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虫歯じゃないのに歯が痛い奥歯|考えられる原因と対処法を医師が解説

「虫歯ではないはずなのに、奥歯がズキズキ痛む」「歯医者で診てもらっても異常がないと言われた」——このような経験をお持ちの方は少なくありません。実は、歯の痛みは虫歯だけが原因ではなく、歯周病や知覚過敏、歯ぎしり、さらには歯以外の部位に原因がある場合もあります。

本記事では、虫歯ではないのに奥歯が痛む原因について、歯そのものに原因がある「歯原性歯痛」と、歯以外に原因がある「非歯原性歯痛」に分けて詳しく解説します。また、痛みが出たときの応急処置や、受診すべき診療科についてもご紹介しますので、原因不明の歯痛にお悩みの方はぜひ参考にしてください。


目次

  1. 歯の痛みは大きく2種類に分けられる
  2. 歯が原因で奥歯が痛む場合(歯原性歯痛)
  3. 歯以外が原因で奥歯が痛む場合(非歯原性歯痛)
  4. 夜になると奥歯の痛みが強くなる理由
  5. 奥歯が痛いときの応急処置
  6. 奥歯が痛いときにやってはいけないこと
  7. 受診すべき診療科の選び方
  8. 奥歯の痛みを予防するために
  9. まとめ

1. 歯の痛みは大きく2種類に分けられる

歯の痛みは、その原因によって「歯原性歯痛(しげんせいしつう)」と「非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)」の2種類に分類されます。

歯原性歯痛とは、歯そのものや歯を支える組織(歯周組織)に原因がある痛みのことです。虫歯や歯周病、知覚過敏、歯髄炎などがこれに該当します。一般的に歯科医院で行われる治療によって改善が期待できます。

一方、非歯原性歯痛とは、歯や歯周組織に異常がないにもかかわらず、歯に痛みを感じる状態を指します。日本口腔顔面痛学会によると、歯が痛いと訴えて歯科を受診した患者さんの約3〜5%が非歯原性歯痛であったという報告があります。

非歯原性歯痛の場合、歯の治療を行っても痛みは改善しません。そのため、痛みの原因を正確に見極めることが非常に重要です。原因を誤って歯の治療を進めてしまうと、必要のない抜髄(神経を取る処置)や抜歯につながる可能性もあります。


2. 歯が原因で奥歯が痛む場合(歯原性歯痛)

虫歯以外で歯や歯周組織に原因がある場合、以下のような疾患が考えられます。

2-1. 歯周病

歯周病は、歯垢(プラーク)の中にいる細菌が原因で歯茎に炎症が生じる病気です。日本人の40歳以上の約8割がこの病気にかかっているといわれており、虫歯に次いで多い口腔疾患です。

歯周病は「サイレント・ディジーズ(静かなる病気)」とも呼ばれ、初期段階では自覚症状がほとんどありません。しかし、進行すると歯茎が腫れて痛みが出たり、歯がぐらついたりするようになります。重症化すると歯を支える骨(歯槽骨)が溶けてしまい、最終的には歯が抜け落ちてしまうこともあります。

歯周病による痛みの特徴としては、歯茎の腫れや出血を伴うことが多く、歯を磨くときや食事のときに痛みを感じることがあります。また、口臭が気になる、歯が長くなったように感じる、歯と歯の間に食べ物が挟まりやすくなったなどの症状がある場合は、歯周病が進行している可能性があります。

歯周病の治療は、まず原因となるプラークや歯石を除去することから始まります。軽度であれば、歯科医院でのクリーニングと適切なセルフケアで改善が見込めます。中等度以上に進行している場合は、歯茎の下にある歯石を除去するSRP(スケーリング・ルートプレーニング)や、場合によっては歯周外科手術が必要になることもあります。

2-2. 知覚過敏(象牙質知覚過敏症)

知覚過敏は、虫歯がないにもかかわらず、冷たいものや熱いもの、甘いもの、酸っぱいものを口にしたときや、歯ブラシの毛先が触れたときに「キーン」「ピリッ」としみるような痛みを感じる状態です。正式には「象牙質知覚過敏症」といい、4人に1人が経験しているといわれています。

歯の最も外側はエナメル質という硬い組織で覆われていますが、その内側には象牙質があります。象牙質には「象牙細管」という細い管が無数にあり、この管を通じて刺激が歯の神経(歯髄)に伝わります。何らかの原因で象牙質が露出すると、外部からの刺激が直接神経に伝わりやすくなり、しみるような痛みを感じるようになります。

象牙質が露出する主な原因としては、以下のようなものがあります。

まず、加齢や歯周病によって歯茎が下がり、歯の根元が露出するケースがあります。歯の根元部分はエナメル質に覆われておらず、セメント質という薄い層しかないため、刺激に対して敏感になりやすいです。

次に、過度な力でのブラッシングや研磨剤入りの歯磨き粉の使用によって、エナメル質が削れてしまうことがあります。これを「楔状欠損(くさびじょうけっそん)」といいます。

また、歯ぎしりや食いしばりによって歯に過度な力がかかり、エナメル質にひびが入ったり、歯の根元に負担がかかったりすることで知覚過敏が起こることもあります。

さらに、酸性の飲食物を頻繁に摂取することでエナメル質が溶けてしまう「酸蝕歯(さんしょくし)」も原因の一つです。炭酸飲料や柑橘類、ワインなどを長時間かけて摂取する習慣がある方は注意が必要です。

知覚過敏の治療法としては、知覚過敏用の歯磨き粉の使用、フッ素塗布による歯の再石灰化促進、象牙質をコーティング材で覆う処置などがあります。症状がひどい場合は、神経を取り除く根管治療が検討されることもあります。

2-3. 歯髄炎

歯髄炎は、歯の中心部にある歯髄(神経や血管が通っている組織)に炎症が起きている状態です。虫歯が進行して細菌が歯髄に達した場合に起こることが多いですが、歯ぎしりや外傷によって歯に亀裂が入り、そこから細菌が侵入して発症することもあります。

歯髄炎の痛みは、初期段階では冷たいものや熱いものがしみる程度ですが、症状が進行すると温かいものでも痛みを感じるようになり、最終的にはズキズキとした激しい痛みが続くようになります。痛みが強く、夜眠れないほどになることもあります。

歯髄炎を放置すると、歯髄が壊死(死んでしまうこと)し、歯に栄養が行き渡らなくなって歯が変色したり、もろくなったりします。また、感染が根の先まで広がると「根尖性歯周炎」を引き起こし、歯茎が腫れたり、膿がたまったりすることもあります。

歯髄炎の治療は、炎症の程度によって異なります。軽度であれば歯髄を保存できる場合もありますが、多くの場合は歯髄を取り除く「抜髄」という処置が必要になります。歯の神経を抜くと歯の寿命が短くなるといわれているため、早期発見・早期治療が重要です。

2-4. 歯根膜炎

歯根膜とは、歯の根と歯槽骨(歯を支える骨)の間にある薄い組織で、歯を骨にしっかりと固定する役割を担っています。この歯根膜に炎症が起きている状態が歯根膜炎です。

歯根膜炎の主な原因としては、虫歯や歯周病からの細菌感染、歯ぎしりや食いしばりによる過度な負荷、外傷などがあります。噛み合わせが悪い場合や、詰め物や被せ物の高さが合っていない場合にも起こりやすくなります。

歯根膜炎の特徴的な症状は、噛んだときに痛みを感じることです。「歯が浮いた感じがする」「噛むと響く」といった表現をされる方が多いです。また、歯を叩くと痛みがあったり、歯が少しぐらつくように感じたりすることもあります。

治療は原因によって異なりますが、噛み合わせの調整や、原因となっている歯の治療(根管治療など)が行われます。歯ぎしりが原因の場合は、マウスピースの使用が有効です。

2-5. 歯の破折・亀裂

歯ぎしりや食いしばり、硬いものを噛んだとき、あるいは外傷によって歯にひびが入ったり、割れたりすることがあります。歯の亀裂は非常に小さい場合が多く、レントゲンでも確認できないことがあるため、診断が難しいケースも少なくありません。

亀裂が浅いうちは、噛んだときに「ピキッ」とした痛みを感じる程度ですが、亀裂が深くなると冷たいものがしみたり、持続的な痛みが出たりするようになります。亀裂から細菌が侵入して神経が感染を起こすと、激しい痛みが生じることもあります。

また、歯の根が縦に割れてしまう「歯根破折」は、神経を取った歯に起こりやすく、虫歯や歯周病の次に歯を失う原因として多いといわれています。歯根破折が起きてしまうと、多くの場合は抜歯が必要になります。

2-6. 親知らず(智歯周囲炎)

親知らずは、永久歯の中で最も遅く生えてくる歯で、正式には「第三大臼歯」といいます。生えるスペースが十分にない場合、斜めや横向きに生えてきたり、歯茎の中に埋まったままになったりすることがあります。

親知らずが正常に生えてこない場合、周囲の歯茎に炎症が起きやすくなります。これを「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」といいます。智歯周囲炎になると、奥歯の奥がズキズキと痛んだり、歯茎が腫れたり、口が開けにくくなったりします。重症化すると、顎全体に痛みが広がったり、発熱を伴ったりすることもあります。

親知らずの痛みが繰り返す場合や、隣の歯に悪影響を及ぼしている場合は、抜歯が検討されます。


3. 歯以外が原因で奥歯が痛む場合(非歯原性歯痛)

歯や歯周組織に問題がないにもかかわらず歯に痛みを感じる場合、以下のような原因が考えられます。日本口腔顔面痛学会の「非歯原性歯痛の診療ガイドライン」では、非歯原性歯痛を8つの種類に分類しています。

3-1. 筋・筋膜性歯痛

非歯原性歯痛の中で最も頻度が高く、約45〜50%を占めるといわれています。咬筋(こうきん)や側頭筋(そくとうきん)など、食べ物を噛むときに使う「咀嚼筋」の疲労や緊張が原因で歯に痛みを感じる状態です。

筋・筋膜性歯痛は、筋肉の中に「トリガーポイント」と呼ばれる硬いしこりができ、そこから歯に痛みが放散することで起こります。実際に痛んでいるのは筋肉ですが、脳が「歯が痛い」と誤って認識してしまうのです。このように、原因から離れた場所に痛みを感じる現象を「関連痛」といいます。

筋・筋膜性歯痛の原因としては、歯ぎしりや食いしばり、ストレス、長時間のパソコン作業やスマートフォンの使用による姿勢の悪化などが挙げられます。痛みの特徴としては、「ジワーッとした鈍い痛み」「締め付けられるような感じ」などと表現されることが多く、痛みが長く続いたり、出たり消えたりを繰り返したりします。

治療法としては、原因となる筋肉のマッサージやストレッチ、温湿布の使用、ストレス管理などが有効です。歯ぎしりや食いしばりがある場合は、マウスピースの使用も検討されます。

3-2. 神経障害性歯痛

神経が損傷したり圧迫されたりすることで起こる痛みです。発作性(突然起こる)と持続性の2種類があります。

発作性神経障害性歯痛の代表的なものが「三叉神経痛(さんさしんけいつう)」です。三叉神経は顔面の感覚を司る神経で、この神経が刺激されると、電気が走るような鋭い痛みが一瞬生じます。洗顔、化粧、ひげ剃り、食事など、顔に触れる動作がきっかけで痛みが誘発されることが多いです。

持続性神経障害性歯痛は、歯科治療や外傷後に神経が損傷を受けて起こることがあります。抜歯後や根管治療後に痛みが続く場合、この可能性があります。

神経障害性歯痛の治療には、専門的な診断と薬物療法が必要です。通常の鎮痛薬では効果がないことが多く、抗てんかん薬や抗うつ薬などが使用されることがあります。

3-3. 神経血管性歯痛

片頭痛や群発頭痛などの頭痛に伴って歯に痛みを感じることがあります。頭痛と同時に歯が痛む場合や、拍動性(ドクドクと脈打つような)の痛みがある場合は、神経血管性歯痛の可能性があります。

片頭痛の治療を行うことで歯の痛みも改善することが多いため、頭痛外来や神経内科での診察が必要になることがあります。

3-4. 上顎洞性歯痛

上顎洞(じょうがくどう)とは、鼻の両脇にある副鼻腔の一つで、上顎の奥歯のすぐ上に位置しています。この上顎洞に炎症が起きる「上顎洞炎」になると、奥歯に痛みを感じることがあります。

上顎洞炎の原因は大きく2つに分けられます。一つは風邪やアレルギー性鼻炎などから発症する「鼻性上顎洞炎」、もう一つは虫歯や歯周病から細菌が上顎洞に侵入して起こる「歯性上顎洞炎」です。

上顎洞性歯痛の特徴としては、上顎の奥歯が複数本にわたって痛むことが挙げられます。虫歯の場合は1本の歯だけが痛むことが多いのに対し、上顎洞炎では広範囲に痛みが出ます。また、頬を押すと痛みがあったり、階段を下りたり走ったりしたときに上の歯が響くように痛んだりするのも特徴です。鼻づまりや黄色い粘り気のある鼻水、頭痛、顔面の重さなどを伴うこともあります。

鼻性上顎洞炎の場合は両側に症状が出ることが多いのに対し、歯性上顎洞炎は原因となる歯がある片側だけに症状が出ることが多いです。

治療は原因によって異なります。鼻性の場合は耳鼻咽喉科での治療が中心となり、歯性の場合は歯科での原因歯の治療(根管治療や抜歯など)が必要です。

3-5. 心臓性歯痛

狭心症や心筋梗塞などの心疾患の症状として、歯や顎に痛みが生じることがあります。通常は胸や左腕の痛みを伴いますが、まれに歯痛だけが症状として現れることもあります。

心臓性歯痛の特徴としては、圧迫されるような痛みや灼熱感があり、数分から20分程度続くことが多いです。運動時や階段を上ったときに痛みが出やすく、安静にすると治まる傾向があります。

心臓性歯痛が疑われる場合は、直ちに循環器内科を受診する必要があります。特に、胸の圧迫感や息切れ、冷や汗などを伴う場合は、緊急性が高いため注意が必要です。

3-6. 精神疾患・心理社会的要因による歯痛

不安やストレス、うつ病、身体表現性障害などの精神的な要因によって歯に痛みを感じることがあります。近年では「痛覚変調性疼痛(つうかくへんちょうせいとうつう)」という概念も注目されており、明らかな原因がなくても長引く痛みには脳の神経回路の変化が影響していることがわかってきています。

このタイプの歯痛は、激烈な痛みになることはまれですが、慢性的な鈍い痛みがずっと続くのが特徴です。不眠や食欲不振、倦怠感などを伴うこともあります。

治療には、心療内科や精神科との連携が必要になることがあります。認知行動療法や薬物療法(抗うつ薬など)が行われることもあります。

3-7. 特発性歯痛

上記のいずれの原因にも該当せず、原因が特定できない歯痛です。「非定型歯痛」とも呼ばれます。治療を繰り返しても痛みが取れないことがあり、専門的な診断と対応が必要です。

3-8. その他の原因

上記以外にも、帯状疱疹(たいじょうほうしん)によるウイルス感染、巨細胞性動脈炎などの血管性の疾患、頸椎の異常、内服薬の副作用などが歯痛の原因となることがあります。


4. 夜になると奥歯の痛みが強くなる理由

「昼間はそれほど気にならないのに、夜になると歯が痛くて眠れない」という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。夜間に歯の痛みが増す理由にはいくつかのメカニズムがあります。

まず、横になることで血液が頭部に集まりやすくなり、血管が膨張して神経が圧迫されることが挙げられます。歯髄の中にも血管があり、血流が増えることで内圧が高まり、痛みを感じやすくなります。

次に、自律神経の変化があります。日中は交感神経が優位に働いていますが、夜になると副交感神経が優位になります。副交感神経が活性化すると血管が拡張し、炎症部位への血流が増えるため、痛みを感じやすくなります。

また、入浴によって体が温まると血行が促進され、副交感神経の働きが高まるため、入浴後に痛みが増すこともあります。

さらに、睡眠中は無意識に歯ぎしりや食いしばりをしていることがあり、これが歯や顎に負担をかけて痛みを悪化させる原因になることもあります。

昼間は仕事や日常の活動に意識が向いているため痛みを感じにくいですが、夜は周囲が静かになり、痛みに意識が集中しやすくなることも関係しています。


5. 奥歯が痛いときの応急処置

歯科医院を受診するまでの間、以下のような応急処置で痛みを和らげることができます。ただし、これらはあくまで一時的な対処法であり、根本的な治療にはなりません。症状が続く場合は、早めに歯科医院を受診してください。

5-1. 市販の鎮痛薬を服用する

ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの鎮痛薬は、歯の痛みにも効果があります。用法・用量を守って服用してください。ただし、痛み止めで症状が治まったからといって放置せず、必ず歯科医院で原因を確認しましょう。

5-2. 患部を冷やす

痛みのある側の頬に冷却シートや冷たいタオルを当てて冷やすと、血管が収縮して痛みが和らぐことがあります。氷を直接当てると冷やしすぎになることがあるので、タオルなどで包んで使用してください。

5-3. ツボを押す

歯の痛みに効果があるとされるツボがいくつかあります。

「合谷(ごうこく)」は、手の甲側で親指と人差し指の付け根の間にあるツボです。反対の手の親指と人差し指で挟むように押すと、痛みが和らぐことがあります。

「下関(げかん)」は、耳の穴から頬骨の方向に指4本分くらいの場所にあるツボです。口を開けたときに凹む部分を、円を描くようにマッサージします。

5-4. 口の中を清潔に保つ

食べかすが歯と歯の間に挟まっていると、歯茎を刺激して痛みの原因になることがあります。やさしくブラッシングしたり、デンタルフロスや歯間ブラシで食べかすを取り除いたりしましょう。ただし、強い力でゴシゴシ磨くのは避けてください。


6. 奥歯が痛いときにやってはいけないこと

痛みがあるときに以下のような行動をすると、症状が悪化する可能性があります。

6-1. 患部を直接触る

痛い部分を指や舌で触ると、手についた細菌が患部に侵入して感染を悪化させる可能性があります。気になっても、なるべく触らないようにしましょう。

6-2. 熱い風呂に長時間浸かる

入浴すると血行が促進され、炎症部位への血流が増えて痛みが悪化することがあります。痛みがある日は湯船に浸からず、ぬるめのシャワーで済ませるようにしましょう。

6-3. 激しい運動をする

運動も血行を促進するため、痛みを悪化させる原因になります。歯が痛いときは激しい運動を控えましょう。

6-4. 飲酒・喫煙をする

アルコールは血行を促進するため、痛みが増す可能性があります。また、喫煙は血管を収縮させて歯茎への血流を悪くし、治癒を遅らせます。

6-5. 患部を温める

温めると血流が増えて痛みが悪化することがあります。痛みがあるときは冷やすようにしましょう。


7. 受診すべき診療科の選び方

奥歯の痛みがある場合、まずは歯科医院を受診することをおすすめします。歯科医師が口腔内を診察し、レントゲンやCTなどの検査を行って原因を特定します。

歯科での検査で歯や歯周組織に異常が見つからない場合は、非歯原性歯痛の可能性を考慮して、以下のような診療科への受診が検討されます。

鼻づまりや鼻水、頭痛などの症状がある場合は、上顎洞炎の可能性があるため「耳鼻咽喉科」への受診が勧められます。

胸の痛みや圧迫感、息切れなどを伴う場合は、心疾患の可能性があるため「循環器内科」への受診が必要です。

頭痛を伴う場合は「頭痛外来」や「神経内科」、精神的なストレスが関係していると考えられる場合は「心療内科」や「精神科」への受診が検討されます。

原因不明の歯痛が続く場合は、非歯原性歯痛を専門的に扱う「口腔顔面痛外来」がある医療機関を受診することも選択肢の一つです。日本口腔顔面痛学会のホームページでは、専門医・認定医がいる施設を調べることができます。


8. 奥歯の痛みを予防するために

奥歯の痛みを予防するためには、日頃からの口腔ケアと生活習慣の改善が重要です。

8-1. 正しいブラッシングを心がける

毎食後のブラッシングと、就寝前の丁寧な歯磨きを習慣にしましょう。歯と歯茎の境目を意識して、やさしい力でブラシを小刻みに動かします。強い力でゴシゴシ磨くと、歯茎を傷つけたり、エナメル質を削ったりする原因になります。

歯ブラシだけでは歯と歯の間の汚れを十分に落とせないため、デンタルフロスや歯間ブラシの使用もおすすめです。

8-2. 定期的に歯科検診を受ける

虫歯や歯周病は初期段階では自覚症状がないことが多いため、定期的に歯科医院でチェックを受けることが大切です。早期発見・早期治療により、痛みが出る前に対処することができます。歯石の除去(スケーリング)やプロフェッショナルクリーニング(PMTC)も定期的に受けましょう。

8-3. 歯ぎしり・食いしばりに注意する

日中に歯を食いしばっていることに気づいたら、意識して力を抜くようにしましょう。上下の歯は、食事のとき以外は接触していないのが正常な状態です。パソコン作業中やスマートフォンを使用中、緊張しているときなどに無意識に歯を接触させていることがあるので、注意してみてください。

睡眠中の歯ぎしりが気になる場合は、歯科医院でマウスピース(ナイトガード)を作成してもらうことで、歯や顎への負担を軽減できます。

8-4. ストレス管理を行う

ストレスは歯ぎしりや食いしばりの原因になるほか、免疫力を低下させて歯周病を悪化させることもあります。適度な運動、十分な睡眠、趣味の時間を持つなど、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。

8-5. 生活習慣を見直す

喫煙は歯周病のリスクを高める大きな要因です。禁煙することで、歯周病の進行を抑えられるだけでなく、治療効果も向上します。

また、バランスの取れた食事を心がけ、酸性の飲食物(炭酸飲料、柑橘類など)の過剰摂取を避けることも大切です。甘いものを頻繁に摂取する習慣も、虫歯のリスクを高めます。


9. まとめ

虫歯がないのに奥歯が痛む原因はさまざまです。歯周病や知覚過敏、歯髄炎、歯ぎしりなど歯や歯周組織に原因がある場合もあれば、上顎洞炎や筋肉の緊張、神経の問題、心臓の病気など、歯以外に原因がある場合もあります。

大切なのは、痛みを我慢したり自己判断で放置したりせず、早めに専門家に相談することです。原因を正確に見極めることで、適切な治療を受けることができます。

また、日頃からの口腔ケアと定期的な歯科検診によって、多くの歯のトラブルは予防することができます。気になる症状がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。


参考文献

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
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