その他

セロトニンサプリメントの効果と選び方|知っておきたい基礎知識と注意点

はじめに

「最近なんだか気分が晴れない」「夜ぐっすり眠れない」「イライラすることが多い」——こうした日々の不調を感じている方の中には、「セロトニン」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンは、私たちの心身の健康に深く関わる神経伝達物質です。

近年、このセロトニンに着目したサプリメントが多数登場し、注目を集めています。ドラッグストアやインターネット通販で手軽に購入できることから、「試してみようかな」と考えている方も少なくないでしょう。しかし、セロトニンサプリメントとは一体どのようなものなのか、本当に効果があるのか、安全なのか——正しい知識を持つことが大切です。

この記事では、セロトニンの基本的な働きから、サプリメントの種類、効果、選び方、そして注意すべき副作用まで、医学的な観点から分かりやすく解説します。セロトニンサプリメントについて正しく理解し、ご自身の健康管理に役立てていただければ幸いです。

セロトニンとは?「幸せホルモン」の正体

セロトニンの基礎知識

セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン、略称5-HT)は、脳内の神経伝達物質のひとつです。厚生労働省の定義によれば、セロトニンは「ドパミン・ノルアドレナリンを制御し精神を安定させる働きをする」重要な物質です。

興味深いことに、私たちの体内に存在するセロトニンの分布は非常に特徴的です。体内のセロトニンの約90%は消化管(腸)に、約8%は血液中の血小板に、そしてわずか2%程度が脳内の中枢神経系に存在しています。しかし、この脳内のわずか2%のセロトニンこそが、私たちの気分や睡眠、精神状態に大きな影響を与えているのです。

セロトニンの合成メカニズム

セロトニンは、必須アミノ酸の一種であるトリプトファンから合成されます。トリプトファンは体内で自然に作ることができないため、食事から摂取する必要があります。体内に取り込まれたトリプトファンは、いくつかの酵素の働きによって、まず5-ヒドロキシトリプトファン(5-HTP)に変換され、さらにセロトニンへと変換されます。

この変換プロセスには、ビタミンB6、ナイアシン、マグネシウムといった栄養素が必要不可欠です。つまり、セロトニンを適切に生成するためには、トリプトファンだけでなく、これらの補助的な栄養素もバランスよく摂取することが重要なのです。

セロトニンの働きと役割

精神の安定化作用

セロトニンは「三大神経伝達物質」のひとつとして、脳内で重要な役割を果たしています。他の二つは、興奮や快楽に関わるドーパミンと、緊張や不安に関わるノルアドレナリンです。セロトニンは、これらドーパミンとノルアドレナリンの働きを適切にコントロールし、精神状態のバランスを保つ役割を担っています。

具体的には、緊張やストレスを感じたとき、セロトニンが分泌されることで、ノルアドレナリンやドーパミンの働きが制御され、自律神経のバランスが整えられます。これにより、不安感やイライラが和らぎ、心が落ち着いた状態を保つことができるのです。

睡眠リズムの調整

セロトニンは睡眠にも深く関わっています。日中に作られたセロトニンは、夜になると「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンの材料となります。メラトニンは体内時計に働きかけ、自然な眠りを促す重要な物質です。

つまり、日中に十分なセロトニンが生成されることで、夜間のメラトニン分泌も適切に行われ、質の良い睡眠を得ることができるのです。逆に、セロトニンが不足すると、メラトニンの生成も不十分となり、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりする可能性があります。

その他の生理作用

脳内のセロトニンだけでなく、消化管や血液中のセロトニンも重要な働きをしています。消化管のセロトニンは腸管運動(蠕動運動)の調節に関わり、血小板のセロトニンは血液凝固や血管収縮に関与しています。また、痛みの閾値調節にも働きかけるとされています。

セロトニン不足が引き起こす症状

セロトニンが不足すると、心身にさまざまな不調が現れる可能性があります。主な症状としては以下のようなものが挙げられます。

精神面の症状

  • 抑うつ気分:気分が沈み、何事にも興味が持てなくなる
  • 不安感やイライラ:些細なことで不安になったり、イライラしたりする
  • 意欲の低下:やる気が出ず、何もしたくなくなる
  • 集中力の低下:仕事や勉強に集中できない
  • 攻撃的になりやすい:感情のコントロールが難しくなる

睡眠関連の症状

  • 不眠症:なかなか寝付けない、夜中に何度も目が覚める
  • 睡眠の質の低下:眠りが浅く、朝起きてもすっきりしない
  • 日中の眠気:十分寝ているはずなのに日中眠くなる

身体面の症状

  • 慢性的な疲労感:休んでも疲れが取れない
  • 頭痛や肩こり:自律神経の乱れによる身体の不調
  • 消化器症状:便秘や下痢などの症状

実際、うつ病や不安障害、パニック障害、強迫性障害などの精神疾患では、セロトニン神経系の異常が関与していると考えられており、これらの疾患の治療にはセロトニンの働きを改善する薬剤が使用されています。

セロトニンサプリメントとは

サプリメントと医薬品の違い

ここで重要なことをお伝えしなければなりません。市販されている「セロトニンサプリメント」には、実はセロトニンそのものは配合されていません。サプリメントは薬機法(医薬品医療機器等法)上、「食品」に分類されており、セロトニンを直接配合して効果効能を謳うことは認められていないのです。

一方、医療機関で処方される抗うつ薬(SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬など)は、脳内のセロトニン濃度を高める医薬品として、厳格な臨床試験を経て承認されています。これらの医薬品は、医師の診断のもと、適切な用量が処方され、効果や副作用に関する科学的データに基づいて使用されます。

セロトニンサプリメントの本質

では、セロトニンサプリメントとは何を指すのでしょうか。これは、セロトニンの原料や合成に必要な栄養素を補給することで、体内でセロトニンが効率よく作られるよう促すことを目的とした製品です。あくまで「栄養補助食品」として、間接的にセロトニンレベルのバランスをサポートするものと理解する必要があります。

医薬品のような強い作用や確実な効果は保証されておらず、病気の治療や予防を目的としたものではありません。この点を正しく理解したうえで、サプリメントの活用を検討することが大切です。

セロトニンサプリメントの主要成分

市販されているセロトニンサプリメントには、さまざまな成分が配合されています。ここでは代表的な成分について解説します。

トリプトファン(L-トリプトファン)

特徴と働き

トリプトファンは、9種類ある必須アミノ酸のひとつで、セロトニンの最も基本的な原料となる物質です。体内で合成できないため、食事やサプリメントから摂取する必要があります。

摂取されたトリプトファンは、脳に運ばれると、ビタミンB6やナイアシン、マグネシウムなどの栄養素とともに、5-HTPを経てセロトニンに変換されます。また、セロトニンはさらにメラトニンに変換されるため、トリプトファンは睡眠の質にも間接的に影響を与えます。

含まれる食品

トリプトファンは以下のような食品に多く含まれています:

  • 乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト)
  • 大豆製品(豆腐、納豆、味噌)
  • 肉類(鶏肉、豚肉、牛肉のレバー)
  • 魚介類(カツオ、マグロ、サケ)
  • ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ)
  • バナナ

推奨摂取量と注意点

フランス食品衛生安全庁(AFSSA)では、サプリメントからのトリプトファン摂取量として1日220mgを推奨しています。体重1kgあたり約4mgが目安とされており、体重60kgの成人であれば、1日あたり約240mg程度が必要量となります。

通常の食事から十分に摂取できる量ですが、食事が不規則な方や特定の食品アレルギーがある方は、サプリメントでの補給を検討してもよいでしょう。

5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)

特徴と働き

5-HTPは、トリプトファンからセロトニンへの変換過程における中間物質です。トリプトファンよりも直接的にセロトニン合成に近い位置にあるため、より効率的にセロトニンを増やせる可能性があるとされています。

アフリカ原産の植物グリフォニア・シンプリシフォリアの種子から抽出されることが多く、サプリメントとして利用されています。

注意が必要な理由

5-HTPは血液脳関門を通過しやすいという特性がありますが、その分、過剰摂取による副作用のリスクも考慮する必要があります。特に抗うつ薬を服用している方は、セロトニン症候群のリスクがあるため、使用を避けるべきです。

ラフマ葉エキス

特徴と働き

ラフマは、中国北部や中央アジアのタクラマカン砂漠地帯に自生するキョウチクトウ科の植物です。その葉から抽出されるラフマ葉エキスには、フラボノイド配糖体であるヒペロシドとイソクエルシトリンが含まれており、これらの成分が脳内のセロトニンの分解を抑制し、セロトニン量を増加させる働きがあると報告されています。

ラフマ葉エキスに関する情報によれば、セロトニンを増加させることで、睡眠の質の改善や抗ストレス作用などの効果が期待されています。機能性表示食品として届出されている製品も存在します。

安全性

ラフマ葉エキスは、現時点で薬の効果を弱める作用は報告されていない安全性の高い成分とされています。ただし、医師から処方されている薬を服用している場合や、妊娠・授乳中の方は、使用前にかかりつけ医に相談することが推奨されます。

GABA(ギャバ)

特徴と働き

GABAはアミノ酸の一種で、脳内の抑制性神経伝達物質として働きます。セロトニンそのものではありませんが、ストレスによる緊張を和らげ、リラックス状態を促す効果があるとされています。

一時的な精神的ストレスや疲労感を軽減する機能が報告されており、セロトニンサプリメントに配合されることも多い成分です。ラフマ葉エキスとの相性が良く、相乗効果が期待できるとされています。

その他の成分

L-テアニン

緑茶に含まれるアミノ酸で、リラックス効果があるとされています。セロトニンサプリメントに配合されることも多く、心を落ち着かせる作用が期待されています。

セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)

ヨーロッパでは古くから気分の落ち込みに用いられてきたハーブです。ただし、多くの医薬品との相互作用があることが知られており、使用には注意が必要です。

ビタミンB群

特にビタミンB6は、トリプトファンからセロトニンへの変換に必要な補酵素として働きます。ビタミンB群が配合されたサプリメントは、セロトニン合成をより効率的にサポートします。

セロトニンサプリメントの効果とエビデンス

期待される効果

セロトニンサプリメントに配合される成分から期待される効果としては、以下のようなものが挙げられます:

精神面への効果

  • 気分の安定化
  • 不安感の軽減
  • ストレスへの対処力向上
  • イライラの緩和

睡眠への効果

  • 寝つきの改善
  • 睡眠の質の向上
  • 起床時のすっきり感
  • 日中の眠気の軽減

その他の効果

  • 集中力の向上
  • 記憶力のサポート
  • PMSの症状緩和
  • 鎮痛効果

科学的エビデンスについて

トリプトファンに関する研究では、トリプトファンの多い食事を摂取したグループで、抑うつ症状が軽くなり、精神面での安定がみられたとする研究結果が報告されています。また、月経前症候群(PMS)の患者を対象とした研究では、トリプトファンの摂取により、気分の変調や緊張、イライラなどの症状が改善されたという報告もあります。

しかし、重要なのは、これらの効果は「うつ病の治療方法として確立されたものではない」という点です。厚生労働省の情報でも言及されているように、今後もさらなる研究が必要とされています。

効果に個人差がある理由

サプリメントの効果には個人差があります。その理由として以下のような要因が考えられます:

  1. 体質や代謝の違い:同じ量を摂取しても、体内での吸収や代謝には個人差があります
  2. 生活習慣の影響:食事内容、睡眠時間、運動習慣などがセロトニン生成に影響します
  3. ストレスレベル:慢性的なストレス状態では、サプリメントだけでは効果が実感しにくい場合があります
  4. 原因の多様性:気分の落ち込みや不眠の原因が、セロトニン不足だけとは限りません

セロトニンサプリメントの選び方

成分表示を確認する

サプリメントを選ぶ際は、まず成分表示をしっかり確認しましょう。トリプトファンが配合されているか、配合量はどれくらいか、その他にどのような成分が含まれているかを確認することが大切です。

残念ながら、「セロトニンサプリ」と銘打たれていても、トリプトファンが含まれていない悪質な製品も存在します。必ずトリプトファンやその他の有効成分が含まれているかチェックしましょう。

品質基準をチェックする

GMP認証

GMP(Good Manufacturing Practice)は、厚生労働省が定めた製造管理・品質管理基準です。GMP認証を受けた工場で製造された製品は、一定の品質が保証されています。サプリメントのパッケージや公式サイトで「GMP認証」の表示があるか確認しましょう。

機能性表示食品

機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。消費者庁に届出が行われており、一定の安全性と機能性の根拠が示されています。特にラフマ葉エキス配合の製品では、機能性表示食品として届出されているものも多くあります。

配合成分のバランス

セロトニン合成には、トリプトファンだけでなく、ビタミンB6、ナイアシン、マグネシウムなどの栄養素が必要です。これらの栄養素がバランスよく配合されている製品を選ぶと、より効果的にセロトニン生成をサポートできる可能性があります。

飲みやすさ

サプリメントは継続して摂取することが大切です。カプセルタイプ、タブレットタイプ、パウダータイプなど、自分にとって飲みやすい形状のものを選びましょう。カプセルが大きすぎて飲み込みにくい場合は、小さめのタブレットやパウダータイプを検討するとよいでしょう。

価格と継続性

サプリメントは短期間で劇的な効果が現れるものではありません。少なくとも数週間から数か月は継続する必要があります。そのため、無理なく続けられる価格帯の製品を選ぶことも重要です。

注意すべき副作用とリスク

トリプトファンの過剰摂取

トリプトファンを1日に3,000mg〜6,000mg程度摂取し続けると、以下のような副作用が報告されています:

  • 無気力感
  • 吐き気
  • 頭痛
  • 筋力低下
  • 嘔吐

通常の食事からの摂取で過剰になることはほとんどありませんが、サプリメントを利用する場合は注意が必要です。マグロの刺身10人前に相当する3,000mg以上の摂取は避けるべきです。

長期摂取のリスク

トリプトファンを長期間過剰に摂取すると、以下のような重大な健康被害のリスクがあります:

肝臓への影響

過剰なトリプトファンは肝臓で脂肪の変化を引き起こし、肝硬変を招く恐れがあると報告されています。特に肝硬変の患者が長期的に摂取すると、脳内のセロトニンが過剰になり、脳機能が低下して昏睡状態に陥る危険性があります。

脳疲労の可能性

トリプトファンの代謝過程で生成されるキヌレン酸という物質が、記憶や集中を促すアセチルコリンの働きを抑制するため、脳疲労の原因になる可能性があるという指摘もあります。「ちょっとしたことが思い出せない」「考えがうまくまとまらない」などの症状が見られたら、摂取量を見直す必要があります。

薬剤との相互作用

抗うつ薬との併用

最も重要な注意点は、抗うつ薬との併用です。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などのセロトニンを増やす作用を持つ抗うつ薬を服用している方が、トリプトファンサプリメントを併用すると、体内のセロトニン量が過剰になり、重篤な副作用(セロトニン症候群)を引き起こす可能性があります。

セロトニン症候群の症状には以下のようなものがあります:

  • 不安感の増大
  • 錯乱
  • 発熱
  • 発汗
  • 震え
  • 筋肉の硬直
  • 頻脈
  • 血圧の変動

抗うつ薬を服用中の方は、サプリメントの使用を避け、食事からの摂取のみに留めるべきです。必ずかかりつけ医に相談してください。

その他の薬剤

セントジョーンズワートを含むサプリメントは、多くの医薬品と相互作用を起こすことが知られています。経口避妊薬、抗凝固薬、抗がん剤、免疫抑制剤など、さまざまな薬剤の効果を弱める可能性があるため、医薬品を服用している方は医師や薬剤師に相談が必要です。

特定の健康状態での注意

妊娠中・授乳中

妊娠中や授乳中の女性に対するトリプトファンサプリメントの安全性については、十分な研究がありません。つわりによるストレスなどでサプリメントの使用を検討する場合は、必ず産婦人科医に相談してください。

子ども

子どもを対象とした臨床試験はほとんど行われていないため、安全性が確立されていません。子どもへの使用は、医師に相談のうえ慎重に判断する必要があります。

精神疾患の診断がある方

うつ病、不安障害、パニック障害などの診断を受けている方は、自己判断でサプリメントを使用せず、必ず主治医に相談してください。適切な医療を受けることが最優先です。

過去の健康被害事例

1989年にアメリカで発生したL-トリプトファンサプリメントによる健康被害は、サプリメントの安全性について考える重要な事例です。日本で製造されたトリプトファンサプリメントを摂取した多数の人が、好酸球増多筋痛症候群(EMS)という病気を発症し、死亡者も出ました。

調査の結果、製品中の不純物と過剰摂取が原因と推定されました。この事例は、サプリメントであっても重大な健康被害を引き起こす可能性があることを示しています。だからこそ、品質が保証された製品を選び、適切な用量を守ることが極めて重要なのです。

サプリメント以外でセロトニンを増やす方法

セロトニンを増やすためには、サプリメントに頼るだけでなく、生活習慣全体を見直すことが最も効果的です。実際、多くの専門家は、まず生活習慣の改善を試みることを推奨しています。

日光浴

太陽の光を浴びることは、セロトニンの分泌を促進する最も自然で効果的な方法のひとつです。山梨県厚生連健康管理センターの情報によれば、起床直後から30分までの朝の光が特に重要とされています。

1日15分〜30分程度の日光浴を意識するとよいでしょう。セロトニンは無限に増えるわけではないため、長時間浴び続ける必要はありません。朝起きたらカーテンを開け、窓際で朝食を摂る、通勤時に少し歩くなど、日常生活に取り入れやすい方法を見つけましょう。

リズミカルな運動

セロトニン神経は、一定のリズムを刻む運動によって活性化されることが分かっています。効果的な運動としては:

  • ウォーキング:最も取り入れやすいリズム運動
  • ジョギング:無理のないペースで継続的に
  • サイクリング:景色を楽しみながら
  • 水泳:全身を使った有酸素運動
  • ダンス:音楽に合わせて楽しく
  • 咀嚼(そしゃく):食事の際によく噛むことも効果的
  • 呼吸法:意識的な腹式呼吸

重要なのは、激しい運動ではなく、一定のリズムを保ちながら継続することです。1日20〜30分程度の軽い運動を習慣化することが理想的です。

バランスの取れた食事

セロトニンの材料となるトリプトファンを食事から摂取することが基本です。以下の食品を意識的に取り入れましょう:

トリプトファンが豊富な食品

  • 大豆製品(豆腐、納豆、味噌)
  • 乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト)
  • 肉類(鶏肉、豚肉、牛肉)
  • 魚介類(カツオ、マグロ、サケ)
  • バナナ
  • ナッツ類

ビタミンB6を含む食品

セロトニン合成には補酵素としてビタミンB6が必要です:

  • 魚類(マグロ、カツオ、サケ)
  • 肉類(レバー、鶏胸肉)
  • バナナ
  • にんにく
  • ブロッコリー

炭水化物の重要性

トリプトファンを脳内に効率よく運ぶためには、炭水化物も必要です。過度な糖質制限は避け、適量の炭水化物(ご飯、パン、麺類など)を摂取しましょう。

質の良い睡眠

睡眠とセロトニンは密接に関係しています。質の良い睡眠を得るためのポイント:

  • 規則正しい睡眠時間:毎日同じ時間に寝て起きる
  • 寝る前の環境づくり:暗く静かな部屋、適温の室温
  • ブルーライトを避ける:就寝1〜2時間前はスマートフォンやパソコンの使用を控える
  • リラックスタイム:入浴、ストレッチ、読書など
  • カフェインを控える:午後からはカフェイン摂取を避ける

ストレスマネジメント

慢性的なストレスはセロトニンの分泌を低下させます。効果的なストレス対策:

  • リラクゼーション:瞑想、ヨガ、深呼吸
  • 趣味の時間:好きなことをする時間を確保
  • 人とのつながり:家族や友人との交流
  • 自然との触れ合い:公園散歩、ガーデニング
  • 笑うこと:コメディ映画を観る、友人と楽しく過ごす

腸内環境の改善

セロトニンの大部分は腸で作られています。腸内環境を整えることも重要です:

  • 発酵食品:ヨーグルト、納豆、キムチ、味噌
  • 食物繊維:野菜、果物、全粒穀物
  • 水分補給:適切な水分摂取
  • プロバイオティクス・プレバイオティクス:善玉菌とその餌となる成分

いつ医療機関に相談すべきか

セロトニンサプリメントを検討する前に、まず医療機関への相談が必要な場合があります。以下のような状態が2週間以上続く場合は、心療内科や精神科を受診することをお勧めします。

受診を検討すべき症状

深刻な抑うつ症状

  • 1日中気分が沈んでいる
  • 何をしても楽しくない、興味が持てない
  • 自分には価値がないと感じる
  • 死にたいと思うことがある
  • 集中力が著しく低下している
  • 決断ができない

日常生活への支障

  • 仕事や学業に支障が出ている
  • 人間関係がうまくいかない
  • 日常的な活動(買い物、家事など)ができない
  • 外出するのが困難

身体症状を伴う場合

  • 原因不明の体重減少または増加
  • 食欲不振または過食
  • 頭痛、胃痛、動悸などの身体症状
  • 慢性的な疲労感

専門的な治療の重要性

うつ病や不安障害などの精神疾患は、適切な医療によって改善が期待できる病気です。サプリメントによる自己判断での対処は、適切な治療の開始を遅らせる可能性があります。

医療機関では、詳細な診察と検査により正確な診断が行われ、必要に応じて以下のような治療が提供されます:

  • 薬物療法:抗うつ薬、抗不安薬など、科学的根拠に基づいた医薬品
  • 精神療法:認知行動療法、対人関係療法など
  • 生活指導:睡眠、食事、運動についての具体的なアドバイス
  • 社会的サポート:必要に応じて福祉サービスとの連携

サプリメント使用時の相談

すでにサプリメントを使用している場合や、使用を検討している場合は、以下のような状況では必ず医療専門家に相談してください:

  • 現在、何らかの医薬品を服用している
  • 持病がある(肝臓病、腎臓病、精神疾患など)
  • 妊娠中または授乳中
  • アレルギー体質
  • 過去にサプリメントで体調不良を経験した

まとめ

セロトニンサプリメントについて、その基礎知識から効果、選び方、注意点まで詳しく解説してきました。重要なポイントをまとめます。

理解しておくべき基本事項

  1. セロトニンは重要な神経伝達物質
    • 精神の安定、睡眠、気分調節に深く関わる
    • 体内のセロトニンの約90%は腸に存在
    • 脳内のわずか2%が精神面に影響
  2. サプリメントは原料を補給するもの
    • セロトニンそのものは配合されていない
    • トリプトファンなどの原料や補助成分を提供
    • 医薬品とは異なり、確実な効果は保証されない
  3. 適切な使用が重要
    • 推奨量を守る(1日220mg程度)
    • 品質が保証された製品を選ぶ
    • 長期的な過剰摂取は避ける

サプリメント使用時の注意

  • 医薬品(特に抗うつ薬)との併用は危険
  • 妊娠中・授乳中、子どもへの使用は医師に相談
  • 精神疾患の診断がある場合は主治医の指示に従う
  • 副作用が現れたら使用を中止し、医療機関を受診

生活習慣の改善が基本

サプリメントに頼る前に、まず以下の生活習慣を見直しましょう:

  • 毎日15〜30分の日光浴
  • リズミカルな運動(ウォーキングなど)
  • バランスの取れた食事
  • 質の良い睡眠
  • 適切なストレスマネジメント
  • 腸内環境の改善

医療機関への相談を優先

深刻な抑うつ症状や日常生活に支障が出ている場合は、サプリメントではなく、心療内科や精神科での専門的な治療を受けることが重要です。適切な診断と治療により、多くの精神疾患は改善が期待できます。

セロトニンサプリメントは、あくまで健康な生活をサポートする補助的なツールです。正しい知識を持ち、適切に使用することで、心身の健康維持に役立てることができるでしょう。不安や疑問がある場合は、必ず医療専門家に相談してください。

参考文献

本記事は以下の信頼できる情報源を参考に作成しました:

  1. 厚生労働省 e-ヘルスネット「セロトニン」
  2. 厚生労働省「こころの病気について」
  3. 脳科学辞典「セロトニン」
  4. 脳科学辞典「セロトニン神経系」
  5. 山梨県厚生連健康管理センター「セロトニンを増やす方法とは?」
  6. 医療法人社団 平成医会「セロトニンの増加が心身に及ぼす効果」
  7. 一般社団法人 日本血栓止血学会「セロトニン」
  8. 大正製薬 腸活ナビ「幸せホルモンは脳と腸、どちらでつくられる?」
  9. グリーンハウス株式会社「ラフマ」

医療に関する免責事項

本記事は医療情報を提供するものであり、特定の医薬品やサプリメントの使用を推奨するものではありません。個々の健康状態に応じた適切な対処については、必ず医師や医療専門家にご相談ください。サプリメントの使用に際しては、製品の注意事項をよく読み、用法・用量を守ってご使用ください。

監修者医師

高桑 康太 医師

略歴

  • 2009年 東京大学医学部医学科卒業
  • 2009年 東京逓信病院勤務
  • 2012年 東京警察病院勤務
  • 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
  • 2019年 当院治療責任者就任

佐藤 昌樹 医師

保有資格

日本整形外科学会整形外科専門医

略歴

  • 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
  • 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
  • 2012年 東京逓信病院勤務
  • 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
  • 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務
電話予約
0120-335-661
1分で入力完了
簡単Web予約