「シミを消したい」「肌のくすみが気になる」とお悩みの方は多いのではないでしょうか。美白ケアにはさまざまな成分がありますが、その中でも「肌の漂白剤」と呼ばれるほど高い美白効果を持つのがハイドロキノンです。
ハイドロキノンは、欧米では20年以上前からシミ治療に使用されてきた実績のある成分で、日本でも2001年の薬事法改正により化粧品への配合が認められるようになりました。アルブチンやビタミンC誘導体など他の美白成分と比較して、10倍から100倍もの美白効果があるとされ、皮膚科や美容皮膚科でのシミ治療において欠かせない存在となっています。
しかし、強力な効果を持つ一方で、正しい知識なく使用すると副作用のリスクもあります。本記事では、ハイドロキノンの効果や作用メカニズム、適応となるシミの種類、正しい使い方から注意点まで、詳しく解説していきます。シミやくすみでお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
- ハイドロキノンとは
- ハイドロキノンの美白効果とメカニズム
- ハイドロキノンが効果を発揮するシミの種類
- ハイドロキノンの効果が出にくいシミ
- ハイドロキノンの濃度による違いと選び方
- ハイドロキノンの正しい使い方
- トレチノインとの併用療法(東大方式)
- ハイドロキノンの副作用と注意点
- 使用をやめた後の効果持続性について
- 他の美白成分との比較
- 皮膚科でハイドロキノンの処方を受けるメリット
- ハイドロキノンに関するよくある質問
- まとめ
1. ハイドロキノンとは
ハイドロキノンは、化学式C6H4(OH)2で表されるフェノール化合物の一種です。自然界にも存在する成分で、イチゴやブルーベリーなどのベリー類、麦芽、コーヒー、紅茶などに微量ながら含まれています。
興味深いことに、ハイドロキノンの美白効果が発見されたのは、写真の現像作業がきっかけでした。ハイドロキノンは還元作用を持つことから写真の現像液として使用されていましたが、現像作業に従事していた人々の手が白くなることに気づいたことで、その漂白効果が注目されるようになったのです。
欧米では1940年代以降から美白ケアの成分として広く使用されており、特にアメリカでは美白といえばハイドロキノンが主流でした。日本では長らく医師の管理下でのみ使用が認められていましたが、2001年の薬事法改正によって化粧品への配合が解禁されました。
ただし、日本での歴史は欧米と比べてまだ浅く、正しい使い方や注意点についての情報が十分に浸透しているとは言えません。また、ハイドロキノンは医薬部外品の美白有効成分としては認可されておらず、あくまで化粧品成分としての使用のみが許可されている点も特徴的です。
ハイドロキノンとハイドロキノンモノベンジルエーテルの違い
ハイドロキノンについて語る上で重要なのが、「ハイドロキノンモノベンジルエーテル」との違いです。かつて日本では、ハイドロキノンモノベンジルエーテルという類似の化学物質が美白剤として使用されていました。しかし、この物質はメラニン色素の合成を非常に強力に抑制する一方で、色素細胞に対する毒性が強く、長期使用によって不可逆的な白斑(もとに戻らない皮膚の白抜け)を引き起こすことが問題となりました。
このため、厚生労働省はハイドロキノンモノベンジルエーテルの化粧品への配合を禁止しました。当時、構造が似ているという理由でハイドロキノンにも規制がかけられましたが、実際にはこの2つの物質は別物です。ハイドロキノンは、ハイドロキノンモノベンジルエーテルよりも色素細胞への毒性が弱く、その作用は可逆的であることがわかっています。つまり、適切な濃度で正しく使用すれば、白斑のリスクは極めて低いのです。
2. ハイドロキノンの美白効果とメカニズム
ハイドロキノンの最大の特徴は、その強力な美白効果にあります。この効果は単に「肌を白くする」というものではなく、シミや色素沈着の原因となるメラニン色素に対して多角的にアプローチすることで実現されています。
シミができるメカニズム
まず、シミがどのようにしてできるのかを理解しておきましょう。私たちの肌には「メラノサイト」と呼ばれる色素細胞が存在します。紫外線を浴びたり、肌に炎症が起きたりすると、肌を守るためにメラノサイトが活性化され、「メラニン色素」が作り出されます。
メラニン色素が作られる過程は以下のとおりです。
肌の基底層にあるメラノサイト内で、「チロシン」というアミノ酸が「チロシナーゼ」という酵素の働きによって酸化され、メラニン色素に変化します。このメラニン色素は本来、肌のターンオーバー(新陳代謝)によって約28日から45日のサイクルで古い角質とともに排出されます。
しかし、紫外線を浴びすぎたり、加齢によってターンオーバーのサイクルが乱れたりすると、メラニン色素の産生と排出のバランスが崩れ、メラニンが過剰に蓄積されてしまいます。これがシミやくすみとなって現れるのです。
ハイドロキノンの3つの作用
ハイドロキノンは、このメラニン生成のメカニズムに対して、主に3つのアプローチで美白効果を発揮します。
作用1:チロシナーゼの活性阻害
ハイドロキノンの最も重要な作用が、メラニン生成に不可欠な酵素「チロシナーゼ」の働きを阻害することです。チロシナーゼはチロシンをメラニンに変換する際に必要な酵素ですが、ハイドロキノンがこの酵素の活性をブロックすることで、新たなメラニンの生成を防ぎます。
わかりやすく例えるなら、メラニン色素を作る工場の電源スイッチをオフにするようなイメージです。これにより、これから新しくできるシミを予防することができます。
作用2:メラノサイトへの選択的細胞毒性
ハイドロキノンには、メラニンを生成するメラノサイト(色素細胞)に対して選択的な細胞毒性があることがわかっています。特に4〜5%以上の高濃度のハイドロキノンでは、この作用によってメラノサイトの活性そのものを低下させ、メラニン産生能力を抑制します。
作用3:メラニンの還元作用
ハイドロキノンは還元剤として働き、すでに皮膚に沈着したメラニン色素を還元型に変化させることで、色味を薄くする効果も期待できます。つまり、できてしまったシミを淡くしながら、新しいシミの予防も同時に行えるのです。
ターンオーバーとの相乗効果
ハイドロキノンは今あるシミを直接消すわけではありません。新しいメラニンの生成を抑えながら、肌のターンオーバーによって古いメラニンが排出されるのを待つことで、徐々にシミが薄くなっていきます。
年齢にもよりますが、肌のターンオーバーサイクルは通常28日から45日程度です。そのため、ハイドロキノンの効果を実感するまでには、最低でも1〜3ヶ月程度の継続使用が必要となります。
3. ハイドロキノンが効果を発揮するシミの種類
ハイドロキノンはすべてのシミに効くわけではありません。特に効果を発揮するのは、皮膚の浅い部分(基底層から表皮)にメラニン色素が過剰に沈着しているタイプのシミです。
老人性色素斑(日光黒子)
老人性色素斑は、長年の紫外線ダメージの蓄積によってできる、最も一般的なシミです。主に40歳以降に顔、手の甲、前腕など日光に当たりやすい部位に現れます。境界がはっきりしており、褐色から黒褐色で、大きさは数ミリから1センチを超えるものまでさまざまです。
このタイプのシミはメラニンが表皮に存在しているため、ハイドロキノンが非常に効果的です。日本皮膚科学会の美容医療診療指針においても、シミ治療における美白剤外用療法として認められています。
炎症後色素沈着
ニキビ跡、やけど跡、虫刺され跡、かぶれや湿疹の跡など、皮膚に炎症が起きた後に残る茶色い色素沈着です。レーザー治療後の「戻りシミ」もこれに該当します。
炎症後色素沈着は、炎症によってメラノサイトが刺激されてメラニンが過剰生成されることで起こります。ハイドロキノンはこのタイプの色素沈着に対しても高い効果が期待でき、皮膚科では頻繁に処方されています。
肝斑(かんぱん)
肝斑は、主に30代以降の女性に多く見られるシミで、両頬や額、鼻の下などに左右対称に現れるのが特徴です。境界がぼんやりしており、紫外線だけでなく女性ホルモンのバランスや慢性的な肌への刺激が発症に関与していると考えられています。
肝斑の治療は難しいとされていますが、ハイドロキノンはある程度の効果が期待できます。ただし、肝斑は寛解と増悪を繰り返す難治性の色素異常症であるため、紫外線対策を徹底しながら、トラネキサム酸の内服やケミカルピーリングなどと組み合わせた総合的な治療が推奨されています。
そばかす(雀卵斑)
そばかすは遺伝的な要因が大きいシミですが、紫外線によって濃くなる性質があります。ハイドロキノンである程度薄くすることは可能ですが、完全に消すことは難しく、遺伝的な要因があるため再発しやすいです。
乳輪やデリケートゾーンの黒ずみ
乳輪やわきの下、Vラインなどのデリケートゾーンの色素沈着にもハイドロキノンは使用されることがあります。妊娠・出産・授乳期に色素が濃くなった部位の改善にも効果が期待できます。
4. ハイドロキノンの効果が出にくいシミ
一方で、ハイドロキノンでは改善が難しいシミやあざもあります。治療前に自分のシミのタイプを正確に診断してもらうことが重要です。
太田母斑
太田母斑は、真皮(皮膚の深い層)にメラノサイトが存在する青みがかったあざです。生まれつき、または思春期頃に出現することが多く、片側の目の周りや頬に現れます。ハイドロキノンは表皮のメラニンには効果がありますが、真皮のメラノサイトには到達しにくいため、効果はほとんど期待できません。このタイプにはQスイッチレーザーによる治療が適しています。
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)
ADM(両側性遅発性太田母斑様色素斑)も真皮にメラノサイトが存在するタイプの色素斑で、20〜30代の女性に多く見られます。両頬の骨の上あたりに左右対称に現れ、肝斑と間違われやすいですが、ハイドロキノンはほとんど効果がありません。
扁平母斑(茶あざ)
生まれつきある茶色いあざで、表皮の基底層にメラニンが増加しています。ハイドロキノン単独では効果が乏しく、レーザー治療との併用が検討されます。
老人性疣贅(脂漏性角化症)
シミと間違われやすいですが、実際には加齢によるいぼの一種です。表面がざらざらしていたり、盛り上がっていたりする場合は脂漏性角化症の可能性があり、ハイドロキノンでは改善しません。液体窒素やレーザーによる治療が適しています。
5. ハイドロキノンの濃度による違いと選び方
ハイドロキノンは製品によって配合濃度が異なり、濃度によって効果と副作用のリスクが変わってきます。
市販化粧品の濃度(1〜2%)
日本では化粧品に配合できるハイドロキノンの濃度について、明確な上限は法律で定められていませんが、一般的に市販されている化粧品のハイドロキノン濃度は1〜2%程度です。この濃度であれば刺激が比較的少なく、安全性が高いとされています。
ただし、濃度が低い分、効果や即効性も穏やかになります。軽度のシミやくすみの予防目的であれば市販品でも良いですが、明らかなシミの改善を目指す場合は効果が物足りないことがあります。
医療機関で処方される濃度(4〜5%)
皮膚科や美容皮膚科では、4〜5%のハイドロキノンクリームが処方されることが一般的です。この濃度になると美白効果が高まりますが、同時に副作用のリスクも上昇するため、医師の管理下での使用が推奨されます。
高濃度のハイドロキノンは、メラノサイトに対する細胞毒性も発揮するため、より強力な美白効果が期待できます。
高濃度製品(5%以上)の注意点
海外製品の中には10%以上のハイドロキノンを含むものもありますが、高濃度になるほど副作用のリスクが高まります。7%以上では皮膚に強い赤みが出やすく、実際に塗布することが難しいとされています。
個人輸入で入手した高濃度製品を自己判断で使用することは非常に危険です。白斑や色素沈着などの重篤な副作用を引き起こす可能性があるため、避けるべきです。
濃度選びのポイント
初めてハイドロキノンを使用する方は、まず低濃度から始めて肌の反応を確認することをおすすめします。赤みやかゆみなどの刺激がなければ、医師と相談しながら濃度を上げていくことも可能です。
効果を実感したい場合は、皮膚科で4%程度のハイドロキノンを処方してもらい、定期的に診察を受けながら使用するのが最も安全で効果的です。
6. ハイドロキノンの正しい使い方
ハイドロキノンは正しく使えば安全で効果的な成分ですが、使い方を誤ると副作用を引き起こす可能性があります。以下のポイントを守って使用しましょう。
基本的な使用方法
- 洗顔後、化粧水や美容液で肌を整えます
- シミの気になる部分にのみ、少量を薄く塗布します
- 指の腹や綿棒を使って、患部からはみ出さないように丁寧に塗ります
- その後、保湿クリームなどで肌全体を保湿します
ハイドロキノンは基本的に「ポイント使い」が原則です。顔全体に広げて塗ることは避け、シミの部分にだけピンポイントで使用してください。顔全体に塗るとムラになったり、健康な肌にまで影響を与えたりする可能性があります。
使用回数とタイミング
一般的には1日1〜2回、朝と夜の洗顔後に使用します。初めて使う場合は、1日1回、夜だけの使用から始めることをおすすめします。
夜の使用が推奨される理由は、ハイドロキノンは紫外線に対して非常に不安定な成分だからです。日中に使用する場合は、必ずその上から日焼け止めを塗り、紫外線対策を徹底してください。
紫外線対策の重要性
ハイドロキノン使用中は、普段以上に紫外線対策が重要です。ハイドロキノンには光線過敏症を起こす可能性があり、使用中の肌は紫外線に対して非常に敏感になっています。
紫外線を無防備に浴びると、シミがかえって濃くなったり、新たな色素沈着を引き起こしたりする可能性があります。季節を問わず、外出時には必ずSPF20以上の日焼け止めを使用し、帽子や日傘などで物理的にも紫外線をカットするようにしましょう。
使用期間の目安
ハイドロキノンの効果を実感するまでには、一般的に2〜3ヶ月程度の継続使用が必要です。肌のターンオーバーサイクルに合わせて、古いメラニンが排出されるのを待つ必要があるためです。
ただし、連続使用は3〜6ヶ月を目安とし、その後は3ヶ月程度の休薬期間を設けることが推奨されています(インターバル使用)。長期間の連続使用は、白斑やオクロノーシス(逆に色が濃くなる現象)などの副作用リスクを高めるためです。
保管方法
ハイドロキノンは非常に酸化しやすい不安定な成分です。光や空気、熱に弱いため、開封後は冷暗所(できれば冷蔵庫)で保管してください。
酸化したハイドロキノンは茶色や黄色に変色し、効果が低下するだけでなく、肌への刺激性が増します。色が変わっていたら使用を中止しましょう。開封後は1〜3ヶ月以内に使い切ることをおすすめします。
7. トレチノインとの併用療法(東大方式)
ハイドロキノン単独でも効果はありますが、より高い美白効果を求める場合は「トレチノイン」との併用療法が行われます。これは東京大学の形成外科で開発された治療法で、「東大方式」とも呼ばれています。
トレチノインとは
トレチノインはビタミンA(レチノール)の誘導体で、肌のターンオーバーを劇的に促進する作用があります。通常28〜45日かかるターンオーバーを約2週間に短縮することができ、メラニンを含んだ古い角質を速やかに排出させます。
また、トレチノインには皮脂分泌を抑制する作用もあり、ニキビ治療にも使用されます。
併用療法のメカニズム
トレチノインとハイドロキノンを組み合わせることで、以下のような相乗効果が期待できます。
- トレチノイン:ターンオーバーを促進し、メラニンを含んだ細胞を速やかに排出
- ハイドロキノン:新たなメラニンの生成を抑制
つまり、古いメラニンを押し出しながら、新しいメラニンを作らせないという両面からアプローチすることで、より効率的にシミを改善できるのです。
併用療法の使い方
一般的な使用手順は以下のとおりです。
- 洗顔後、化粧水で肌を整えます
- トレチノインをシミの部分に薄く塗布します(綿棒を使用し、はみ出さないように注意)
- トレチノインが十分に乾いたら、ハイドロキノンをトレチノインより広めの範囲に塗布します
トレチノインを先に塗ることで、ハイドロキノンの浸透性が高まり、より効果的に作用します。ただし、逆の順番で塗っても大きな問題はありません。
併用療法の注意点
トレチノインは非常に強い作用を持つため、使用開始後は皮むけ、赤み、ヒリヒリ感などの「レチノイド反応」が起こることがほとんどです。これは肌のターンオーバーが促進されている証拠ですが、症状が強すぎる場合は医師に相談してください。
併用療法は必ず医師の指導のもとで行い、自己判断での使用は避けてください。また、妊娠中や授乳中の方はトレチノインの使用が禁忌となっています。
8. ハイドロキノンの副作用と注意点
ハイドロキノンは正しく使用すれば比較的安全な成分ですが、いくつかの副作用や注意すべき点があります。
赤み・かぶれ・刺激感
最も多い副作用は、塗布部位の赤み、かゆみ、ピリピリ感、皮むけなどの刺激症状です。特に初めて使用する方や、肌が敏感な方に起こりやすいです。
一過性の軽い赤みであれば、塗る量や範囲を減らすことで使用を継続できることもあります。しかし、量を減らしても毎回赤くなる場合は、接触アレルギー(かぶれ)の可能性があるため、使用を中止して医師に相談してください。
パッチテストの重要性
ハイドロキノンは一定の割合でかぶれ(アレルギー反応)を起こす方がいます。特に肌の色が濃い方や、毛染め剤(パラフェニルジアミン)でかぶれたことがある方は注意が必要です。
新しいハイドロキノン製品を使い始める前には、必ずパッチテスト(使用テスト)を行いましょう。顔の目立たない部分(耳の後ろや首など)に少量を塗布し、3日程度様子を見て、赤みやかゆみが出ないことを確認してから本格的に使用してください。
白斑(脱色素斑)
長期間の連続使用や高濃度製品の不適切な使用により、まれに皮膚の一部が白く抜けてしまう「白斑」が生じることがあります。これはメラノサイトが過度に破壊されることで起こります。
適切な濃度(5%以下)で、医師の指示に従った使用期間を守っていれば、白斑のリスクは非常に低いとされています。万が一、塗布部位が不自然に白くなってきた場合は、すぐに使用を中止して医師に相談してください。
オクロノーシス(外因性組織黒変症)
非常にまれですが、長期間にわたって漫然と塗り続けると、逆に色素沈着が進んで肌が黒ずんでしまう「オクロノーシス」という現象が報告されています。一度起こると治療が困難なため、使用期間を守ることが重要です。
酸化による刺激性の増加
開封後に時間が経ったハイドロキノンは酸化して茶色く変色し、刺激性が増します。酸化したハイドロキノンは効果がないばかりか、肌トラブルの原因となるため、変色した製品は使用しないでください。
使用を避けるべき方
以下に該当する方は、ハイドロキノンの使用を避けるか、医師に相談してください。
- 過去にハイドロキノンでかぶれたことがある方
- 毛染め剤でアレルギー反応を起こしたことがある方
- 妊娠中・授乳中の方(安全性が確立されていないため基本的に推奨されない)
- 傷や炎症のある部位への使用
9. 使用をやめた後の効果持続性について
「ハイドロキノンをやめたらシミは元に戻るの?」という質問をよく受けます。
結論から言うと、ハイドロキノンの使用をやめると、徐々にシミが再発する可能性があります。これは、ハイドロキノンがメラニンの生成を抑制する効果を持つ一方で、シミの根本原因(紫外線ダメージ、加齢、ホルモンバランスなど)を取り除くわけではないためです。
効果を持続させるために
ハイドロキノンによる治療でシミが薄くなった後も、以下の点に注意することで効果を長く維持できます。
- 紫外線対策を徹底する:日焼け止めの使用、帽子や日傘の活用を習慣化する
- 美白ケアを継続する:休薬期間中も、他の美白成分(ビタミンC、トラネキサム酸、アゼライン酸など)を含むスキンケアを続ける
- 肌への刺激を避ける:こすりすぎや過度な摩擦は色素沈着を誘発する
- 定期的なメンテナンス:医師と相談しながら、必要に応じてハイドロキノンの使用を再開する
シミ治療は「一度で完了」というよりも、長期的なケアが必要だと考えてください。
10. 他の美白成分との比較
ハイドロキノン以外にもさまざまな美白成分がありますが、それぞれ作用の仕組みや効果の強さが異なります。
ビタミンC誘導体
ビタミンC誘導体は、メラニン生成抑制作用と抗酸化作用を持つ、最もポピュラーな美白成分です。肌への刺激が少なく安全性が高いため、毎日のスキンケアに取り入れやすいのがメリットです。ただし、美白効果はハイドロキノンに比べるとマイルドです。
トラネキサム酸
トラネキサム酸は、メラノサイトを活性化させる因子の働きを抑制することで、メラニン生成を抑えます。特に肝斑への効果が認められており、内服薬としても使用されます。刺激が少なく、長期使用が可能な成分です。
アルブチン
アルブチンはハイドロキノン誘導体の一種で、ハイドロキノンをモデルに開発された成分です。チロシナーゼ阻害作用がありますが、効果はハイドロキノンに比べて穏やかです。安全性が高く、医薬部外品の美白有効成分として認可されています。
コウジ酸
日本酒の製造過程で発見された美白成分で、チロシナーゼの活性を阻害します。肝斑への効果も認められています。ハイドロキノンほどではありませんが、比較的高い美白効果があります。
効果の比較
美白効果の強さでいえば、ハイドロキノンはこれらの成分の10〜100倍とも言われています。ただし、効果が高い分、副作用のリスクも伴います。症状や目的に応じて、これらの成分を組み合わせたり、使い分けたりすることが効果的です。
11. 皮膚科でハイドロキノンの処方を受けるメリット
ハイドロキノンは市販の化粧品でも購入できますが、シミ治療を目的とする場合は皮膚科で処方を受けることをおすすめします。
正確な診断を受けられる
シミにはさまざまな種類があり、それぞれ適した治療法が異なります。前述のとおり、ハイドロキノンが効かないタイプのシミもあります。皮膚科では、ダーモスコピーなどを用いて正確にシミの種類を診断し、最適な治療法を提案してもらえます。
また、シミだと思っていたものが実は悪性腫瘍(悪性黒子など)であったというケースもあります。自己判断で治療を続けることで診断が遅れる危険性を避けるためにも、専門医の診察を受けることが重要です。
適切な濃度の処方
皮膚科では4〜5%の高濃度ハイドロキノンを処方してもらえます。市販品の1〜2%と比較して効果が高く、明らかなシミの改善を目指す場合には有利です。医師が肌の状態を見ながら最適な濃度を選んでくれます。
副作用への対応
万が一副作用が出た場合も、すぐに医師に相談できる体制があると安心です。症状に応じて使用方法の調整や、代替治療の提案を受けられます。
レーザー治療との併用
シミの種類や程度によっては、ハイドロキノン単独よりもレーザー治療と組み合わせた方が効果的な場合があります。日本皮膚科学会の美容医療診療指針では、シミ治療においてレーザーや光治療(IPL)は遮光・美白剤外用や内服などの保存的治療で十分な効果が得られない場合に併用療法として行うことが推奨されています。
レーザー治療後の「戻りシミ」予防にもハイドロキノンは効果的で、総合的なシミ治療計画を立ててもらえるのは皮膚科ならではのメリットです。
保険適用について
なお、ハイドロキノンは国内では医薬品として承認されていないため、保険適用外の自費診療となります。費用はクリニックによって異なりますが、5gで1,500〜3,000円程度が一般的です。

12. ハイドロキノンに関するよくある質問
個人差がありますが、一般的には最低3ヶ月程度の継続使用で効果を実感できることが多いです。肌のターンオーバーサイクルに合わせてメラニンが排出されるため、即効性はありません。焦らず継続することが大切です。
最大の違いは濃度です。市販化粧品は1〜2%程度ですが、皮膚科では4〜5%の高濃度製品を処方できます。効果の高さだけでなく、医師の管理下で使用できる安心感も大きな違いです。
Q3. ハイドロキノンで肌が白く抜けることはありますか?
5%以下の濃度で、推奨される使用期間を守っていれば、白斑のリスクは非常に低いとされています。ただし、高濃度製品の長期連続使用は避けるべきです。異常を感じたらすぐに使用を中止し、医師に相談してください。
Q4. 妊娠中・授乳中でも使用できますか?
基本的に推奨されていません。ハイドロキノンの妊娠中・授乳中の安全性は十分に確立されていないため、この期間中の使用は避けた方が良いでしょう。妊娠を考えている方も、事前に医師に相談してください。
Q5. ハイドロキノンを使いながら日焼けしてしまったら?
すぐにハイドロキノンの使用を中止し、肌を冷やして鎮静させてください。日焼けした状態でハイドロキノンを使用すると、かえって色素沈着を悪化させる可能性があります。肌の状態が落ち着いてから、医師に相談のうえ使用を再開してください。
Q6. ハイドロキノンは顔以外にも使えますか?
はい、手の甲、腕、デコルテ、乳輪、わきの下など、顔以外の部位の色素沈着にも使用できます。ただし、部位によって肌の敏感さが異なるため、使用前にパッチテストを行いましょう。
Q7. ハイドロキノン使用中にピーリングやレーザー治療は受けられますか?
基本的には併用可能ですが、治療内容によっては一時的にハイドロキノンの使用を中止する必要がある場合もあります。他の美容治療を受ける際は、ハイドロキノンを使用していることを必ず医師に伝えてください。
13. まとめ
ハイドロキノンは、メラニン生成を抑制する強力な美白成分として、シミやくすみの改善に高い効果が期待できます。「肌の漂白剤」と呼ばれるほどの美白効果は、他の美白成分の10〜100倍とも言われ、皮膚科でのシミ治療において重要な役割を担っています。
本記事のポイントをまとめると以下のとおりです。
ハイドロキノンはチロシナーゼの活性阻害、メラノサイトへの作用、メラニンの還元作用という3つのメカニズムで美白効果を発揮します。特に老人性色素斑、炎症後色素沈着、肝斑などの表皮性のシミに効果的ですが、太田母斑やADMなど真皮性の色素沈着には効果が期待できません。
正しく使用すれば安全性の高い成分ですが、使用中は紫外線対策の徹底が必須です。連続使用は3〜6ヶ月を目安とし、その後は休薬期間を設けることで副作用のリスクを軽減できます。
より高い効果と安全性を求めるなら、皮膚科での診察・処方をおすすめします。正確な診断のもと、適切な濃度のハイドロキノンを処方してもらえるほか、トレチノインとの併用療法やレーザー治療など、総合的なシミ治療計画を立ててもらえます。
シミやくすみでお悩みの方は、ぜひ一度専門医にご相談ください。アイシークリニック渋谷院では、お一人おひとりの肌状態に合わせた最適な治療をご提案いたします。
参考文献
- 日本皮膚科学会 美容医療診療指針
- 厚生労働省 化粧品基準
- 厚生労働省 化粧品・医薬部外品等ホームページ
- 厚生労働科学研究成果データベース 化粧品の自主的配合原料の安全性確認に必要とされるリスク評価情報の収集に関する研究
- ロート製薬 皮膚の専門家も使う美白成分「ハイドロキノン」
- 日本形成外科学会 しみ(色素斑)
監修者医師
高桑 康太 医師
略歴
- 2009年 東京大学医学部医学科卒業
- 2009年 東京逓信病院勤務
- 2012年 東京警察病院勤務
- 2012年 東京大学医学部附属病院勤務
- 2019年 当院治療責任者就任
佐藤 昌樹 医師
保有資格
日本整形外科学会整形外科専門医
略歴
- 2010年 筑波大学医学専門学群医学類卒業
- 2012年 東京大学医学部付属病院勤務
- 2012年 東京逓信病院勤務
- 2013年 独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院勤務
- 2015年 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院勤務を経て当院勤務