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γ-GTPが高いと言われたら?原因・疑われる病気・数値を下げる方法を専門医が徹底解説

健康診断の結果を受け取り、「γ-GTP(ガンマ・ジーティーピー)が高い」と指摘されて不安になっている方は多いのではないでしょうか。γ-GTPは肝臓の状態を示す重要な指標のひとつであり、数値が高い場合は肝臓や胆道系に何らかの問題が起きている可能性を示唆しています。

「お酒をよく飲む人が高くなる数値」というイメージが強いγ-GTPですが、実はアルコールを全く飲まない方でも数値が上昇することは珍しくありません。脂肪肝や薬剤の影響、胆道系の疾患など、原因はさまざまです。

本記事では、γ-GTPとは何か、基準値はどのくらいか、数値が高くなる原因、疑われる病気、そして今日から始められる改善策について、わかりやすく解説します。健康診断でγ-GTPの異常を指摘された方は、ぜひ参考にしてください。


目次

  1. γ-GTPとは何か?肝臓との関係を理解しよう
  2. γ-GTPの基準値を知ろう
  3. γ-GTPが高くなる主な原因
  4. γ-GTPの上昇から疑われる病気
  5. γ-GTPと他の肝機能検査値の関係
  6. γ-GTPを下げるための生活習慣改善法
  7. 病院を受診すべきタイミングと検査内容
  8. よくある質問(Q&A)
  9. まとめ

1. γ-GTPとは何か?肝臓との関係を理解しよう

γ-GTPの正式名称と役割

γ-GTPは「ガンマ・グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-Glutamyl Transpeptidase)」の略称で、現在では「γ-GT(ガンマ・グルタミルトランスフェラーゼ)」と表記されることもあります。これは肝臓や腎臓、膵臓などの細胞に存在する酵素のひとつで、タンパク質を分解してアミノ酸を生成する働きを持っています。

γ-GTPは特に肝臓の解毒作用に深く関わっており、体内に入ってきたアルコールや薬物などの有害物質を分解・排出する過程で重要な役割を担っています。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど自覚症状が出にくい臓器ですが、γ-GTPの数値を調べることで、肝臓の状態を間接的に知ることができるのです。

なぜ血液中のγ-GTPが増えるのか

通常、γ-GTPは主に肝臓の細胞内(肝細胞の小胞体)や胆管の細胞に存在しています。健康な状態であれば、血液中のγ-GTPはごく少量に保たれています。

しかし、何らかの原因で肝臓や胆管の細胞がダメージを受けると、細胞内に閉じ込められていたγ-GTPが血液中に漏れ出してきます。つまり、血液検査でγ-GTPの数値が高いということは、肝臓や胆道系の細胞が傷ついている、あるいは何らかの負担がかかっていることを示唆しているのです。

また、γ-GTPにはもうひとつ特徴的な性質があります。それは、アルコールや一部の薬剤によって肝細胞での産生が誘導されることです。これは肝細胞の破壊がなくても起こる現象であり、普段からお酒をよく飲む人ではγ-GTPが高めになりやすい理由のひとつとなっています。

血中γ-GTPのほとんどは肝臓由来

γ-GTPは腎臓や膵臓にも多く含まれていますが、これらの臓器に障害があっても血液中にはあまり漏れ出てきません。そのため、血液検査で測定されるγ-GTPのほとんどは肝臓に由来するものと考えられています。この特性から、γ-GTPは肝臓や胆道系の機能を評価するための重要な検査項目として位置づけられているのです。


2. γ-GTPの基準値を知ろう

一般的な基準値

γ-GTPの基準値は検査機関や医療施設によって若干異なる場合がありますが、一般的には以下のように設定されています。

男性:50 IU/L(U/L)以下 女性:30 IU/L(U/L)以下

この基準値は、健康な人の測定値の中央95%を含む範囲として設定されたものです。男性と女性で基準値に差があるのは、一般的に男性のほうが飲酒量が多い傾向にあることや、ホルモンバランスの違いなどが影響していると考えられています。

ただし、飲酒習慣のない男性に限定すると、基準値の上限はより低くなることが報告されています。日本臨床検査専門医会によれば、基準範囲は男性で12〜65 U/L、女性で9〜38 U/Lとされていますが、その差の大部分は飲酒習慣の有無によるものとされています。

特定健診における判定値

厚生労働省が定めた特定健康診査(メタボ健診)における保健指導判定値および受診勧奨判定値は、以下のように設定されています。

保健指導判定値:51 U/L以上(男女共通) 受診勧奨判定値:101 U/L以上(男女共通)

保健指導判定値を超えた場合は、生活習慣の改善が推奨されます。受診勧奨判定値を超えた場合は、医療機関での精密検査や治療が必要となる可能性が高いため、速やかに専門医を受診することが推奨されます。

数値レベル別の目安

γ-GTPの数値は、そのレベルによって異なる状態を示唆します。一般的な目安として、以下のような解釈がされています。

50 U/L以下(基準範囲内):正常範囲。肝臓は健康な状態と考えられます。

51〜100 U/L(軽度上昇):軽度の肝機能異常が疑われます。飲酒習慣の見直しや生活習慣の改善が必要です。経過観察が推奨されますが、他の検査値に異常がなければ緊急性は低いことが多いです。

101〜200 U/L(中等度上昇):脂肪肝や肝臓の障害が進んでいる可能性があります。医療機関での精密検査を受けることが推奨されます。

200 U/L以上(高度上昇):重度の肝障害や胆道系の閉塞(胆石、胆道がんなど)が疑われます。できるだけ早く専門医を受診し、詳しい検査を受ける必要があります。

500 U/L以上(著明上昇):重症のアルコール性肝炎、急性肝炎、胆道閉塞などの重篤な疾患が強く疑われます。緊急の医療対応が必要な場合があります。


3. γ-GTPが高くなる主な原因

γ-GTPが上昇する原因は多岐にわたります。「お酒の飲みすぎ」というイメージが強いγ-GTPですが、実際にはアルコール以外にもさまざまな要因が関係しています。ここでは、主な原因について詳しく解説します。

3-1. アルコールの過剰摂取

γ-GTPが上昇する最も一般的な原因は、アルコールの過剰摂取です。γ-GTPはアルコールに対して非常に敏感に反応する性質を持っており、常習的に飲酒をしている人では数値が高くなりやすい傾向があります。

アルコールを摂取すると、肝臓はその分解・代謝を担当します。アルコールは胃や小腸で吸収された後、門脈を通って肝臓に運ばれ、そこでアルコール脱水素酵素(ADH)によって分解されます。この過程で、アセトアルデヒドという有毒物質が発生します。

アセトアルデヒドは肝臓の細胞にダメージを与えることが知られています。アルコールの摂取量が増えると、肝臓への負担も大きくなり、γ-GTPの産生が活発になります。さらに飲酒が続くと、肝細胞が破壊されて血液中にγ-GTPが漏れ出すため、数値がさらに上昇するのです。

興味深いことに、肝障害を起こしていなくても、普段からお酒をよく飲む人ではγ-GTPの数値が上昇することがあります。これは、アルコールによってγ-GTPの産生が誘導されるためです。健康な人であれば、一時的に数値が上昇しても禁酒によってすぐに元に戻りますが、飲酒が習慣化している場合は高値が持続します。

飲酒量の目安として、厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」として、1日平均純アルコール量で約20g程度(女性はその2分の1から3分の2程度)を推奨しています。これはおおよそビール中瓶1本、日本酒1合、ワイングラス2杯程度に相当します。この量を超えて継続的に飲酒している場合は、γ-GTPの上昇に注意が必要です。

3-2. 脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患:NAFLD)

お酒を飲まない人でもγ-GTPが高くなる最も一般的な原因が「脂肪肝」です。脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。

かつて脂肪肝はアルコールの飲みすぎが主な原因と考えられていましたが、近年ではアルコールをほとんど飲まない人に起こる「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:ナッフルド)」が増加しています。日本国内ではNAFLDの患者数は少なくとも1,000万人以上と推計されており、健診受診者の約20〜30%が脂肪肝を有しているとされています。

脂肪肝が生じるメカニズムは以下のようになっています。私たちが食事から摂取した糖質(炭水化物)は、腸で分解されてブドウ糖として吸収され、肝臓に運ばれます。肝臓ではブドウ糖をグリコーゲンに変換して蓄え、空腹時にはこれを放出して血糖値を維持しています。

しかし、糖質を摂りすぎると、肝臓に蓄えきれなくなったエネルギーは中性脂肪に変換されて肝臓内に蓄積されます。この蓄積した脂肪が肝細胞を攻撃し、細胞が傷つくことでγ-GTPをはじめとする肝酵素が血液中に漏れ出すのです。

特に注意が必要なのは、NAFLDの一部は炎症を伴う「非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)」に進行する可能性があることです。NASHは放置すると肝硬変や肝がんに発展する恐れがあり、国内には約100〜200万人の患者がいると推定されています。

脂肪肝の主なリスク因子としては、肥満、過食、運動不足、糖尿病、脂質異常症(高コレステロール血症、高中性脂肪血症)、高血圧などが挙げられます。これらはいわゆる「メタボリックシンドローム」の構成要素であり、NAFLDはメタボリックシンドロームの肝臓における表現型とも考えられています。

3-3. 薬剤性肝障害

長期間にわたって薬を服用している場合、薬剤性肝障害によってγ-GTPが上昇することがあります。肝臓は薬の代謝を担う臓器でもあり、さまざまな薬剤が肝機能に影響を与える可能性があります。

薬剤性肝障害は、大きく分けて以下の2つのメカニズムで起こります。

ひとつは、薬剤に対するアレルギー反応によるものです。体質的に特定の薬剤に対して過敏な反応を示す人がおり、服用後に肝臓に炎症が起こることがあります。

もうひとつは、薬剤そのものや、肝臓が薬剤を処理する過程で生じる中間産物が蓄積することによって肝障害を起こすケースです。これは薬の服用量や期間に依存して起こることが多いです。

特にγ-GTPの値が上昇しやすい薬剤としては、以下のようなものが報告されています。

抗てんかん薬:フェニトイン、カルバマゼピンなど 抗精神病薬:クロルプロマジン、ハロペリドールなど 睡眠薬・抗不安薬:一部のベンゾジアゼピン系薬剤など ステロイドホルモン薬:副腎皮質ステロイド、経口避妊薬など 抗真菌薬:一部のアゾール系薬剤など

注意すべき点として、病院で処方される薬だけでなく、市販の風邪薬、解熱鎮痛剤、漢方薬、サプリメントなど、どのような製品でも肝障害を起こす可能性があることです。「天然由来だから安全」とは限らないため、健康食品やサプリメントの過剰摂取にも注意が必要です。

薬剤性肝障害の症状としては、倦怠感、発熱、発疹、吐き気、嘔吐、かゆみなどがあり、重症化すると黄疸や劇症肝炎を引き起こすこともあります。服薬中にこれらの症状が現れた場合は、速やかに医師に相談してください。

3-4. 胆道系の疾患

γ-GTPは肝臓だけでなく、胆管の細胞にも多く存在しています。そのため、胆道系に異常がある場合もγ-GTPが上昇します。

胆汁は肝臓で作られ、胆管を通って十二指腸に排出されます。この胆汁の通り道である胆道に何らかの障害が生じると、胆汁の流れが滞り(胆汁うっ滞)、γ-GTPが血液中に漏れ出してきます。

胆道系の疾患としては、以下のようなものが挙げられます。

胆石症:胆のうや胆管に石ができる病気です。胆石が胆管を塞ぐと、胆汁の流れが妨げられてγ-GTPが上昇します。症状として右上腹部の痛み(胆石発作)が現れることがありますが、無症状のまま経過する場合も少なくありません。

胆のう炎・胆管炎:胆のうや胆管に炎症が起こる病気です。細菌感染や胆石が原因となることが多く、発熱や腹痛を伴うことがあります。

胆道がん:胆管や胆のうにできるがんです。進行すると黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)が現れることがあります。γ-GTPが200 U/Lを超えるような著明な上昇がある場合は、胆道がんの可能性も考慮する必要があります。

原発性胆汁性胆管炎(PBC):自己免疫の異常により、肝臓内の細い胆管が徐々に破壊される病気です。中年女性に多く見られます。

胆石ができやすい人の特徴として、「4F」と呼ばれる条件があります。これは英語で女性(Female)、肥満(Fatty)、40歳以上(Forty)、多産(Fertile:出産経験が多い)の頭文字を取ったものです。また、食事を抜く習慣がある人も胆汁の流れが悪くなりやすく、胆石のリスクが高まるとされています。

3-5. 肝臓の疾患

肝臓自体に病気がある場合も、当然γ-GTPは上昇します。

ウイルス性肝炎:B型肝炎やC型肝炎などのウイルス感染による肝炎です。急性肝炎では一時的にγ-GTPが上昇し、慢性肝炎では持続的な軽度〜中等度の上昇が見られることがあります。

アルコール性肝炎:大量飲酒により肝臓に炎症が起こる病気です。急性のアルコール性肝炎では、γ-GTPの著明な上昇に加え、ASTやALTも高値を示します。

肝硬変:慢性的な肝障害により、肝臓が線維化して硬くなった状態です。肝機能が低下し、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。

肝臓がん(肝細胞がん):肝硬変やウイルス性肝炎を背景に発症することが多い悪性腫瘍です。

3-6. その他の原因

上記以外にも、γ-GTPが上昇する原因はいくつかあります。

糖尿病・脂質異常症:これらの代謝疾患はγ-GTP上昇を伴うことがあります。特に糖尿病は脂肪肝との関連が深く、日本糖尿病学会の調査では、糖尿病患者の死因の約13%を肝疾患が占めていると報告されています。

更年期(女性):女性ホルモン(エストロゲン)には脂質代謝を助ける働きがあります。更年期を迎えて女性ホルモンの量が減少すると、肝臓に脂肪代謝の負荷がかかり、γ-GTPが上昇することがあります。

遺伝的要因:γ-GTPの血中濃度には遺伝的要因が関与していることが研究で示されています。その影響度は個人差がありますが、約20〜70%程度に及ぶとする報告もあります。

肥満:肥満そのものが肝臓への負担となり、γ-GTPの上昇に関係します。体重の増加に伴って脂肪肝が進行しやすくなるためです。


4. γ-GTPの上昇から疑われる病気

γ-GTPが高値を示す場合に疑われる主な疾患について、もう少し詳しく解説します。

4-1. アルコール性肝障害

アルコール性肝障害は、長期間(通常5年以上)にわたる過剰な飲酒が原因で起こる肝臓の障害です。1日平均純エタノール換算で60g以上の飲酒を続けている場合に発症リスクが高まりますが、女性や遺伝的にお酒に弱い人では40g程度でも発症することがあります。

アルコール性肝障害は、以下のような段階を経て進行します。

アルコール性脂肪肝:飲みすぎにより肝臓に脂肪が蓄積した状態です。この段階では自覚症状はほとんどなく、禁酒により比較的短期間で改善が見込めます。

アルコール性肝炎:脂肪肝の状態でさらに飲酒を続けると、肝臓に炎症が起こります。発熱、腹痛、黄疸などの症状が現れ、重症化すると命に関わることもあります。

アルコール性肝線維症:肝臓に線維化(硬くなること)が進行した状態です。日本ではこの段階が多いとされています。

アルコール性肝硬変:さらに線維化が進行し、肝臓全体が硬くなった状態です。肝機能が著しく低下し、腹水、黄疸、肝性脳症などの合併症が出現します。

アルコール性肝障害の血液検査では、γ-GTPの上昇に加え、AST(GOT)が優位に高いパターン(AST>ALT)が特徴的です。

4-2. 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)・非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

前述の通り、NAFLDはアルコールをほとんど飲まない人に起こる脂肪肝です。NAFLDは大きく2つに分類されます。

単純性脂肪肝(NAFL):肝臓に脂肪が蓄積しただけの状態で、炎症や線維化は伴いません。一般的に良性の経過をたどり、適切な生活習慣の改善により回復が期待できます。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH):脂肪の蓄積に加え、炎症や線維化を伴う状態です。放置すると5〜10年で約5〜20%が肝硬変に進行するとされ、肝がんのリスクも高まります。

NAFLDやNASHの厄介な点は、自覚症状がほとんどないことです。倦怠感や疲れやすさを感じる人もいますが、多くの場合は健康診断の血液検査や腹部超音波検査で偶然発見されます。肝機能検査のALT(GPT)が正常範囲内であっても、NAFLDやNASHを否定することはできないため、リスク因子がある人は画像検査を受けることが推奨されます。

なお、2024年に国際的な学会の合意により、NAFLDは「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」、NASHは「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)」という新しい名称に変更されました。これは従来の名称が患者に対するスティグマ(負の烙印)を与える可能性があるとの配慮によるものです。

4-3. 胆道系疾患

胆石症、胆のう炎、胆管炎、胆道がんなどの胆道系疾患では、胆汁の流れが阻害されることでγ-GTPが上昇します。特にγ-GTPの上昇が顕著な場合(200 U/L以上)は、胆道の閉塞を疑う必要があります。

胆石症は日本人の約10%に見られるとされる比較的一般的な疾患ですが、胆石があっても症状が出るのは全体の約20%程度です。しかし、胆石が胆管を塞いだり、胆のうに炎症を起こしたりすると、激しい腹痛(胆石発作)、発熱、黄疸などの症状が現れます。

4-4. ウイルス性肝炎

B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると、慢性的な肝臓の炎症が起こり、γ-GTPをはじめとする肝機能検査値が上昇します。

ウイルス性肝炎は自覚症状に乏しいことが多く、長期間放置すると肝硬変や肝がんに進行するリスクがあります。γ-GTPの上昇が見られる場合は、ウイルス性肝炎の可能性を除外するため、HBs抗原やHCV抗体などの検査を受けることが重要です。

4-5. 自己免疫性肝疾患

自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎(PBC)など、免疫機能の異常により自身の肝臓や胆管を攻撃してしまう病気でも、γ-GTPは上昇します。これらの疾患は中年女性に多く見られる傾向があります。


5. γ-GTPと他の肝機能検査値の関係

γ-GTPの数値だけで肝臓の状態を正確に判断することはできません。医師は通常、AST(GOT)、ALT(GPT)、ALP(アルカリホスファターゼ)など、他の肝機能検査値と組み合わせて総合的に評価します。

AST(GOT)とALT(GPT)

ASTとALTは、肝細胞が破壊されると血液中に漏れ出す酵素です。

ALT(GPT):ほとんどが肝臓にのみ存在する酵素です。ALTが高い場合は、肝臓の細胞が傷ついている可能性が非常に高いと判断できます。

AST(GOT):肝臓だけでなく、心臓の筋肉や骨格筋などにも存在する酵素です。そのため、ASTの上昇は肝臓以外の原因でも起こりえます。

γ-GTPとAST・ALTの組み合わせによる解釈

これら3つの数値のバランスを見ることで、肝障害の原因をある程度推測することができます。

γ-GTPとASTが優位に高い(AST>ALT):アルコール性の肝障害が強く疑われます。

ALTが優位に高い(ALT>AST):脂肪肝やウイルス性肝炎などが疑われます。

γ-GTPだけが高い(AST・ALTは正常):飲酒初期の影響、薬剤性肝障害、または症状の出ていない胆道系の病気が隠れている可能性があります。この場合、肝細胞の破壊はまだ顕著ではないものの、肝臓に何らかの負担がかかっている状態を示唆しています。

ALP(アルカリホスファターゼ)

ALPは肝臓、骨、小腸などに存在する酵素で、特に胆汁うっ滞の指標として用いられます。γ-GTPとALPがともに高い場合は、胆道系の疾患が強く疑われます。

総ビリルビン

ビリルビンは赤血球の分解産物で、通常は肝臓で処理されて胆汁中に排泄されます。肝機能が低下したり胆道が閉塞したりすると、血液中のビリルビンが増加し、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)が現れます。


6. γ-GTPを下げるための生活習慣改善法

γ-GTPの数値が高い場合、原因に応じた適切な対処が必要です。多くの場合、生活習慣の改善によって数値の改善が期待できます。

6-1. 禁酒・節酒

飲酒がγ-GTP上昇の原因となっている場合、最も効果的な対策は禁酒です。γ-GTPはアルコールに対して敏感に反応するため、禁酒によって比較的短期間で数値が改善することが期待できます。

γ-GTPの半減期は約14〜26日とされており、2〜3週間の禁酒で数値は約半分に低下することが多いです。禁酒を2〜3ヶ月継続すると、正常範囲内まで回復する例も少なくありません。

完全な禁酒が難しい場合は、まず節酒から始めることも有効です。厚生労働省が推奨する「節度ある適度な飲酒」の目安は、1日平均純アルコール量で約20g(男性)、女性はその2分の1から3分の2程度です。

また、週に少なくとも2日は「休肝日」を設けることが推奨されています。アルコールの代謝には約3日かかるとされており、連続飲酒を避けることで肝臓の負担を軽減できます。

純アルコール20gの目安: ビール中瓶(500ml)1本 日本酒1合(180ml) ワイングラス2杯弱(約200ml) 7%缶チューハイ(350ml)1本 ウイスキーダブル1杯

6-2. 適切な体重管理とダイエット

脂肪肝が原因でγ-GTPが上昇している場合、体重を減らすことが最も効果的な治療法となります。

現時点の体重から5〜7%を減らすと、肝臓の脂肪が落ちるといわれています。例えば、体重70kgの人であれば3.5〜5kg、体重80kgの人であれば4〜5.6kgの減量が目安となります。

ただし、断食や極端な食事制限などの無理なダイエットは避けてください。急激な体重減少はかえって肝臓に負担をかけることがあります。また、食事を抜く習慣は胆汁の流れを悪くし、胆石のリスクを高める可能性もあります。

バランスの取れた食事を心がけながら、徐々に体重を減らしていくことが大切です。

6-3. 食生活の改善

γ-GTPを下げるためには、食生活の見直しが重要です。

糖質・炭水化物の摂りすぎに注意:白米、パン、麺類、お菓子、甘い飲み物などの糖質を過剰に摂取すると、使い切れなかったエネルギーが中性脂肪として肝臓に蓄積されます。特に「果糖ブドウ糖液糖」や「異性化糖」を含む清涼飲料水やジュースは、脂肪肝の原因となりやすいため注意が必要です。

脂質の質に気をつける:揚げ物、マーガリン、肉の脂身などに含まれる飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂取を控え、青魚に含まれるオメガ3脂肪酸やオリーブオイルなどの不飽和脂肪酸を積極的に摂るようにしましょう。

タンパク質を適切に摂取:肝臓の修復にはタンパク質が必要です。ダイエット中でもタンパク質の摂取を怠らないようにしましょう。鶏肉、大豆製品、卵、魚などがおすすめです。

食物繊維を積極的に:野菜、きのこ、海藻、豆類などの食物繊維は、血糖値の急激な上昇を抑え、脂肪の蓄積を防ぐ効果が期待できます。

6-4. 適度な運動

適度な運動は、脂肪肝の改善に効果的です。特に有酸素運動は、肝臓に蓄積した脂肪を燃焼させる効果があります。

ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動を1日30分程度、週に3日以上行うことが推奨されています。有酸素運動の効果は約48時間持続するとされているため、週3日を目安に継続することで効果が期待できます。

在宅勤務や外出控えにより運動不足に陥っている方は、日常生活の中で体を動かす機会を意識的に増やすことから始めてみましょう。エレベーターの代わりに階段を使う、一駅分歩くなど、無理のない範囲で活動量を増やすことが大切です。

6-5. 服薬内容の確認

現在服用している薬が原因でγ-GTPが上昇している可能性がある場合は、必ず医師に相談してください。自己判断で薬の服用を中止することは避けてください。

医師の判断により、薬の変更や減量が検討されることがあります。また、サプリメントや健康食品を使用している場合も、その内容を医師に伝えることが重要です。


7. 病院を受診すべきタイミングと検査内容

受診が推奨されるタイミング

以下のような場合は、医療機関の受診を検討してください。

γ-GTPが基準値を超えており、特に100 U/Lを超えている場合 禁酒しても数値が改善しない場合 γ-GTP以外の肝機能検査値(AST、ALT、ALP、ビリルビンなど)にも異常がある場合 倦怠感、黄疸、腹痛、体重減少などの症状がある場合 肥満、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がある場合

肝臓の病気は自覚症状が出にくいため、健康診断で異常を指摘された場合は「たまたま数値が高かっただけ」と放置せず、早めに専門医を受診することが大切です。

受診する診療科

肝臓のトラブルで受診する場合は、内科、特に消化器内科や肝臓内科を受診することをおすすめします。大きな病院であれば肝臓専門医がいることも多いです。

精密検査の内容

医療機関では、γ-GTP上昇の原因を特定するため、以下のような検査が行われます。

血液検査:AST、ALT、ALP、ビリルビン、アルブミンなどの詳しい肝機能検査に加え、B型・C型肝炎ウイルスの検査、自己免疫疾患の検査などが行われます。

腹部超音波検査(エコー検査):肝臓の形態、脂肪肝の有無、胆石の有無、腫瘍の有無などを非侵襲的に調べることができる検査です。脂肪肝がある場合、肝臓が白く輝いて見えます(脂肪肝の特徴的な所見)。

CT検査・MRI検査:超音波検査よりもさらに詳細な画像を得ることができ、腫瘍の評価や胆道系の詳しい観察に有用です。

エラストグラフィー検査:超音波やMRIを用いて肝臓の硬さ(線維化の程度)を数値化する検査です。肝硬変のリスク評価に役立ちます。

肝生検:肝臓に針を刺して組織の一部を採取し、顕微鏡で観察する検査です。NASHの確定診断や肝障害の重症度評価に用いられます。


8. よくある質問(Q&A)

Q1:γ-GTPが高いと指摘されましたが、自覚症状は全くありません。それでも病院に行くべきですか?

A:はい、受診をおすすめします。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、かなり病気が進行しても自覚症状が出にくい特徴があります。症状がないからといって安心はできません。健康診断でγ-GTPの異常が見つかったことは、肝臓からのSOSサインかもしれません。早めに原因を特定し、適切な対処を始めることが重要です。

Q2:お酒を全く飲まないのにγ-GTPが高いのはなぜですか?

A:お酒を飲まない方でもγ-GTPが上昇する原因はいくつかあります。最も多いのは脂肪肝(NAFLD)です。糖質や脂質の摂りすぎ、運動不足、肥満などにより肝臓に脂肪が蓄積すると、γ-GTPが上昇します。その他、薬剤の影響、胆道系の疾患、ウイルス性肝炎、自己免疫性肝疾患、女性の場合は更年期によるホルモンバランスの変化なども原因として考えられます。

Q3:禁酒すればγ-GTPはどのくらいで下がりますか?

A:個人差はありますが、禁酒によりγ-GTPは比較的速やかに低下します。γ-GTPの半減期は約2〜3週間とされており、この期間禁酒を続けることで数値は約半分に下がることが期待できます。2〜3ヶ月間禁酒を続ければ、正常範囲内まで回復する方も多いです。ただし、禁酒しても数値が改善しない場合は、アルコール以外の原因が考えられるため、医師に相談してください。

Q4:γ-GTPが高いと肝がんになりますか?

A:γ-GTPが高いことが直接肝がんを引き起こすわけではありません。しかし、γ-GTP上昇の原因となっている疾患(慢性肝炎、肝硬変、NASHなど)を放置すると、将来的に肝がんを発症するリスクが高まります。特にアルコール性肝障害やNASHは、肝硬変や肝がんに進行する可能性があるため、早期発見・早期治療が重要です。

Q5:γ-GTPを下げるのに良いサプリメントや食品はありますか?

A:特定のサプリメントや食品でγ-GTPが劇的に下がるというエビデンスはありません。最も効果的なのは、原因に応じた生活習慣の改善(禁酒・節酒、適切な食事、運動、体重管理)です。むしろ、一部のサプリメントや健康食品が肝臓に負担をかけ、γ-GTPを上昇させることがあるため、過剰な摂取には注意が必要です。サプリメントの使用については、医師に相談することをおすすめします。

Q6:γ-GTPとγ-GTは違うものですか?

A:いいえ、同じものを指します。以前は「γ-GTP(ガンマ・グルタミルトランスペプチダーゼ)」という名称が一般的でしたが、現在は国際的に「γ-GT(ガンマ・グルタミルトランスフェラーゼ)」という表記に統一されつつあります。健康診断の結果票では、施設によってどちらかの表記が使われています。


9. まとめ

γ-GTPは肝臓や胆道系の健康状態を知るための重要な指標です。数値が高い場合は、以下のポイントを押さえておきましょう。

γ-GTPの基準値は男性50 U/L以下、女性30 U/L以下が目安。100 U/Lを超える場合は医療機関への受診が推奨されます。

γ-GTPが上昇する主な原因は、アルコールの過剰摂取、脂肪肝(NAFLD)、薬剤性肝障害、胆道系疾患などです。お酒を飲まない人でも数値が上がることがあります。

肝臓は「沈黙の臓器」であり、自覚症状が出にくいのが特徴です。健康診断で異常を指摘されたら、症状がなくても放置せず、医療機関を受診しましょう。

γ-GTPを改善するためには、禁酒・節酒、適切な食事、運動習慣の改善、体重管理が基本となります。生活習慣を見直すことで、多くの場合は数値の改善が期待できます。

放置すると肝硬変や肝がんに進行するリスクがあります。早期発見・早期治療が何より大切です。

健康診断の結果は、自分の体からのメッセージです。γ-GTPの異常を「たかが数値」と軽視せず、生活習慣を見直す良いきっかけとして捉えてください。不安なことがあれば、お気軽に医療機関にご相談ください。


参考文献

γ-GTP – e-ヘルスネット(厚生労働省)

アルコールと肝臓病 – e-ヘルスネット(厚生労働省)

脂肪肝/NAFLD/NASH – 日本生活習慣病予防協会

代謝機能障害関連脂肪性肝疾患 – 肝炎情報センター

アルコール性肝障害 – 肝炎情報センター

「γ-GT(γ-GTP)」の検査について – 日本臨床検査専門医会

アルコール性肝炎 – 済生会

国民健康・栄養調査 γ-GT(γ-GTP)の平均値及び標準偏差 – e-Stat(政府統計の総合窓口)

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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