ニキビが治ったあとに残る赤みや茶色いシミ、凹凸のあるクレーター状の肌は、多くの方が経験する悩みです。「市販の化粧品でケアしているけれどなかなか改善しない」「皮膚科に行けば保険で治療できるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。ニキビ跡は、その種類や程度によって適切な治療法が異なり、症状によっては皮膚科での専門的な治療が必要となるケースもあります。本コラムでは、ニキビ跡の種類や原因、皮膚科で受けられる治療法、セルフケアのポイントまで、詳しく解説します。ニキビ跡にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- ニキビ跡とは?発症のメカニズムを解説
- ニキビ跡の種類と特徴
- ニキビ跡は皮膚科で治療できる?保険適用の範囲
- 皮膚科・美容皮膚科で受けられるニキビ跡の治療法
- クレーター状のニキビ跡に対する治療法
- ニキビ跡を防ぐためのセルフケアと生活習慣
- ニキビ跡治療を受ける際の注意点と皮膚科選びのポイント
- よくある質問
- まとめ
ニキビ跡とは?発症のメカニズムを解説
ニキビ跡とは、ニキビの炎症が治まったあとに皮膚に残る変化のことを指します。医学的には「痤瘡後瘢痕(ざそうごはんこん)」や「炎症後色素沈着」「炎症後紅斑」などと呼ばれ、ニキビの炎症の程度や持続期間、治療の遅れ、ニキビを潰してしまったことなど、さまざまな要因によって生じます。
ニキビからニキビ跡になるまでのプロセス
ニキビは、毛穴に皮脂や古い角質が詰まることから始まります。毛穴内で皮脂を栄養源とするアクネ菌(Cutibacterium acnes)が増殖すると炎症が起こり、赤く腫れた状態になります。この炎症が軽度であれば、ニキビが治癒したあとは時間の経過とともに皮膚は元の状態に戻ります。しかし、炎症が重度であったり、長期間続いたりした場合は、皮膚の真皮層にまでダメージが及び、組織の修復過程で異常が生じてニキビ跡として残ってしまいます。
表皮は約28日周期で細胞が入れ替わる「ターンオーバー」によって再生しますが、真皮層にはこのような再生機能がありません。そのため、真皮までダメージを受けた場合は、自然治癒が困難となり、クレーター状の凹みやケロイド状の盛り上がりといった永続的なニキビ跡として残る可能性があります。
ニキビ跡が残りやすい人の特徴
ニキビ跡が残りやすいかどうかは、個人の肌質や体質、生活習慣なども関係しています。ニキビを手で触ったり潰したりする習慣がある人、炎症が重症化しやすい体質の人、ケロイド体質の人は特に注意が必要です。また、ニキビができた段階で適切な治療を受けずに放置していると、炎症が長引いて真皮にまでダメージが及び、ニキビ跡として残りやすくなります。日本皮膚科学会のガイドラインでも、軽症であってもニキビは瘢痕を形成する可能性があるため、早期の積極的な治療が重要であると強調されています。
ニキビ跡の種類と特徴
ニキビ跡にはいくつかの種類があり、それぞれ原因や治療法が異なります。自分のニキビ跡がどのタイプに該当するかを把握することで、適切な対処法を選択できるようになります。主なニキビ跡の種類は、「赤み」「色素沈着」「クレーター(凹み)」「ケロイド・肥厚性瘢痕(盛り上がり)」の4つです。
赤みのあるニキビ跡(炎症後紅斑)
赤みのあるニキビ跡は「炎症後紅斑(えんしょうごこうはん)」とも呼ばれ、ニキビ跡のなかでもっとも多くみられる症状です。ニキビの炎症によって毛細血管が拡張したり、傷ついた組織を修復しようとして新たに毛細血管が増生したりすることで、ニキビが治ったあとも肌に赤みが残ります。
赤みのあるニキビ跡は、軽度であれば肌のターンオーバーに伴って数か月から半年程度で自然に薄くなっていくことが多いです。ただし、炎症が皮膚の深い部分にまで及んでいた場合は、赤みが長期間残ることがあります。赤みが1年以上続く場合や、なかなか改善しない場合は、皮膚科を受診して適切な治療を検討することをおすすめします。
色素沈着のあるニキビ跡(炎症後色素沈着)
茶色やこげ茶色のシミのようなニキビ跡は「炎症後色素沈着(えんしょうごしきそちんちゃく)」と呼ばれます。ニキビの炎症によってメラノサイト(色素細胞)が刺激を受け、メラニン色素が過剰に生成されることで起こります。これは、やけどや虫刺されのあとにできる茶色いシミと同じメカニズムです。
炎症後色素沈着は、通常は炎症後1か月頃に色のピークを迎え、その後は肌のターンオーバーとともに徐々に薄くなっていきます。個人差はありますが、3か月から半年、長い場合は1年以上かかることもあります。紫外線を浴びると色素沈着が悪化しやすいため、日頃から紫外線対策を徹底することが重要です。
クレーター状のニキビ跡(萎縮性瘢痕)
肌に凹みや凸凹が残るクレーター状のニキビ跡は「萎縮性瘢痕(いしゅくせいはんこん)」と呼ばれます。ニキビの炎症が真皮層にまで及び、皮膚組織が破壊されたり、傷の修復過程で瘢痕組織が形成されたりすることで生じます。真皮層にはターンオーバー機能がないため、クレーター状のニキビ跡は自然治癒が非常に難しく、セルフケアだけでの改善は困難です。
クレーター状のニキビ跡は、形状によってさらに3つのタイプに分類されます。開口部は小さいが奥に深い「アイスピック型」、境界がはっきりして底が平らな「ボックスカー型」、境界がなだらかで波打っている「ローリング型」です。それぞれのタイプによって適した治療法が異なるため、皮膚科で正確に診断を受けることが重要です。
ケロイド・肥厚性瘢痕(盛り上がったニキビ跡)
ニキビ跡が赤く盛り上がった状態になるのが「ケロイド」や「肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)」です。傷を修復する過程でコラーゲンが過剰に産生され、皮膚が盛り上がってしまう状態です。特にフェイスラインや顎、背中、胸などに生じやすく、ケロイド体質の方に起こりやすい傾向があります。
ケロイドや肥厚性瘢痕は、自然に改善することは難しく、専門的な治療が必要となります。ケロイド体質と診断された場合は、ステロイド局所注射などの治療が保険適用で受けられることがあります。
ニキビ跡は皮膚科で治療できる?保険適用の範囲
ニキビ跡の治療を検討している方にとって、気になるのは「保険が適用されるかどうか」ではないでしょうか。結論から言うと、ニキビ跡の治療は原則として保険適用外(自由診療)となります。これは、ニキビ跡を治すことが「見た目を改善するための美容目的の治療」とみなされるためです。
保険適用となる治療
現在進行形でニキビがある場合は、保険診療でニキビ治療を受けることができます。保険適用のニキビ治療には、外用抗菌薬(ダラシンTゲル、アクアチムなど)、アダパレン(ディフェリンゲル)、過酸化ベンゾイル(ベピオゲル)、これらの配合剤、抗生物質の内服薬、ビタミン剤の内服、漢方薬、面皰圧出(専用器具で毛穴の詰まりを除去する処置)などがあります。これらの治療によってニキビの炎症を早期に抑えることで、ニキビ跡の形成を予防できる可能性があります。
また、ニキビ跡のなかでもケロイドや肥厚性瘢痕については、皮膚科医によってケロイド体質と診断された場合、内服薬の処方やステロイド局所注射などが保険適用で受けられることがあります。
保険適用外(自由診療)となる治療
レーザー治療、ケミカルピーリング、ダーマペン、光治療(IPL)、イオン導入などの治療は、ニキビ跡の改善を目的とした美容医療に分類されるため、保険適用外となります。これらの治療は美容皮膚科や美容クリニックで受けることができ、費用は全額自己負担となります。
保険適用のニキビ治療は、初診料や診察料、薬代を含めても1回あたり1,000円から3,000円程度で収まることが多いですが、自由診療のニキビ跡治療は施術内容や回数によって費用が大きく異なります。治療を検討する際は、事前に費用や治療期間について十分に説明を受けることが大切です。
皮膚科・美容皮膚科で受けられるニキビ跡の治療法
ニキビ跡の治療法は、ニキビ跡の種類や程度、患者さまの肌質や希望によって選択されます。ここでは、皮膚科や美容皮膚科で受けられる主なニキビ跡治療について解説します。
ケミカルピーリング
ケミカルピーリングは、酸性の薬剤を肌に塗布することで古い角質を取り除き、肌のターンオーバーを促進する治療法です。グリコール酸、サリチル酸マクロゴール、乳酸などの薬剤が用いられます。ニキビの予防効果に加え、ニキビ跡の赤みや色素沈着の改善にも効果が期待できます。
日本皮膚科学会のガイドラインでも、ケミカルピーリングはニキビ治療において推奨される治療法のひとつとして位置づけられています。中等度のニキビで平均6回、重度のニキビで平均10回程度の施術が目安とされており、2週間から4週間おきに継続して行うことで効果が現れます。
ただし、ケミカルピーリングは表皮に作用する治療であるため、深いクレーター状のニキビ跡には効果が限定的です。赤みや色素沈着タイプのニキビ跡、軽度の凹凸には効果的ですが、重度のクレーターには他の治療法との併用が検討されます。
光治療(IPL・フォトフェイシャル)
光治療は、特殊な光(IPL:Intense Pulsed Light)を肌に照射することで、メラニン色素やヘモグロビンに作用し、色素沈着や赤みを改善する治療です。また、真皮層のコラーゲン産生を促進する効果もあり、肌のハリや弾力の改善も期待できます。
光治療はダウンタイムが比較的少なく、施術直後からメイクが可能な場合がほとんどです。ニキビ跡の赤みや色素沈着に効果的で、複数回の施術を重ねることで徐々に改善していきます。
イオン導入・エレクトロポレーション
イオン導入は、微弱な電流を用いてビタミンCやトラネキサム酸などの有効成分を肌の深部まで浸透させる治療法です。エレクトロポレーションは、電気パルスによって一時的に細胞膜に小さな孔を開け、より大きな分子の有効成分も浸透させることができます。
ビタミンCにはメラニン生成抑制作用やコラーゲン生成促進作用があり、色素沈着の改善や肌のハリ向上に効果が期待できます。トラネキサム酸は炎症後の色素沈着に有効とされています。これらの治療は単独で行うこともありますが、ケミカルピーリングのあとに行うことで、より高い浸透効果が得られます。
レーザートーニング
レーザートーニングは、低出力のレーザーを広範囲に照射することで、メラニン色素を徐々に排出させる治療です。色素沈着タイプのニキビ跡やシミ、くすみの改善に効果的です。肌への刺激が少なく、ダウンタイムがほとんどないことが特徴ですが、効果を実感するには複数回の施術が必要です。
クレーター状のニキビ跡に対する治療法
クレーター状のニキビ跡は、真皮層にまでダメージが及んでいるため、セルフケアや表皮に作用する治療だけでは改善が難しい場合がほとんどです。ここでは、クレーター状のニキビ跡に対して効果が期待できる治療法について解説します。
ダーマペン
ダーマペンは、極細の針を用いて肌に微細な穴を開け、皮膚の自然治癒力を利用してコラーゲンやエラスチンの産生を促進する治療です。針の深度を0.2mmから3.0mm程度まで調整できるため、ニキビ跡の深さや部位に合わせた施術が可能です。
ダーマペンの施術では、成長因子やヒアルロン酸などの薬剤を同時に塗布しながら行うことで、より高い効果が期待できます。コラーゲンピールと組み合わせた「ヴェルベットスキン」なども人気の施術です。施術間隔は4週間程度が一般的で、ニキビ跡の程度によって5回から10回程度の施術が推奨されます。
ダウンタイムは3日から1週間程度で、施術後は赤みや腫れが生じることがありますが、フラクショナルレーザーと比較すると軽度です。熱を使わない治療のため、色素沈着のリスクも低いとされています。
フラクショナルレーザー
フラクショナルレーザーは、レーザーを点状に照射して肌に微細な穴を開け、皮膚の再生を促す治療です。1回の照射で皮膚の10から15%程度が入れ替わるとされており、複数回の施術を重ねることで肌全体の質感が改善していきます。
フラクショナルレーザーには、表皮にダメージを与えずに真皮に作用する「ノンアブレイティブ」タイプと、表皮から真皮まで穴を開ける「アブレイティブ」タイプがあります。深いクレーターには、より強力なアブレイティブタイプのフラクショナルCO2レーザーが効果的とされていますが、ダウンタイムが長くなる傾向があります。
フラクショナルレーザーは手術を除けば最も強力なニキビ跡治療のひとつとされていますが、施術後5日から7日程度はかさぶたができ、赤みが2から3か月続くこともあります。また、約20%の確率で一時的な色素沈着が生じることがありますが、通常は半年程度で改善します。
サブシジョン
サブシジョンは、ニキビ跡の凹みの下にある瘢痕組織(線維性の癒着)を、針や専用の器具を用いて切離する治療です。特に境界がなだらかなローリング型のクレーターに効果的とされています。
瘢痕組織を切離することで、皮膚が引き下げられている状態が解消され、凹みが浅くなります。また、切離によって生じた空間に自然にコラーゲンが産生されることで、さらなる改善が期待できます。ヒアルロン酸注入やフィラー注入と組み合わせることで、より効果的な治療が可能です。
ポテンツァ(マイクロニードルRF)
ポテンツァは、微細な針で肌に穴を開けながら、針先からRF(ラジオ波)エネルギーを照射する治療です。ダーマペンの効果に加え、RFによる熱エネルギーが真皮層に直接作用することで、より強力にコラーゲン産生を促進します。
ダーマペンとフラクショナルレーザーの長所を併せ持つ治療として注目されており、ニキビ跡のクレーター改善に加え、肌の引き締め効果やアンチエイジング効果も期待できます。ダウンタイムはダーマペンと同程度で、比較的短いことも特徴です。
TCAクロス
TCAクロスは、高濃度のトリクロロ酢酸(TCA)をニキビ跡の凹みの底にピンポイントで塗布し、化学的なダメージを与えることでコラーゲン産生を促す治療です。特にアイスピック型やボックスカー型のクレーターに効果的とされています。
施術後は塗布した部位にかさぶたができますが、これが剥がれるとともに凹みが浅くなっていきます。複数回の施術を重ねることで徐々に改善していきます。
ニキビ跡を防ぐためのセルフケアと生活習慣
ニキビ跡を作らないためには、まずニキビができたときに炎症を悪化させないことが重要です。また、すでにできてしまったニキビ跡を改善するためにも、日常的なセルフケアが大切になります。ここでは、ニキビ跡の予防と改善に役立つセルフケアのポイントを解説します。
ニキビを触らない・潰さない
ニキビ跡を残さないために最も重要なのは、ニキビを手で触ったり潰したりしないことです。手についた雑菌がニキビに付着することで炎症が悪化する可能性があります。また、ニキビを潰すと皮膚組織が傷つき、クレーター状のニキビ跡が残るリスクが高まります。
ニキビが気になる場合は、自己処理をせずに早めに皮膚科を受診することをおすすめします。皮膚科では適切な治療を受けることができ、ニキビ跡の形成を予防できます。
適切なスキンケアを行う
ニキビ跡を改善するためには、適切なスキンケアが欠かせません。洗顔は1日2回、朝と夜に行い、泡立てた洗顔料で優しく洗いましょう。ゴシゴシこすることは肌への刺激となり、炎症を悪化させる原因になります。
洗顔後は化粧水でしっかりと保湿を行います。肌が乾燥するとバリア機能が低下し、外部からの刺激を受けやすくなります。また、乾燥によってターンオーバーが乱れると、ニキビ跡の改善も遅れてしまいます。保湿成分としては、セラミドやヒアルロン酸が配合された化粧品がおすすめです。
色素沈着タイプのニキビ跡には、ビタミンC誘導体やトラネキサム酸、ナイアシンアミドなどが配合された美容液や化粧水が効果的です。これらの成分にはメラニン生成を抑制する作用があり、色素沈着の改善や予防に役立ちます。
紫外線対策を徹底する
紫外線はメラニン生成を促進するため、色素沈着タイプのニキビ跡を悪化させる大きな要因となります。また、紫外線による肌へのダメージはターンオーバーの乱れにもつながります。
ニキビ跡がある部分は特にメラノサイトが活性化しやすい状態にあるため、紫外線を浴びることでさらに色が濃くなってしまう可能性があります。季節を問わず、毎日日焼け止めを塗る習慣をつけましょう。日傘や帽子を活用することも効果的です。
バランスのよい食事を心がける
肌のターンオーバーを正常に保つためには、栄養バランスのとれた食事が重要です。特にニキビ跡の改善に役立つ栄養素として、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、タンパク質、亜鉛などが挙げられます。
ビタミンB群は肌の新陳代謝を促進し、皮脂分泌をコントロールする作用があります。魚、卵、乳製品、レバーなどに多く含まれています。ビタミンCはメラニン生成抑制作用やコラーゲン生成促進作用があり、柑橘類、キウイ、ブロッコリー、パプリカなどに豊富です。
一方、糖質や脂質の過剰摂取は皮脂分泌を増加させ、ニキビを悪化させる可能性があります。揚げ物やスナック菓子、甘いお菓子などは控えめにしましょう。
質のよい睡眠をとる
睡眠中は成長ホルモンが分泌され、肌の修復やターンオーバーが行われます。睡眠不足が続くと成長ホルモンの分泌が妨げられ、ターンオーバーが乱れてニキビ跡の改善が遅れる原因となります。
質のよい睡眠をとるためには、就寝前のスマートフォンやパソコンの使用を控え、リラックスできる環境を整えることが大切です。また、できるだけ毎日同じ時間に就寝・起床する習慣をつけることで、睡眠の質が向上します。
ストレスを溜め込まない
過度なストレスは自律神経やホルモンバランスの乱れを引き起こし、皮脂分泌の増加やターンオーバーの乱れにつながります。適度な運動やリラックスできる趣味の時間を持つなど、ストレスを解消する方法を見つけましょう。
ニキビ跡治療を受ける際の注意点と皮膚科選びのポイント
ニキビ跡治療を受ける際には、いくつかの注意点があります。また、治療を受けるクリニック選びも重要なポイントです。ここでは、ニキビ跡治療を検討している方に向けて、知っておきたい注意点とクリニック選びのポイントを解説します。
治療には時間がかかることを理解する
ニキビ跡の治療は、1回の施術で劇的に改善するものではありません。多くの治療法では、複数回の施術を重ねることで徐々に効果が現れます。赤みや色素沈着のニキビ跡であれば3か月から6か月程度、クレーター状のニキビ跡であれば半年から1年以上の治療期間が必要になることもあります。
治療を始める際には、どのくらいの期間がかかるのか、何回程度の施術が必要なのか、事前に医師に確認しておくことが大切です。途中で治療を中断してしまうと、十分な効果が得られない可能性があります。
ダウンタイムを考慮する
治療法によっては、施術後に赤みや腫れ、かさぶたなどが生じるダウンタイムがあります。特にフラクショナルレーザーなどの強力な治療では、1週間から2週間程度のダウンタイムが必要になることがあります。
仕事や予定に支障をきたさないよう、治療前にダウンタイムの期間や症状について確認し、スケジュールを調整しておきましょう。人前に出る機会が多い時期や、イベントの直前などは避けた方がよい場合もあります。
アフターケアを適切に行う
施術後のアフターケアは、治療効果を最大限に引き出すために非常に重要です。多くの治療では、施術後は肌がデリケートな状態になっているため、保湿と紫外線対策を徹底する必要があります。
医師やスタッフから指示されたアフターケアの方法をしっかり守りましょう。また、施術後に気になる症状が出た場合は、自己判断せずにクリニックに相談することが大切です。
クリニック選びのポイント
ニキビ跡治療を受けるクリニックを選ぶ際には、以下のポイントを参考にしてください。まず、皮膚科専門医が在籍しているかどうかを確認しましょう。ニキビ跡の種類や程度を正確に診断し、適切な治療法を提案してもらうためには、専門的な知識と経験を持つ医師のもとで治療を受けることが重要です。
また、カウンセリングが丁寧に行われるかどうかも重要なポイントです。治療内容やリスク、費用、治療期間などについて十分な説明を受け、納得したうえで治療を受けることが大切です。質問しやすい雰囲気かどうか、患者さまの希望や悩みに寄り添ってくれるかどうかも確認しましょう。
複数の治療法を提案できるクリニックであることも重要です。ニキビ跡の種類や程度によって最適な治療法は異なります。さまざまな治療機器やメニューを備えているクリニックであれば、自分に合った治療を選択しやすくなります。

よくある質問
ニキビ跡が自然に治るかどうかは、ニキビ跡の種類によって異なります。赤みや色素沈着タイプのニキビ跡は、肌のターンオーバーによって数か月から半年程度で自然に薄くなることが多いです。ただし、クレーター状やケロイド状のニキビ跡は、真皮層にまでダメージが及んでいるため、自然治癒は非常に難しく、専門的な治療が必要となります。
ニキビ跡治療の費用は、治療法や施術範囲、クリニックによって異なります。ケミカルピーリングは1回5,000円から15,000円程度、ダーマペンは1回20,000円から50,000円程度、フラクショナルレーザーは1回30,000円から100,000円程度が目安です。複数回の施術が必要になることが多いため、総額では数万円から数十万円かかることがあります。事前にカウンセリングで費用について確認することをおすすめします。
治療回数はニキビ跡の種類や程度、選択する治療法によって異なります。ケミカルピーリングであれば5回から10回程度、ダーマペンであれば5回から10回程度、フラクショナルレーザーであれば3回から5回程度が目安とされています。ただし、症状によってはさらに多くの回数が必要になることもあります。医師と相談しながら、自分に合った治療計画を立てましょう。
ダーマペンとフラクショナルレーザーにはそれぞれ特徴があり、どちらがよいかは症状や希望によって異なります。ダーマペンは熱を使わないためダウンタイムが比較的短く、色素沈着のリスクが低いことが特徴です。一方、フラクショナルレーザーは深いクレーターに対しても効果が期待でき、より強力な治療が可能です。ただし、ダウンタイムが長く、色素沈着のリスクがあります。医師と相談して、自分に合った治療法を選択しましょう。
ニキビ跡治療中は、保湿と紫外線対策を徹底することが重要です。施術後の肌はデリケートな状態になっているため、乾燥や紫外線によるダメージを受けやすくなっています。日焼け止めは必ず毎日塗り、保湿ケアを怠らないようにしましょう。また、施術後は肌に刺激を与えるピーリングやスクラブ洗顔は避け、優しいスキンケアを心がけてください。治療中も新しいニキビができないよう、生活習慣にも気を配りましょう。
まとめ
ニキビ跡には赤み、色素沈着、クレーター、ケロイドなど、さまざまな種類があり、それぞれ原因や適した治療法が異なります。赤みや色素沈着タイプのニキビ跡は、肌のターンオーバーとともに自然に改善することもありますが、クレーターやケロイドタイプのニキビ跡は、セルフケアだけでの改善は難しく、皮膚科での専門的な治療が必要です。
ニキビ跡の治療は原則として保険適用外となりますが、ケミカルピーリングやダーマペン、フラクショナルレーザーなど、さまざまな治療法が美容皮膚科で受けられます。治療法にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、自分のニキビ跡の種類や程度に合った治療法を、医師と相談しながら選択することが大切です。
また、ニキビ跡を作らないためには、ニキビができた段階で早めに治療を受けることが重要です。日本皮膚科学会のガイドラインでも、軽症であっても早期の治療が瘢痕形成の予防につながることが示されています。ニキビやニキビ跡にお悩みの方は、まずは皮膚科を受診し、専門医に相談されることをおすすめします。
参考文献
- 日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
- 公益社団法人日本皮膚科学会「ケミカルピーリング Q&A」
- Mindsガイドラインライブラリ「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
- J-STAGE「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務