季節の変わり目や空気が乾燥する時期になると、多くの方が経験する「喉の痛み」。唾液を飲み込むだけで痛みを感じたり、イガイガした違和感が続いたりすると、日常生活にも支障をきたしてしまいます。
「喉の痛みを一瞬で治したい」「今すぐ楽になりたい」と思ったとき、実は身近な飲み物で症状を和らげることができるのをご存知でしょうか。
この記事では、喉の痛みに効果的な飲み物を科学的根拠とともに詳しく解説します。また、避けるべき飲み物や、医療機関を受診すべき目安についてもご紹介しますので、喉のケアにお役立てください。
目次
- 喉が痛くなる主な原因
- 飲み物が喉の痛みに効果的な理由
- 喉の痛みを和らげるおすすめの飲み物8選
- 喉に効く飲み物の作り方レシピ
- 喉が痛いときに避けるべき飲み物
- 飲み物でケアする際の注意点
- 医療機関を受診すべき目安
- まとめ
喉が痛くなる主な原因
喉の痛みが起こる原因は、大きく分けて「乾燥」「炎症」「感染」の3つに分類されます。それぞれの原因を理解することで、適切な対処法を選ぶことができます。
ウイルスや細菌による感染
喉の痛みの最も一般的な原因は、ウイルスや細菌による感染症です。風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、溶連菌感染症などが代表的です。これらの感染症では、喉の粘膜に病原体が付着して増殖し、体の防御反応として炎症が起こることで痛みや腫れが生じます。
特に溶連菌感染症は子どもに多く見られ、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症に注意が必要とされています。38度以上の高熱とともに強い喉の痛みがある場合は、医療機関での検査が推奨されます。
空気の乾燥
空気が乾燥する冬の季節や、エアコンを使用した室内では、喉の粘膜が乾燥しやすくなります。喉の粘膜には「繊毛」と呼ばれる細かい毛が密生しており、この繊毛が外部から侵入した細菌やウイルス、ホコリなどの異物をキャッチして体外に排出する働きを担っています。
しかし、乾燥によって繊毛周辺の水分が不足すると、繊毛の動きが鈍くなり、防御機能が低下してしまいます。その結果、体内に入ってきた異物を外に排出できなくなり、感染症にかかりやすくなるほか、乾燥そのものによる喉の痛みや不快感が生じます。
声の酷使や物理的刺激
長時間の会話やカラオケ、スポーツ観戦での大声など、喉を酷使することで声帯や喉の粘膜が傷つき、炎症が起こることがあります。教師や歌手、コールセンターのオペレーターなど、日常的に声を使う職業の方に多く見られる原因です。
また、熱い飲食物や辛いもの、タバコの煙、アルコールなども喉の粘膜を刺激し、慢性的な炎症を引き起こすことがあります。
アレルギー反応
花粉やハウスダスト、ペットの毛などのアレルゲンが喉に接触すると、アレルギー反応によって喉が痒くなったりイガイガしたりすることがあります。季節性の花粉症や通年性のダニアレルギーが原因となることが多く、鼻づまりによる口呼吸で喉の乾燥が進み、症状が悪化することもあります。
その他の原因
逆流性食道炎では、胃酸が食道に逆流することで喉の痛みや違和感が生じることがあります。特に食後や夜間に症状が強くなるのが特徴で、喉の痛みだけでなく胸焼けや口の中が酸っぱくなる症状を伴います。
飲み物が喉の痛みに効果的な理由
喉が痛いときに飲み物を摂取することは、単なる水分補給以上の意味を持ちます。飲み物が喉のケアに役立つ理由を解説します。
粘膜の保湿と保護
喉の粘膜は、十分な水分があることでバリア機能を発揮します。水分補給によって喉の粘膜を潤すことで、乾燥を防ぎ、異物の排出を助ける繊毛の働きを活性化させることができます。
ただし、人が一度に吸収できる水分量は約130mlと限りがあります。一度にたくさんの水分を飲んでもバリア機能が長時間維持されるわけではないため、1〜2時間に1回、コップ1杯程度の水分補給をこまめに行うことが理想的です。
体を温めて免疫力を高める
温かい飲み物は、体を内側から温めることで免疫機能の維持に役立ちます。体温が1度上昇すると免疫力が30%上がるといわれており、温かい飲み物を摂取することでウイルスや細菌の生存率を下げ、喉の痛みの原因を抑える効果が期待できます。
有効成分による抗菌・抗炎症作用
はちみつに含まれる殺菌成分や、緑茶のカテキン、生姜のジンゲロールなど、飲み物に含まれる有効成分が喉の炎症を抑えたり、ウイルスや細菌の増殖を抑制したりする働きがあることが、さまざまな研究で報告されています。
喉の痛みを和らげるおすすめの飲み物8選
ここからは、喉の痛みを素早く和らげる効果が期待できる飲み物を、科学的根拠とともにご紹介します。
1. はちみつ入りの飲み物
はちみつは、古くから喉の痛みや咳の民間療法として世界中で利用されてきた食品です。世界保健機関(WHO)も、医療資源が乏しい地域を中心に子どもの咳止めとしてはちみつを推奨しています。
はちみつが喉に良い理由は、主に3つあります。
1つ目は「殺菌作用」です。はちみつは高い糖度を保っているため、細菌が繁殖できません。さらに、はちみつに含まれるグルコン酸と過酸化水素に強い殺菌作用があり、喉に付着した雑菌を退治する効果が期待できます。
2つ目は「保湿効果」です。はちみつの主成分である果糖は高い保湿性を持っており、喉に潤いの膜を作って乾燥や外部からの刺激によるダメージを防いでくれます。はちみつの水分量は約20%と低いですが、周囲から水分を集めて閉じ込める性質があるため、適度な粘度と高い保湿効果で喉の粘膜を強力に保護します。
3つ目は「抗炎症・抗酸化作用」です。はちみつにはポリフェノールやフラボノイドなどの抗酸化成分が豊富に含まれており、これらの成分が体の炎症を和らげ、免疫の働きをサポートします。
実際に、200名の咽頭炎患者を対象とした研究では、抗生剤や抗炎症薬、うがい薬を使用しながら大さじ1杯のはちみつを1日2回摂取したグループは、はちみつを摂取しなかったグループと比較して、喉の痛みが緩和される期間が短縮され、患者の満足度も有意に高かったことが報告されています。
また、イギリスのオックスフォード大学の研究では、咳や風邪の治療には市販薬よりもはちみつのほうが有効である可能性があることが示されました。この研究では、はちみつが上気道感染症の症状改善において通常の治療よりも効果が高いことが報告されています。
はちみつの摂取量の目安は、大さじ1杯(約15g)を1日2回程度です。そのまま舐めても良いですし、温かいお湯や紅茶に溶かして飲んでも効果的です。
なお、1歳未満の乳児にははちみつを与えてはいけません。乳児ボツリヌス症にかかる恐れがあり、便秘や哺乳力の低下などの重篤な症状を引き起こすことがあります。
2. 生姜湯(ジンジャーティー)
生姜は、古くから漢方薬としても用いられてきた食材で、喉の痛みや風邪の初期症状を和らげる効果があるとされています。
生姜の有効成分として注目されているのが、辛味成分の「ジンゲロール」と、それが加熱や乾燥によって変化した「ショウガオール」です。
生の生姜に多く含まれるジンゲロールには、血管を拡張して血行を促進する作用や、殺菌作用、抗炎症作用があります。一方、ショウガオールは胃腸を刺激して体の内側から温める効果が高く、冷え性の改善や免疫力の向上に役立ちます。
農林水産省によると、生姜に含まれるジンゲロールという辛み成分には血行促進作用があり、体を温める働きがあります。また、生姜を加熱したり乾燥させたりすると、辛み成分がショウガオールに変化し、胃腸を刺激して内臓の働きが活発になるため、体の中から温められ、冷え性の改善につながるとされています。
日本調理科学会誌に掲載された研究によると、生ショウガ中の6-ジンゲロールと6-ショウガオールの割合は98対2であり、60分間の加熱調理によってショウガオールは3倍以上に増加することが確認されています。そのため、喉の痛みを緩和したい場合は、生姜をじっくり加熱調理し、温かいうちに飲むことが理想的です。
ただし、生姜は胃への刺激が強いため、食べ過ぎには注意が必要です。1日の摂取量の目安は10g程度とされています。
参考:農林水産省「生姜は体を温める効果があるそうだが、どのような成分が働いているのですか」
参考:J-STAGE「ショウガ中の6-ジンゲロールの加熱調理による変化」
3. 緑茶
緑茶に含まれるカテキンは、抗菌・抗ウイルス作用を持つポリフェノールの一種で、喉の痛みの予防と改善に効果があることが多くの研究で報告されています。
特に注目されているのが、緑茶に最も多く含まれるカテキンの一種「エピガロカテキンガレート(EGCG)」です。EGCGは、インフルエンザウイルスの表面にあるスパイク状のたんぱく質に直接作用し、ウイルスが細胞に侵入するのを阻止する働きがあります。
静岡県立大学と伊藤園の共同研究では、緑茶成分(カテキンとテアニン)のカプセルを5か月間摂取したグループは、摂取しなかったグループと比較して、インフルエンザの発症率が有意に低下したことが報告されています(カテキン・テアニン群4.1%、プラセボ群13.1%)。
また、特別養護老人ホームの入居者124名を対象とした調査では、緑茶でうがいをしたグループは水でうがいをしたグループよりもインフルエンザ感染率が有意に低く、その差は約8倍であったと報告されています。
浜松医科大学の研究グループが約2万人の幼児を対象に行った大規模調査では、うがいをしない子と比較して、緑茶でうがいをした子どもは風邪で発熱する確率が約70%低下したことが示されています(水道水で30%、塩水で約50%、緑茶で約70%)。
緑茶は飲用だけでなく、うがいにも効果的です。うがいができない外出先などでは、こまめに緑茶を飲むことでうがいの代わりになります。カテキンの効果を最大限に引き出すためには、80度以上の熱いお湯で淹れた煎茶がおすすめです。抽出時間を長くするとカテキン濃度が高まりますが、その分苦みも強くなります。
参考:花王「お茶でうがい」
4. 紅茶
紅茶には「テアフラビン」というポリフェノールが含まれており、インフルエンザウイルスを無力化する効果があることが注目されています。
テアフラビンは、緑茶に含まれるカテキンが発酵過程で変化してできる成分で、紅茶の赤い色素のもとになっています。テアフラビンは強い抗酸化力を持ち、殺菌や風邪・インフルエンザの予防に効果があるとされています。
三井農林お茶科学研究所の研究によると、紅茶はインフルエンザウイルスを無力化する速度が非常に速く、わずか15秒で99.9%のウイルスを無力化できたという実験結果が報告されています。これは緑茶やウーロン茶よりも高い効果であり、紅茶ポリフェノールがインフルエンザウイルスのスパイク(トゲ状のたんぱく質)に作用して、細胞への感染力を失わせるためと考えられています。
紅茶の抗ウイルス効果は、A型、B型などウイルスの種類に関係なく発揮されることも特徴です。また、カフェインレスの紅茶でも効果は変わらないため、妊婦さんや小さなお子さんでも安心して取り入れることができます。
ただし、紅茶に牛乳を加えるとテアフラビンが牛乳のたんぱく質と結びついて効果が低下するため、インフルエンザ予防の目的で飲む場合はストレートかレモンティーがおすすめです。
同じ職場の社会人297人を対象としたヒト介入試験では、紅茶でうがいをしたグループはうがいをしなかったグループと比較して、インフルエンザの感染率が低下したことが確認されています。使い終わったティーバッグを使った薄い紅茶でも十分な効果があるため、飲み終わったティーバッグを「紅茶うがい」に活用することもできます。
参考:三井農林お茶科学研究所「紅茶のインフルエンザウイルス感染阻止力の研究について」
参考:日本紅茶協会「紅茶のインフルエンザに対する感染伝播阻止効果」
5. はちみつ大根
はちみつ大根は、日本で昔から伝わる民間療法で、喉の痛みや咳に効果があるとされています。はちみつの殺菌作用・保湿効果と、大根の消炎作用を組み合わせた相乗効果が期待できます。
大根には「アリルイソチオシアネート」という辛味成分が含まれており、この成分には抗炎症作用があります。喉が痛い・イガイガするのは喉の粘膜が炎症を起こしているためですが、大根を食べることで喉の調子を整える手助けをしてくれます。
また、大根には「ジアスターゼ(アミラーゼ)」という消化酵素も含まれており、でんぷん質の消化を助ける働きがあります。「大根どきの医者いらず」ということわざがあるほど、大根は古くから健康に良い食材として知られてきました。
ただし、アリルイソチオシアネートやジアスターゼは加熱すると効果が弱まってしまうため、生の状態で摂取することが重要です。大根は塊の状態よりも、すりおろした方が消化・吸収しやすくなります。
はちみつ大根の作り方は簡単で、サイコロ状に切った大根をはちみつに3時間ほど漬けるだけです。大根から水分が出てシロップ状になったものを、そのまま舐めたりお湯で割って飲んだりします。
なお、はちみつ大根は食べ物であるため、薬のような即効性を期待することはできません。また、1歳未満の乳児にははちみつを含むため与えてはいけません。症状が重い場合や長引く場合は、医療機関の受診を検討しましょう。
6. ホットレモン(レモネード)
レモンに含まれるビタミンCは、風邪をはじめとする感染症への抵抗力を高める働きがあり、免疫細胞の機能を高める効果が期待できます。
ビタミンCは体内に侵入したウイルスや細菌と戦う白血球やリンパ球に多く含まれており、十分に摂取することで病気への抵抗力が高まります。また、ビタミンCには抗酸化作用もあり、体内の活性酸素を除去することで老化や生活習慣病の予防にも役立ちます。
ホットレモンを作る際は、レモンをスライスしてお湯に入れ、はちみつを加えるのがおすすめです。はちみつの殺菌・保湿効果とレモンのビタミンCの相乗効果で、喉のケアに役立ちます。紅茶にレモンを加えたレモンティーも、紅茶ポリフェノールの効果を損なうことなく楽しめます。
7. ハーブティー
ハーブティーの中には、喉の痛みを和らげる効果が期待できるものがあります。
カモミールには気管支の炎症を和らげる作用があり、蒸気を吸入することで鼻づまりの改善にも効果的です。ただし、妊娠中の方やキク科アレルギーのある方は避けた方が良いでしょう。
タイムには「チモール」という成分が含まれており、殺菌・抗ウイルス作用があります。喉の痛みや痰の除去に効果的ですが、こちらも妊娠中は避けることが推奨されています。
ペパーミントには清涼感のある香り成分が含まれており、喉の炎症を鎮めるのに役立つ可能性があります。
ハーブティーは95〜100度の熱いお湯で淹れ、3〜4分ほど蒸らしてゆっくりと成分を抽出します。予防として飲む場合は1日1〜2杯、症状があるときは4〜5杯が目安です。
8. 白湯・常温の水
シンプルですが、白湯や常温の水をこまめに飲むことも喉のケアには重要です。
喉の粘膜を潤すことで乾燥を防ぎ、繊毛の働きを活性化させて異物の排出を助けます。また、体内の水分を十分に保つことで、バリア機能がしっかり働く理想的な状態を維持できます。
白湯は内臓を温めながら水分補給ができるため、冷えが気になる方にもおすすめです。常温の水や経口補水液でのこまめな水分補給を心がけましょう。
喉に効く飲み物の作り方レシピ
ここでは、喉の痛みを和らげる効果が期待できる飲み物の簡単な作り方をご紹介します。
はちみつレモン湯
喉が痛いときの定番ドリンクです。はちみつの殺菌・保湿効果とレモンのビタミンCの相乗効果が期待できます。
材料(1杯分):レモン 1/4個、はちみつ 大さじ1、お湯 200ml
作り方:カップにレモンを絞り、はちみつを入れてお湯を注ぎ、よくかき混ぜて完成です。レモンの輪切りを浮かべても良いでしょう。
生姜湯
体を芯から温め、喉の炎症を和らげます。
材料(1杯分):生姜 1片(約10g)、はちみつ 大さじ1、お湯 200ml
作り方:生姜は皮ごとすりおろすか薄くスライスします。カップに生姜とはちみつを入れ、お湯を注いでよくかき混ぜます。すりおろした生姜が気になる場合は、茶こしで濾しても構いません。
より効果を高めたい場合は、生姜を鍋で5分ほど煮出すとショウガオールが増加し、体を温める効果が高まります。
はちみつ大根シロップ
昔ながらの民間療法で、喉の痛みや咳に効果的です。
材料:大根 5cm程度、はちみつ 大根が浸かる程度
作り方:大根を1cm角のサイコロ状に切り、清潔な瓶やタッパーに入れます。大根が8分目程度まで浸かる量のはちみつを加え、蓋をして3時間〜一晩置きます。大根から水分が出てシロップ状になったら完成です。
飲み方:大さじ1杯をゆっくり舐めるように飲むか、お湯で割って飲みます。冷蔵庫で保存し、2〜3日を目安に使い切りましょう。残った大根はポン酢漬けやきんぴらにしても美味しくいただけます。
ジンジャーアップルティー
喉に良い食材であるりんご、生姜、はちみつを使った温まるドリンクです。
材料(2杯分):りんご 1/4個、生姜 1片、はちみつ 大さじ2、水 400ml
作り方:りんごは薄くスライスし、生姜は皮ごと薄切りにします。鍋に水、りんご、生姜を入れて弱火にかけ、沸騰したら中火でひと煮立ちさせます。火を止めてはちみつを加え、よく混ぜて完成です。
喉が痛いときに避けるべき飲み物
喉の痛みがあるときは、以下の飲み物は控えることをおすすめします。
アルコール
アルコールは喉の粘膜に直接刺激を与えるため、喉の痛みを悪化させる可能性があります。また、アルコールを分解するのに大量の水分を必要とするため、結果的に喉が乾燥してしまいます。度数の高いお酒は喉の粘膜を傷つける原因にもなるため、喉の痛みがあるときは回復するまで飲酒を控えましょう。
カフェインを多く含む飲み物
コーヒーや濃いお茶など、カフェインを多く含む飲み物には利尿作用があり、体内の水分が失われることで喉が乾燥し、痛みを悪化させる可能性があります。緑茶や紅茶には抗菌・抗ウイルス作用がありますが、過剰に摂取するとカフェインの影響が出る場合があるため、適量を心がけましょう。
炭酸飲料
喉が痛いときに炭酸飲料を飲むと、炭酸が喉の粘膜を刺激してさらにイガイガしやすくなります。また、炭酸飲料は冷えた状態で飲むことが多いため、これも喉を刺激する原因となります。
冷たい飲み物
冷たい飲み物は喉を刺激し、血行を悪くして回復を遅らせる可能性があります。喉の痛みがあるときは、常温か少し温かい飲み物を選びましょう。ただし、喉の痛みがひどく食欲がないときは、アイスクリームなど冷たいものが喉通りが良く食べやすいこともあります。状況に応じて判断してください。
ウーロン茶
ウーロン茶には油分を水と混ざり合わせる作用が強いため、喉を潤すのに必要な油分まで奪ってしまう可能性があります。喉に炎症が生じているときに飲むと、喉の粘膜が乾燥して痛みが強くなる恐れがあります。カラオケなど喉を酷使する場面でも、頻繁に飲まないほうが良いでしょう。
柑橘系のジュース
オレンジジュースやグレープフルーツジュースなど、柑橘系の酸味は喉を刺激し、しみて痛みが強くなることがあります。ビタミンCを摂取したい場合は、レモンを温かい飲み物に少量加える程度にとどめるか、サプリメントで補うことを検討しましょう。
牛乳
牛乳を飲むと喉の周りに膜ができやすい人は、咳込んでいるときに牛乳を飲むと痰が絡みやすくなり、余計に咳込んでしまうことがあります。バターやチーズなどの乳製品も同様の症状を招くことがあるため、咳がひどいときは控えましょう。
飲み物でケアする際の注意点
飲み物で喉のケアを行う際には、以下の点に注意してください。
こまめに少量ずつ摂取する
人が一度に吸収できる水分量は約130mlと限りがあります。一度にたくさん飲むよりも、1〜2時間に1回、コップ1杯程度の水分をこまめに摂取することで、喉の潤いを持続させることができます。
温度に注意する
熱すぎる飲み物は喉の粘膜を傷つける可能性があります。人肌程度の温かさで十分ですので、適温に冷ましてから飲むようにしましょう。
はちみつは1歳未満の乳児に与えない
はちみつには乳児ボツリヌス症の原因となるボツリヌス菌の芽胞が含まれている可能性があります。1歳未満の乳児には絶対に与えないでください。はちみつ大根シロップなど、はちみつを使った食品も同様です。
妊娠中・授乳中は成分に注意
妊娠中や授乳中は、カフェインの摂り過ぎに注意が必要です。麦茶やルイボスティー、たんぽぽコーヒーなど、カフェインを含まない飲み物を選ぶとよいでしょう。また、一部のハーブティーは妊娠中に避けた方が良いものもあるため、心配な場合は医師や薬剤師に相談してください。
飲み物だけで治そうとしない
ここでご紹介した飲み物は、あくまでも喉のケアや症状の緩和を目的としたものです。飲み物には薬のような効果を期待することはできません。症状が重い場合や長引く場合は、必ず医療機関を受診して適切な診断と治療を受けてください。
医療機関を受診すべき目安
喉の痛みは多くの場合、風邪などのウイルス感染によるもので、数日で自然に改善します。しかし、以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
緊急に受診が必要な症状
以下の症状がある場合は、詳しい検査や専門医の診療が必要になる可能性があります。救急受診を検討してください。
- 息苦しさが強い
- 水や唾液を飲み込めないほどの痛みがある
- 「ヒューヒュー」という呼吸音がする
- 口が開けられない
- 唾液が飲み込めずに垂れてくる
- 秒単位で発症を特定できるほど急激で強い痛みがある
早めに受診した方が良い症状
以下のような症状がある場合は、なるべく早めに医療機関を受診してください。
- 38度以上の発熱が何日も続いている
- 喉の痛みが強く、食事をすることも難しい
- 喉に白い膿のようなものが付いている
- 首のリンパ節が腫れて痛い
- 3日以上経っても症状が改善しない
- 咳や鼻水がなく、高熱と強い喉の痛みだけがある(溶連菌感染症の可能性)
2週間以上症状が続く場合
喉の痛みが2週間以上改善しない場合は、単なる風邪ではなく腫瘍など別の原因がある可能性もあります。症状が長引く場合は一度医療機関を受診してみてください。
受診する診療科
喉の痛みがある場合は、耳鼻咽喉科、内科、小児科(お子さんの場合)を受診しましょう。かかりつけの医療機関がある場合は、まずそちらを受診するのもよいでしょう。喉の詳しい診察が必要な場合は、耳鼻咽喉科が専門となります。

まとめ
喉の痛みを素早く和らげるためには、適切な飲み物を選んでこまめに水分補給を行うことが大切です。
喉の痛みにおすすめの飲み物としては、はちみつ入りの飲み物、生姜湯、緑茶、紅茶、はちみつ大根、ホットレモン、ハーブティー、白湯などがあります。これらの飲み物には、殺菌作用や抗炎症作用、保湿効果など、喉のケアに役立つ成分が含まれています。
一方で、アルコールや炭酸飲料、冷たい飲み物、ウーロン茶などは喉を刺激したり乾燥させたりする可能性があるため、喉が痛いときは控えましょう。
ただし、飲み物によるケアはあくまでも補助的なものです。強い痛みや高熱が続く場合、症状が改善しない場合は、医療機関を受診して適切な診断と治療を受けることが重要です。
日頃から喉の乾燥を防ぎ、こまめな水分補給を心がけることで、喉のトラブルを予防しましょう。
参考文献
- 厚生労働省「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから」
- 農林水産省「生姜は体を温める効果があるそうだが、どのような成分が働いているのですか」
- J-STAGE「ショウガ中の6-ジンゲロールの加熱調理による変化」日本調理科学会誌 Vol.48 No.6
- 伊藤園「緑茶成分によるインフルエンザ予防」
- 花王「お茶でうがい」
- 三井農林お茶科学研究所「紅茶のインフルエンザウイルス感染阻止力の研究について」
- 日本紅茶協会「紅茶のインフルエンザに対する感染伝播阻止効果」
- お茶百科「tea science tips カテキン」
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務