おでき・ニキビ・ほくろ・イボ

ニキビ跡は薬で治せる?処方薬・市販薬の種類と効果を皮膚科医が解説

ニキビが治った後に残る「ニキビ跡」に悩んでいる方は少なくありません。赤みや茶色いシミのような色素沈着、さらにはクレーター状の凹みなど、ニキビ跡にはさまざまなタイプがあり、それぞれに適した治療法や薬が異なります。「ニキビ跡は薬で治せるの?」「市販薬と処方薬はどう違うの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。本記事では、ニキビ跡の種類ごとに効果が期待できる外用薬や内服薬について、処方薬から市販薬まで幅広く解説します。ご自身のニキビ跡に合った薬を見つけ、美しい肌を目指すための参考にしてください。


目次

  1. ニキビ跡とは?種類と特徴を理解しよう
  2. ニキビ跡に効果的な処方薬(外用薬)
  3. ニキビ跡に効果的な処方薬(内服薬)
  4. ニキビ跡に使える市販薬
  5. ニキビ跡のタイプ別おすすめ治療法
  6. 薬を使用する際の注意点
  7. ニキビ跡治療の期間と効果の目安
  8. 薬だけでは改善が難しいニキビ跡の治療
  9. ニキビ跡を予防するためのスキンケア
  10. まとめ

ニキビ跡とは?種類と特徴を理解しよう

ニキビ跡とは、ニキビが炎症を起こした後に肌に残る痕跡のことを指します。ニキビが治癒する過程で、肌の組織がダメージを受けることで発生します。ニキビ跡を効果的に治療するためには、まずご自身のニキビ跡がどのタイプに該当するのかを正しく理解することが大切です。

赤みタイプのニキビ跡

赤みタイプのニキビ跡は、ニキビの炎症によって毛穴周辺の毛細血管が拡張したり、増生したりすることで生じます。炎症後紅斑とも呼ばれ、ニキビの炎症が治まった後も皮膚が赤く見える状態が続きます。表面上はニキビが治っているように見えても、皮膚の内部では炎症が完全には収まっていないことがあります。

赤みタイプのニキビ跡は、比較的軽度な場合は時間の経過とともに自然に改善することもありますが、半年以上経っても赤みが引かない場合は、炎症によって皮膚が薄くなっている可能性があります。この場合は、薬物療法や美容皮膚科での治療が効果的です。

色素沈着タイプのニキビ跡

色素沈着タイプのニキビ跡は、ニキビの炎症によってメラニン色素が過剰に生成され、肌に沈着することで発生します。茶色やこげ茶色のシミのように見え、炎症後色素沈着とも呼ばれます。紫外線を浴びることでメラニンの生成がさらに促進されるため、色素沈着が悪化しやすい特徴があります。

色素沈着タイプのニキビ跡は、肌のターンオーバー(新陳代謝)によってメラニンが排出されることで、徐々に薄くなっていきます。しかし、ターンオーバーが乱れていたり、メラニンの生成が続いていたりすると、自然治癒に時間がかかる場合があります。美白効果のある薬やターンオーバーを促進する治療が有効です。

クレータータイプ(凹凸)のニキビ跡

クレータータイプのニキビ跡は、炎症の強いニキビによって肌の真皮層までダメージを受け、皮膚組織が破壊されることで生じる凹みです。萎縮性瘢痕とも呼ばれ、肌表面がデコボコした状態になります。クレーターには、アイスピック型(細く深い凹み)、ローリング型(浅く広い波打つような凹み)、ボックスカー型(底が平坦で垂直に切り立った凹み)などの種類があります。

クレータータイプのニキビ跡は、皮膚の深い層までダメージが及んでいるため、通常の肌のターンオーバーでは修復が困難です。そのため、薬物療法だけでは改善が難しく、フラクショナルレーザーやダーマペンなどの美容医療による治療が必要となることがほとんどです。

ニキビ跡に効果的な処方薬(外用薬)

ニキビ跡の治療に使用される処方薬の外用薬は、皮膚科や美容皮膚科で医師の診察を受けた上で処方されます。市販薬と比較して有効成分の濃度が高く、より高い効果が期待できる反面、副作用のリスクもあるため、医師の指導のもとで正しく使用することが重要です。

トレチノイン(レチノイン酸)

トレチノインは、ビタミンA(レチノール)の誘導体で、生理活性はビタミンAの約50〜100倍といわれています。米国ではFDA(アメリカ食品医薬品局)にシミやニキビの治療薬として認可されており、多くの患者さまに使用されています。日本では保険適用外となりますが、美容皮膚科などで処方を受けることができます。

トレチノインの主な作用として、まず表皮のターンオーバー(新陳代謝)の促進が挙げられます。通常約4週間かかるターンオーバーを約2週間に早め、表皮の基底層にあるメラニン色素を速やかに排出します。これにより、色素沈着タイプのニキビ跡の改善が期待できます。また、皮脂腺の働きを抑えて皮脂分泌を減少させる効果があり、ニキビの予防にも役立ちます。さらに、真皮層のコラーゲン生成を促進する効果もあり、肌のハリやシワの改善も期待できます。

トレチノインを使用すると、使い始めから数日〜2週間程度で赤みや皮むけ、かさつきなどの反応(レチノイド反応またはA反応)が現れることがあります。これは薬が効いている証拠であり、通常は継続使用することで徐々に落ち着いていきます。ただし、妊娠中や妊娠の可能性がある方は使用できません。また、熱や紫外線で分解されやすいため、冷蔵庫で保管し、使用中は必ず日焼け止めを塗ることが大切です。

ハイドロキノン

ハイドロキノンは、「肌の漂白剤」とも呼ばれる強力な美白成分です。メラニン色素を作る酵素であるチロシナーゼの働きを阻害し、メラニンの生成を抑制します。さらに、メラニン色素を作る細胞(メラノサイト)に対しても作用し、既存のメラニンを還元(淡色化)する効果もあります。

ハイドロキノンの美白効果は、一般的な美白成分であるアルブチンやコウジ酸、ビタミンCなどの60〜100倍ともいわれており、色素沈着タイプのニキビ跡の改善に高い効果が期待できます。医療機関で処方されるハイドロキノンは通常4%程度の濃度で、市販の化粧品に配合されているもの(2%以下)よりも高濃度です。

ハイドロキノンは皮膚への刺激やアレルギー反応のリスクがあるため、使用前にパッチテストを行うことが推奨されます。また、使用中は紫外線によってかえって色素沈着が起こりやすくなるため、日焼け止めの使用が必須です。さらに、ハイドロキノンは不安定な成分であるため、冷暗所で保管し、開封後は早めに使い切る必要があります。

トレチノイン・ハイドロキノン併用療法

トレチノインとハイドロキノンを併用する治療法は、両者の相乗効果により、色素沈着タイプのニキビ跡に対して非常に高い効果が期待できます。この併用療法は「東大方式」とも呼ばれ、シミや色素沈着の治療として広く行われています。

トレチノインがターンオーバーを促進してメラニン色素を外に押し出す一方、ハイドロキノンが新たなメラニンの生成を抑制します。この作用により、表皮がメラニン色素の少ないきれいな細胞に置き換わっていきます。

具体的な使用方法としては、まず洗顔後に化粧水で肌を整え、トレチノインを色素沈着のある部分にのみ薄く塗布します。トレチノインが乾いたら、その上からハイドロキノンをやや広めの範囲に塗布します。通常、1クールの治療期間は2〜3ヶ月程度で、その後は1〜2ヶ月の休薬期間を設けます。

アダパレン(ディフェリンゲル)

アダパレンは、レチノイド様作用を持つ外用薬で、日本では「ディフェリンゲル」という商品名で保険適用の処方薬として使用されています。主にニキビ治療に用いられますが、毛穴の詰まりを改善し、新たなニキビの発生を予防することで、結果的にニキビ跡の予防にもつながります。

アダパレンは、表皮の角化を正常化して毛穴の詰まりを解消する作用があります。これにより、面皰(白ニキビ・黒ニキビ)の形成を抑制し、炎症性ニキビへの進行を防ぎます。また、抗炎症作用も持っており、ニキビの炎症を軽減する効果もあります。

アダパレンを使用すると、トレチノインと同様に使い始めに皮膚の乾燥やかゆみ、赤みなどの刺激症状が現れることがありますが、通常2週間程度で軽減していきます。副作用を軽減するために、保湿剤との併用や少量から始めることが推奨されます。なお、アダパレンは妊娠中や妊娠の可能性がある方には使用できません。

過酸化ベンゾイル(ベピオゲル)

過酸化ベンゾイルは、強い酸化作用を持つ外用薬で、日本では「ベピオゲル」という商品名で保険適用の処方薬として使用されています。主にニキビ治療に用いられ、ニキビの原因菌であるアクネ菌に対して殺菌作用を発揮します。

過酸化ベンゾイルの特徴は、現在のところ耐性菌が発見されていないことです。抗生物質とは異なり、長期使用しても耐性菌を作らないため、維持療法にも適しています。また、角質を剥がすケミカルピーリング様の作用もあり、毛穴の詰まりを改善する効果もあります。

過酸化ベンゾイルには漂白作用があるため、髪や衣服に付着しないよう注意が必要です。また、皮膚の乾燥や刺激感などの副作用が現れることがありますが、保湿剤を先に塗布してから使用することで軽減できます。まれにアレルギー性接触皮膚炎が生じることがあるため、異常を感じたら使用を中止し、医師に相談してください。

ビタミンC誘導体外用薬

ビタミンC誘導体は、不安定なビタミンCを安定化させ、肌への浸透性を高めた成分です。日本皮膚科学会の尋常性痤瘡治療ガイドラインでも、炎症性皮疹や炎症後の紅斑に対してビタミンC外用が選択肢の一つとして推奨されています。

ビタミンC誘導体には、メラニン生成を抑制する作用、既存のメラニンを還元(淡色化)する作用、抗酸化作用、コラーゲン生成促進作用などがあります。これらの作用により、色素沈着タイプのニキビ跡の改善や、肌全体のトーンアップが期待できます。

医療機関で処方されるビタミンC誘導体ローションは、市販品よりも高濃度であることが多く、イオン導入やエレクトロポレーションなどの施術と組み合わせることで、より高い浸透効果が得られます。

ニキビ跡に効果的な処方薬(内服薬)

ニキビ跡の治療には、外用薬だけでなく内服薬も効果的です。内服薬は体の内側から作用するため、全身的な効果が期待できます。特に色素沈着タイプのニキビ跡には、ビタミン剤やトラネキサム酸などの内服が有効です。

シナール配合錠

シナール配合錠は、アスコルビン酸(ビタミンC)とパントテン酸カルシウム(ビタミンB5)を配合した内服薬です。炎症後の色素沈着に対して保険適用があり、皮膚科でよく処方される薬の一つです。

アスコルビン酸には、メラニン色素の産生を抑制する作用と、既存のメラニン色素を還元(淡色化)する作用があります。パントテン酸カルシウムはアスコルビン酸の働きを高める効果があり、両者を配合することで相乗効果が期待できます。また、抗酸化作用によって皮膚細胞の老化を防ぐ効果や、コラーゲン生成を促進して肌のハリを保つ効果も期待できます。

シナールの炎症後色素沈着に対する有効率は86.8%と報告されており、継続的に服用することで効果が実感できます。ただし、即効性はなく、効果を感じるまでに1〜3ヶ月程度かかることが一般的です。副作用は比較的少なく、水溶性ビタミンであるため過剰に摂取しても尿中に排泄されますが、まれに胃腸症状(下痢、胃部不快感など)が現れることがあります。

トラネキサム酸(トランサミン)

トラネキサム酸は、もともと止血剤や抗炎症剤として使用されてきた薬ですが、メラニン生成に関与するプラスミンの働きを阻害することで、美白効果も発揮します。肝斑の治療薬として知られていますが、ニキビ跡の色素沈着にも効果が期待できます。

トラネキサム酸はシナールとは異なる作用機序を持っているため、両者を併用することでより高い美白効果が期待できます。通常、1日2〜3回、食後に服用します。

トラネキサム酸は比較的安全性の高い薬ですが、血栓形成のリスクがあるため、血栓症の既往がある方や、ピルを服用している方は使用できない場合があります。また、長期間の服用については医師と相談の上で決める必要があります。

ユベラ(トコフェロール酢酸エステル)

ユベラは、ビタミンEを主成分とする内服薬です。ビタミンEには血行促進作用があり、肌のターンオーバーを整える効果が期待できます。これにより、赤みのあるニキビ跡や色素沈着の改善をサポートします。

ユベラには抗酸化作用もあり、活性酸素による細胞のダメージを防ぐ効果があります。また、ビタミンCと併用することで、ビタミンCの抗酸化作用を高める相乗効果も期待できます。

ユベラは脂溶性ビタミンであるため、食事と一緒に服用することで吸収が良くなります。副作用は比較的少ないですが、過剰摂取は避けるべきです。

漢方薬

ニキビやニキビ跡の治療には、漢方薬も選択肢の一つです。日本皮膚科学会の尋常性痤瘡治療ガイドラインでは、他の治療が無効あるいは実施できない場合に、荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)、清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)などが選択肢として挙げられています。

漢方薬は体質改善を目的として使用され、炎症を抑えたり、血行を促進したりする効果が期待できます。特に桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は血行を良くする作用があり、ニキビ跡の改善に役立つ可能性があります。

漢方薬は体質によって効果が異なるため、医師や漢方の専門家に相談の上で選択することが大切です。また、効果が現れるまでに時間がかかることが多いため、継続的な服用が必要です。

ニキビ跡に使える市販薬

処方薬ほどの効果は期待できませんが、市販薬でもニキビ跡のケアを行うことができます。ドラッグストアなどで手軽に購入できるため、軽度のニキビ跡のセルフケアや、クリニックでの治療と併用するホームケアとして活用できます。

ビタミンC配合の飲み薬

市販のビタミンC配合の飲み薬には、ハイシーホワイトやトランシーノホワイトCクリア、ハイチオールCホワイティアなどがあります。これらの製品にはビタミンCに加えて、L-システインやビタミンB群などが配合されており、メラニンの生成を抑制し、肌のターンオーバーを促進する効果が期待できます。

L-システインは、メラニンの生成を抑制するとともに、肌のターンオーバーを正常化し、既存のメラニンの排出を促進する作用があります。ビタミンCと併用することで相乗効果が得られます。

市販のビタミン剤は処方薬と比較すると有効成分の含有量が少ないことが多いですが、継続して服用することで一定の効果が期待できます。

ヘパリン類似物質配合の塗り薬

ヘパリン類似物質は、保湿作用と血行促進作用を持つ成分です。血行を促進することで肌のターンオーバーを活性化し、ニキビ跡の改善をサポートします。また、高い保湿効果により、肌のバリア機能を高める効果も期待できます。

市販のヘパリン類似物質配合クリームには、HPクリームやヘパリオクリームなどがあります。これらの製品の中には、グリチルリチン酸ジカリウム(抗炎症成分)やビタミンEなどを併せて配合しているものもあり、赤みのあるニキビ跡のケアに適しています。

ヘパリン類似物質は比較的刺激が少なく、敏感肌の方でも使いやすい成分ですが、出血傾向がある方は使用を避けるべきです。

アットノン ニキビケアジェル

小林製薬のアットノンシリーズには、「ニキビケアジェル」と記載された製品があり、ニキビ跡のケアを目的とした数少ない市販薬の一つです。ビタミンC誘導体、ヘパリン類似物質、グリチルリチン酸ジカリウム(GK2)の3つの有効成分が配合されています。

ビタミンC誘導体がメラニンの生成を抑制し、ヘパリン類似物質が血行を促進してターンオーバーを活性化、グリチルリチン酸ジカリウムが炎症を抑える働きをします。これらの成分の複合的な作用により、赤みや色素沈着タイプのニキビ跡の改善が期待できます。

使用方法は1日2回、朝晩の洗顔後に患部に塗布します。また、この製品にはニキビの原因菌を殺菌する成分も含まれているため、繰り返すニキビの予防にも役立ちます。

メラノCC

ロート製薬のメラノCCは、活性型ビタミンCを配合したスキンケアシリーズです。美容液やクリームなど複数の製品がラインナップされています。

メラノCCの美容液には、美白有効成分である活性型ビタミンC(アスコルビン酸)が配合されており、シミやそばかすの予防、ニキビ跡の色素沈着の改善が期待できます。また、血行促進成分のビタミンE誘導体、殺菌成分のイソプロピルメチルフェノール、抗炎症成分のグリチルリチン酸ジカリウムも配合されており、ニキビの予防にも使用できます。

使用感はベタつきが少なく、毎日のスキンケアに取り入れやすい製品です。ただし、純粋なビタミンCは不安定な成分であるため、開封後は早めに使い切ることが推奨されます。

ニキビ跡のタイプ別おすすめ治療法

ニキビ跡の治療は、タイプによって効果的な方法が異なります。ここでは、各タイプのニキビ跡に対するおすすめの治療法をまとめます。

赤みタイプのニキビ跡

赤みタイプのニキビ跡には、炎症を抑える作用と血行を促進する作用を持つ薬が効果的です。外用薬としてはビタミンC誘導体やヘパリン類似物質配合のクリーム、内服薬としてはシナールやユベラなどが選択肢として挙げられます。

軽度の赤みであれば、市販薬でのセルフケアでも改善が期待できます。しかし、半年以上経っても赤みが引かない場合や、赤みが濃い場合は、美容皮膚科でのレーザー治療やIPL(光治療)なども検討すると良いでしょう。

色素沈着タイプのニキビ跡

色素沈着タイプのニキビ跡には、メラニンの生成を抑制し、既存のメラニンを排出する作用を持つ薬が効果的です。外用薬としてはトレチノイン・ハイドロキノン併用療法が最も効果が高く、内服薬としてはシナールやトラネキサム酸が有効です。

市販薬でケアする場合は、ビタミンC配合の飲み薬やビタミンC誘導体配合の化粧品を継続して使用することで、徐々に改善が期待できます。ただし、紫外線対策を怠ると色素沈着が悪化するため、日焼け止めの使用は必須です。

クレータータイプのニキビ跡

クレータータイプのニキビ跡は、皮膚の深い層までダメージが及んでいるため、薬物療法だけでは改善が困難です。フラクショナルレーザー、ダーマペン、TCAピーリング、サブシジョンなどの美容医療による治療が必要となります。

これらの治療は、皮膚に微細な傷をつけることで、肌の自己修復力(創傷治癒機能)を活性化させ、コラーゲンの生成を促します。複数回の治療を重ねることで、凹みが徐々に改善していきます。

クレータータイプのニキビ跡がある場合は、早めに皮膚科や美容皮膚科を受診し、適切な治療法について相談することをおすすめします。

薬を使用する際の注意点

ニキビ跡の治療に薬を使用する際は、いくつかの注意点があります。正しい使い方を守ることで、効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑えることができます。

医師の指示を守る

処方薬を使用する場合は、必ず医師の指示に従ってください。用量や使用頻度、使用期間などを自己判断で変更すると、効果が得られなかったり、副作用が強く現れたりする可能性があります。特にトレチノインやハイドロキノンなどの薬は、正しい使い方をしないと皮膚トラブルの原因になることがあります。

紫外線対策を徹底する

ニキビ跡の治療中は、紫外線対策が非常に重要です。特にトレチノインやハイドロキノンを使用している場合、肌が紫外線に対して敏感になっているため、日焼け止めの使用は必須です。日焼け止めはSPF30以上、PA+++以上のものを選び、2〜3時間ごとに塗り直すことが推奨されます。

低濃度から始める

外用薬を初めて使用する際は、なるべく低濃度のものから始めることをおすすめします。急に高濃度のものを使用したり、1日に何度も塗ったりすると、皮膚に強い刺激が生じて炎症を起こす可能性があります。肌の状態を見ながら、徐々に濃度や使用頻度を上げていくことが大切です。

内服薬は水またはぬるま湯で服用する

内服薬は、水またはぬるま湯で服用するのが基本です。ジュースやコーヒー、アルコールなどで服用すると、薬の吸収に影響が出たり、飲み物の成分と薬の成分が反応して効果が弱まったりする可能性があります。

自己判断で中止しない

薬の効果が現れるまでには時間がかかることが多いため、すぐに効果が見られないからといって自己判断で使用を中止しないでください。特にビタミン剤などは、効果を実感するまでに数ヶ月かかることがあります。効果や副作用について気になることがあれば、医師に相談しましょう。

ニキビ跡治療の期間と効果の目安

ニキビ跡の治療期間は、ニキビ跡のタイプや重症度、選択する治療法によって大きく異なります。一般的な目安として、以下のような期間が必要です。

赤みタイプのニキビ跡

軽度の赤みであれば、適切なスキンケアと内服薬・外用薬の使用により、3〜6ヶ月程度で改善が見られることが多いです。ただし、皮膚が薄くなって血管が透けて見えている場合は、レーザー治療などを併用しても完全に消えるまでには1年以上かかることもあります。

色素沈着タイプのニキビ跡

トレチノイン・ハイドロキノン併用療法の場合、1クール(2〜3ヶ月)で効果が現れることが多いですが、重度の色素沈着の場合は2〜3クール(半年〜1年程度)の治療が必要になることがあります。内服薬のみでケアする場合は、効果が現れるまでに3〜6ヶ月以上かかることが一般的です。

クレータータイプのニキビ跡

クレータータイプのニキビ跡は、治療が最も難しく、時間がかかります。フラクショナルレーザーやダーマペンなどの治療を5〜10回程度繰り返す必要があり、治療期間は1〜2年以上になることもあります。また、凹みの深さや範囲によっては、完全に平らにすることが難しい場合もあります。

薬だけでは改善が難しいニキビ跡の治療

クレータータイプのニキビ跡や、重度の色素沈着、長期間残存している赤みなど、薬物療法だけでは改善が難しいニキビ跡もあります。このような場合は、美容皮膚科での施術を検討することをおすすめします。

フラクショナルレーザー

フラクショナルレーザーは、皮膚に微細な穴を多数開けることで、肌の自己修復力を活性化させる治療です。コラーゲンやエラスチンの生成が促進され、凹みのあるクレータータイプのニキビ跡の改善に効果的です。複数回の治療を重ねることで、徐々に肌表面が平らになっていきます。

ダーマペン

ダーマペンは、極細の針で皮膚に微細な穴を開けることで、コラーゲンの生成を促進する治療です。フラクショナルレーザーと同様の効果が期待でき、クレータータイプや色素沈着タイプのニキビ跡に有効です。成長因子などの美容成分と組み合わせることで、より高い効果が得られます。

ケミカルピーリング

ケミカルピーリングは、酸を含む薬剤を皮膚に塗布して古い角質を除去する治療です。日本皮膚科学会のガイドラインでは、グリコール酸やサリチル酸マクロゴールによるケミカルピーリングが、炎症性皮疹や面皰に対する選択肢の一つとして推奨されています。ターンオーバーを促進することで、色素沈着タイプのニキビ跡の改善や、ニキビの予防に効果的です。

IPL(光治療)

IPL(Intense Pulsed Light)は、特定の波長の光を照射することで、赤みや色素沈着を改善する治療です。光のエネルギーがメラニンや血管内のヘモグロビンに吸収され、色素沈着や赤みを軽減します。ダウンタイムが少なく、比較的手軽に受けられる治療です。

ニキビ跡を予防するためのスキンケア

ニキビ跡の治療も大切ですが、新たなニキビ跡ができないように予防することも重要です。以下のポイントを意識したスキンケアを心がけましょう。

適切な洗顔

洗顔は1日2回、朝と夜に行うのが基本です。刺激の少ない洗顔料をたっぷり泡立てて、優しくなでるように洗いましょう。ゴシゴシこすったり、1日に何度も洗顔したりすると、肌に刺激を与えてしまいます。

十分な保湿

洗顔後は化粧水と乳液、またはクリームで十分に保湿しましょう。肌が乾燥した状態が続くと、バリア機能が低下してダメージを受けやすくなり、ターンオーバーが乱れる可能性があります。ノンコメドジェニックテスト済みの製品を選ぶと、毛穴を詰まらせにくいためおすすめです。

紫外線対策

紫外線はメラニンの生成を促進し、色素沈着を悪化させる原因となります。外出時には日焼け止めを塗り、帽子や日傘なども活用して紫外線対策を徹底しましょう。曇りの日や冬場でも紫外線は降り注いでいるため、年間を通じた対策が必要です。

ニキビを潰さない

ニキビを自分で潰すと、周囲に雑菌が広がって炎症が悪化したり、皮膚組織にダメージを与えてニキビ跡が残りやすくなったりします。ニキビができた場合は、むやみに触らず、適切な治療を受けるようにしましょう。

生活習慣の改善

バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレス管理なども肌の健康に影響します。偏った食生活や睡眠不足、過度なストレスはホルモンバランスの乱れを招き、ニキビができやすくなる原因となります。

まとめ

ニキビ跡の治療には、タイプに応じた適切な薬や治療法を選択することが大切です。赤みタイプや色素沈着タイプのニキビ跡は、外用薬や内服薬による薬物療法で改善が期待できます。トレチノイン・ハイドロキノン併用療法やビタミンC誘導体、シナールなどの薬が有効であり、市販薬でもヘパリン類似物質やビタミンC配合の製品でケアが可能です。

一方、クレータータイプのニキビ跡は、薬物療法だけでは改善が難しく、フラクショナルレーザーやダーマペンなどの美容医療による治療が必要となります。いずれのタイプでも、早期に適切な治療を開始することで、より良い結果が期待できます。

ニキビ跡でお悩みの方は、まずは皮膚科や美容皮膚科を受診し、ご自身のニキビ跡のタイプを正しく診断してもらった上で、最適な治療法を相談することをおすすめします。アイシークリニック渋谷院では、患者さま一人ひとりの肌状態に合わせた最適な治療プランをご提案しております。ニキビ跡でお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

よくある質問

ニキビ跡は市販薬で治せますか?

赤みタイプや軽度の色素沈着タイプのニキビ跡であれば、ビタミンC配合の飲み薬やヘパリン類似物質配合のクリームなどの市販薬でケアすることで、改善が期待できます。ただし、市販薬は処方薬と比べて有効成分の濃度が低いため、効果が現れるまでに時間がかかることがあります。また、クレータータイプのニキビ跡は市販薬では改善が困難なため、美容皮膚科での治療が必要です。

ニキビ跡の薬はどのくらいの期間使用すれば効果が出ますか?

薬の種類やニキビ跡のタイプによって異なりますが、一般的にビタミン剤などの内服薬は効果を実感するまでに1〜3ヶ月程度かかります。トレチノイン・ハイドロキノン併用療法の場合は、1クール(2〜3ヶ月)で効果が現れることが多いです。色素沈着が重度の場合は、複数クールの治療が必要になることもあります。自己判断で途中で中止せず、医師の指示に従って継続することが大切です。

トレチノインやハイドロキノンは保険適用されますか?

トレチノインやハイドロキノンは、日本では保険適用外(自由診療)となります。美容皮膚科などで処方を受けることができますが、費用は全額自己負担となります。一方、シナール配合錠は炎症後の色素沈着に対して保険適用があり、皮膚科で保険診療として処方を受けることが可能です。治療費用については、事前にクリニックに確認することをおすすめします。

ニキビ跡の薬を使用中に日焼けしてしまいました。どうすればいいですか?

トレチノインやハイドロキノンなどの薬を使用中に日焼けをすると、色素沈着が悪化したり、薬による刺激が強くなったりする可能性があります。日焼けしてしまった場合は、まず薬の使用を一時中断し、肌を冷やして炎症を抑えてください。その後、速やかに医師に相談し、肌の状態を診てもらった上で、治療の再開時期や方法について指示を仰ぎましょう。

妊娠中や授乳中でもニキビ跡の薬は使えますか?

トレチノインは妊娠中や妊娠の可能性がある方、授乳中の方は使用できません。また、アダパレン(ディフェリンゲル)も妊娠中は禁忌となっています。一方、シナール配合錠はビタミン剤であり、妊娠中や授乳中のビタミン補給にも使用されることがあります。ただし、いずれの薬も使用前に必ず医師に妊娠・授乳の状況を伝え、安全性を確認してから使用してください。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
電話予約
0120-335-661
1分で入力完了
簡単Web予約