンであるエリスロポエチンを分泌していますが、腎機能が低下するとこのホルモンの産生が減少し、赤血球が十分に作られなくなります。

慢性腎臓病の患者さんや、人工透析を受けている方に多く見られます。

治療

赤血球造血刺激因子製剤(ESA製剤)の投与が基本となります。これにより、エリスロポエチンの不足を補い、赤血球の産生を促します。

溶血性貧血

溶血性貧血は、赤血球が通常の寿命(約120日)よりも早く壊れてしまうことで起こる貧血です。

含まれる疾患:

  • 自己免疫性溶血性貧血
  • 遺伝性球状赤血球症
  • 発作性夜間ヘモグロビン尿症など

特徴

  • 貧血の症状に加えて、皮膚や白目が黄色くなる黄疸が見られることがある
  • 赤血球が壊れる際に放出されるビリルビンという黄色い色素が血液中に増えるため
  • 尿が茶褐色になることもある

治療

原因によって異なり、ステロイド薬や免疫抑制剤、脾臓摘出などが行われることがあります。

二次性貧血(慢性疾患に伴う貧血)

がん、関節リウマチ、慢性感染症、肝疾患、内分泌疾患などの慢性疾患に伴って起こる貧血を二次性貧血といいます。

これらの疾患があると、炎症によって鉄の利用が阻害されたり、エリスロポエチンの産生が低下したりして、貧血が起こります。

特に高齢者では二次性貧血の頻度が高く、貧血を契機に背景にある悪性腫瘍などの重大な疾患が発見されることもあります。そのため、貧血の原因を詳しく調べることが非常に重要です。

Q. 鉄分の吸収率を高めるにはどうすればよい?

鉄分には吸収率15〜25%のヘム鉄(肉・魚)と2〜5%の非ヘム鉄(野菜・豆類)があります。非ヘム鉄の吸収率を高めるには、ビタミンCが豊富な柑橘類やブロッコリーと一緒に摂取することが効果的です。また鉄製の調理器具を使うことでも鉄分摂取量を増やせます。

🔬 7. 検査と診断の流れ

基本的な血液検査

貧血の診断は、まず血液検査でヘモグロビン値を確認することから始まります。同時に測定される以下の項目も、貧血の種類を推測する上で重要な情報となります:

  • 赤血球数(RBC)
  • ヘマトクリット値(Hct)
  • 赤血球指数(MCV、MCH、MCHC)

MCV(平均赤血球容積)は、赤血球1個の平均的な大きさを示す指標です。この値によって、貧血は以下のように分類されます:

小球性貧血(MCV 80fL未満)

  • 赤血球が小さい状態
  • 鉄欠乏性貧血、慢性疾患に伴う貧血、サラセミアなどで見られる

正球性貧血(MCV 80〜100fL)

  • 赤血球の大きさが正常な貧血
  • 急性出血、溶血性貧血、再生不良性貧血、腎性貧血などで見られる

大球性貧血(MCV 100fL超)

  • 赤血球が大きい状態
  • ビタミンB12欠乏や葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血、肝疾患、骨髄異形成症候群などで見られる

貧血の原因を調べる検査

貧血の種類を特定し、原因を調べるために、以下のような追加検査が行われることがあります:

血清フェリチン

  • 体内の貯蔵鉄量を反映する指標
  • 鉄欠乏性貧血では低値を示す
  • ただし、炎症があると見かけ上高値になることがあるため、解釈には注意が必要

血清鉄、総鉄結合能(TIBC)、不飽和鉄結合能(UIBC)

  • 血液中の鉄の状態を調べる検査
  • 鉄欠乏性貧血では血清鉄が低下し、TIBCが上昇

網状赤血球数

  • 骨髄から新しく作られた若い赤血球の数を示す
  • 骨髄の造血機能が正常に働いているかどうかを判断する指標

ビタミンB12、葉酸の血中濃度

  • 巨赤芽球性貧血が疑われる場合に測定

末梢血塗抹標本検査

  • 血液を顕微鏡で観察し、赤血球の形態異常の有無などを調べる検査

原因疾患を調べる検査

貧血の背景にある疾患を調べるために、以下のような検査が必要になることがあります:

便潜血検査

  • 消化管出血の有無を調べる検査
  • 便に血液が混じっていないかを確認

内視鏡検査

  • 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
  • 下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)
  • 消化管出血の原因となる潰瘍やがん、ポリープなどを直接観察

婦人科検査

  • 過多月経の原因となる子宮筋腫や子宮内膜症などを調べる

骨髄検査

  • 再生不良性貧血や骨髄異形成症候群、白血病などが疑われる場合に実施
  • 骨盤の骨などから少量の骨髄液を採取して調べる

💊 8. 治療法について

貧血の治療は、その原因によって大きく異なります。原因を正確に診断し、それに応じた治療を行うことが重要です。

鉄欠乏性貧血の治療

鉄欠乏性貧血の治療は、鉄剤の内服が基本となります。鉄剤にはいくつかの種類があり、患者さんの状態に応じて選択されます。

鉄剤の種類

非徐放性鉄剤(クエン酸第一鉄ナトリウムなど)

  • 胃酸の分泌が低下している方や胃を切除した方でも吸収されやすい薬剤

徐放性鉄剤(フマル酸第一鉄、硫酸鉄など)

  • 胃から腸にかけてゆっくりと鉄を放出するため、胃への刺激が少ない
  • 空腹時でも服用できる
  • ただし、胃酸がないと効果が出にくいため、胃を切除した方には適さない

鉄剤の副作用

主な副作用として以下があります:

  • 吐き気
  • 胃のむかつき
  • 腹痛
  • 便秘
  • 下痢

また、便が黒くなることがありますが、これは鉄剤の影響であり心配ありません。

治療期間

  • 鉄剤を服用すると、1〜2か月程度でヘモグロビン値は改善
  • しかし、体内の貯蔵鉄(フェリチン)を十分に補充するためには、さらに3〜6か月程度の継続服用が必要
  • 症状が改善したからといって自己判断で服用を中止すると、再び貧血になる可能性

原因の治療

出血などの原因がある場合は、その治療も並行して行います:

  • 過多月経の原因となっている子宮筋腫の治療
  • 消化管出血の原因となっている潰瘍の治療など

巨赤芽球性貧血の治療

ビタミンB12欠乏による場合

  • ビタミンB12製剤の筋肉注射または静脈注射が行われる
  • 吸収障害が原因の場合は、生涯にわたって定期的な注射が必要になることもある

葉酸欠乏による場合

  • 葉酸製剤の内服で治療

重要な注意点

ビタミンB12欠乏症に対して葉酸だけを投与すると、貧血は改善しても神経症状が悪化することがあるため、治療開始前に必ず原因を特定することが大切です。

その他の貧血の治療

腎性貧血

  • 赤血球造血刺激因子製剤(ESA製剤)の投与

再生不良性貧血

  • 免疫抑制療法(抗胸腺細胞グロブリン、シクロスポリンなど)
  • 重症例には造血幹細胞移植が検討される

自己免疫性溶血性貧血

  • ステロイド薬や免疫抑制剤の投与
  • 脾臓摘出などが行われることもある

重度の貧血の場合

  • 緊急を要する場合には輸血が行われることもある

治療における注意点

貧血の治療を受ける際には、以下の点に注意しましょう:

  • 医師の指示通りに薬を服用し、自己判断で中止しないことが大切
  • 症状が改善しても、体内の貯蔵を十分に補充するために治療の継続が必要なことがある
  • 定期的に血液検査を受け、治療効果を確認する
  • 貧血の原因となっている基礎疾患がある場合は、その治療も並行して行う

🍽️ 9. 食事による予防と改善

貧血の予防や改善には、日々の食生活が非常に重要です。特に鉄欠乏性貧血の予防には、食事から適切に鉄分やその他の栄養素を摂取することが大切です。

鉄分の摂取について

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、鉄分の1日あたりの推奨摂取量は以下のように定められています:

区分推奨量
成人男性(18歳以上)7.0〜7.5mg
成人女性(月経なし)6.0〜6.5mg
成人女性(月経あり)10.5〜11.0mg
妊婦(初期・授乳期)+2.5mg
妊婦(中期・後期)+9.5mg

しかし、理想的な食事をしている人でも、1日に摂取できる鉄は約10mg程度(実際に吸収される量は約1mg)と言われています。特に月経のある女性は、毎月約30mgもの鉄が失われるため、意識的に鉄分を摂取することが大切です。

ヘム鉄と非ヘム鉄

食品に含まれる鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があり、吸収率に大きな違いがあります。

ヘム鉄

  • 肉や魚などの動物性食品に含まれる鉄
  • 吸収率が15〜25%と高い
  • 主な食品:豚レバー、鶏レバー、牛の赤身肉、かつお、まぐろ、あさり、しじみなど

非ヘム鉄

  • 野菜、豆類、穀類などの植物性食品に含まれる鉄
  • 吸収率は2〜5%と低い
  • 主な食品:ほうれん草、小松菜、大豆製品、ひじき、海藻類など

日本人が摂取する鉄の多くは非ヘム鉄ですが、吸収率を高める工夫をすることで、効率よく鉄を摂取することができます。

鉄分を多く含む食品

鉄分を多く含む代表的な食品:

動物性食品

  • 豚レバー(100gあたり約13mg)
  • 鶏レバー(約9mg)
  • 牛レバー(約4mg)
  • かつお(約1.9mg)
  • まぐろ赤身(約1.1mg)
  • あさり水煮(約30mg)
  • しじみ(約8mg)

植物性食品

  • ほうれん草(100gあたり約2.0mg)
  • 小松菜(約2.8mg)
  • 納豆(1パックあたり約1.3mg)
  • 木綿豆腐(約1.2mg)
  • 乾燥ひじき(鉄釜加工のもの約58mg)

鉄分の吸収を高める栄養素

非ヘム鉄の吸収率を高めるために、以下の栄養素と一緒に摂取することが効果的です:

ビタミンC

  • 非ヘム鉄を吸収されやすい形に変換する働き
  • 鉄分を含む食品と一緒に、ビタミンCが豊富な果物(柑橘類、いちご、キウイなど)や野菜(ブロッコリー、パプリカなど)を摂取

動物性タンパク質

  • 非ヘム鉄の吸収を助ける
  • 野菜料理と一緒に肉や魚を組み合わせることで、吸収率を高める

有機酸

  • クエン酸や酢酸なども鉄の吸収を促進
  • 調理に酢やレモン汁を使うのも効果的

鉄分の吸収を妨げるもの

一方で、鉄分の吸収を妨げる成分もあります:

タンニン

  • 緑茶、紅茶、コーヒーなどに含まれる成分
  • 鉄と結合して吸収を妨げる
  • 食事中や食後すぐの摂取は控えた方がよい
  • ただし、最近の研究では、タンニンの影響はそれほど大きくないという報告もあり、過度に気にする必要はない

その他

  • フィチン酸:玄米や全粒粉、豆類などに含まれ、鉄の吸収を妨げることがある
  • 食物繊維の過剰摂取:鉄の吸収を阻害する可能性

ビタミンB12と葉酸を含む食品

巨赤芽球性貧血の予防には、ビタミンB12と葉酸の摂取も重要です:

ビタミンB12を多く含む食品

  • 牛レバー
  • 豚レバー
  • あさり
  • しじみ
  • さんま
  • いわし
  • 卵黄
  • チーズなど

葉酸を多く含む食品

  • 牛レバー
  • 豚レバー
  • ほうれん草
  • ブロッコリー
  • アスパラガス
  • 納豆
  • 大豆など

食生活の基本

貧血予防のための食生活の基本をまとめます:

  • 規則正しい食事:1日3食、規則正しく食べる。朝食を抜いたり、極端なダイエットをしたりすると、必要な栄養素が不足しやすくなる
  • バランスの良い食事:主食、主菜、副菜をそろえた食事を心がける
  • 鉄分を意識的に摂取:特にヘム鉄を含む動物性食品を適度に摂取
  • ビタミンCを一緒に摂取:鉄の吸収率を高める
  • 十分なタンパク質摂取:ヘモグロビンの材料となるだけでなく、非ヘム鉄の吸収も助ける
  • 手作りの食事:インスタント食品やファストフードに偏らない

また、免疫力を高める食べ物を意識的に摂取することで、全身の健康状態を向上させ、貧血の予防にもつながります。

調理の工夫

鉄製の調理器具を使うことで、食品に鉄が溶け出し、鉄分の摂取量を増やすことができます。

例えば、乾燥ひじきの鉄含有量は:

  • ステンレス釜で加工したもの:100gあたり約6.2mg
  • 鉄釜で加工したもの:約58mg

と大きな差があります。

鉄製のフライパンやスキレット、鉄瓶などを日常的に使うことは、鉄分補給に役立ちます。特に酸味のある料理(トマト料理など)では、鉄が溶け出しやすくなります。

Q. 貧血で医療機関をすぐ受診すべき症状は?

強い動悸・息切れが安静時も続く場合、胸の痛み、黒い便(タール便)や血便、大量の不正出血、意識がもうろうとする場合はすぐに受診が必要です。また自覚症状がなくても健康診断でヘモグロビン低下を指摘された場合は、背景に重大疾患が隠れている可能性があるため早めの受診が重要です。

🏃 10. 日常生活で気をつけたいこと

無理のない運動

貧血の症状がある場合、激しい運動は心臓に負担をかけるため避けるべきですが、症状が軽度であれば、ウォーキングなどの軽い運動は血行を良くし、体調の改善に役立ちます。

ただし、めまいやふらつきがある場合は転倒のリスクがあるため、十分に注意が必要です。運動を始める前に、主治医に相談することをお勧めします。

十分な休息

貧血があると、体は常に酸素不足の状態であり、疲れやすくなります。以下の点を心がけましょう:

  • 十分な睡眠をとる
  • 無理をしないようにする
  • 疲れを感じたら無理をせず休む
  • こまめに休憩をとる

体のサインに耳を傾けることが大切です。

質の良い睡眠を確保するために、睡眠負債の解消方法を参考にして、生活リズムを整えることも重要です。

転倒・怪我の予防

めまいやふらつきがある場合、転倒して怪我をするリスクが高まります。以下の点に注意しましょう:

  • 立ち上がり方:急に立ち上がることは避け、一呼吸おいてからゆっくり立ち上がる
  • 手すりの活用:階段や廊下では手すりを使い、外出時は壁側を歩く
  • めまい時の対処:めまいを感じたら、すぐにその場にしゃがみこんで、症状が落ち着くまで待つ
  • 浴室の安全対策:浴室は滑りやすいため、手すりを設置したり、滑り止めマットを使用

ストレスの管理

過度のストレスは、食欲不振を招いたり、胃腸の働きを悪くして栄養の吸収を妨げたりすることがあります。適度にリラックスする時間を設け、ストレスをため込まないようにしましょう。

ストレスによる体調不良を感じた場合は、ストレスによる胃痛の対処法を参考にして、適切なケアを行うことが大切です。

手足のケア

貧血によって手足の冷えやしびれがある場合は、以下の対策が効果的です:

  • 温かい衣服を身につける
  • マッサージをして血行を促進
  • 手足のストレッチも、貧血による倦怠感の軽減に効果的

過度のダイエットを避ける

極端なダイエットは、鉄分やタンパク質、ビタミン類の不足を招き、貧血の原因となります。

特に若い女性は、体重を気にするあまり食事制限をしがちですが、健康を損なわない範囲での食事管理を心がけましょう。

糖質や脂質を極端に制限するダイエットも、体がエネルギー源としてタンパク質を消費してしまい、ヘモグロビンの材料が不足する原因となります。バランスの良い食事を心がけることが大切です。

定期的な健康診断

貧血は自覚症状がなく進行することも多いため、定期的に健康診断を受けて、ヘモグロビン値をチェックすることが重要です。

特に貧血になりやすい方は、年に1回は血液検査を受けることをお勧めします:

  • 月経のある女性
  • 妊娠中・授乳中の方
  • 成長期の子ども
  • 高齢者など

🏥 11. 医療機関を受診すべきタイミング

以下のような場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

すぐに受診すべき症状

急激な貧血の進行が疑われる症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してください:

強い動悸や息切れが続く場合

  • 安静にしていても動悸や息苦しさが収まらない場合
  • 貧血が重症化している可能性

胸の痛みがある場合

  • 貧血による心臓への負担が大きくなると、胸痛が現れることがある

黒い便(タール便)や血便がある場合

  • 消化管出血のサイン
  • 胃潰瘍や大腸がんなどの可能性があるため、早急な検査が必要

大量の不正出血がある場合

  • 婦人科疾患の可能性

意識がもうろうとする場合

  • 重度の貧血や急性の出血が疑われる

早めに受診すべき状況

健康診断でヘモグロビン値の低下を指摘された場合

  • 自覚症状がなくても、原因を調べるために受診

疲れやすい、息切れしやすいなどの症状が続く場合

  • 貧血だけでなく、他の疾患の可能性もあるため、検査を受けることをお勧め

月経量が多い、月経期間が長いなど、月経の異常がある場合

  • 婦人科疾患が隠れている可能性

食欲がない、体重が減少しているなどの症状がある場合

  • 消化器疾患やがんなどの可能性を調べる必要

受診する診療科

貧血の診断や治療は、まず内科を受診することをお勧めします。血液検査の結果や症状に応じて、以下のような専門科への紹介が行われることがあります:

  • 血液内科:再生不良性貧血や溶血性貧血などの血液疾患が疑われる場合
  • 消化器内科:消化管出血が疑われる場合
  • 婦人科:過多月経や婦人科疾患が疑われる場合
  • 腎臓内科:腎性貧血が疑われる場合

📝 12. まとめ

ヘモグロビンが低い状態(貧血)は、単なる疲れや体調不良と軽視されがちですが、背景に重大な疾患が隠れている可能性もある重要な健康指標です。

本記事で解説した内容をまとめると:

  • ヘモグロビンの役割:全身に酸素を運搬する重要なタンパク質
  • 貧血の症状:疲労感、動悸、息切れ、めまい、顔色不良など
  • 主な原因:栄養不足、出血、造血機能の異常、赤血球の破壊など
  • 治療法:原因に応じた薬物療法や食事療法
  • 予防法:バランスの良い食事、適度な運動、定期的な健康診断

最も重要なのは、健康診断でヘモグロビン値の低下を指摘された場合は、症状の有無にかかわらず医療機関を受診することです。早期発見・早期治療により、多くの貧血は改善可能です。

また、日常生活では鉄分を多く含む食品を意識的に摂取し、バランスの良い食事を心がけることで、貧血の予防につながります。

貧血に関してご不安な点がございましたら、お気軽に医療機関にご相談ください。適切な診断と治療により、健康的な生活を取り戻すことができます。

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