はじめに
インフルエンザは毎年冬になると流行する感染症で、高熱や全身の倦怠感など、風邪とは異なる強い症状が特徴です。インフルエンザが疑われる症状が出た際、多くの方が「すぐに病院で検査を受けるべきか」「どのタイミングで検査すれば正確な結果が出るのか」と悩まれることでしょう。
インフルエンザ検査は、適切な治療を開始するために重要な検査ですが、検査のタイミングや方法によって精度が変わることをご存じでしょうか。本記事では、インフルエンザ検査について、検査の種類や方法、適切な受診タイミング、結果の解釈まで、患者さんが知っておくべき情報を詳しく解説していきます。
インフルエンザとは
インフルエンザの基本知識
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる急性呼吸器感染症です。A型、B型、C型の3つの型がありますが、流行の原因となるのは主にA型とB型です。
インフルエンザウイルスは変異しやすい性質を持っており、毎年少しずつ異なる型のウイルスが流行します。そのため、過去にインフルエンザにかかったことがある方や、ワクチンを接種した方でも、再び感染する可能性があります。
主な症状
インフルエンザの典型的な症状には以下のようなものがあります:
- 突然の高熱(38℃以上)
- 悪寒・寒気
- 全身倦怠感
- 関節痛・筋肉痛
- 頭痛
- 咳・喉の痛み
- 鼻水・鼻づまり
風邪との大きな違いは、症状の出方が急激であることと、全身症状が強く現れることです。風邪の場合は徐々に症状が現れることが多く、局所症状(鼻水、喉の痛みなど)が中心となります。
感染経路と潜伏期間
インフルエンザは主に以下の経路で感染します:
- 飛沫感染:感染者の咳やくしゃみによって飛び散ったウイルスを含む飛沫を吸い込むことで感染
- 接触感染:ウイルスが付着した物や手を介して、口や鼻の粘膜から感染
潜伏期間は通常1〜3日程度で、感染してから比較的短期間で症状が現れます。また、発症する1日前から発症後5〜7日程度まで、他の人に感染させる可能性があります。
インフルエンザ検査の重要性
なぜ検査が必要なのか
インフルエンザの症状は風邪や他の呼吸器感染症と似ているため、症状だけでは確実な診断が困難です。しかし、インフルエンザであることが確認できれば、以下のようなメリットがあります:
- 抗インフルエンザ薬による早期治療
- タミフル、リレンザ、イナビルなどの抗インフルエンザ薬は、発症後48時間以内に使用することで、症状を軽減し、罹病期間を短縮する効果があります
- 重症化の予防
- 高齢者や基礎疾患のある方、小児では重症化リスクが高いため、早期診断・早期治療が特に重要です
- 感染拡大の防止
- 確定診断により、適切な感染対策を取ることができ、家族や職場、学校での感染拡大を防げます
- 学校や職場への報告
- 学校保健安全法により、インフルエンザと診断された場合は出席停止期間が定められています
検査を受けるべき人
以下のような方は、特にインフルエンザ検査を受けることをお勧めします:
- 高熱(38℃以上)がある方
- インフルエンザ様症状がある方
- 高齢者(65歳以上)
- 基礎疾患のある方(糖尿病、心疾患、呼吸器疾患、腎疾患など)
- 妊娠中の方
- 5歳未満の小児
- インフルエンザ患者との濃厚接触があった方
インフルエンザ検査の種類
インフルエンザの検査にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。
迅速抗原検査(イムノクロマト法)
最も一般的な検査方法
迅速抗原検査は、医療機関で最も広く使用されている検査方法です。検査キットを使用して、鼻やのどから採取した検体中のインフルエンザウイルスの抗原を検出します。
特徴:
- 検査時間:約15〜30分で結果が出る
- 検出対象:A型とB型を判別可能
- 精度:感度は約60〜70%程度
- 実施場所:多くのクリニックや病院で実施可能
メリット:
- 短時間で結果が分かる
- 特別な機器が不要で、多くの医療機関で実施できる
- その場で治療方針を決定できる
デメリット:
- ウイルス量が少ない発症初期では偽陰性(実際は感染しているのに陰性と出る)の可能性がある
- PCR検査と比べると感度が低い
RT-PCR検査(リアルタイムPCR法)
高精度な検査方法
RT-PCR検査は、ウイルスの遺伝子を増幅して検出する方法で、迅速抗原検査よりも高い精度を持ちます。
特徴:
- 検査時間:数時間〜1日程度
- 検出対象:A型、B型の判別に加え、亜型の特定も可能
- 精度:感度は約95%以上と高い
- 実施場所:専門的な検査機器が必要
メリット:
- 非常に高い精度で診断できる
- ウイルス量が少ない場合でも検出可能
- 詳細なウイルスの型を特定できる
デメリット:
- 結果が出るまでに時間がかかる
- 実施できる医療機関が限られる
- コストが高い
ウイルス分離・培養検査
研究や確定診断に使用
実際にウイルスを培養して同定する方法で、主に研究目的や疫学調査で使用されます。
特徴:
- 検査時間:数日〜1週間程度
- 精度:非常に高い
- 実施場所:専門的な研究施設や検査機関
この検査は日常的な臨床診断では使用されず、主にウイルスの性質を詳しく調べる必要がある場合に実施されます。
血清抗体検査
過去の感染を確認
血液中のインフルエンザウイルスに対する抗体を測定する検査です。
特徴:
- 検査時間:数日程度
- 用途:過去の感染やワクチンの効果を確認
この検査は、現在進行形の感染を診断する目的ではなく、疫学調査や研究目的で主に使用されます。
インフルエンザ検査の方法
検体採取の手順
鼻腔拭い液採取
最も一般的な採取方法で、多くの医療機関で採用されています。
手順:
- 患者さんに軽く上を向いてもらう
- 専用の綿棒(スワブ)を鼻の奥(鼻腔)に約2〜3cm挿入
- 鼻腔の内壁に綿棒を押し当て、数回回転させる
- ゆっくりと綿棒を引き抜く
- 採取した検体を検査キットに滴下
特徴:
- 比較的簡便で、短時間で採取できる
- ウイルス量が比較的多く検出されやすい
- 若干の不快感を伴う場合がある
鼻咽頭拭い液採取
より確実にウイルスを検出するために、鼻の奥深く(鼻咽頭)から検体を採取する方法です。
手順:
- 患者さんに軽く上を向いてもらう
- 細長い専用の綿棒を鼻から挿入
- 鼻咽頭(鼻の奥の突き当たり)まで到達させる
- 数秒間その位置で綿棒を保持
- ゆっくりと引き抜く
特徴:
- 鼻腔採取よりも高いウイルス検出率
- PCR検査などの精密検査に適している
- 鼻腔採取よりも不快感が強い場合がある
咽頭拭い液採取
喉の奥から検体を採取する方法です。
手順:
- 口を大きく開けてもらう
- 舌圧子で舌を押さえる
- 綿棒で咽頭後壁や扁桃腺付近を擦る
- 採取した検体を検査キットに滴下
特徴:
- 鼻からの採取が困難な場合の代替法
- 嘔吐反射が起こることがある
- 鼻腔採取と比べるとウイルス検出率がやや低い
検査の流れ
一般的な医療機関でのインフルエンザ検査の流れは以下の通りです:
- 受付・問診
- 症状の確認、発症時期の聴取
- 体温測定
- 診察
- 全身状態の確認
- 喉や胸の聴診
- インフルエンザ検査の必要性の判断
- 検体採取
- 鼻腔または咽頭から検体を採取(数十秒程度)
- 検査実施
- 迅速検査の場合、検査キットに検体を滴下
- 15〜30分待機
- 結果説明
- 検査結果に基づいた診断
- 治療方針の決定
- 今後の注意事項の説明
検査を受ける適切なタイミング
インフルエンザ検査の精度は、受診するタイミングによって大きく変わります。適切なタイミングで検査を受けることが、正確な診断につながります。
発症からの時間と検査精度の関係
発症直後(0〜12時間)
発症直後はウイルス量がまだ少ないため、迅速抗原検査では偽陰性(実際は感染しているのに陰性と出る)になる可能性が高くなります。
- 検出率:約30〜50%
- 注意点:この時期の陰性結果は確実ではない
発症後12〜24時間
ウイルスが増殖し始め、検出率が上がってきます。
- 検出率:約50〜70%
- 注意点:まだ偽陰性の可能性がある
発症後24〜48時間(推奨時期)
ウイルス量が十分に増え、最も検出率が高くなる時期です。
- 検出率:約80〜90%
- ポイント:この時期が検査の最適なタイミング
発症後48時間以降
ウイルス量は十分ですが、抗インフルエンザ薬の効果が得られにくくなります。
- 検出率:約80〜90%
- 注意点:治療開始のタイミングとしては遅い
推奨される受診タイミング
理想的なタイミング: 発症後12〜48時間以内、特に発症後24時間前後が最も適切です。
理由:
- 検査精度:ウイルス量が十分で、偽陰性のリスクが低い
- 治療効果:抗インフルエンザ薬の効果が最も期待できる
- 症状軽減:早期治療により、重症化や合併症のリスクを減らせる
早すぎる受診のリスク
発症直後に受診して陰性と判定されても、実際にはインフルエンザに感染している可能性があります。このような場合、以下のような対応が必要になることがあります:
- 翌日または翌々日に再検査
- 症状が改善しない場合は再受診
- 臨床症状からインフルエンザの可能性が高い場合は、陰性でも治療を開始する場合がある
夜間・休日の受診判断
以下のような場合は、夜間や休日でも救急外来の受診を検討してください:
- 高熱が続き、水分が摂れない
- 呼吸困難、胸痛がある
- 意識がもうろうとしている
- けいれんを起こした
- 乳幼児で哺乳ができない
- 高齢者や基礎疾患のある方で症状が急速に悪化
軽度の症状で夜間に発症した場合は、翌朝まで様子を見て、翌日に受診することも選択肢の一つです。ただし、症状が悪化した場合は速やかに医療機関を受診してください。
検査結果の見方と解釈
迅速検査キットの判定方法
迅速抗原検査では、検査キットに現れるラインの有無で判定します。
判定ライン:
- C(コントロール)ライン:検査が正しく実施されたことを示すライン(必ず出現)
- T(テスト)ライン:ウイルスが検出された場合に出現するライン
- A型用ライン:A型インフルエンザウイルスが検出された場合に出現
- B型用ライン:B型インフルエンザウイルスが検出された場合に出現
判定結果:
- 陽性:TラインまたはA型/B型ラインが出現
- 陰性:Cラインのみ出現
- 無効:Cラインが出現しない(検査のやり直しが必要)
陽性と診断された場合
インフルエンザ陽性と診断された場合、以下の対応が必要です:
治療:
- 抗インフルエンザ薬の処方を受ける(発症後48時間以内が推奨)
- 解熱剤や咳止めなどの対症療法薬の使用
- 十分な休養と水分摂取
感染対策:
- 発症後5日間、かつ解熱後2日間は外出を控える
- マスクの着用
- 手洗い・手指消毒の徹底
- 家族内での感染対策(別室での療養、タオルの共有を避けるなど)
出席・出勤:
- 学校:発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児は3日)を経過するまで出席停止
- 職場:会社の規定に従う(多くの場合、学校に準じた基準)
陰性と診断された場合
陰性の結果が出ても、以下の点に注意が必要です:
偽陰性の可能性: 発症早期の検査では、実際にはインフルエンザに感染していても陰性と出ることがあります。
対応:
- 症状が続く場合は、翌日または翌々日に再検査を検討
- 高熱や強い全身症状が持続する場合は、インフルエンザの可能性を念頭に置いた対応
- 医師の判断により、陰性でも臨床症状からインフルエンザと診断し、治療を開始する場合がある
他の疾患の可能性: インフルエンザ以外の感染症(新型コロナウイルス感染症、RSウイルス感染症、溶連菌感染症など)の可能性も考慮
検査の限界を理解する
迅速抗原検査には以下のような限界があることを理解しておくことが重要です:
感度の限界:
- 感度は約60〜70%程度
- 感染していても陰性になる可能性が約30〜40%ある
タイミングの重要性:
- 発症早期では偽陰性になりやすい
- 発症後数日経過すると検出率が上がる
ウイルス量の影響:
- ウイルス量が少ない場合は検出されにくい
- 症状が軽い場合は、感染していても陰性になることがある
総合的な判断: 検査結果だけでなく、以下の要素を総合的に判断することが重要です:
- 臨床症状(発熱、全身倦怠感、筋肉痛など)
- 流行状況
- 接触歴
- 症状の経過
インフルエンザ検査の費用と保険適用
保険診療の場合
インフルエンザが疑われる症状があり、医師が必要と判断した場合、検査は保険適用となります。
自己負担額の目安(3割負担の場合):
- 初診料:約900円
- 迅速抗原検査:約450円
- 診察料や処方箋料など:約500〜1,000円
- 合計:約2,000〜2,500円程度
※実際の費用は医療機関や診療内容によって異なります
保険適用の条件:
- インフルエンザを疑う症状がある
- 医師が検査の必要性を認めた場合
- 診断・治療目的での検査
自費診療の場合
以下のような場合は、自費診療となることがあります:
- 症状がないが、確認のために検査を希望する場合
- 職場や学校から陰性証明を求められた場合(症状がない場合)
- 海外渡航前のスクリーニング検査
費用の目安: 約5,000〜10,000円程度(医療機関によって異なります)
子どもや高齢者の負担軽減
子ども医療費助成制度: 多くの自治体では、子どもの医療費助成制度があり、インフルエンザの検査・治療費が無料または低額になる場合があります。
高齢者の負担軽減:
- 75歳以上:後期高齢者医療制度により1割または2割負担
- 世帯の所得によって負担割合が異なる場合がある
助成制度の確認: お住まいの自治体や加入している健康保険組合に確認してください。
インフルエンザと診断された後の対応
抗インフルエンザ薬について
主な抗インフルエンザ薬:
- タミフル(オセルタミビル)
- 形態:カプセル、ドライシロップ
- 服用方法:1日2回、5日間
- 特徴:最も広く使用されている
- リレンザ(ザナミビル)
- 形態:吸入薬
- 服用方法:1日2回、5日間
- 特徴:5歳以上で使用可能
- イナビル(ラニナミビル)
- 形態:吸入薬
- 服用方法:1回のみ
- 特徴:服薬コンプライアンスが良い
- ゾフルーザ(バロキサビル)
- 形態:錠剤
- 服用方法:1回のみ
- 特徴:新しいタイプの薬
効果:
- 発症後48時間以内の服用で効果が高い
- 症状の持続期間を1〜2日短縮
- 重症化のリスクを軽減
注意点:
- 薬を使用しても、すぐに症状が改善するわけではない
- 異常行動のリスクについて理解しておく(特に小児・未成年)
- 医師の指示通りに最後まで服用する
自宅での療養方法
基本的な対応:
- 安静と休養
- 十分な睡眠を取る
- 無理をせず、体力の回復を優先
- 水分補給
- こまめに水分を摂る
- スポーツドリンクや経口補水液も有効
- 脱水症状に注意
- 栄養補給
- 消化の良い食事を心がける
- 食欲がない場合は、無理に食べなくてもよい
- おかゆ、うどん、スープなど
- 部屋の環境
- 適度な湿度(50〜60%)を保つ
- 室温を快適に保つ(20〜23℃程度)
- 定期的な換気
- 解熱剤の使用
- 38.5℃以上の高熱で辛い場合に使用
- アセトアミノフェンが推奨される
- アスピリンは使用しない(特に小児)
家族への感染を防ぐために
感染対策:
- 隔離
- 可能であれば別室で療養
- 共有スペースの使用を最小限に
- マスクの着用
- 患者はマスクを着用
- 看病する人もマスクを着用
- 手洗い・消毒
- こまめな手洗い
- アルコール消毒の実施
- 物の共有を避ける
- タオル、食器などは別にする
- 使用後は適切に洗浄・消毒
- 換気
- 1〜2時間ごとに換気
- 空気の入れ替えを行う
受診が必要な症状
以下のような症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください:
- 呼吸困難、息苦しさ
- 胸の痛み
- 意識障害、反応が鈍い
- けいれん
- 持続する嘔吐
- 水分が摂れない
- 尿が半日以上出ない
- 症状が改善せず悪化する
インフルエンザの合併症
インフルエンザは、適切に対処すれば通常1週間程度で回復しますが、以下のような合併症を起こすことがあります。
肺炎
インフルエンザ肺炎:
- ウイルス自体が肺に感染して起こる
- 重症化しやすく、注意が必要
二次性細菌性肺炎:
- インフルエンザの後に細菌感染が加わって起こる
- 肺炎球菌、黄色ブドウ球菌などが原因
症状:
- 咳が続く
- 呼吸困難
- 胸の痛み
- 高熱が続く
インフルエンザ脳症
主に小児に見られる重篤な合併症です。
症状:
- 意識障害
- けいれん
- 異常行動
- 嘔吐
特徴:
- 発症後数日以内に起こることが多い
- 早期発見・早期治療が重要
- 後遺症を残すことがある
心筋炎・心膜炎
まれですが、心臓に炎症が起こることがあります。
症状:
- 胸痛
- 動悸
- 息切れ
- 呼吸困難
筋炎
特に小児に見られる合併症です。
症状:
- 筋肉痛(特にふくらはぎ)
- 筋力低下
- 歩行困難
合併症のリスクが高い人
以下のような方は、合併症のリスクが高いため、特に注意が必要です:
- 65歳以上の高齢者
- 5歳未満の小児(特に2歳未満)
- 妊婦
- 基礎疾患のある方(心疾患、呼吸器疾患、糖尿病、腎疾患など)
- 免疫抑制状態にある方
これらの方は、インフルエンザの症状が出たら、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
インフルエンザの予防
ワクチン接種
最も効果的な予防法
インフルエンザワクチンは、感染や重症化を予防する最も効果的な方法です。
接種時期:
- 10月下旬〜12月上旬が推奨
- 流行前に接種を完了することが理想的
効果:
- 感染予防効果:約50〜60%
- 重症化予防効果:約80%
- 効果は接種後2週間程度で現れ、約5ヶ月持続
接種回数:
- 13歳以上:1回または2回
- 13歳未満:2回(2〜4週間間隔)
推奨される人:
- 高齢者
- 基礎疾患のある方
- 小児
- 妊婦
- 医療従事者
- 高齢者や乳幼児と接する機会が多い方
日常生活での予防
基本的な感染対策:
- 手洗い
- 外出後、食事前、トイレ後などにこまめに手洗い
- 石鹸を使って30秒以上洗う
- 手指消毒用アルコールも効果的
- マスクの着用
- 流行期には人混みでマスクを着用
- 咳やくしゃみが出る場合は必ずマスクを着用
- 咳エチケット
- 咳やくしゃみをする際は、ティッシュや肘の内側で口と鼻を覆う
- 使用したティッシュはすぐに捨てる
- 人混みを避ける
- 流行期は不要不急の外出を控える
- やむを得ず外出する場合はマスクを着用
- 換気
- 室内の空気を定期的に入れ替える
- 1〜2時間に1回、数分間の換気
- 湿度の管理
- 室内湿度を50〜60%に保つ
- 加湿器の使用や濡れタオルの活用
- 体調管理
- 十分な睡眠
- バランスの取れた食事
- 適度な運動
- ストレス管理
流行状況の把握
情報源:
- 厚生労働省の感染症情報
- 国立感染症研究所のインフルエンザ流行レベルマップ
- 地域の保健所の情報
流行状況を把握し、流行期には特に予防対策を徹底することが重要です。
新型コロナウイルス感染症との違い
インフルエンザと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、症状が似ているため区別が困難です。
症状の比較
共通する症状:
- 発熱
- 咳
- 倦怠感
- 筋肉痛
- 頭痛
- 喉の痛み
インフルエンザに特徴的:
- 突然の高熱
- 強い全身症状(筋肉痛、関節痛)
COVID-19に特徴的:
- 味覚・嗅覚障害
- 息切れ、呼吸困難
- 症状の出方が緩やか
同時検査の重要性
症状だけでは区別が困難なため、必要に応じてインフルエンザとCOVID-19の両方を検査することが推奨されます。
同時検査キット:
- 1回の検体採取で両方の検査が可能
- 15〜30分程度で結果が出る
- 多くの医療機関で実施可能
感染対策の共通点
インフルエンザもCOVID-19も、基本的な感染対策は同じです:
- 手洗い・手指消毒
- マスクの着用
- 換気
- 人混みを避ける
- 体調不良時は外出を控える

よくある質問
A. 発症直後は検査の精度が低いため、可能であれば発症後12〜24時間経ってから受診することが推奨されます。ただし、以下の場合はすぐに受診してください:
呼吸困難や胸痛がある
高齢者や基礎疾患がある
乳幼児で哺乳ができない
意識障害やけいれんがある
A. はい、あります。特に発症早期の検査では、実際にインフルエンザに感染していても陰性と出ることがあります(偽陰性)。症状が続く場合は、翌日または翌々日に再検査を検討してください。
Q3. 家族がインフルエンザになりました。予防のために薬をもらえますか?
A. 予防投与が認められる場合があります。以下の条件を満たす場合、医師の判断で抗インフルエンザ薬の予防投与を受けられることがあります:
- 同居家族がインフルエンザと診断された
- 高齢者や基礎疾患があるなど、重症化リスクが高い
- インフルエンザ患者と接触後48時間以内
ただし、予防投与は保険適用外となる場合が多く、自費診療となります。
Q4. インフルエンザの検査は痛いですか?
A. 鼻から綿棒を挿入するため、若干の不快感や違和感を伴うことがありますが、痛みは通常わずかです。検査自体は数十秒程度で終わります。咽頭から採取する場合は、嘔吐反射が起こることがあります。
Q5. 解熱したら外出してもいいですか?
A. いいえ。解熱しても、発症後5日間、かつ解熱後2日間(幼児は3日間)は、ウイルスを排出している可能性があるため、外出を控えてください。この期間は学校保健安全法でも出席停止期間と定められています。
Q6. インフルエンザワクチンを打っていれば検査は不要ですか?
A. いいえ。ワクチンを接種していても、インフルエンザに感染する可能性はあります。症状がある場合は、ワクチン接種の有無にかかわらず、検査を受けることをお勧めします。ただし、ワクチンを接種していると、感染しても症状が軽い場合があります。
Q7. 自宅で使える検査キットはありますか?
A. 一般用の体外診断用医薬品として、自宅で使用できるインフルエンザ検査キットが販売されています。ただし、医療機関での検査に比べて精度が劣る可能性があり、陽性の場合は医療機関での確定診断が必要です。また、陰性でも症状が続く場合は医療機関を受診してください。
おわりに
インフルエンザは毎年多くの人が感染する身近な病気ですが、適切な検査と早期治療により、症状を軽減し、重症化を防ぐことができます。
検査を受ける際の重要なポイントをまとめると:
- 適切なタイミング:発症後12〜48時間が検査の推奨時期
- 早期受診:抗インフルエンザ薬は発症後48時間以内の使用が効果的
- 総合的な判断:検査結果だけでなく、症状や流行状況も考慮
- 感染対策:診断後は適切な療養と感染拡大の防止
- 予防の重要性:ワクチン接種と日常的な感染対策
インフルエンザの症状が現れた際は、この記事の内容を参考に、適切なタイミングで医療機関を受診し、正確な診断と適切な治療を受けてください。また、日頃からの予防対策を心がけることで、インフルエンザの感染リスクを減らすことができます。
参考文献
- 厚生労働省「インフルエンザ(総合ページ)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/index.html - 国立感染症研究所「インフルエンザとは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/219-about-flu.html - 日本感染症学会「抗インフルエンザ薬の使用適応について」
https://www.kansensho.or.jp/ - 厚生労働省「インフルエンザQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html - 国立感染症研究所「インフルエンザ流行レベルマップ」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-map.html
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務